(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記入射面における、前記第1導光部と前記第2導光部とが配列される方向に沿った前記第1導光部および前記第2導光部の幅は、それぞれ前記第1導光部と前記第2導光部とが配列される方向に沿った前記映像光の幅よりも小さい請求項1または2に記載の虚像表示装置。
前記光学素子は、前記観察者の頭部に装着された状態で、前記光学素子の前記射出面から射出される前記映像光が、前記観察者の左眼と右眼とが並んでいる方向に断面積が拡大されるよう配置されている請求項10に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の虚像表示装置、およびヘッドマウントディスプレイの好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0034】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の虚像表示装置を備えるヘッドマウントディスプレイの概略構成を示す図、
図2は、
図1に示すヘッドマウントディスプレイの概略斜視図、
図3は、
図1に示す虚像表示装置の構成を模式的に示す図、
図4は、
図2に示す画像生成部の構成を模式的に示す図、
図5は、
図4に示す駆動信号生成部の駆動信号の一例を示す図、
図6は、
図4に示す光走査部の平面図、
図7は、
図5に示す光走査部の断面図(X1軸に沿った断面図)、
図8は、
図3に示す光学素子の概略構成を示す図であり、(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が右側面図、(d)が左側面図、
図9は、
図8に示す光学素子に入射された映像光の経路を説明するための図、
図10は、
図8に示す光学素子に入射された映像光の経路を説明するための図である。また、
図21は、
図3に示す光学素子の他の例を示す図であり、(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が右側面図、(d)が左側面図である。
【0035】
なお、
図1〜
図3、
図8、
図9では、説明の便宜上、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸およびZ軸を図示しており、その図示した矢印の先端側を「+(プラス)」、基端側を「−(マイナス)」とする。また、X軸に平行な方向を「X軸方向」、Y軸に平行な方向を「Y軸方向」、Z軸に平行な方向を「Z軸方向」という。
【0036】
ここで、X軸、Y軸およびZ軸は、虚像表示装置1を観察者の頭部Hに装着した際に、X軸方向が頭部Hの左右方向、Y軸方向が頭部Hの上下方向、Z軸方向が頭部Hの前後方向となるように設定されている。
【0037】
図1に示すように、本実施形態の虚像表示装置1を備えたヘッドマウントディスプレイ(頭部装着型虚像表示装置)10は、眼鏡のような外観をなし、観察者の頭部Hに装着して使用され、観察者に虚像による画像を外界像と重畳した状態で視認させる。
【0038】
図1、
図2に示すように、ヘッドマウントディスプレイ10は、画像生成部3と、拡大光学系4と、反射部6とを有する虚像表示装置1と、フレーム2とを有する。
【0039】
このヘッドマウントディスプレイ10では、画像生成部3が映像信号に基づき変調された映像光を形成し、拡大光学系4が当該映像光の光束幅(断面積)を拡大し、反射部6が拡大光学系4によって拡大された映像光を観察者の眼EYに導く。これにより、映像信号に応じた虚像を観察者に視認させることができる。
【0040】
また、ヘッドマウントディスプレイ10は、虚像表示装置1が備える画像生成部3、拡大光学系4、および反射部6が、それぞれ、フレーム2の右側および左側に設けられており、YZ平面を基準として対称(左右対称)となるように配設されている。フレーム2の右側に設けられている画像生成部3、拡大光学系4、および反射部6が、右眼用の虚像を形成しており、フレーム2の左側に設けられている画像生成部3、拡大光学系4、および反射部6が、左眼用の虚像を形成している。
【0041】
なお、本実施形態では、ヘッドマウントディスプレイ10は、フレーム2の右側および左側に、それぞれ画像生成部3、拡大光学系4、および反射部6を設け、右眼用の虚像と左眼用の虚像とを形成する構成としているが、これに限定されず、例えば、フレーム2の左側のみに画像生成部3、拡大光学系4、および反射部6を設け、左眼用の虚像のみを形成する構成にしてもよい。また、例えば、フレーム2の右側のみに画像生成部3、拡大光学系4、および反射部6を設け、右眼用の虚像のみを形成する構成にしてもよい。すなわち、本発明のヘッドマウントディスプレイは、本実施形態のような両眼タイプのヘッドマウントディスプレイ10に限定されず、単眼タイプのヘッドマウントディスプレイであってもよい。
【0042】
以下、ヘッドマウントディスプレイ10の各部を順次詳細に説明する。
なお、2つの画像生成部3、2つの拡大光学系4、および2つの反射部6は、それぞれ、同一の構成を有しているため、以下では、フレーム2の左側に設けられている画像生成部3、拡大光学系4、および反射部6を中心に説明する。
【0043】
《フレーム》
図2に示すように、フレーム2は、眼鏡フレームのような形状をなし、虚像表示装置1が備える画像生成部3、拡大光学系4、および反射部6を支持する機能を有する。
【0044】
フレーム2は、リム211と、シェード部212とを有するフロント部21と、フロント部21の左右両端からZ軸方向に延出したテンプル22とを有する。
【0045】
シェード部212は、外界光の透過を抑制する機能を有し、反射部6を支持する部材である。シェード部212は、その内側に、観察者側に向かって開口する凹部27を有しており、この凹部27に反射部6が設けられている。そして、この反射部6を支持するシェード部212が、リム211によって支持されている。
【0046】
また、シェード部212の中央部には、ノーズパッド23が設けられている。ノーズパッド23は、観察者がヘッドマウントディスプレイ10を頭部Hに装着したとき、観察者の鼻NSに当接して、ヘッドマウントディスプレイ10を観察者の頭部Hに対して支持している。
【0047】
テンプル22は、観察者の耳EAに掛けるための角度が付けられていないストレートテンプルであり、観察者がヘッドマウントディスプレイ10を頭部Hに装着したとき、テンプル22の一部が、観察者の耳EAに当接するよう構成されている。また、テンプル22の内部には、画像生成部3および拡大光学系4が収容されている。
【0048】
また、テンプル22の構成材料としては、特に限定されず、例えば、各種樹脂材料や、樹脂に炭素繊維やガラス繊維等の繊維が混合された複合材料、アルミニウムやマグネシウム等の金属材料等を用いることができる。
【0049】
なお、フレーム2の形状は、観察者の頭部Hに装着することができるものであれば、図示のものに限定されない。
【0050】
《虚像表示装置》
前述したように、虚像表示装置1は、画像生成部3と、拡大光学系4と、反射部6とを有している。
【0051】
以下、本実施形態の虚像表示装置1の各部について詳細に説明する。
[画像生成部]
図2に示すように、画像生成部3は、前述したフレーム2のテンプル22に内蔵されている。
【0052】
画像生成部3は、
図3、および
図4に示すように、映像光生成部31と、駆動信号生成部32と、制御部33と、レンズ34と、光走査部35とを備える。
【0053】
このような画像生成部3は、映像信号に基づき変調された映像光を生成する機能と、光走査部35を駆動する駆動信号を生成する機能と、を有する。
【0054】
以下、画像生成部3の各部について詳述する。
(映像光生成部)
映像光生成部31は、光走査部35(光スキャナー)で走査(光走査)される映像光L1を生成するものである。
【0055】
この映像光生成部31は、波長の異なる複数の光源(光源部)311R、311G、311Bを有する光源部311と、複数の駆動回路312R、312G、312Bと、光合成部(合成部)313と、を有する。
【0056】
光源部311が有する光源311R(R光源)は、赤色光を射出するものであり、光源311G(G光源)は、緑色光を射出するものであり、光源311Bは、青色光を射出するものである。このような3色の光を用いることにより、フルカラーの画像を表示することができる。
【0057】
光源311R、311G、311Bは、それぞれ、特に限定されないが、例えば、レーザーダイオード、LED等を用いることができる。
【0058】
このような光源311R、311G、311Bは、それぞれ、駆動回路312R、312G、312Bに電気的に接続されている。
【0059】
駆動回路312Rは、前述した光源311Rを駆動する機能を有し、駆動回路312Gは、前述した光源311Gを駆動する機能を有し、駆動回路312Bは、前述した光源311Bを駆動する機能を有する。
【0060】
このような駆動回路312R、312G、312Bにより駆動された光源311R、311G、311Bから射出された3つ(3色)の光(映像光)は、光合成部313に入射する。
【0061】
光合成部313は、複数の光源311R、311G、311Bからの光を合成するものである。
【0062】
本実施形態では、光合成部313は、2つのダイクロイックミラー313a、313bを有する。
【0063】
ダイクロイックミラー313aは、赤色光を透過させるとともに緑色光を反射する機能を有する。また、ダイクロイックミラー313bは、赤色光および緑色光を透過させるとともに青色光を反射する機能を有する。
【0064】
このようなダイクロイックミラー313a、313bを用いることにより、光源311R、311G、311Bからの赤色光、緑色光および青色光の3色の光を合成して、1つの映像光L1を形成する。
【0065】
ここで、本実施形態では、前述した光源部311は、光源311R、311G、311Bからの赤色光、緑色光および青色光の光路長が互いに等しくなるように、配置されている。
【0066】
なお、光合成部313は、前述したようなダイクロイックミラーを用いた構成に限定されず、例えば、プリズム、光導波路、光ファイバー等で構成されていてもよい。
【0067】
以上のような構成の映像光生成部31にて、光源部311から3色の映像光が生成され、かかる映像光が光合成部313で合成され、1つの映像光L1として生成される。そして、映像光生成部31で生成された映像光L1は、レンズ34に向かう。
【0068】
なお、上述した映像光生成部31には、例えば、光源311R、311G、311Bで生成された映像光L1の強度等を検出する光検出手段(図示せず)等が設けられていてもよい。このような光検出手段を設けることによって、検出結果に応じて映像光L1の強度を調整することができる。
【0069】
(レンズ)
映像光生成部31で生成した映像光L1は、レンズ34に入射する。
【0070】
レンズ34は、映像光L1の放射角度を制御する機能を有する。このレンズ34は、例えば、コリメータレンズである。コリメータレンズは、光を平行状態の光束に調整(変調)するレンズである。
【0071】
このようなレンズ34にて、映像光生成部31から射出した映像光L1は、平行化させた状態で光走査部35に伝送される。
【0072】
(駆動信号生成部)
駆動信号生成部32は、光走査部35(光スキャナー)を駆動する駆動信号を生成するものである。
【0073】
この駆動信号生成部32は、光走査部35の第1の方向での走査(水平走査)に用いる第1の駆動信号を生成する駆動回路321(第1の駆動回路)と、光走査部35の第1の方向に直交する第2の方向での走査(垂直走査)に用いる第2の駆動信号を生成する駆動回路322(第2の駆動回路)とを有する。
【0074】
例えば、駆動回路321は、
図5(a)に示すように、周期T1で周期的に変化する第1の駆動信号V1(水平走査用電圧)を発生させるものであり、駆動回路322は、
図5(b)に示すように、周期T1と異なる周期T2で周期的に変化する第2の駆動信号V2(垂直走査用電圧)を発生させるものである。
【0075】
なお、第1の駆動信号および第2の駆動信号については、後述する光走査部35の説明とともに、後に詳述する。
【0076】
このような駆動信号生成部32は、図示しない信号線を介して、光走査部35に電気的に接続されている。これにより、駆動信号生成部32で生成した駆動信号(第1の駆動信号および第2の駆動信号)は、光走査部35に入力される。
【0077】
(制御部)
前述したような映像光生成部31の駆動回路312R、312G、312Bおよび駆動信号生成部32の駆動回路321、322は、制御部33に電気的に接続されている。制御部33は、映像信号(画像信号)に基づいて、映像光生成部31の駆動回路312R、312G、312Bおよび駆動信号生成部32の駆動回路321、322の駆動を制御する機能を有する。
【0078】
制御部33の指令に基づき、映像光生成部31は画像情報に応じて変調された映像光L1を生成し、駆動信号生成部32は画像情報に応じた駆動信号を生成する。
【0079】
(光走査部)
映像光生成部31から射出した映像光L1は、レンズ34を介して光走査部35に入射する。
【0080】
光走査部35は、映像光生成部31からの映像光L1を2次元的に走査する光スキャナーである。この光走査部35で映像光L1を走査することにより走査光(映像光)L2が形成される。
【0081】
この光走査部35は、
図6に示すように、可動ミラー部11と、1対の軸部12a、12b(第1の軸部)と、枠体部13と、2対の軸部14a、14b、14c、14d(第2の軸部)と、支持部15と、永久磁石16と、コイル17とを備える。言い換えれば、光走査部35はいわゆるジンバル構造を有している。
【0082】
ここで、可動ミラー部11および1対の軸部12a、12bは、Y1軸(第1の軸)周りに揺動(往復回動)する第1の振動系を構成する。また、可動ミラー部11、1対の軸部12a、12b、枠体部13、2対の軸部14a、14b、14c、14dおよび永久磁石16は、X1軸(第2の軸)周りに揺動(往復回動)する第2の振動系を構成する。
【0083】
また、光走査部35は、信号重畳部18を有しており(
図7参照)、永久磁石16、コイル17、信号重畳部18および駆動信号生成部32は、前述した第1の振動系および第2の振動系を駆動(すなわち、可動ミラー部11をX1軸およびY1軸周りに揺動)させる駆動部を構成する。
【0084】
以下、光走査部35の各部を順次詳細に説明する。
可動ミラー部11は、基部111(可動部)と、スペーサー112を介して基部111に固定された光反射板113とを有する。
【0085】
光反射板113の上面(一方の面)には、光反射性を有する光反射部114が設けられている。
【0086】
この光反射板113は、軸部12a、12bに対して厚さ方向に離間するとともに、厚さ方向から見たときに(以下、「平面視」ともいう)軸部12a、12bと重なって設けられている。
【0087】
そのため、軸部12aと軸部12bとの間の距離を短くしつつ、光反射板113の板面の面積を大きくすることができる。また、軸部12aと軸部12bとの間の距離を短くすることができることから、枠体部13の小型化を図ることができる。さらに、枠体部13の小型化を図ることができることから、軸部14a、14bと軸部14c、14dとの間の距離を短くすることできる。
【0088】
このようなことから、光反射板113の板面の面積を大きくしても、光走査部35の小型化を図ることができる。言い換えると、光反射部114の面積に対する光走査部35の大きさを小さくすることができる。
【0089】
また、光反射板113は、平面視にて、軸部12a、12bの全体を覆うように形成されている。言い換えると、軸部12a、12bは、それぞれ、平面視にて、光反射板113の外周に対して内側に位置している。これにより、光反射板113の板面の面積が大きくなり、その結果、光反射部114の面積を大きくすることができる。また、不要な光が軸部12a、12bで反射して迷光となるのを防止することができる。
【0090】
また、光反射板113は、平面視にて、枠体部13の全体を覆うように形成されている。言い換えると、枠体部13は、平面視にて、光反射板113の外周に対して内側に位置している。これにより、光反射板113の板面の面積が大きくなり、その結果、光反射部114の面積を大きくすることができる。また、不要な光が枠体部13で反射して迷光となるのを防止することができる。
【0091】
さらに、光反射板113は、平面視にて、軸部14a、14b、14c、14dの全体を覆うように形成されている。言い換えると、軸部14a、14b、14c、14dは、それぞれ、平面視にて、光反射板113の外周に対して内側に位置している。これにより、光反射板113の板面の面積が大きくなり、その結果、光反射部114の面積を大きくすることができる。また、不要な光が軸部14a、14b、14c、14dで反射して迷光となるのを防止することができる。
【0092】
本実施形態では、光反射板113は、平面視にて、円形をなしている。なお、光反射板113の平面視形状は、これに限定されず、例えば、楕円形、四角形等の多角形であってもよい。
【0093】
このような光反射板113の下面(他方の面)には、
図7に示すように、硬質層115が設けられている。
【0094】
硬質層115は、光反射板113本体の構成材料よりも硬質な材料で構成されている。これにより、光反射板113の剛性を高めることができる。そのため、光反射板113の揺動時における撓みを防止または抑制することができる。また、光反射板113の厚さを薄くし、光反射板113のX1軸およびY1軸周りの揺動時における慣性モーメントを抑えることができる。
【0095】
このような硬質層115の構成材料としては、光反射板113本体の構成材料よりも硬質な材料であれば、特に限定されず、例えば、ダイヤモンド、カーボンナイトライド膜、水晶、サファイヤ、タンタル酸リチウム、ニオブ酸カリウムなどを用いることができるが、特に、ダイヤモンドを用いるのが好ましい。
【0096】
硬質層115の厚さ(平均)は、特に限定されないが、1〜10μm程度であるのが好ましく、1〜5μm程度であるのがさらに好ましい。
【0097】
また、硬質層115は、単層で構成されていてもよいし、複数の層の積層体で構成されていてもよい。なお、硬質層115は、必要に応じて設けられるものであり、省略することもできる。
【0098】
このような硬質層115の形成には、例えば、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射、シート状部材の接合等を用いることができる。
【0099】
また、光反射板113の下面は、スペーサー112を介して基部111に固定されている。これにより、軸部12a、12b、枠体部13および軸部14a、14b、14c、14dとの接触を防止しつつ、光反射板113をY1軸周りに揺動させることができる。
【0100】
また、基部111は、それぞれ、平面視にて、光反射板113の外周に対して内側に位置している。すなわち、光反射板113の光反射部114が設けられる面(板面)の面積は、基部111のスペーサー112が固定される面の面積よりも大きい。また、基部111の平面視での面積は、基部111がスペーサー112を介して光反射板113を支持することができれば、できるだけ小さいのが好ましい。これにより、光反射板113の板面の面積を大きくしつつ、軸部12aと軸部12bとの間の距離を小さくすることができる。
【0101】
枠体部13は、
図6に示すように、枠状をなし、前述した可動ミラー部11の基部111を囲んで設けられている。言い換えると、可動ミラー部11の基部111は、枠状をなす枠体部13の内側に設けられている。
【0102】
そして、枠体部13は、軸部14a、14b、14c、14dを介して支持部15に支持されている。また、可動ミラー部11の基部111は、軸部12a、12bを介して枠体部13に支持されている。
【0103】
また、枠体部13は、Y1軸に沿った方向での長さがX1軸に沿った方向での長さよりも長くなっている。すなわち、Y1軸に沿った方向における枠体部13の長さをaとし、X1軸に沿った方向における枠体部13の長さをbとしたとき、a>bなる関係を満たす。これにより、軸部12a、12bに必要な長さを確保しつつ、X1軸に沿った方向における光走査部35の長さを抑えることができる。
【0104】
また、枠体部13は、平面視にて、可動ミラー部11の基部111および1対の軸部12a、12bからなる構造体の外形に沿った形状をなしている。これにより、可動ミラー部11および1対の軸部12a、12bで構成された第1の振動系の振動、すなわち、可動ミラー部11のY1軸周りの揺動を許容しつつ、枠体部13の小型化を図ることができる。
【0105】
なお、枠体部13の形状は、可動ミラー部11の基部111を囲む枠状であれば、図示のものに限定されない。
【0106】
軸部12a、12bは、可動ミラー部11をY1軸(第1の軸)周りに回動(揺動)可能とするように、可動ミラー部11と枠体部13を連結している。また、軸部14a、14b、14c、14dは、枠体部13をY1軸に直交するX1軸(第2の軸)周りに回動(揺動)可能とするように、枠体部13と支持部15を連結している。
【0107】
軸部12a、12bは、可動ミラー部11の基部111を介して互いに対向するように配置されている。また、軸部12a、12bは、それぞれ、Y1軸に沿った方向に延在する長手形状をなす。そして、軸部12a、12bは、それぞれ、一端部が基部111に接続され、他端部が枠体部13に接続されている。また、軸部12a、12bは、それぞれ、中心軸がY1軸に一致するように配置されている。
【0108】
このような軸部12a、12bは、それぞれ、可動ミラー部11のY1軸周りの揺動に伴って捩れ変形する。
【0109】
軸部14a、14bおよび軸部14c、14dは、枠体部13を介して(挟んで)互いに対向するように配置されている。また、軸部14a、14b、14c、14dは、それぞれ、X1軸に沿った方向に延在する長手形状をなす。そして、軸部14a、14b、14c、14dは、それぞれ、一端部が枠体部13に接続され、他端部が支持部15に接続されている。また、軸部14a、14bは、X1軸を介して互いに対向するように配置され、同様に、軸部14c、14dは、X1軸を介して互いに対向するように配置されている。
【0110】
このような軸部14a、14b、14c、14dは、枠体部13のX1軸周りの揺動に伴って、軸部14a、14b全体および軸部14c、14d全体がそれぞれ捩れ変形する。
【0111】
このように、可動ミラー部11をY1軸周りに揺動可能とするとともに、枠体部13をX1軸周りに揺動可能とすることにより、可動ミラー部11を互いに直交するX1軸およびY1軸の2軸周りに揺動(往復回動)させることができる。
【0112】
また、図示しないが、このような軸部12a、12bのうちの少なくとも一方の軸部、および、軸部14a、14b、14c、14dのうちの少なくとも1つの軸部には、それぞれ、例えば歪みセンサーのような角度検出センサーが設けられている。この角度検出センサーは、光走査部35の角度情報、より具体的には、光反射部114のX1軸周りおよびY1軸周りのそれぞれの揺動角を検出することができる。この検出結果は、図示しないケーブルを介して、制御部33に入力される。
【0113】
なお、軸部12a、12bおよび軸部14a、14b、14c、14dの形状は、それぞれ、前述したものに限定されず、例えば、途中の少なくとも1箇所に屈曲または湾曲した部分や分岐した部分を有していてもよい。
【0114】
前述したような基部111、軸部12a、12b、枠体部13、軸部14a、14b、14c、14dおよび支持部15は、一体的に形成されている。
【0115】
本実施形態では、基部111、軸部12a、12b、枠体部13、軸部14a、14b、14c、14dおよび支持部15は、第1のSi層(デバイス層)と、SiO
2層(ボックス層)と、第2のSi層(ハンドル層)とがこの順に積層したSOI基板をエッチングすることにより形成されている。これにより、第1の振動系および第2の振動系の振動特性を優れたものとすることができる。また、SOI基板は、エッチングにより微細な加工が可能であるため、SOI基板を用いて基部111、軸部12a、12b、枠体部13、軸部14a、14b、14c、14dおよび支持部15を形成することにより、これらの寸法精度を優れたものとすることができ、また、光走査部35の小型化を図ることができる。
【0116】
そして、基部111、軸部12a、12bおよび軸部14a、14b、14c、14dは、それぞれ、SOI基板の第1のSi層で構成されている。これにより、軸部12a、12bおよび軸部14a、14b、14c、14dの弾性を優れたものとすることができる。また、基部111がY1軸周りに回動する際に枠体部13に接触するのを防止することができる。
【0117】
また、枠体部13および支持部15は、それぞれ、SOI基板の第1のSi層、SiO
2層および第2のSi層からなる積層体で構成されている。これにより、枠体部13および支持部15の剛性を優れたものとすることができる。また、枠体部13のSiO
2層および第2のSi層は、枠体部13の剛性を高めるリブとしての機能だけでなく、可動ミラー部11が永久磁石16に接触するのを防止する機能も有する。
【0118】
また、支持部15の上面には、反射防止処理が施されているのが好ましい。これにより、支持部15に照射された不要光が迷光となるのを防止することができる。
【0119】
かかる反射防止処理としては、特に限定されないが、例えば、反射防止膜(誘電体多層膜)の形成、粗面化処理、黒色処理等が挙げられる。
【0120】
なお、前述した基部111、軸部12a、12bおよび軸部14a、14b、14c、14dの構成材料および形成方法は、一例であり、本発明は、これに限定されるものではない。
【0121】
また、本実施形態では、スペーサー112および光反射板113も、SOI基板をエッチングすることにより形成されている。そして、スペーサー112は、SOI基板のSiO
2層および第2のSi層からなる積層体で構成されている。また、光反射板113は、SOI基板の第1のSi層で構成されている。
【0122】
このように、SOI基板を用いてスペーサー112および光反射板113を形成することにより、互いに接合されたスペーサー112および光反射板113を簡単かつ高精度に製造することができる。
【0123】
このようなスペーサー112は、例えば、接着剤、ろう材等の接合材(図示せず)により基部111に接合されている。
【0124】
前述した枠体部13の下面(光反射板113とは反対側の面)には、永久磁石16が接合されている。
【0125】
永久磁石16と枠体部13との接合方法としては、特に限定されないが、例えば、接着剤を用いた接合方法を用いることができる。
【0126】
永久磁石16は、平面視にて、X1軸およびY1軸に対して傾斜する方向に磁化されている。
【0127】
本実施形態では、永久磁石16は、長手形状(棒状)をなし、X1軸およびY1軸に対して傾斜する方向に沿って配置されている。そして、永久磁石16は、その長手方向に磁化されている。すなわち、永久磁石16は、一端部をS極とし、他端部をN極とするように磁化されている。
【0128】
また、永久磁石16は、平面視にて、X1軸とY1軸との交点を中心として対称となるように設けられている。
【0129】
なお、本実施形態では、枠体部13に1つの永久磁石の数を設置した場合を例に説明するが、これに限定されず、例えば、枠体部13に2つの永久磁石を設置してもよい。この場合、例えば、長尺状をなす2つの永久磁石を、平面視にて基部111を介して互いに対向するとともに、互いに平行となるように、枠体部13に設置すればよい。
【0130】
X1軸に対する永久磁石16の磁化の方向(延在方向)の傾斜角θは、特に限定されないが、30°以上60°以下であるのが好ましく、45°以上60°以下であることがより好ましく、45°であるのがさらに好ましい。このように永久磁石16を設けることで、円滑かつ確実に可動ミラー部11をX1軸の周りに回動させることができる。
【0131】
このような永久磁石16としては、例えば、ネオジム磁石、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石、ボンド磁石等を好適に用いることができる。このような永久磁石16は、硬磁性体を着磁したものであり、例えば、着磁前の硬磁性体を枠体部13に設置した後に着磁することにより形成される。既に着磁がなされた永久磁石16を枠体部13に設置しようとすると、外部や他の部品の磁界の影響により、永久磁石16を所望の位置に設置できない場合があるからである。
【0132】
このような永久磁石16の直下には、コイル17が設けられている。すなわち、枠体部13の下面に対向するように、コイル17が設けられている。これにより、コイル17から発生する磁界を効率的に永久磁石16に作用させることができる。これにより、光走査部35の省電力化および小型化を図ることができる。
【0133】
このようなコイル17は、信号重畳部18に電気的に接続されている(
図7参照)。
そして、信号重畳部18によりコイル17に電圧が印加されることで、コイル17からX1軸およびY1軸に直交する磁束を有する磁界が発生する。
【0134】
信号重畳部18は、前述した第1の駆動信号V1と第2の駆動信号V2とを重畳する加算器(図示せず)を有し、その重畳した電圧をコイル17に印加する。
【0135】
ここで、第1の駆動信号V1および第2の駆動信号V2について詳述する。
前述したように、駆動回路321は、
図5(a)に示すように、周期T1で周期的に変化する第1の駆動信号V1(水平走査用電圧)を発生させるものである。すなわち、駆動回路321は、第1周波数(1/T1)の第1の駆動信号V1を発生させるものである。
【0136】
第1の駆動信号V1は、正弦波のような波形をなしている。そのため、光走査部35は効果的に光を主走査することができる。なお、第1の駆動信号V1の波形は、これに限定されない。
【0137】
また、第1周波数(1/T1)は、水平走査に適した周波数であれば、特に限定されないが、10〜40kHzであるのが好ましい。
【0138】
本実施形態では、第1周波数は、可動ミラー部11および1対の軸部12a、12bで構成される第1の振動系(捩り振動系)の捩り共振周波数(f1)と等しくなるように設定されている。つまり、第1の振動系は、その捩り共振周波数f1が水平走査に適した周波数になるように設計(製造)されている。これにより、可動ミラー部11のY1軸周りの回動角を大きくすることができる。
【0139】
一方、前述したように、駆動回路322は、
図5(b)に示すように、周期T1と異なる周期T2で周期的に変化する第2の駆動信号V2(垂直走査用電圧)を発生させるものである。すなわち、駆動回路322は、第2周波数(1/T2)の第2の駆動信号V2を発生させるものである。
【0140】
第2の駆動信号V2は、鋸波のような波形をなしている。そのため、光走査部35は効果的に光を垂直走査(副走査)することができる。なお、第2の駆動信号V2の波形は、これに限定されない。
【0141】
第2周波数(1/T2)は、第1周波数(1/T1)と異なり、かつ、垂直走査に適した周波数であれば、特に限定されないが、30〜80Hz(60Hz程度)であるのが好ましい。このように、第2の駆動信号V2の周波数を60Hz程度とし、前述したように第1の駆動信号V1の周波数を10〜40kHzとすることで、ディスプレイでの描画に適した周波数で、可動ミラー部11を互いに直交する2軸(X1軸およびY1軸)のそれぞれの軸周りに回動させることができる。ただし、可動ミラー部11をX1軸およびY1軸のそれぞれの軸周りに回動させることができれば、第1の駆動信号V1の周波数と第2の駆動信号V2の周波数との組み合わせは、特に限定されない。
【0142】
本実施形態では、第2の駆動信号V2の周波数は、可動ミラー部11、1対の軸部12a、12b、枠体部13、2対の軸部14a、14b、14c、14dおよび永久磁石16で構成された第2の振動系(捩り振動系)の捩り共振周波数(共振周波数)と異なる周波数となるように調整されている。
【0143】
このような第2の駆動信号V2の周波数(第2周波数)は、第1の駆動信号V1の周波数(第1周波数)よりも小さいことが好ましい。すなわち、周期T2は、周期T1よりも長いことが好ましい。これにより、より確実かつより円滑に、可動ミラー部11をY1軸周りに第1周波数で回動させつつ、X1軸周りに第2周波数で回動させることができる。
【0144】
また、第1の振動系の捩り共振周波数をf1[Hz]とし、第2の振動系の捩り共振周波数をf2[Hz]としたとき、f1とf2とが、f2<f1の関係を満たすことが好ましく、f1≧10f2の関係を満たすことがより好ましい。これにより、より円滑に、可動ミラー部11を、Y1軸周りに第1の駆動信号V1の周波数で回動させつつ、X1軸周りに第2の駆動信号V2の周波数で回動させることができる。これに対し、f1≦f2とした場合は、第2周波数による第1の振動系の振動が起こる可能性がある。
【0145】
次に、光走査部35の駆動方法について説明する。なお、本実施形態では、前述したように、第1の駆動信号V1の周波数は、第1の振動系の捩り共振周波数と等しく設定されており、第2の駆動信号V2の周波数は、第2の振動系の捩り共振周波数と異なる値に、かつ、第1の駆動信号V1の周波数よりも小さくなるように設定されている(例えば、第1の駆動信号V1の周波数が18kHz、第2の駆動信号V2の周波数が60Hzに設定されている)。
【0146】
例えば、
図5(a)に示すような第1の駆動信号V1と、
図5(b)に示すような第2の駆動信号V2とを信号重畳部18にて重畳し、重畳した電圧をコイル17に印加する。
【0147】
すると、第1の駆動信号V1によって、永久磁石16の一端部(N極)をコイル17に引き付けようとするとともに、永久磁石16の他端部(S極)をコイル17から離間させようとする磁界(この磁界を「磁界A1」という)と、永久磁石16の一端部(N極)をコイル17から離間させようとするとともに、永久磁石16の他端部(S極)をコイル17に引き付けようとする磁界(この磁界を「磁界A2」という)とが交互に切り換わる。
【0148】
ここで、上述したように、永久磁石16は、それぞれの端部(磁極)が、Y1軸で分割される2つの領域に位置するように配置される。すなわち、
図6の平面視において、Y1軸を挟んで一方側に永久磁石16のN極が位置し、他方側に永久磁石16のS極が位置している。そのため、磁界A1と磁界A2とが交互に切り換わることで、枠体部13にY1軸周りの捩り振動成分を有する振動が励振され、その振動に伴って、軸部12a、12bを捩れ変形させつつ、可動ミラー部11が第1の駆動信号V1の周波数でY1軸まわりに回動する。
【0149】
また、第1の駆動信号V1の周波数は、第1の振動系の捩り共振周波数と等しい。そのため、第1の駆動信号V1によって、効率的に、可動ミラー部11をY1軸周りに回動させることができる。すなわち、前述した枠体部13のY1軸周りの捩り振動成分を有する振動が小さくても、その振動に伴う可動ミラー部11のY1軸周りの回動角を大きくすることができる。
【0150】
一方、第2の駆動信号V2によって、永久磁石16の一端部(N極)をコイル17に引き付けようとするとともに、永久磁石16の他端部(S極)をコイル17から離間させようとする磁界(この磁界を「磁界B1」という)と、永久磁石16の一端部(N極)をコイル17から離間させようとするとともに、永久磁石16の他端部(S極)をコイル17に引き付けようとする磁界(この磁界を「磁界B2」という)とが交互に切り換わる。
【0151】
ここで、上述したように、永久磁石16は、それぞれの端部(磁極)が、X1軸で分割される2つの領域に位置するように配置される。すなわち
図6の平面視において、X1軸を挟んで一方側に永久磁石16のN極が位置し、他方側に永久磁石16のS極が位置している。そのため、磁界B1と磁界B2とが交互に切り換わることで、軸部14a、14bおよび軸部14c、14dをそれぞれ捩れ変形させつつ、枠体部13が可動ミラー部11とともに、第2の駆動信号V2の周波数でX1軸周りに回動する。
【0152】
また、第2の駆動信号V2の周波数は、第1の駆動信号V1の周波数に比べて極めて低く設定されている。また、第2の振動系の捩り共振周波数は、第1の振動系の捩り共振周波数よりも低く設計されている。そのため、可動ミラー部11が第2の駆動信号V2の周波数でY1軸周りに回動してしまうことを防止することができる。
【0153】
以上説明したような光走査部35によれば、光反射性を有する光反射部114を備える可動ミラー部11を互いに直交する2つの軸周りにそれぞれ揺動させるので、光走査部35の小型化および軽量化を図ることができる。その結果、観察者にとっての使い勝手をより優れた虚像表示装置1とすることができる。
【0154】
特に、光走査部35がジンバル構造を有するため、映像光を2次元的に走査する構成(光走査部35)をより小型なものとすることができる。
【0155】
[拡大光学系4]
図3に示すように、前述した光走査部35で走査された走査光(映像光)L2は、拡大光学系4へと伝送される。
【0156】
拡大光学系4は、光走査部35で走査された映像光L2の光束幅を拡大する、すなわち映像光L2の断面積を拡大する機能を有する。
【0157】
この拡大光学系4は、
図3に示すように、光学素子5と、補正レンズ42と、遮光板43とを備えている。
【0158】
以下、このような拡大光学系4の各部について順次詳細に説明する。
(光学素子5)
光学素子5は、
図3に示すように、光走査部35の近傍に設けられており、光透過性(透光性)を有し、Z軸方向に沿った長尺状をなしている。
【0159】
前述した光走査部35で走査された映像光L2は、光学素子5に入射する。
この光学素子5は、光走査部35で走査された映像光L2の光束幅(断面積)を拡大するものである。具体的には、光学素子5は、光走査部35から走査した映像光L2を光学素子5内部で多重反射させながら、Z方向に伝播することで、映像光L2の光束幅を拡大し、映像光L2よりも光束幅が大きい映像光L3、L4を射出するものである。
【0160】
図8に示すように、光学素子5は、その長さ方向(Z軸方向)の一端に入射面56と射出面57とを有しており、これら(入射面56および射出面57)が対向している。また、光学素子5は、その厚さ方向(X軸方向)に対向する側面58a、58bと、幅方向(Y軸方向)に対向する側面59a、59bと、を有する。
【0161】
また、入射面56は、光走査部35に臨むように設けられており、射出面57は、補正レンズ42および遮光板43側に臨むように設けられている(
図3参照)。
【0162】
入射面56は、光透過性を有する面であり、光走査部35で走査された映像光L2が入射する面である。一方、射出面57は、光透過性を有する面であり、入射面56から入射した映像光L2を、映像光L3、L4として射出する面である。
【0163】
また、側面58a、58bは、それぞれ、全反射面であり、光学素子5内に入射した映像光L2を全反射させる。ここで、全反射面とは、光透過率が0%の面だけでなく、光を若干透過する面、例えば、光透過率が3%未満の面を含む。
【0164】
また、側面59aと側面59bとは、いかなる光透過率の面であってもよく、例えば全反射面や半反射面であってもよいが、特に、光透過率が比較的低い面であることが好ましい。これにより、光学素子5内の光が迷光となるのを防止することができる。また、光学素子5内の光が迷光となるのを防止する方法としては、例えば、側面59aと側面59bとを粗面化する方法等が挙げられる。
【0165】
また、
図8に示すように、入射面56と、射出面57とは、平行である。また、側面58aと側面58bとは、平行である。また、側面59aと側面59bとは、平行である。このため、本実施形態では、光学素子5の全体形状は直方体となっている。
【0166】
なお、前記「平行」とは、完全に平行となっているもの以外に、例えば、各面のなす角度が±2°程度であるものも含む。
【0167】
また、本実施形態では、入射面56と射出面57とは、平行であるが、入射面56と射出面57とは、平行でなくてもよく、傾き角度の絶対値が同じであればよい。「入射面56と射出面57との傾き角度の絶対値が同じである」とは、例えば、入射面56がXY面に対して+Z軸方向に鋭角α(例えば、+20°)で傾斜しており、射出面57がXY面に対して−Z軸方向に鋭角α(例えば、−20°)で傾斜している状態を含むことをいう。すなわち、
図21に示すように、入射面56と射出面57とで、ハの字状を構成している(図)ものも含むことをいう。また、前記「傾き角度の絶対値が同じ」とは、完全に傾き角度の絶対値が同じとなっているもの以外に、例えば、かかる絶対値が2°程度異なるものも含む。
【0168】
また、本実施形態では、側面59aと側面59bとは、平行であるが、入射面56と射出面57とは、平行でなくてもよく、傾斜角度が異なっていてもよい。
【0169】
また、光学素子5の厚さ(X軸方向の長さ)は、例えば、0.1mm以上、100mm以下であるのが好ましく、0.3mm以上、50mm以下であるのがより好ましい。これにより、光学素子5の小型化を図ることができるとともに、射出面57から射出される映像光L3を比較的大きく拡大することができる。
【0170】
光学素子5の長さ(Z軸方向の長さ)は、特に限定されないが、例えば、1mm以上、50mm以下であるのが好ましく、5mm以上、30mm以下であるのがより好ましい。これにより、光学素子5の小型化を図ることができるとともに、映像光L2を光学素子5の内部にて十分に多重反射させることができ、射出面57から射出される映像光L3の強度分布の均一性より高めることができる。
【0171】
光学素子5の幅(Y軸方向の長さ)は、例えば、0.1mm以上、100mm以下であるのが好ましく、0.3mm以上、50mm以下であるのがより好ましい。これにより、光学素子5の小型化を図ることができるとともに、射出面57から射出される映像光L3を比較的大きく拡大することができる。
【0172】
このような構成の光学素子5は、
図8に示すように、映像光L2を導光する導光部(第1導光部)51、導光部(第2導光部)52および導光部(第3導光部)53と、ハーフミラー層(第1光分岐層)54およびハーフミラー層(第2光分岐層)55とを有する。
【0173】
この光学素子5は、導光部51、ハーフミラー層54、導光部52、ハーフミラー層55、導光部53が、この順に各厚さ方向(X軸方向)に沿って積層されている。すなわち、光学素子5は、導光部51、52、53が、ハーフミラー層54、55を介して、各厚さ方向(第1の方向)に沿って配列された1次元アレイである。
【0174】
導光部51、52、53は、それぞれ、板状をなすライトパイプであり、入射面56から入射した映像光L2(光走査部35で走査された映像光)を+Z方向に伝播する機能を有する。
【0175】
なお、導光部51、52、53は、
図8(a)、(b)に示すように、その断面形状(XY平面における断面形状)が、長方形状をなしているが、導光部51、52、53の断面形状(XY平面における断面形状)はこれに限定されず、正方形状等の四角形状や、その他の多角形状等であってもよい。
【0176】
また、各導光部51、52、53の厚さは、特に限定されないが、本実施形態では、入射面56に入射する映像光L2の径(光束幅の径)よりも小さく構成されている(
図9参照)。言い換えれば、各導光部51、52、53の配列方向に沿った各導光部51、52、53の入射面56上の幅は、各導光部51、52、53の配列方向に沿った映像光L2の入射面56上の幅よりも、小さい。これにより、複数の導光部(本実施形態では、導光部51、52、53)に跨って映像光L2を入射させることができ、射出面57から射出された映像光L3、L4の強度分布の均一性より高めることができる。このような効果を得るためには、各導光部51、52、53の厚さは、例えば、0.01mm以上、10mm以下であるのが好ましく、0.01mm以上、5mm以下であるのがより好ましい。
【0177】
なお、本実施形態では、導光部51、52、53の厚さは、映像光L2の径(光束幅の径)よりも小さく構成されているが、導光部51、52、53の厚さは、映像光L2の径よりも大きく設定されていても構わない。
【0178】
また、導光部51、52、53は、光透過性を有するものであればよく、例えば、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等の各種樹脂材料や、各種ガラス等で構成されている。
【0179】
ハーフミラー層54、55は、例えば、光透過性を有する反射膜、すなわち半透過反射膜で構成されている。このハーフミラー層54、55は、映像光L2の一部を反射させるとともに、一部を透過させる機能を有する。このハーフミラー層54、55は、例えば、銀(Ag)、アルミニウム(Al)等による金属反射膜や誘電体多層膜等の半透過反射膜で構成されている。
【0180】
このような構成の光学素子5は、例えば、ハーフミラー層54、55となり得る薄膜が主面上に形成された導光部51、導光部52、および導光部53を、表面活性化接合することにより得ることができる。表面活性化接合により光学素子5を製造することで、各部(導光部51、52、53)の平行度を高くすることができる。
【0181】
以上のような構成の光学素子5は、
図9に示すように、光走査部35で走査された映像光L2を、入射面56から入射し、光学素子5の内部で多重反射させ、射出面57から、光束幅が拡大した状態の映像光L3、L4として射出する。このようにして、光学素子5によって映像光L2の光束幅(断面積)を拡大することができることについて、
図9、および
図10に基づいて光学素子5の内部での映像光L2の光路を説明するとともに、以下に詳述する。なお、
図10では、映像光L2の主光線のみを代表して図示している。
【0182】
まず、
図10に示すように、光走査部35で走査された映像光L2は、入射面56から光学素子5内に入射する。このとき、映像光L2は、側面58aと側面58bとに平行な軸線Xに対して角度θ5傾斜した状態で入射する。入射した映像光L2は、
図10(a)に示すように、導光部52内を進行し、ハーフミラー層54に到達すると、映像光L2の一部はハーフミラー層54を透過し、残りはハーフミラー層54で反射する。
【0183】
ハーフミラー層54を透過した映像光L21は、導光部51内を進行し、側面58aで全反射する。一方、ハーフミラー層54で反射した映像光L22は、導光部52内を進行し、ハーフミラー層55に到達する。ここでまた、ハーフミラー層55に到達した映像光L22は、
図10(b)に示すように、その一部がハーフミラー層55を透過し、残りがハーフミラー層55で反射する。ハーフミラー層55を透過した映像光L22は、
図10(b)に示すように、側面58bで全反射する。
【0184】
このように、光学素子5内に導かれた映像光L2は、側面58a、58bにおいて、全反射を繰り返すとともに、ハーフミラー層54、55において、反射と透過とを繰り返す。すなわち、光学素子5内に導かれた映像光L2は、
図9に示すように、光学素子5の内部で多重反射する。
【0185】
そして、映像光L2は、光学素子5の内部で多重反射した結果、多重反射を繰り返した光成分が重なり、光束幅が拡大された映像光L3およびL4が、射出面57から射出される。
【0186】
ここで、前述したように、入射面56と、射出面57とは、平行である。このため、入射面56に入射する映像光L2の屈折の量と、射出面57から射出する映像光L3、L4の屈折の量とを同じにすることができる。すなわち、ハーフミラー層54、55に対する映像光L2が入射する角度θ5と、ハーフミラー層54、55に対する映像光L3およびL4が射出する角度θ5とを同じすることができる。これにより、屈折の法則の三角関数に起因するに歪みや材料の屈折率の波長分散に起因する色収差の発生を防ぐことができる。
【0187】
なお、本実施形態では、入射面56と射出面57とは、互いに平行であるが、前述したように、入射面56と射出面57との傾き角度の絶対値が同じであれば、映像光L2の入射角と、映像光L3の射出角の絶対値が同じにすることができる。そのため。入射面56と射出面57との傾き角度の絶対値が同じであれば、上記のような効果を得ることができる。
【0188】
また、本実施形態の光学素子5は、導光部51、52、53が厚さ方向(第1の方向)に沿って配列されている1次元アレイ(第1の1次元アレイ)である。このように、導光部51、52、53を、ハードコート層44、45を介して積層するという比較的簡単な構成で、入射面56から入射した映像光L2を光学素子5内で多重反射させることができる。そのため、観察者の視線や、観察者の左右の眼EYの位置に映像光を合わせるような位置検出手段等を用いずとも、本実施形態のような比較的簡単な構成で、映像光L2の光束幅を拡大することができる。
【0189】
また、光学素子5は、
図3に示すように、観察者の頭部Hに装着された状態で、反射部6から、観察者の左眼EYと右眼EYとが並んでいる方向(X軸方向)に平行な軸線W(
図1、
図3参照)を含む面内方向(XZ面内方向)に、映像光L3およびL4の主光線が射出されるよう配置されている。言い換えれば、光学素子5は、軸線W方向に映像光L3の断面積が拡大されるように配置されている。また、補正レンズ42および遮光板43は、軸線Wに沿って配列されている。このため、射出面57から射出された映像光L3は、補正レンズ42を介して反射部6へ向けて射出され、射出面57から射出された映像光L4は、遮光板43へ向けて射出される。このように、光学素子5を、軸線W方向に映像光L3の断面積が拡大されるように配置することで、補正レンズ42および反射部6を介して観察者の眼に導かれる映像光L3を、眼の左右方向に拡大することができる。よって、眼の上下方向に対して移動範囲が大きい左右方向に対して、視認性を高めることができる。
【0190】
(補正レンズ)
図3に示すように、光学素子5から射出した映像光L3は、補正レンズ42に入射する。
【0191】
この補正レンズ42は、後述する反射部6が備える非球面ミラー61により映像光L3の平行性が乱れるのを補正する機能を有する。これにより、映像光L3の解像度性能を向上させることができる。このような補正レンズ42としては、例えば、トロイダルレンズ、シリンドリカルレンズ、自由曲面レンズ等が挙げられる。
【0192】
(遮光板)
光学素子5から射出した映像光L4は、遮光板43に入射する。
【0193】
この遮光板43は、光を吸収する光吸収部材で構成されており、光を遮断する遮光手段である。これにより、光学素子5から射出した映像光L4は、不要光として遮断される。
【0194】
このような遮光板43は、例えば、ステンレス、アルミニウム合金等で形成されている。
【0195】
なお、本実施形態では、映像光L4を遮断する遮光手段として、遮光板43を用いているが、映像光L4を遮断する遮光手段としては、これに限定されず、映像光L4が迷光となるのを防止するものであればよい。例えば、遮光手段としては、遮光板43を用いずに、フレーム2の周縁部分に塗料等を塗布することで映像光L4を遮光するような構成であってもよい。
【0196】
以上のような構成の拡大光学系4によって光束幅が拡大された映像光L3は、
図3に示すように、補正レンズ42を介して反射部6に入射する。
【0197】
[反射部]
反射部6は、フロント部21のシェード部212に設けられており、使用時に観察者の左眼EYの前方に位置するように配置されている。この反射部6は、観察者の眼EYを覆うのに十分な大きさを有しており、光学素子5からの映像光L3を観察者の眼EYに向けて入射させる機能を有する。
【0198】
反射部6は、光偏向部65を含む、非球面ミラー61を有する。
非球面ミラー61は、可視域で高い透光性(光透過性)を示す樹脂材料等で形成された基材上に半透過反射膜が製膜された透光性部材である。すなわち、非球面ミラー61は、ハーフミラーであり、外界光を透過させる機能(可視光に対する透光性)をも有する。したがって、非球面ミラー61を備える反射部6は、光学素子5から射出された映像光L3を反射させるとともに、使用時において反射部6の外側から観察者の眼EYに向かう外界光を透過させる機能を有する。これにより、観察者は、外界像を視認しながら、映像光L5により形成された虚像(画像)を視認することができる。すなわち、シースルー型のヘッドマウントディスプレイを実現することができる。
【0199】
このような非球面ミラー61は、フレーム2のフロント部21の湾曲に沿って湾曲した形状をなしており、使用時において凹面611が観察者側に位置する。これにより、非球面ミラー61で反射した映像光L5を、観察者の眼EYに向けて効率良く集光させることできる。
【0200】
また、凹面611上には光偏向部65が設けられている。光偏向部65は、光学素子5の射出面57から射出した映像光L3を観察者の眼EYの方向に偏向させる機能を有している。
【0201】
このような光偏向部65は、本実施形態では、回折格子の一つであるホログラム素子651で構成されている。このホログラム素子651は、光学素子5からホログラム素子651に照射される映像光L3のうち、特定波長帯域にある光については回折させ、それ以外の波長帯域にある光については透過する性質を有する半透過膜である。
【0202】
このようなホログラム素子651を用いることで、特定の波長帯域にある映像光について、回折を利用して観察者の眼に導かれる映像光の角度や光束状態を調整することで虚像を形成することができる。具体的には、非球面ミラー61にて反射した映像光L3が外部に射出され、ホログラム素子651によって映像光L5として観察者の左眼EYに入射する。なお、右眼EY側に位置する反射部6についても同様である。そして、観察者の左右の眼EYにそれぞれ入射した映像光L5は、観察者の網膜において結像する。これにより、観察者は、視野領域に、光学素子5から射出された映像光L3により形成された虚像(画像)を観察することができる。
【0203】
以上説明したような虚像表示装置1によれば、画像生成部3により生成された映像光L1を、拡大光学系4にて拡大し、反射部6にて観察者の眼EYに導くことで、観察者は、画像生成部3により生成された映像光L1を、観察者の視野領域に形成された虚像として認識することができる。
【0204】
<第2実施形態>
次に本発明の虚像表示装置の第2実施形態について説明する。
【0205】
図11は、第2実施形態の虚像表示装置が備える光学素子の概略構成を示す図であり、(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が右側面図、(d)が左側面図である。
図12は、
図11示す光学素子に入射された映像光の経路を説明するための図である。
【0206】
以下、この図を参照して本発明の虚像表示装置の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0207】
第2実施形態では、拡大光学部の構成が異なること以外は前記実施形態と同様である。
【0208】
図11に示すように、光学素子5Xは、第1光学素子(光学素子)5Aと、第2光学素子(光学素子)5Bと、を有しており、この2つの光学素子5A、5Bが一体化されたものである。具体的には、光学素子5A、5Bは、それぞれ、第1実施形態で用いた光学素子5と同様の構成であり、光学素子5Bが、光学素子5AをZ軸回りに90°回転させた状態で配置されている。
【0209】
以下、この光学素子5Aについて詳述する。
光学素子5Xは、光学素子5Aの射出面57Aと、光学素子5Bの入射面56Bとが接合されることで、これら(光学素子5A、5B)が一体となっている。そして、光学素子5Aの入射面56Aが光学素子5Xの入射面に対応しており、光学素子5Bの射出面57Bが光学素子5Xの射出面に対応している。
【0210】
また、光学素子5Xは、第1実施形態と同様に、光学素子5の厚さ方向(X軸方向)に対向する側面58Xa、58Xbと、光学素子5の幅方向(Y軸方向)に対向する側面59Xa、59Xbとを有する。側面58Xa、58Xb、59Xa、59Xbは、全て全反射面であり、光学素子5Xの内部に入射した映像光L2を全反射させる。
【0211】
また、光学素子5Aは、導光部51A、52A、53Aが、ハーフミラー層54A、55Aを介して、各厚さ方向(第1の方向)に沿って配列されている第1の1次元アレイである。また、光学素子5Bは、導光部51B、52B、53Bが、ハーフミラー層54B、55Bを介して、各厚さ方向(第2の方向)に沿って配列されている第2の1次元アレイである。このように、光学素子5Xは、1次元アレイを2つ有している。
【0212】
また、光学素子5Aの導光部51A、52A、53Aの並び方向、すなわち積層方向(X軸方向)と、光学素子5Bの導光部51B、52B、53Bの並び方向、すなわち積層方向(Y軸方向)とは、異なっており、ここでは直交している。
【0213】
以上のような構成の光学素子5Xは、入射面56Aから入射した映像光L2を光学素子5Xの内部で多重反射させ、射出面57Bから光束幅が拡大した状態の映像光L3a、L3b、L4a、L4bとして射出する(
図12参照)。
【0214】
具体的には、第1実施形態と同様に、入射面56Aから入射し、光学素子5A内に導かれた映像光L2は、光学素子5A側の側面58Xa、58Xbにおいて全反射を繰り返すとともに、ハーフミラー層54A、55Aにおいて反射と透過を繰り返しながら、Z軸方向に伝播される。光学素子5A内にてZ軸方向に伝播された映像光L2は、光学素子5Aの射出面57Aから射出され、入射面56Bから光学素子5Bの内部へと導かれる。光学素子5B内に導かれた映像光L2は、光学素子5B側の側面58Xb、58Xb、59a、59bにおいて全反射を繰り返すとともに、ハーフミラー層54B、55Bにおいて反射と透過を繰り返しながら、Z軸方向に伝播される。このようにして、映像光L2は、光学素子5Xの内部で多重反射され、射出面57Aから映像光L3a、L3b、L4a、L4bとして射出される。そして、映像光L3aは、補正レンズ42を介して反射部6に伝送され、映像光L3b、L4a、L4bは、遮光板(図示せず)にて不要光として遮断される。なお、本実施形態では、映像光L3cのみが反射部6に伝送されるが、映像光L3c、L3d、L4c、L4dのうちの2つ以上の映像光が反射部6に伝送されてもよい。
【0215】
ここで、前述したように、光学素子5Aの導光部51A、52A、53Aの並び方向(積層方向)と、光学素子5Bの導光部51B、52B、53Bの並び方向(積層方向)とは、直交している。そして、光学素子5Xは、一方の光学素子(第1の1次元アレイ)5Aの射出面57Aから射出された映像光L2が、他方の光学素子(第2の1次元アレイ)5Bの入射面56Bに入射するように配置されており、射出面57Aと入射面56Bとが接続されている。このため、入射面56から入射した映像光L2を、各導光部の並び方向である2つの方向に沿って、その断面積を拡大することができる。また、複数の導光部(本実施形態では、導光部51A、52A、53A、51B、52B、53B)にて多重反射させることができ、よって、射出面57から射出された映像光L3a、L3b、L4a、L4bの強度分布の均一性より高めることができる。
【0216】
なお、本実施形態では、導光部51A、52A、53Aの並び方向(積層方向)と、光学素子5Bの導光部51B、52B、53Bの並び方向(積層方向)とは、直交していたが、これに限定されず、導光部51A、52A、53Aの並び方向と、導光部51B、52B、53Bの並び方向とが異なっていれば、前述した効果を得ることができる。
【0217】
以上のような構成の第2実施形態の光学素子5Xによっても、第1実施形態と同様に、比較的簡単な構成で、映像光L2の光束幅を拡大することができる。
【0218】
<第3実施形態>
次に本発明の虚像表示装置の第3実施形態について説明する。
【0219】
図13は、第3実施形態の虚像表示装置が備える光学素子の概略構成を示す図であり、(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が右側面図、(d)が左側面図である。
図14は、
図13に示す光学素子に入射された映像光の経路を説明するための図である。
【0220】
以下、この図を参照して本発明の虚像表示装置の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
第3実施形態では、光学素子の構成が異なること以外は前記実施形態と同様である。
【0221】
以下、第3実施形態の虚像表示装置が備える光学素子5Yについて詳述する。
光学素子5Yは、第1実施形態と同様に、その長さ方向(Z軸方向)に対向する入射面56Yおよび射出面57Yと、厚さ方向(X軸方向)に対向する側面58Ya、58Ybと、幅方向(Y軸方向)に対向する側面59Ya、59Ybとを有する。
【0222】
また、側面58Ya、58Yb、59Ya、59Ybは、全て全反射面であり、光学素子5Yの内部に入射した映像光L2を全反射させる。
【0223】
このような光学素子5Yは、第1導光部(導光部)51C、第2導光部(導光部)52C、第3導光部(導光部)51D、第4導光部(導光部)53C、第5導光部(導光部)52D、第6導光部(導光部)53D、第7導光部(導光部)51E、第8導光部(導光部)52E、第9導光部(導光部)53Eと、ハーフミラー層(第1光分岐層)54C、ハーフミラー層(第2光分岐層)55C、ハーフミラー層(第3光分岐層)54D、ハーフミラー層(第4光分岐層)55Dと、を有する。
【0224】
9つの導光部51C、52C、53C、51D、52D、53D、51E、52E、53Eは、互いに直交するX軸方向およびY軸方向に、3×3の行列状に配列されている。具体的には、光学素子5Yは、例えば第1導光部51Cと第2導光部52Cと第4導光部53Cとが第1の方向(Y軸方向)に沿って配列されており、第1導光部51Cと第3導光部51Dと第7導光部51Eとが前記第1の方向(Y軸方向)と異なる第2の方向(X軸方向)に沿って配列されている。また、第2導光部52Cと第5導光部52Dと第8導光部52Eとが前記第1の方向(Y軸方向)と異なる第2の方向(X軸方向)に沿って配列されている。また、第4導光部53Cと第6導光部53Dと第9導光部53Eとが前記第1の方向(Y軸方向)と異なる第2の方向(X軸方向)に沿って配列されている。このように、9つの導光部51C、52C、53C、51D、52D、53D、51E、52E、53Eは、2次元的に配列されている。
【0225】
また、各導光部51C、52C、53C、51D、52D、53D、51E、52E、53E同士の間にはハーフミラー層54C、55C、54D、55Dが設けられている。
【0226】
このような構成の光学素子5Yは、
図14に示すように、入射面56Yから入射した映像光L2を光学素子5Yの内部で多重反射させ、射出面57Yから光束幅が拡大した状態の映像光L3c、L3d、L4c、L4dとして射出する。
【0227】
具体的には、光走査部35で走査された映像光L2は、入射面56Yから入射し、光学素子5Y内に導かれ、側面58Ya、58Yb、59Ya、59Ybにおいて全反射を繰り返すとともに、ハーフミラー層54C、55C、54D、55Dにおいて反射と透過を繰り返しながら、Z軸方向に伝播される。このようにして、映像光L2は、光学素子5Yの内部で多重反射され、射出面57Yから映像光L3c、L3d、L4c、L4dとして射出される。そして、映像光L3cは、補正レンズ42を介して反射部6に伝送され、映像光L3d、L4c、L4dは、遮光板(図示せず)にて不要光として遮断される。なお、本実施形態では、映像光L3cのみが反射部6に伝送されるが、映像光L3c、L3d、L4c、L4dのうちの2つ以上の映像光が反射部6に伝送されてもよい。
【0228】
ここで、前述したように、光学素子5Yは、前述したように、9つの導光部51C、52C、53C、51D、52D、53D、51E、52E、53Eが、2次元的に配列されている。このため、入射面56Yから入射した映像光L2を、各導光部の並び方向である2つの方向に沿って、その断面積を拡大することができる。また、複数の導光部(本実施形態では、導光部51C、52C、53C、51D、52D、53D、51E、52E、53E)にて多重反射させることができ、よって、射出面57Yから射出された映像光L3c、L3d、L4c、L4dの強度分布の均一性より高めることができる。
【0229】
なお、本実施形態では、導光部51C、52C、53C、51D、52D、53D、51E、52E、53Eは、3×3の行列状に配置されていたが、導光部の数、配置、形状等についてはこれに限定されず、導光部が2次元的に配列されているものであれば、前述した効果を得ることができる。
【0230】
以上のような構成の第3実施形態の光学素子5Yによっても、第1実施形態と同様に、比較的簡単な構成で、映像光L2の光束幅を拡大することができる。
【0231】
<第4実施形態>
次に本発明の虚像表示装置の第4実施形態について説明する。
【0232】
図15は、第4実施形態の虚像表示装置が備える光学素子を示す図であり、(a)が平面図、(b)が側面図である。
図16は、
図15に示す光学素子に入射された映像光の経路を説明するための図である。
【0233】
以下、この図を参照して本発明の虚像表示装置の第4実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0234】
第4実施形態では、補正レンズ42および遮光板43と、反射部6とを備えておらず、代わりに拡大導光部60を備えていること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0235】
図15に示すように、拡大導光部60は、第1の導光板(第1拡大導光部)66と、光取り出し部64が形成された第2の導光板(第2拡大導光部)62とを備えている。また、拡大導光部60は光学素子5に接続されている。
【0236】
この拡大導光部60は、光学素子5からの映像光L3を観察者の眼EYに向けて入射させる機能を有するとともに、光学素子5から射出した映像光L3を2次元に拡大する機能を有している。すなわち、拡大導光部60は、光学素子5から射出された映像光L3の光束幅をさらに拡大させる機能を有する。
【0237】
以下、拡大導光部60について詳細に説明する。
図15(a)に示すように、第1の導光板66は、長尺状をなし、第1の導光板66の幅方向(拡大導光部60の厚さ方向:Z軸方向)に対向する一対の側面613、614と、第1の導光板66の厚さ方向(第1の導光板66の幅方向および長手方向に直交する方向)に対向する第1の主面(第1反射面)615および第2の主面612とを有している。第1の主面615と第2の主面612とは平行であり、側面613と側面614とは平行となっている。なお、本明細書中では、「平行」とは、各面のなす角度が±2°以下、さらに好ましくは0.2°以下であることを言う。
【0238】
この第1の導光板66の第2の主面612には、第2の導光板62が固着されている。
第2の導光板62は、X軸方向に長い長尺状をなし、第2の導光板62の厚さ方向(Z軸方向)に対向する一対の第1の主面621および第2の主面622と、第2の導光板62の幅方向(Y軸方向)に対向する一対の側面623、624と、第2の導光板62の長手方向(X軸方向)に対向する一対の端面625、626を有している。また、第1の主面621と第2の主面622とは平行であり、側面623と側面624とは平行となっている。また、端面625は、第2の導光板62の幅方向(入射方向)に対して傾斜して設けられており、その平面視形状は第1の導光板66の第2の主面612の平面視形状と等しい。一方、端面626は、第2の導光板62の長手方向に対して垂直に設けられている。
【0239】
なお、端面625の傾斜角θ1は、20°以上70°以下であるのが好ましく、40°以上50°以下であるのがより好ましく、特に45°であるのが好ましい。これにより、光学素子5から射出した映像光L3を、第2の導光板62の長手方向と垂直の方向に沿って入射させた時に、映像光L3を第2の導光板62の長手方向に沿って導光させることができる。よって、入射角度の調整が容易となる。
【0240】
また、第2の導光板62の第1の主面621には、第2の導光板62を導光される光を第2の導光板62の外側(
図15(a)中紙面手前側)に取り出す光取り出し部64が設けられている。光取り出し部64は、ホログラム素子641で構成されている。このホログラム素子641は、第2の導光板62の長手方向(X軸方向)に幅を有し、第2の導光板62の幅方向(Y軸方向)に高さを有している。ホログラム素子641は、第1実施形態と同様に、特定波長帯域にある光については回折させ、それ以外の波長帯域にある光については透過する性質を有する部分反射透過膜である。ホログラム素子641は、特定の波長帯域にある映像光については、回折を利用して入射角度や光束状態を所望のものとなるように調整することで虚像を形成し、広範囲な波長帯域にある外界光については、その成分の大半を透過する。光取り出し部64としてホログラム素子641を使用することにより、容易に光の進行方向を変更することができ、光利用効率に優れる虚像表示装置1を提供することができる。
【0241】
このような第1の導光板66と第2の導光板62とは、第1の導光板66の第2の主面612と、第2の導光板62の端面625とが固着されており、第1の導光板66の幅方向と第2の導光板62の厚さ方向とが一致している。
【0242】
このような構成の拡大導光部60が備える第2の導光板62の第2の主面612側で、かつ、側面624と端面625との境界部付近(後述する高透過面671の映像光L3の進行方向手前側)に、光学素子5が設けられている。光学素子5は、映像光L3、L4が入射するように、拡大導光部60に対して、光学素子5から射出した映像光L3、L4が、後述する高透過面671を介して第1の導光板66に入射するように配置されている。また、光学素子5は、
図15のZ軸方向に沿って側面58aと側面58bが並ぶように、X軸方向に沿って側面59aと側面59bが並ぶように配置されている。
【0243】
このような拡大導光部60では、第1の導光板66の第1の主面615、側面613、614、第2の導光板62の第1の主面621、第2の主面622および側面623、624は、入射した光を全反射させる全反射面となっている。
【0244】
そして、
図16に示すように、第1の導光板66と第2の導光板62との間には、部分透過反射面(第2反射面)67が形成されている。この部分透過反射面67は、本実施形態では、第1の導光板66の第2の主面612上に形成されている。部分透過反射面67は、第1の導光板66の第2の主面612の両端部を除く部分(
図16(a)中太線で示す面)に形成されている。また、部分透過反射面67は、入射した光の一部を反射し、入射した光の一部を透過させる。なお、部分透過反射面67は、第2の導光板62の端面625上に形成されていてもよい。
【0245】
この部分透過反射面67の形成方法としては特に限定されず、例えば、Cr、Ag等の金属膜、誘電体膜、これらを組み合わせたハイブリット膜等を蒸着する方法等が挙げられる。
【0246】
また、部分透過反射面67では、
図16中下端部の光透過率が5%以上10%以下であり、
図16中上側の端部の光透過率が12%以上17%以下である。また、部分透過反射面67では、両端部の間の部分において、後述の高透過面(光入射部)671と遠ざかるにつれて光透過率が徐々に大きくなるよう構成されている。このような構成とする方法としては、例えば、前記金属膜、前記誘電体膜または前記ハイブリット膜の厚さを調整する方法等が挙げられる。
【0247】
また、部分透過反射面67の両端側(第1の導光板66の第2の主面612の部分透過反射面67が形成されていない領域)には、部分透過反射面67よりも光透過率が高い高透過面671、672が形成されている。高透過面671は、部分透過反射面67の側面624側に位置し、高透過面672は、部分透過反射面67の側面623側に位置している。この高透過面671、672の光透過率は、95%以上であるのが好ましい。
【0248】
ここで、光学素子5から射出した映像光L3、L4が拡大導光部60によって2次元的に拡大される原理について説明する。なお、以下では映像光L3、L4のうち代表して映像光L3が拡大導光部60によって2次元的に拡大される原理について詳述する。また、以下では、全反射面で光が反射される際の減衰量は、全反射面に入射する光量に対して十分に小さいため、前記減衰量は無視する。また、映像光L3が第1の導光板66を導光される際、映像光L3は、第1の主面615、第2の主面612、側面613、614の間で全反射を繰り返しつつ第1の導光板66を導光されるが、説明の便宜上、映像光L3は、第1の主面615および第2の主面612の間で反射を繰り返しつつ第1の導光板66を導光されるものとする。同様に、光が第2の導光板62を導光される際、映像光L3は、第1の主面621、第2の主面622、側面623、624の間で全反射を繰り返しつつ第1の導光板66を導光されるが、説明の便宜上、映像光L3は、第1の主面621および第2の主面622の間で反射を繰り返しつつ第2の導光板62を導光されるものとする。
【0249】
まず、光学素子5から射出した映像光L3は、第2の導光板62の側面624、高透過面671を介して第1の導光板66に入射する。高透過面671は、前述したように、光透過率が95%よりも大きいため、光のほとんどが第1の導光板66内に入射することができる。
【0250】
図16(a)に示すように、高透過面671を透過した映像光L3は、第1の主面615の部分615Aに反射されて、部分透過反射面67に向う。部分透過反射面67の部分615Aに到達した映像光L3は、その一部が反射し、光L31として再び第1の主面615に向う。そして、部分透過反射面67の部分67Aに到達した映像光L3の一部(残部)は、光L32として第2の導光板62に入射される。
【0251】
図16(b)に示すように、第1の主面615に向った光L31は、第1の主面615の部分615Aよりも光の進行方向下流側の部分615Bで反射され、再び部分透過反射面67に向う。そして、部分透過反射面67の部分67Aよりも光の進行方向下流側の部分67Bに到達した光L31は、前記と同様に、その一部が反射し、光L33として再び第1の主面615に向う。部分透過反射面67の部分67Bに到達した光L31の残部は、光L34として第2の導光板62に入射する。
【0252】
このように全反射と部分反射を繰り返しつつ、映像光L3は第1の導光板66内を導光されるとともに、第2の導光板62内にも入射する。また、第2の導光板62に入射した光(光L32〜光Lx)は、第2の導光板62の第1の主面621および第2の主面622との間で全反射を繰り返して
図16中左側から
図16中右側に導光される。そして、光L32〜光Lxは、それらの一部がホログラム素子641によって第2の導光板62の外側に取り出され、観察者は虚像として視認することができる。この際、
図15(b)に示すように、光L32〜光Lxは、ホログラム素子641と第2の主面622との間で多重反射される。光L32〜光Lxは、それらの一部がホログラム素子641を透過して、第2の導光板62の厚さ方向に沿って、第2の導光板62の外側に射出する。
【0253】
このようにして光L32〜光Lxは、ホログラム素子641の幅方向(第2の導光板62の長手方向:X軸方向)に拡大される。
【0254】
ここで、第2の導光板62に入射する映像光は、部分透過反射面67の光透過率が部分透過反射面67の長手方向の全長にわたって一定であった場合、高透過面671と遠ざかるにつれて減衰する。すなわち、部分透過反射面67の光透過率が部分透過反射面67の長手方向の全長にわたって一定であった場合、第2の導光板62に入射する光では、光L32〜光Lxの順に光量が減衰して少なくなる。しかしながら、前述したように、部分透過反射面67では、光透過率が高透過面671と遠ざかるにつれて光透過率が徐々に大きくなるよう構成されている。このため、例えば映像光L34は、部分透過反射面67のうちの光L32が透過する部分よりも光透過率が高い部分を透過する。その結果、光L32の光量と、光L34の光量との差をできるだけ小さくすることができる。よって、第2の導光板62に入射した光(光L32〜光Lx)の光量をできるだけ均一にすることができる。よって、ホログラム素子641によって表示された虚像のムラを低減させることができる。
【0255】
さらに、映像光Lxは、映像光L32〜光Lxのうち、減衰量が多い光である。しかしながら、
図16(b)に示すように映像、光Lxは、高透過面672を通過するため、第2の導光板62に入射した映像光(映像光L32〜光Lx)の光量を、より効果的に略均一にすることができる。
【0256】
なお、第1の導光板66および第2の導光板62を構成する材料としては、それぞれ、光透過性を有していれば特に限定されず、例えば、アクリル、エポキシ樹脂等の各種樹脂や、各種ガラス等を用いることができる。
【0257】
このように、拡大導光部60は、映像光L3を第1の導光板66で
図16中上下方向に拡大し、第2の導光板62(ホログラム素子641)で
図16中左右方向に拡大する。すなわち、拡大導光部60は、映像光L3を2次元に拡大することができる。また、拡大導光部60では、第1の導光板66の第1の主面615と部分透過反射面67とが平行になるように対向して配置させるという非常に簡単な構成で映像光L3を2次元に拡大させることができる。
【0258】
さらに、拡大導光部60を製造する際、2つの面(第1の導光板66の第1の主面615および第2の主面612)が平行となるよう調節すればよいので、非常に容易に製造することができる。そして、本実施形態では、第2の導光板62の端面625に厚さが一定の第1の導光板66を固着するという簡単な方法で拡大導光部60を製造することができる。
【0259】
<第5実施形態>
次に本発明の虚像表示装置の第5実施形態について説明する。
【0260】
図17は、第5実施形態の虚像表示装置が備える画像生成部の概略構成を示す図である。
【0261】
以下、この図を参照して本発明の虚像表示装置の第5実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
第5実施形態では、画像生成部の構成が異なること以外は前記実施形態と同様である。
【0262】
図15に示すように、画像生成部900は、光源装置920と、均一照明光学系930と、光変調装置940と、投射光学系960とを有している。
【0263】
このような画像生成部900は、光源装置920から射出された光を与えられた映像信号に応じて光変調装置940によって変調することにより映像光を形成する。
【0264】
光源装置920は、光源である超高圧水銀ランプ921と、リフレクター922とを備えている。このような構成では、超高圧水銀ランプ921から放射された光は、リフレクター922で反射されて前方側に収束される。なお、光源としては、超高圧水銀ランプに限らず、例えば、メタルハライドランプ等を採用してもよい。
【0265】
均一照明光学系930は、ロッドインテグレーター931と、カラーホイール932と、リレーレンズ群933と、反射ミラー934とを有している。このような均一照明光学系930では、光源装置920から射出された光束がカラーホイール932を通過した後、ロッドインテグレーター931に角度を付けて入射する。
【0266】
カラーホイール932は、図示しないモーター等の駆動源によって回転可能に設けられている。また、カラーホイール932には、ロッドインテグレーター931の入射側の端に形成されたポートと対向するフィルター面932aが形成されており、このフィルター面932aには、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色のフィルターが領域を隔てて周方向に並んで形成されている。なお、カラーホイール932は、ロッドインテグレーター931の射出側に設けられていてもよい。
【0267】
カラーホイール932に入射した光束は、フィルター面932aによって、赤色(R)光、緑色(G)光、青色(B)光の3色に時系列的に色分離される。赤色、緑色、青色の3色への分離は、表示する虚像(画像)のフレーム周波数よりも高速な周波数で行う。このような周波数で色分離を行うことにより、フルカラー画像を表示することが可能となる。
【0268】
カラーホイール932を通過した光(赤色光、緑色光、青色光)は、ロッドインテグレーター931の入射ポートからその内部に導入される。ロッドインテグレーター931の内部に導入された光は、ロッドインテグレーター931内にて複数回の反射をおこし、これによって、ロッドインテグレーター931の射出面に均一な照度が確保される。そのため、ロッドインテグレーター931の射出ポートから射出された光は、均一な照明分布を有するものとなる。
【0269】
ロッドインテグレーター931から射出された光は、リレーレンズ群933および反射ミラー934を介して、均一な照明光として光変調装置940へ入射する。
【0270】
光変調装置940は、基板941と、基板941上に配列された複数の光変調素子942(例えば、DMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)。ただし「DMD」は、米国テキサスインスツルメント株式会社の登録商標)とを有している。複数の光変調素子942は、基板941上にマトリクス状に配置されている。光変調素子942の数としては特に限定されない。1つの光変調素子942が1画素を構成している場合、光変調素子942は、画素数分、例えば、横×縦=1280×1024、640×480のように配置されている。
【0271】
各光変調素子942は、入射した光束を反射するための可動ミラーを有しており、この可動ミラーは、反射した光が投射光学系960とへ導かれるON状態と、ON状態に対して傾きが異なり、反射した光がアブソーバー(図示せず)へ導かれるOFF状態とに姿勢が変化する。
【0272】
また、画像生成部900には、図示しない制御部が設けられており、光変調装置940は、例えば、制御部(図示せず)に与えられた映像信号(画像情報)に基づいて各光変調素子942のON状態/OFF状態を独立して切り替える。これにより、所定の映像光(映像光)を形成する。そして、形成された映像光は、投射光学系960を介して、光学素子5へと入射する。
【0273】
このような画像生成部900を用いることにより、鮮明な映像光を光学素子5に入射させることができる。
【0274】
以上のような第5実施形態によっても、前述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0275】
<第6実施形態>
次に本発明の虚像表示装置の第5実施形態について説明する。
【0276】
図18は、第6実施形態の虚像表示装置が備える画像生成部の概略構成を示す図である。
【0277】
以下、この図を参照して本発明の虚像表示装置の6実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0278】
第6実施形態では、画像生成部の構成が異なること以外は前記実施形態と同様である。
【0279】
図6に示すように、画像生成部800は、照明光学系810と、色分離光学系820と、平行化レンズ830R、830G、830Bと、空間光変調装置840R、840G、840Bと、クロスダイクロイックプリズム850と、投射光学系860とを有している。
【0280】
照明光学系810は、光源811と、リフレクター812と、第1のレンズアレイ813と、第2のレンズアレイ814と、偏光変換素子815と、重畳レンズ816とを有している。
【0281】
光源811は、超高圧水銀ランプであり、リフレクター812は、放物面鏡で構成されている。光源811から射出された放射状の光束は、リフレクター812で反射されて略平行光束となり、第1のレンズアレイ813へと射出される。なお、光源811としては、超高圧水銀ランプに限らず、例えば、メタルハライドランプ等を採用してもよい。また、リフレクター812としては、放物面鏡に限らず、楕円面鏡からなるリフレクター812の射出面に平行化凹レンズを配置した構成を採用してもよい。
【0282】
第1のレンズアレイ813および第2のレンズアレイ814は、小レンズをマトリクス状に配列して形成されている。光源811から射出された光束は、第1のレンズアレイ813によって複数の微小な部分光束に分割され、各部分光束は、第2のレンズアレイ814および重畳レンズ816によって照明対象である3つの空間光変調装置840R、840G、840Bの表面で重畳される。
【0283】
偏光変換素子815は、ランダム偏光の光束を一方向に振動する直線偏光(s偏光若しくはp偏光)に揃える機能を有しており、本実施形態では、色分離光学系820での光束の損失が少ないs偏光に揃えている。
【0284】
色分離光学系820は、照明光学系810から射出された光束を、赤色(R)光、緑色(G)光、青色(B)光の3色の色光に分離する機能を有しており、B光反射ダイクロイックミラー821、RG光反射ダイクロイックミラー822、G光反射ダイクロイックミラー823、および反射ミラー824、825を備えている。
【0285】
照明光学系810から射出された光束のうち、青色光の成分は、B光反射ダイクロイックミラー821によって反射され、さらに反射ミラー824、861によって反射されて平行化レンズ830Bに至る。一方、照明光学系810から射出された光束のうち、G光、R光の成分は、RG光反射ダイクロイックミラー822によって反射され、さらに反射ミラー825によって反射されてG光反射ダイクロイックミラー823に至る。その中のG光の成分は、G光反射ダイクロイックミラー823および反射ミラー862に反射されて平行化レンズ830Gに至り、赤色光の成分は、G光反射ダイクロイックミラー823を透過して、反射ミラー863に反射されて平行化レンズ830Rに至る。
【0286】
平行化レンズ830R、830G、830Bは、照明光学系810からの複数の部分光束を、空間光変調装置840R、840G、840Bをそれぞれ照明するように各部分光束が、それぞれ略平行な光束となるように設定されている。
【0287】
平行化レンズ830Rを透過した赤色光は、空間光変調装置(第1空間光変調装置)840Rに至り、平行化レンズ830Gを透過した緑色光は、空間光変調装置(第2空間光変調装置)840Gに至り、平行化レンズ830Bを透過し青色光は、空間光変調装置(第3空間光変調装置)840Bに至る。
【0288】
空間光変調装置840Rは、赤色光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置であって、透過型液晶表示装置(LCD)である。空間光変調装置840Rに設けられた図示しない液晶パネルは、2つの透明基板の間に、光を画像信号に応じて変調するための液晶層を封入している。空間光変調装置840Rで変調された赤色光は、色合成光学系であるクロスダイクロイックプリズム850へ入射する。なお、空間光変調装置840G、840Bの構成および機能は、空間光変調装置840Rと同様である。
【0289】
クロスダイクロイックプリズム850は、三角柱状の4つのプリズムを貼り合わせることにより、略正方形断面の角柱状に形成されたものであり、X字状の貼り合わせ面に沿って誘電体多層膜851、852が設けられている。誘電体多層膜851は、緑色光を透過して赤色光を反射し、誘電体多層膜852は、緑色光を透過して青色光を反射する。そして、クロスダイクロイックプリズム850は、空間光変調装置840R、840G、840Bから射出された各色光の変調光をそれぞれ入射面850R、850G、850Bから入射して合成して映像光を形成し、その映像光を、投射光学系860へ向けて射出する。
投射光学系860から射出された映像光は、光学素子5へと入射する。
【0290】
このような画像生成部800を用いることにより、鮮明な映像光を光学素子5に入射させることができる。
【0291】
以上のような第6実施形態によっても、前述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0292】
なお、本実施形態では、空間光変調装置(ライトバルブ)として3つの透過型液晶表示装置(LCD)を用いた画像生成部を備える虚像表示装置について説明したが、空間光変調装置とを備える画像生成部の構成としては、これに限定されない。例えば、空間光変調装置として3つの反射型液晶表示装置(LCD)を用いた構成であってもよい。また、透過型/反射型を問わず、例えば、2つの液晶表示装置を用いた構成であってもよい。
【0293】
<第7実施形態>
次に本発明の虚像表示装置の第7実施形態について説明する。
【0294】
図19は、第7実施形態の虚像表示装置が備える画像生成部の概略構成を示す図である。
【0295】
以下、この図を参照して本発明の虚像表示装置の第7実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
第7実施形態では、画像生成部の構成が異なること以外は前記実施形態と同様である。
【0296】
図19に示すように、画像生成部7は、光源ユニット71と、PBSプリズム73と、反射型液晶パネル74と、投射光学系75とを有している。
【0297】
光源ユニット71は、赤色、緑色、青色のレーザー光源71R、71G、71Bと、レーザー光源71R、71G、71Bに対応して設けられたコリメータレンズ72R、72G、72Bおよびダイクロイックミラー73R、73G、73Bとを備えている。
【0298】
レーザー光源71R、71G、71Bは、それぞれ、図示しない光源と駆動回路とを有している。そして、レーザー光源71Rは、赤色のレーザー光を射出し、レーザー光源71Gは、緑色のレーザー光を射出し、レーザー光源71Bは、青色のレーザー光を射出する。これらレーザー光源71R、71G、71Bから射出される各色のレーザー光は、直線偏光であって、互いに振動方向が同一となっている(例えば、S波)。
【0299】
各レーザー光源71R、71G、71Bから射出された各色のレーザー光は、コリメータレンズ72R、72G、72Bによって平行化され、ダイクロイックミラー73R、73G、73Bに入射する。ダイクロイックミラー73Rは、赤色のレーザー光を反射する特性を有している。ダイクロイックミラー73Bは、青色のレーザー光を反射するとともに、赤色のレーザー光を透過する特性を有している。ダイクロイックミラー73Gは、緑色のレーザー光を反射するとともに、赤色、青色のレーザー光を透過する特性を有している。
【0300】
レーザー光源71R、71G、71Bは、順次点滅するように駆動が制御されており、これにより、赤色のレーザー光、緑色のレーザー光、青色のレーザー光が順次射出される。射出された各色のレーザー光は、それぞれ、コリメータレンズ、ダイクロイックミラーを通過し、PBS(偏光ビームスプリッター)プリズム73の反射面で反射されて反射型液晶パネル74に投射される。
【0301】
反射型液晶パネル74は、空間光変調装置であって、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)であり、反射層を有する。
【0302】
反射層で反射されてPBSプリズム73を通過した各色のレーザー光(映像光)は、投射光学系75を介して、光学素子5へと入射する。
【0303】
なお、反射型液晶パネル74によって反射された各色のレーザー光は、振動方向が90°回転し、p偏光となる。
【0304】
このような画像生成部7を用いることにより、鮮明な映像光を光学素子5に入射させることができる。
【0305】
以上のような第7実施形態によっても、前述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0306】
なお、本実施形態では、1枚の反射型液晶パネル74を用いた単板方式であるが、画像生成部の構成は、これに限定されない。例えば、赤色光、緑色光、青色光ごとに反射型液晶パネルを設けた3板方式であってもよい。また、例えば、空間光変調装置(ライトバルブ)として反射型液晶パネルに換えて透過型液晶パネルを用いた構成であってもよい。
【0307】
<第8実施形態>
次に本発明の虚像表示装置の第8実施形態について説明する。
【0308】
図20は、第8実施形態の虚像表示装置が備える画像生成部の概略構成を示す図である。
【0309】
以下、この図を参照して本発明の虚像表示装置の第8実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
第8実施形態では、画像生成部の構成が異なること以外は前記実施形態と同様である。
【0310】
図20に示すように、画像生成部700は、有機EL装置70と、コリメータレンズ(図示せず)とを有している。
【0311】
有機EL装置70は、基材710と、反射層722と、保護層726と、陽極724(724R、724G、724B)と、有機機能層730(730R、730G、730B)と、陰極732と、隔壁部728と、封止層744と、カラーフィルター基板740とを備えている。また、有機EL装置70は、カラーフィルター基板740側に射出されるトップエミッション型である。
【0312】
ここで、陽極724Rと有機機能層730Rと陰極732の一部とで有機EL素子78Rが構成されている。同様に、陽極724Gと有機機能層730Gと陰極732の一部とで有機EL素子78Gが構成されており、陽極724Bと有機機能層730Bと陰極732の一部とで有機EL素子78Bが構成されている。
【0313】
基材710には、各有機EL素子78R、78G、78Bに、半導体膜とゲート絶縁層とゲート電極とドレイン電極とソース電極とを備えたTFT(図示せず)が設けられている。また、基材710は、有機EL装置70がトップエミッション型であることから、透光性材料および不透光性材料のいずれで構成されたものであってもよい。
【0314】
保護層726は、基材710と反射層722とを覆うように設けられている。保護層726の上面は、平坦化されており、保護層726は、例えば、SiO
2等の無機絶縁膜や、アクリル樹脂等の有機樹脂によって形成されている。
【0315】
陽極724R、724G、724Bは、保護層726上に設けられている。陽極724は、透光性を有する導電材料からなり、例えば、ITO等で形成されている。
【0316】
隔壁部728は、保護層726上に設けられている。隔壁部728は、例えば、アクリル樹脂等の有機樹脂によって形成されている。
【0317】
有機機能層730R、730G、730Bは、それぞれ、各陽極724R、724G、724B上に形成されている。有機機能層730Rは、赤色光で発光し、有機機能層730Gは、緑色光で発光し、有機機能層730Bは、青色光で発光する。
【0318】
有機機能層730R、730G、730Bは、例えば、正孔輸送層と発光層と電子輸送層とで構成される。有機機能層730R、730G、730Bでは、それぞれ正孔輸送層から注入される正孔と電子輸送層から注入される電子とが発光層で再結合することにより、赤色光、緑色光、青色光が得られる。このように3つの光で発光する有機機能層730R、730G、730Bを有することにより、有機EL装置70は、フルカラー発光が可能となっている。
【0319】
陰極732は、隔壁部728と各有機機能層730R、730G、730Bとを覆うように設けられている。陰極732は、全陽極に対応する共通電極となっている。陰極732は、その表面に達した光の一部を透過するとともに他の一部を反射する性質を持った半透過反射層として機能する。陰極732は、例えばマグネシウム(Mg)や銀(Ag)単体、またはこれらを主成分とする合金等で形成されている。
【0320】
また、陰極732上には、パッシベーション層(図示せず)が設けられている。パッシベーション層は、例えばSiO
2等のガス透過率が低い無機材料で形成されており、酸素や水分の浸入による有機EL装置70の劣化を防止するための保護膜である。
【0321】
このような構成の有機EL素子78R、78G、78Bの基材710とは反対側には、カラーフィルター基板740が配置される。
【0322】
カラーフィルター基板740は、ガラス等の透光性材料で構成されている。カラーフィルター基板740の基材710側の面には、カラーフィルター742R、742G、742Bと遮光層743とが形成されている。
【0323】
カラーフィルター742R、742G、742Bは、平面視で有機EL素子78R、78G、78Bに重なるように設けられている。ここで、前述した3つの有機EL素子78R、78G、78Bと、これらに重なるように設けられたカラーフィルター742R、742G、742Bとで、有機EL装置70の1画素が構成されている。すなわち、
図20では、有機EL装置70の1画素を図示している。なお、有機EL装置70の画素数は特に限定されない。
【0324】
また、カラーフィルター742R、742G、742Bは、有機EL素子78R、78G、78Bから射出される光のうち、赤色光、緑色光、青色光の各波長帯域の光を選択的に透過させるためのものである。カラーフィルター742Rは、赤色光の波長帯域に対応しており、カラーフィルター742Gは、緑色光の波長帯域に対応しており、カラーフィルター742Bは、青色光の波長帯域に対応している。
【0325】
また、遮光層743は、カラーフィルター742R、742G、742Bを区画するように設けられている。
【0326】
このようなカラーフィルター基板740は、封止層744を介して基材710と貼り合わされている。封止層744は、例えばエポキシ樹脂等の透光性を有する硬化性樹脂で形成されている。
【0327】
このような構成の有機EL装置70のカラーフィルター742R、742G、742Bを通過した赤色光、緑色光、青色光は、コリメータレンズ(図示せず)に入射する。コリメータレンズ(図示せず)により、有機EL装置70から射出された赤色光、緑色光、青色光は、略平行状態の光束に調整(変調)され、変調された映像光として光学素子5に伝送される。
【0328】
このような画像生成部700を用いることにより、鮮明な映像光を光学素子5に入射させることができるとともに、画像生成部700の小型化を図ることができる。
【0329】
以上のような第8実施形態によっても、前述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0330】
以上、本発明の虚像表示装置およびヘッドマウントディスプレイについて、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明の虚像表示装置では、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができ、また、他の任意の構成を付加することもできる。
【0331】
また、本発明は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0332】
また、本発明の虚像表示装置は、観察者が視認する画像として虚像を形成するものであれば、眼鏡型のヘッドマウントディスプレイに適用する場合に限定されず、例えば、ヘルメット型またはヘッドセット型のヘッドマウントディスプレイや、観察者の首や肩等の身体で支持される形態の画像表示装置等にも適用可能である。また、前述した実施形態では、画像表示装置全体が観察者の頭部に装着される場合を例に説明したが、画像表示装置は、観察者の頭部に装着される部分と、観察者の頭部以外の部分に装着または携帯される部分とを有していてもよい。
【0333】
また、前述した実施形態では、両眼タイプの透過型ヘッドマウントディスプレイの構成について代表的に説明したが、例えば、観察者がヘッドマウントディスプレイを装着した状態において外景が遮断される非透過型ヘッドマウントディスプレイの構成であってもよい。
【0334】
また、本発明のヘッドマウントディスプレイは、スピーカーやヘッドフォン等の音声を出力させる装置等を有していてもよい。