(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6413290
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】ゴルフクラブ判定方法、ゴルフクラブ判定装置及びゴルフクラブ判定プログラム
(51)【国際特許分類】
A63B 69/36 20060101AFI20181022BHJP
A63B 69/00 20060101ALI20181022BHJP
【FI】
A63B69/36 541S
A63B69/00 C
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-66076(P2014-66076)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-188508(P2015-188508A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2017年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(72)【発明者】
【氏名】中條 祥一
(72)【発明者】
【氏名】田中 久雄
【審査官】
大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0267339(US,A1)
【文献】
特開2012−196241(JP,A)
【文献】
特表2011−505928(JP,A)
【文献】
特開2012−157644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 69/36
A63B 69/00
A63B 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブに装着された慣性センサーの出力を用いて、前記ゴルフクラブのスイングの振り幅を計測し、
計測された前記振り幅に基づいて、前記ゴルフクラブがパターであるか否かを判定することを特徴とするゴルフクラブ判定方法。
【請求項2】
ゴルフクラブに装着された慣性センサーの出力を用いて、前記ゴルフクラブのスイングの振り幅を計測し、
計測された前記振り幅に基づいて、前記ゴルフクラブがパターであるか否かを判定し、
前記慣性センサーは加速度センサーを含み、
前記ゴルフクラブがパターでないと判定された時に、
前記加速度センサーの出力を用いて計測されたアドレス時の前記ゴルフクラブの姿勢に基づいて、前記ゴルフクラブの種別を判定することを特徴とするゴルフクラブ判定方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のゴルフクラブ判定方法において、
判定された前記ゴルフクラブの種別と、前記慣性センサーの出力とを関連付けることを特徴とするゴルフクラブ判定方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のゴルフクラブ判定方法において、
前記ゴルフクラブの判定後に、複数のゴルフクラブの情報が記憶された記憶部から、判定されたゴルフクラブの情報を読み出すことを特徴とするゴルフクラブ判定方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のゴルフクラブ判定方法において、
前記ゴルフクラブがパターであると判定された場合、前記慣性センサーの出力のデータを間引くことを特徴とするゴルフクラブ判定方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のゴルフクラブ判定方法において、
前記ゴルフクラブがパターであると判定された場合、前記慣性センサーのサンプリングレートを下げることを特徴とするゴルフクラブ判定方法。
【請求項7】
ゴルフクラブに装着された慣性センサーの出力を用いて、前記ゴルフクラブのスイングの振り幅を計測する第1計測部と、
計測された前記振り幅に基づいて、前記ゴルフクラブがパターであるか否かを判定する第1判定部と、
前記ゴルフクラブがパターでないと判定された時に前記慣性センサーに含まれる加速度センサーの出力を用いて、アドレス時の前記ゴルフクラブの姿勢を計測する第2計測部と、
計測された前記ゴルフクラブの姿勢に基づいて、前記ゴルフクラブの種別を判定する第2判定部と、
を有することを特徴とするゴルフクラブ判定装置。
【請求項8】
ゴルフクラブに装着された慣性センサーの出力を用いて、前記ゴルフクラブのスイングの振り幅を計測する計測部と、
計測された前記振り幅に基づいて、前記ゴルフクラブがパターであるか否かを判定する判定部と、
を有することを特徴とするゴルフクラブ判定装置。
【請求項9】
ゴルフクラブに装着された慣性センサーの出力を用いて、前記ゴルフクラブのスイングの振り幅を計測する手順と、
計測された前記振り幅に基づいて、前記ゴルフクラブがパターであるか否かを判定する手順と、
前記ゴルフクラブがパターでないと判定された時に前記慣性センサーに含まれる加速度センサーの出力を用いて、アドレス時の前記ゴルフクラブの姿勢を計測する手順と、
計測された前記ゴルフクラブの姿勢に基づいて、前記ゴルフクラブの種別を判定する手順と、
をコンピューターに実行させることを特徴とするゴルフクラブ判定プログラム。
【請求項10】
ゴルフクラブに装着された慣性センサーの出力を用いて、前記ゴルフクラブのスイングの振り幅を計測する手順と、
計測された前記振り幅に基づいて、前記ゴルフクラブがパターであるか否かを判定する手順と、
をコンピューターに実行させることを特徴とするゴルフクラブ判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブ判定方法、ゴルフクラブ判定装置及びゴルフクラブ判定プログラム等に関する。
【背景技術】
【0002】
慣性センサーを搭載したセンサーユニットをゴルフクラブに装着し、慣性センサーからの出力を解析装置(パソコン)に送信して解析し、スイングを可視化する装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−73210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゴルフスイングを解析するには、使用しているゴルフクラブがドライバーなのか、アイアンなのか、パターなのか、ゴルフクラブの種別を解析装置が知る必要がある。ゴルフクラブは種別によって長さが異なり、ゴルフクラブに装着された慣性センサーから計測ポイント、例えばクラブヘッドの位置までの距離は区々であるからである。
従来、ゴルフクラブの種別は、プレーヤーがゴルフクラブを交換するたびに、入力装置を操作して入力することで、解析装置はゴルフクラブの種別を取得していた。
【0005】
しかし、この操作が煩雑である上、ゴルフクラブの種別をご入力すると、正しい解析結果が得られない。
【0006】
本発明の幾つかの態様は、ゴルフクラブのスイングを解析することで自動的にゴルフクラブの種別を判定するゴルフクラブ判定方法、ゴルフクラブ判定装置及びゴルフクラブ判定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様は、ゴルフクラブに装着された加速度センサーの出力を用いて、アドレス時の前記ゴルフクラブの姿勢を計測し、計測された前記ゴルフクラブの姿勢に基づいて、前記ゴルフクラブの種別を判定するゴルフクラブ判定方法に関する。
【0008】
本発明の一態様では、アドレス時に静止しているゴルフクラブに装着された加速度センサーで重力方向が検出され、重力方向を基準としてゴルフクラブの姿勢が計測される。アドレス時のゴルフクラブの姿勢は、ゴルフクラブのグリップからクラブヘッドまでの距離に依存して異なる。よって、アドレス時のゴルフクラブの姿勢からゴルフクラブの種別を判定できる。
【0009】
(2)本発明の他の態様は、ゴルフクラブに装着された慣性センサーの出力を用いて、前記ゴルフクラブの寸具を計測し、計測されたスイングに基づいて、前記ゴルフクラブがパターであるか否かを判定するゴルフクラブ判定方法に関する。
【0010】
本発明の他の態様によれば、ゴルフクラブに装着された慣性センサーの出力を用いて、ゴルフクラブのスイングが計測される。ゴルフクラブのスイングは、ドライバーやアイアンと比較して、パターだけが例えばスイングスピードや振り幅が極端に異なる。よって、ゴルフクラブのスイングから、使用クラブがパターであるか否かを判定できる。換言すれば、パターのアドレス姿勢はプレーヤーによって区々であるので、アドレス時のゴルフクラブの姿勢からは判定できない場合が多いので、本発明の他の態様によりパターを判定できる。
【0011】
(3)本発明の他の態様では、前記慣性センサーの出力を用いて、前記ゴルフクラブのスイングの振り幅を計測し、計測された前記振り幅に基づいて、前記ゴルフクラブがパターであるか否かを判定することができる。ドライバーやアイアンと比較して、パターだけが振り幅が極端に異なるので、パターを的確に判別できる。
【0012】
(4)本発明の他の態様では、前記慣性センサーは加速度センサーを含み、前記ゴルフクラブがパターでないと判定された時に、前記加速度センサーの出力を用いて計測されたアドレス時の前記ゴルフクラブの姿勢に基づいて、前記ゴルフクラブの種別を判定することができる。
【0013】
上述の通り、パターはスイングにより判定できるが、ドライバーやアイアンをフルスイングすると、センサー位置でのスイングはほぼ同じであるので、パター以外は判定できない。そこで、パター以外のゴルフクラブは、本発明の一態様と同様にしてアドレス時のゴルフクラブの姿勢から判定している。
【0014】
(5)本発明の一態様及び他の態様では、判定された前記ゴルフクラブの種別と、前記慣性センサーの出力と関連付けことができる。
【0015】
ゴルフクラブの種別と慣性センサーの出力とを関連付けることで、慣性センサーの出力と共にゴルフクラブの種別を出力することができ、あるいはゴルフクラブの種別で検索することが可能となる。
【0016】
(6)本発明の一態様及び他の態様では、前記ゴルフクラブの判定後に、複数のゴルフクラブの情報が記憶された記憶部から、判定されたゴルフクラブの情報を読み出すことができる。
【0017】
ゴルフスイングを解析するには、使用クラブの情報、例えばセンサー位置からクラブヘッドまでの長さなどが必要である。上述した判定方法によりゴルフクラブの種別が判定されると、ゴルフクラブの情報を記憶部から読み出すことで取得できる。
【0018】
(7)本発明の他の態様では、前記ゴルフクラブがパターであると判定された場合、前記慣性センサーの出力のデータを間引くことができる。
【0019】
パターは他のゴルフクラブと比較してスイング速度が遅く、単位時間当たりの変化量が小さい。このため、慣性センサーの出力のデータを間引いてデータを欠落させても、スイング解析精度に与える影響は少ない。データ圧縮によりスイングデータ量が少なくなり、最終保存先のメモリー容量を小さくできる上、慣性センサーの出力の転送に要する負担(転送時間等)を軽減できる。
【0020】
(8)本発明の他の態様では、前記ゴルフクラブがパターであると判定された場合、前記慣性センサーのサンプリングレートを下げることができる。
【0021】
パターは他のゴルフクラブと比較してスイング速度が遅く、単位時間当たりの変化量が小さい。このため、慣性センサーのサンプリングレートを下げてサンプリングデータを少なくしても、スイング解析精度に与える影響は少ない。サンプリングレートを下げることで収集データ量が少なくなり、最終保存先のメモリー容量を小さくできる上、慣性センサーの出力の転送に要する負担(転送時間等)を軽減できる。
【0022】
(9)本発明のさらに他の態様は、ゴルフクラブに装着された加速度センサーの出力を用いて、アドレス時の前記ゴルフクラブの姿勢を計測する計測部と、計測された前記ゴルフクラブの姿勢に基づいて、前記ゴルフクラブの種別を判定する判定部と、を有するゴルフクラブ判定装置に関する。
【0023】
本発明のさらに他の態様では、上述した(1)のゴルフクラブ判定方法を好適に実施することができる。
【0024】
(10)本発明のさらに他の態様は、ゴルフクラブに装着された慣性センサーの出力を用いて、前記ゴルフクラブのスイングを計測する計測部と、計測されたスイングに基づいて、前記ゴルフクラブがパターであるか否かを判定する判定部と、を有するゴルフクラブ判定装置に関する。
【0025】
本発明のさらに他の態様では、上述した(2)のゴルフクラブ判定方法を好適に実施することができる。
【0026】
(11)本発明のさらに他の態様は、ゴルフクラブに装着された加速度センサーの出力を用いて、アドレス時の前記ゴルフクラブの姿勢を計測する手順と、計測された前記ゴルフクラブの姿勢に基づいて、前記ゴルフクラブの種別を判定する手順と、をコンピューターに実行させるゴルフクラブ判定プログラムに関する。
【0027】
本発明のさらに他の態様では、上述した(1)のゴルフクラブ判定方法を好適に実施することができ、あるいは上述した(9)のゴルフクラブ判定装置をソフトウェアにより実現することができる。
【0028】
(12)本発明のさらに他の態様は、ゴルフクラブに装着された慣性センサーの出力を用いて、前記ゴルフクラブのスイングを計測する手順と、計測されたスイングに基づいて、前記ゴルフクラブがパターであるか否かを判定する手順と、をコンピューターに実行させるゴルフクラブ判定プログラムに関する。
【0029】
本発明のさらに他の態様では、上述した(2)のゴルフクラブ判定方法を好適に実施することができ、あるいは上述した(10)のゴルフクラブ判定装置をソフトウェアにより実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一実施形態であるスイング解析システムの全体図である。
【
図2】本発明の一実施形態であるスイング解析装置のブロック図である。
【
図3】ゴルフクラブ判定装置を含む
図2に示す演算処理回路のブロック図である。
【
図4】アドレス時のゴルフクラブの姿勢を検出する原理を示す図である。
【
図5】他のゴルフクラブ判定装置を含む
図2に示す演算処理回路のブロック図である。
【
図7】パター以外のゴルフクラブのスイングを示す図である。
【
図8】さらに他のゴルフクラブ判定装置を含む
図2に示す演算処理回路のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0032】
(1)スイング解析システム及びスイング解析装置
図1は、本発明を例えばゴルフのスイング解析に適用したスイング解析システムの全体図である。
図1に示すように、ネットワーク網例えばインターネット10には、サーバー12,14及び基地局16等が接続される。サーバー12は、ゴルフクラブ判定プログラムやスイング解析プログラム等を配信するプログラム配信サーバーである。
【0033】
端末装置30は、基地局16及びインターネット10を介してプログラム配信サーバー12と通信可能な携帯端末例えば携帯電話機、あるいはサーバー14及びインターネット10を介してプログラム配信サーバー12と通信可能なパーソナルコンピューター等で構成される。端末装置30と、被検出対象である操作者(プレーヤー)及びゴルフクラブの少なくとも一方に装着される慣性センサー40とで、スイング解析装置20を構成している。端末装置30の記憶部には、プログラム配信サーバー12からダウンロードされたゴルフクラブ判定プログラムやスイング解析プログラムが記憶される。
【0034】
慣性センサー40には、例えば加速度センサーやジャイロセンサー(角速度センサー)が組み込まれる。加速度センサーは、
図2に示すように互いに直交する三軸x,y,z方向に個々に加速度を検出することができる。ジャイロセンサーは互いに直交する三軸x,y,zの各軸回りに個別に角速度を検出することができる。慣性センサー40は、個々の軸ごとに加速度および角速度の検出信号を出力する。y軸はシャフト102の軸方向に一致され、x軸は打撃方向Aと一致される。
【0035】
慣性センサー40は、
図2に示すように例えばゴルフクラブ(運動具)100に取り付けられる。ゴルフクラブ100はグリップ101およびシャフト102を備える。シャフト102の先端にはクラブヘッド103が結合される。慣性センサー40はゴルフクラブ100のグリップ101またはシャフト102に取り付けられる。
【0036】
端末装置30は演算処理回路300を備える。演算処理回路300には、インターフェイス301を介して慣性センサー40が接続される。インターフェイス301は有線又は無線で慣性センサー40に接続される。演算処理回路300には慣性センサー40から検出信号が供給される。
【0037】
演算処理回路300には記憶部302が接続される。記憶部302には例えばゴルフクラブ判定プログラムやスイング解析プログラム等のプログラム303およびスイングデータ(慣性センサー40からのデータ及びその解析データ)が格納される。プログラム303は、プログラム配信サーバー12からダウンロードされて記憶される。演算処理回路300は、ゴルフクラブ判定プログラムを実行して使用ゴルフクラブを判定する。演算処理回路300は、ゴルフスイング解析プログラムを実行してゴルフスイング解析を実現する。記憶部302は、DRAM(ダイナミックランダムアクセスメモリー)や大容量記憶装置ユニット、不揮発性メモリー等を含むことができる。例えばDRAMに上述したプログラム303が保持される。端末装置30がハードディスク駆動装置(HDD)といった大容量記憶装置ユニットを備える場合には、HDDにプログラム303およびデータを保存することができる。不揮発性メモリーにはBIOS(基本入出力システム)といった比較的に小容量のプログラムやデータが格納される。
【0038】
演算処理回路300には画像処理回路305が接続される。演算処理回路300は画像処理回路305に所定の画像データを送る。画像処理回路305には表示装置306が接続される。接続にあたって画像処理回路305には所定のインターフェイス回路(図示されず)が接続される。画像処理回路305は、入力される画像データに応じて表示装置306に画像信号を送る。表示装置306の画面には画像信号で特定される画像が表示される。表示装置306には液晶ディスプレイその他のフラットパネルディスプレイが利用される。ここでは、演算処理回路300、記憶部302および画像処理回路305は例えばコンピューター装置として提供される。
【0039】
演算処理回路300には入力装置307が接続される。入力装置307は例えばアルファベットキーおよびテンキーを備える。入力装置307から文字情報や数値情報が演算処理回路300に入力される。また、記憶部302には送受信部308が接続される。送受信部308は、インターネット10経由でプログラムを受信し、あるいは収集されたスイングデータを送信する。
【0040】
(2)ゴルフクラブ判定装置
ゴルフクラブ判定装置を含む演算処理回路300は、
図3に示すように、慣性センサー40の加速度センサーの出力を用いて、アドレス時のゴルフクラブ100の姿勢を計測する計測部310と、計測されたゴルフクラブ100の姿勢に基づいて、ゴルフクラブ100の種別を判定する判定部320と、を含む。なお、計測部310は、アドレス時の加速度センサーの出力を、インターフェイス301を介してリアルタイムで入力しても良いし、あるいは記憶部302から入力しても良い。演算処理回路300は、さらにスイング解析部330を有することができる。
【0041】
ここで、
図4はアドレス時のゴルフクラブ100の姿勢を計測する原理を示している。
図4には、アドレス時に静止したシャフト102が示されている。ゴルフクラブ100のグリップ101またはシャフト102に装着された慣性センサー40の加速度センサーは、三軸の検出軸の一つである例えばy軸はシャフト102の長軸方向と一致するようにゴルフクラブ100に固定されている。
【0042】
慣性センサー40には下向き重力110と反対の上向きの力111が働く。慣性センサー40の加速度センサーは、重力110によって作用する上向きの力111を、シャフト102の長軸(y軸)方向に沿った第1の力成分112と、
図4の紙面上でシャフト102の長軸方向と直交する軸(z軸)第2の力成分113とに分解して計測する。計測部310は、アドレス時のy軸及びz軸加速度センサーの出力である力成分112、113から、三角関数により重力方向に対するシャフト102aの長軸方向の傾き角度ψを求める。ここで、力成分112は、シャフト長軸方向(y軸方向)の加速度ベクトル(=|y|)に相当し、力成分113は、当該加速度ベクトルに直交する方向(z軸方向)の加速度ベクトル(=|z|)に相当する。
【数1】
【0043】
ここで、アドレス時のシャフト102の角度ψは、
図4に示すセンサー位置からクラブヘッド103の長さlsj、つまりゴルフクラブ100の種別に依存して異なる。同一ゴルファーのアドレス時のグリップ位置はほぼ一定高さとなるので、長さlsiが長いほどアドレス時の角度ψは小さく、長さlsiが短いほどアドレス時の角度ψは大きい。長さlsiが最も長い1番ウッド(ドライバー)のアドレス時の角度ψは小さく、アイアンの中でも長さlsiが最も短い例えばサンドウェッジのアドレス時の角度ψは大きい。
【0044】
計測部310の出力が入力される判定部320は、予めゴルフクラブ100の種別毎に角度ψの範囲が記憶されたテーブルに基づいて、入力された角度ψと対応するゴルフクラブ100の種別を判定する。このテーブルは、記憶部302に設けても良い。予めゴルファーについて全ゴルフクラブ100のアドレス姿勢(角度ψ)を上記原理に基づいて計測し、その計測結果に基づいて、テーブルを作成することができる。複数人がスイング解析装置20を共通使用する場合には、ゴルファー毎にテーブルを有することできる。この場合、スイング解析装置20を使用するゴルファーは、例えば入力装置307から各自のIDを入力することになる。
【0045】
判定部320は、判定されたゴルフクラブ100の種別を、慣性センサー40の出力に関連付けて記憶部302に記憶することができる。好ましくは、一スイング中に慣性センサー40から出力されるデータ(各時刻の加速度のセンサーのx,y,z軸出力及びジャイロセンサーのx,y,z軸出力)のヘッダーに、プレーヤーID、開始時刻等と共にゴルフクラブ100の種別が記憶される。それにより、ゴルフクラブ100の種別を検索項目として利用できる。
【0046】
判定部320は、判定されたゴルフクラブ100の種別に基づいて、使用クラブに関する情報を記憶部302から読み出すことができる。この場合、記憶部302は、ゴルフクラブ100の種別毎に、ゴルフクラブ100の情報として例えば
図4に示すセンサー位置からクラブヘッド103までの長さlsjを記憶している。判定部320は、スイング解析部330でのスイング解析に必要な長さlsjの情報を記憶部302から読み出して、スイング解析部330に入力させることができる。
【0047】
スイング解析部330は、例えば下記の式に基づいてクラブヘッド103の位置での加速度αsjを求めることができる。スイング解析部330は、記憶部302から慣性センサー40の出力である加速度出力αsと角速度出力ωsと長さlsjが得られる。角加速度(次式ではωsの上にドットを付して表記している)は、角速度出力ωsを微分して得られる。
【数2】
【0048】
スイング解析部330は、算出された加速度に基づきクラブヘッド103の移動速度を算出することができる。ここでは次式に従って加速度に規定のサンプリング間隔dtで積分処理が施される。
【数3】
【0049】
さらにスイング解析部330は、算出された速度に基づきクラブヘッド103の位置を算出することができる。ここでは、次式に従って速度に規定のサンプリング間隔dtで積分処理が施される。
【数4】
【0050】
(3)他のゴルフクラブ判定装置
図5は、他のゴルフクラブ判定装置を含む
図2に示す演算処理回路300のブロック図である。
図5において、演算処理回路300は、ゴルフクラブ100に装着された慣性センサー(加速度センサー及びジャイロセンサー)40の出力を用いて、ゴルフクラブ100のスイングを計測する計測部340と、計測されたスイングに基づいてゴルフクラブ100がパターであるか否かを判定する判定部350と、を有する。演算処理回路300は、さらにスイング解析部330、データ圧縮部360、サンプリングレート設定部370を有することができる。
【0051】
図6は、ゴルフクラブ100としてパターを用いた時にスイングを模式的に示している。パターは、一般的に、右肩とグリップ位置を結ぶ線分L1、左肩とグリップ位置を結ぶ線分L2と、両肩を結ぶ線分L3で形成される三角形を維持しながら比較的狭い振り幅(
図6のS1+S2、S1:アドレス位置からのテイクバックストローク、S2:アドレス位置からフォロースルーストローク)でゆっくりとスイングされるので、他のゴルフクラブ(ウッドやアイアン)の
図7に示すフルスイングとは全く異なる。なお、
図6及び
図7において、位置P1はアドレス位置、位置P2はトップ、テイクバック終端位置または切返し位置であり、位置P3はインパクト位置であり、位置P4はフィニッシュ位置又はフォロースルー終端位置である。
【0052】
計測部340は、パター固有のスイングの特徴を計測する。このため、計測部340はスイング解析部330により代用することもできる。例えば、計測部340は、パターの振り幅が極端に狭いことから、
図6の破線で示す2つの位置であるテイクバック終端位置P1及び/又はフォロースルー終端位置P4を例えば上述の式(4)から求められ位置(ただし、lsj=0またはlsj=一定値)を
図6に示す絶対座標系ΣXYZに変換して求める。
図6の破線で示す2つの位置であるテイクバック終端位置P1とフォロースルー終端位置P4は速度が零であること等から求められる。テイクバック終端位置P1とフォロースルー終端位置P4は、他のゴルフクラブと比較してパターが極端に低い位置となる。よって、計測部340の出力を入力する判定部350は、計測された位置例えばY方向の高さが所定値よりも低ければ、パターであると判定できる。あるいは、計測部340はテイクバック終端位置P2からフォロースルー終端位置P4に至る振り幅S1+S2を求め、判定部350は(S1+S2)<Sの時にパターと判定することができる。振り幅S1+S2は、テイクバック終端位置P2からフォロースルー終端位置P4に至るサンプリングポイント間の距離を累積すること等で求めることができる。あるいは、計測部340は式(2)から求められる最大速度(ただし、lsj=0またはlsj=一定値)を求め、判定部350は最大速度が所定値以下である場合にパターと判定することができる。
【0053】
ここで、使用ゴルフクラブがパターであるとの判定部350からの情報は、上述した通り、慣性センサー40の出力データやスイング解析部330での解析データに関連付けて記憶部302に記憶され、記憶部302に記憶されたパターの情報(センサー位置からヘッドまでの距離lsj等)の読み出しに使用される。
【0054】
さらに、使用ゴルフクラブがパターであるとの判定部350からの情報を、データ圧縮部360に入力させても良い。データ圧縮部360は、パターに装着された慣性センサー40の出力データを圧縮する。パター以外のゴルフクラブ100のクラブヘッド103のスイング速度は30m/s〜50m/sであるが、パターのベッドスピードは数m/s以下である。高速スイングであれば単位時間当たりの変化量が大きいため、その解析には比較的多くのデータ量が必要となるが、低速スイングは時間当たりの変化量が少ないため、データ量を少なくしても解析精度は低下しない。
【0055】
データ圧縮部360は、記憶部302から読み出されたデータを間引いた後に記憶部302に記憶することで、データ圧縮することができる。一スイングに関して時系列で連続するN(N≧2)個のスイングデータの一つを間引くことを、間引き率Nと称する。例えば、時系列で連続するN=2個のスイングデータの一つを間引く間引き率N=2とすると、パターの一スイングについてのデータ量は1/2に圧縮される。こうしたデータ圧縮により、端末装置30からスイングデータが転送されるサーバー12またはサーバー14のメモリー容量を小さくすることができる。加えて、送受信部308により送信されるスイングデータ量を少なくし、あるいはインターネット10経由で転送されるスイングデータ総量を少なくできるので、データ転送時間を短縮できる。
【0056】
さらに、使用ゴルフクラブがパターであるとの判定部350からの情報を、サンプリングレート設定部370に入力させても良い。サンプリングレート設定部370は、慣性センサー40のサンプリングレートを設定する。設定されたサンプリングレートの情報は、インターフェイス301を介して慣性センサー40に供給される。慣性センサー40は、通常は固定のサンプリングレート(例えば1kHz)を採用しているが、端末装置30からのコマンドによりサンプリングレートを下げることが可能である。例えば、パター以外のゴルフクラブについてはサンプリングレート(例えば1kHz)は変更しなくてもよいが、パターのように極端にスイング速度が遅い場合にはサンプリングレートを下げ、例えば500Hzに設定する。サンプリングレートが下がれば、一スイング中にサンプリングされるスイングデータ量も少なくなる。例えばサンプリングレートを500kHzにすれば、データ量は半減される。よって、以降は変更されたサンプリングレートに従って慣性センサー40がサンプリングすれば、データ圧縮部360にてデータ圧縮しなくて済む。
【0057】
(4)さらに他のゴルフクラブ判定装置
図8は、他のゴルフクラブ判定装置を含む
図2に示す演算処理回路300のブロック図である。なお、
図7において、
図4及び
図5に示す部材と同一機能を示す部材については同一符号を付している。
図7において、演算処理回路300は、第1,第2計測部340,310と、第1,第2判定部350,320とを含む。演算処理回路300は、さらにスイング解析部330を含むことができる。第1計測部340はゴルフクラブ100のスイングを計測する。第1判定部350は、第1計測部340で計測されたスイングに基づいてゴルフクラブ100がパターであるか否かを判定する。第1判定部350からの信号が入力される第2計測部310は、使用ゴルフクラブ100がパターでない場合に、アドレス時の加速度センサーの出力を用いて、ゴルフクラブ100の姿勢を計測する。第2判定部320は、第2計測部310で計測されたゴルフクラブ100の姿勢に基づいて、ゴルフクラブ100の種別を判定する。こうすると、第1判定部350により使用ゴルフクラブはパターまたはそれ以外のクラブと判定される。第1判定部350によりパター以外のゴルフクラブであると判定されると、第2計測部310がアドレス時のゴルフクラブ100の姿勢を計測し、第2判定部320がパター以外のゴルフクラブ100の種別を判定する。なお、
図8に示す演算処理回路300にも
図5に示すデータ圧縮部360及び/又はサンプリングレート設定部370を設けても良い。
【0058】
上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれる。例えば、明細書または図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語とともに記載された用語は、明細書または図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えられることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 ゴルファー、20 スイング解析装置、30 端末装置、40 慣性センサー、100 ゴルフクラブ、101 グリップ、102 シャフト、103 クラブヘッド、300 演算処理回路、302 記憶部、310 計測部(第2計測部)、320 判定部(第2計測部)、330 スイング解析部、340 計測部(第1計測部)、350 判定部(第1判定部)、360 データ圧縮部、370 サンプリングレート設定部