特許第6413167号(P6413167)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6413167ヘリウムガス精製装置およびヘリウムガス精製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6413167
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】ヘリウムガス精製装置およびヘリウムガス精製方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 23/00 20060101AFI20181022BHJP
   B01D 53/047 20060101ALI20181022BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20181022BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20181022BHJP
【FI】
   C01B23/00 F
   B01D53/047
   B01D53/04 220
   B01D53/04 230
   B01D53/26 231
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-68429(P2015-68429)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-188153(P2016-188153A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2017年12月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231235
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】富岡 孝文
【審査官】 小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−148912(JP,A)
【文献】 特開2003−246611(JP,A)
【文献】 特開平05−310403(JP,A)
【文献】 特開昭48−000189(JP,A)
【文献】 特表2004−526052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 23/00
B01D 53/04
B01D 53/047
B01D 53/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘリウムガス中から空気成分を除去してヘリウムガスを精製する装置であって、
ヘリウムガスが流通するヘリウムガス流通経路と、
前記ヘリウムガス流通経路に設けられ、前記ヘリウムガス中の酸素を水素と反応させて酸素を除去する酸素除去部と、
前記酸素除去部に前記水素を供給する水素ガス供給経路と、
前記ヘリウムガス流通経路の前記酸素除去部の二次側に設けられ、窒素吸着剤と水分吸着剤が充填された圧力スイング吸着式の第1の吸着塔と、
前記ヘリウムガス流通経路の前記第1の吸着塔の二次側に設けられ、水素吸着剤が充填された温度スイング吸着式の第2の吸着塔と、
前記第2の吸着塔から回収した第2の再生ガスに含まれる水素を、前記酸素除去部に供給する水素ガス循環経路と、を備えることを特徴とするヘリウムガス精製装置。
【請求項2】
前記第1の吸着塔から排出される第1の再生ガスを外部に排気する排気経路と、
前記酸素除去部と前記第1の吸着塔との間の前記ヘリウムガス流通経路に設けられた熱交換部と、をさらに備え、
前記排気経路が、前記熱交換部を経た後に、前記第2の吸着塔に近接するように設けられることを特徴とする請求項1に記載のヘリウムガス精製装置。
【請求項3】
前記熱交換部と前記第1の吸着塔との間の前記ヘリウムガス流通経路に設けられた冷却部をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載のヘリウムガス精製装置。
【請求項4】
ヘリウムガス中から空気成分を除去してヘリウムガスを精製する方法であって、
空気成分を含むヘリウムガスから、酸素を水素と反応させて酸素を除去する酸素除去工程と、
前記酸素除去工程後のガス中に含まれる窒素と水分を、窒素吸着剤と水分吸着剤により吸着除去する窒素および水分除去工程と、
前記窒素および水分除去工程後のガス中に含まれる水素を、水素吸着剤により吸着除去する水素除去工程と、含み、
前記水素吸着剤を再生する際に水素を回収し、前記酸素除去工程で用いることを特徴とするヘリウムガス精製方法。
【請求項5】
前記酸素除去工程で生成した熱を用いて、前記窒素および水分除去工程で吸着剤を再生した際に生成した再生ガスを加熱し、前記水素除去工程において当該再生ガスを用いて前記水素吸着剤を加熱すること特徴とする請求項4に記載のヘリウムガス精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘリウムガス精製装置およびヘリウムガス精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大気圧プラズマ処理、光ファイバーやガラス製造などでは、その製造工程において大量のヘリウムガスが消費されている。しかしながら、ヘリウムガスは天然ガスの中にわずかにしか含まれていないので、資源的に希少であり、非常に高価である。そのため、使用済みのヘリウムガスは、排気せずに再利用されている。
【0003】
使用済みのヘリウムガスは一般的に空気成分が含まれているため、再利用する際は空気成分の除去が必要となる。特に、酸素は酸化劣化などの原因となるため、10ppmオーダーまでの除去を要求される。
【0004】
ところで、使用済みのヘリウムガスの精製方法としては、回収ガスの濃度と精製ガスの濃度により、脱酸素触媒、冷却器、圧力スイング吸着(PSA;Pressure Swing Adsorption)、温度スイング吸着(TSA;Temperature Swing Adsorption)などの分離手段を組み合わせて精製する方法が知られている。
例えば、特許文献1および特許文献2には、水素添加によるパラジウム系触媒で酸素を除去し、さらに、PSAで窒素および水分を除去する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4162488号公報
【特許文献2】特許第5372607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に開示された方法では、10ppmオーダーへの脱酸素には酸素の当量に限りなく近い量の水素を添加する必要があり、添加する水素量は、酸素除去装置に付随する酸素濃度やヘリウム流量などの計測値をもとに制御されている。しかしながら、酸素除去装置の流量変動や圧力変動に対応する応答性の遅れや計測値の誤差などにより、水素成分が精製後のヘリウムに混入するといった問題があった。また、精製に関与しない水素ガスが必要なため経済的でないといった問題があった。さらに、脱酸素触媒で酸素の一部を除去し、さらにTSAによりニッケル(Ni)系触媒で酸素を除去する場合は、吸着塔の入口の濃度が500ppmより多くなると、焼結により吸着剤の性能が劣化し、精製によるヘリウムロスが増加するといった問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、水素ガスの使用量を抑えつつ、ヘリウムガスを効率的に精製することが可能な、ヘリウムガス精製装置およびヘリウムガス精製方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、
ヘリウムガス中から空気成分を除去してヘリウムガスを精製する装置であって、
ヘリウムガスが流通するヘリウムガス流通経路と、
前記ヘリウムガス流通経路に設けられ、前記ヘリウムガス中の酸素を水素と反応させて酸素を除去する酸素除去部と、
前記酸素除去部に前記水素を供給する水素ガス供給経路と、
前記ヘリウムガス流通経路の前記酸素除去部の二次側に設けられ、窒素吸着剤と水分吸着剤が充填された圧力スイング吸着式の第1の吸着塔と、
前記ヘリウムガス流通経路の前記第1の吸着塔の二次側に設けられ、水素吸着剤が充填された温度スイング吸着式の第2の吸着塔と、
前記第2の吸着塔から回収した第2の再生ガスに含まれる水素を、前記酸素除去部に供給する水素ガス循環経路と、を備えることを特徴とするヘリウムガス精製装置である。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、
前記第1の吸着塔から排出される第1の再生ガスを外部に排気する排気経路と、
前記酸素除去部と前記第1の吸着塔との間の前記ヘリウムガス流通経路に設けられた熱交換部と、をさらに備え、
前記排気経路が、前記熱交換部を経た後に、前記第2の吸着塔に近接するように設けられることを特徴とする請求項1に記載のヘリウムガス精製装置である。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、
前記熱交換部と前記第1の吸着塔との間の前記ヘリウムガス流通経路に設けられた冷却部をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載のヘリウムガス精製装置である。
【0011】
また、請求項4に係る発明は、
ヘリウムガス中から空気成分を除去してヘリウムガスを精製する方法であって、
空気成分を含むヘリウムガスから、酸素を水素と反応させて酸素を除去する酸素除去工程と、
前記酸素除去工程後のガス中に含まれる窒素と水分を、窒素吸着剤と水分吸着剤により吸着除去する窒素および水分除去工程と、
前記窒素および水分除去工程後のガス中に含まれる水素を、水素吸着剤により吸着除去する水素除去工程と、含み、
前記水素吸着剤を再生する際に水素を回収し、前記酸素除去工程で用いることを特徴とするヘリウムガス精製方法である。
【0012】
また、請求項5に係る発明は、
前記酸素除去工程で生成した熱を用いて、前記窒素および水分除去工程で吸着剤を再生した際に生成した再生ガスを加熱し、前記水素除去工程において当該再生ガスを用いて前記水素吸着剤を加熱すること特徴とする請求項4に記載のヘリウムガス精製方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のヘリウムガス精製装置は、ヘリウムガスが流通するヘリウムガス流通経路と、ヘリウムガス流通経路に設けられ、ヘリウムガス中の酸素を水素と反応させて酸素を除去する酸素除去部と、酸素除去部に水素を供給する水素ガス供給経路と、ヘリウムガス流通経路の酸素除去部の二次側に設けられ、窒素吸着剤と水分吸着剤が充填された圧力スイング吸着式の第1の吸着塔と、ヘリウムガス流通経路の第1の吸着塔の二次側に設けられ、水素吸着剤が充填された温度スイング吸着式の第2の吸着塔と、第2の吸着塔から回収した第2の再生ガスに含まれる水素を、酸素除去部に供給する水素ガス循環経路と、を備える構成となっている。そのため、水素ガスの使用量を抑えつつ、ヘリウムガスを効率的に精製することが可能である。
【0014】
また、本発明のヘリウムガス精製方法は、空気成分を含むヘリウムガスから、酸素を水素と反応させて酸素を除去する酸素除去工程と、酸素除去工程後のガス中に含まれる窒素と水分を、窒素吸着剤と水分吸着剤により吸着除去する窒素および水分除去工程と、窒素および水分除去工程後のガス中に含まれる水素を、水素吸着剤により吸着除去する水素除去工程と、含み、水素吸着剤を再生する際に水素を回収し、酸素除去工程で用いる構成となっている。そのため、水素ガスの使用量を抑えつつ、ヘリウムガスを効率的に精製することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明を適用した一実施形態であるヘリウムガス精製装置の構成を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した一実施形態であるヘリウムガス精製装置およびヘリウムガス精製方法について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0017】
<ヘリウムガス精製装置>
先ず、本発明を適用した一実施形態のヘリウムガス精製装置について説明する。図1は、本発明を適用した一実施形態であるヘリウムガス精製装置の構成を示す系統図である。図1に示すように、本実施形態のヘリウムガス精製装置1は、ヘリウムガス流通経路L1と、混合部2と、水素ガス供給経路L2と、酸素除去部3と、熱交換部4と、PSA方式による窒素および水分除去部5と、排気経路L3と、TSA方式による水素除去部6と、水素ガス循環経路L4と、を備えて概略構成されている。本実施形態のヘリウムガス精製装置1は、PSA法およびTSA法を組み合わせることにより、ヘリウムガス中の空気成分(酸素および窒素)を除去するための装置である。
【0018】
ヘリウムガス流通経路L1は、精製前のヘリウムガス(以下、「原料ガス」と記載することがある)を一端から導入し、精製後のヘリウムガス(以下、「製品ガス」と記載することがある)を他端へ導出するための経路である。なお、原料ガスは主にヘリウムガスを含み、不純物として空気(酸素および窒素)を含む。
【0019】
水素ガス供給経路L2は、後述する混合部2を介してヘリウムガス流通経路L1と接続されている。水素ガス供給経路L2は外部から水素ガスが供給されている。水素ガス供給経路L2により、混合部2に水素ガスを供給することができる。
【0020】
混合部2は、ヘリウムガス流通経路L1に設けられ、3つの導入口と1つの導出口を有する。3つの導入口のうち一つはヘリウムガス流通経路L1と接続されており、原料ガスが供給されている。また、もう一つの導入口は水素ガス供給経路L2と接続されており、水素ガスが供給されている。残りの一つの導入口は後述する水素ガス循環経路L4と接続されており、後述する水素除去部6で回収したヘリウムと水素を含むガスが供給されている。混合部2において、原料ガスと水素ガス、または原料ガスとヘリウムと水素を含むガスを混合し、混合したガス(以下、「第1の混合ガス」と記載することがある)を混合部2の導出口から導出することができる。
【0021】
酸素除去部3は、ヘリウムガス流通経路L1の混合部2の二次側に設けられている。酸素除去部3は、耐熱性を備えた反応容器である。酸素除去部3の内部には、酸素を除去するための脱酸素触媒が充填されている。酸素除去部3により、第1の混合ガスに含まれる水素(H)と酸素(O)とを、脱酸素触媒を用いて下記式(1)の反応をさせることで水(HO)を生成する。これにより、第1の混合ガスに含まれる酸素を除去することができる。
2H + O → 2HO ・・・(1)
【0022】
上記反応後のガス(以下、「第2の混合ガス」と記載することがある)は、主にヘリウムガスを含み、不純物として窒素、水素、および水分を含む。なお、第2の混合ガスは上記反応に伴う反応熱により温度が高くなっている。
【0023】
脱酸素触媒としては、水素と酸素とを反応させて水を生成することができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、パラジウム(Pd)系触媒、白金(Pt)系触媒などが挙げられる。
【0024】
酸素除去部3により、第1の混合ガス中の酸素をほぼ完全に除去することで、後述する窒素および水分除去部5において窒素と水分のみを除去すればよくなるため、窒素および水分除去部5を小型化することができる。
【0025】
熱交換部4は、ヘリウムガス流通経路L1と排気経路L3とにわたって設けられている。熱交換部4により、ヘリウムガス流通経路L1を流通する第2の混合ガスが有する熱を回収し、排気経路L3を流通するガスに熱を伝えることで、排気経路L3中を流通するガスを昇温することができる。
【0026】
窒素および水分除去部5は、ヘリウムガス流通経路L1の熱交換部4の二次側に設けられている。窒素および水分除去部5は2基の吸着塔(第1の吸着塔)11A,11Bを備えて構成されている。窒素および水分除去部5は、PSA法により第2の混合ガスに含まれる窒素および水分を吸着除去することができる。
【0027】
吸着塔11A,11Bは、耐圧性を備えた筒状の反応容器である。容器の形状については、特に限定されるものではない。
吸着塔11A,11Bの内部には、窒素および水分を吸着するために吸着剤が充填されている。この吸着剤により、第2の混合ガス中に含まれる窒素および水分を除去することができる(精製処理)。除去後のガス(以下、「第3の混合ガス」と記載することがある)は、窒素および水分除去部5の二次側に供給される。第3の混合ガスは、主にヘリウムガスを含み、不純物として水素を含む。
【0028】
吸着塔11A,11Bに充填される吸着剤は、窒素および水分を吸着できるものであれば特に限定されない。具体的には、例えば、合成ゼオライト、活性アルミナ、シリカゲルなどが挙げられる。
【0029】
また、上述した吸着塔11A,11Bでは、窒素および水分の両方を吸着できる吸着剤が充填される例を挙げたが、これに限定されるものではない。例えば、吸着塔に窒素吸着剤と水分吸着剤の2種類の吸着剤が充填されていてもよい。
【0030】
吸着塔11A,11Bに充填された吸着剤は、窒素および水分を吸着することにより吸着能力が低下するが、低圧のガスを流すことで窒素および水分を脱離させ、吸着能力を再生することができる(再生処理)。
【0031】
具体的には、第3の混合ガスの一部を回収し、低圧に調整した後、吸着塔11A,11Bに流すことにより、吸着剤に吸着した窒素および水分を脱離させ、第3の混合ガスに脱離した窒素および水分が混合される。混合したガス(以下、「第1の再生ガス」と記載することがある)は排気経路L3を介して外部に排気される。
【0032】
窒素および水分除去部5では、上述した精製処理と、再生処理とを、吸着塔11Aおよび吸着塔11Bの間で交互に切り替えることにより、全体として窒素および水分を連続除去することができる。
【0033】
吸着塔11A,11Bの周壁部には、吸着塔の高さ方向に所定の間隔を空けて複数の圧力計(図示略)が設けられており、吸着塔11A,11Bの内部の圧力を計測することができる。
【0034】
排気経路L3は、一端が窒素および水分除去部5に接続され、熱交換部4および後述する加熱手段13A,13Bを経由して、他端が外部に接続されている。排気経路L3は、窒素および水分除去部5から供給された第1の再生ガスが流通している。熱交換部4により排気経路L3を流通する第1の再生ガスを昇温し、昇温した第1の再生ガスにより吸着塔12A,12Bを加熱することができる。
これにより、酸素除去部3で発生した反応熱を吸着剤の再生に用いることができるため、精製の際のエネルギーコストを抑えることができる。
【0035】
水素除去部6は、ヘリウムガス流通経路L1の窒素および水分除去部5の二次側に設けられている。水素除去部6は、2基の吸着塔(第2の吸着塔)12A,12Bと、加熱手段13A,13Bと、を備えて構成されている。水素除去部6により、TSA法により第3の混合ガスに含まれる水素を吸着除去することができる。
【0036】
吸着塔12A,12Bは、耐熱性及び耐圧性を備えた筒状の反応容器である。容器の形状については、特に限定されるものではない。
吸着塔12A,12Bの内部には、水素を吸着するために吸着剤が充填されている。この吸着剤により、第3の混合ガス中に含まれる水素を除去することができる(精製処理)。除去後のガス(以下、「製品ガス」と記載することがある)は、水素除去部6の二次側から外部に供給される。製品ガスは、主にヘリウムガスを含み、酸素、窒素、水素、水といった不純物が十分に除去されている。
【0037】
吸着塔12A,12Bに充填される吸着剤は、水素を吸着できるものであれば特に限定されない。具体的には、例えば、ジルコニウム(Zr)系またはチタン(Ti)系の合金などが挙げられる。
【0038】
吸着塔12A,12Bに充填された吸着剤は、水素を吸着することにより吸着能力が低下するが、加熱手段13A,13Bにより吸着塔12A,12Bを加熱することで水素を脱離させ、吸着能力を再生することができる(再生処理)。
【0039】
具体的には、製品ガスの一部を回収し、吸着塔12A,12Bに流す。次に、後述する加熱手段13A,13Bにより吸着塔12A,12Bを加熱することで、吸着剤を加熱し、吸着剤に吸着した水素を脱離することができる。脱離した水素は回収した製品ガスと混合される。その後、混合したガス(以下、「第2の再生ガス」と記載することがある)を水素ガス循環経路L4に供給する。
【0040】
また、吸着剤が水素を十分に吸着し、保持している場合は、前記製品ガスの一部の回収が不要となり、加熱手段13A,13Bのみで水素の脱離および水素ガス循環経路L4への供給が可能である。
【0041】
加熱手段13A,13Bは、吸着塔12A,12Bに設けられる。加熱手段13A,13Bは、排気経路L3の一部と接続しており、排気経路L3を流通する昇温された第1の再生ガスにより吸着塔12A,12Bを加熱することができる。
【0042】
水素除去部6では、上述した精製処理と、再生処理とを、吸着塔12Aおよび吸着塔12Bの間で交互に切り替えることにより、全体として水素を連続除去することができる。
【0043】
吸着塔12A,12Bの周壁部には、吸着塔の高さ方向に所定の間隔を空けて複数の温度計(図示略)が設けられており、吸着塔12A,12Bの内部の温度を計測することができる。
【0044】
水素ガス循環経路L4は、水素除去部6と混合部2との間に設けられている。水素ガス循環経路L4により、水素除去部6の再生中の吸着塔から導出される第2の再生ガスを、混合部2に供給することができる。第2の再生ガスは主にヘリウムガスと水素とを含むため、第2の再生ガスを混合部2に供給することにより、水素を再利用することができるとともに、ヘリウムロスを抑えることができる。さらに、製品ガスへの水素の混入を抑えることができる。
【0045】
<ヘリウムガス精製方法>
次に、上述したヘリウムガス精製装置1を用いた本実施形態のヘリウムガス精製方法について説明する。本実施形態のヘリウムガス精製方法は、ヘリウムガス中から酸素を除去する酸素除去工程と、酸素除去工程を経たガスから窒素および水分を除去する窒素および水分除去工程と、窒素および水分除去工程を経たガスから水素を除去する水素除去工程と、を含む。本実施形態のヘリウムガス精製方法により、ヘリウムガス中に含まれる酸素、窒素、水素、水といった不純物を除去することができる。
【0046】
(酸素除去工程)
酸素除去工程では、混合部2において原料ガスと水素ガス供給経路L2または水素ガス循環経路L4から供給される水素ガスとを混合し、第1の混合ガスを生成する。その後、生成した第1の混合ガスを酸素除去部3に供給する。
【0047】
次に、酸素除去部3において、第1の混合ガスに含まれる水素(H)と酸素(O)とを、脱酸素触媒を用いて上記式(1)の反応をさせることで水(HO)を生成する。これにより、第1の混合ガスに含まれる酸素を除去することができる。
【0048】
酸素を除去したガス(第2の混合ガス)は、窒素および水分除去部5に供給される。第2の混合ガスは反応熱により温度が高くなるが、熱交換部4を通過する際に、熱が排気経路L3を流通するガスに奪われるため、温度が下がる。
【0049】
(窒素および水分除去工程)
窒素および水分除去工程では、窒素および水分除去部5により、第2の混合ガスに含まれる窒素および水分を除去し、除去後のガス(第3のガス)を水素除去部6に供給する。ここでは、吸着塔11Aで精製処理を行い、吸着塔11Bで再生処理を行う例について説明する。
【0050】
精製処理では、先ず、吸着塔11Aに第2の混合ガスを供給する。次に、吸着塔11Aに充填された吸着剤を用いて第2の混合ガスに含まれる窒素と水分とを吸着除去し、第3のガスを生成する。その後、第3のガスを水素除去部6に供給する。
【0051】
一方、再生処理では、先ず、第3の混合ガスの一部を回収し、低圧に調整した後、吸着塔11Bに供給する。次に、低圧に調整した第3の混合ガスにより、吸着剤に吸着した窒素および水分を脱離させ、第3の混合ガスと脱離した窒素および水分とを混合する。その後、混合したガスを第1の再生ガスとして排気経路L3に供給する。第1の再生ガスは、熱交換部4により、酸素除去工程により生成した第1の混合ガスから熱を奪うことで、昇温される。
【0052】
(水素除去工程)
水素除去工程では、水素除去部6により、第3の混合ガスに含まれる水素を除去し、除去後のガス(製品ガス)を外部に供給する。ここでは、吸着塔12Aで精製処理を行い、吸着塔12Bで再生処理を行う例について説明する。
【0053】
精製処理では、先ず、吸着塔12Aに第3の混合ガスを供給する。次に、吸着塔12Aに充填された吸着剤を用いて第3の混合ガスに含まれる水素を吸着除去し、製品ガスを生成する。その後、製品ガスを外部に供給する。
【0054】
一方、再生処理では、先ず、製品ガスの一部を回収し、吸着塔12Bに供給する。次に、加熱手段13Bにより吸着塔12Bを加熱することにより、吸着剤に吸着した水素を脱離させ、回収した製品ガスと脱離した水素とを混合する。次に、混合したガスを第2の再生ガスとして水素ガス循環経路L4を介して第2の再生ガスを混合部2に供給する。
なお、加熱手段13Bは、排気経路L3の一部と接続しており、排気経路L3を流通する第1の再生ガスにより、吸着塔12Bを加熱する。
【0055】
以上説明したように、本実施形態のヘリウムガス精製装置1によれば、ヘリウムガスが流通するヘリウムガス流通経路L1と、ヘリウムガス流通経路L1に設けられ、ヘリウムガス中の酸素を水素と反応させて酸素を除去する酸素除去部3と、酸素除去部3に水素を供給する水素ガス供給経路L2と、ヘリウムガス流通経路L1の酸素除去部3の二次側に設けられ、窒素および水分を吸着する吸着剤が充填された圧力スイング吸着式の第1の吸着塔11A,11Bと、ヘリウムガス流通経路L1の第1の吸着塔11A,11Bの二次側に設けられ、水素吸着剤が充填された温度スイング吸着式の第2の吸着塔12A,12Bと、第2の吸着塔12A,12Bから回収した第2の再生ガスに含まれる水素を、酸素除去部3に供給する水素ガス循環経路L4と、を備える構成となっている。そのため、水素ガスの使用量を抑えつつ、ヘリウムガスを効率的に精製することが可能である。
【0056】
また、本実施形態のヘリウムガス精製装置1によれば、第1の吸着塔11A,11Bから排出される第1の再生ガスを外部に排気する排気経路L3と、酸素除去部3と第1の吸着塔11A,11Bとの間のヘリウムガス流通経路L1に設けられた熱交換部4と、をさらに備え、排気経路L3が、熱交換部4を経た後に、第2の吸着塔12A,12Bに近接するように設けられる構成となっている。これにより、酸素除去部3で発生した反応熱を吸着剤の再生に用いることができるため、精製の際のエネルギーコストを抑えることができる。
【0057】
また、本実施形態のヘリウムガス精製方法によれば、空気成分を含むヘリウムガスから、酸素を水素と反応させて酸素を除去する酸素除去工程と、酸素除去工程後のガス中に含まれる窒素と水分を、窒素および水分を吸着する吸着剤により吸着除去する窒素および水分除去工程と、窒素および水分除去工程後のガス中に含まれる水素を、水素吸着剤により吸着除去する水素除去工程と、含み、水素吸着剤を再生する際に水素を回収し、酸素除去工程で用いる構成となっている。そのため、水素ガスの使用量を抑えつつ、ヘリウムガスを効率的に精製することが可能である。
【0058】
また、本実施形態のヘリウムガス精製方法によれば、酸素除去工程で生成した熱を用いて、窒素および水分除去工程で吸着剤を再生した際に生成した再生ガスを加熱し、水素除去工程において当該再生ガスを用いて水素吸着剤を加熱する構成となっている。これにより、酸素除去工程で発生した反応熱を吸着剤の再生に用いることができるため、精製の際のエネルギーコストを抑えることができる。
【0059】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。例えば、上述したヘリウムガス精製装置1では、ヘリウムガス流通経路L1を流通する第2の混合ガスが、熱交換部4を通過した後に、そのまま窒素および水分除去部5に供給される例について説明したが、これに限られるものではない。例えば、熱交換部4と窒素および水分除去部5との間のヘリウムガス流通経路L1に、ガスを冷却するための冷却部を設けてもよい。これにより、原料ガス中の酸素濃度が高濃度の場合に、酸素除去部3から排出されるガス温度が高温となっても、熱交換後の原料ガスを冷却することで、窒素および水分除去部5での窒素および水分の除去率を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のヘリウムガス精製装置およびヘリウムガス精製方法を用いることで、例えば、大気圧プラズマ処理、光ファイバーやガラス製造などの製造工程で用いられるヘリウムガスを精製し、再利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1…ヘリウムガス精製装置
2…混合部
3…酸素除去部
4…熱交換部
5…窒素および水分除去部
6…水素除去部
11A,11B…吸着塔(第1の吸着塔)
12A,12B…吸着塔(第2の吸着塔)
13A,13B…加熱手段
L1…ヘリウムガス流通経路
L2…水素ガス供給経路
L3…排気経路
L4…水素ガス循環経路
図1