(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記本体部主データ層および前記犠牲部主データ層を形成した後、前記本体部主データ層および前記犠牲部主データ層を硬化させてから、前記本体部主データ層および前記犠牲部主データ層の間引かれた部分に前記本体部形成用インクおよび前記犠牲部形成用インクを吐出する請求項1に記載の三次元造形物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付する図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細な説明をする。
【0015】
1.三次元造形用データの作成方法
まず、三次元造形用データの作成方法について説明する。
【0016】
三次元造形用データの作成方法は、層を積層することにより三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法に用いられるものである。
【0017】
図1は、形成すべき三次元造形物を構成する層のビットマップデータの部分拡大平面図、
図2は、
図1のビットマップデータにスムージング処理を施して得られる層のスムージング処理データの部分拡大平面図、
図3は、
図2のスムージング処理データにおける第1階調ドットと三次元造形物の表面側となる領域を階調反転した階調反転データの部分拡大平面図、
図4は、スムージング処理データの第1階調ドットと第1隣接ドットとを入れ換えた部分拡大平面図、
図5は、本体部主データの部分拡大平面図、
図6は、本体部副データの部分拡大平面図、
図7は、階調反転データの第2階調ドットと第2隣接ドットとを置き換えた部分拡大平面図、
図8は、犠牲部主データの部分拡大平面図、
図9は、犠牲部副データの部分拡大平面図、
図10は、本体部主データ層と犠牲部主データ層の部分拡大平面図、
図11は、形成した層の部分拡大平面図である。なお、各図において、紙面と垂直な方向が、層の厚さ方向となっている。
【0018】
本実施形態の三次元造形用データの作成方法は、製造する三次元造形物の三次元データAから、層の三次元データBを作成する工程と、作成した三次元データBを所定の解像度のビットマップデータ10に変換し、さらに、スムージング処理を行い、層のスムージング処理データ11を作成する工程と、を有している。
【0019】
また、本実施形態の三次元造形用データの作成方法は、スムージング処理データ11の階調表現された第1階調ドット(2A、2B、2C)と、当該階調ドットと層の内側で接する第1隣接ドット3とを入れ換えて、さらに、第1隣接ドット3を間引いたデータを本体部主データ12として保存する工程と、間引いた第1隣接ドット3で構成されたデータを本体部副データ13として保存する工程と、を有している。
【0020】
また、本実施形態の三次元造形用データの作成方法は、スムージング処理データ11における、第1階調ドット(2A、2B、2C)と三次元造形物の表面側となる領域を階調反転し、階調反転データ41を作成する工程と、第1階調ドット(2A、2B、2C)が階調反転した第2階調ドット(4A、4B、4C)と、第2階調ドット(4A、4B、4C)と層とは反対側で接する第2隣接ドット5とを入れ換えて、さらに、第2隣接ドット5を間引いたデータを犠牲部主データ42として保存する工程と、間引いた第2隣接ドット5で構成されたデータを犠牲部副データ43として保存する工程と、を有している。
【0021】
このようにして作成された三次元造形用データを用いて三次元造形物を製造することにより、ドット間段差(ジャギー)を緩和し、高い品質の三次元造形物を得ることができる。
【0022】
以下、詳細に説明する。
[ビットマップデータの作成]
まず、製造する三次元造形物の三次元モデル(三次元データA)を三次元CADソフト等で作成する。三次元データAは、例えば、STLやOBJやIGES等の所定のフォーマットで立体を表現した、3次元CADやCGのソフトウェアによって生成されたファイルである。一例として3次元モデルデータがSTLフォーマットのファイルである場合、三次元データAは、3つの頂点(座標値)を有する三角形の集合により立体を表現する。
【0023】
次に、作成した三次元データAを複数の2次元断面層の三次元データBに分割する。
次に、
図1に示すように、得られた各三次元データBを所定の解像度のビットマップデータ10に変換する。ビットマップデータ10は、複数のドット(通常ドット)1で構成されている。
【0024】
ここで、所定の解像度は、三次元造形物の製造に用いる装置で描画可能な解像度で定まるものである。
【0025】
[スムージング処理データおよび階調反転データの作成]
次に、形成したビットマップデータ10に対してスムージング処理を施す。これにより、
図2に示すような第1階調ドット(2A、2B、2C)と通常ドット1とで構成されたスムージング処理データ11が得られる。階調ドット(2A、2B、2C)は、XY解像度に起因するドット間段差が発生する箇所に生成されている。
【0026】
本実施形態では、グレースケール4階調で表現されたスムージング処理データ11となっており、通常ドット1が100%濃度で、第1階調ドット2Aが75%濃度で、第1階調ドット2Bが50%濃度で、第1階調ドット2Cが25%濃度で表現されている。
【0027】
さらに、得られたスムージング処理データ11の、第1階調ドット(2A、2B、2C)と三次元造形物の表面側の領域(
図2中の上側の白の領域)とを階調反転し、
図3に示すような階調反転データ41を得る。階調反転データ41は、
図3に示すように、第2階調ドット(4A、4B、4C)と通常ドットとで構成されている。なお、第2階調ドット4Aが75%濃度で、第2階調ドット4Bが50%濃度で、第2階調ドット4Cが25%濃度で表現されている。
【0028】
[本体部主データおよび本体部副データの作成]
本工程では、まず、
図4に示すように、形成したスムージング処理データ11の第1階調ドット(2A、2B、2C)と、当該階調ドットと層の内側で隣接している第1隣接ドット3を入れ換える。次に、入れ換えたデータから、第1隣接ドット3を間引いたデータ(
図5参照)を作成し、これを本体部主データ12として保存する。ここで、本体部とは、三次元造形物の実体部分のことを指す。
【0029】
一方、スムージング処理データ11から間引いた第1隣接ドット3で構成されたデータ(
図6参照)を、本体部副データ13として保存する。
【0030】
[犠牲部主データおよび犠牲部副データの作成]
本工程では、まず、
図7に示すように、形成した階調反転データ41の第2階調ドット(4A、4B、4C)と、当該階調ドットと第2階調ドット(4A、4B、4C)と層とは反対側で接する第2隣接ドット5を入れ換える。次に、入れ換えたデータから、第2隣接ドット5を間引いたデータ(
図8参照)を作成し、これを犠牲部主データ42として保存する。ここで、犠牲部とは、形成する三次元造形物の表面側の領域に設けられ、三次元造形物の造形を補助し、最終的に除去されるものを指す。
【0031】
一方、階調反転データ41から間引いた、第2隣接ドット5で構成されたデータ(
図9参照)を、犠牲部副データ43として保存する。
【0032】
このようにして得られた本体部主データ12、本体部副データ13、犠牲部主データ42および犠牲部副データ43で構成された三次元造形用データを元に、三次元造形物の製造を行う。このような三次元造形用データを用いることで、ドット間段差(ジャギー)を緩和され、高い品質の三次元造形物を製造することができる。
【0033】
2.三次元造形物の製造方法
次に、三次元造形物の製造方法について説明する。
【0034】
本実施形態の三次元造形物の製造方法は、上述したような三次元造形用データの作成方法によって得られた本体部主データ12、本体部副データ13、犠牲部主データ42および犠牲部副データ43を用いて形成した層を積層することにより、三次元造形物を製造する。
【0035】
本実施形態の三次元造形物の製造方法は、具体的には、本体部主データ12および犠牲部主データ42を元に本体部形成用インクおよび犠牲部形成用インクを用いて、本体部主データ層15および犠牲部主データ層45(
図10参照)を形成する第1吐出工程と、本体部主データ層15および犠牲部主データ層45を硬化させる第1硬化工程と、本体部主データ層15および犠牲部主データ層45に、本体部副データ13および犠牲部副データ43を元に、本体部主データ層15および犠牲部主データ層45の間引かれた部分(凹陥部151および凹陥部451)に本体部形成用インクおよび犠牲部形成用インクを吐出する第2吐出工程と、凹陥部151および凹陥部451に吐出した本体部形成用インクおよび犠牲部形成用インクを硬化して層(単位層)を形成する第2硬化工程と、を有する。
【0036】
以下、各工程について詳細に説明する。
[第1吐出工程]
まず、本体部主データ12および犠牲部主データ42を元に本体部形成用インクおよび犠牲部形成用インクをインクジェット方式により吐出して、
図10に示すような凹陥部151を備えた本体部主データ層15および凹陥部451を備えた犠牲部主データ層45を形成する(第1吐出工程)。なお、
図10中、凹陥部151および凹陥部451は、ドット柄で示しており、層の紙面垂直方向の厚さが他の部分よりも薄い部分である。
【0037】
本工程において、本体部形成用インクおよび犠牲部形成用インクの吐出量を、各階調ドットの濃淡度合によって制御する。これにより、凹陥部151および凹陥部451が形成される。
【0038】
第1階調ドットの濃淡度合(濃度)による本体部形成用インクの吐出量の制御は、第1隣接ドット3の濃度を100%としたときの第1階調ドットの濃度をX%としたとき、第1階調ドットの部分に吐出する本体部形成用インクの吐出量をX%に減量するよう制御する。
【0039】
また、同様に、第2階調ドットの濃淡度合(濃度)による犠牲部形成用インクの吐出量の制御は、第2隣接ドット5の濃度を100%としたときの第2階調ドットの濃度をY%としたとき、第2階調ドットの部分に吐出する犠牲部形成用インクの吐出量をY%に減量するよう制御する。
【0040】
より具体的には、第1階調ドット2A(濃度75%)および第2階調ドット4A(濃度75%)の場合の吐出量を、第1隣接ドット3(濃度100%)および第2隣接ドット5(濃度100%)に吐出する量の75%とし、第1階調ドット2B(濃度50%)および第2階調ドット4B(濃度50%)の場合の吐出量を、第1隣接ドット3および第2隣接ドット5に吐出する量の50%とし、第1階調ドット2C(濃度25%)および第2階調ドット4C(濃度25%)の場合の吐出量を、第1隣接ドット3および第2隣接ドット5に吐出する量の25%とするよう制御する。なお、通常ドット1には、第1隣接ドット3および第2隣接ドット5と同量の各インクを吐出する。
【0041】
インクジェット方式としては、ピエゾ方式や、インクを加熱して発生した泡(バブル)によりインクを吐出させる方式等を用いることができるが、インクの構成成分の変質のし難さ等の観点から、ピエゾ方式が好ましい。
【0042】
[第1硬化工程]
次に、本体部主データ層15および犠牲部主データ層45に含まれる硬化成分を硬化させる。第2吐出工程の前に本体部主データ層15および犠牲部主データ層45を硬化させることにより、本体部副データ13用の本体部形成用インクが、凹陥部151内部の壁面に沿って濡れ広がり易くなり、また、犠牲部副データ43用の犠牲部形成用インクが、凹陥部451内部の壁面に沿って濡れ広がり易くなる。
【0043】
本工程は、硬化成分(硬化性樹脂)の種類により異なるが、例えば、硬化成分(硬化性樹脂)が熱硬化性樹脂の場合、加熱により行うことができ、硬化成分(硬化性樹脂)が光硬化性樹脂の場合、対応する光の照射により行うことができる(例えば、硬化成分(硬化性樹脂)が紫外線硬化性樹脂の場合は紫外線の照射により行うことができる)。
【0044】
[第2吐出工程]
次に、本体部副データ13を元に、本体部主データ層15の凹陥部151の通常ドット部に比べ凹陥している階調ドット2A、2B、2Cの座標、すなわち入れ替え前に隣接ドット3が配置されていた座標に本体部形成用インクをインクジェット方式により吐出し、犠牲部副データ43を元に、犠牲部主データ層45の凹陥部451の通常ドット部に比べ凹陥している階調ドット4A、4B、4Cの座標、すなわち入れ替え前に隣接ドット5が配置されていた座標に犠牲部形成用インクをインクジェット方式により吐出する。本工程において、本体部形成用インクおよび犠牲部形成用インクは、各凹陥部内にほぼ同時に吐出される。
【0045】
凹陥部151内に吐出された本体部形成用インクは凹陥部151の内壁面に沿って濡れ広がり、凹陥部451内に吐出された犠牲部形成用インクは凹陥部451の内壁面に沿って濡れ広がる。そして、本体部形成用インクと犠牲部形成用インクとの界面を形成され、本体部形成用インクおよび犠牲部形成用インクによって凹陥部151と凹陥部451とで囲まれた領域が埋められる。これにより、ドット段差が緩和される。
【0046】
[第2硬化工程]
次に、凹陥部121および凹陥部451に吐出した本体部形成用インクおよび犠牲部形成用インクを硬化させ、層14および犠牲部44を得る。
【0047】
そして、上記工程を繰り返すことで、層14および犠牲部44を積層した後、犠牲部44が積層した部分を除去することにより、三次元造形物を得る。
【0048】
3.本体部形成用インク
本体部形成用インクは、少なくとも硬化性樹脂(硬化成分)を含むものである。
【0049】
(硬化性樹脂)
硬化性樹脂(硬化成分)としては、例えば、熱硬化性樹脂;可視光領域の光により硬化する可視光硬化性樹脂(狭義の光硬化性樹脂)、紫外線硬化性樹脂、赤外線硬化性樹脂等の各種光硬化性樹脂;X線硬化性樹脂等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
中でも、得られる三次元造形物の機械的強度や三次元造形物の生産性、本体部形成用インクの保存安定性等の観点から、特に、紫外線硬化性樹脂(重合性化合物)が好ましい。
【0051】
紫外線硬化性樹脂(重合性化合物)としては、紫外線照射により、光重合開始剤から生じるラジカル種またはカチオン種等により、付加重合または開環重合が開始され、重合体を生じるものが好ましく使用される。付加重合の重合様式として、ラジカル、カチオン、アニオン、メタセシス、配位重合が挙げられる。また、開環重合の重合様式として、カチオン、アニオン、ラジカル、メタセシス、配位重合が挙げられる。
【0052】
付加重合性化合物としては、例えば、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物等が挙げられる。付加重合性化合物として、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物が好ましく使用できる。
【0053】
エチレン性不飽和重合性化合物は、単官能の重合性化合物および多官能の重合性化合物、またはそれらの混合物の化学的形態をもつ。
【0054】
単官能の重合性化合物としては、例えば、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)や、そのエステル類、アミド類等が挙げられる。
【0055】
多官能の重合性化合物としては、不飽和カルボン酸と脂肪族の多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族のアミン化合物とのアミド類が用いられる。
【0056】
また、ヒドロキシル基や、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類とイソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、カルボン酸との脱水縮合反応物等も使用できる。また、イソシアネート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、アルコール類、アミン類およびチオール類との付加反応物、さらに、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、アルコール類、アミン類またはチオール類との置換反応物も使用できる。
【0057】
不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステルであるラジカル重合性化合物の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルが代表的であり、単官能のもの、多官能のもののいずれも用いることができる。
【0058】
単官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、トリルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0059】
二官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0060】
三官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0061】
四官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0062】
五官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0063】
六官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプトラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0064】
(メタ)アクリレート以外の重合性化合物としては、例えば、イタコン酸エステル、クロトン酸エステル、イソクロトン酸エステル、マレイン酸エステル等が挙げられる。
【0065】
イタコン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等が挙げられる。
【0066】
クロトン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等が挙げられる。
【0067】
イソクロトン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等が挙げられる。
【0068】
マレイン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等が挙げられる。
【0069】
その他のエステルの例としては、例えば、特公昭46−27926号公報、特公昭51−47334号公報、特開昭57−196231号公報に記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号公報、特開昭59−5241号公報、特開平2−226149号公報に記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報に記載のアミノ基を含有するもの等も用いることができる。
【0070】
また、不飽和カルボン酸と脂肪族アミン化合物とのアミドのモノマーの具体例としては、例えば、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。
【0071】
その他の好ましいアミド系モノマーとしては、例えば、特公昭54−21726号公報に記載のシクロへキシレン構造を有するもの等が挙げられる。
【0072】
また、イソシアネートと水酸基との付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記式(1)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0073】
CH
2=C(R
1)COOCH
2CH(R
2)OH (1)
(ただし、式(1)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、HまたはCH
3を示す。)
【0074】
本発明において、エポキシ基、オキセタン基等の環状エーテル基を分子内に1つ以上有するカチオン開環重合性の化合物を紫外線硬化性樹脂(重合性化合物)として好適に用いることができる。
【0075】
カチオン重合性化合物としては、例えば、開環重合性基を含む硬化性化合物等が挙げられ、中でも、ヘテロ環状基含有硬化性化合物が特に好ましい。このような硬化性化合物としては、例えば、エポキシ誘導体、オキセタン誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、環状ラクトン誘導体、環状カーボネート誘導体、オキサゾリン誘導体などの環状イミノエーテル類、ビニルエーテル類等が挙げられ、中でも、エポキシ誘導体、オキセタン誘導体、ビニルエーテル類が好ましい。
【0076】
好ましいエポキシ誘導体の例としては、例えば、単官能グリシジルエーテル類、多官能グリシジルエーテル類、単官能脂環式エポキシ類、多官能脂環式エポキシ類等が挙げられる。
【0077】
グリシジルエーテル類の具体的な化合物を例示すると、例えば、ジグリシジルエーテル類(例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等)、3官能以上のグリシジルエーテル類(例えば、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等)、4官能以上のグリシジルエーテル類(例えば、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル等)、脂環式エポキシ類(例えば、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、エポリードGT−301、エポリードGT−401(以上、ダイセル化学工業(株)製))、EHPE(ダイセル化学工業(株)製)、フェノールノボラック樹脂のポリシクロヘキシルエポキシメチルエーテル等)、オキセタン類(例えば、OX−SQ、PNOX−1009(以上、東亞合成(株)製)等)等が挙げられる。
【0078】
重合性化合物としては、脂環式エポキシ誘導体を好ましく用いることができる。「脂環式エポキシ基」とは、シクロペンテン基、シクロヘキセン基等のシクロアルケン環の二重結合を過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化した部分構造を言う。
【0079】
脂環式エポキシ化合物としては、シクロヘキセンオキシド基またはシクロペンテンオキシド基を1分子内に2個以上有する多官能脂環式エポキシ類が好ましい。脂環式エポキシ化合物の具体例としては、例えば、4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、ジ(2,3−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ジシクロペンタジエンジオキサイド等が挙げられる。
【0080】
分子内に脂環式構造を有しない通常のエポキシ基を有するグリシジル化合物を、単独で使用したり、前記の脂環式エポキシ化合物と併用することもできる。
【0081】
このような通常のグリシジル化合物としては、例えば、グリシジルエーテル化合物やグリシジルエステル化合物等を挙げることができるが、グリシジルエーテル化合物を併用することが好ましい。
【0082】
グリシジルエーテル化合物の具体例を挙げると、例えば、1,3−ビス(2,3−エポキシプロピロキシ)ベンゼン、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポシキ樹脂、フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール・ノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂等の芳香族グリシジルエーテル化合物、1,4−ブタンジオールグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリトリグリシジルエーテル等の脂肪族グリシジルエーテル化合物等が挙げられる。グリシジルエステルとしては、例えば、リノレン酸ダイマーのグリシジルエステル等を挙げることができる。
【0083】
重合性化合物としては、4員環の環状エーテルであるオキセタニル基を有する化合物(以下、単に「オキセタン化合物」ともいう。)を使用することができる。オキセタニル基含有化合物は、1分子中にオキセタニル基を1個以上有する化合物である。
【0084】
本体部形成用インクは、前述した硬化成分の中でも、特に、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、ポリエーテル系脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、および、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましい。これにより、より適切な硬化速度で本体部形成用インクを硬化させることができるとともに、三次元造形物の生産性を特に優れたものとすることができる。
また、三次元造形物の強度、耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。
【0085】
また、これらの硬化成分を含むことにより、本体部形成用インクの硬化物の各種溶媒(例えば、水等)に対する溶解性、膨潤性を特に低いものとすることができる。その結果、犠牲部を除去する際に、より確実に、高い選択性で犠牲部を除去することができ、三次元造形物に欠陥が生じたりすること等による不本意な変形を防止することができる。その結果、より確実に、三次元造形物の寸法精度をより高いものとすることができる。
【0086】
また、本体部形成用インクの硬化物の膨潤性(溶媒の吸収性)を低いものとすることができるため、例えば、犠牲部除去後の後処理としての乾燥処理を省略または簡略化することができる。また、最終的に得られる三次元造形物の耐溶剤性も向上するため、三次元造形物の信頼性は特に高いものとなる。
【0087】
特に、本体部形成用インクが(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルを含むものであると、酸素阻害を受けにくく低エネルギーでの硬化が可能であり、また、他モノマーを含めた共重合を促進し、造形物の強度を高めるという効果が得られる。
【0088】
また、本体部形成用インクがポリエーテル系脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含むものであると、造形物の高強度化と高靱性化を両立させるという効果が得られる。
【0089】
また、本体部形成用インクが2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートを含むものであると、柔軟性を持ち破断伸び率を向上させる効果が得られる。
【0090】
また、本体部形成用インクが4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを含むものであると、PMMA、PEMA粒子やシリカ粒子、金属粒子等への密着性を向上することにより、造形物の強度を高めるという効果が得られる。
【0091】
本体部形成用インクが前述した特定の硬化成分((メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、ポリエーテル系脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、および、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートよりなる群から選択される1種または2種以上)を含むものである場合、本体部形成用インクを構成する全硬化成分に対する当該特定の硬化成分の割合は、80質量%以上であるのが好ましく、90質量%以上であるのがより好ましく、100質量%であるのがさらに好ましい。これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0092】
本体部形成用インク中における硬化成分の含有率は、80質量%以上97質量%以下であるのが好ましく、85質量%以上95質量%以下であるのがより好ましい。
【0093】
これにより、最終的に得られる三次元造形物の機械的強度を特に優れたものとすることができる。また、三次元造形物の生産性を特に優れたものとすることができる。
【0094】
(重合開始剤)
また、本体部形成用インクは、重合開始剤を含むものであるのが好ましい。
【0095】
これにより、三次元造形物の製造時における本体部形成用インクの硬化速度を速めることができ、三次元造形物の生産性を特に優れたものとすることができる。
【0096】
重合開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤(芳香族ケトン類、アシルホスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物等)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、アルキルアミン化合物等)や光カチオン重合開始剤等を用いることができ、具体的には、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、およびビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が挙げられ、これらのうちから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0097】
中でも、本体部形成用インクを構成する重合開始剤としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドを含むものであるのが好ましい。
【0098】
このような重合開始剤を含むことにより、より適切な硬化速度で本体部形成用インクを硬化させることができ、三次元造形物の生産性を特に優れたものとすることができる。また、三次元造形物の強度、耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。
【0099】
特に、後に詳述する犠牲部形成用インクとともに、本体部形成用インクが、重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドを含むものであると、本体部形成用インクおよび犠牲部形成用インクについて、硬化速度の制御をより好適に行うことができ、三次元造形物の生産性をさらに優れたものとすることができる。
【0100】
本体部形成用インクが、後に詳述する犠牲部形成用インクとともに、重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドを含むものである場合、本体部形成用インク中におけるビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドの含有率は、犠牲部形成用インク中におけるビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドの含有率よりも高いものであるのが好ましい。
【0101】
これにより、本体部形成用インクおよび犠牲部形成用インクを、それぞれ、より好適な速度で硬化させることができる。
【0102】
本体部形成用インク中における重合開始剤の含有率は、特に限定されないが、犠牲部形成用インク中における重合開始剤の含有率よりも高いものであるのが好ましい。
【0103】
これにより、本体部形成用インクおよび犠牲部形成用インクを、それぞれ、より好適な速度で硬化させることができる。
【0104】
また、例えば、硬化工程の処理条件を調整することにより、硬化工程終了後において、三次元造形物の硬化度を十分に高いものとしつつ、犠牲部の重合度を比較的低いものとすることができる。その結果、犠牲部をより容易に除去することができることとなり、三次元造形物の生産性を特に優れたものとすることができる。
【0105】
また、照射するエネルギー線量を必要以上に高める必要がないため、省エネルギーの観点からも好ましい。
【0106】
特に、本体部形成用インク中における重合開始剤の含有率をX
1[質量%]、犠牲部形成用インク中における重合開始剤の含有率をX
2[質量%]としたとき、1.05≦X
1/X
2≦2.0の関係を満足するのが好ましく、1.1≦X
1/X
2≦1.5の関係を満足するのがより好ましい。これにより、本体部形成用インクおよび犠牲部形成用インクを、それぞれ、より好適な速度で硬化させることができ、三次元造形物の生産性をさらに優れたものとすることができる。
【0107】
本体部形成用インク中における重合開始剤の含有率の具体的な値としては、3.0質量%以上18質量%以下であるのが好ましく、5.0質量%以上15質量%以下であるのがより好ましい。これにより、より適切な硬化速度で本体部形成用インクを硬化させることができ、三次元造形物の生産性を特に優れたものとすることができる。また、本体部形成用インクを硬化させて形成される三次元造形物の機械的強度、形状の安定性を特に優れたものとすることができる。その結果、三次元造形物の強度、耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。
【0108】
以下に本体部形成用インク中における硬化性樹脂と重合開始剤との配合比率(以下に述べる「その他の成分」を除くインク組成)の好ましい具体例を示すが、本発明における本体部形成用インクの組成は、以下に述べるものに限定されるものではないことは、言うまでもない。
【0109】
「配合比率例」
・アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル:32質量部
・ポリエーテル系脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー:10質量部
・2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート:13.75質量部
・ジプロピレングリコールジアクリレート:15質量部
・4−ヒドロキシブチルアクリレート:20質量部
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド:5質量部
・2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド:4質量部
前記のような配合の場合に、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0110】
(その他の成分)
また、本体部形成用インクは、前述した以外の成分を含むものであってもよい。
【0111】
このような成分としては、例えば、顔料、染料等の各種着色剤;分散剤;界面活性剤;増感剤;重合促進剤;溶剤;浸透促進剤;湿潤剤(保湿剤);定着剤;防黴剤;防腐剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;キレート剤;pH調整剤;増粘剤;フィラー;凝集防止剤;消泡剤等が挙げられる。
【0112】
特に、本体部形成用インクが着色剤を含むことにより、着色剤の色に対応する色に着色された三次元造形物を得ることができる。
【0113】
特に、着色剤として、顔料を含むことにより、本体部形成用インク、三次元造形物の耐光性を良好なものとすることができる。顔料は、無機顔料および有機顔料のいずれも使用することができる。
【0114】
無機顔料としては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタン等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記無機顔料の中でも、好ましい白色を呈するためには、酸化チタンが好ましい。
【0115】
有機顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレンおよびペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0116】
さらに詳しくは、黒色(ブラック)の顔料として使用されるカーボンブラックとしては、例えば、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等(以上、三菱化学社(Mitsubishi Chemical Corporation)製)、Raven 5750、Raven 5250、Raven 5000、Raven 3500、Raven 1255、Raven 700等(以上、コロンビアカーボン(Carbon Columbia)社製)、Rega1 400R、Rega1 330R、Rega1 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400等(以上、キャボット社(CABOT JAPAN K.K.)製)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color B1ack S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4(以上、デグッサ(Degussa)社製)等が挙げられる。
【0117】
白色(ホワイト)の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントホワイト 6、18、21等が挙げられる。
【0118】
黄色(イエロー)の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180等が挙げられる。
【0119】
紅紫色(マゼンタ)の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、またはC.I.ピグメントヴァイオレット 19、23、32、33、36、38、43、50等が挙げられる。
【0120】
藍紫色(シアン)の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、15:4、16、18、22、25、60、65、66、C.I.バット ブルー 4、60等が挙げられる。
【0121】
また、前記以外の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン 7,10、C.I.ピグメントブラウン 3,5,25,26、C.I.ピグメントオレンジ 1,2,5,7,13,14,15,16,24,34,36,38,40,43,63等が挙げられる。
【0122】
本体部形成用インクが顔料を含むものである場合、当該顔料の平均粒径は、300nm以下であるのが好ましく、50nm以上250nm以下であるのがより好ましい。
【0123】
これにより、本体部形成用インクの吐出安定性や本体部形成用インク中における顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができるとともに、より優れた画質の画像を形成することができる。
【0124】
また、染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、および塩基性染料等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0125】
染料の具体例としては、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35等が挙げられる。
【0126】
本体部形成用インクが着色剤を含むものである場合、当該本体部形成用インク中における着色剤の含有率は、1質量%以上20質量%以下であるのが好ましい。これにより、特に優れた隠蔽性および色再現性が得られる。
【0127】
特に、本体部形成用インクが着色剤として酸化チタンを含むものである場合、当該本体部形成用インク中における酸化チタンの含有率は、12質量%以上18質量%以下であるのが好ましく、14質量%以上16質量%以下であるのがより好ましい。これにより、特に優れた隠蔽性が得られる。
【0128】
本体部形成用インクが顔料を含む場合に、分散剤をさらに含むものであると、顔料の分散性をより良好なものとすることができる。
【0129】
分散剤としては、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤等の顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。
【0130】
高分子分散剤の具体例としては、例えば、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマーおよびコポリマー、アクリル系ポリマーおよびコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、およびエポキシ樹脂のうち1種以上を主成分とするもの等が挙げられる。
【0131】
高分子分散剤の市販品としては、例えば、味の素ファインテクノ社製のアジスパーシリーズ、ノベオン(Noveon)社から入手可能なソルスパーズシリーズ(Solsperse 36000等)、BYK社製のディスパービックシリーズ、楠本化成社製のディスパロンシリーズ等が挙げられる。
【0132】
本体部形成用インクが界面活性剤を含むものであると、三次元造形物の耐擦性をより良好なものとすることができる。
【0133】
界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系界面活性剤としての、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーン等を用いることができ、中でも、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンまたはポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いるのが好ましい。
【0134】
界面活性剤の具体例としては、例えば、BYK−347、BYK−348、BYK−UV3500、3510、3530、3570(以上、BYK社製商品名)等を挙げられる。
【0135】
また、本体部形成用インクは、溶剤を含むものであってもよい。
これにより、本体部形成用インクの粘度調整を好適に行うことでき、本体部形成用インクが高粘度の成分を含むものであっても、本体部形成用インクのインクジェット方式による吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0136】
溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0137】
また、本体部形成用インクの粘度は、10mPa・s以上30mPa・s以下であるのが好ましく、15mPa・s以上25mPa・s以下であるのがより好ましい。
【0138】
これにより、インクジェット法による本体部形成用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。なお、本明細書中において、粘度とは、E型粘度計(東京計器社製 VISCONIC ELD)を用いて25℃において測定される値をいう。
【0139】
また、三次元造形物の製造には、複数種の本体部形成用インクを用いてもよい。
例えば、着色剤を含む本体部形成用インク(カラーインク)と、着色剤を含まない本体部形成用インク(クリアインク)とを用いてもよい。
【0140】
これにより、例えば、三次元造形物の外観上、色調に影響を与える領域に付与する本体部形成用インクとして着色剤を含む本体部形成用インクを用い、三次元造形物の外観上、色調に影響を与えない領域に付与する本体部形成用インクとして着色剤を含まない本体部形成用インクを用いることができ、三次元造形物の生産コストの低減の観点等から有利である。
【0141】
また、最終的に得られる三次元造形物において、着色剤を含む本体部形成用インクを用いて形成された領域の外表面に、着色剤を含まない本体部形成用インクを用いて形成された領域(コート層)を設けるように、複数種の本体部形成用インクを併用してもよい。
【0142】
着色剤(特に、顔料)を含む部分は、着色剤を含まない部分に比べて脆く、傷や欠け等を生じやすいが、着色剤を含まない本体部形成用インクを用いて形成される領域(コート層)を設けることにより、このような問題の発生を効果的に防止することができる。また、三次元造形物の長期間の使用により、表面が摩耗した場合等であっても、三次元造形物の色調の変化を効果的に防止、抑制することができる。
【0143】
また、例えば、異なる組成の着色剤を含む複数種の本体部形成用インクを用いてもよい。
【0144】
これにより、これらの本体部形成用インクの組み合わせにより、表現できる色再現領域を広いものとすることができる。
【0145】
複数種の本体部形成用インクを用いる場合、少なくとも、藍紫色(シアン)の本体部形成用インク、紅紫色(マゼンタ)の本体部形成用インクおよび黄色(イエロー)の本体部形成用インクを用いるのが好ましい。
【0146】
これにより、これらの本体部形成用インクの組み合わせにより、表現できる色再現領域をより広いものとすることができる。
【0147】
また、白色(ホワイト)の本体部形成用インクと、他の有色の本体部形成用インクとを併用することにより、例えば、以下のような効果が得られる。
【0148】
すなわち、最終的に得られる三次元造形物を、白色(ホワイト)の本体部形成用インクが付与された第1の領域と、第1の領域よりも外表面側に設けられた白色以外の有色の本体部形成用インクが付与された領域(第2の領域)とを有するものとすることができる。これにより、白色(ホワイト)の本体部形成用インクが付与された第1の領域が隠蔽性を発揮することができ、三次元造形物の彩度をより高めることができる。
【0149】
4.犠牲部形成用インク
犠牲部形成用インクは、少なくとも硬化性樹脂(硬化成分)を含むものである。
【0150】
(硬化性樹脂)
犠牲部形成用インクを構成する硬化性樹脂(硬化成分)としては、例えば、本体部形成用インクの構成成分として例示した硬化性樹脂(硬化成分)と同様のものが挙げられる。
【0151】
特に、犠牲部形成用インクを構成する硬化性樹脂(硬化成分)と、前述した本体部形成用インクを構成する硬化性樹脂(硬化成分)とは、同種のエネルギー線で硬化するものであるのが好ましい。
【0152】
これにより、三次元造形物製造装置の構成が複雑化するのを効果的に防止することができ、三次元造形物の生産性を特に優れたものとすることができる。また、三次元造形物の表面形状をより確実に制御することができる。
【0153】
また、犠牲部形成用インクの硬化物が、親水性を有するものを用いるのが好ましい。これにより、水等の水系液体によって犠牲部を容易に除去することが可能となる。
【0154】
犠牲部形成用インクは、各種硬化成分の中でも、特に、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、および、(メタ)アクリロイルモルフォリン、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましい。
【0155】
これにより、より適切な硬化速度で犠牲部形成用インクを硬化させることができ、三次元造形物の生産性を特に優れたものとすることができる。また、硬化物の親水性をより好適なものとすることができ、犠牲部を容易に除去することができる。
【0156】
また、犠牲部形成用インクを硬化させて形成される犠牲部の機械的強度、形状の安定性を特に優れたものとすることができる。その結果、三次元造形物の製造時に、下層(第1の層)の犠牲部が上層(第2の層)を形成するための本体部形成用インクをより好適に支持することができる。そのため、三次元造形物の不本意な変形(特に、ダレ等)をより好適に防止することができ(第1の層の犠牲部がサポート材として機能し)、最終的に得られる三次元造形物の寸法精度をさらに優れたものとすることができる。
【0157】
特に、犠牲部形成用インクが(メタ)アクリロイルモルフォリンを含むものであると、以下のような効果が得られる。
【0158】
すなわち、(メタ)アクリロイルモルフォリンは、硬化反応が進行した場合であっても完全硬化でない状態(完全硬化でない状態の(メタ)アクリロイルモルフォリンの重合体)では、水等の各種溶媒に対する溶解性が高い状態が高いものである。したがって、犠牲部除去の際に、本体部に欠陥が生じるのをより効果的に防止しつつ、犠牲部を選択的かつ確実に、また、効率よく除去することができる。その結果、より高い信頼性で、所望の形態の三次元造形物を生産性良く得ることができる。
【0159】
また、犠牲部形成用インクがテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートを含むものであると、硬化後の柔軟性が保たれ、犠牲部を除去する液体による処理により容易にゲル状になることで除去性を高めるという効果が得られる。
【0160】
また、犠牲部形成用インクがエトキシエトキシエチル(メタ)アクリレートを含むものであると、硬化後もタック性が残存し易く、犠牲部を除去する液体による除去性を高められるという効果が得られる。
【0161】
また、犠牲部形成用インクがポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートを含むものであると、犠牲部を除去する液体が水を主成分とする場合に、液体への溶解性を高め、除去を容易にするという効果が得られる。
【0162】
犠牲部形成用インクが前述した特定の硬化成分(テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、および、(メタ)アクリロイルモルフォリンよりなる群から選択される1種または2種以上)を含むものである場合、犠牲部形成用インクを構成する全硬化成分に対する当該特定の硬化成分の割合は、80質量%以上であるのが好ましく、90質量%以上であるのがより好ましく、100質量%であるのがさらに好ましい。これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0163】
犠牲部形成用インク中における硬化成分の含有率は、83質量%以上98.5質量%以下であるのが好ましく、87質量%以上95.4質量%以下であるのがより好ましい。
【0164】
これにより、形成される犠牲部の形状の安定性を特に優れたものとすることができ、三次元造形物の製造時に単位層を付き重ねていった場合に、下側の単位層が不本意に変形することをより効果的に防止することができ、上側の単位層を好適に支持することができる。その結果、最終的に得られる三次元造形物の寸法精度を特に優れたものとすることができる。また、三次元造形物の生産性を特に優れたものとすることができる。
【0165】
(重合開始剤)
また、犠牲部形成用インクは、重合開始剤を含むものであるのが好ましい。
【0166】
これにより、三次元造形物の製造時における犠牲部形成用インクの硬化速度を適度に速めることができ、三次元造形物の生産性を特に優れたものとすることができる。
【0167】
また、形成される犠牲部の形状の安定性を特に優れたものとすることができ、三次元造形物の製造時に単位層を付き重ねていった場合に、下側の単位層が不本意に変形することをより効果的に防止することができ、上側の単位層を好適に支持することができる。その結果、最終的に得られる三次元造形物の寸法精度を特に優れたものとすることができる。
【0168】
犠牲部形成用インクを構成する重合開始剤としては、例えば、本体部形成用インクの構成成分として例示した重合開始剤と同様のものが挙げられる。
【0169】
中でも、犠牲部形成用インクは、重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドを含むものであるのが好ましい。
【0170】
このような重合開始剤を含むことにより、より適切な硬化速度で犠牲部形成用インクを硬化させることができ、三次元造形物の生産性を特に優れたものとすることができる。
【0171】
また、犠牲部形成用インクを硬化させて形成される犠牲部の機械的強度、形状の安定性を特に優れたものとすることができる。その結果、三次元造形物の製造時に、下層(第1の層)の犠牲部が上層(第2の層)を形成するための本体部形成用インクをより好適に支持することができる。そのため、本体部の不本意な変形(特に、ダレ等)をより好適に防止することができ(第1の層の犠牲部がサポート材として機能し)、最終的に得られる三次元造形物の寸法精度をさらに優れたものとすることができる。
【0172】
犠牲部形成用インク中における重合開始剤の含有率の具体的な値としては、1.5質量%以上17質量%以下であるのが好ましく、4.6質量%以上13質量%以下であるのがより好ましい。
【0173】
これにより、より適切な硬化速度で犠牲部形成用インクを硬化させることができ、三次元造形物の生産性を特に優れたものとすることができる。
【0174】
また、犠牲部形成用インクを硬化させて形成される犠牲部の機械的強度、形状の安定性を特に優れたものとすることができる。その結果、三次元造形物の製造時に、下層(第1の層)の犠牲部が上層(第2の層)を形成するための本体部形成用インクをより好適に支持することができる。そのため、本体部の不本意な変形(特に、ダレ等)をより好適に防止することができ(第1の層の犠牲部がサポート材として機能し)、最終的に得られる三次元造形物の寸法精度をさらに優れたものとすることができる。
【0175】
以下に犠牲部形成用インク中における硬化性樹脂と重合開始剤との配合比率(以下に述べる「その他の成分」を除くインク組成)の好ましい具体例を示すが、本発明における犠牲層形成用インクの組成は、以下に述べるものに限定されるものではないことは、言うまでもない。
【0176】
「配合比率例1」
・テトラヒドロフルフリルアクリレート:36質量部
・エトキシエトキシエチルアクリレート:55.75質量部
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド:3質量部
・2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド:5質量部
【0177】
「配合比率例2」
・ジプロピレングリコールジアクリレート:37質量部
・ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート:55.85質量部
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド:3質量部
・2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド:4質量部
【0178】
「配合比率例3」
・テトラヒドロフルフリルアクリレート:36質量部
・アクリロイルモルフォリン:55.75質量部
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド:3質量部
・2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド:5質量部
【0179】
「配合比率例4」
・アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル:36質量部
・ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート:55.75質量部
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド:3質量部
・2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド:5質量部
前記のような配合の場合に、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0180】
(その他の成分)
また、犠牲部形成用インクは、前述した以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、顔料、染料等の各種着色剤;分散剤;界面活性剤;増感剤;重合促進剤;溶剤;浸透促進剤;湿潤剤(保湿剤);定着剤;防黴剤;防腐剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;キレート剤;pH調整剤;増粘剤;フィラー;凝集防止剤;消泡剤等が挙げられる。
【0181】
特に、犠牲部形成用インクが着色剤を含むことにより、犠牲部の視認性が向上し、最終的に得られる三次元造形物において、犠牲部の少なくとも一部が不本意に残存することをより確実に防止することができる。
【0182】
犠牲部形成用インクを構成する着色剤としては、例えば、本体部形成用インクの構成成分として例示した着色剤と同様のものが挙げられるが、三次元造形物の表面の法線方向から観察した際に当該犠牲部形成用インクにより形成される犠牲部と重なり合う本体部の色(三次元造形物の外観上視認されるべき色)とは異なる色となるような着色剤であるのが好ましい。これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0183】
犠牲部形成用インクが顔料を含む場合に、分散剤をさらに含むものであると、顔料の分散性をより良好なものとすることができる。犠牲部形成用インクを構成する分散剤としては、例えば、本体部形成用インクの構成成分として例示した分散剤と同様のものが挙げられる。
【0184】
また、犠牲部形成用インクの粘度は、10mPa・s以上30mPa・s以下であるのが好ましく、15mPa・s以上25mPa・s以下であるのがより好ましい。
【0185】
これにより、インクジェット法による犠牲部形成用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0186】
また、三次元造形物の製造には、複数種の犠牲部形成用インクを用いてもよい。
例えば、本体部形成用インクの硬化時における動粘弾性が互いに異なる2種以上の犠牲部形成用インクを備えるものであってもよい。
【0187】
これにより、最終的に得られる三次元造形物を、微細な質感の程度が互いに異なる複数の領域を有するものとして得ることができる。その結果、より複雑な外観の表現が可能となり、三次元造形物の美的外観(審美性)、高級感等を特に優れたものとすることができる。
【0188】
5.三次元造形物
本発明の三次元造形物は、前述したような製造方法を用いて製造することができる。これにより、品質の高い三次元造形物を提供することができる。
【0189】
本発明の三次元造形物の用途は、特に限定されないが、例えば、人形、フィギュア等の鑑賞物・展示物;インプラント等の医療機器等が挙げられる。
【0190】
また、本発明の三次元造形物は、プロトタイプ、量産品、オーダーメード品のいずれに適用されるものであってもよい。
【0191】
また、本発明の三次元造形物は、模型(例えば、自動車、オートバイ、船、飛行機等の乗り物、建築物、動物、植物等の生物、石等の自然物(非生物)、各種食品等の模型)であってもよい。
【0192】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0193】
例えば、本発明の三次元造形物の製造方法においては、必要に応じて、前処理工程、中間処理工程、後処理工程を行ってもよい。
【0194】
前処理工程としては、例えば、ステージの清掃工程等が挙げられる。
後処理工程としては、例えば、洗浄工程、バリ取り等を行う形状調整工程、硬化性樹脂の硬化度を上昇させるための追加の硬化処理等が挙げられる。
【0195】
また、本発明は、粉体積層法、(すなわち、粉体を用いて層を形成し、当該層の所定の部位に硬化性のインクを付与して硬化部を形成するという一連の操作を繰り返し行うことのより、硬化部が設けられた複数の層を有する積層体としての三次元造形物を得る方法)に適用されるものであってもよい。