(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記窯業系サイディング材では、これを切削加工すると切削粉や端材等の切削屑が生じる。
そして、前記切削屑は、有効に活用されることなく、埋立処理によって廃棄されていた。
また、例えば、前記切削屑が粉状に構成されるもの(切削粉)である場合には搬送時に粉塵となって飛散するおそれがあり、その取扱いが煩雑であった。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、窯業系サイディング材を切削加工するときに生じる切削屑を埋立処理せずに有効に活用することができ、また、その取扱いが容易となる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、溶融炉に投入されて溶湯面を覆うようにして溶湯面からの熱放散を抑制する溶融炉の保温材であって、窯業系サイディング材を切削加工するときに生じる切削屑を粒状に構成してなるも
のであり、
前記切削屑は、切削粉で構成され、バインダが練りこまれるようにして撹拌造粒されて粒径が0.5mm以上に構成されるものである。
【0008】
請求項2においては、
前記バインダは水であり、前記切削屑と前記バインダとの重量比が、切削屑:バインダ=1:0.34〜0.46の関係を満たすものである。
【0009】
請求項3においては、
溶融炉に投入されて溶湯面を覆うようにして溶湯面からの熱放散を抑制する溶融炉の保温材の製造方法であって、窯業系サイディング材を切削加工するときに生じる切削屑を撹拌造粒によって粒状に構成する工程と、前記撹拌造粒によって粒状に構成された切削屑を乾燥する工程と、を備え、 前記切削屑を撹拌造粒によって粒状に構成する工程においては、前記切削屑は、切削粉で構成され、バインダが練りこまれるようにして撹拌造粒されて粒径が0.5mm以上に構成され、前記バインダは水であり、前記切削屑と前記バインダとの重量比が、切削屑:バインダ=1:0.34〜0.46の関係を満たすものとされるものである。
【0010】
請求項4においては、
溶融炉の温度を一定範囲の温度に保持する溶融炉の保温方法であって、請求項1または請求項2のいずれか一項に記載の溶融炉の保温材、または、請求項3に記載の溶融炉の保温材の製造方法によって製造された溶融炉の保温材を溶融炉に投入する工程を備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明によれば、窯業系サイディング材を切削加工するときに生じる切削屑を、埋立処理せずに有効に活用することができ、また、溶融炉への投入作業を容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態に係る溶融炉の保温材1、溶融炉の保温材1の製造方法、および、溶融炉の保温方法について、
図1から5図を用いて説明する。
【0015】
まず、溶融炉の保温材1について説明する。
【0016】
溶融炉の保温材1は、溶融炉を保温するものである。
図1に示すように、溶融炉の保温材1は、溶融炉に投入されて溶湯面を覆うようにして溶湯面からの熱放散を抑制する。
【0017】
溶融炉には、例えば、電気式溶融炉や燃料式溶融炉等がある。
以下において、溶融炉は電気溶融炉であるものとして説明する。
【0018】
図2に示すように、溶融炉の保温材1は、窯業系サイディング材を切削加工するときに生じる切削屑を粒状に構成してなる。溶融炉の保温材1は、その粒径が3mm以上10mm以下となるように構成される。
【0019】
窯業系サイディング材は、不燃性または準不燃性の建築用の外壁材であり、ケイ酸カルシウム等を含有するポルトランドセメント等から製造される。
【0020】
以上のように、窯業系サイディング材を切削加工するときに生じる切削屑を粒状に構成してなる溶融炉の保温材1では、切削屑を埋立処理せずに溶融炉の保温に用いて有効に活用することができる。
また、溶融炉の保温材1では、粒状に構成されてなることから粉塵となって飛散することがなく、粉状に構成されるものに比べて取扱い(例えば、溶融炉への投入作業)が容易となる。
なお、溶融炉に投入するときに粉塵となって飛散することを防止するにあたって、溶融炉の保温材1の粒径は、0.5mm以上であることが好ましい。
【0021】
切削屑は、窯業系サイディング材を切削加工するときに生じる切削粉で構成される。
【0022】
以上のように、切削屑が窯業系サイディング材を切削加工するときに生じる切削粉で構成される、溶融炉の保温材1では、例えば、板状またはブロック状等に構成されるもののように粉砕して粉状にすることを要さずに、溶融炉の保温材1を構成することができる。
【0023】
溶融炉の保温材1は、切削屑が撹拌造粒によって粒状に構成される。溶融炉の保温材1は、撹拌造粒機によって造粒される。溶融炉の保温材1は、所定のバインダを切削屑に投入して、これを練りこむように撹拌造粒することによって粒状に構成される。
溶融炉の保温材1は、前記造粒された後に所定の期間(約一週間)乾燥されてなる。
【0024】
以上のように、切削屑が撹拌造粒によって粒状に構成される、溶融炉の保温材1では、例えば、転動造粒によって粒状に構成されるものに比べて溶融炉の保温材1の強度が高くなる。このため、溶融炉の保温材1では、溶融炉の保温材1の強度が低いことから粒状であったものが例えば搬送中等に粉状になることを防止することができる。したがって、溶融炉の保温材1によれば、溶融炉の保温材1が溶融炉に投入するときに粉塵となって飛散することを防止することができる。
また、切削屑が撹拌造粒によって粒状に構成される、溶融炉の保温材1では、圧縮されずに粒状に構成されることから、圧縮造粒(例えば、ブリケッティングマシン)によって粒状に構成されるものに比べて少量の切削屑で構成したものによって、溶湯面を覆うようにして溶湯面からの熱放散を抑制することができる。したがって、溶融炉の保温材1によれば、圧縮造粒によって粒状に構成されるものに比べて安価に溶融炉の保温を行うことができる。
【0025】
所定のバインダは、水で構成される。
粒状であったものが粉状になりにくい強度の溶融炉の保温材1をとするにあたって、切削屑とバインダ(水)との重量比が切削屑:バインダ=1:0.4(±15%)の関係を満たすことが好ましい。所定のバインダ(水)は、例えば、10kgの切削屑に対して、4kg投入される。
【0026】
なお、溶融炉の保温材1では、切削屑が、窯業系サイディング材を切削加工するときに生じる切削粉と、窯業系サイディング材を切削加工するときに生じる端材と、が混合されるものとすることもできる。
【0027】
次に、
図3または
図4を用いて溶融炉の保温材1の製造方法について説明する。
【0028】
まず、切削屑が切削粉で構成されるものとして説明する。
【0029】
図3に示すように、溶融炉の保温材1の製造方法は、撹拌造粒する工程(ステップS11)と、乾燥する工程(ステップS12)と、を備える。
【0030】
撹拌造粒する工程(ステップS11)では、窯業系サイディング材を切削加工するときに生じる切削屑(切削粉)を撹拌造粒によって粒状に構成する工程を行う。撹拌造粒する工程(ステップS11)では、撹拌造粒器に切削屑を投入した状態で、所定のバインダ(水)を投入して、これを練りこむようにして撹拌造粒する。このようにして、溶融炉の保温材1を粒状に構成する。
前記撹拌造粒する工程(ステップS11)を行った後、ステップS12に移行する。
【0031】
乾燥する工程(ステップS12)では、前記窯業系サイディング材を切削加工するときに生じる切削屑(切削粉)を撹拌造粒して粒状になったものを乾燥する工程を行う。乾燥する工程(ステップS12)では、含水率が1〜10%となるように溶融炉の保温材1を乾燥する。乾燥する工程(ステップS12)では、例えば、自然乾燥を一週間行うことによって溶融炉の保温材1を乾燥する。
【0032】
以上のように、窯業系サイディング材を切削加工するときに生じる切削屑を粒状に構成してなる溶融炉の保温材1の製造方法では、切削屑を埋立処理せずに溶融炉の保温に用いて有効に活用することができる溶融炉の保温材1を製造することができる。
また、溶融炉の保温材1の製造方法では、粒状に構成されてなることから粉塵となって飛散することがなく、粉状に構成されるものに比べて取扱い(例えば、溶融炉への投入作業)が容易となる溶融炉の保温材1を製造することができる。
【0033】
また以上のように、切削屑が窯業系サイディング材を切削加工するときに生じる切削粉で構成される、溶融炉の保温材1の製造方法では、板状またはブロック状等に構成されるもののように粉砕して粉状にすることを要さずに、溶融炉の保温材1を製造することができる。したがって、溶融炉の保温材1の製造方法によれば、粉砕すること要するものに比べて容易に溶融炉の保温材1を製造することができる。
【0034】
また以上のように、窯業系サイディング材を切削加工するときに生じる切削屑(切削粉)を撹拌造粒によって粒状に構成する撹拌造粒する工程(ステップS11)を備える、溶融炉の保温材1の製造方法では、例えば、転動造粒によって粒状に構成されるものに比べて溶融炉の保温材1の強度を高くすることができる。このため、溶融炉の保温材1の製造方法では、溶融炉の保温材1を、強度が低いことから粒状であったものが例えば搬送中等に粉状になることを防止することができるものとすることができる。したがって、溶融炉の保温材1によれば、溶融炉の保温材1を、溶融炉の保温材1が溶融炉に投入するときに粉塵となって飛散することを防止することができるものとすることができる。
また、窯業系サイディング材を切削加工するときに生じる切削屑(切削粉)を撹拌造粒する撹拌造粒する工程(ステップS11)を備える、溶融炉の保温材1の製造方法では、圧縮されずに粒状に構成されることから、溶融炉の保温材1を、例えば、圧縮造粒によって粒状に構成されるものに比べて少量の切削屑で構成したものによって、溶湯面を覆うようにして溶湯面からの熱放散を抑制することができるものとすることができる。したがって、溶融炉の保温材1の製造方法によれば、溶融炉の保温材1を、圧縮造粒によって粒状に構成されるものに比べて、安価に溶融炉の保温を行うことができるものとすることができる。
【0035】
粒状であったものが粉状になりにくい強度の溶融炉の保温材1を製造するにあたって、切削屑とバインダ(水)との重量比が切削屑:バインダ=1:0.4(±15%)の関係を満たすことが好ましい。
【0036】
次に、切削屑が窯業系サイディング材を切削加工するときに生じる端材を粉砕したもので構成されるものとして説明する。
【0037】
図4に示すように、溶融炉の保温材1の製造方法は、粉砕する工程(ステップS10)と、撹拌造粒する工程(ステップS11)と、乾燥する工程(ステップS12)と、を備える。
【0038】
粉砕する工程(ステップS10)では、窯業系サイディング材を切削加工するときに生じる端材(残材)を粉砕加工する工程を行う。粉砕する工程(ステップS10)では、粉砕機械に前記端材を投入してこれを粉砕する。
前記粉砕する工程(ステップS10)を行った後、ステップS11に移行する。
【0039】
なお、溶融炉の保温材1の製造方法では、切削屑が、窯業系サイディング材を切削加工するときに生じる切削粉と、窯業系サイディング材を切削加工するときに生じる端材と、が混合されるものとし、これを用いて溶融炉の保温材1を製造することもできる。
【0040】
次に、
図5を用いて溶融炉の保温方法について説明する。
【0041】
溶融炉の保温方法は、溶融炉の保温材を用いて溶融炉の温度を一定範囲の温度に保持する。
図5に示すように、溶融炉の保温方法は、溶融炉の保温材1を溶融炉に投入する工程(ステップS20)を備える。
溶融炉の保温材1を溶融炉に投入する工程(ステップS20)では、例えば、溶融炉の保温材1を10kg毎に袋詰めしたものを、100袋分、溶融炉に投入する。
このようにして投入された溶融炉の保温材1は、溶湯面を覆うようにして溶湯面からの熱放散を抑制する。
なお、溶融炉の保温材1を溶融炉に投入する工程(ステップS20)では、溶融炉の保温材1は、作業員によって溶融炉に投入されてもよく、また、投入装置を用いて溶融炉に投入してもよい。
【0042】
以上のように、溶融炉の保温材1を溶融炉に投入する工程(ステップS20)を備える溶融炉の保温方法では、投入された溶融炉の保温材1が溶湯面を覆うようにして溶湯面からの熱放散を抑制し、溶融炉の温度を一定範囲の温度(1300℃〜1800℃)に保持することができる。
また、溶融炉の保温方法では、窯業系サイディング材を切削加工するときに生じる切削屑を粒状に構成してなる溶融炉の保温材1を溶融炉の保温材1として用いることから、切削屑を埋立処理することなく溶融炉の保温に用いることができ、切削屑を有効に活用することができる。