(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のステアリングシステムによれば、確かに絶対操舵角の異常を検出することが可能である。しかし、当該システムにおいては、2つのカウント値を比較するための処理時間を要する。当該処理時間の分だけ絶対操舵角の異常判定にも時間を要する。
【0006】
本発明の目的は、操舵角の異常判定に要する時間をより短縮することができるステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成しうるステアリング装置は、絶対操舵角に関連する情報を検出する位置検出器と、IGオフされている間に前記絶対操舵角に関連する情報を取得する補助部と、を備え、前記補助部は、操舵方向に応じてカウント値を増減するカウンタと、前記カウント値の過去値及び今回値を比較することで絶対操舵角の異常を検出する異常検出部と、を備えている。
【0008】
この構成によれば、1つのカウンタの過去値及び今回値を用いて絶対操舵角の異常を検出することが可能となる。カウント値は絶対操舵角の変化があったことを示す情報だからである。複数のカウンタを設け、それらのカウント値を比較する構成も考えられるところ、この構成を採用する場合と比べて、異常検出の処理時間を短縮することができる。
【0009】
前記補助部は、取得される前記情報に基づき前記操舵方向として回転方向を判定する回転方向判定部を備えることが好ましい。前記カウンタは、前記回転方向判定部により判定される回転方向に応じてカウント値を更新する。前記異常検出部は、回転方向判定部により判定される操舵軸の回転方向と、過去値及び今回値との比較することで絶対操舵角の異常を検出する。
【0010】
前記補助部は、複数の回転方向判定部を有してもよい。複数の回転方向判定部によりそれぞれ判定される回転方向の比較を通じて前記回転方向の判定結果の異常を検出する比較部を備えていてもよい。
【0011】
これらの構成によれば、回転方向判定部から操舵軸の回転方向を判定することができる。そして、前記回転方向とカウンタの過去値及び今回値を用いた異常検出を行うことができる。また、複数の回転方向判定部によりさらに比較部を設けることができ、より確実な絶対操舵角を得ることができる。
【0012】
前記異常検出部は、過去値に前回値を用いることが好ましい。
この構成によれば、今回値とその直近の過去値である前回値を用いて異常検出を行うことにより、よりタイムラグが少ない状態で異常の検出を行うことができる。
【0013】
ステアリングシャフトの回転に連動して直線運動することにより転舵輪を転舵させる転舵軸と、前記ステアリングシャフトまたは前記転舵軸に対してアシスト力を付与するモータとを備えていてもよい。前記位置検出器は、前記操舵角に関連する情報として、前記モータの回転量に応じた電気信号を生成する。
【0014】
ステアリングシャフトの回転に連動して直線運動することにより転舵輪を転舵させる転舵軸を備えていてもよい。前記位置検出器は、前記操舵角に関連する情報として、前記ステアリングシャフトの回転量または前記転舵軸の変位量に応じた電気信号を生成する。
【0015】
これらの構成によれば、それぞれ位置検出器を用いてモータの回転量、ステアリングシャフトの回転量及び転舵軸の変位量に応じた電気信号により、絶対操舵角に関連する情報を得ることができる。
【0016】
少なくとも操舵トルク及び前記操舵角に関連する情報に基づき前記モータを制御する制御装置を備えていてもよい。イグニッションオフされている間、前記制御装置に対する給電が停止される一方、前記位置検出器及び前記補助部には給電が継続されている。
【0017】
この構成によれば、よりバッテリの消費電力を低減することが可能である。すなわち、IGオフ中は、位置検出器及び補助部には給電されているのに対し、ECUへの給電が停止されているため、バッテリの消費を低減することが可能である。
【0018】
前記位置検出器及び前記補助部を間欠的に駆動することが好ましい。
この構成によれば、間欠的に位置検出器及び補助部が駆動することにより、常時駆動している場合よりもバッテリの消費を低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るステアリング装置によれば、操舵角の異常判定に要する時間をより短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、ステアリング装置の一実施の形態について説明する。本実施形態のステアリング装置は、モータにより操舵機構にアシスト力を付与する電動パワーステアリング装置(EPS)である。
【0022】
図1に示すように、EPS10は運転者のステアリングホイール21の操作に基づいて転舵輪26を転舵させる操舵機構20、運転者のステアリング操作を補助する操舵補助機構30及び操舵補助機構30を制御するECU(電子制御装置)40を備えている。
【0023】
操舵機構20は、ステアリングホイール21及びステアリングホイール21と一体回転するステアリングシャフト22を備えている。ステアリングシャフト22は、ステアリングホイール21に連結されたコラムシャフト22a、コラムシャフト22aの下端部に連結されたインターミディエイトシャフト22b及びインターミディエイトシャフト22bの下端部に連結されたピニオンシャフト22cから構成される。ピニオンシャフト22cの下端部は、ピニオンシャフト22cに交わる方向へ延びるラックシャフト23に連結されている。したがって、ステアリングシャフト22の回転運動は、ラックアンドピニオン機構24を介してラックシャフト23の軸方向の往復直線運動に変換される。当該往復直線運動が、ラックシャフト23の両端にそれぞれ連結されたタイロッド25を介して左右の転舵輪26にそれぞれ伝達されることにより、転舵輪26の転舵角が変化し、車両の進行方向が変更される。
【0024】
操舵補助機構30は、操舵補助力の発生源であるモータ31を備えている。モータ31の回転軸31aは、減速機構32を介してコラムシャフト22aに連結されている。減速機構32はモータ31の回転を減速し、当該減速した回転力をコラムシャフト22aに伝達する。すなわち、ステアリングシャフト22にモータ31の操舵トルクτが操舵補助力として付与されることにより、運転者のステアリング操作が補助される。
【0025】
ECU40は、車両に設けられる各種のセンサの検出結果に基づいてモータ31を制御する。各種のセンサとしては、たとえばトルクセンサ51及び回転角センサ52がある。トルクセンサ51はコラムシャフト22aに設けられ、回転角センサ52はモータ31に取り付けられている。トルクセンサ51は、運転者のステアリング操作に伴いステアリングシャフト22に付与される操舵トルクτを検出する。回転角センサ52は、モータ31に設けられて回転軸31aの回転角θに応じた電気信号する。回転軸31aの回転角θに応じた電気信号は、絶対操舵角θsに関連する情報の一つである。回転角センサ52としては、たとえば磁気抵抗効果センサ(MRセンサ)が採用される。MRセンサは、複数の磁気抵抗効果素子からなるブリッジ回路を有する。回転角センサ52は回転角θに応じた電気信号としてsin信号及びcos信号をそれぞれ生成する。ECU40はトルクセンサ51を通じて検出される操舵トルクτ及び回転角センサ52により生成される電気信号に基づいてモータ31を制御する。
【0026】
モータ31には補助回路53が設けられている。補助回路53は回転角センサ52で検出した絶対操舵角θsに関連する情報をECU40に出力し、ECU40による絶対操舵角θsの計算を補助する。補助回路53は、単一の集積回路(ASIC)として構成してもよい。IGオフ時に回転角センサ52で得られた絶対操舵角θsに関連する情報を補助回路53で記録する。IGオン時には補助回路53は通信インターフェース67を介して補助回路53に記録されている絶対操舵角θsに関連する情報をECU40に出力する。ECU40は回転角センサ52の出力及び補助回路53から出力された絶対操舵角θsに関連する情報を演算することで絶対操舵角θsを出力する。そして、ECU40は、IGオフする直前の絶対操舵角θsを記録する。なお、IGオフ中はECU40が停止しているため、IGオフ中の絶対操舵角θsの変化を検出できない。すなわち、IGオフ中に絶対操舵角θsの変化がある状態で、IGオンにした際にはECU40が誤った絶対操舵角θsでの制御を行うおそれがある。そのため、IGオフ中にも回転角センサ52及び補助回路53による絶対操舵角θsの監視が必要である。
【0027】
ここで、バッテリの電力消費を低減しつつ絶対操舵角θsに関連する情報を検出するため、IGオフ時、回転角センサ52にはバッテリからの電力が供給される。バッテリ消費を低減するため、IGオフ時にはECU40に対して給電は行われず、回転角センサ52や補助回路53にはバッテリからの電力が供給される。回転角センサ52への給電は間欠的に行ってもよい。間欠給電で常時検出していなくても、IGオフ時には回転があったかわかる程度の絶対操舵角θsに関連する情報を得ることができればよく、間欠給電によって電力の消費がより低減することが期待できるからである。
【0028】
IGオン時、ECU40にはバッテリからの電力が供給される。回転角センサ52から得られるsin信号及びcos信号に基づく逆正接値を演算することにより、ECU40は回転角θを検出する。また、ECU40は回転角θを使用して絶対操舵角θsを演算する。回転角θと絶対操舵角θsとの間には密接な関連があるため、回転角θに基づき絶対操舵角θsを演算することが可能である。IGオフ時には、ECU40はIGオフの直前に得られた絶対操舵角θsを記録する。
【0029】
次に補助回路53の構成を説明する。
図2に示すように、補助回路53は増幅器61、カウンタユニット54、通信インターフェース67を有している。
【0030】
増幅器61は回転角センサ52により生成されるsin信号とcos信号とを増幅する。なお、補助回路53として、増幅器61を設けない構成を採用してもよい。
カウンタユニット54は、回転角センサ52により生成される電気信号(sin信号、cos信号)に基づきカウントを行う部分であり、大きく2つの機能部分を有している。第1の機能部分は回転角センサ52に基づきモータ31の回転方向を検出し、モータ31の回転方向と回転角センサ52により生成される電気信号に応じてカウント値を更新する。第2の機能部分は、第1の機能部分における回転方向の判定結果とカウント値の異常をそれぞれ検出する。
【0031】
図2に示すように、第1の機能部分は、第1回転方向判定部62、第2回転方向判定部63及びカウンタ64を有する。
第1回転方向判定部62は、増幅器61により増幅されたsin信号及びcos信号に基づきモータ31の回転方向(右回転もしくは左回転)を判定する。第1回転方向判定部62はモータ31の回転方向が左方向である旨判定されるとき、その旨示す左回転検出フラグをオンする。また、第1回転方向判定部62はモータ31の回転方向が右方向である旨判定されるとき、その旨示す右回転検出フラグをオンする。
【0032】
図3に示すように、第1回転方向判定部62はコンパレータ71、象限検出部72及びカウント方向判断部73を備えている。
コンパレータ71は、回転角センサ52によって生成されるsin信号及びcos信号の信号レベルが、設定された閾値より高い値であればHiレベルの信号を、低い値であればLoレベルの信号を生成する。
【0033】
象限検出部72は、コンパレータ71により生成されるHiレベルの信号とLoレベルの信号との組み合わせから、モータ31の回転角θの位相が、考えられる4つの象限のうちで現在はどの象限に該当するかを判定する。具体的にはつぎの通りである。
【0034】
(A1)sin信号及びcos信号の双方がHiレベルであるとき。このとき、モータ31の回転角θは第1象限に該当する旨判定される。
(A2)sin信号がHiレベルかつcos信号がLoレベルであるとき。このとき、モータ31の回転角θは第2象限に該当する旨判定される。
【0035】
(A3)sin信号及びcos信号の双方がLoレベルであるとき。このとき、モータ31の回転角θは第3象限に該当する旨判定される。
(A4)sin信号がLoレベルかつcos信号がHiレベルであるとき。このとき、モータ31の回転角θは第4象限に該当する旨判定される。
【0036】
カウント方向判断部73は、象限検出部72により判定された今回の象限と前回の象限とを比較する。カウント方向判断部73は、今回の象限が前回の象限に対して変化していれば左回転検出フラグまたは右回転検出フラグをオンする。たとえば第1象限から第2象限への変化など、象限が反時計方向へ変化している場合、左回転検出フラグはオン、右回転検出フラグはオフされる。また、第1象限から第4象限への変化など、象限が時計方向へ変化している場合、左回転検出フラグをオフ、右回転検出フラグをオンする。象限が変化していない場合、左回転検出フラグも右回転検出フラグも共にオフされる。なお、カウント方向判断部73が正常である場合、左回転検出フラグ及び右回転検出フラグの双方がオンされることはない。左回転検出フラグ及び右回転検出フラグの双方がオンされる場合、異常を示す状態フラグがオンされる。
【0037】
以上のように、第1回転方向判定部62は回転角センサ52により生成される電気信号(sin信号及びcos信号)をモータ31の左回転検出フラグ及び右回転検出フラグに変換する。なお、第2回転方向判定部63は第1回転方向判定部62と同様の構成であるため、その重複した説明を割愛する。
【0038】
カウンタ64は第1回転方向判定部62の状態フラグに基づきカウント値を更新する。すなわちカウンタ64は、左回転検出フラグがオンされているときにはインクリメント(カウント値を1だけ増加)、右回転検出フラグがオンされているときにはデクリメント(カウント値を1だけ減算)させる。なお、左回転検出フラグまたは右回転検出フラグは象限が変化したときにオンされるため、カウント値は回転角θが90度変化するごとに更新される。
【0039】
図2に示すように、第2の機能部分は、比較部65及び異常検出部66を有している。
比較部65は第1回転方向判定部62の状態フラグと第2回転方向判定部63の状態フラグとを比較し、これら状態フラグが互いに一致しているか否かを判定する。具体的には、比較部65は、第1回転方向判定部62の左回転検出フラグと第2回転方向判定部63の左回転検出フラグとを比較する。また比較部65は、第1回転方向判定部62の右回転検出フラグと第2回転方向判定部63の右回転検出フラグとを比較する。比較部65は、第1回転方向判定部62の左回転検出フラグと第2回転方向判定部63の左回転検出フラグが一致しないとき、その旨示す状態フラグをオンする。また比較部65は、第1回転方向判定部62の右回転検出フラグと第2回転方向判定部63の右回転検出フラグが一致しないとき、その旨示す状態フラグをオンする。
【0040】
異常検出部66はカウンタ64のカウント値(今回値及び前回値)ならびに第1回転方向判定部62および第2回転方向判定部63の状態フラグ(左回転検出フラグ及び右回転検出フラグ)の状態に基づき、カウント値の異常を検出する。異常がない場合は、異常検出部66は、絶対操舵角θsを計算する補助となるデータとして、IGオン時に今回値をECU40に出力する。すなわち、ECU40にIGオフする直前に記録された絶対操舵角θsと、IGオン時に回転角センサ52から得られる回転角θと、カウント値から得られる操舵角の変化量とを考慮して、ECU40はIGオン後の最初の絶対操舵角θsを演算する。
【0041】
具体的には、異常検出部66ではつぎの4つの場合に異常を検出する。異常検出部66は異常が検出されるとき、その旨示す状態フラグをオンする。
(B1)左回転検出フラグがオン、右回転検出フラグがオフの場合にカウント値の今回値と前回値との間に定められた数値差があるとき、かつ今回値が前回値より大きいとき。
【0042】
(B2)左回転検出フラグがオフ、右回転検出フラグがオンの場合にカウント値の今回値と前回値に差があるとき、かつ今回値が前回値より小さいとき。
(B3)左回転検出フラグがオフ、右回転検出フラグがオフの場合に、今回値と前回値が一致しないとき。
【0043】
(B4)左回転検出フラグがオン、右回転検出フラグもオンのとき。
通信インターフェース67は、IGオン時に、カウント値、状態フラグ及び回転角センサ52で出力されるモータ31の回転角θの情報をECU40に送信する。
【0044】
ECU40は、IGオンの間にのみ起動する。これはIGオフ時におけるバッテリの電力の消費を抑えるためである。IGオンの間、ECU40は通信インターフェース67を介して各種の情報、すなわちカウント値、状態フラグ及び回転角センサ52で出力される絶対操舵角θsに関連する情報をそれぞれ取り込む。ただし、補助回路53はIGオンの間に常に働いている必要はなく、補助回路53から得られるカウント値および状態フラグ等はIGオン直後のみ得られるようにしてもよい。
【0045】
IGオンのときには、回転角センサ52、補助回路53及びECU40等のすべての構成に給電される。ただし、補助回路53はIGオン時に常時給電されていなくてもよい。そのため、まず回転角センサ52に給電されて、モータ31の回転角θに対応した電気信号が出力される。回転角センサ52の出力に対応して、カウンタユニット54はモータ31の回転方向、カウント値及び状態フラグを出力する。そして、回転角センサ52の出力及びカウンタユニット54の出力は、通信インターフェース67を介して、IGオン時にECU40に送信され、ECU40はこれらの出力より絶対操舵角θsを演算する。
【0046】
IGオフ時には一部の構成のみが給電される。すなわち、回転角センサ52、増幅器61、第1回転方向判定部62、第2回転方向判定部63およびカウンタ64に給電される。ECU40や通信インターフェース67には給電されない。そのため、回転角センサ52で出力されるモータ31の回転角θに対応した電気信号は、カウンタ64にカウント値の今回値と前回値として記録される。そのため、IGオフ時にはECU40には送信されない。
【0047】
つぎに、EPS10の動作を説明する。
通常、IGオンのとき、ECU40は回転角センサ52により生成される電気信号(sin信号及びcos信号)に基づきモータ31の回転角θ、ひいては絶対操舵角θsを演算する。ECU40は操舵トルクτ及び絶対操舵角θsに基づき、必要とされるアシスト力を演算し、当該アシスト力が操舵機構20に付与されるようにモータ31に対する給電を制御する。
【0048】
IGオフされたとき、カウンタ64は、IGオフ時であっても第1回転方向判定部62によって判定されるモータ31の回転方向に従って、カウント値を更新する。そのため、IGオフ中に、ステアリングホイール21を動かす等の絶対操舵角θsに変化があった場合であっても、その変化を監視する。
【0049】
IGオフ後にIGオンされたとき、比較部65により回転方向が一致せず、異常を示す状態フラグが検出された場合、正常な状態フラグが検出されるまで絶対操舵角θsの正しい値が検出できないため、絶対操舵角θsを利用するEPS10の使用を停止する。絶対操舵角θsがわかっていない状態で、たとえば0度なのか360度なのかわからない状態でEPS10へ絶対操舵角θsが使用されれば誤作動が起こりうるためである。IGオン時に正常な状態フラグが検出された場合、IGオフ直前に得られた絶対操舵角θsと、回転角センサ52から得られる回転角θと、カウンタ値とを用いて、ECU40は絶対操舵角θsの正しい値を演算する。そして、ECU40は絶対操舵角θsを利用して装置を制御する。
【0050】
以上説明したステアリング装置によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)カウンタ64の前回値と今回値を比較することで、1つのカウンタ64からカウンタ64を冗長化することができる。2つのカウンタ64を設け、これらのカウント値を比較して一致するかどうかを確かめることも考えられるものの、1つのカウンタ64においてカウント値の今回値と前回値を比較するほうが、異常を検出するための処理時間をより短縮することができる。すなわち、2つのカウンタ64のカウント値を比較する場合、2つのカウンタ64を比較する構成は、2つのカウンタ64のデータを収集してから、これらデータが一致するかどうかを確かめるため、2倍のデータを収集する時間が必要となる。これに対し、カウンタ64の前回値及び現在値を比較する場合は、カウンタ64のみからデータを収集すればよいので、2倍のデータを収集する必要がない。その結果として、1つのカウンタ64から冗長化を行った場合、2つのカウンタ64から冗長化を行った場合と比べて、異常を検出するための処理時間をより短くすることができる。また、カウンタ64を2つ用いて比較する場合と比べて、カウンタ64を1つ用いるだけでよいため、補助回路53内の構成の簡素化や部材点数を減らすことが可能となる。また簡易な構成のため、製造コストのいっそうの削減が期待できる。
【0051】
(2)IGオフ時にはECU40に電力を供給せずに、モータ31の回転方向、カウント値及び状態フラグをカウンタユニット54により記録するため、バッテリ消費を抑制することができる。そして、IGオン時にはECU40に電力が供給されて、ECU40はIGオフ時にカウンタユニット54によりカウントされたカウント値と回転角センサ52により生成される電気信号(sin信号、cos信号)から、より正確な絶対操舵角θsを演算する。結果として、IGオフ中においても、バッテリの消費を抑制しつつ、絶対操舵角θsを監視できる。
【0052】
(3)第1回転方向判定部62および第2回転方向判定部63から操舵軸の回転方向を判定することができる。そして、前記回転方向とカウンタ64の過去値及び今回値を用いた異常検出を行うことができる。また、複数の第1回転方向判定部62および第2回転方向判定部63によりさらに比較部65を設けることができ、より確実な絶対操舵角を得ることができる。
【0053】
(4)今回値とその直近の過去値である前回値を用いて異常検出を行うことにより、よりタイムラグが少なく最新の状態での異常を検出することができる。
(5)間欠的に回転角センサ52及び補助回路53が駆動することにより、常時駆動している場合よりもバッテリの消費をより低減することができる。
【0054】
なお、前記実施の形態は、次のように変更してもよい。なお、以下の他の実施の形態は、技術的に矛盾しない範囲において互いに組み合わせることができる。
・本例では電動パワーステアリング装置として実施したが、油圧式パワーステアリング装置であってもよいし、ステア・バイ・ワイヤ(SBW)であってもよい。また、ECU40により算出される絶対操舵角θsを、ブレーキ、バックガイド及び車両安定制御システムなど、絶対操舵角θsを使用する他の車載システムで共用してもよい。また、本例はノンパワーステアリング装置にも適用可能である。この場合、ステアリングの操作を補助するための制御は実行されないのでステアリング用のECU40は必ずしも設ける必要はない。回転角センサ52及び補助回路53はそのままに、絶対操舵角θsの演算はステアリングシステム以外の他の車載システムの制御装置(ECU)により行うようにしてもよい。
【0055】
・本例では、モータ31の回転軸31aの回転角θの変化を回転角センサ52で読み取ることで、絶対操舵角θsを演算していたが、ステアリングシャフト22の回転角を回転角センサ52で読み取るようにしてもよい。
【0056】
・本例では、絶対操舵角θsに関連する情報を検出する位置検出器として、モータ31の回転軸31aの回転角θを検出する回転角センサ52を用いているが、ラックシャフト23の軸方向の移動量を検出するポテンショメータを採用してもよい。
【0057】
・本例では、回転角センサ52としてMRセンサを採用したが、ホールセンサであってもよい。他にもたとえば、磁気インピーダンス素子、ファラデー素子や超伝導量子干渉素子(SQUID素子)であってもよい。また、回転角センサ52として磁気センサ以外にも、超音波センサやエンコーダを採用してもよい。
【0058】
・本例では、位置検出器としての回転角センサ52をコラムシャフト22aに設けたが、ステアリングシャフト22のどの部分であってもよい。また、絶対操舵角θsに関連する情報としてラックシャフト23の軸方向の移動量を使用する場合、ラックシャフト23の軸方向の移動量を検出する位置検出器としてのポテンショメータをラックシャフト23に設けてもよい。
【0059】
・本例では、カウンタ64の異常を検出するために、カウント値の前回値と今回値とを比較したが、過去の別の時点と比較してもよい。たとえば、絶対操舵角θsが変化していないことがわかっているために、前々回値を用いて比較するなどしてもよい。また、前々回、前回、今回とで比較しても良いし、必要があるならいつの時点からの時系列変化で比較してもよい。たとえば、回転角センサ52の間欠駆動に対して、異常検出部66での今回値と過去値の比較を頻繁にしなくてもよい場合、つまりカウント値の数回に1回の比較でよい場合には、前々回値と今回値との比較になる場合が考えられる。
【0060】
・本例において、補助回路53はIGオン中に常時給電されていてもよい。すなわち、IGオン中にも補助回路53に常時給電されることで、カウント値は更新される。そのため、ECU40はIGオフの直前に得られる絶対操舵角θsを記録しなくてもよく、IGオン時に回転角センサ52から得られる回転角θとカウント値とを用いて、ECU40は絶対操舵角θsを演算する。
【0061】
・本例では、第1回転方向判定部62および第2回転方向判定部63を設けたが、歯車等に連動してカウントされる構成であってもよい。たとえば、モータ31にギアが取り付けられて、歯車がモータ31と連動して回転をしている場合に、歯車に取り付けられた機械的なカウンタ64を用いて自動的にカウントされる構成にしてもよい。すなわち、機械的なカウンタ64は歯車の回転に伴って、その歯車の歯が動くごとに機械的にカウント値を増加する構成であればよい。逆に、モータ31の回転方向が反対になれば、機械的にカウント値を減少する。このような構成であれば、第1回転方向判定部62および第2回転方向判定部63を設ける必要はない。
【0062】
・本例では、第1回転方向判定部62および第2回転方向判定部63を設けたが、これらを設けない構成であってもよい。たとえば、モータ31の回転方向は判定されていなくても、回転があったことを判定できればよい。回転があったと判定されたときに回転フラグをオン、回転がなかったと判定された場合に回転フラグがオフと出力されるとすると、異常検出部66では次の2つの場合に異常を検出する。
【0063】
(C1)回転フラグがオフの場合に、カウント値の今回値と過去値との間に定められた数値差があるとき。
(C2)回転フラグがオンの場合に、カウント値の今回値と過去値との間に定められた数値差がないとき。
【0064】
・本例では、第2回転方向判定部63、比較部65を設けたが、これらは必ずしも設ける必要はない。その場合、比較部65で第1回転方向判定部62および第2回転方向判定部63の異常を検出することはできなくなるが、異常検出部66でカウンタ64のカウント値の異常を検出できる。逆に第2回転方向判定部63を3つ以上の複数設けてもよい。その場合、第2回転方向判定部63を複数用いて比較する比較部65によって、それぞれ異常を検出することとなる。