(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について、添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
《メラミン化粧材》
まず、本発明のメラミン化粧材の好適な実施形態について説明する。
【0017】
本発明のメラミン化粧材は、建築用の壁面、エレベーターや電車の車両等の内装、机や本棚等の家具等に貼り付けることで、審美性や高級感を付与することができるものである。
【0018】
図1は、本発明のメラミン化粧材の実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、メラミン化粧材100は、表面層11と、基材層12とが積層した積層体で構成されている。
【0019】
以下、各層について詳細に説明する。
<1.表面層>
表面層11は、意匠性や審美性に寄与する層であり、化粧紙等の表面層基材にメラミン樹脂等の樹脂を含浸させ、乾燥させたものである。
【0020】
表面層11は、
図1に示すように、メラミン樹脂Xと、メラミン樹脂Xよりも屈折率の低い低屈折率材料Yとを含む第1層110と、メラミン樹脂を含み、かつ、低屈折率材料を含まない第2層120とを有している。
【0021】
第1層110は、
図1に示すように、その表面(意匠面)において、メラミン樹脂Xで構成された第1の領域111と、低屈折率材料Yで構成された第2の領域112と、を有している。
【0022】
このように、本発明のメラミン化粧材は、表面にメラミン樹脂で構成された第1の領域と、メラミン樹脂よりも屈折率の低い低屈折率材料で構成された第2の領域とを有している点に特徴を有している。
【0023】
ところで、メラミン樹脂は、屈折率が1.6〜1.7と比較的高いため、化粧材表面における反射光が増加する。その結果、化粧材内部への入射光が減少し、化粧柄からの反射光(人が感知する色情報)が減るため、化粧柄を鮮明に表現できないといった問題があった。また、指紋等の原因である油脂成分の屈折率は1.5程度で反射率が低い上、付着した油脂成分の凹凸形状等の原因により、指紋等の汚れが目立つといった問題もあった。
【0024】
これに対して、本発明のメラミン化粧材は、低屈折率材料で構成された第2の領域を有することにより、化粧柄を鮮明に表現することができる。また、指紋等の汚れが付着した場合であっても、指紋等の汚れを目立たなくすることができる。さらに、メラミン化粧材の表面にはメラミン樹脂が露出している部分(第1の領域)が存在するため、メラミン化粧材は、高い表面硬度、耐摩耗性、耐熱性、耐熱水性、耐汚染性、耐煮沸性、耐光性等の耐久性を効果的に発揮することができる。
【0025】
平面視した際のメラミン化粧材100の表面における、メラミン樹脂Xで構成された第1の領域111の占める面積の割合は、5%以上80%以下であるのが好ましく、5%以上70%以下であるのがより好ましい。これにより、メラミン樹脂の特性を発揮させつつ、低屈折率材料の特性をより効果的に発揮させることができる。
【0026】
メラミン樹脂Xとしては、特に限定されず、例えば、メラミンとホルムアルデヒドを中性または弱アルカリ下において反応させて得られるものを用いることができる。
【0027】
メラミンに対するホルムアルデヒドの反応モル比((ホルムアルデヒドのモル量)/(メラミンのモル量)の値であり、以下、単に「反応モル比」ということがある。)は、特に限定されないが、1.0〜4.0、好ましくは1.0〜2.0、さらに好ましくは1.1〜1.8として、反応させて得られたものを好適に用いることができる。反応モル比が前記下限値未満であると、未反応成分が増加し保存性低下、コスト高となる場合がある。また、前記上限値を超えると、硬化後の樹脂柔軟性低下が著しくなる場合がある。なお、メラミン樹脂としては、1種類が単独で含まれるものを用いることもできるし、反応モル比や重量平均分子量等が異なる2種類以上のメラミン樹脂を混合して含むものを用いることもできる。
【0028】
また、メラミン樹脂としては、住友化学(株)製のメラミン樹脂等、市販のものを用いることもできる。
【0029】
メラミン樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、200〜500であるのが好ましく、250〜350であるのがより好ましい。分子量が前記下限値よりも小さいと、未反応分が多くなり、保存性が低下する場合がある。また、前記上限値よりも大きいと、基材への含浸性が低下する場合がある。なお、前記重量平均分子量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、標準物質:ポリスチレン換算)で測定することができる。
【0030】
低屈折率材料Yとしては、メラミン樹脂よりも屈折率が低い材料であれば特に限定されず、例えば、含フッ素化合物、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、含ケイ素化合物、中空構造や多孔質表面を有する化合物等が挙げられる。
【0031】
含フッ素化合物としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、 ポリフッ化ビニル、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体、エチレン・四フッ化エチレン共重合体、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体、フルオロエチレン・ビニルエーテル共重合体、フッ素ウレタン樹脂等の含フッ素樹脂、フッ化マグネシウム(MgF
2)等が挙げられる。
【0032】
また、含ケイ素化合物としては、例えば、シリコーン樹脂、シリカ(SiO
2)等が挙げられる。
【0033】
また、中空構造や多孔質表面を有する化合物としては、中空シリカや多孔質シリカ等が挙げられる。
【0034】
低屈折率材料の屈折率は、1.50未満であるのが好ましく、1.25以上1.45以下であるのがより好ましい。これにより、化粧柄をより鮮明に表現することができる。また、指紋等の汚れが付着した場合であっても、指紋等の汚れをより効果的に目立たなくすることができる。
【0035】
なお、第1の領域111および第2の領域112は、均一に分布しているのが好ましい。すなわち、メラミン化粧材100の意匠面を目視で観察した際に、メラミン樹脂と低屈折率材料の混在が、外観ムラ(光沢ムラや、鮮明性のムラ)として見えないことが好ましい。これにより、化粧柄をより鮮明に表現することができる。また、指紋等の汚れが付着した場合であっても、指紋等の汚れをより効果的に目立たなくすることができる。また、耐久性をより優れたものとすることができる。
【0036】
表面層基材は、第1層110側に意匠面が形成されたシート状の基材である。表面層基材の材質は特に限定されず、例えば、パルプ、リンター、合成繊維、ガラス繊維等を用いることができる。また、必要に応じて、酸化チタンなどの顔料を含有する酸化チタン含有化粧紙などを用いることができる。
【0037】
表面層基材の坪量は、特に限定されないが、40〜150g/m
2であることが好ましい。坪量が前記下限値未満であると、樹脂含浸工程での切れ、しわの問題から、塗工処理が困難である。一方、坪量が前記上限値を超えると、表面層基材が担持する樹脂の含浸量にムラが生じ、メラミン化粧材100の柔軟性を低下させると共に、生産性低下、コスト高の原因となる場合がある。
【0038】
第1層110の厚さは、0.01μm以上100μm以下であるのが好ましく、0.1μm以上50μm以下であるのがより好ましい。これにより、メラミン樹脂の特性を発揮させつつ、低屈折率材料の特性をより効果的に発揮させることができる。
【0039】
<2.基材層>
基材層12は、表面層11を支持する層であり、表面層11の意匠面とは反対の面側に、接合されている。
【0040】
基材層12としては、例えば、各種金属シート(金属箔、金属板を含む)、各種樹脂シート(樹脂板を含む)、各種布、各種紙、各種木板、石膏ボード等や、これらの複合体、積層体等が挙げられる。
【0041】
各種金属シートの構成材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、マグネシウム、亜鉛等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
また、金属シートとしては、金属材料以外の材料で構成されたシート状の基材に、上記金属材料をめっきしたもの等であってもよい。
【0043】
各種樹脂の構成材料としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等の熱硬化性樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
各種紙としては、クラフト紙、コットンリンター紙、リンターとクラフトパルプの混抄紙等を主成分とする紙基材等が挙げられる。また、これらの紙基材を単独で基材層12として用いてもよいし、これらの紙基材に樹脂を含浸させた樹脂含浸紙や、酸化チタンなどの顔料を含有する酸化チタン含有紙等を基材層12として用いてもよい。
【0045】
各種布として、多数の繊維を集めて薄い板状に加工した織布、不織布等を用いることができる。
【0046】
繊維としては、特に限定されず、例えば、アルミナ繊維、シリカ繊維、ガラス繊維等の無機繊維、セルロース繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維等の化学合成繊維等が挙げられる。
【0047】
また、各種布としては、織布、不織布等に樹脂や顔料等を含有させたもの等であってもよい。
【0048】
上述した中でも、基材層12としては、特に、ガラス繊維で構成された布(ガラスクロス)またはガラスクロスを基材とするプリプレグからなる材料を用いるのが好ましい。これにより、メラミン化粧材100に、耐熱性、不燃性、剛性、曲げ加工性などを付与することができる。
【0049】
また、ガラスクロスを構成するガラスとしては、例えば、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、Hガラス等が挙げられる。これらの中でもTガラスが好ましい。これにより、ガラスクロスの熱膨張係数を小さくすることができる。
【0050】
ガラスクロスの重量は、特に限定するものではないが、建築基準法第2条第9号の不燃性適合要件である「燃焼後の亀裂・貫通があってはならない」を満たす必要がある場合は、坪量100g/m
2以上とする事が好ましい。また、重量の上限は特に制約を必要としないが、材料コストと加工性の面から坪量250g/m
2以下が好ましい。
【0051】
プリプレグとしては、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を含有する樹脂組成物を上述のガラスクロスに含浸してなるものを用いることができる。
【0052】
プリプレグ中に含まれる樹脂組成物の含有量としては、表面層11との層間接着強度が、メラミン化粧材100を形成するために十分であれば、特に限定されないが、樹脂組成物として熱可塑性樹脂を用いる場合は、プリプレグ中に固形分で1質量%以上、20質量%以下含有することが好ましく、1質量%以上、10質量%以下含有することがより好ましい。また、樹脂組成物として熱硬化性樹脂を用いる場合は、プリプレグ中に固形分で1質量%以上、20質量%以下含有することが好ましく、2質量%以上、10質量%以下含有することがより好ましい。これにより、表面層11と基材層12との層間接着強度を向上させることができる。
【0053】
熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、スチレンブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。中でも、アクリル樹脂および/またはウレタン樹脂を用いるのが好ましい。
【0054】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ユリア樹脂、マレイミド樹脂などが挙げられる。中でも、不燃性、耐熱性、密着性の観点からフェノール樹脂が好ましい。これらの樹脂は、単独または混合して用いることができる。
【0055】
プリプレグは、従来公知の方法により製造することができ、例えば、上述したガラスクロスと同様のガラスクロスに、樹脂組成物を溶媒に溶解させたワニスを含浸、乾燥させることにより得られる。
【0056】
基材層12の厚みは、100μm以上とすることが好ましい。これにより、メラミン化粧材100に充分な耐熱性、不燃性を付与することができる。また、厚みの上限については、特に限定されないが、厚みが大きいほどメラミン化粧材100の厚みと重量が増大すると共に、コストも嵩むため、最終的な製品における設計上、許容される範囲で設定することが好ましく、350μm以下にすることがより好ましい。また、曲げ加工性を向上させる場合には、薄くする方が好ましく、200μm以下にすることがより好ましい。
【0057】
なお、表面層11と基材層12との間には、これらを接合する中間層を有していてもよい。中間層を構成する材料としては、特に限定されないが、熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分を用いるのが好ましい。なお、本明細書中おいて、熱可塑性エマルジョン樹脂とは、熱可塑性樹脂を溶媒に分散してエマルジョン状態となったものである。また、熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分とは、熱可塑性エマルジョン樹脂から溶媒を除いた成分を意味する。
【0058】
熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分は、エマルジョン樹脂粒子として存在する成分を含み、金属や各種素材との接着特性を有し、メラミン化粧材100に柔軟性を付与する。その結果、メラミン化粧材100の曲げ加工性を向上させることができる。
【0059】
熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分としては、特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル系共重合体、ウレタンアクリル複合粒子、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)等の熱可塑性樹脂のエマルジョン粒子が挙げられる。これらの中でもウレタンアクリル複合粒子が好ましい。本明細書中において、ウレタンアクリル複合粒子とは、単一粒子内にアクリル樹脂とウレタン樹脂との異相構造を有するものを意味する。なお、本明細書中において「異相構造」とは、1個の粒子内に異なる種類の樹脂からなる相が複数存在する構造を意味し、例えば、コアシェル構造、局在構造、海島構造等が挙げられる。
【0060】
上述したようなメラミン化粧材100は、常温(通常20〜30℃程度)での最小曲げ半径が10mmR以下の曲げ加工が可能であるが、特に限定はされない。最小曲げ半径Rとは、半径Rの湾曲部を有する型に沿わせて、一方方向に行う常温曲げ加工を繰り返し実施しても、割れ等の不具合を生じず、100%の良品が得られる最小の型の半径Rを意味する。
【0061】
また、メラミン化粧材100は、全体の厚みが0.4mm以下であるのが好ましい。これにより、メラミン化粧材100は、曲げ加工をより容易に行うことができるものとなる。
【0062】
《メラミン化粧材の製造方法》
次に、上述したメラミン化粧材の製造方法について説明する。
図2は、本発明のメラミン化粧材の製造方法の一例を示した工程図である。
【0063】
まず、
図2(a)に示すように、表面層基材にメラミン樹脂を含浸させたメラミン樹脂層120Xを用意する。なお、メラミン樹脂層120Xの意匠面側とは反対の面には、熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分を含浸させてもよい。
【0064】
表面層基材にメラミン樹脂を含浸させる方法としては、特に限定されず、例えば、樹脂を溶媒に溶解した樹脂ワニスを、例えば、スプレー装置、シャワー装置、キスコーター、コンマコーター等の公知の装置を用いて塗工した後、80〜130℃程度で加熱乾燥する方法等が挙げられる。
【0065】
次に、
図2(b)に示すように、低屈折率材料を含む組成物をメラミン樹脂層120X上に付与し、低屈折率材料を含む低屈折率材料層110Yを形成し、表面層形成材料11’を得る。
【0066】
付与する方法としては、フローコート法、スピンコート法、印刷法、ラミネート法、スプレー法、バーコート法等を用いることができる。
【0067】
次に、基材層を形成するための基材層形成材料12’を用意し、上記表面層形成材料11’のメラミン樹脂層120Xと基材層形成材料12’が接するように重ね合わせる(
図2(c)参照)。
【0068】
次に、表面層形成材料11’と基材層形成材料12’とを加熱しながら、各層の内側に向かって加圧する。これにより、低屈折率材料層110Yを構成する低屈折率材料層がメラミン樹脂層120X内に埋没するとともに、メラミン樹脂層120Xを構成するメラミン樹脂が表面に現れて、メラミン樹脂と低屈折率材料とで構成された第1層110と、メラミン樹脂を含み、かつ、低屈折率材料を含まない第2層120とが形成される。その結果、
図1に示すようなメラミン化粧材100が得られる。
【0069】
表面層形成材料11’と基材層形成材料12’とを加熱加圧(熱圧着)する条件としては、特に限定されないが、加熱温度130〜150℃、圧力2〜8MPaで行うのが好ましい。また、熱圧着する時間は、10〜60分間であるのが好ましい。
【0070】
以上、本発明のメラミン化粧材の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0071】
例えば、本発明のメラミン化粧材は、
図1に示したメラミン化粧材100の形態に限定されず、例えば、基材層12は無くてもよいし、第2層120が無くてもよい。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0073】
1.メラミン化粧材の製造
(実施例1)
表面層基材として坪量80g/m
2の酸化チタン含有化粧紙(大日本印刷(株)製)を用い、前記酸化チタン含有化粧紙の意匠面とは反対側に、ウレタンアクリル複合粒子のエマルジョン(中央理化工業(株)製、商品名「SU−100」、平均粒径:84nm、分散媒:水)を固形分で40g/m
2となるように塗工し、続いて前記化粧紙の意匠面側に、メラミン樹脂ワニス(反応モル比1.4、樹脂固形分50質量%)を50g/m
2となる様に塗工した後、120℃の熱風乾燥機にて90秒乾燥し、樹脂比率が53%、揮発分率3%のメラミン樹脂層を得た。
【0074】
なお、前記メラミン樹脂ワニスは、反応釜に原料メラミンとホルマリンを所定配合比率で仕込み触媒添加後、沸点まで昇温して還流反応し、メラミン溶解が完了した事を確認した上で、反応終点に達したら脱水処理にて樹脂固形分を調整し冷却する方法により合成した。
【0075】
一方、フッ素樹脂(ダイキン工業製、商品名「ゼッフルGK−570」、硬化後の屈折率:1.50未満)と硬化剤(旭化成ケミカルズ製、商品名「デュラネートTPA−100」)を、NCO/OHモル比=1.0となるように混合し、固形分8.0%になるように酢酸ブチルで希釈して低屈折率材料を含む組成物Aを調製した。
【0076】
前記メラミン樹脂層に、組成物Aを、フローコート法でコートし、100℃で1分間乾燥させ、メラミン樹脂層上に低屈折率材料層を形成した(乾燥後のコート量:5g/m
2)。
【0077】
得られたメラミン樹脂層と低屈折率材料層との積層体に、基材層形成材料として厚み0.2mmのガラスクロス(南亜プラスチック社製、商品名「WEA7628」)を重ね合わせ、140℃、2MPaの条件で40分間加熱加圧成形して、厚さ0.3mmのメラミン化粧材を得た。なお、得られたメラミン化粧材の意匠面におけるメラミン樹脂で構成された第1の領域の占める割合は、4.5%であった。また、メラミン樹脂と低屈折率材料とを含む第1層の厚さは、5μmであった。
【0078】
(実施例2〜5)
メラミン化粧材の意匠面における第1の領域の占める割合が表1に示す値となるように、低屈折率材料を含む組成物A中の低屈折率材料の含有量、低屈折率材料層の厚み、加熱加圧成形の条件等を変更した以外は、前記実施例1と同様にして厚さ0.3mmのメラミン化粧材を得た。
【0079】
(実施例6)
低屈折率材料層を以下のようにして形成した以外は、前記実施例3と同様にして厚さ0.3mmのメラミン化粧材を得た。
【0080】
アクリル樹脂(DIC社製、商品名「アクリディックA−801−P」、硬化後の屈折率:1.50)と硬化剤(旭化成ケミカルズ製、商品名「デュラネートTPA−100」)を、NCO/OHモル比=1.0となるように混合し、固形分1.5%になるように酢酸ブチルで希釈して低屈折率材料を含む組成物Bを調製した。
【0081】
前記メラミン樹脂層に、組成物Bを、フローコート法でコートし、100℃で1分間乾燥させ、メラミン樹脂層上に低屈折率材料層を形成した(乾燥後のコート量:1g/m
2)。
【0082】
(実施例7)
低屈折率材料層を以下のようにして形成した以外は、前記実施例3と同様にして厚さ0.3mmのメラミン化粧材を得た。
【0083】
シリコーン樹脂(信越化学製、商品名「KP−86」、硬化後の屈折率:1.50未満)を、固形分1.5%になるようにイソプロピルアルコールで希釈して低屈折率材料を含む組成物Cを調製した。
【0084】
前記メラミン樹脂層に、組成物Cを、フローコート法でコートし、常温にて1時間乾燥させ、メラミン樹脂層上に低屈折率材料層を形成した(乾燥後のコート量:1g/m
2)。
【0085】
(実施例8)
低屈折率材料層を以下のようにして形成した以外は、前記実施例3と同様にして厚さ0.3mmのメラミン化粧材を得た。
【0086】
メラミン樹脂ワニス:15gに対し、シリカ(日産化学製、商品名「スノーテックス50」、屈折率:1.50未満):85gを加えて混合し、低屈折率材料を含む組成物Dを調製した。
【0087】
前記メラミン樹脂層に、組成物Dを、スプレーコート法でコートし、120℃で1分間乾燥させ、メラミン樹脂層上に低屈折率材料層を形成した(乾燥後のコート量:10g/m
2)。
なお、第1層の厚さは、10μmであった。
【0088】
(比較例1)
表面層基材として坪量80g/m
2の酸化チタン含有化粧紙(大日本印刷(株)製)を用い、前記酸化チタン含有化粧紙の意匠面とは反対側に、ウレタンアクリル複合粒子のエマルジョン(中央理化工業(株)製、商品名「SU−100」、平均粒径:84nm、分散媒:水)を固形分で40g/m
2となるように塗工し、続いて前記化粧紙の意匠面側に、メラミン樹脂ワニス(反応モル比1.4、樹脂固形分50質量%)を50g/m
2となる様に塗工した後、120℃の熱風乾燥機にて90秒乾燥し、樹脂比率が53%、揮発分率3%のメラミン樹脂層を得た。
【0089】
なお、前記メラミン樹脂ワニスは、反応釜に原料メラミンとホルマリンを所定配合比率で仕込み触媒添加後、沸点まで昇温して還流反応し、メラミン溶解が完了した事を確認した上で、反応終点に達したら脱水処理にて樹脂固形分を調整し冷却する方法により合成した。
【0090】
得られたメラミン樹脂層に、基材層形成材料として厚み0.2mmのガラスクロス(南亜プラスチック社製、商品名「WEA7628」)を重ね合わせ、140℃、2MPaの条件で40分間加熱加圧成形して、厚さ0.3mmのメラミン化粧材を得た。
【0091】
(比較例2)
比較例1と同様にして得られたメラミン化粧材のメラミン樹脂で構成された層の上に、低屈折率材料層を以下のようにして形成した。
【0092】
フッ素樹脂(ダイキン工業製、商品名「ゼッフルGK−570」、硬化後の屈折率:1.50未満)と硬化剤(旭化成ケミカルズ製、商品名「デュラネートTPA−100」)を、NCO/OHモル比=1.0となるように混合し、固形分4.0%になるように酢酸ブチルで希釈して低屈折率材料を含む組成物Dを調製した。
【0093】
比較例1のメラミン化粧材の上に、組成物Dを、フローコート法でコートし、100℃で1分間乾燥させ、常温で7日間養生させて、メラミン樹脂層上に低屈折率材料層を形成した(乾燥後のコート量:2g/m
2)。
【0094】
なお、得られたメラミン化粧材の意匠面におけるメラミン樹脂で構成された第1の領域の占める割合は、0%であった。また、得られたメラミン化粧材の表面の低屈折率材料層の厚みは、2μmであった。
【0095】
(比較例3)
メラミン化粧材の表面の低屈折率材料層の厚みが表1に示す値となるように、組成物Dの塗工量を変更した以外は、前記比較例2と同様にして厚さ0.3mmのメラミン化粧材を得た。なお、得られたメラミン化粧材の意匠面におけるメラミン樹脂で構成された第1の領域の占める割合は、0%であった。また、得られたメラミン化粧材の表面の低屈折率材料層の厚みは、10μmであった。
【0096】
各実施例および各比較例の低屈折率材料の種類等、第1の領域の占める割合、第1層の厚み等を表1に示した。
【0097】
【表1】
【0098】
2.試験方法
(1)化粧柄鮮明性
各実施例および各比較例のメラミン化粧材の意匠面を色々な角度から目視で観察し、以下の基準で評価を実施した。
【0099】
◎: 比較例1よりも、明らかに化粧柄が鮮明に見える
○: 比較例1よりも、化粧柄が鮮明に見える
×: 化粧柄が鮮明に見えない(比較例1と同等以下)
【0100】
(2)耐指紋性
各実施例および各比較例のメラミン化粧材の意匠面に、指紋を付着させ、目視で観察し、以下の基準で評価を実施した。
【0101】
◎: 比較例1よりも、明らかに指紋が目立たない
○: 比較例1よりも、指紋が目立たない
×: 指紋が目立つ(比較例1と同等以下)
【0102】
(3)外観(白化・濁り)
各実施例および各比較例のメラミン化粧材の意匠面を色々な角度から目視で観察し、以下の基準で評価を実施した。
【0103】
◎: 白化・濁りは見られない
○: わずかに白化・濁りは見られるが、実用上問題ない
×: 白化・濁りが見られる
【0104】
(4)密着性
各実施例および各比較例のメラミン化粧材の意匠面に、セロハンテープ(ニチバン社製、商品名「セロテープ(産業用、「セロテープ」は登録商標) No.405 18mm×35m」)を貼り付け、貼り付けた箇所をしっかりと指で擦り付ける(テープを通して見られる色が均一に変化していることを確認する)。貼り付け後、5分以内に、60度の方向へ勢いよく引き剥がし、以下の基準で評価を実施。
【0105】
○: 剥離なし
×: 剥離あり
【0106】
(5)常温曲げ性(内曲げ、外曲げ)
各実施例および各比較例のメラミン化粧材を規定Rの冶具にあてて曲げ、以下の基準で評価を実施した。
【0107】
内曲げ
○: 4mmRで曲げて、クラック等の欠点がない
×: 4mmRで曲げて、クラック等の欠点がある
外曲げ
○: 10mmRで曲げて、クラック等の欠点がない
×: 10mmRで曲げて、クラック等の欠点がある
【0108】
(6)表面硬度(鉛筆硬度)試験
各実施例および各比較例のメラミン化粧材をJIS K5600に準拠した鉛筆硬度試験により評価を行った。
【0109】
○: 硬度が5H以上
×: 硬度が4H以下
【0110】
(7)耐熱性
JIS K6902の耐熱性試験に準拠した方法で処理を行い、試験後に、膨れ、剥離、クラック等異常の有無を確認した。
【0111】
○: 無し
×: 有り
【0112】
(8)耐熱水性
JIS K6902の耐熱水性試験に準拠した方法で処理を行い、試験後に、膨れ、白化の有無を確認した。
【0113】
○: 無し
×: 有り
【0114】
(9)耐汚染性試験
JIS K6902の耐汚染性試験に準拠した方法で処理を行い、試験後に、表面の汚染材料残りの有無を確認した。
【0115】
○: 無し
×: 有り
【0116】
(10)耐光性試験
JIS K6902の耐光性試験に準拠した方法で測定される色差△Eおよび等級を確認し、以下の基準で評価を実施した。
【0117】
△E
○: 168時間放置後△Eが3.0以下
×: 168時間放置後△Eが3.0よりも大きい
等級
○: 168時間放置後等級が3以上
×: 168時間放置後等級が2以下
【0118】
(11)耐摩耗性試験
JIS K6902の耐摩耗性試験に準拠した方法で測定される摩耗量および摩耗値を確認し、以下の基準で評価を実施した。
【0119】
摩耗量
○: 0.1g/100以下
×: 0.1g/100よりも大きい
摩耗値
○:垂直面:150以上、水平面:300以上
×:垂直面:150より小さい、水平面:300よりも小さい
【0120】
(12)耐クラック性試験
JIS K6902の耐クラック性試験に準拠した方法で処理を行い、試験後に、クラックの有無・程度を確認し、以下の基準で評価を実施した。
【0121】
○: 等級3以上
×: 等級2以下
【0122】
(13)耐煮沸性試験
JIS K6902の耐煮沸性試験に準拠した方法で測定される重量増加率、試験後外観を、以下の基準で評価を実施した。
【0123】
重量増加率
○: 16%以下
×: 16%よりも大きい
試験後外観
○: 膨れ、剥離のないこと
×: 膨れ、剥離がある
【0124】
(14)寸法安定性試験
JIS K6902の寸法安定性試験に準拠した方法で測定されるタテ総変化率、ヨコ総変化率を、以下の基準で評価を実施した。
【0125】
タテ総変化率
○: 1.1%以下
×: 1.1%よりも大きい
ヨコ総変化率
○: 1.4%以下
×: 1.4%よりも大きい
【0126】
(15)発熱性(不燃性)試験
日本建築総合試験場の業務標準「防耐火性能試験・評価業務方法書」4.10不燃性能試験・評価方法における、(2)ii)4.10.2の発熱性試験・評価方法により実施した。
【0127】
上記業務標準「防耐火性能試験・評価業務方法書」の上記項目には、建築基準法第2条第9号(不燃材料)の規定に基づく認定に係わる性能評価方法について記載されている。
評価は以下の基準に基づいて行った。
【0128】
総発熱量
○: 8MJ/m
2以下
×: 8MJ/m
2よりも大きい
最高発熱速度
○: 最高発熱速度が10秒以上連続して200KW/m
2を超えないこと
×: 上記範囲を満たさない
貫通穴・亀裂
○: 貫通穴や裏面に達する亀裂がない
×: 貫通穴や裏面に達する亀裂がある
これらの結果を表2に示した。
【0129】
【表2】
【0130】
表2から解るように、本発明のメラミン化粧材は、化粧柄を鮮明に表示できるものであった。また、本発明のメラミン化粧材は、指紋等が目立ちにくいとともに、各種耐久性にも優れたものであった。これに対して、比較例1のメラミン化粧材は、化粧柄を鮮明に表示できず、指紋等が目立つものであった。また、比較例2、3のメラミン化粧材は、十分な耐久性を有するものではなかった。