特許第6413404号(P6413404)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6413404
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】電子機器、位置推定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/30 20060101AFI20181022BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20181022BHJP
【FI】
   G01C21/30
   G01C21/26 P
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-139824(P2014-139824)
(22)【出願日】2014年7月7日
(65)【公開番号】特開2016-17804(P2016-17804A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】小野澤 将
(72)【発明者】
【氏名】松本 康佑
(72)【発明者】
【氏名】八幡 尚
(72)【発明者】
【氏名】宮本 直知
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 佳嗣
【審査官】 清水 康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−014666(JP,A)
【文献】 特開2006−153485(JP,A)
【文献】 特開2013−079967(JP,A)
【文献】 特開2006−170879(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/141199(WO,A1)
【文献】 特開2015−001520(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0005979(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/26 − 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
現在位置を取得する位置取得手段と、
地図データにおけるリンクの隣接領域の属性を示すリンク属性に基づいて、前記現在位置を前記地図データ上の前記リンクへ補正する補正領域の範囲を設定する補正領域設定手段と、
前記位置取得手段によって取得された現在位置が前記補正領域内に属する場合に、該現在位置を前記リンク上の位置に補正する位置補正手段と、を備え、
前記補正領域設定手段は、当該電子機器の使用条件、及びユーザの行動推定結果、の少なくとも何れかに基づいて、前記補正領域の範囲を変更する、
とを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記補正領域設定手段は、前記リンク属性によって、前記補正領域の範囲を異なるものにすることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記位置補正手段は、前記位置取得手段によって取得された現在位置が前記補正領域外に属する場合に、前記現在位置が前記補正領域内に属していた過去の補正量に基づいて、前記現在位置を補正することを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記位置補正手段は、前記現在位置が前記補正領域内に属していた過去の補正量に基づいて前記現在位置を補正する場合に、前記現在位置が属する隣接領域の範囲内において前記現在位置を補正することを特徴とする請求項に記載の電子機器。
【請求項5】
電子機器で実行される位置推定方法であって、
現在位置を取得する位置取得ステップと、
地図データにおけるリンクの隣接領域の属性を示すリンク属性に基づいて、前記現在位置を前記地図データ上の前記リンクへ補正する補正領域の範囲を設定する補正領域設定ステップと、
前記位置取得ステップにおいて取得された現在位置が前記補正領域内に属する場合に、該現在位置を前記リンク上の位置に補正する位置補正ステップと、を含み、
前記補正領域設定ステップは、前記電子機器の使用条件、及びユーザの行動推定結果、の少なくとも何れかに基づいて、前記補正領域の範囲を変更する、
とを特徴とする位置推定方法。
【請求項6】
電子機器を制御するコンピュータに、
現在位置を取得する位置取得機能と、
地図データにおけるリンクの隣接領域の属性を示すリンク属性に基づいて、前記現在位置を前記地図データ上の前記リンクへ補正する補正領域の範囲を設定する補正領域設定機能と、
前記位置取得機能によって取得された現在位置が前記補正領域内に属する場合に、該現在位置を前記リンク上の位置に補正する位置補正機能と、を実現させ、
前記補正領域設定機能は、前記電子機器の使用条件、及びユーザの行動推定結果、の少なくとも何れかに基づいて、前記補正領域の範囲を変更する、
とを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置を推定可能な電子機器、位置推定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スマートフォンと呼ばれる携帯型の電子機器が広く利用されている。このような携帯型の電子機器は加速度センサ、地磁気センサ、GPS(Global Positioning System)等を備えており、各種センサやGPS等に基づいて取得した位置情報、地図データ及び設定されたルート情報に基づいて、マップマッチングを行い、現在位置を表示することができる。
一方、近年、スマートフォンの機能を腕時計型の電子機器に実装した機器(いわゆるスマートウォッチ)が開発されている。
例えば、特許文献1には、位置情報取得機能を備えた腕時計型コンピュータに関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−033334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような現在位置を表示する従来の技術において、GPS等を利用して取得された現在位置のデータには、誤差が含まれることから、地図上に現在位置を表示する場合、現在位置のデータから最も近い地図データ上の道路等のリンクに位置を補正している。
しかしながら、スマートフォン等を携帯したユーザは自動車等と異なり、道路等のリンク上を移動しない場合もある。そのため、現在位置のデータから最も近いリンクに位置を補正すると、必ずしも適切な位置の表示を行うことができない。
このように、従来の技術においては、高い精度で位置を推定することが困難であった。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、より高い精度で位置を推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様の電子機器は、
電子機器であって、
現在位置を取得する位置取得手段と、
地図データにおけるリンクの隣接領域の属性を示すリンク属性に基づいて、前記現在位置を前記地図データ上の前記リンクへ補正する補正領域の範囲を設定する補正領域設定手段と、
前記位置取得手段によって取得された現在位置が前記補正領域内に属する場合に、該現在位置を前記リンク上の位置に補正する位置補正手段と、を備え、
前記補正領域設定手段は、当該電子機器の使用条件、及びユーザの行動推定結果、の少なくとも何れかに基づいて、前記補正領域の範囲を変更する、
とを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、より高い精度で位置を推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の電子機器の一実施形態としてのリスト端末の構成を示す図であり、図1(a)は外観構成図、図1(b)は、ハードウェア構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態における位置推定方法の概略を示す概念図である。
図3図1のリスト端末の機能的構成のうち、位置推定処理を実行するための機能的構成を示す機能ブロック図である。
図4】地図情報記憶部のデータ構造を示す概念図である。
図5】リンクLIのリンク属性が示す補正領域の範囲を示す模式図である。
図6図3の機能構成を有する図1のリスト端末が実行する位置推定処理の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0010】
[ハードウェア構成]
次に、本実施形態におけるリスト端末1のハードウェア構成について図1を参照して説明する。
図1は、本発明の電子機器の一実施形態としてのリスト端末1の構成を示す図であり、図2(a)は外観構成図、図2(b)は、ハードウェア構成を示すブロック図である。
図2(a)に示すように、リスト端末1は、腕時計型に構成され、スマートフォンに類する機能を備えた電子機器である。
また、図2(b)に示すように、リスト端末1は、制御部11と、センサユニット12と、入力部13と、LCD(Liquid Crystal Display)14と、時計回路15と、ROM(Read Only Memory)16と、RAM(Read Access Memory)17と、GPSアンテナ18と、GPSモジュール19と、無線通信用アンテナ20と、無線通信モジュール21と、ドライブ22とを備えている。
【0011】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置によって構成され、リスト端末1全体の動作を制御する。例えば、制御部11は、位置推定処理(後述)のためのプログラム等、ROM16に記録されているプログラムに従って各種の処理を実行する。
センサユニット12は、3軸加速度センサ、磁気センサ、気圧センサあるいは気温センサ等の各種センサを備えている。
【0012】
入力部13は、各種釦やLCD14の表示領域に積層される静電容量式または抵抗膜式の位置入力センサ等で構成され、ユーザの指示操作に応じて各種情報を入力する。
LCD14は、制御部11の指示に従って画像を出力する。例えば、LCD14は、各種画像やユーザインターフェースの画面を表示する。本実施形態においては、LCD14に入力部13の位置入力センサが重畳して配置され、タッチパネルが構成されている。
時計回路15は、システムクロックあるいは発振器により生成される信号から時刻信号を生成し、現在時刻を出力する。
【0013】
ROM16は、制御部11で実行される制御プログラム等の情報を格納する。
RAM17は、制御部11が各種処理を実行する際のワークエリアを提供する。
GPSアンテナ18は、GPSにおける衛星から発信される電波を受信して電気信号に変換し、変換した電気信号(以下、「GPS信号」と称する。)をGPSモジュール19に出力する。
GPSモジュール19は、GPSアンテナ18から入力されたGPS信号に基づいて、リスト端末1の位置(緯度、経度、高度)及びGPSによって示される現在時刻を検出する。また、GPSモジュール19は、検出した位置及び現在時刻を示す情報を制御部11に出力する。
【0014】
無線通信用アンテナ20は、無線通信モジュール21によって利用される無線通信に対応した周波数の電波を受信可能なアンテナであり、例えばループアンテナやロッドアンテナによって構成される。無線通信用アンテナ20は、無線通信モジュール21から入力された無線通信の電気信号を電磁波として送信したり、受信した電磁波を電気信号に変換して無線通信モジュール21に出力したりする。
無線通信モジュール21は、制御部11の指示に従って、無線通信用アンテナ20を介して他の装置に信号を送信する。また、無線通信モジュール21は、他の装置から送信された信号を受信し、受信した信号が示す情報を制御部11に出力する。
ドライブ22には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、あるいは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア31が適宜装着される。リムーバブルメディア31は、画像のデータ等の各種データを記憶することができる。
【0015】
ここで、本実施形態における位置推定方法の概略について説明する。
図2は、本実施形態における位置推定方法の概略を示す概念図である。
【0016】
図2(a)においては、地図上の道路に相当するリンクLI1と、リンクLI1に隣接する左領域AL1と、リンクLI1に隣接する右領域AR1とが示されている。左領域AL1は公園であり、右領域AR1は断崖である。なお、ここでは、リスト端末1を携帯するユーザが、図中の左から右にリンクを進行するものとする。
自動車による移動においてナビゲーションを行う場合、自動車が道路のない公園内や断崖を移動することは通常想定されない。そのため、自動車の現在位置を推定する際に、取得された自動車の現在位置が公園(左領域AL1)や断崖(右領域AR1)に位置する場合には、リンクLI1に現在位置が補正される。
一方、歩行や自転車等による移動においては、道路のない公園内を移動する場合がある。また、歩行や自転車等による移動の場合においても、断崖を移動することは通常想定されない。そのため、歩行や自転車等による移動の場合において、取得された現在位置が現在位置E1である場合のように、公園内に位置するとき、リスト端末1は、現在位置を現在位置E1のままとしてリンク上への補正を行わないことにより、高い精度で位置を推定できる。これに対し、取得された現在位置が現在位置E2である場合のように、断崖に位置するとき、リスト端末1は、現在位置を現在位置E2からリンク上の位置に補正することにより、高い精度で位置を推定できる。
【0017】
また、図2(b)には、地図上の道路に相当するリンクLI2と、リンクLI2に隣接する左領域AL2と、リンクLI2に隣接する右領域AR2とが示されている。左領域AL2は公園であり、右領域AR2はビルである。
歩行や自転車等による移動の場合は、上述のように道路のない公園内を移動することがある。しかし、公園の開園時間外の時間帯は、歩行や自転車等による移動の場合であっても、公園内を移動することは通常想定されない。そのため、歩行や自転車等による移動の場合において、公園の開園時間外の時間帯では、リスト端末1は、現在位置を現在位置E3からリンク上の位置に補正することにより、高い精度で位置を推定できる。これに対し、公園の開園時間内の時間帯では、リスト端末1は、現在位置を現在位置E3からリンク上の位置に補正しないことにより、高い精度で位置を推定できる。
【0018】
また、歩行による移動の場合は、ビルの出入口から進入してビル内を移動することが想定される。一方、自転車による移動の場合や、歩行による移動であってもビルの出入口から進入していない場合は、ビル内を移動することは通常想定されない。そのため、自転車による移動の場合や、歩行による移動であってもビルの出入口から進入したことが推定されない場合において、リスト端末1は、現在位置E4をリンク上の位置に補正することにより、高い精度で位置を推定できる。これに対し、歩行による移動の場合であって、ビルの出入口から進入したことが推定される場合、リスト端末1は、現在位置E4をリンク上の位置に補正しないことにより、高い精度で位置を推定できる。
【0019】
[機能的構成]
次に、リスト端末1の機能的構成のうち、位置推定処理を実行するための機能的構成について説明する。
図3は、図1のリスト端末1の機能的構成のうち、位置推定処理を実行するための機能的構成を示す機能ブロック図である。
位置推定処理とは、取得したリスト端末1の現在位置を、リンク周辺の領域の情報に基づいて、リンク上の位置へ補正するか否か判定し、補正すると判定された場合に現在位置をリンク上の位置へ補正する一連の処理である。
【0020】
位置推定処理が実行される場合には、図3に示すように、制御部11において、位置取得部51と、リンク特定部52と、リンク属性処理部53と、位置補正部54と、表示制御部55とが機能する。また、ROM16の一領域には、地図情報記憶部71が設けられる。
【0021】
地図情報記憶部71は、地図情報が格納されたデータベースを記憶している。
図4は、地図情報記憶部71のデータ構造を示す概念図である。
図4に示すように、地図情報記憶部71には、地図を構成する道路に相当するリンク情報が記憶されている。
リンク情報は、リンクの起点及び終点(ノード)における緯度・経度に関する情報、リンクの距離に関する情報、リンクが延びる方位に関する情報及びリンク属性が記憶されている。
リンク属性には、リンクの隣接領域(リンクの始点から終点を見たときの左領域と右領域)の情報が含まれている。リンク属性は、それぞれの領域について、現在位置をリンク上の位置に補正する補正領域と、所定の条件に適合した場合に補正領域を変更(拡大または縮小)する拡大縮小条件とを含んでいる。
【0022】
図3に戻り、位置取得部51は、リスト端末1の現在位置を取得する。
具体的には、位置取得部51は、GPSモジュール19から取得した位置情報及びセンサユニット12から取得した移動距離に基づいて、リスト端末1の現在位置を取得する。
【0023】
リンク特定部52は、位置取得部51が取得した現在位置に基づいて、現在位置のリンク情報を特定する。
具体的には、リンク特定部52は、位置取得部51が取得した現在位置近傍のリンク情報を地図情報記憶部71から取得する。リンク特定部52は、取得したリンク情報のうち、現在位置の最近傍にあるリンクのリンク情報を、現在位置のリンク情報として特定する。
【0024】
リンク属性処理部53は、リンク特定部52が特定した現在位置のリンク情報に含まれるリンク属性に基づいて、リンクへの補正領域を特定する。
具体的には、リンク属性処理部53は、リンク特定部52が特定した現在位置のリンク情報に含まれるリンク属性を取得する。リンク属性処理部53は、リスト端末1の使用条件とリンク属性に含まれる拡大縮小条件とが適合するかを判定する。リンク属性処理部53は、使用条件と拡大縮小条件とが適合する場合に、補正領域の範囲を変更する。
ここで、使用条件とは、リスト端末1が使用されている各種条件であり、例えば、時刻、移動手段または移動経路が含まれる。拡大縮小条件が、使用条件と適合することにより、補正領域の範囲が変更される。
【0025】
例えば、リンク属性において、隣接領域が公園であることが示されている場合、移動手段が歩行であれば、公園の中を移動している可能性が高いため、リンクに補正する必要はなく、補正領域の範囲を無くすか縮小させる。これに対して、移動手段が車であった場合には、公園の中を移動している可能性は低くなるため、補正領域の範囲を広くして、現在位置がリンク上に補正され易くなるようにする。また、隣接領域が断崖等、移動しないことが明らかな領域である場合には、その領域全域を補正領域としてもよい。
また、リンク属性処理部53は、ユーザの行動を推定し、行動推定の結果に応じて、補正領域の範囲を変更する。例えば、リンク属性において、隣接領域が建物であることが示されている場合、入り口付近で所定時間停止したという行動推定結果が得られた場合、その建物に進入した可能性が高いことから、補正領域の範囲を縮小する。
【0026】
ここで、リンク属性処理部53における補正領域の範囲の変更について説明する。
図5は、リンクLIのリンク属性が示す補正領域の範囲を示す模式図である。
図5においては、リンクLIのリンク属性に含まれる、左領域LAの補正領域H1及び右領域RAの補正領域H2とがそれぞれ図示されている。また、所定の時刻における現在位置P1と現在位置P2とが図示されている。
補正領域H1は、図4に示す地図情報記憶部71のリンク属性に含まれる「左 1m」という情報に基づくものである。また、補正領域H2は、図4に示す地図情報記憶部71のリンク属性に含まれる「右 20m」という情報に基づくものである。
現在位置P1は、補正領域H1の範囲に含まれていないため、後述の位置補正部54により補正されず、現在位置P1のまま後述の表示制御部55によって表示される。他方、現在位置P2は、補正領域H2の範囲に含まれているため、後述の位置補正部54によりリンク上の位置に補正されて、リンク上の位置が後述の表示制御部55によって表示される。
【0027】
補正領域H1には、「時間 22:00〜5:00→20m」という拡大縮小条件が対応付けられている。リンク属性処理部53は、例えば、使用条件において現在時刻が「23:00」である場合には、補正領域H1の範囲(幅)「1m」を「20m」に変更する。
補正領域H2には、「事前行動 停止して進入→1m」という拡大縮小条件が対応付けられている。リンク属性処理部53は、リスト端末1が所定時間(例えば3秒)停止後に補正領域H2に侵入した場合に、補正領域H2の範囲(幅)「20m」を「1m」に変更する。このように、リンク属性処理部53は、ユーザの行動推定の結果に応じて、補正領域の範囲を変更する。
【0028】
リンク属性処理部53による補正領域H1の範囲の変更により、現在位置P1は、補正領域H1の範囲に含まれることとなるため、後述の位置補正部54によりリンク上の位置に補正されて、リンク上の位置が後述の表示制御部55によって表示される。他方、リンク属性処理部53による補正領域H2の範囲の変更により、現在位置P2は、補正領域H2の範囲に含まれないこととなるため、後述の位置補正部54により補正されず、現在位置P2のまま後述の表示制御部55によって表示される。
【0029】
図3に戻り、位置補正部54は、補正領域に基づいて現在位置をリンク上の位置に補正する。
具体的には、位置補正部54は、リンク属性処理部53による処理を経たリンク属性に含まれる補正領域に、現在位置が含まれるか否かを判定する。位置補正部54は、現在位置が補正領域に含まれる場合に、リンク上における現在位置から最近傍の位置に現在位置を補正する。
【0030】
また、位置補正部54は、現在位置が補正領域に含まれない場合に、リスト端末1が過去に補正領域に属していた際にリンク上の位置へ補正された補正量を参照して、現在位置を補正する。これにより、取得される現在位置が含むと推定される誤差を軽減して、より適切な現在位置を推定することができる。
さらに、このとき、位置補正部54は、補正後の現在位置が現在の隣接領域から逸脱しないよう、補正量を制限する。即ち、現在位置が補正領域の範囲外となった場合に、現在属している隣接領域内において、現在位置の補正が行われる。これにより、補正後の現在位置が不適切な位置となることを抑制できる。
表示制御部55は、位置補正部54による処理を経た現在位置を地図上に重畳して、LCD14に表示させる。
【0031】
[動作]
次に、動作を説明する。
図6は、図3の機能構成を有する図1のリスト端末1が実行する位置推定処理の流れを説明するフローチャートである。
位置推定処理は、リスト端末1の入力部13において、ユーザの位置推定処理開始の操作を受け付けることにより開始され、ユーザの終了操作を受け付けるまで繰り返し実行される。
【0032】
位置推定処理が開始されると、ステップS1において、位置取得部51は、リスト端末1の現在位置を取得する。
【0033】
ステップS2において、リンク特定部52は、地図情報記憶部71を参照して、現在位置の最近傍にあるリンクのリンク情報を、現在位置のリンク情報として特定する。
【0034】
ステップS3において、リンク属性処理部53は、リンク特定部52が特定した現在位置のリンク情報に含まれるリンク属性を取得する。
【0035】
ステップS4において、リンク属性処理部53は、リスト端末1の使用条件とリンク属性に含まれる拡大縮小条件とが適合するか否かの判定を行う。
リスト端末1の使用条件とリンク属性に含まれる拡大縮小条件とが適合する場合、ステップS4においてYESと判定されて、処理はステップS5に移行する。
一方、リスト端末1の置かれた使用条件とリンク属性に含まれる拡大縮小条件とが適合しない場合、ステップS4においてNOと判定されて、処理はステップS6に移行する。
【0036】
ステップS5において、リンク属性処理部53は、リンク属性に含まれる補正領域の範囲を変更する。
【0037】
ステップS6において、位置補正部54は、補正領域に現在位置が含まれるか否かの判定を行う。
補正領域に現在位置が含まれる場合、ステップS6においてYESと判定されて、処理はステップS7に移行する。
一方、補正領域に現在位置が含まれない場合、ステップS6においてNOと判定されて、処理はステップS8に移行する。
【0038】
ステップS7において、位置補正部54は、リンク上における現在位置から最近傍の位置に現在位置を補正する。
【0039】
ステップS8において、表示制御部55は、現在位置を地図上に重畳してLCD14に表示させる。
ステップS8の処理の後、位置推定処理が繰り返される。
【0040】
このような処理により、現在位置の近傍のリンクに隣接する領域の属性に基づいて、現在位置をリンク上の位置に補正する補正領域の範囲が設定される。また、リスト端末1の使用条件及びリンク属性における拡大縮小条件に基づいて、補正領域の範囲が変更される。そして、取得された現在位置が補正領域の範囲に属するか否かに応じて、現在位置をリンク上の位置に補正するか否かが変更される。
したがって、より高い精度で位置を推定することが可能となる。
【0041】
以上のように構成されるリスト端末1は、位置取得部51と、リンク属性処理部53と、位置補正部54と、を備える。
位置取得部51は、地図上の現在位置を取得する。
リンク属性処理部53は、地図データにおけるリンクの隣接領域の属性を示すリンク属性に基づいて、現在位置を地図データ上のリンクへ補正する補正領域の範囲を設定する。
位置補正部54は、位置取得部51によって取得された現在位置が補正領域内に属する場合に、該現在位置をリンク上の位置に補正する。
これにより、リンクの隣接領域の属性に基づいて設定された補正領域の範囲に応じて、現在位置のリンクへの補正が行われる。
したがって、より高い精度で位置を推定することが可能となる。
【0042】
また、リンク属性処理部53は、リンク属性によって、補正領域の範囲を異なるものにする。
これにより、補正領域の範囲をより適切なものとできるため、より高い精度で位置を推定することが可能となる。
【0043】
また、リンク属性処理部53は、リスト端末1の使用条件に基づいて、補正領域の範囲を変更する。
これにより、使用条件の変化により生じる隣接領域の属性の変化に応じて、現在位置の補正を行うことができるため、より高い精度で位置を推定することが可能となる。
【0044】
また、リンク属性処理部53は、ユーザの行動推定結果に基づいて、補正領域の範囲を変更する。
これにより、ユーザの行動の相違に応じて、具体的に隣接領域に属するか否かの適否を判定できるため、より高い精度で位置を推定することが可能となる。
【0045】
また、位置補正部54は、位置取得部51によって取得された現在位置が補正領域外に属する場合に、現在位置が補正領域内に属していた過去の補正量に基づいて、現在位置を補正する。
これにより、現在位置が補正領域内に属していない場合であっても、取得された現在位置に含まれる誤差を軽減し、より高い精度で位置を推定することが可能となる。
【0046】
また、位置補正部54は、現在位置が補正領域内に属していた過去の補正量に基づいて現在位置を補正する場合に、現在位置が属する隣接領域の範囲内において現在位置を補正する。
これにより、現在位置が補正領域内に属していない場合に現在位置を補正する上で、不適切な位置に現在位置が補正されることを抑制し、より高い精度で位置を推定することが可能となる。
【0047】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0048】
上述の実施形態においては、拡大縮小条件の例として、リスト端末1の使用条件を例示したが、この使用条件には、リスト端末1のユーザの移動手段(歩行による移動か自転車による移動か等)が含まれる。さらに、ユーザの移動手段に応じて、移動軌跡の適否(速度に対する方向変化の適否等)を判定し、隣接領域に進入したか否かを判定することとしてもよい。
また、上述の実施形態において、隣接領域の属性として、隣接領域の入口の場所等、建物の構造を含むこととしてもよい。
【0049】
また、上述の実施形態においては、位置補正部54は、現在位置が補正領域に含まれる場合に、リンク上の位置に補正をしていたが、これに限られない。例えば、位置補正部54は、現在位置が補正領域に含まれる場合に、リンク上及び進入可能な隣接領域のうち、最近傍の地点に現在位置を補正してよい。
【0050】
また、上述の実施形態では、地図情報記憶部71はリスト端末1に記憶されているものとして説明したが、本発明は特にこれに限定されない。例えば、リスト端末1以外の電子機器が地図情報記憶部71を備え、リスト端末1は、無線通信モジュール21を介して、地図情報記憶部71の情報を取得してもよい。
【0051】
また、上述の実施形態では、位置補正部54等の機能的構成をリスト端末1が実行していたが、本発明は特にこれに限定されない。例えば、リスト端末1は、機能的構成が実行する処理の一部を外部のサーバに実行させて処理結果を取得することとしてもよい。
【0052】
また、上述の実施形態では、本発明が適用される電子機器として、リスト端末を例として説明したが、特にこれに限定されない。
例えば、本発明は、位置を推定する機能を有する電子機器一般に適用することができる。具体的には、例えば、本発明は、ノート型のパーソナルコンピュータ、タブレット型端末、ビデオカメラ、携帯型ナビゲーション装置、携帯電話機、スマートフォン、ポータブルゲーム機等に適用可能である。
【0053】
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
換言すると、図3の機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能がリスト端末1に備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に図3の例に限定されない。
また、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0054】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。
コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0055】
このようなプログラムを含む記録媒体は、ユーザにプログラムを提供するために装置本体とは別に配布される図1のリムーバブルメディア31により構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体等で構成される。リムーバブルメディア31は、例えば、磁気ディスク(フロッピディスクを含む)、光ディスク、または光磁気ディスク等により構成される。光ディスクは、例えば、CD−ROM(Compact Disk−Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk),Blu−ray(登録商標) Disc(ブルーレイディスク)等により構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini−Disk)等により構成される。また、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体は、例えば、プログラムが記録されている図1のROM16等で構成される。
【0056】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0057】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明はその他の様々な実施形態を取ることが可能であり、さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0058】
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
現在位置を取得する位置取得手段と、
地図データにおけるリンクの隣接領域の属性を示すリンク属性に基づいて、前記現在位置を前記地図データ上の前記リンクへ補正する補正領域の範囲を設定する補正領域設定手段と、
前記位置取得手段によって取得された現在位置が前記補正領域内に属する場合に、該現在位置を前記リンク上の位置に補正する位置補正手段と、
を備えることを特徴とする電子機器。
[付記2]
前記補正領域設定手段は、前記リンク属性によって、前記補正領域の範囲を異なるものにすることを特徴とする付記1に記載の電子機器。
[付記3]
前記補正領域設定手段は、当該電子機器の使用条件に基づいて、前記補正領域の範囲を変更することを特徴とする付記1または2に記載の電子機器。
[付記4]
前記補正領域設定手段は、ユーザの行動推定結果に基づいて、前記補正領域の範囲を変更することを特徴とする付記1から3のいずれか1つに記載の電子機器。
[付記5]
前記位置補正手段は、前記位置取得手段によって取得された現在位置が前記補正領域外に属する場合に、前記現在位置が前記補正領域内に属していた過去の補正量に基づいて、前記現在位置を補正することを特徴とする付記1から4のいずれか1つに記載の電子機器。
[付記6]
前記位置補正手段は、前記現在位置が前記補正領域内に属していた過去の補正量に基づいて前記現在位置を補正する場合に、前記現在位置が属する隣接領域の範囲内において前記現在位置を補正することを特徴とする付記5に記載の電子機器。
[付記7]
電子機器で実行される位置推定方法であって、
現在位置を取得する位置取得ステップと、
地図データにおけるリンクの隣接領域の属性を示すリンク属性に基づいて、前記現在位置を前記地図データ上の前記リンクへ補正する補正領域の範囲を設定する補正領域設定ステップと、
前記位置取得ステップにおいて取得された現在位置が前記補正領域内に属する場合に、該現在位置を前記リンク上の位置に補正する位置補正ステップと、
を含むことを特徴とする位置推定方法。
[付記8]
電子機器を制御するコンピュータに、
現在位置を取得する位置取得機能と、
地図データにおけるリンクの隣接領域の属性を示すリンク属性に基づいて、前記現在位置を前記地図データ上の前記リンクへ補正する補正領域の範囲を設定する補正領域設定機能と、
前記位置取得機能によって取得された現在位置が前記補正領域内に属する場合に、該現在位置を前記リンク上の位置に補正する位置補正機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0059】
1・・・リスト端末,11・・・CPU,12・・・ROM,13・・・RAM,14・・・バス,15・・・入出力インターフェース,16・・・撮像部,17・・・入力部,18・・・出力部,19・・・記憶部,20・・・通信部,21・・・ドライブ,31・・・リムーバブルメディア,51・・・位置取得部,52・・・リンク特定部,53・・・リンク属性処理部,54・・・位置補正部,55・・・表示制御部,71・・・地図情報記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6