(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同一符号を付し、その詳細な説明は重複しないように適宜省略される。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは必ずしも一致していない。また、「〜」は特に断りがなければ、以上から以下を表す。
【0011】
はじめに、本実施形態に係る熱伝導性シートについて説明する。
【0012】
本実施形態に係る熱伝導性シートは、熱硬化性樹脂(A)と、熱硬化性樹脂(A)中に分散された無機充填材(B)とを含む。
そして、本実施形態に係る熱伝導性シートの硬化物は、JIS K6911に準拠し、印加電圧1000Vで電圧印加後1分後に測定される、175℃での体積抵抗率が1.0×10
8Ω・m以上であり、好ましくは1.0×10
9Ω・m以上であり、特に好ましくは1.0×10
10Ω・m以上である。175℃での体積抵抗率の上限値は特に限定されないが、例えば、1.0×10
13Ω・m以下である。なお、本実施形態において、熱伝導性シートの硬化物は、Bステージ状態の熱伝導性シートを180℃、10MPaで40分間熱処理することにより硬化して得られたものである。
ここで、175℃での体積抵抗率は、熱伝導性シートにおける高温での絶縁性の指標を表している。すなわち、175℃での体積抵抗率が高いほど、高温での絶縁性が優れることを意味する。
なお、本実施形態において、熱伝導性シートはBステージ状態のものをいう。また、熱伝導性シートを硬化させたものを「熱伝導性シートの硬化物」と呼ぶ。また、熱伝導性シートを半導体装置に適用し、硬化させたものを「熱伝導材」と呼ぶ。
【0013】
熱伝導性シートは、たとえば、半導体装置内の高熱伝導性が要求される接合界面に設けられ、発熱体から放熱体への熱伝導を促進する。これにより、半導体チップ等における特性変動に起因した故障を抑え、半導体装置の安定性の向上が図られている。
本実施形態に係る熱伝導性シートを適用した半導体装置の一例としては、たとえば、半導体チップがヒートシンク(金属板)上に設けられており、ヒートシンクの半導体チップが接合された面とは反対側の面に、熱伝導材が設けられた構造が挙げられる。
また、本実施形態に係る熱伝導性シートを適用した半導体パッケージの他の例としては、熱伝導材と、熱伝導材の一方の面に接合した半導体チップと、上記熱伝導材の上記一方の面と反対側の面に接合した金属部材と、上記熱伝導材、上記半導体チップおよび上記金属部材を封止する封止樹脂と、を備えるものが挙げられる。
【0014】
本発明者の検討によれば、熱伝導性シートの硬化物のガラス転移温度を高めることにより、熱伝導性シートの硬化物の絶縁性をある程度向上できることが明らかになった。しかし、ガラス転移温度を高めるだけでは、高温において、まだまだ十分な絶縁性が得られなかった。
そこで、本発明者は、上記事情に鑑みて鋭意検討した結果、熱伝導性シートの硬化物のβ緩和が小さいほど、熱伝導性シートの高温での体積抵抗率が向上することを見出した。この理由としては、β緩和が低いほど、高温において熱伝導性シートの硬化物中の導電性成分の運動開放が抑制されるからだと考えられる。
導電性成分の運動開放が抑制されると、温度上昇により熱伝導性シートの硬化物の体積抵抗率が低下することを抑制できる。そのため、本実施形態において、熱伝導性シートのβ緩和を抑制することで、上記175℃での体積抵抗率を達成できる。
上記175℃での体積抵抗率を満たす本実施形態に係る熱伝導性シートは、高温での熱伝導性シートの絶縁性に優れ、絶縁信頼性の高い半導体装置を実現できる。
【0015】
本実施形態に係る熱伝導性シートの硬化物の175℃での体積抵抗率は、熱伝導性シートを構成する各成分の種類や配合割合、および熱伝導性シートの作製方法を適切に調節することにより制御することが可能である。
本実施形態においては、とくに熱硬化性樹脂(A)の種類を適切に選択することや、熱硬化性樹脂(A)および無機充填材(B)を添加した樹脂ワニスに対しエージングを行うこと、当該エージングにおける加熱条件等が、175℃での体積抵抗率を制御するための因子として挙げられる。
【0016】
本実施形態に係る熱伝導性シートの硬化物は、下記条件で得られた抽出水をイオンクロマトグラフにより分析することにより測定されるイオンの総量が、好ましくは30,000ppm以下であり、より好ましくは20,000ppm以下である。
ここで、上記イオンは、Li
+、Na
+、NH
4+、K
+、Ca
2+、Mg
2+、F
−、Cl
−、NO
22−、Br
−、NO
3−、PO
43−、SO
42−、(COO)
22−、CH
3COO
−、およびHCOO
−から選択される一種または二種以上である。
(条件)
凍結粉砕させた熱伝導性シートの硬化物2gに対して40mLの純水を加え、125℃20時間熱水抽出し、抽出水を得る。
【0017】
上記イオンの総量が上記上限値以下であることにより、高温での熱伝導性シートの絶縁性をより一層向上させることができる。熱伝導性シートを構成する各成分中のイオン性不純物の量を調整することや、加水分解してイオンを生成する無機充填材を含有する場合は、表面積の小さい無機充填材を選択することで熱伝導性シートの硬化物中の上記イオンの総量を調整することができる。
【0018】
本実施形態に係る熱伝導性シートは、昇温速度5℃/min、周波数1Hzの条件で動的粘弾性測定により測定される、当該熱伝導性シートの硬化物のガラス転移温度が好ましくは175℃以上であり、より好ましくは190℃以上である。上記ガラス転移温度の上限値は特に限定されないが、例えば、300℃以下である。
ここで、熱伝導性シートの硬化物のガラス転移温度は次のように測定できる。まず、熱伝導性シートを180℃、10MPaで40分間熱処理することにより、熱伝導性シートの硬化物を得る。次いで、得られた硬化物のガラス転移温度(Tg)を、DMA(動的粘弾性測定)により昇温速度5℃/min、周波数1Hzの条件で測定する。
ガラス転移温度が上記下限値以上であると、導電性成分の運動開放をより一層抑制できるため、温度上昇による熱伝導性シートの絶縁性の低下をより一層抑制できる。その結果、より一層絶縁信頼性に優れた半導体装置を実現できる。
ガラス転移温度は熱伝導性シートを構成する各成分の種類や配合割合、および熱伝導性シートの作製方法を適切に調節することにより制御することができる。
【0019】
本実施形態に係る熱伝導性シートは、たとえば、半導体チップ等の発熱体と当該発熱体を搭載するリードフレーム、配線基板(インターポーザ)等の基板との間、あるいは、当該基板とヒートシンク等の放熱部材との間に設けられる。これにより、半導体装置の絶縁性を保ちつつ、上記発熱体から生じる熱を、半導体装置の外部へ効果的に放散させることができる。このため、半導体装置の絶縁信頼性を向上させることが可能となる。
【0020】
本実施形態に係る熱伝導性シートの平面形状は、特に限定されず、放熱部材や発熱体等の形状に合わせて適宜選択することが可能であるが、たとえば矩形とすることができる。熱伝導性シートの硬化物の膜厚は、50μm以上250μm以下であることが好ましい。これにより、機械的強度や耐熱性の向上を図りつつ、発熱体からの熱をより効果的に放熱部材へ伝えることができる。さらに、熱伝導材の放熱性と絶縁性のバランスがより一層優れる。
【0021】
本実施形態に係る熱伝導性シートは、熱硬化性樹脂(A)と、熱硬化性樹脂(A)中に分散された無機充填材(B)とを含む。
【0022】
(熱硬化性樹脂(A))
熱硬化性樹脂(A)としては、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノールアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、シアネート樹脂等が挙げられる。
熱硬化性樹脂(A)として、これらの中の1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
このような熱硬化性樹脂(A)を使用することで、本実施形態に係る熱伝導性シートの硬化物のガラス転移温度を高くするとともに、熱伝導性シートの硬化物のβ緩和を抑制し、高温での体積抵抗率の増加を抑制することができる。なお、熱伝導性シートの硬化物のβ緩和は、例えば、誘電損失率および比誘電率の変化により評価することができる。
熱硬化性樹脂(A)の中でも、175℃での体積抵抗率をより一層向上させる観点から、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂が特に好ましい。
【0023】
本実施形態に係る熱伝導性シート中に含まれる熱硬化性樹脂(A)の含有量は、当該熱伝導性シート100質量%に対し、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上28質量%以下がより好ましい。熱硬化性樹脂(A)の含有量が上記下限値以上であると、ハンドリング性が向上し、熱伝導性シートを形成するのが容易となる。熱硬化性樹脂(A)の含有量が上記上限値以下であると、熱伝導性シートの強度や難燃性がより一層向上したり、熱伝導性シートの熱伝導性がより一層向上したりする。
【0024】
(無機充填材(B))
無機充填材(B)としては、たとえばシリカ、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
無機充填材(B)としては、本実施形態に係る熱伝導性シートの熱伝導性をより一層向上させる観点から、鱗片状窒化ホウ素の一次粒子を凝集させることにより形成される二次凝集粒子であることが好ましい。
【0025】
鱗片状窒化ホウ素を凝集させることにより形成される二次凝集粒子は、たとえば鱗片状窒化ホウ素を、スプレードライ法等を用いて凝集させたあと、これを焼成することにより形成することができる。焼成温度は、たとえば1200〜2500℃である。
このように、鱗片状窒化ホウ素を焼結させて得られる二次凝集粒子を用いる場合には、熱硬化性樹脂(A)中における無機充填材(B)の分散性を向上させる観点から、熱硬化性樹脂(A)としてジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂がとくに好ましい。
【0026】
鱗片状窒化ホウ素を凝集させることにより形成される二次凝集粒子の平均粒径は、たとえば5μm以上180μm以下であることが好ましく、10μm以上100μm以下であることがより好ましい。これにより、熱伝導性と絶縁性のバランスにより一層優れた熱伝導性シートを実現することができる。
【0027】
上記二次凝集粒子を構成する鱗片状窒化ホウ素の一次粒子の平均長径は、好ましくは0.01μm以上20μm以下であり、より好ましくは0.1μm以上10μm以下である。これにより、熱伝導性と絶縁性のバランスにより一層優れた熱伝導性シートを実現することができる。
なお、この平均長径は電子顕微鏡写真により測定することができる。たとえば、以下の手順で測定する。まず、二次凝集粒子をミクロトームなどで切断しサンプルを作製する。次いで、走査型電子顕微鏡により、数千倍に拡大した二次凝集粒子の断面写真を数枚撮影する。次いで、任意の二次凝集粒子を選択し、写真から鱗片状窒化ホウ素の一次粒子の長径を測定する。このとき、10個以上の一次粒子について長径を測定し、それらの平均値を平均長径とする。
【0028】
本実施形態に係る熱伝導性シート中に含まれる無機充填材(B)の含有量は、当該熱伝導性シート100質量%に対し、50質量%以上95質量%以下であることが好ましく、55質量%以上88質量%以下であることがより好ましく、60質量%以上80質量%以下であることが特に好ましい。
無機充填材(B)の含有量を上記下限値以上とすることにより、熱伝導性シートにおける熱伝導性や機械的強度の向上をより効果的に図ることができる。一方で、無機充填材(B)の含有量を上記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の成膜性や作業性を向上させ、本熱伝導性シートの膜厚の均一性をより一層良好なものとすることができる。
【0029】
本実施形態に係る無機充填材(B)は、熱伝導性シートの熱伝導性をより一層向上させる観点から、上記二次凝集粒子に加えて、二次凝集粒子を構成する鱗片状窒化ホウ素の一次粒子とは別の鱗片状窒化ホウ素の一次粒子をさらに含むのが好ましい。この鱗片状窒化ホウ素の一次粒子の平均長径は、好ましくは0.01μm以上20μm以下であり、より好ましくは0.1μm以上10μm以下である。
これにより、熱伝導性と絶縁性のバランスにより一層優れた熱伝導性シートを実現することができる。
【0030】
(硬化剤(C))
本実施形態に係る熱伝導性シートは、熱硬化性樹脂(A)としてエポキシ樹脂を用いる場合、さらに硬化剤(C)を含むのが好ましい。
硬化剤(C)としては、硬化触媒(C−1)およびフェノール系硬化剤(C−2)から選択される1種以上を用いることができる。
硬化触媒(C−1)としては、たとえばナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)等の有機金属塩;トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の3級アミン類;2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジエチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類;トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン、1,2−ビス−(ジフェニルホスフィノ)エタン等の有機リン化合物;フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノール等のフェノール化合物;酢酸、安息香酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸;等、またはこの混合物が挙げられる。硬化触媒(C−1)として、これらの中の誘導体も含めて1種類を単独で用いることもできるし、これらの誘導体も含めて2種類以上を併用したりすることもできる。
本実施形態に係る熱伝導性シート中に含まれる硬化触媒(C−1)の含有量は、特に限定されないが、熱伝導性シート100質量%に対し、0.001質量%以上1質量%以下が好ましい。
【0031】
また、フェノール系硬化剤(C−2)としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、アミノトリアジンノボラック樹脂、ノボラック樹脂、トリスフェニルメタン型のフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物;レゾール型フェノール樹脂等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
これらの中でも、ガラス転移温度の向上及び線膨張係数の低減の観点から、フェノール系硬化剤(C−2)がノボラック型フェノール樹脂またはレゾール型フェノール樹脂が好ましい。
フェノール系硬化剤(C−2)の含有量は、特に限定されないが、熱伝導性シート100質量%に対し、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0032】
(カップリング剤(D))
さらに、本実施形態に係る熱伝導性シートは、カップリング剤(D)を含んでもよい。カップリング剤(D)は、熱硬化性樹脂(A)と無機充填材(B)との界面の濡れ性を向上させることができる。
【0033】
カップリング剤(D)としては、通常用いられるものなら何でも使用できるが、具体的にはエポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤の中から選ばれる1種以上のカップリング剤を使用することが好ましい。
カップリング剤(D)の添加量は無機充填材(B)の比表面積に依存するので、特に限定されないが、無機充填材(B)100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、特に0.5質量部以上7質量部以下が好ましい。
【0034】
(フェノキシ樹脂(E))
さらに、本実施形態に係る熱伝導性シートは、さらにフェノキシ樹脂(E)を含んでもよい。フェノキシ樹脂(E)を含むことにより熱伝導性シートの耐屈曲性をより一層向上できる。
また、フェノキシ樹脂(E)を含むことにより、熱伝導性シートの弾性率を低下させることが可能となり、熱伝導性シートの応力緩和力を向上させることができる。
また、フェノキシ樹脂(E)を含むと、粘度上昇により流動性が低減し、ボイド等が発生することを抑制できる。また、熱伝導性シートと放熱部材との密着性を向上できる。これらの相乗効果により、半導体装置の絶縁信頼性をより一層高めることができる。
【0035】
フェノキシ樹脂(E)としては、たとえば、ビスフェノール骨格を有するフェノキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するフェノキシ樹脂、アントラセン骨格を有するフェノキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。また、これらの骨格を複数種有した構造のフェノキシ樹脂を用いることもできる。
【0036】
フェノキシ樹脂(E)の含有量は、たとえば、熱伝導性シート100質量%に対し、3質量%以上10質量%以下である。
【0037】
(その他の成分)
本実施形態に係る熱伝導性シートには、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、レベリング剤等を含むことができる。
【0038】
本実施形態に係る熱伝導性シートは、たとえば次のようにして作製することができる。
まず、上述の各成分を溶媒へ添加して、ワニス状の樹脂組成物を得る。本実施形態においては、たとえば溶媒中に熱硬化性樹脂(A)等を添加して樹脂ワニスを作製したのち、当該樹脂ワニスへ無機充填材(B)を入れて三本ロール等を用いて混練することにより樹脂組成物を得ることができる。これにより、無機充填材(B)をより均一に、熱硬化性樹脂(A)中へ分散させることができる。
上記溶媒としては特に限定されないが、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0039】
次いで、熱伝導性シート用樹脂組成物に対しエージングを行う。これにより、得られる熱伝導性シートのβ緩和を抑制し、高温での体積抵抗率の増加を抑制することができる。これは、エージングによって無機充填材(B)の熱硬化性樹脂(A)に対する親和性が上昇すること等が要因として推定される。エージングは、たとえば30〜80℃、12〜24時間の条件により行うことができる。
【0040】
次いで、上記樹脂組成物をシート状に成形して、熱伝導性シートを形成する。本実施形態においては、たとえば基材上にワニス状の上記樹脂組成物を塗布した後、これを熱処理して乾燥することにより熱伝導性シートを得ることができる。基材としては、たとえば放熱部材やリードフレーム、剥離可能なキャリア材等を構成する金属箔が挙げられる。また、樹脂組成物を乾燥するための熱処理は、たとえば80〜150℃、5分〜1時間の条件において行われる。樹脂シートの膜厚は、たとえば60μm以上500μm以下である。
【0041】
次に、本実施形態に係る半導体装置について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置100の断面図である。
【0042】
以下においては、説明を簡単にするため、半導体装置100の各構成要素の位置関係(上下関係等)が各図に示す関係であるものとして説明を行う場合がある。ただし、この説明における位置関係は、半導体装置100の使用時や製造時の位置関係とは無関係である。
【0043】
本実施形態では、金属板がヒートシンクである例を説明する。本実施形態に係る半導体装置100は、ヒートシンク130と、ヒートシンク130の第1面131側に設けられた半導体チップ110と、ヒートシンク130の第1面131とは反対側の第2面132に接合された熱伝導材140と、半導体チップ110およびヒートシンク130を封止している封止樹脂180と、を備えている。
以下、詳細に説明する。
【0044】
半導体装置100は、例えば、上記の構成の他に、導電層120、金属層150、リード160およびワイヤ(金属配線)170を有する。
【0045】
半導体チップ110の上面111には図示しない電極パターンが形成され、半導体チップ110の下面112には図示しない導電パターンが形成されている。半導体チップ110の下面112は、銀ペースト等の導電層120を介してヒートシンク130の第1面131に固着されている。半導体チップ110の上面111の電極パターンは、ワイヤ170を介してリード160の電極161に対して電気的に接続されている。
【0046】
ヒートシンク130は、金属により構成されている。
【0047】
封止樹脂180は、半導体チップ110およびヒートシンク130の他に、ワイヤ170と、導電層120と、リード160の一部分ずつと、を内部に封止している。各リード160の他の一部分ずつは、封止樹脂180の側面より、該封止樹脂180の外部に突出している。本実施形態の場合、例えば、封止樹脂180の下面182とヒートシンク130の第2面132とが互いに同一平面上に位置している。
【0048】
熱伝導材140の上面141は、ヒートシンク130の第2面132と、封止樹脂180の下面182と、に対して貼り付けられている。つまり、封止樹脂180は、ヒートシンク130の周囲において熱伝導材140のヒートシンク130側の面(上面141)に接している。
【0049】
熱伝導材140の下面142には、金属層150の上面151が固着されている。すなわち、金属層150の一方の面(上面151)は、熱伝導材140におけるヒートシンク130側とは反対側の面(下面142)に対して固着されている。
【0050】
平面視において、金属層150の上面151の外形線と、熱伝導材140におけるヒートシンク130側とは反対側の面(下面142)の外形線と、が重なっていることが好ましい。
【0051】
また、金属層150は、その一方の面(上面151)に対する反対側の面(下面152)の全面が封止樹脂180から露出している。なお、本実施形態の場合、上記のように、熱伝導材140は、その上面141が、ヒートシンク130の第2面132および封止樹脂180の下面182に貼り付けられているため、熱伝導材140は、その上面141を除き、封止樹脂180の外部に露出している。そして、金属層150は、その全体が封止樹脂180の外部に露出している。
【0052】
なお、ヒートシンク130の第2面132および第1面131は、例えば、それぞれ平坦に形成されている。
【0053】
半導体装置100の実装床面積は、特に限定されないが、一例として、10×10mm以上100×100mm以下とすることができる。ここで、半導体装置100の実装床面積とは、金属層150の下面152の面積である。
【0054】
また、一のヒートシンク130に搭載された半導体チップ110の数は、特に限定されない。1つであってもよいし、複数であってもよい。例えば、3つ以上(6個等)とすることもできる。すなわち、一例として、一のヒートシンク130の第1面131側に3つ以上の半導体チップ110が設けられ、封止樹脂180はこれら3つ以上の半導体チップ110を一括して封止してもよい。
【0055】
半導体装置100は、例えば、パワー半導体装置である。この半導体装置100は、例えば、封止樹脂180内に2つの半導体チップ110が封止された2in1、封止樹脂180内に6つの半導体チップ110が封止された6in1または封止樹脂180内に7つの半導体チップ110が封止された7in1の構成とすることができる。
【0056】
次に、本実施形態に係る半導体装置100を製造する方法の一例を説明する。
【0057】
先ず、ヒートシンク130および半導体チップ110を準備し、銀ペースト等の導電層120を介して、半導体チップ110の下面112をヒートシンク130の第1面131に固着する。
【0058】
次に、リード160を含むリードフレーム(全体図示略)を準備し、半導体チップ110の上面111の電極パターンとリード160の電極161とをワイヤ170を介して相互に電気的に接続する。
【0059】
次に、半導体チップ110と、導電層120と、ヒートシンク130と、ワイヤ170と、リード160の一部分ずつと、を封止樹脂180により一括して封止する。
【0060】
次に、熱伝導材140を準備し、この熱伝導材140の上面141を、ヒートシンク130の第2面132と、封止樹脂180の下面182と、に対して貼り付ける。更に、金属層150の一方の面(上面151)を、熱伝導材140におけるヒートシンク130側とは反対側の面(下面142)に対して固着する。なお、熱伝導材140をヒートシンク130および封止樹脂180に対して貼り付ける前に、予め熱伝導材140の下面142に金属層150を固着しておいてもよい。
次に、各リード160をリードフレームの枠体(図示略)から切断する。こうして、
図1に示すような構造の半導体装置100が得られる。
【0061】
以上のような実施形態によれば、半導体装置100は、ヒートシンク130と、ヒートシンク130の第1面131側に設けられた半導体チップ110と、ヒートシンク130の第1面131とは反対側の第2面132に貼り付けられた絶縁性の熱伝導材140と、半導体チップ110およびヒートシンク130を封止している封止樹脂180と、を備えている。
【0062】
上述のように、半導体装置のパッケージがある程度よりも小さい場合には熱伝導材の絶縁性の悪化が問題として顕在化しなくても、半導体装置のパッケージが大面積となるほど、熱伝導材の面内で電界が最も集中する箇所での電界が強くなる。このため、熱伝導材の僅かな膜厚の変動による絶縁性の悪化も、問題として顕在化する可能性があると考えられる。
これに対し、本実施形態に係る半導体装置100は、例えば、その実装床面積が10×10mm以上100×100mm以下の大型のパッケージであったとしても、上記の構造の熱伝導材140を備えることにより、十分な絶縁信頼性を得ることが期待できる。
【0063】
また、本実施形態に係る半導体装置100は、例えば、一のヒートシンク130の第1面131側に3つ以上の半導体チップ110が設けられ、これら3つ以上の半導体チップを封止樹脂180が一括して封止している構造のものであったとしても、すなわち、半導体装置100が大型のパッケージであったとしても、上記の構造の熱伝導材140を備えることにより、十分な絶縁信頼性を得ることが期待できる。
【0064】
また、熱伝導材140におけるヒートシンク130側とは反対側の面(下面142)に対して一方の面(上面151)が固着された金属層150を半導体装置100が更に備える場合、この金属層150によって好適に放熱することができるため、半導体装置100の放熱性が向上する。
【0065】
また、金属層150の上面151が熱伝導材140の下面142よりも小さいと、熱伝導材140の下面142が外部に露出し、異物などの突起物により熱伝導材140にクラックが発生する懸念が生じる。一方、金属層150の上面151が熱伝導材140の下面142よりも大きいと金属層150の端部が宙に浮いたような格好になり、製造工程での取り扱いの際などにおいて、金属層150が剥がれてしまう可能性がある。
これに対し、平面視において、金属層150の上面151の外形線と、熱伝導材140の下面142の外形線と、が重なっている構造とすることにより、熱伝導材140におけるクラックの発生および金属層150の剥離を抑制することができる。
【0066】
また、金属層150の下面152の全面が封止樹脂180から露出しているので、金属層150の下面152の全面での放熱が可能となり、半導体装置100の高い放熱性が得られる。
【0067】
図2は、本発明の一実施形態に係る半導体装置100の断面図である。この半導体装置100は、以下に説明する点で、
図1に示した半導体装置100と相違し、その他の点では、
図1に示した半導体装置100と同様に構成されている。
【0068】
本実施形態の場合、熱伝導材140は、封止樹脂180内に封止されている。また、金属層150も、その下面152を除き、封止樹脂180内に封止されている。そして、金属層150の下面152と、封止樹脂180の下面182とが互いに同一平面上に位置している。
【0069】
なお、
図2には、ヒートシンク130の第1面131に少なくとも2つ以上の半導体チップ110が搭載されている例が示されている。これら半導体チップ110の上面111の電極パターンどうしが、ワイヤ170を介して相互に電気的に接続されている。第1面131には、例えば、合計6つの半導体チップ110が搭載されている。すなわち、例えば、2つずつの半導体チップ110が、
図2の奥行き方向において3列に配置されている。
【0070】
なお、上記の
図1または
図2に示した半導体装置100を基板(図示略)上に搭載することにより、基板と、半導体装置100と、を備えるパワーモジュールが得られる。
【0071】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 熱硬化性樹脂と、前記熱硬化性樹脂中に分散された無機充填材とを含む熱伝導性シートであって、
JIS K6911に準拠し、印加電圧1000Vで電圧印加後1分後に測定される、175℃での当該熱伝導性シートの硬化物の体積抵抗率が1.0×108Ω・m以上である、熱伝導性シート。
2. 1.に記載の熱伝導性シートにおいて、前記体積抵抗率が1.0×109Ω・m以上である、熱伝導性シート。
3. 1.または2.に記載の熱伝導性シートにおいて、下記条件で得られた抽出水をイオンクロマトグラフにより分析することにより測定される、前記熱伝導性シートの硬化物中のイオンの総量が30,000ppm以下であり、
前記イオンがLi+、Na+、NH4+、K+、Ca2+、Mg2+、F−、Cl−、NO22−、Br−、NO3−、PO43−、SO42−、(COO)22−、CH3COO−、およびHCOO−から選択される一種または二種以上である、熱伝導性シート。
(条件)
凍結粉砕させた当該熱伝導性シートの硬化物2gに対して40mLの純水を加え、125℃20時間熱水抽出し、抽出水を得る
4. 1.乃至3.いずれかに記載の熱伝導性シートにおいて、前記熱硬化性樹脂がジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノールアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、およびシアネート樹脂から選択される一種または二種以上である、熱伝導性シート。
5. 1.乃至4.いずれかに記載の熱伝導性シートにおいて、昇温速度5℃/min、周波数1Hzの条件で動的粘弾性測定により測定される、当該熱伝導性シートの硬化物のガラス転移温度が175℃以上である、熱伝導性シート。
6. 1.乃至5.いずれかに記載の熱伝導性シートにおいて、前記無機充填材は、鱗片状窒化ホウ素の一次粒子により構成されている二次凝集粒子である、熱伝導性シート。
7. 6.に記載の熱伝導性シートにおいて、前記二次凝集粒子の平均粒径が5μm以上180μm以下である、熱伝導性シート。
8. 6.または7.に記載の熱伝導性シートにおいて、前記二次凝集粒子を構成する前記一次粒子の平均長径が0.01μm以上20μm以下である、熱伝導性シート。
9. 1.乃至8.いずれかに記載の熱伝導性シートにおいて、前記無機充填材の含有量が、当該熱伝導性シート100質量%に対し、50質量%以上95質量%以下である、熱伝導性シート。
10. 金属板と、
前記金属板の第1面側に設けられた半導体チップと、
前記金属板の前記第1面とは反対側の第2面に接合された熱伝導材と、
前記半導体チップおよび前記金属板を封止する封止樹脂とを備え、
前記熱伝導材が、1.乃至9.いずれかに記載の熱伝導性シートにより形成された半導体装置。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例では、部はとくに特定しない限り質量部を表す。また、それぞれの厚みは平均膜厚で表わされている。
【0073】
(凝集窒化ホウ素の作製)
ホウ酸メラミンと鱗片状窒化ホウ素粉末(平均長径:15μm)を混合して得られた混合物を、ポリアクリル酸アンモニウム水溶液へ添加し、2時間混合して噴霧用スラリーを調製した。次いで、このスラリーを噴霧造粒機に供給し、アトマイザーの回転数15000rpm、温度200℃、スラリー供給量5ml/minの条件で噴霧することにより、複合粒子を作製した。次いで、得られた複合粒子を、窒素雰囲気下、2000℃の条件で焼成することにより、平均粒径が80μmの凝集窒化ホウ素を得た。
ここで、凝集窒化ホウ素の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA社製、LA−500)により、粒子の粒度分布を体積基準で測定し、そのメディアン径(D
50)とした。
【0074】
(熱伝導性シートの作製)
実施例1〜7および比較例1〜2について、以下のように熱伝導性シートを作製した。
まず、表1に示す配合に従い、熱硬化性樹脂と、硬化剤とを溶媒であるメチルエチルケトンに添加し、これを撹拌して熱硬化性樹脂組成物の溶液を得た。次いで、この溶液に無機充填材を入れて予備混合した後、三本ロールにて混練し、無機充填材を均一に分散させた熱伝導性シート用樹脂組成物を得た。次いで、得られた熱伝導性シート用樹脂組成物に対し、60℃、15時間の条件によりエージングを行った。次いで、熱伝導性シート用樹脂組成物を、銅箔上にドクターブレード法を用いて塗布した後、これを100℃、30分間の熱処理により乾燥して、膜厚が400μmであるBステージ状の熱伝導性シートを作製した。
なお、表1中における各成分の詳細は下記のとおりである。
【0075】
比較例3については、熱伝導性シート用樹脂組成物に対してエージングを行わなかった点を除き、実施例1と同様にして熱伝導性シートを作製した。
なお、表1中における各成分の詳細は下記のとおりである。
【0076】
(熱硬化性樹脂(A))
エポキシ樹脂1:ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂(XD−1000、日本化薬社製)
エポキシ樹脂2:ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂(YX−4000、三菱化学社製)
エポキシ樹脂3:アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂(E201、出光興産社製)
エポキシ樹脂4:フェノールアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂(NC−2000−L、日本化薬社製)
エポキシ樹脂5:ビフェニルアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂(NC−3000、日本化薬社製)
エポキシ樹脂6:ナフタレンアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂(NC−7000、日本化薬社製)
エポキシ樹脂7:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(830S、大日本インキ社製)
エポキシ樹脂8:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(828、三菱化学社製)
シアネート樹脂1:フェノールノボラック型シアネート樹脂(PT−30、ロンザジャパン社製)
【0077】
(硬化触媒C−1)
硬化触媒1:2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(2PHZ−PW、四国化成社製)
硬化触媒2:トリフェニルホスフィン(北興化学社製)
(硬化剤C−2)
フェノール系硬化剤1:トリスフェノルメタン型フェノールノボラック樹脂(MEH−7500、明和化成社製)
【0078】
(無機充填材(B))
充填材1:上記作製例により作製された凝集窒化ホウ素
【0079】
(Tg(ガラス転移温度)の測定)
熱伝導性シートの硬化物のガラス転移温度を次のように測定した。まず、得られた熱伝導性シートを180℃、10MPaで40分間熱処理することにより、熱伝導性シートの硬化物を得た。次いで、得られた硬化物のガラス転移温度(Tg)を、DMA(動的粘弾性測定)により昇温速度5℃/min、周波数1Hzの条件で測定した。
【0080】
(イオンの総量の測定)
熱伝導性シートの硬化物中のイオンの総量を次のように測定した。まず、得られた熱伝導性シートを180℃、10MPaで40分間熱処理することにより、熱伝導性シートの硬化物を得た。次いで、得られた硬化物を凍結粉砕させた。凍結粉砕させた熱伝導性シート2gに対して40mLの純水を加え、125℃20時間熱水抽出し、抽出水を得た。
この抽出水について、ダイオネクスICS-3000型、ICS-2000型、DX-320型イオンクロマトグラフ装置を用いてLi
+、Na
+、NH
4+、K
+、Ca
2+、Mg
2+、F
−、Cl
−、NO
22−、Br
−、NO
3−、PO
43−、SO
42−、(COO)
22−、CH
3COO
−、およびHCOO
−から選択される一種または二種以上のイオンの総量を測定した。
ここで、イオンクロマトグラフ装置に検液及び標準溶液を導入し、検量線法により各イオン濃度を求め、試料からの溶出イオン量を算出した。
【0081】
(25℃および175℃における体積抵抗率の測定)
熱伝導性シートの硬化物の体積抵抗率を次のように測定した。まず、得られた熱伝導性シートを180℃、10MPaで40分間熱処理することにより、熱伝導性シートの硬化物を得た。次いで、JIS K6911に準拠し、得られた硬化物の体積抵抗率を、ULTRA HIGH RESISTANCE METER R8340A(エーディーシー社製)を用いて、印加電圧1000Vで電圧印加後、1分後に測定した。
なお、主電極は導電性ペーストを用いてφ25.4mmの円形状に作製した。またこのときガード電極は作成していない。対電極はシート作成時に、基材として用いた銅箔を利用した。
【0082】
(絶縁信頼性評価)
実施例1〜7および比較例1〜3のそれぞれについて、半導体パッケージの絶縁信頼性を次のように評価した。まず、熱伝導性シートの硬化物を用いて
図1に示す半導体パッケージを作製した。次いで、この半導体パッケージを用いて、温度85℃、湿度85%、交流印加電圧1.5kVの条件で連続湿中絶縁抵抗を評価した。なお、抵抗値10
6Ω以下を故障とした。評価基準は以下の通りである。
◎◎:300時間以上故障なし
◎ :200時間以上300時間未満で故障あり
○ :150時間以上200時間未満で故障あり
△ :100時間以上150時間未満で故障あり
× :100時間未満で故障あり
【0083】
175℃での体積抵抗率が本発明の範囲内である熱伝導性シートを用いた実施例1〜7の半導体パッケージは、絶縁信頼性に優れていた。
一方、175℃での体積抵抗率が本発明の範囲外である熱伝導性シートを用いた比較例1〜3の半導体パッケージは、絶縁信頼性に劣っていた。
【0084】
【表1】