(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに対向する一対の基板、前記一対の基板間のギャップ寸法を変化させる複数の静電アクチュエーター、前記ギャップ寸法を検出するギャップ検出部を備え、前記複数の静電アクチュエーターの各々が独立して駆動可能であるアクチュエーター装置の制御方法であって、
前記静電アクチュエーターを順次切り替えて駆動させ、
前記静電アクチュエーターの駆動を切り替える毎に前記ギャップ検出部により検出される前記ギャップ寸法を検出し、
駆動させた前記静電アクチュエーターへの印加電圧とその際の前記ギャップ寸法とに基づいて、各静電アクチュエーターを駆動させるための駆動パラメーターを導出する
ことを特徴とする制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。
[分光測定装置の構成]
図1は、本発明に係る第一実施形態の分光測定装置の概略構成を示すブロック図である。
分光測定装置1は、本発明の電子機器であり、測定対象Xで反射された測定対象光における所定波長の光強度を分析し、分光スペクトルを測定する装置である。なお、本実施形態では、測定対象Xで反射した測定対象光を測定する例を示すが、測定対象Xとして、例えば液晶ディスプレイ等の発光体を用いる場合、当該発光体から発光された光を測定対象光としてもよい。
この分光測定装置1は、
図1に示すように、本発明のアクチュエーター装置である光学モジュール10と、ディテクター11(検出部)と、I−V変換器12と、アンプ13と、A/D変換器14と、制御部20と、を備えている。また、光学モジュール10は、波長可変干渉フィルター5と、電圧制御部15とを備えて構成されている。
【0026】
ディテクター11は、光学モジュール10の波長可変干渉フィルター5を透過した光を受光し、受光した光の光強度に応じた検出信号(電流)を出力する。
I−V変換器12は、ディテクター11から入力された検出信号を電圧値に変換し、アンプ13に出力する。
アンプ13は、I−V変換器12から入力された検出信号に応じた電圧(検出電圧)を増幅する。
A/D変換器14は、アンプ13から入力された検出電圧(アナログ信号)をデジタル信号に変換し、制御部20に出力する。
電圧制御部15は、制御部20の制御に基づいて、波長可変干渉フィルター5を駆動させ、波長可変干渉フィルター5から所定の目的波長の光を透過させる。
【0027】
[光学モジュールの構成]
次に、光学モジュール10の構成について、以下に説明する。
図2は、光学モジュール10の概略構成を示すブロック図である。
光学モジュール10は、上記のように、波長可変干渉フィルター5と、電圧制御部15とを備えて構成される。
【0028】
[波長可変干渉フィルターの構成]
光学モジュール10の波長可変干渉フィルター5について、以下説明する。
図3は、波長可変干渉フィルター5の概略構成を示す断面図である。
図4は、固定基板51を可動基板52側から見た平面図である。
図5は、可動基板52を固定基板51側から見た平面図である。
波長可変干渉フィルター5は、
図2及び
図3に示すように、本発明の一対の基板の一方である固定基板51、及び本発明の一対の基板の他方である可動基板52を備えている。これらの固定基板51及び可動基板52は、それぞれ各種ガラスや水晶等により形成され、固定基板51の第一接合部513及び可動基板の第二接合部523が、例えばシロキサンを主成分とするプラズマ重合膜などにより構成された接合膜53により接合されることで、一体的に構成されている。
【0029】
固定基板51には、本発明の第一反射膜を構成する固定反射膜54が設けられ、可動基板52には、本発明の第二反射膜を構成する可動反射膜55が設けられている。これらの固定反射膜54および可動反射膜55は、反射膜間ギャップG1(
図3参照)を介して対向配置されている。そして、波長可変干渉フィルター5には、この反射膜間ギャップG1のギャップ量を調整(変更)するのに用いられる静電アクチュエーター部56が設けられている。この静電アクチュエーター部56は、それぞれ独立して駆動可能な4つのバイアス用静電アクチュエーター(以降、バイアスアクチュエーターと略す場合がある)57(57A,57B,57C,57D)と制御用静電アクチュエーター(以降、制御アクチュエーターと略す場合がある)58とを備えている。
また、固定基板51の一端側(
図2、
図4における辺C3−C4)は、可動基板52の基板端縁(
図2、
図5における辺C3´−C4´)よりも外側に突出している。可動基板52の辺C1´−C2´側の基板端縁は、固定基板51の辺C1−C3側の基板端縁より外側に突出しており、この突出部の固定基板51側の面は、電装面524を構成している。
なお、以降の説明に当たり、固定基板51または可動基板52の基板厚み方向から見た平面視、つまり、固定基板51、接合膜53、及び可動基板52の積層方向から波長可変干渉フィルター5を見た平面視を、フィルター平面視と称する。また、本実施形態では、フィルター平面視において、固定反射膜54の中心点及び可動反射膜55の中心点は、一致し、平面視におけるこれらの反射膜の中心点をフィルター中心点Oと称する。反射膜54,55の中心点Oを通る直線は、本発明の駆動中心軸となる。
【0030】
(固定基板の構成)
固定基板51は、
図4に示すように、例えばエッチング等により形成された電極配置溝511および反射膜設置部512を備える。
電極配置溝511は、フィルター平面視で、固定基板51のフィルター中心点Oを中心とした環状に形成されている。反射膜設置部512は、フィルター平面視において、電極配置溝511の中心部から可動基板52側に突出して形成されている。この電極配置溝511の溝底面には、静電アクチュエーター部56を構成する共通電極561が配置される。また、反射膜設置部512の突出先端面には、固定反射膜54が配置される。
また、固定基板51には、電極配置溝511から、固定基板51の辺C1−C2に向かって延出する電極引出溝511Aが設けられている。
【0031】
電極配置溝511の溝底面には、共通電極561が設けられている。この共通電極561は、電極配置溝511の溝底面のうち、後述する可動部521に対向する領域に設けられている。具体的には、共通電極561は、
図3に示すように、後述するバイアス電極571、及び制御電極581に対向する領域を覆って設けられている。また、共通電極561上に、共通電極561と、可動基板52側の各電極との間の絶縁性を確保するための絶縁膜が積層される構成としてもよい。
【0032】
そして、固定基板51には、共通電極561の外周縁に接続された共通引出電極562が設けられている。この共通引出電極562は、電極引出溝511Aに沿って設けられている。電極引出溝511Aには、可動基板52側に向かって突設されたバンプ部564Aが設けられ、共通引出電極562は、バンプ部564A上まで延出する。そして、バンプ部564A上で可動基板52側に設けられた共通接続電極564に当接し、電気的に接続される。この共通接続電極564は、電極引出溝511Aに対向する領域から電装面524まで延出し、電装面524において共通電極パッド564Pを構成する。
【0033】
反射膜設置部512は、上述したように、電極配置溝511と同軸上で、電極配置溝511よりも小さい径寸法となる略円柱状に形成され、当該反射膜設置部512の可動基板52に対向する面に固定反射膜54が設けられている。
この固定反射膜54としては、例えばAg等の金属膜や、Ag合金等、導電性の合金膜を用いることができる。また、例えば高屈折層をTiO
2、低屈折層をSiO
2とした誘電体多層膜を用いてもよく、この場合、誘電体多層膜の最下層又は表層に導電性の金属合金膜が形成されていることが好ましい。
そして、固定基板51には、
図4に示すように、固定反射膜54の外周縁から延出する固定ミラー接続電極541が設けられる。この固定ミラー接続電極541は、
図4に示すように、共通電極561に接続される。
なお、固定反射膜54が金属や合金等の導電性部材により構成されている場合は、固定ミラー接続電極541と固定反射膜54とを同一素材にて構成することができる。また、固定反射膜54とは別に、固定ミラー接続電極541を設けてもよい。
一方、固定反射膜54が誘電体多層膜等の絶縁部材により構成されている場合は、固定反射膜54上に例えばITO等の透光性素材により構成された固定ミラー電極を成膜し、当該固定ミラー電極の一部を固定ミラー接続電極541とする、若しくは固定ミラー電極に接続する固定ミラー接続電極541を別途設ければよい。これにより、固定反射膜54を電極としても機能させることが可能となる。
【0034】
(可動基板の構成)
可動基板52は、
図5に示すようなフィルター平面視において、フィルター中心点Oを中心とした円形状の可動部521と、可動部521と同軸であり可動部521を保持する保持部522と、保持部522の外側に設けられた基板外周部525と、を備えている。
【0035】
可動部521は、保持部522よりも厚み寸法が大きく形成され、例えば、本実施形態では、可動基板52の厚み寸法と同一寸法に形成されている。この可動部521は、フィルター平面視において、少なくとも反射膜設置部512の外周縁の径寸法よりも大きい径寸法に形成されている。そして、この可動部521には、可動反射膜55、4つのバイアス電極571、制御電極581が設けられている。
【0036】
可動反射膜55は、可動部521の中心部に、固定反射膜54と反射膜間ギャップG1を介して対向して設けられる。この可動反射膜55としては、上述した固定反射膜54と同一の構成の反射膜が用いられる。
また、可動反射膜55には、固定反射膜54と同様、可動ミラー接続電極551が接続される。この可動ミラー接続電極551は、電極引出溝511Aに対向する領域を通って、電装面524まで延出し、延出先端部が電圧制御部15に接続されるミラー電極パッド55Pとなる。ミラー電極パッド55Pは、電圧制御部15の容量検出器152に接続される。
本実施形態では、固定反射膜54及び可動反射膜55が電極としても機能し、これらの反射膜54,55間における静電容量を検出することで、ギャップG1のギャップ寸法を検出することができる。すなわち、固定反射膜54及び可動反射膜55により、本発明のギャップ検出部の一部が構成される。
【0037】
バイアス電極571(571A,571B,571C,571D)は、
図5に示すように、4つ設けられ、フィルター中心点Oを中心とした仮想円上で、フィルター中心点Oに対して回転対称に設けられている。これらのバイアス電極571には、それぞれバイアス接続電極572が接続されている。また、これらのバイアス接続電極572は、電装面524まで延出し、延出先端部においてバイアス電極パッド57Pを構成する。これらのバイアス電極パッド57Pは、それぞれ、電圧制御部15のDAC(Digital to Analog Converter)151のバイアスチャンネル(Ch.n(n=1〜4)に接続される。
ここで、本実施形態では、バイアス電極571及び共通電極561により、バイアスアクチュエーター57が構成される。上記のように、各バイアス電極571がそれぞれ別のバイアスチャンネルに接続されるので、これらのバイアスアクチュエーター57は、それぞれ独立して駆動可能となる。
また、これらのバイアスアクチュエーター57は、
図2に示すように、フィルター中心(駆動中心軸)を中心とした同心円上に回転対称となるように配置される。言い換えれば、1つ1つのバイアスアクチュエーターは、それぞれ、フィルター中心点Oを通る駆動中心軸に対して非対称に構成されることになる。
【0038】
制御電極581は、
図5に示すように、バイアス電極571の外(保持部522側)に設けられる。制御電極581は、例えば略C字状(円環の一部が切欠かれた形状)に形成されている。上述した各バイアス接続電極572、可動ミラー接続電極551は、制御電極581のC字開口部を通って、電装面524まで引き出されている。
この制御電極581には、制御接続電極582が接続されており、当該制御接続電極582は、電装面524まで延出し、延出先端部が制御電極パッド58Pを構成する。制御電極パッド58Pは、電圧制御部15の制御器153に接続される。
【0039】
また、可動基板52には、上述したように、電極引出溝511Aに対向する領域から電装面524に亘って、共通接続電極564が設けられている。共通接続電極564は、バンプ部564Aにて共通引出電極562に接続される。また、共通接続電極564の先端部は、電装面524において、共通電極パッド564Pを構成する。
なお、本実施形態では、上述したように、電極間のギャップのギャップ寸法が反射膜間ギャップG1のギャップ寸法よりも大きい例を示すがこれに限定されない。例えば、測定対象光として赤外線や遠赤外線を用いる場合等、測定対象光の波長域によっては、反射膜間ギャップG1のギャップ寸法が、電極間のギャップのギャップ寸法よりも大きくなる構成としてもよい。
【0040】
保持部522は、可動部521の周囲を囲うダイヤフラムであり、可動部521よりも厚み寸法が小さく形成されている。このような保持部522は、可動部521よりも撓みやすく、僅かな静電引力により、可動部521を固定基板51側に変位させることが可能となる。この際、可動部521が保持部522よりも厚み寸法が大きく、剛性が大きくなるため、保持部522が静電引力により固定基板51側に引っ張られた場合でも、可動部521の形状変化が起こらない。したがって、可動部521に設けられた可動反射膜55の撓みも生じず、固定反射膜54及び可動反射膜55を常に平行状態に維持することが可能となる。
なお、本実施形態では、ダイヤフラム状の保持部522を例示するが、これに限定されず、例えば、フィルター中心点Oを中心として、等角度間隔で配置された梁状の保持部が設けられる構成などとしてもよい。
【0041】
基板外周部525は、上述したように、フィルター平面視において保持部522の外側に設けられている。この基板外周部525の固定基板51に対向する面には、第一接合部513に対向する第二接合部523が設けられ、接合膜53を介して第一接合部513に接合される。
【0042】
[電圧制御部の構成]
電圧制御部15は、本発明の駆動制御手段を構成するものであり、
図2に示すように、DAC151と、容量検出器152と、制御器153と、マイコン16とを備えている。
また、電圧制御部15は、共通電極パッド564Pが接続されるグラウンド回路154を有し、グラウンド回路154により共通電極561を共通電位(例えば0電位)が設定される。
【0043】
DAC151は、マイコン16から入力された電圧指令信号をアナログ電圧に変換して出力する。具体的には、DAC151は、
図2に示すように、4つのバイアスアクチュエーター57のそれぞれに印加する電圧を出力する4つのバイアスチャンネル(Ch.1,Ch.2,Ch.3,Ch.4)と、マイコン16から入力された目標値を出力する目標値チャンネル(Ch.5)とを備えている。
【0044】
容量検出器152は、反射膜54,55に接続されており、反射膜54,55間の静電容量に基づいて反射膜間ギャップG1のギャップ寸法を検出する。すなわち、容量検出器152は、反射膜54,55とともに本発明のギャップ検出部を構成する。
具体的には、容量検出器152は、図示略のC−V変換回路を有し、反射膜54,55間の静電容量を電圧値(検出信号)に変換する。このようなC−V変換回路としては、例えば、スイッチト・キャパシタ回路等が挙げられる。
そして、容量検出器152は、検出信号を制御器153及びマイコン16に出力する。
なお、容量検出器152は、検出信号としては、アナログ信号を出力してもよく、デジタル信号を出力してもよい。デジタル信号を出力する場合、C−V変換回路からの検出信号(アナログ信号)をA/D変換器(Analog to Digital Converter)に入力し、デジタル値に変換する。
【0045】
制御器153は、DAC151の目標値チャンネル及び制御電極パッド58Pに接続される。この制御器153は、DAC151から入力された、ギャップG1を所定の目標値に設定する旨の目標指令信号と、容量検出器152から入力される検出信号とに基づいて、制御アクチュエーター58に対してフィードバック電圧を印加する。
具体的には、制御器153は、目標指令信号と検出信号との偏差が所定閾値以下となるように、制御アクチュエーター58に対する駆動電圧を増減して制御する。すなわち、制御器153は、目標指令信号及び検出信号に基づいて、フィードバック制御を実施する。
【0046】
マイコン16は、メモリー等の記憶手段(図示略)を備えている。この記憶手段には、例えば波長可変干渉フィルター5を制御するための各種データや、各種プログラムが記録されている。各種データとしては、例えば、目標波長λに対する反射膜間ギャップG1のギャップ寸法の関係を示した関係データ等である。
また、マイコン16は、
図2に示すように、初期駆動手段161、パラメーター算出手段162、駆動指令手段163等として機能する。
【0047】
初期駆動手段161は、各バイアスアクチュエーター57の駆動パラメーターを算出するための初期駆動動作を制御する。具体的には、初期駆動手段161は、各バイアスアクチュエーター57に予め設定された所定の初期駆動電圧を順次印加させる。
【0048】
パラメーター算出手段162は、初期駆動動作時に容量検出器152から入力された検出信号に基づくギャップ寸法と、初期駆動電圧とに基づいて、駆動パラメーターを算出する。具体的には、パラメーター算出手段は、波長可変干渉フィルター5の可動基板52のばね定数の分布、及び各バイアスアクチュエーター57における共通電極561及びバイアス電極571間のギャップ(電極間ギャップ)の初期ギャップ寸法を算出する。
また、パラメーター算出手段162は、算出されたばね定数や初期ギャップ寸法に基づいて、分光測定時においてバイアスアクチュエーター57に印加するバイアス電圧を算出する。ばね定数、初期ギャップ寸法、バイアス電圧は、本発明の駆動パラメーターとなる。
【0049】
駆動指令手段163は、制御部20から入力された波長指令に基づいて、静電アクチュエーター部56を制御する。波長指令は、波長可変干渉フィルター5から目標波長の光を出射させる指令であり、当該目標波長が含まれる。駆動指令手段163は、例えば記憶手段に記憶されている関係データを参照して、目標波長に対して設定すべきギャップG1のギャップ寸法(目標値)を取得する。
また、駆動指令手段163は、パラメーター算出手段162により算出されたバイアス電圧を各バイアスアクチュエーター57に印加させる。
なお、マイコン16の各機能構成におけるさらに詳細な説明は後述する。
【0050】
[制御部の構成]
図1に戻り、分光測定装置1の制御部20について、説明する。
制御部20は、本発明の処理部に相当し、例えばCPUやメモリー等が組み合わされることで構成され、分光測定装置1の全体動作を制御する。この制御部20は、
図1に示すように、パラメーター設定部21と、波長設定部22と、光量取得部23と、分光測定部24と、記憶部30と、を備えている。記憶部30には、分光測定装置1の全体動作を制御するための各種データや各種プログラム等が記録される。
【0051】
パラメーター設定部21は、分光測定装置1により分光測定処理を実施する際の初期化処理を実施する。具体的には、パラメーター設定部21は、波長可変干渉フィルター5の可動基板52のばね定数や反射膜間ギャップG1の初期ギャップ寸法等を算出させる。
波長設定部22は、波長可変干渉フィルター5により取り出す光の目的波長を設定し、設定した目的波長を波長可変干渉フィルター5から取り出す旨の波長指令を電圧制御部15に出力する。
光量取得部23は、ディテクター11により取得された光量に基づいて、波長可変干渉フィルター5を透過した目的波長の光の光量を取得する。
分光測定部24は、光量取得部23により取得された光量に基づいて、測定対象光のスペクトル特性を測定する。
【0052】
[波長可変干渉フィルターの駆動方法]
次に、本実施形態における光学モジュール10の駆動制御方法(本発明におけるアクチュエーター装置の制御方法)について、図面に基づいて説明する。
【0053】
(パラメーター設定処理)
図6は、光学モジュール10の駆動制御方法(制御処理)におけるパラメーター設定処理を示すフローチャートである。
分光測定装置1において分光測定処理を実施する場合、まず、制御部20のパラメーター設定部21が光学モジュール10にパラメーター設定指令を出力する。これにより、光学モジュール10は、バイアス電圧を算出するための駆動パラメーターであるばね定数及び初期ギャップ寸法を算出するパラメーター設定処理を実施する。なお、このパラメーター算出処理は、例えば、分光測定装置1により最初の分光測定処理を実施する場合にのみ実施されてもよく、定期的に実施されてもよい。
【0054】
以下の説明にあたり、バイアスアクチュエーター57を示す変数をnとする。また、変数nの初期値を1とし、n=1はバイアスアクチュエーター57A,n=2はバイアスアクチュエーター57B、n=3はバイアスアクチュエーター57C,n=4はバイアスアクチュエーター57Dを指す。
【0055】
パラメーター設定処理では、まず、初期駆動手段161は、変数nに対応したバイアスアクチュエーター57に対し、予め設定された第一電圧V
1を印加し、その際のギャップG1の変動量(第一ギャップ変動量x
n1)を取得する(ステップS1)。
例えば、n=1の場合、DAC151のバイアスチャンネル(Ch.1)からバイアス電極571Aの電位をV
1に設定し、バイアスアクチュエーター57Aに第一電圧V
1を印加する。これにより、バイアスアクチュエーター57Aが駆動されて、ギャップG1のギャップ寸法が変動し、容量検出器152から出力される検出信号もこれに応じて変動する。初期駆動手段161は、入力された検出信号に基づいて、ギャップG1の変動量である第一ギャップ寸法x
11を取得する。
【0056】
次に、初期駆動手段161は、変数nに対応したバイアスアクチュエーター57に対し、第一電圧V
1とは異なる第二電圧V
2を印加し、その際のギャップG1の変動量(第二ギャップ変動量x
n2)を取得する(ステップS2)。
なお、ステップS1,S2で取得したギャップ変動量x
n1,x
n2は、記憶手段に記憶する。
【0057】
次に、初期駆動手段161は、変数nがn≧4であるか否かを判定する(ステップS3)。ステップS3で「No」と判定された場合は、変数nに1を加算し(ステップS4)、ステップS1に戻る。
ステップS3で「Yes」と判定された場合、すなわち、各バイアスアクチュエーター57を順次駆動させ、それぞれのバイアスアクチュエーター57に対して第一電圧V
1及び第二電圧V
2を印加した際のギャップ変動量x
n1、x
n2が取得されると、パラメーター算出手段162は、各バイアスアクチュエーター57におけるそれぞれの電極間ギャップの初期ギャップ寸法g
n0、及び可動基板52のばね定数k
nを算出する(ステップS5)。
【0058】
以下、パラメーター算出手段162により、変数nに対応するバイアスアクチュエーター57における電極間ギャップの初期ギャップ寸法g
n0、及び、可動基板52における当該バイアスアクチュエーター57が設けられた領域に対するばね定数k
nの算出方法について説明する。
ここで、バイアスアクチュエーター57の面積(バイアス電極571の面積)をSb(本実施形態では、各バイアス電極571が同一面積であるとする)、バイアス電極571及び共通電極561の間の誘電率をεとする。また、波長可変干渉フィルター5において、反射膜間ギャップG1のギャップ変動量と、電極間ギャップのギャップ変動量との差は極めて小さいため、電極間ギャップのギャップ変動量は、反射膜間ギャップG1のギャップ変動量に近似できる。
バイアスアクチュエーター57に対して第一電圧V
1を印加した際の電極間ギャップのギャップ寸法g
n1は、g
n1=g
n0−x
n1となる。同様に、バイアスアクチュエーター57に対して第二電圧V
2を印加した際の電極間ギャップのギャップ寸法g
n2は、g
n2=g
n0−x
n2となる。また、可動基板52には、当該可動基板52の剛性によるばね力と、バイアスアクチュエーター57による静電引力とが釣り合うため、以下の式(1)(2)が導かれる。
【0060】
上記式(1)を変形すると、以下の式(3)が得られる。
【0062】
また、上記式(3)を式(2)に代入することで、以下に示す式(4)が得られる。
【0064】
この式(4)に示すように、A=g
n2/g
n1=(g
n0−x
n2)/(g
n0−x
n1)とすると、バイアス電極571における初期ギャップ寸法g
n0は、以下の式(5)により算出することが可能となる。
【0066】
パラメーター算出手段162は、式(4)及び式(5)に基づいて、まず、各バイアスアクチュエーターにおけるそれぞれの電極間ギャップの初期ギャップ寸法g
n0を算出する。
そして、パラメーター算出手段162は、算出した初期ギャップ寸法g
n0を、式(3)に代入し、ばね定数k
nを算出する。
以上により、n=1,2,3,4に対応した各バイアスアクチュエーター57の電極間ギャップの初期ギャップ寸法g
n0と、可動基板52の各バイアスアクチュエーター57が設けられた領域におけるばね定数k
n(すなわち、可動基板52におけるばね定数の分布)が算出される。ここで、初期ギャップ寸法g
n0の分布により、可動基板52における可動部521の傾斜や傾斜量を検出でき、ばね定数k
nの分布により、ダイヤフラムとして機能する保持部522の剛性分布を検出できる。
【0067】
(駆動制御処理)
次に、上記のような駆動パラメーターであるばね定数k
n、初期ギャップ寸法g
n0を用い、光学モジュール10から所望の波長の光を出射させるための駆動制御方法について、図面に基づいて説明する。
【0068】
分光測定装置1により測定対象光に含まれる各波長の光の強度を取得するためには、まず、制御部20は、波長設定部22により波長可変干渉フィルター5を透過させる光の波長(目標波長)を設定する。そして、波長設定部22は、設定した目的波長の光を透過させる旨の波長指令を電圧制御部15に出力する。
【0069】
マイコン16のパラメーター算出手段162は、制御部20から波長指令が入力されると、目標波長の光を透過させるための反射膜間ギャップG1のギャップ寸法(目標値)を取得する。具体的には、目標波長に対する目標値の関係を記録した波長−目標値データを記憶手段に記憶しておき、パラメーター算出手段162は、この波長−目標値データに基づいて、目標波長に対応する目標値を取得する。
【0070】
この後、パラメーター算出手段162は、目標値に対する各バイアスアクチュエーター57に印加するバイアス電圧V
bnを算出する。
この際、マイコン16は、制御器153によるフィードバック制御において、制御アクチュエーター58への電圧印加時の感度(印加電圧に対するギャップ変位量(m/V))が一定となるように、かつ、反射膜54,55が平行に維持されるように、各バイアス電圧V
bnを設定する。
具体的には、パラメーター算出手段162は、下記式(6)に基づいて、各バイアス電圧V
bn(V
b1,V
b2,V
b3,V
b4)を算出する。
【0072】
式(6)において、S
Cは、制御アクチュエーター58の有効面積、xは、反射膜間ギャップG1を目標値に設定するために必要な可動部521を変位させる変位量である。また、R
Cは、制御アクチュエーター58における感度であり、本実施形態では、この感度R
Cとして、予め設定された一定値が入力される。
【0073】
この後、駆動指令手段163は、DAC151に対して、目標値、及びステップS12により算出された各バイアス電圧V
bnの電圧指令信号を出力する。これにより、DAC15は、バイアスチャンネル(Ch.n)から、各バイアスアクチュエーター57に対して、それぞれ対応したバイアス電圧V
bnを印加する。
これにより、バイアスアクチュエーター57において、静電引力が作用し、可動部521が固定基板51との平行を維持した状態で固定基板51側に変位する。
【0074】
この後、制御器153によりフィードバック制御が実施される。
すなわち、制御器153は、容量検出器152から入力される検出信号と、DAC151の目標値チャンネル(Ch.5)から入力される目標指令信号との偏差を算出し、その差が「0」となるように、制御アクチュエーター58に対してフィードバック電圧を印加する。
【0075】
以上のような駆動制御処理により、波長可変干渉フィルター5から目標波長の光が出射され、ディテクター11にて受光される。そして、制御部20の光量取得部23は、ディテクター11からの入力信号に基づいて、目標波長の光の光量を取得する。
そして、以上の駆動制御処理を、目標波長を切り替えて順次実施することで、分光測定に必要な複数波長の光の光量を取得することができる。これにより、分光測定部24は、これらの取得された各目標波長の光の光量に基づいて、測定対象に対する分光測定処理を実施することが可能となる。
【0076】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態の分光測定装置1の光学モジュール10では、波長可変干渉フィルター5において、4つのバイアスアクチュエーター57が設けられ、各バイアスアクチュエーター57は駆動中心軸に対して非対称に設けられ、マイコン16の初期駆動手段161は、これらのバイアスアクチュエーター57を順次駆動させる。1つのバイアスアクチュエーター57に一定の電圧を印加すると、当該バイアスアクチュエーター57の電極間ギャップのギャップ寸法の大小に応じて、作用する静電引力が変化し、これにより、容量検出器152により検出される検出信号も変化する。このため、パラメーター算出手段162は、各バイアスアクチュエーター57について、順次第一電圧V
1、第二電圧V
2を印加し、容量検出器152により検出されるギャップ寸法の変動量を検出することで、可動基板52の可動部521の傾き状態や傾き量を算出することができる。したがって、パラメーター算出手段162は、このような傾き状態に基づいて、可動部521を固定基板51に対して平行に維持するためのバイアス電圧を容易に算出することができる。
そして、上記のような構成では、バイアス電圧を算出するために、4つのバイアスアクチュエーターにおけるそれぞれの電極間ギャップを検出する必要がなく、反射膜54,55間の反射膜間ギャップG1におけるギャップ寸法を検出すればよい。つまり、複数の容量検出器を設ける必要がなく、光学モジュール10及び分光測定装置1の構成の簡略化を図ることができる。
【0077】
本実施形態の分光測定装置1では、パラメーター算出手段162は、駆動パラメーターとして、可動部521及び固定基板51を平行に維持するためのバイアス電圧を算出する。
このように、可動部521及び固定基板51を平行に維持することで、反射膜54,55も平行に維持されることになり、波長可変干渉フィルター5から所望の目標波長の光を高分解能で出射させることができる。
【0078】
ここで、パラメーター算出手段162は、上記式(3)(5)に基づいて、各バイアスアクチュエーター57における電極間ギャップの初期ギャップ寸法g
n0と、可動基板52におけるバイアスアクチュエーター57が設けられた領域におけるばね定数k
nを算出する。
上記のように、初期ギャップ寸法g
n0及びばね定数k
nを算出することで、式(6)を用いることで容易に目標値に対して、制御アクチュエーター58における感度R
Cを一定に維持したバイアス電圧V
bnを算出することができる。また、これらの初期ギャップ寸法g
n0の分布及びばね定数k
nの分布により、可動基板52における可動部521の傾き方向や傾き量を容易に検出することができる。
【0079】
本実施形態の分光測定装置1では、波長可変干渉フィルター5に制御アクチュエーター58が設けられている。そして、パラメーター算出手段162により式(6)に示すバイアス電圧を算出して、当該電圧を各バイアスアクチュエーター57に印加することで、各バイアスアクチュエーター57に可動部521の傾斜を補正するような静電引力が作用するので、反射膜54,55を平行に維持することができる。そして、この状態で、制御器153により、制御アクチュエーター58にフィードバック電圧を印加することで、反射膜54,55を高精度に平行に維持した状態で、反射膜間ギャップG1のギャップ寸法を高度に所望の目標値に設定することができる。
また、上記のようなフィードバック制御では、例えば、各バイアスアクチュエーター57に対する印加電圧をフィードバック制御する場合に比べて、処理が容易となる。つまり、各バイアスアクチュエーター57をフィードバック制御する場合では、それぞれのバイアスアクチュエーターを駆動させた際の相互作用を考慮する必要があるため、フィードバック制御が困難になる。これに対して、本実施形態では、フィードバック制御を実施するアクチュエーターは、1つの制御アクチュエーターのみであり、容易、かつ高精度なフィードバック制御が可能となる。
【0080】
本実施形態では、容量検出器152は、駆動中心軸に位置する反射膜54,55間のギャップ寸法を検出している。このため、例えば、反射膜54,55とは離れた位置に容量検出用電極を設ける場合に比べて、構成の簡略化を図れる。また、波長可変干渉フィルター5において、最も精度よくギャップ制御を実施したい反射膜間ギャップG1のギャップ寸法を検出するので、検出値と目標値との比較が容易でありフィードバック制御の精度を上げることができる。
また、本実施形態では、駆動中心軸上に反射膜54,55が設けられる。バイアスアクチュエーター57に算出されたバイアス電圧を印加した際に、最も平行度が高い位置に反射膜54,55が設けられることになり、反射膜54,55の平行度をより高度に維持できる。
【0081】
また、ギャップ寸法を検出する位置が、バイアスアクチュエーター57から離れている場合、当該バイアスアクチュエーター57における電極間ギャップの変動量と、検出位置におけるギャップ変動量との差が大きくなるため、特定のバイアスアクチュエーター57において、可動部521を固定基板51に対して平行に維持するためのバイアス電圧の精度が低下してしまう。
これに対して、本実施形態において、駆動中心軸は、各バイアスアクチュエーター57からの距離が一定となる位置であり、反射膜間ギャップG1におけるギャップ変動量と、電極間ギャップにおけるギャップ変動量との差が微小であるため、精度よくバイアス電圧を算出できる。
【0082】
[その他の実施形態]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0083】
上記実施形態では、波長可変干渉フィルター5に制御アクチュエーター58が設けられ、制御器153により、制御アクチュエーター58にフィードバック電圧を印加する例を示したが、これに限定されない。
例えば、フィードバック制御を実施せず、バイアスアクチュエーター57のみで波長可変干渉フィルター5を駆動させてもよい。この場合、波長可変干渉フィルター5における制御アクチュエーター58や、制御器153を不要にできる。
また、このような構成では、パラメーター算出手段162は、各バイアスアクチュエーター57に対して以下の式(7)により算出されるバイアス電圧を印加する。
【0085】
上記実施形態では、パラメーター設定処理において、4つのバイアスアクチュエーター57を1ずつ順次駆動させる例を示したが、これに限定されない。例えば、フィルター平面視におけるフィルター中心点Oを中心とした同心円の周方向に沿って隣り合う2つのバイアスアクチュエーター57を順次切り替えて、双方のバイアスアクチュエーター57に電圧V
1,V
2を印加して駆動させ、ギャップ変動量g
nm1,g
nm2を取得してもよい。例えば、バイアスアクチュエーター57A,57B、バイアスアクチュエーター57B,57C、バイアスアクチュエーター57C,57D、バイアスアクチュエーター57D,57A、を順次駆動させて、ギャップ変動量g
121、g
122、g
231、g
232、g
341、g
342、g
411、g
412を取得する。
また、この場合、式(3)(6)(7)におけるS
bを対応する2つ分のバイアスアクチュエーターの面積(2S
b)にすればよい。
【0086】
上記実施形態では、4つのバイアスアクチュエーター57が、フィルター中心点Oを中心とした同心円上に配置される例を示したが、これに限定されない。例えば、2つや3つのバイアスアクチュエーター57であってもよく、5つ以上のバイアスアクチュエーター57が設けられていてもよい。バイアスアクチュエーター57の数量が少ない場合、ばね定数や初期ギャップ寸法の分布が大まかとなり、基板51,52間を平行に維持するためのバイアス電圧の精度が低下するが、構成の簡略化を図れる。バイアスアクチュエーター57の数量が多い場合、構成が複雑化するものの、ばね定数や初期ギャップ寸法の分布をより詳細に検出でき、バイアス電圧の精度が向上する。
【0087】
また、各バイアスアクチュエーター57がそれぞれ同一形状、同一面積であり、フィルター中心点Oを通る駆動中心軸から同一距離の位置に設けられる例を示したがこれに限定されない。例えば、各バイアスアクチュエーター57が、それぞれ異なる形状であってもよく、面積が異なってもよい。面積が異なる場合、式(3)(6)(7)におけるSbに対応する面積の値を代入すればよい。
また、駆動中心軸からの距離がそれぞれ異なる場合であっても、同様に駆動パラメーターであるバイアス電圧の算出が可能である。
【0088】
さらに、ギャップ検出部として、反射膜54,55、及び容量検出器152により構成される例を示したが、これに限定されない。基板51,52間に、反射膜54,55とは異なる位置に別途容量検出用電極を設けてもよい。
ただし、上述したように、基板51,52のギャップ寸法の検出位置のギャップ変動量を、バイアスアクチュエーター57の電極間ギャップのギャップ変動量として近似するため、バイアスアクチュエーター57と、ギャップ寸法の検出位置との距離が大きく離れる場合、バイアス電圧の検出精度が低下することが考えられる。このため、ギャップ検出位置としては、各バイアスアクチュエーターからの距離が予め設定された閾値以内となる位置であることが好ましい。
【0089】
また、本発明の電子機器として、上記各実施形態では、分光測定装置1を例示したが、その他、様々な分野により本発明の波長可変干渉フィルターの駆動方法、光学モジュール、及び電子機器を適用することができる。
【0090】
例えば、
図7に示すように、本発明の電子機器を、色を測定するための測色装置に適用することもできる。
図7は、波長可変干渉フィルターを備えた測色装置400の一例を示すブロック図である。
この測色装置400は、
図7に示すように、検査対象Aに光を射出する光源装置410と、測色センサー420(光学モジュール)と、測色装置400の全体動作を制御する制御装置430(処理部)とを備える。そして、この測色装置400は、光源装置410から射出される光を検査対象Aにて反射させ、反射された検査対象光を測色センサー420にて受光し、測色センサー420から出力される検出信号に基づいて、検査対象光の色度、すなわち検査対象Aの色を分析して測定する装置である。
【0091】
光源装置410、光源411、複数のレンズ412(
図7には1つのみ記載)を備え、検査対象Aに対して例えば基準光(例えば、白色光)を射出する。また、複数のレンズ412には、コリメーターレンズが含まれてもよく、この場合、光源装置410は、光源411から射出された基準光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから検査対象Aに向かって射出する。なお、本実施形態では、光源装置410を備える測色装置400を例示するが、例えば検査対象Aが液晶ディスプレイなどの発光部材である場合、光源装置410が設けられない構成としてもよい。
【0092】
測色センサー420は、
図7に示すように、波長可変干渉フィルター5と、波長可変干渉フィルター5を透過する光を受光するディテクター11と、波長可変干渉フィルター5で透過させる光の波長を可変する電圧制御部15とを備える。また、測色センサー420は、波長可変干渉フィルター5に対向する位置に、検査対象Aで反射された反射光(検査対象光)を、内部に導光する図示しない入射光学レンズを備えている。そして、この測色センサー3は、波長可変干渉フィルター5により、入射光学レンズから入射した検査対象光のうち、所定波長の光を分光し、分光した光をディテクター11にて受光する。
【0093】
制御装置430は、測色装置400の全体動作を制御する。
この制御装置430としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューターなどを用いることができる。そして、制御装置430は、
図7に示すように、光源制御部431、測色センサー制御部432、および測色処理部433などを備えて構成されている。
光源制御部431は、光源装置410に接続され、例えば利用者の設定入力に基づいて、光源装置410に所定の制御信号を出力して、所定の明るさの白色光を射出させる。
測色センサー制御部432は、測色センサー420に接続され、例えば利用者の設定入力に基づいて、測色センサー420にて受光させる光の波長を設定し、この波長の光の受光量を検出する旨の制御信号を測色センサー420に出力する。これにより、測色センサー420の電圧制御部15は、制御信号に基づいて、静電アクチュエーター部56に電圧を印加し、波長可変干渉フィルター5を駆動させる。
測色処理部433は、ディテクター11により検出された受光量から、検査対象Aの色度を分析する。
【0094】
また、本発明の電子機器の他の例として、特定物質の存在を検出するための光ベースのシステムが挙げられる。このようなシステムとしては、例えば、本発明の波長可変干渉フィルターを用いた分光計測方式を採用して特定ガスを高感度検出する車載用ガス漏れ検出器や、呼気検査用の光音響希ガス検出器等のガス検出装置を例示できる。
このようなガス検出装置の一例を以下に図面に基づいて説明する。
【0095】
図8は、波長可変干渉フィルターを備えたガス検出装置の一例を示す概略図である。
図9は、
図8のガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図である。
このガス検出装置100は、
図8に示すように、センサーチップ110と、吸引口120A、吸引流路120B、排出流路120C、及び排出口120Dを備えた流路120と、本体部130と、を備えて構成されている。
本体部130は、流路120を着脱可能な開口を有するセンサー部カバー131、排出手段133、筐体134、光学部135、フィルター136、波長可変干渉フィルター5、及び受光素子137(検出部)等を含む検出装置(光学モジュール)と、検出された信号を処理し、検出部を制御する制御部138(処理部)、電力を供給する電力供給部139等から構成されている。また、光学部135は、光を射出する光源135Aと、光源135Aから入射された光をセンサーチップ110側に反射し、センサーチップ側から入射された光を受光素子137側に透過するビームスプリッター135Bと、レンズ135C,135D,135Eと、により構成されている。
また、
図9に示すように、ガス検出装置100の表面には、操作パネル140、表示部141、外部とのインターフェイスのための接続部142、電力供給部139が設けられている。電力供給部139が二次電池の場合には、充電のための接続部143を備えてもよい。
更に、ガス検出装置100の制御部138は、
図9に示すように、CPU等により構成された信号処理部144、光源135Aを制御するための光源ドライバー回路145、波長可変干渉フィルター5を制御するための電圧制御部15、受光素子137からの信号を受信する受光回路147、センサーチップ110のコードを読み取り、センサーチップ110の有無を検出するセンサーチップ検出器148からの信号を受信するセンサーチップ検出回路149、及び排出手段133を制御する排出ドライバー回路150などを備えている。
【0096】
次に、上記のようなガス検出装置100の動作について、以下に説明する。
本体部130の上部のセンサー部カバー131の内部には、センサーチップ検出器148が設けられており、このセンサーチップ検出器148でセンサーチップ110の有無が検出される。信号処理部144は、センサーチップ検出器148からの検出信号を検出すると、センサーチップ110が装着された状態であると判断し、表示部141へ検出動作を実施可能な旨を表示させる表示信号を出す。
【0097】
そして、例えば利用者により操作パネル140が操作され、操作パネル140から検出処理を開始する旨の指示信号が信号処理部144へ出力されると、まず、信号処理部144は、光源ドライバー回路145に光源作動の信号を出力して光源135Aを作動させる。光源135Aが駆動されると、光源135Aから単一波長で直線偏光の安定したレーザー光が射出される。また、光源135Aには、温度センサーや光量センサーが内蔵されており、その情報が信号処理部144へ出力される。そして、信号処理部144は、光源135Aから入力された温度や光量に基づいて、光源135Aが安定動作していると判断すると、排出ドライバー回路150を制御して排出手段133を作動させる。これにより、検出すべき標的物質(ガス分子)を含んだ気体試料が、吸引口120Aから、吸引流路120B、センサーチップ110内、排出流路120C、排出口120Dへと誘導される。なお、吸引口120Aには、除塵フィルター120A1が設けられ、比較的大きい粉塵や一部の水蒸気などが除去される。
【0098】
また、センサーチップ110は、金属ナノ構造体が複数組み込まれ、局在表面プラズモン共鳴を利用したセンサーである。このようなセンサーチップ110では、レーザー光により金属ナノ構造体間で増強電場が形成され、この増強電場内にガス分子が入り込むと、分子振動の情報を含んだラマン散乱光、及びレイリー散乱光が発生する。
これらのレイリー散乱光やラマン散乱光は、光学部135を通ってフィルター136に入射し、フィルター136によりレイリー散乱光が分離され、ラマン散乱光が波長可変干渉フィルター5に入射する。そして、信号処理部144は、電圧制御部15に対して制御信号(波長指令)を出力する。これにより、電圧制御部15は、上記実施形態と同様の駆動方法により、波長可変干渉フィルター5を駆動させ、検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光を波長可変干渉フィルター5で分光させる。この後、分光した光が受光素子137で受光されると、受光量に応じた受光信号が受光回路147を介して信号処理部144に出力される。この場合、波長可変干渉フィルター5から目的とするラマン散乱光を精度よく取り出すことができる。
信号処理部144は、上記のようにして得られた検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光のスペクトルデータと、ROMに格納されているデータとを比較し、目的のガス分子か否かを判定し、物質の特定をする。また、信号処理部144は、表示部141にその結果情報を表示させたり、接続部142から外部へ出力したりする。
【0099】
なお、上記
図8及び
図9において、ラマン散乱光を波長可変干渉フィルター5により分光して分光されたラマン散乱光からガス検出を行うガス検出装置100を例示したが、ガス検出装置として、ガス固有の吸光度を検出することでガス種別を特定するガス検出装置として用いてもよい。この場合、センサー内部にガスを流入させ、入射光のうちガスにて吸収された光を検出するガスセンサーを本発明の光学モジュールとして用いる。そして、このようなガスセンサーによりセンサー内に流入されたガスを分析、判別するガス検出装置を本発明の電子機器とする。このような構成でも、波長可変干渉フィルターを用いてガスの成分を検出することができる。
【0100】
また、特定物質の存在を検出するためのシステムとして、上記のようなガスの検出に限られず、近赤外線分光による糖類の非侵襲的測定装置や、食物や生体、鉱物等の情報の非侵襲的測定装置等の、物質成分分析装置を例示できる。
以下に、上記物質成分分析装置の一例として、食物分析装置を説明する。
【0101】
図10は、波長可変干渉フィルター5を利用した電子機器の一例である食物分析装置の概略構成を示す図である。
この食物分析装置200は、
図10に示すように、検出器210(光学モジュール)と、制御部220と、表示部230と、を備えている。検出器210は、光を射出する光源211と、測定対象物からの光が導入される撮像レンズ212と、撮像レンズ212から導入された光を分光する波長可変干渉フィルター5と、分光された光を検出する撮像部213(検出部)と、を備えている。
また、制御部220は、光源211の点灯・消灯制御、点灯時の明るさ制御を実施する光源制御部221と、波長可変干渉フィルター5を制御する電圧制御部15と、撮像部213を制御し、撮像部213で撮像された分光画像を取得する検出制御部223と、信号処理部224(分析部)と、記憶部225と、を備えている。
【0102】
この食物分析装置200は、システムを駆動させると、光源制御部221により光源211が制御されて、光源211から測定対象物に光が照射される。そして、測定対象物で反射された光は、撮像レンズ212を通って波長可変干渉フィルター5に入射する。波長可変干渉フィルター5は電圧制御部15の制御により、波長可変干渉フィルター5は、上記第一実施形態に示すような駆動方法で駆動される。これにより、波長可変干渉フィルター5から精度よく目的波長の光を取り出すことができる。そして、取り出された光は、例えばCCDカメラ等により構成される撮像部213で撮像される。また、撮像された光は分光画像として、記憶部225に蓄積される。また、信号処理部224は、電圧制御部15を制御して波長可変干渉フィルター5に印加する電圧値を変化させ、各波長に対する分光画像を取得する。
【0103】
そして、信号処理部224は、記憶部225に蓄積された各画像における各画素のデータを演算処理し、各画素におけるスペクトルを求める。また、記憶部225には、例えばスペクトルに対する食物の成分に関する情報が記憶されており、信号処理部224は、求めたスペクトルのデータを、記憶部225に記憶された食物に関する情報を基に分析し、検出対象に含まれる食物成分、及びその含有量を求める。また、得られた食物成分及び含有量から、食物カロリーや鮮度等をも算出することができる。更に、画像内のスペクトル分布を分析することで、検査対象の食物の中で鮮度が低下している部分の抽出等をも実施することができ、更には、食物内に含まれる異物等の検出をも実施することができる。
そして、信号処理部224は、上述のようにして得られた検査対象の食物の成分や含有量、カロリーや鮮度等の情報を表示部230に表示させる処理をする。
【0104】
また、
図10において、食物分析装置200の例を示すが、略同様の構成により、上述したようなその他の情報の非侵襲的測定装置としても利用することができる。例えば、血液等の体液成分の測定、分析等、生体成分を分析する生体分析装置として用いることができる。このような生体分析装置としては、例えば血液等の体液成分を測定する装置として、エチルアルコールを検知する装置とすれば、運転者の飲酒状態を検出する酒気帯び運転防止装置として用いることができる。また、このような生体分析装置を備えた電子内視鏡システムとしても用いることができる。
更には、鉱物の成分分析を実施する鉱物分析装置としても用いることができる。
【0105】
更には、本発明の波長可変干渉フィルター、光学モジュール、電子機器としては、以下のような装置に適用することができる。
例えば、各波長の光の強度を経時的に変化させることで、各波長の光でデータを伝送させることも可能であり、この場合、光学モジュールに設けられた波長可変干渉フィルターにより特定波長の光を分光し、受光部で受光させることで、特定波長の光により伝送されるデータを抽出することができ、このようなデータ抽出用光学モジュールを備えた電子機器により、各波長の光のデータを処理することで、光通信を実施することもできる。
【0106】
また、電子機器としては、本発明の波長可変干渉フィルターにより光を分光することで、分光画像を撮像する分光カメラ、分光分析機などにも適用できる。このような分光カメラの一例として、波長可変干渉フィルターを内蔵した赤外線カメラが挙げられる。
図11は、分光カメラの概略構成を示す模式図である。分光カメラ300は、
図11に示すように、カメラ本体310と、撮像レンズユニット320と、撮像部330(検出部)とを備えている。
カメラ本体310は、利用者により把持、操作される部分である。
撮像レンズユニット320は、カメラ本体310に設けられ、入射した画像光を撮像部330に導光する。また、この撮像レンズユニット320は、
図11に示すように、対物レンズ321、結像レンズ322、及びこれらのレンズ間に設けられた波長可変干渉フィルター5を備えて構成されている。
撮像部330は、受光素子により構成され、撮像レンズユニット320により導光された画像光を撮像する。
このような分光カメラ300では、波長可変干渉フィルター5により撮像対象となる波長の光を透過させることで、所望波長の光の分光画像を撮像することができる。この時、各波長に対して、電圧制御部(図示略)が上記第一実施形態に示すような本発明の駆動方法により波長可変干渉フィルター5を駆動させることで、精度よく目的波長の分光画像の画像光を取り出すことができる。
【0107】
更には、本発明の波長可変干渉フィルターをバンドパスフィルターとして用いてもよく、例えば、発光素子が射出する所定波長域の光のうち、所定の波長を中心とした狭帯域の光のみを波長可変干渉フィルターで分光して透過させる光学式レーザー装置としても用いることができる。
また、本発明の波長可変干渉フィルターを生体認証装置として用いてもよく、例えば、近赤外領域や可視領域の光を用いた、血管や指紋、網膜、虹彩などの認証装置にも適用できる。
【0108】
更には、光学モジュール及び電子機器を、濃度検出装置として用いることができる。この場合、波長可変干渉フィルターにより、物質から射出された赤外エネルギー(赤外光)を分光して分析し、サンプル中の被検体濃度を測定する。
【0109】
上記に示すように、本発明の波長可変干渉フィルター、光学モジュール、及び電子機器は、入射光から所定の光を分光するいかなる装置にも適用することができる。そして、本発明の波長可変干渉フィルターは、上述のように、1デバイスで複数の波長を分光させることができるため、複数の波長のスペクトルの測定、複数の成分に対する検出を精度よく実施することができる。したがって、複数デバイスにより所望の波長を取り出す従来の装置に比べて、光学モジュールや電子機器の小型化を促進でき、例えば、携帯用や車載用の光学デバイスとして好適に用いることができる。
【0110】
さらに、上述した実施形態では、アクチュエーター装置として波長可変干渉フィルター5を備えた光学モジュールを例示したが、これに限定されない。
例えば、互いに対向する一対の基板を有し、これらの一対の基板間のギャップ寸法を変化させるいかなるアクチュエーター装置にも適用することができる。このような装置として、例えば、一対の基板の一方にミラーを配置し、ミラーが配置された基板(ミラー基板)の他方の基板(ベース基板)に対する角度を変化させてミラーにて反射される光の方向を変化させるミラーデバイス等が挙げられる。このようなミラーデバイスでは、基板間を平行にした初期状態からミラー基板の傾斜角度を算出して、所望の角度に設定する。したがって、初期状態において、ミラー基板をベース基板に対して平行に維持する必要がある。この際、上記実施形態と同様、ミラー基板及びベース基板間にそれぞれ独立して駆動可能な静電アクチュエーター、及び基板間のギャップ寸法を検出するギャップ検出部を設け、各静電アクチュエーターを順次駆動させることで、ミラー基板における傾斜状態を検出する構成とする。そして、検出された傾斜状態からミラー基板をベース基板に平行にするための平行制御電圧を算出する。
【0111】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等に適宜変更できる。