(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、ホーンの本来の機能とは直接には関係のない遮蔽部を設ける必要があるので、ホーンの重量やコストが増加してしまうという問題があった。さらには、ホーンからの警報音(警笛音,吹鳴音)を完全に遮蔽してしまうことを防止するために、ホーンと遮蔽部との間に所定の間隔を設けることが必要となり、ホーンの取り付けスペースが増大してしまうという問題もあった。
【0006】
また、一般的なホーン装置は、警笛音を出力するホーンと、ステアリングに配置されるホーンボタンと、ホーンボタンのON/OFFに連動して接点回路が開閉され、ホーンへの駆動電力の供給をON/OFF制御するリレーと、リレーとホーンとを電気的に接続するワイヤーハーネスとから構成されている。
【0007】
特に、ホーン(セキュリティホーンを含む)はエンジンルーム内やバンパー取り付け部等の車両前部に取り付けされている。このために、盗人がボンネットやフロントグリルの隙間、さらにはこじ開け等によって形成した隙間から工具等を挿入し、ホーンに駆動電力を供給するワイヤーハーネスを切断できてしまうという問題があった。このワイヤーハーネスの切断により、ホーンには駆動電力が供給されないこととなるので、盗難防止装置の効力が実質的に無効化されてしまうという問題があった。また、特許文献1に記載の構成においても、メインユニットとセキュリティホーンとはワイヤーハーネスで接続される構成となっているので、ホーン装置を盗難防止装置の発音装置として用いた場合と同様の問題が生じることが懸念されている。
【0008】
一方、一般的な車両においては、キー(エンジンキー)を用いてドアのロック(施錠)及びアンロック(解錠)を行う他に、電子キーや車両内のドアロックスイッチ等の遠隔操作によって、ドアロック(施錠)及びアンロック(解錠)が可能となっている。このような遠隔操作によるドアロック及びアンロックが可能な車両では、各ドア内にそれぞれドアロックモータ(ドアロック用アクチュエータ)が搭載されており、コントローラからワイヤーハーネスを介して、各ドアロックモータに駆動電力(駆動信号)を供給する構成となっている。しかしながら、このような構成のドアロック機構では、盗人がドアの渡り部でワイヤーハーネスを切断し、この切断したドア側のワイヤーハーネスからドアロックモータに駆動電力を供給してドアロックモータを作動させることによって、ドアを解錠してしまうことが懸念されている。
【0009】
本発明はこれらの問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、負荷駆動回路からの駆動電力を負荷回路に伝送するワイヤーハーネスの断線検知性能を向上させ、盗難防止性能を向上させることが可能な断線検知装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、アクチュエータ又はホーン等の低抵抗の負荷回路と、
前記負荷回路を駆動する駆動電力の供給を制御する負荷駆動回路と、
一端が前記負荷駆動回路に接続されると共に他端が前記負荷回路に接続され、前記負荷駆動回路からの前記駆動電力を前記負荷回路へ供給する第1のワイヤーハーネスとを備える車載装置における前記第1のワイヤーハーネスの断線検知装置であって、
前記第1のワイヤーハーネスと共に配策される第2のワイヤーハーネスと、
前記第2のワイヤーハーネスに断線検知用の電流を供給すると共に前記負荷回路を介してアースされる電流回路と、
前記電流回路の出力電圧を監視して前記第2のワイヤーハーネスの断線の有無を判定する断線判定回路とを備え、
前記断線判定回路の断線判定に基づいて、前記第2のワイヤーハーネスの断線を前記第1のワイヤーハーネスの断線として警報する
ものであり、
さらに、当該断線検知装置は、前記負荷回路が警笛音を出力する少なくとも2つのホーンからなり、
前記負荷駆動回路は前記2つのホーンへ駆動電力を供給する第1のスイッチからなり、
前記断線判定回路は、前記電流回路の出力電圧を監視して前記第2のワイヤーハーネスの断線の有無を判定し、前記第2のワイヤーハーネスの断線を検知した場合に、前記第1のスイッチをONさせ、前記第1のワイヤーハーネスに駆動電力を供給させ、
断線していない側の前記第1のワイヤーハーネスに接続される側の前記ホーンに駆動電力を供給し、前記断線していない側のホーンを警報装置として、前記ホーンから警笛音を出力させることを特徴とする断線検知装置である。
【0012】
前記課題を解決するための請求項
2に記載の発明は、前記第1のワイヤーハーネスは分岐点において分岐され、前記2つのホーンのそれぞれに接続され、前記第1のスイッチに対して前記2つのホーンが並列接続されており、
前記第2のワイヤーハーネスは、前記分岐点よりも前記第1のスイッチ側から前記第1のワイヤーハーネスに沿って配策され、前記分岐点を通過して、前記2つのホーンの内の一方の側のホーンに達した後に、前記一方のホーンに接続されることなく折り返され、前記分岐点まで配策された後に、前記2つのホーンの内の他方の側のホーンに到達するようにして配策されることを特徴とする請求項
1に記載の断線検知装置である。
【0013】
前記課題を解決するための請求項
3に記載の発明は、前記第2のワイヤーハーネスは、一端が前記電流回路及び前記断線判定回路に接続され、他端が前記2つのホーンの内で、一方のホーンを経由して他方のホーンに至る一本のワイヤーハーネスからなることを特徴とする請求項
2に記載の断線検知装置である。
【0014】
前記課題を解決するための請求項
4に記載の発明は、前記第2のワイヤーハーネスは、他端が前記他方のホーンと前記第1のワイヤーハーネスとの接続位置において前記第1のワイヤーハーネスに接続される、又は前記他方のホーンの近傍においてグランドに接続され、
前記断線判定回路が前記第2のワイヤーハーネスを断線と判定する基準電圧は、前記電流回路の電源電圧と前記グランド電圧(0(ゼロ)V)との間の電圧レベルに設定されていることを特徴とする請求項
1乃至
3の内の何れかに記載の断線検知装置である。
【0015】
前記課題を解決するための請求項
5に記載の発明は、前記第1のスイッチは、ホーンボタンの操作に対応してON/OFFされるホーンスイッチと、
接点回路の一方が電源に接続されると共に、他方が前記第1のワイヤーハーネスに接続され、前記ホーンスイッチのON/OFFに対応して当該接点回路がON/OFFされるリレーとからなることを特徴とする請求項
1乃至
4の内の何れかに記載の断線検知装置である。
【0016】
前記課題を解決するための請求項
6に記載の発明は、前記電流回路から供給する前記断線検知用の電流の供給と停止とを交互に行わせる断線検知用の電流の供給制御回路を備えることを特徴とする請求項
1乃至
5の内の何れかに記載の断線検知装置である。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように請求項1〜
5に記載の本発明によれば、第1のワイヤーハーネスに沿って第2のワイヤーハーネスを配置し、この第2のワイヤーハーネスに電流回路から断線検知用の電流を流して第2のワイヤーハーネスの断線(切断)を監視し、第2のワイヤーハーネスの断線を第1のワイヤーハーネスの断線(切断)として検出する構成となっている。従って、負荷回路の内部抵抗が低抵抗の場合であっても、断線検知の電圧範囲を広くすることができるので、第1のワイヤーハーネスの断線検知性能を向上することができ、その結果、盗難防止性能を向上させることが可能な断線検知装置を提供することである。
【0018】
特に、警笛音を出力する少なくとも2つホーンを負荷回路として備えるホーン装置に本願発明を適用した場合、断線判定回路が第2のワイヤーハーネスの断線を検知した場合に、第1のスイッチをONさせ、第1のワイヤーハーネスに駆動電力を供給させることによって、断線していない側の第1のワイヤーハーネスに接続される側のホーンに駆動電力を供給し、断線していない側のホーンを警報装置として、ホーンから警笛音を出力させる構成とすることができるので、ホーン装置における盗難防止性能を向上できる。
【0019】
このとき、第1のワイヤーハーネスは分岐点において分岐され、2つのホーンのそれぞれに接続され、第1のスイッチに対して2つのホーンが並列接続されるホーン装置においては、第2のワイヤーハーネスが分岐点よりも第1のスイッチ側から第1のワイヤーハーネスに沿って配策され、分岐点を通過して、2つのホーンの内の一方の側のホーンに達した後に、一方のホーンに接続されることなく折り返され、分岐点まで配策された後に、他方の側のホーンに到達するようにして配策される構成とすることにより、断線検知装置を簡易な回路構成で実現することができる。
【0020】
また、電流回路から供給する断線検知用の定電流の供給と停止とを交互に行わせる電流の供給制御回路を設けることによって、断続的(間欠的)に電流が出力されるので、断線検知装置での消費電力を大幅に低減できる。このとき、断線検知用の信号を供給する供給期間よりも断線検知用の信号を停止する停止期間が長くなるように、供給期間と停止期間とを制御することによって、電流の出力期間をさらに少なくすることができるので、断線検知装置での消費電力をさらに低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明は省略する。
【0023】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1の断線検知装置を備えるホーン装置の概略構成を説明するための図であり、以下、
図1に基づいて、実施形態1の断線検知装置及びそれを備えるホーン装置について説明する。ただし、実施形態1の断線検知装置を備えるホーン装置は、断線検知ユニット12と断線検知用ワイヤーハーネス16からなる断線検知装置を除く他の構成は従来のホーン装置と同様の構成となるので、以下の説明では断線検知装置について詳細に説明する。また、
図1に示すホーン装置は、図示しない車両本体にバッテリーのマイナス端子すなわちアース(GND)が接続される、いわゆるボディアースの場合について説明する。さらには、以下の説明では、バッテリーのプラス端子に接続する場合は、単に、「電源に接続」と略記する。バッテリーのプラス端子に接続する際、ワイヤーハーネス7及びヒューズ8を介してバッテリーのプラス端子に接続されていても「電源に接続」と略記する。
【0024】
図1に示すように、実施形態1の断線検知装置を備えるホーン装置は周知のリレー(ホーンリレー,負荷駆動回路)1を構成するコイル2の一方の端子は、ワイヤーハーネス5を介して電源(図示しないバッテリーのプラス端子であり、図中にBATTERYと記す)に接続されている。また、コイル2の他方の端子はワイヤーハーネス6を介して周知のホーンSW(ホーンスイッチ)4に接続されている。これにより、ハンドルに配置されるホーンボタンの操作に対応したホーンSW(ホーンスイッチ)4のON/OFFによって、リレー1のON/OFFすなわち接点回路3のON/OFFが制御される構成となっている。
【0025】
一方、リレー1を形成する接点回路3においては、一方の端子はワイヤーハーネス5を介して電源に接続され、他方の端子はワイヤーハーネス(第1のワイヤーハーネス)9,9a,9bを介して、2つのホーン(負荷回路)10,11にそれぞれ接続されている。このとき、実施形態1のホーン装置においては、ワイヤーハーネス9は図中に示す点(分岐位置)Bにおいて2つのワイヤーハーネス9a,9bに分岐される構成となっており、ワイヤーハーネス9aの側にホーン10が接続され、ワイヤーハーネス9bの側にホーン11が接続されている。なお、2つのホーン10,11の内で、一方のホーン10は高音域側の警笛音(吹鳴音)を出力するホーンであり、他方のホーン11は低音域側の警笛音(吹鳴音)を出力するホーンである。また、2つのホーン10,11は同じ警笛音(吹鳴音)を出力する2つホーンを用いる構成であってもよく、さらには、3つ以上のホーンからなる構成であってもよい。
【0026】
ただし、ホーンSW4は車室内に、ヒューズ8やリレー1はエンジンルーム内に設置されるリレーブロックの中にそれぞれ配置され、2つのホーン10,11及び分岐されたワイヤーハーネス9a,9bはエンジンルーム内の前方に配置されることが一般的である。このために、エンジンルーム内に配置される分岐後のワイヤーハーネス9a,9bが分岐前のワイヤーハーネス9よりも切断されやすい。すなわち、
図1中に示す×印の位置でワイヤーハーネス9a,9bが切断されしまう可能性が高いので、後述する本願発明の断線検知ユニット12は車室内やエンジンルーム内のリレーブロックの中など盗人からの攻撃を受けにくい位置に配置されることが好ましい。
【0027】
さらには、後述するように、実施形態1の断線検知装置においては、まず、ホーン装置を構成する2つのホーンにそれぞれ接続されるワイヤーハーネス9a,9bに沿って配置される断線検知用ワイヤーハーネス(第2のワイヤーハーネス)16の切断を検知する。次に、この断線の検知により、ワイヤーハーネス9a,9bの内の少なくとも何れか一方のワイヤーハーネスが切断されたものと判定する。次に、この判定結果により、切断されていない側のワイヤーハーネスを介してホーンを駆動させて警笛音を出力させる構成となっているので、2つのホーン10,11は離間されて配置される構成が好ましい。さらには、各ホーンに接続されるワイヤーハーネス9a,9bもそれぞれ離間して配策されることが好ましい。
【0028】
一方、実施形態1の断線検知装置は、電流回路13及び断線判定回路14並びに基準電源15からなる断線検知ユニット12と、ワイヤーハーネス9,9a,9bに沿って配置される断線検知用ワイヤーハーネス16とから構成される断線検知装置を備える構成となっている。このとき、実施形態1の断線検知ユニット12においては、ワイヤーハーネス5を介して電源が入力され、断線検知ユニット12内において当該断線検知ユニット12を構成する電流回路13及び基準電源15に電源電圧が供給される構成となっている。
【0029】
電流回路13は、入力される電源に接続されてプルアップ用の素子として機能する抵抗(抵抗素子)17を備えており、また、この抵抗17は断線検知用ワイヤーハーネス16に出力する電流量を制限する素子として機能する構成となっている。また、電流回路13は、断線検知用ワイヤーハーネス16を介した断線検知ユニット12内への電流の流入を防止するダイオード18をも備え、該ダイオード18のアノード(陽極)が抵抗17に接続され、カソード(陰極)が断線検知用ワイヤーハーネス16に接続される構成となっている。このとき、断線検知装置は車両が停止されている場合に動作することとなるので、その消費電力は非常に小さくする必要がある。よって、実施形態1の電流回路13においては、抵抗値の大きい抵抗17を用いることにより、断線検知用ワイヤーハーネス16に印加する断線検出のための電流量を低減させる構成となっている。また、抵抗17を大きい抵抗値とすることにより、電流回路13から供給する断線検出用の電流(電流Iset)によって負荷であるホーン10,11が動作してしまうことを防止している。
【0030】
なお、電流回路13から見た場合の負荷回路であるホーン10,11には、断線検知ユニット12と同様に電源からの電圧が印加される構成となるので、ダイオード18を用いない構成すなわち抵抗17のみで電流回路13を形成する構成とすることも可能である。また、実施形態1の電流回路13では、抵抗17に電源から電圧が直接に印加される構成であるが、この構成に限定されることはなく、例えば、周知の定電圧源を設け、その出力電圧を抵抗17に供給する構成等の他の電圧を印加する構成であってもよい。ただし、電源とは異なる電圧を印可する場合等のように、負荷回路となるホーン10,11に印加される電圧よりも低い電圧が断線検知用ワイヤーハーネス16に印加される場合や、ノイズ等の問題がある場合には、ダイオード18を設ける必要がある。
【0031】
前述の構成により、実施形態1の電流回路13は、後に詳述するように、抵抗17の抵抗値の選択によって、断線検知用ワイヤーハーネス16に供給する電流量を制御することを可能とすると共に、所望の断線検知機能を実現可能としている。さらには、電流回路13は、図中に矢印で示すように、断線検知用ワイヤーハーネス16に電流(断線検出用の電流)Isetを供給し、この電流Isetが断線検知用ワイヤーハーネス16の端部に接続されるホーン11を介してアース(GND)に流れる構成となる。このとき、ホーン11の内部抵抗は図示しないソレノイド(コイル)の抵抗すなわち低抵抗となるので、電流Isetは抵抗17の抵抗値によってほぼ決まる電流量となり、非常に少ない電流量とすることができる。ただし、実施形態1の構成では、ホーン11の図示しないソレノイド(コイル)を介してGNDに電流Isetが流れる構成となっているので、ホーン11のソレノイドの断線も検知することが可能となり、ホーン装置の信頼性も向上させることができるという格別の効果を得ることもできる。ただし、電流回路13の構成は、
図1に示す構成に限定されることはなく、例えば、周知の定電流回路等の他の回路構成であってもよい。
【0032】
断線判定回路14は、例えば、周知のオペアンプを用いてコンパレータ19を形成する構成となっており、該コンパレータ19の非反転入力端子(図中「+」の端子)には、抵抗17の電源に接続されない側とダイオード18のアノード側とが接続される構成となっている。すなわち、断線検知用ワイヤーハーネス16の電圧にダイオード18の順方向電圧降下分を加算した電圧が、コンパレータ19の非反転入力端子に入力される構成となっている。一方、コンパレータ19の反転入力端子(図中「−」の端子)には、バッテリーから入力される電圧から所定の基準電圧を生成する基準電源15の出力電圧(基準電圧)Vrefが入力されている。
【0033】
さらには、コンパレータ19の出力端子には、n型MOSトランジスタ20のゲート端子が接続されている。このとき、n型MOSトランジスタ20のドレイン端子はワイヤーハーネス6と接続されており、ソース端子はアース(GND)に接続されている。すなわち、コンパレータ19の出力に応じてON/OFF制御されるn型MOSトランジスタ20がホーンSW4と並列に接続される構成となっている。
【0034】
この構成により、実施形態1の断線判定回路14においては、断線検知用ワイヤーハーネス16の断線検知ユニット12の側の電圧と基準電圧Vrefとの比較に基づいて、ホーンSW4とは独立して、リレー1の接点回路3をON/OFF制御する構成となっている。その結果、リレー1の接点回路3からワイヤーハーネス9,9a,9b等を介して、バッテリーからの駆動電力が2つのホーン10,11に供給可能な構成としている。
【0035】
断線検知用ワイヤーハーネス16は、一端がダイオード18のカソード(電流回路13の出力)すなわち断線検知ユニット12の出力に電気的に接続される構成となっている。また、断線検知用ワイヤーハーネス16の他端は、ホーン11に電力を供給するワイヤーハーネス9bのホーン11側の端部すなわち負荷回路の上流側に電気的に接続される構成となっている。このとき、断線検知ユニット12側の断線検知用ワイヤーハーネス16は、図中に点線で示す領域Aから先の部分すなわちホーン10,11側においてワイヤーハーネス9に沿って配置される構成となっている。特に、実施形態1の断線検知用ワイヤーハーネス16においては、ワイヤーハーネス9の分岐位置Bにおいて、まず、ワイヤーハーネス9aに沿ってホーン10にまで配置される。ここで、断線検知用ワイヤーハーネス16はワイヤーハーネス9aやホーン10に電気的に接続されることなく、ホーン10で折り返され、再度ワイヤーハーネス9aに沿って分岐位置Bまで配置され、この後に、ワイヤーハーネス9bに沿ってホーン11にまで配置され、その端部がワイヤーハーネス9bのホーン11側の端部に電気的に接続される構成となっている。なお、2つのホーン10,11の内で、ホーン11の側に断線検知用ワイヤーハーネス16が接続される構成に限定されることはない。例えば、ホーン11の側で断線検知用ワイヤーハーネス16が折り返されて配置され、ホーン10の側において断線検知用ワイヤーハーネス16がワイヤーハーネス9aに電気的に接続される構成であってもよい。また、2つのホーン10,11の内の一方のホーンの側では断線検知用ワイヤーハーネス16が折り返されて配置され、他方のホーン側では断線検知用ワイヤーハーネス16がアース(GND)に直接に電気的に接続される構成であってもよい。なお、この構成では、後述する実施形態3と同様に、基準電圧Vrefの設定範囲を広くすることができる。
【0036】
また、実施形態1の断線検知用ワイヤーハーネス16には少ない電流が供給されることとなるので、外径(線径)の細い電線を用いて断線検知用ワイヤーハーネス16を形成することも可能である。この場合、ワイヤーハーネス9aに沿って配置される部分のように、ホーン10に向かう部分とホーン10で折り返されてホーン11に向かう部分との2本分の断線検知用ワイヤーハーネス16が1本のワイヤーハーネス9aに沿って配置される場合であっても、ワイヤーハーネス全体の柔軟性を有した構成とすることができる。その結果、ワイヤーハーネス9aに沿って2本分(往復分)の断線検知用ワイヤーハーネス16が配置された場合であっても、その配策に要する負担の増加を最小限に抑えることができる。
【0037】
さらには、ワイヤーハーネス9,9a,9bに沿って断線検知用ワイヤーハーネス16を配置する構成としては、例えば、盗人によって切断されることが想定されるすなわち断線検知の対象であるワイヤーハーネス9,9a,9bと共にテープ巻きした構成すなわち見かけ上においては1本のワイヤーハーネスとされる構成が好ましい。さらに好適には、断線検知対象であるワイヤーハーネス9,9a,9bとなる導体と、ワイヤーハーネス16となる導体とが同一の絶縁被覆内にそれぞれ配置される電線を用いる構成がよい。
【0038】
次に、基準電源15から出力される基準電圧Vrefについて説明する。
図1から明らかなように、断線検知用ワイヤーハーネス16は2つのホーン10,11に接続されるワイヤーハーネス9,9a,9bに沿って配置されるので、電流回路13から出力される定電流Isetは図中の矢印方向に断線検知用ワイヤーハーネス16を介して流れる構成となる。特に、実施形態1の構成では、断線検知用ワイヤーハーネス16の一端側には電流回路13を形成する抵抗17及びダイオード18に接続され、他端側にはホーン11が接続されることとなる。
【0039】
ここで、通常時すなわち断線検知用ワイヤーハーネス16及びワイヤーハーネス9,9a,9bが切断されていない場合であり、かつ、ホーンSW4がOFFであり、断線判定回路14のn型MOSトランジスタ20がOFFである場合においては、ホーンリレー1の接点回路3はOFFである。さらには、実施形態1の構成においては、ワイヤーハーネス9bはワイヤーハーネス9aと接続されているので、断線検知用ワイヤーハーネス16の他端(ホーン11側の端部)からみた場合、2つのホーン10,11は並列接続の関係となる。
【0040】
従って、通常時における断線判定回路14への入力電圧V1は、ホーン10の内部抵抗をRhigh、ホーン11の内部抵抗をRlowとした場合、通常時電圧V1はV1=Iset×Rhigh×Rlow/(Rhigh+Rlow)となる。ここで、電源の電圧すなわちバッテリー電圧をVB、抵抗17の抵抗値をRpullupとした場合、ダイオード18の順方向電圧による電圧降下及び断線検知用ワイヤーハーネス16の配線抵抗に伴う電圧降下は非常に小さな電圧となるので、無視することが可能となる。よって、Iset=VB/(Rpullup+(Rhigh×Rlow/(Rhigh+Rlow))となる。従って、V1=VB/(Rpullup+(Rhigh×Rlow/(Rhigh+Rlow))×Rhigh×Rlow/(Rhigh+Rlow)となる。
【0041】
一方、図中に×印で示す位置の何れか一方の位置すなわちワイヤーハーネス9a,9bの何れか一方のワイヤーハーネスが切断された場合、本願発明の構成ではワイヤーハーネス9a,9bに沿って断線検知用ワイヤーハーネス16が配置されているので、断線検知用ワイヤーハーネス16も一緒に断線されることとなる。その結果、断線時の断線判定回路14への入力電圧をV2とした場合、電圧VBは抵抗17を介して電源から供給される電源の電圧VBとなるので、V2=VBとなる。
【0042】
よって、基準電源15から出力される電圧(基準電圧)Vrefを電圧V2から電圧V1の間の電圧、すなわちV2>Vref>V1を満たす構成とすることによって、断線検知用ワイヤーハーネス16を介してワイヤーハーネス9a,9bの断線を検知することが可能となる。
【0043】
従って、実施形態1のホーン断線検知回路12においては、電圧V1と電圧V2との間の電圧を基準電圧Vrefとしている。この構成とすることにより、電流回路13の回路構成を簡易な回路構成とすることができると共に、内部抵抗が比較的に低抵抗であるホーン10,11に接続されるワイヤーハーネス9a,9bの断線であっても、その断線(切断)を確実かつ容易に検出することができる。
【0044】
次に、
図2に本発明の実施形態1のホーン制御装置での断線検出動作を説明するための図を示し、以下、
図2に基づいて、
図1に示す断線検知ユニット12における断線検知動作及びホーン装置の動作について説明する。ただし、
図2はワイヤーハーネス9aが時刻t1に、
図1に示す2つの×印の内でワイヤーハーネス9aと重畳する×印の位置で、ワイヤーハーネス9aが切断された場合の電圧Voutを示す図である。なお、
図1に示す2つの×印の内で、ワイヤーハーネス9bと重畳する×印の位置でワイヤーハーネス9bが切断された場合もワイヤーハーネス9aが切断された場合と同じ検出動作となるので、その詳細な説明については省略する。
【0045】
図2に示すワイヤーハーネス9a、9b(断線検知用ワイヤーハーネス16を含む)の何れもが切断されていない期間(時刻t0〜t1)においては、リレー1の接点回路3はOFFとなっている。従って、電流回路13からワイヤーハーネス16を介してホーン11の入力端子に供給される定電流Isetは、ホーン11と当該ホーン11とワイヤーハーネス9bを介して電気的に接続されるホーン10とを介してアース(GND)に流れることとなる。よって、電流回路13を構成する抵抗17とダイオード18と間の電圧VoutはV1となり、コンパレータ19の非反転入力端子に入力される電圧もV1となる。従って、n型MOSトランジスタ20はOFF状態を維持することとなる。その結果、リレー1の接点回路3もOFF状態が維持されることとなり、電流回路13の出力電圧すなわち断線検知用ワイヤーハーネス16における電圧も電圧V1となる。
【0046】
ここで、
図2に示す時刻t1において、高音域側のホーン10に接続されるワイヤーハーネス9aが断線(切断)された場合、本発明の構成においてはワイヤーハーネス9aに沿って断線検知用ワイヤーハーネス16が配置される構成となるので、断線検知用ワイヤーハーネス16も断線(切断)されることとなる。なお、実施形態1の構成においては、断線検知用ワイヤーハーネス16は折り返し前と折り返し後の断線検知用ワイヤーハーネス16がワイヤーハーネス9aに沿って配置されるので、折り返し前と折り返し後の断線検知用ワイヤーハーネス16の両方又はその何れか一方の断線(切断)であってもよい。
【0047】
その結果、電流Isetが流れる電流経路が遮断されることとなるので、電流回路13の抵抗17とダイオード18と間の電圧VoutはV2となり、コンパレータ19の反転入力端子に入力される基準電圧Vrefよりも高い電圧V2が非反転入力端子に入力され、この電圧V2の入力が維持されることとなる。この電圧V2の入力により、コンパレータ19の出力がハイ(コンパレータ19の電源電圧)となりn型MOSトランジスタ20がON状態となるので、リレー1のコイル2には電流が流れて接点回路3がONされ、接点回路3のONが維持されることとなる。このリレー1のONによって、切断されていないワイヤーハーネス9,9bを介して、低音域側のホーン11に駆動電力が供給され、ホーン11の警笛音が出力される。ただし、ワイヤーハーネス9bが切断された場合には、リレー1のONによって、切断されていないワイヤーハーネス9,9aを介して、高音域側のホーン10に駆動電力が供給され、ホーン10の警笛音が出力される。なお、n型MOSトランジスタ20の出力を制御する図示しない制御手段を設け、この制御手段によってn型MOSトランジスタ22の出力を制御し、警笛音が断続して出力されるような構成としてもよい。
【0048】
以上説明したように、実施形態1のホーン装置においては、2つのホーン10,11に駆動電力を供給するワイヤーハーネス9a,9bへの分岐位置よりもリレー1に近い領域A(ホーン10,11から大きく離間した領域)からワイヤーハーネス9,9a,9bに沿って断線検知用ワイヤーハーネス16を配置し、該断線検知用ワイヤーハーネス16に電流回路13から電流Isetを供給すると共に、断線判定回路14が電流回路13の出力電圧を監視することにより、断線検知用ワイヤーハーネス16からホーン10,11を介してアース(GND)に至る電流経路の断線を監視し、該断線検知用ワイヤーハーネス16が沿って配置されるワイヤーハーネス9,9a,9bの断線(切断)を監視する構成となっている。さらには、断線判定回路14が電流経路の断線を検出した場合に、断線判定回路14がホーン装置のスイッチ(リレー)を制御して、ワイヤーハーネス9,9a,9bを介してホーン10,11を駆動する駆動電流を供給する構成となっている。従って、断線(切断)の生じていない側のワイヤーハーネスを介して、2つのホーン10,11の内の一方のホーンを駆動できる。すなわち、ホーン装置のワイヤーハーネス9a,9bを切断してホーン装置を無効化しようとした場合であっても、警報音として一方のホーンの警笛音を出力させることができる。その結果、盗人への警告と共に、近隣への告知(認知)ができるので、本願発明の断線検知装置を備えるホーン装置及びホーン装置を盗難防止装置の警報装置とする盗難防止装置における盗難防止性能を向上できる。
【0049】
特に、実施形態1の断線検知装置を備えるホーン装置においては、従来の盗難防止装置とは独立して警報音を発する構成となっているので、盗難防止装置を搭載する車両においては、2重のセキュリティシステム(防犯システム)が形成されることとなり、盗難防止性能をさらに向上できる。さらには、断線検知ユニット12が簡易な構成となっているので安価に製造できると共に小型化できるので、従来方式の既存のホーン装置へも容易に後付け(取り付け)可能であるという格別の効果を得ることができる。
【0050】
なお、実施形態1の断線検知装置においては、ホーンSW4と並列に配置したn型MOSトランジスタ20によってリレー1のON/OFFを制御し、2つのホーン10,11に駆動電力を供給する構成としたが、これに限定されることはない。例えば、ホーン10,11の消費電力が小さい場合等のように、ホーンSW4のON/OFF時の負荷が小さい場合には、リレー1を用いることなくリレー1の接点回路3の部分にホーンSW4を配置する構成であってもよい。この場合、断線検知時に警笛音を出力するために、断線判定回路14からホーン10,11に電源を供給する構成とすることができる。
【0051】
また、実施形態1の断線検知装置を備えるホーン装置とは独立して盗難防止装置からの警報出力のみを行う警報用サイレンや警報用ランプを備える場合においても、この警報用サイレンやランプが2つのホーンから形成され場合には、本願発明が適用可能である。さらには、上記警報用サイレンや警報用ランプが1つしかない場合においても、断線判定回路14が警報用サイレンや警報用ランプを直接に駆動して警報用サイレンや警報用ランプをON/OFF制御できる構成とすることにより、ホーン装置のワイヤーハーネス断線検知時に警報用サイレンから警報音を出力することや警報用ランプを点灯させることも可能となる。
【0052】
また、実施形態1の断線検知装置を従来のホーン装置に組み込むことも可能である。この場合には、例えば、ホーンリレー1とホーン10,11とを電気的に接続するワイヤーハーネスに沿って断線検知用ワイヤーハーネス16を配置すると共に、電流回路13からの出力を断線検知用ワイヤーハーネス16に供給し、さらにリレー1をON/OFFさせる信号線(ワイヤーハーネス)にn型MOSトランジスタ20の出力を接続する構成等がある。
【0053】
さらには、実施形態1の断線検知装置では、1本の断線検知用ワイヤーハーネス16を用いて、分岐された2本のワイヤーハーネス9a,9bの断線を検出する構成としたが、これに限定されることはない。例えば、電流回路13及び断線判定回路4並びに断線検知用ワイヤーハーネス16を2回路分用意し、一方の断線検知用ワイヤーハーネス16をワイヤーハーネス9aに沿って配置させると共に、他方の断線検知用ワイヤーハーネス16をワイヤーハーネス9bに沿って配置させる構成であってもよい。この構成とすることにより、分岐後のワイヤーハーネス9a、9bにそれぞれ沿って配置される断線検知用ワイヤーハーネス16をそれぞれ1本分とすることが可能となる。
【0054】
ただし、ホーン10,11のような負荷回路に直接に検出用の電流Isetを流す方法も考えられるが、2本のワイヤーハーネス9a,9aにホーン10,11のような2つ以上の低抵抗負荷が並列に接続される場合には、ワイヤーハーネス9a,9bの断線時における電圧変動が小さくなってしまうことが知られている。この電圧変動を大きくさせるために、多くの電流Isetを流す方法もあるが、この場合には断線検知装置の消費電力が大きくなってしまう。これに対して、実施形態1の断線検知装置では断線検知用ワイヤーハーネス16の断線(切断)に伴う検出電圧の変動を大きくすることができるので、簡易な構成でノイズ耐性等も向上させた断線検知ができる。
【0055】
また、実施形態1の構成では、断線(切断)の検出に専用の断線検知用ワイヤーハーネス16を用いる構成となっている。従って、ホーン装置や他の装置に本願発明の断線検知装置を適用する場合であっても、負荷であるモータ等のアクチュエータの内部抵抗毎に基準電圧Vrefの調整等が不要とできるので、容易に他の装置(他の負荷)や車種に本願発明を適用できるという効果を得ることもできる。
【0056】
また、本願発明の実施形態1の断線検知装置の構成では、断線検知用ワイヤーハーネス16の追加のみで低抵抗負荷に接続されるワイヤーハーネスの断線(切断)を検出することが容易かつ確実にできる。従って、断線判定回路13や電流回路13の構成を工夫して断線検出性能を向上させる場合に比較して、安価に断線検出性能を向上できる。
【0057】
(実施形態2)
図3は本発明の実施形態2の断線検知装置を備えるホーン装置の概略構成を説明するための図、
図4は実施形態2の断線検知装置での断線検出原理を説明するための図であり、以下、
図3及び
図4に基づいて、実施形態2の断線検知装置を備えるホーン装置について説明する。ただし、実施形態2の断線検知ユニット12は、ストロボ発振回路21、発振回路22、及び電源回路23を除く他の構成は、実施形態1の断線検知ユニット12と同様である。従って、以下の説明では、ストロボ発振回路21、発振回路22、及び電源回路23について、詳細に説明する。
【0058】
図3から明らかなように、実施形態2の断線検知ユニット12は、実施形態1の構成に加えて、電流回路13と電源との間に配置されるストロボ発振回路21と、該ストロボ発振回路21に基準となる信号を供給する発振回路22と、基準電源15や発振回路22に電源電圧Vccの駆動電力を供給する周知の電源回路23とを備える構成となっている。
【0059】
発振回路22は基準となるクロック信号を生成し出力する周知の発振回路や、周知のCPUを用いて所望周期のクロック信号を出力する構成からなる。なお、実施形態2の断線検知ユニット12において、発振回路22を周知のCPUを用いて形成する場合には、このCPUを用いてホーンSW4のON/OFFに伴うリレー1のON/OFFを監視し、その結果に基づいて、n型MOSトランジスタ20の出力を制御する制御手段を構成してもよい。
【0060】
ストロボ発振回路(供給制御回路)21は周知のMOSトランジスタを備え、該MOSトランジスタを介して電源と電流回路13とが電気的に接続される。また、ストロボ発振回路21は発振回路22から供給されるクロック信号等に基づいて、例えば、
図4に示す期間T1と期間T2の周期毎にMOSトランジスタのゲート端子の電圧を制御する。このゲート端子に供給する電圧の制御により、電源から電流回路13への電力供給を制限する構成となっている。特に、実施形態2のストロボ発振回路21においては、
図4に示すように、断線検知用ワイヤーハーネス16(ワイヤーハーネス9,9a,9bを含む)の断線(切断)を検出した後は、MOSトランジスタをON状態に保持する構成となっている。ただし、検知用ワイヤーハーネス16(ワイヤーハーネス9,9a,9bを含む)の断線を検出した後は、MOSトランジスタをON状態に保持しない構成であってもよい。この場合には、期間T1と期間T2とに同期して、警笛音の出力と停止とを繰り返す出力とすることができる。また、断線判定回路に断線検知結果を保持させる構成であってもよい。なお、電源から電流回路13への電力供給については、後に詳述する。
【0061】
さらには、実施形態2の断線検知ユニット12においては、基準電源15は電源回路23から供給される電源電圧Vccに基づいて、基準電圧Vrefを生成し、コンパレータ19の反転入力端子に供給する構成となっている。ただし、実施形態1と同様に、電源から供給される電力から基準電圧Vrefを生成する構成であってもよい。
【0062】
次に、
図4に基づいて、実施形態2の断線検知装置を備えるホーン装置における断線検知動作について説明する。ただし、ワイヤーハーネス9a,9b(断線検知用ワイヤーハーネス16を含む)の何れか一方が切断された場合の断線検知動作については、前述する実施形態1と同様に、同じ動作となる。従って、以下の説明では、
図3に×印で示すワイヤーハーネス9b(断線検知用ワイヤーハーネス16を含む)が切断された場合の断線検知動作についてのみ説明する。
【0063】
図3から明らかなように、実施形態2の断線検知ユニット12においては、ストロボ発振回路21が備えるMOSトランジスタを介して電源からの電力が電流回路13に供給される構成となっている。すなわち、ストロボ発振回路21のMOSトランジスタがONの期間のみ、電流回路13から定電流Isetが供給されることとなる。よって、断線検知用ワイヤーハーネス16(ワイヤーハーネス9,9a,9bを含む)に断線が生じていない場合、電流回路13から断続的に出力された電流Isetは断線検知用ワイヤーハーネス16を介してホーン11の入力端子に供給される。このホーン11の入力端子に供給された電流Isetは、実施形態1と同様に、ホーン11と当該ホーン11とワイヤーハーネス9bを介して電気的に接続されるホーン10とを介してアース(GND)に流れることとなる。
【0064】
従って、定電流Isetが供給される期間T1(
図4に示す期間T1)においては、実施形態1と同様に、電流回路13を構成する抵抗17とダイオード18と間の電圧VoutはV1となり、コンパレータ19の非反転入力端子に入力される電圧もV1となる。一方、定電流Isetが供給されない期間T2(
図4に示す期間T2)、すなわちストロボ発振回路21のMOSトランジスタがOFF時の期間T2においては、断線検知用ワイヤーハーネス16の電圧Voutはアース電位(GND電位)となる。この電流Isetが供給される期間T1と電流Isetが供給されない期間T2とが交互に繰り返されることによって、断線検知用ワイヤーハーネス16の断線を検知するための電流Isetの供給する期間T1を少なくでき、実施形態2の断線検知装置での消費電力を低減できることとなる。
【0065】
特に、実施形態2の構成においては、電流Isetが供給される期間T1よりも電流Isetが供給されない期間T2が大きい構成となっているので、実施形態2の断線検知装置での消費電力を大幅に低減できる。この場合、エンジンを動力源とする車両においては、電気自動車等よりもバッテリーの容量が非常に小さいので、エンジン停止時の消費電力(いわゆる暗電流)の大幅に低減できるという効果を得ることができる。
【0066】
一方、
図3中に×印で示す位置すなわち低音域側のホーン11に接続されるワイヤーハーネス9bと共に断線検知用ワイヤーハーネス16が断線(切断)され、かつ、この断線(切断)が電流Isetの供給されない期間T2内の時刻t2に生じた場合、
図4に示すように、時刻t2においては断線検知用ワイヤーハーネス16に電流Isetを供給する電流回路13の抵抗17とダイオード18との間の電圧Voutには変化が生じない。このために、時刻t2においては、断線検知用ワイヤーハーネス16(ワイヤーハーネス9bを含む)の断線は検知されないこととなる。しかしながら、次の期間T1が始まる時刻t3においては、電流Isetが供給されることとなり、断線検知用ワイヤーハーネス16は断線しているので、
図4の期間T1が始まる時刻t3においては、抵抗17とダイオード18との間の電圧Voutでの電圧は、電圧V2(=VB)となる。
【0067】
ここで、実施形態2の断線検知ユニット12においても基準電圧Vrefが電圧V1と電圧V2との間の電圧となるように構成されている。従って、実施形態2の断線検知ユニット12の断線判定回路14のコンパレータ19の出力がハイ電圧となり、n型MOSトランジスタ20がONされる。その結果、リレー1がONとなり、接点回路3及びワイヤーハーネス9,9aを介して電源から駆動電力が高音域側のホーン10に供給され、ホーン10から警笛音が出力される。
【0068】
従って、実施形態2の断線検知装置を備えるホーン装置においても、実施形態1と同様の効果を得ることができると共に、断続的(間欠的)に電流Isetが出力されるので、断線検知装置での消費電力を大幅に低減できるという格別の効果を得ることができる。
【0069】
なお、実施形態2の断線検知装置においては、断線検知用ワイヤーハーネス16の断線(切断)発生から検知までに、最も長い場合で期間T2を要することとなる。しかしながら、リレー1の接点回路3、断線検知用ワイヤーハーネス16で生じる寄生容量等を勘案して、期間T1の開始から次の期間T1の開始までの期間(周期)、すなわち期間T1及び期間T2のそれぞれを、適宜、短く設定することによって、断線(切断)発生から検知に要するまでの時間を小さくすることができる。
【0070】
また、実施形態2の断線検知ユニット12では、電源回路23と基準電源15とを別々に設ける構成としたが、これに限定されることはなく、電源回路23と基準電源15とを一体に形成する構成であってもよい。
【0071】
(実施形態3)
図5は本発明の実施形態3の断線検知装置の概略構成を説明するための図であり、
図6は実施形態3の断線検知装置での断線検出原理を説明するための図であり、特に、
図5は本願発明の断線検知装置を車両のドア渡り部に配策されるワイヤーハーネスの断線(切断)に適用した場合の構成を示す図である。以下、
図5及び
図6に基づいて、実施形態3の断線検知装置によるドア渡り部24に配策されるワイヤーハーネス27〜33の断線(切断)時における検知動作を説明する。ただし、実施形態3の断線検知ユニット12は、実施形態1の断線検知ユニット12と同様の構成となるので、以下の説明では、ドア渡り部24に配策されるワイヤーハーネス27〜33及び断線検知用ワイヤーハーネス16について詳細に説明する。なお、実施形態3の断線検知ユニット12として、実施形態2の断線検知ユニット12を適用することも可能である。
【0072】
図3から明らかなように、実施形態3の構成では、車両のボディ側25に断線検知ユニット12が配置される構成となっており、特に、実施形態3においては断線検知ユニット12が断線を検知した場合の出力(図示しない断線判定回路の出力)が周知の盗難防止装置等の他のユニットに出力される構成となっている。なお、前述する実施形態1,2と同様に、断線検知ユニット12の断線検知出力によって直接にリレーを制御し、ホーン装置又は/及びセキュリティホーン等を制御し鳴動させる構成であってもよい。
【0073】
また、実施形態3の構成では、車両のドア側26には、スピーカー34、ドアミラー35の図示しないアクチュエータ(ドアミラーモータ)、カーテシランプ36、ドアロック37の図示しないアクチュエータ(ドアロックモータ)、パワーウィンド38のアクチュエータ(パワーウィンドモータ)、ドアハンドル39の図示しないセンサ等がそれぞれ配置される構成となっている。また、これらのアクチュエータ(モータ)及びセンサ並びにカーテシランプ36等は、それぞれ車両のボディ側25に配置される周知のスイッチや制御ユニットとワイヤーハーネス27〜32により電気的に接続される構成となっている。
【0074】
このとき、スピーカー34はワイヤーハーネス27、ドアミラー35はワイヤーハーネス28、カーテシランプ36はワイヤーハーネス29、ドアロック37はワイヤーハーネス30、パワーウィンド38はワイヤーハーネス31、ドアハンドル39はワイヤーハーネス32にそれぞれ接続されている。さらには、実施形態3の構成においては、アース線(GND線)となるワイヤーハーネス33がワイヤーハーネス27〜32と共にドア渡り部24に配策される構成となっている。
【0075】
また、実施形態3の断線検知装置においては、ワイヤーハーネス27〜33に沿って断線検知用ワイヤーハーネス16を配置すると共に、断線検知用ワイヤーハーネス16のドア側26の端部をワイヤーハーネス33のドア側26の端部に電気的に接続する構成としている。特に、ワイヤーハーネス33は、ドア側26に配置される電装部品に共通に接続されるワイヤーハーネスとなっている。従って、実施形態3の構成では、断線検知用ワイヤーハーネス16のドア側26の端部をワイヤーハーネス33のドア側26の端部に電気的に接続すると共に、ワイヤーハーネス33の近傍に断線検知用ワイヤーハーネス16を配置する構成としている。ただし、ワイヤーハーネス33と一体となるように、断線検知用ワイヤーハーネス16とワイヤーハーネス33とをテープ巻きした構成としてもよい。この構成により、実施形態1,2と同様に、ワイヤーハーネス33の断線(切断)と共に、断線検知用ワイヤーハーネス16も断線(切断)される構成としている。
【0076】
この構成からなる実施形態3の断線検知装置においては、ワイヤーハーネス27〜33(断線検知用ワイヤーハーネス16を含む)が切断されていない場合には、断線検知用ワイヤーハーネス16における電圧はGNDすなわち0(ゼロ)Vとなる。よって、断線検知ユニット12が備える図示しない断線判定回路にも、GNDが入力されることとなる。
【0077】
一方、少なくともワイヤーハーネス33と共に断線検知用ワイヤーハーネス16が断線(切断)された場合(ワイヤーハーネス27〜33の全てと共に断線検知用ワイヤーハーネス16が断線(切断)された場合も含む)には、前述する実施形態1と同様に、断線検知用ワイヤーハーネス16はハイインピーダンス状態となる。よって、断線検知ユニット12が備える図示しない断線判定回路には、電源電圧(例えば、電圧VB)が入力されることとなる。従って、実施形態3の断線検知ユニット12が備える図示しない断線判定回路においても、断線検知用ワイヤーハーネス16が断線(切断)されていない場合の電圧であるGNDと、断線検知用ワイヤーハーネス16が断線(切断)された場合の電圧である電源の電圧VBとの間の電圧を基準電圧Vrefとして、断線の有無の判定を行う。このとき、実施形態3の構成では、電源の電圧VBとGNDとの間の電圧を基準電圧Vrefとして用いることができる、すなわち実施形態1,2に比較して広い電圧範囲内で基準電圧Vrefを設定できるので、断線判定回路におけるノイズに対する耐性を向上できるという格別の効果を得ることができる。
次に、
図6に基づいて、実施形態3の断線検知装置による断線検出動作を説明する。
【0078】
図5に示すワイヤーハーネス27〜33(断線検知用ワイヤーハーネス16を含む)の何れもが切断されていない期間(時刻t0〜t4)においては、断線検知用ワイヤーハーネス16のドア側26の端部がGNDに接続されている。よって、断線検知ユニット12が備える断線判定回路のコンパレータの非反転入力端子に入力される電圧もGNDとなり、該断線判定回路の出力はOFF状態を維持することとなる。
【0079】
図6に示す時刻t4において、ワイヤーハーネス27〜33が断線(切断)された場合、ワイヤーハーネス27〜33に沿って断線検知用ワイヤーハーネス16が配置される構成となっているので、断線検知用ワイヤーハーネス16も断線(切断)されることとなる。その結果、断線検知用ワイヤーハーネス16を介してアース(GND)へ流れる電流経路が遮断されることとなるので、断線判定回路のコンパレータの非反転入力端子に入力される電圧は電源の電圧VBとなり、該断線判定回路の出力はONとなる。その結果、断線検知ユニット12から盗難防止装置等に断線が通知され、該盗難防止装置が備えるセキュリティホーン等から警報音が出力される。
【0080】
以上説明したように、実施形態3の断線検知装置においては、車両のボディ側25とドア側26と間に配策されるワイヤーハーネス27〜33と共に断線検知用ワイヤーハーネス16を配置し断線を監視する構成となっているので、盗人がドア渡り部24でワイヤーハーネス27〜33を切断し、この切断したドア側のワイヤーハーネス30からドアロック37のドアモータに駆動電力を供給してドアを解錠してしまうことを防止することができ、盗難防止性能を向上できる。
【0081】
なお、本願発明の断線検知装置はホーン装置のワイヤーハーネスの断線(切断)の検知に限定されることなく、他のワイヤーハーネスの断線(切断)の検知にも簡易な構成で容易に適用することができる。さらには、簡易な構成でワイヤーハーネスの断線(切断)検知機能を付加することができるので、前述する実施形態1,2と同様の効果を得ることができ、安価に車両の盗難防止性能を向上できる。
【0082】
以上、本発明者によってなされた発明を、前記発明の実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記発明の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。