(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の化粧シートについて、添付の図面を参照し、実施形態を示して説明する。
<第一実施形態>
本実施形態の化粧シート1は、
図1に示すように、支持体10と、支持体10に隣接して設けられた表面層20とを備える。
【0011】
(支持体)
支持体10は、基材層11を含む。
また、支持体10の表面層20側の表面10a(基材層11の表面層20側の表面11a)には、凹凸が形成されている。表面10aは、表面層20と接する。表面10aに凹凸が形成されていることにより、塗工法により表面10a上に表面層20を形成する際に、塗工抜け等の塗工欠陥が生じにくく、化粧シート1の外観が良好となる。
表面の凹凸は、エンボス加工等の公知の方法により形成できる。
【0012】
支持体10の表面層20側の表面10a(基材層11の表面層20側の表面11a)の算術平均粗さRaは、0.130μm以上が好ましく、0.80μm以上がより好ましい。表面10aのRaが上記下限値以上であれば、塗工欠陥の抑制効果が優れる。表面10aのRaの上限は、塗工欠陥の抑制の点からは特に限定されないが、触感を考慮すると、3.00μm以下が好ましい。
【0013】
支持体10の表面層20側の表面10a(基材層11の表面層20側の表面11a)の最大高さ粗さRzは、3.20μm以上が好ましく、5.00μm以上がより好ましい。表面10aのRzが上記下限値以上であれば、塗工欠陥の抑制効果が優れる。表面10aのRzの上限は、塗工欠陥の抑制の点からは特に限定されないが、触感を考慮すると、25.0μm以下が好ましい。
【0014】
本発明において、RaおよびRzはそれぞれ、JIS B0601:2001に準拠し、カットオフ無しの条件で測定される値である。
【0015】
支持体10の表面層20側とは反対側の表面10b(基材層11の表面層20側とは反対側の表面11b)には、本化粧シートと木質部材等との接着性の向上のために、裏処理が施されていてもよい。裏処理としては、例えば、二液硬化型のウレタン系樹脂を塗布する処理が挙げられる。該ウレタン系樹脂の塗布量は、約1g/m
2弱が好ましい。
【0016】
支持体10の厚さは、50〜800μmが好ましく、250〜500μmがより好ましい。支持体10の厚さが前記下限値以上であれば、機械強度と隠蔽性を充分に高くしやすい。支持体10の厚さが前記上限値以下であれば、充分な可撓性と印刷適性を確保しやすく、三次元成形性がより良好になる。
なお、表面に凹凸が形成されている場合、支持体10の厚さとは、支持体10の最も薄い部分の厚さを意味する。
【0017】
(基材層)
基材層11は、熱可塑性樹脂シートから構成される。
基材層11を構成する熱可塑性樹脂シートとしては、化粧シートにおける基材層に通常用いられるものを使用でき、具体例としては、例えば、ポリ塩化ビニル(以下、「PVC」ともいう。)シート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(以下、「PETG」ともいう。)シート、ポリオレフィンシート(ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート等)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)シート、ポリカーボネートシート等が挙げられる。
【0018】
熱可塑性樹脂シートとしては、二次曲面加工が容易であり、三次元成形性がより優れる点から、PETGシートが好ましい。
なお、PETGとは、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」という。)の一種であり、PETのグリコール成分がエチレングリコールであるのに対し、グリコール成分として、エチレングリコールの他、エチレングリコール以外のジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール)が含まれている非結晶性ポリエステルである。
【0019】
熱可塑性樹脂シートは、延伸シートであってもよく、未延伸シートであってもよい。
熱可塑性樹脂シートには、必要に応じて、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、保存安定剤、滑剤、充填剤等の添加剤が含有されていてもよい。
熱可塑性樹脂シートは、意匠性の点から、着色されていることが好ましい。
【0020】
(表面層)
表面層20は、化粧シート1の視認側の最表層に配置される層である。つまり化粧シート1を建材等に貼付した際に表面側から見える位置に配置される層である。
表面層20は、
図2に示すように、複数の樹脂ビーズ21と、バインダ23とを含む。バインダ23によって複数の樹脂ビーズ21が結合されている。
また、表面層20の表面20aには、複数の樹脂ビーズ21によって、凹凸が形成されている。表面層20の表面20aにおいて、凹凸を形成している樹脂ビーズ21の表面は、露出していてもよく、バインダ23で被覆されていてもよい。
【0021】
表面層20としては、例えば、複数の樹脂ビーズ21を含む二液硬化型ウレタン系塗料から形成された層が挙げられる。
複数の樹脂ビーズ21を含む二液硬化型ウレタン系塗料を支持体10の表面20aに塗工し、硬化させることで表面層20を形成できる。二液硬化型ウレタン系塗料およびこれを用いた表面層20の形成方法については後で詳しく説明する。
【0022】
樹脂ビーズ21は、球状または卵状であることが好ましい。これにより、より優れた低艶化や触感(シルキータッチ)付与の効果が得られる。
【0023】
樹脂ビーズ21の粒径は、2〜20μmが好ましく、5〜10μmがより好ましい。樹脂ビーズ21の粒径が上記の範囲内であれば、表面層20の表面20aのRaやRzが後述する好ましい範囲内となりやすい。
【0024】
樹脂ビーズ21およびバインダ23はそれぞれ、ポリウレタン樹脂を含む。樹脂ビーズ21およびバインダ23がそれぞれポリウレタン樹脂を含むことにより、樹脂ビーズ21とバインダ23との結合力が増し、樹脂ビーズ21の脱落を抑制する効果が得られる。
ポリウレタン樹脂としては、市販のものを用いることができ、例えば、大日精化(株)製 レザロイドLU855SPが挙げられる。
【0025】
樹脂ビーズ21およびバインダ23はそれぞれ、発明の効果を損なわない範囲で、ポリウレタン樹脂以外の他の成分をさらに含んでもよい。他の成分としては、例えば着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、充填剤等の添加剤が挙げられる。
【0026】
表面層20において、バインダ23に対する樹脂ビーズ21の質量比(樹脂ビーズ21/バインダ23)は、50/100〜150/100が好ましく、80/100〜120/100がより好ましい。樹脂ビーズ21の比率が上記下限値以上であれば、低艶性がより優れる。樹脂ビーズ21の比率が上記上限値以下であれば、耐擦傷性がより優れる。
【0027】
表面層20の表面20aの算術平均粗さRaは、0.5〜6.5μmが好ましく、2.0〜4.5μmがより好ましい。表面20aのRaが上記下限値以上であれば、低艶性、触感がより優れ、上記上限値以下であれば、耐擦傷性がより優れる。
【0028】
表面層20の表面20aの最大高さ粗さRzは、30.0〜70.0μmが好ましく、40.0〜60.0μmがより好ましい。表面20aのRzが上記下限値以上であれば、低艶性、触感がより優れ、上記上限値以下であれば、耐擦傷性がより優れる。
【0029】
表面層20の表面20aのRaやRzは、樹脂ビーズ21の粒径、樹脂ビーズ21とバインダ23との質量比、溶剤等による希釈率等によって調整できる。
【0030】
表面層20の坪量は、4〜10g/m
2であり、5〜9g/m
2が好ましく、6〜8g/m
2がより好ましい。表面層20の坪量が上記下限値以上であれば、低艶性、耐擦傷性、スエード調の触感に優れる。
【0031】
表面層20の表面の60°光沢度は、10.0以下が好ましく、5.0以下がより好ましい。60°光沢度は低艶性の指標である。60°光沢度が上記上限値以下であれば、充分に優れた低艶性を有する。
60°光沢度は、JIS Z8741:1997に準拠した方法で測定される。
【0032】
(化粧シートの製造方法)
化粧シート1は、例えば、支持体10の表面10aに、複数の樹脂ビーズ21を含む二液硬化型ウレタン系塗料を塗工し、硬化させて表面層20を形成することにより製造できる。
【0033】
表面10aに凹凸を有する支持体10(基材層11)は、例えば、熱可塑性樹脂シートの表面にエンボス加工を施すことにより作製できる。
エンボス加工は、例えば80〜170℃程度の温度条件下で、表面に凹凸が形成されたエンボスロールに熱可塑性樹脂シートを押し当てることにより実施できる。これにより、エンボスロール表面の凹凸が熱可塑性樹脂シートの表面に転写される。
エンボス加工を施す熱可塑性樹脂シートは、市販のものを用いてもよく、カレンダー法、押出成形法等の公知の製造方法により製造したものを用いてもよい。
【0034】
複数の樹脂ビーズ21を含む二液硬化型ウレタン系塗料としては、市販のものを用いることができる。または、樹脂ビーズ21を含まない二液硬化型ウレタン系塗料に複数の樹脂ビーズ21を添加することにより調製したものを用いてもよい。二液硬化型ウレタン系塗料は、主剤と硬化剤とから構成される。複数の樹脂ビーズ21は典型的には主剤に配合される。
【0035】
二液硬化型ウレタン系塗料は通常、溶剤を含む。必要に応じて、例えば粘度調整のために、二液硬化型ウレタン系塗料に希釈溶剤を添加してもよい。溶剤および希釈溶剤としては、樹脂ビーズ21が溶解しないものが用いられ、例えばメチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、酢酸エチル、シクロヘキサン、エタノール等が挙げられる。
二液硬化型ウレタン系塗料は、必要に応じて、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、充填剤等の添加剤を含んでもよい。
【0036】
前記二液硬化型ウレタン系塗料において、主剤の樹脂固形分に対する樹脂ビーズ21の質量比(樹脂ビーズ21/主剤の樹脂固形分)の好ましい範囲は、前述のバインダ23に対する樹脂ビーズ21の質量比(樹脂ビーズ21/バインダ23)の好ましい範囲と同様である。
【0037】
前記二液硬化型ウレタン系塗料の塗工方法としては、例えばグラビアコート法(マイクログラビアコート法を含む)、コンマコート法、ロールナイフコート法、ダイコート法、リバースロールコート法、ロールコート法、キャスト塗工法等が挙げられる。
前記二液硬化型ウレタン系塗料の塗工量は、ドライ塗工量として4〜10g/m
2であり、5〜9g/m
2が好ましく、6〜8g/m
2がより好ましい。
【0038】
塗工した二液硬化型ウレタン系塗料に対し、例えば、50〜80℃で30秒〜3分間程度の熱処理を行うことで硬化させることができる。熱処理後、エージングを行ってもよい。エージングの方法としては、例えば20〜50℃で1〜5日間養生する方法等が挙げられる。
【0039】
(作用効果)
以上説明した化粧シート1にあっては、基材層11を含む支持体10と、支持体10に隣接して設けられた表面層20とを備え、基材層11が、熱可塑性樹脂シートから構成され、表面層20が、ポリウレタン樹脂を含む複数の樹脂ビーズ21と、ポリウレタン樹脂を含むバインダ23とを含み、複数の樹脂ビーズ21によって表面層20の表面に凹凸が形成されており、表面層20の坪量が4〜10g/m
2であり、支持体10の表面層20と接する表面10aに凹凸が形成されているため、低艶性、耐擦傷性および外観に優れる。また、表面層20の表面に触れた際に、スエード調の触感を与える。また、化粧シート1を構成する各種素材が延伸性を有することから、三次元成型性にも優れる。
【0040】
<第二実施形態>
本実施形態の化粧シート2は、
図3に示すように、支持体30と、支持体30に隣接して設けられた表面層20とを備える。なお、以下に示す実施形態において、既出の実施形態に対応する構成要素には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0041】
(支持体)
支持体30は、基材層31と、印刷層33とがこの順に積層したものであり、最も表面層20側に印刷層33が配置されている。
また、支持体30の表面層20側の表面30a(印刷層33の表面13a)には、凹凸が形成されている。
支持体30の表面30aのRaおよびRzそれぞれの好ましい範囲は、第一実施形態の支持体10の表面10aのRaおよびRzそれぞれの好ましい範囲と同様である。
支持体30の表面層20側とは反対側の表面30b(基材層31の表面層20側とは反対側の表面31b)には、第一実施形態と同様に、裏処理が施されていてもよい。
支持体30の厚さの好ましい範囲は、第一実施形態の支持体10の厚さの好ましい範囲と同様である。
【0042】
(基材層)
基材層31としては、第一実施形態の基材層11と同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
ただし、基材層31の表面層20側の表面に凹凸が形成されていなくてもよい。
基材層31の印刷層33を形成する表面に凹凸が形成されていると、この表面に形成される印刷層33の表面に、基材層31の表面の凹凸と同様の凹凸を形成することができる。そのため、基材層31の表面層20側の表面に凹凸が形成されていることが好ましい。
【0043】
(印刷層)
印刷層33において、印刷によって形成される絵柄、模様としては、例えば、木目、石目、布目、砂目、タイル貼模様、煉瓦積模様、皮絞模様、幾何学模様、文字、記号、メタリック等が挙げられる。これら絵柄及び模様は組み合わせることもできる。
【0044】
印刷層33は、通常、バインダ樹脂と着色剤とを含有する。
バインダ樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリプロピレン、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。バインダ樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
着色剤としては、例えば、チタン白、亜鉛華、カーボンブラック、鉄黒、弁柄、クロムバーミリオン、カドミウムレッド、群青、コバルトブルー、黄鉛、チタンイエロー等の無機顔料;フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー、イソインドリノンイエロー、ベンジルジンイエロー、キナクリドンレッド、ポリアゾレッド、ベリレンレッド、アニリンブラック等の有機顔料;鱗片状箔粉(アルミニウム、真鍮等)等の真珠光沢(パール)顔料が挙げられる。着色剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
印刷層33には、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、充填剤等の添加剤が含有されていてもよい。
【0047】
(化粧シートの製造方法)
化粧シート2は、例えば、支持体30を製造し、支持体30の印刷層33側の表面30aに、複数の樹脂ビーズ21を含む二液硬化型ウレタン系塗料を塗工し、硬化させて表面層20を形成することにより製造できる。
支持体30は、例えば、表面に凹凸が形成された基材層31の前記表面に印刷層33を形成することにより製造できる。
【0048】
表面に凹凸が形成された基材層31は、第一実施形態の支持体10と同様にして製造できる。
印刷層33は、例えば、バインダ樹脂と、着色剤と、溶剤とを含有するインキを印刷することにより形成できる。インキの印刷方法としては、特に限定されず、例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、凸版印刷、インクジェット印刷等が挙げられる。
【0049】
(作用効果)
本実施形態の化粧シート2は、基材層と表面層との間に印刷層33が設けられている以外は、第一実施形態の化粧シート1と同様であり、低艶性、耐擦傷性、三次元成形性および外観に優れ、表面層20の表面に触れた際に、スエード調の触感を与える。また、印刷層33が設けられていることで、印刷層33が設けられていない場合に比べて、意匠性が優れる。
【0050】
<第三実施形態>
本実施形態の化粧シート3は、
図4に示すように、支持体40と、支持体40に隣接して設けられた表面層20とを備える。
【0051】
(支持体)
支持体40は、第一の基材層41と、第二の基材層43と、印刷層45と、透明樹脂層47とがこの順に積層したものであり、最も表面層20側に透明樹脂層47が配置されている。
また、支持体40の表面層20側の表面40a(透明樹脂層47の表面47a)には、凹凸が形成されている。
支持体40の表面40aのRaおよびRzそれぞれの好ましい範囲は、第一実施形態の支持体10の表面10aのRaおよびRzそれぞれの好ましい範囲と同様である。
支持体40の表面層20側とは反対側の表面40b(第一の基材層41の表面層20側とは反対側の表面41b)には、第一実施形態と同様に、裏処理が施されていてもよい。
支持体30の厚さの好ましい範囲は、第一実施形態の支持体10の厚さの好ましい範囲と同様である。
【0052】
(第一の基材層、第二の基材層)
第一の基材層41および第二の基材層43としてはそれぞれ、第一実施形態の基材層11と同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
ただし、第一の基材層41の表面層20側の表面および第二の基材層43の表面層20側の表面に凹凸が形成されていなくてもよい。
【0053】
第一の基材層41および第二の基材層43それぞれを構成する熱可塑性樹脂シートは同じでもよく、異なってもよい。例えば熱可塑性樹脂の種類、熱可塑性樹脂シートの厚さ、着色の度合い等が異なっていてもよい。
第一の基材層41は主に成型加工時の貼り合わせ対象物(例 パーティクルボード)の凹凸を隠す目的で、第二の基材層43は主に意匠付与の目的で用いることができる。かかる観点から、第一の基材層41が、PVCシート、PETGシート、ポリオレフィンシート(ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート等)、またはアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)シートであり、第二の基材層43が、PVCシート、PETGシート、ポリオレフィンシート(ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート等)、またはアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)シートであることが好ましい。
【0054】
(印刷層)
印刷層45としては、第二実施形態の印刷層33と同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
ただし、印刷層45の表面層20側の表面に凹凸が形成されていなくてもよい。
【0055】
(透明樹脂層)
透明樹脂層47としては、例えば、透明な熱可塑性樹脂シートが挙げられる。
透明な熱可塑性樹脂シートとしては、例えばPETGシート、PVCシート、ABSシート、ポリカーボネートシート、アクリル樹脂シート、ポリブチレンテレフタレートシート、易成型PETシート等が挙げられる。これらの中でも、二次曲面加工が容易であり、三次元成形性がより優れる点から、PETGシートが好ましい。
【0056】
透明樹脂層47の透明度は、全光線透過率として、80.0%以上が好ましく、85.0%以上がより好ましい。透明度が高い程、柄が鮮明になり意匠性に優れる。
透明樹脂層47は、透明性を損なわない範囲で、着色されていてもよい。
【0057】
透明樹脂層47の厚さは、50〜200μmが好ましく、80〜150μmがより好ましい。透明樹脂層47の厚さが前記下限値以上であれば、柄の奥行き感が増し、製造上のハンドリングが優れる。透明樹脂層47の厚さが前記上限値以下であれば、充分な可撓性と印刷適性を確保しやすく、三次元成形性がより良好になる。
なお、表面に凹凸が形成されている場合、透明樹脂層47の厚さとは、透明樹脂層47の最も薄い部分の厚さを意味する。
【0058】
(化粧シートの製造方法)
化粧シート3は、例えば、支持体40を製造し、支持体40の透明樹脂層47側の表面40aに、複数の樹脂ビーズ21を含む二液硬化型ウレタン系塗料を塗工し、硬化させて表面層20を形成することにより製造できる。
支持体40は、例えば、第二の基材層43の一方の表面に印刷層45を形成して印刷シートを得て、該印刷シートの第二の基材層43側の面に第一の基材層41を、印刷層45側の面に透明な熱可塑性樹脂シートを積層して積層シートを得て、該積層シートの透明な熱可塑性樹脂シート側の表面に凹凸を形成する(透明な熱可塑性樹脂シートを透明樹脂層47とする)ことにより製造できる。
【0059】
印刷層45は、第二実施形態の印刷層33と同様にして形成できる。
印刷層45を形成した第二の基材層43と第一の基材との積層、前記第二の基材層43と透明な熱可塑性樹脂シートとの積層は、例えば、熱ラミネート法により行うことができる。
凹凸の形成は、例えば、第一実施形態で示したようなエンボス加工により行うことができる。
【0060】
(作用効果)
本実施形態の化粧シート3は、基材として第一の基材層41と第二の基材層43とが積層したものを用い、印刷層45と表面層20との間に透明樹脂層47が設けられている以外は、第二実施形態の化粧シート2と同様であり、低艶性、耐擦傷性、三次元成形性および外観に優れ、表面層20の表面に触れた際に、スエード調の触感を与える。また、印刷層45が設けられていることで、印刷層45が設けられていない場合に比べて意匠性が優れる。また、透明樹脂層47が設けられていることで、意匠性(柄の深み)がより優れる。
【0061】
以上、実施形態を示して本発明の化粧シートを説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。上記実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
例えば、第三実施形態では、第一の基材層41および第二の基材層43、ならびに印刷層および透明樹脂層がそれぞれ直接積層している例を示したが、これらのいずれか一方または両方が、接着層を介して積層していてもよい。この場合、接着剤層は、着色剤を含まない、すなわち無着色であることが好ましい。
【実施例】
【0062】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0063】
[実施例1]
主原料となるPVCに着色剤、加工助剤等を混ぜた配合でカレンダー成形機にて熱可塑性樹脂シート(厚さ250μm)を製膜した。この熱可塑性樹脂シートの一方の表面に、エンボスロール(#45)にて紋加工を施し、基材層を作製した。この基材層を支持体とした。
樹脂ビーズ(ポリウレタン樹脂系、球状、粒径7μm)入りの二液硬化型ウレタン系塗料の主剤としての大日精化工業社製レザロイド(登録商標)LU−561SPに、硬化剤(大日精化工業社製レザヒットLG−212(C))を添加して塗料を調製した。レザロイドLU−561SPにおける樹脂ビーズの添加量は、塗料樹脂に対して約100質量%である。硬化剤の添加量は、レザロイドLU−561SPの100phrに対して2phrとした。
上記支持体の紋加工を施した面に、上記の塗料をマイクログラビアコーターにて、ウェット塗工量として35g/m
2塗工し、70℃で1分間乾燥させ、35℃で3日間養生して、坪量(ドライ塗工量)約7g/m
2の表面層を形成して化粧シートを得た。
【0064】
[実施例2]
押出成形機にてPETG(イーストマン社製GN071)の透明シート(厚さ60μm)を製膜した。
主原料となるPETG(イーストマン社製GN071)に着色剤を混ぜた配合でカレンダー成形機にて熱可塑性樹脂シート(厚さ180μm)を製膜した。この熱可塑性樹脂シートを第一の基材層とした。
主原料となるPETG(イーストマン社製GN071)に着色剤を混ぜた配合でカレンダー成形機にて熱可塑性樹脂シート(厚さ80μm)を製膜した。この熱可塑性樹脂シートを第二の基材層とした。
上記第二の基材層に、グラビア印刷により印刷層を形成して印刷シートを得た。
上記透明シート、上記印刷シート、上記第一の基材層をこの順に重ねて熱ラミネートにて積層した。得られた積層体の透明シート側の表面にエンボスロール(#80)にて紋加工を施し、支持体を作製した。
実施例1と同様に、大日精化工業社製レザロイドLU−561SPに硬化剤(大日精化工業社製レザヒットLG−212(C))を添加して塗料を調製した。硬化剤の添加量は、レザロイドLU−561SPの100phrに対して2phrとした。
上記支持体の紋加工を施した面に、上記の塗料をマイクログラビアコーターにて、ウェット塗工量として35g/m
2塗工し、70℃で1分間乾燥させ、35℃で3日間養生して、坪量(ドライ塗工量)約7g/m
2の表面層を形成して化粧シートを得た。
【0065】
[比較例1]
主原料となるPETG(イーストマンケミカル社製GN071)に着色剤、加工助剤等を混ぜた配合でカレンダー成形機にて熱可塑性樹脂シート(厚さ250μm)を製膜した。この熱可塑性樹脂シートを支持体(基材層)とした。
実施例1と同様に、大日精化工業社製レザロイドLU−561SPに硬化剤(大日精化工業社製レザヒットLG−212(C))を添加して塗料を調製した。硬化剤の添加量は、レザロイドLU−561SPの100phrに対して2phrとした。
上記支持体の一方の面に、上記の塗料をマイクログラビアコーターにて、ウェット塗工量として35g/m
2塗工し、70℃で1分間乾燥させ、35℃で3日間養生して、坪量(ドライ塗工量)約7g/m
2の表面層を形成して化粧シートを得た。
【0066】
[比較例2]
主原料となるPETG(イーストマンケミカル社製GN071)に着色剤を混ぜた配合でカレンダー成形機にて熱可塑性樹脂シート(厚さ250μm)を製膜した。この熱可塑性樹脂シートの一方の表面に、エンボスロール(#80)にて紋加工を施し、基材層を作製した。この基材層を支持体とした。
実施例1と同様に、大日精化工業社製レザロイドLU−561SPに硬化剤(大日精化工業社製レザヒットLG−212(C))を添加して塗料を調製した。硬化剤の添加量は、レザロイドLU−561SPの100phrに対して2phrとした。
上記支持体の紋加工を施した面に、上記の塗料をマイクログラビアコーターにて、ウェット塗工量として15g/m
2塗工し、70℃で1分間乾燥させ、35℃で3日間養生して、坪量(ドライ塗工量)約3g/m
2の表面層を形成して化粧シートを得た。
【0067】
得られた化粧シートについて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0068】
[表面粗さ]
各例で得られた化粧シートの表面層の表面粗さの指標として、RaおよびRzを測定した。RaおよびRzはそれぞれ、JIS B0601:2001に準拠し、カラー3Dレーザ顕微鏡VK−9710(キーエンス社製)、標準対物レンズ50倍を使用して、カットオフ無し、表面粗さ(解析範囲:横283.371μm,縦212.459μm)の条件で測定した。
各例で作製した支持体の表面層を形成した表面の表面粗さも同様にして測定した。
【0069】
[60°光沢度]
JIS Z8741:1997に準拠し、(株)堀場製作所製グロスチェッカIG−320を使用して、各例で得られた化粧シートの表面層の表面における60°光沢度を測定した。
【0070】
[耐擦傷性]
以下の爪スクラッチ試験を行い、以下の基準で耐擦傷性(耐爪スクラッチ性)を評価した。
試料をガラスの上に置き、人差し指の爪を約90°の角度にして、300mm/sec程度の速度にて擦った際の表面変化を観察する。
○:変化無し。
×:傷が残る、光沢変化、塗膜の剥がれ等が生じる。
【0071】
[触感(スエード調)]
各例で得られた化粧シートの表面層の表面を手で触り、以下の基準で触感を評価した。
○:しっとり感と滑らか感がある。
△:ややしっとり感と滑らか感がある。
×:しっとり感や滑らか感を感じない。
【0072】
[塗工抜け]
各例で得られた化粧シートの表面層の表面を目視で観察し、以下の基準で評価した。
○:均一な状態。
×:所々に塗工抜けによる光沢が高い部分がある。
【0073】
【表1】
【0074】
表1に示すように、実施例1〜2の化粧シートは、低艶性(低光沢度)、耐擦傷性に優れ、表面に触れた際にスエード調の触感が得られた。また、塗工抜けが無く、外観が良好であり、製造上の安定性も良好であった。また、化粧シートを構成する各種素材が延伸性を有することから、三次元成形性にも優れると判断できる。
一方、支持体の表面に凹凸を形成しなかった比較例1の化粧シートは、塗工抜けが生じ、外観が不良であった。
表面層の坪量が4g/m
2未満の比較例2の化粧シートは、低艶性、耐擦傷性に劣り、スエード調の触感も不充分であった。