特許第6413406号(P6413406)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6413406
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】蓄電素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/34 20060101AFI20181022BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20181022BHJP
   H01G 11/82 20130101ALI20181022BHJP
   H01G 11/16 20130101ALI20181022BHJP
   H01M 2/26 20060101ALI20181022BHJP
   H01M 2/32 20060101ALN20181022BHJP
【FI】
   H01M2/34 A
   H01G11/78
   H01G11/82
   H01G11/16
   H01M2/26 A
   !H01M2/32
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-140415(P2014-140415)
(22)【出願日】2014年7月8日
(65)【公開番号】特開2016-18658(P2016-18658A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 瞬
【審査官】 井原 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−068089(JP,A)
【文献】 特開2002−280054(JP,A)
【文献】 特開2002−289260(JP,A)
【文献】 特開平07−245094(JP,A)
【文献】 特開2005−339939(JP,A)
【文献】 特開2005−166584(JP,A)
【文献】 特開2001−319636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/34
H01G 11/16
H01G 11/78
H01G 11/82
H01M 2/26
H01M 2/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極及び負極を有する電極体と、前記電極体が収容される容器とを備える蓄電素子であって、
前記電極体と前記容器との間に配置される部材であって、絶縁性材料を含有した導電性部材を備え、
前記電極体の前記正極または前記負極と前記容器とは、前記導電性部材を介して電気的に接続され
前記導電性部材は、抵抗値が1Ω以上である
蓄電素子。
【請求項2】
前記導電性部材は、導電性の部材が所定の割合で混合された樹脂から形成されている
請求項1に記載の蓄電素子。
【請求項3】
前記導電性部材は、前記電極体と前記容器の長側面との間に配置される導電性フィルムである
請求項1または2に記載の蓄電素子。
【請求項4】
前記導電性部材は、
前記電極体の正極と前記容器とを電気的に接続しており、
前記電極体の正極に電気的に接続される正極集電体との距離の方が、前記電極体の負極に電気的に接続される負極集電体との距離よりも近くなるように配置されている
請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓄電素子。
【請求項5】
さらに、
前記導電性部材と前記電極体との間に配置される金属箔を備え、
前記導電性部材と前記電極体とは、前記金属箔を介して電気的に接続される
請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄電素子。
【請求項6】
前記金属箔は、前記電極体の正極に電気的に接続される正極集電体と前記電極体との間に配置されるとともに、前記電極体の最外周のセパレータと前記導電性部材との間に配置されている
請求項5に記載の蓄電素子。
【請求項7】
前記導電性部材は、前記電極体の正極に電気的に接続される正極集電体と前記容器との間に配置されるスペーサである
請求項1または2に記載の蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極及び負極を有する電極体と、当該電極体が収容される容器とを備える蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的な環境問題への取り組みとして、ガソリン自動車から電気自動車への転換が重要になってきている。このため、リチウムイオン二次電池などの蓄電素子を動力源に用いた電気自動車の開発が進められている。そして、このような蓄電素子においては、一般的に、正極及び負極を有する電極体と、当該電極体が収容される容器とを備えている。
【0003】
ここで、従来、当該蓄電素子において、容器の腐食を防ぐなどの理由から、容器を電極体の正極に電気的に接続し、当該容器を正極電位とする蓄電素子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−134709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の蓄電素子では、容器と電極体の正極とが導通しているため、当該容器が電極体の負極と短絡してしまった場合には、当該容器に大電流が流れてしまうという問題がある。つまり、電極体の正極と負極とが容器を介して短絡した場合には、当該容器に大電流が流れてしまう。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、電極体の正極と負極とが容器を介して短絡した場合でも、当該容器に大電流が流れるのを抑制することができる蓄電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る蓄電素子は、正極及び負極を有する電極体と、前記電極体が収容される容器とを備える蓄電素子であって、前記電極体と前記容器との間に配置される部材であって、絶縁性材料を含有した導電性部材を備え、前記電極体の前記正極または前記負極と前記容器とは、前記導電性部材を介して電気的に接続される。
【0008】
これによれば、蓄電素子において、電極体と容器とは、当該電極体と容器との間に配置された絶縁性材料を含有した導電性部材を介して、電気的に接続されている。ここで、当該導電性部材は、絶縁性材料を基材とした導電性を有する部材であるため、高抵抗の導電性部材である。このため、電極体の正極と負極とが容器を介して短絡した場合でも、電極体と容器とは高抵抗の導電性部材を介して電気的に接続されていることから、電極体から容器へ大電流が流れるのを抑制することができる。
【0009】
また、前記導電性部材は、導電性の部材が所定の割合で混合された樹脂から形成されていることにしてもよい。
【0010】
これによれば、当該導電性部材は、導電性の部材が所定の割合で混合された樹脂から形成されているため、導電性の部材を所定の割合で樹脂に混合することで、簡易に、当該導電性部材を形成することができる。
【0011】
また、前記導電性部材は、前記電極体と前記容器の長側面との間に配置される導電性フィルムであることにしてもよい。
【0012】
ここで、電極体と容器の短側面との間は、スペースが広く空いている場合が多く、そこに当該導電性部材を配置する場合には、当該導電性部材の厚さを厚くする必要があるため、当該導電性部材の重量アップやコストアップにつながる。これに対し、電極体は、容器の長側面に当接するように配置されるため、当該導電性部材を電極体と容器の長側面との間に配置することで、当該導電性部材として厚みの薄い導電性フィルムを用いることができる。
【0013】
また、前記導電性部材は、前記電極体の正極と前記容器とを電気的に接続しており、前記電極体の正極に電気的に接続される正極集電体との距離の方が、前記電極体の負極に電気的に接続される負極集電体との距離よりも近くなるように配置されていることにしてもよい。
【0014】
これによれば、当該導電性部材は、電極体の正極と電気的に接続されており、正極集電体との距離の方が負極集電体との距離よりも近くなるように配置されている。つまり、当該導電性部材は、電極体の正極と導通しているため、電極体の負極と導通しないように、負極側から離して配置されている。これにより、電極体の正極と負極とが当該導電性部材を介して短絡するのを抑制することができる。
【0015】
また、さらに、前記導電性部材と前記電極体との間に配置される金属箔を備え、前記導電性部材と前記電極体とは、前記金属箔を介して電気的に接続されることにしてもよい。
【0016】
これによれば、当該導電性部材と電極体との間に金属箔を配置することで、容易に、電極体と当該導電性部材とを電気的に接続することができる。
【0017】
また、前記金属箔は、前記電極体の正極に電気的に接続される正極集電体と前記電極体との間に配置されるとともに、前記電極体の最外周のセパレータと前記導電性部材との間に配置されていることにしてもよい。
【0018】
これによれば、正極集電体と電極体との間、かつ電極体の最外周のセパレータと当該導電性部材との間に金属箔を配置することで、容易に、電極体の正極と当該導電性部材とを電気的に接続することができる。
【0019】
また、前記導電性部材は、前記電極体の正極に電気的に接続される正極集電体と前記容器との間に配置されるスペーサであることにしてもよい。
【0020】
これによれば、当該導電性部材は、正極集電体と容器との間に配置されるスペーサであるため、正極集電体を介して電極体の正極と容器とを電気的に接続することで、容易に、電極体の正極と容器とを電気的に接続することができる。
【0021】
なお、本発明は、このような蓄電素子として実現することができるだけでなく、蓄電素子が備える当該導電性部材としても実現することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明における蓄電素子によれば、電極体の正極と負極とが容器を介して短絡した場合でも、当該容器に大電流が流れるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の形態に係る蓄電素子の外観を模式的に示す斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係る蓄電素子を分解した場合の各構成要素を示す分解斜視図である。
図3】本発明の実施の形態に係る電極体から導電性部材と金属箔とを分離させた場合の外観を示す斜視図である。
図4】本発明の実施の形態に係る蓄電素子を側方から見た場合の内部構成を示す平面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る導電性部材及び金属箔の正極側の構成及び配置を示す断面図である。
図6】本発明の実施の形態に係る導電性部材及び金属箔の負極側の構成及び配置を示す断面図である。
図7】本発明の実施の形態の変形例1に係る蓄電素子の構成を示す平面図である。
図8】本発明の実施の形態の変形例2に係る蓄電素子の構成を示す断面図である。
図9】本発明の実施の形態の変形例2の他の例に係る電極体の構成を示す斜視図である。
図10】本発明の実施の形態の変形例3に係る蓄電素子の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る蓄電素子について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0025】
(実施の形態)
まず、蓄電素子10の構成について、説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10の外観を模式的に示す斜視図である。また、図2は、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10を分解した場合の各構成要素を示す分解斜視図である。また、図3は、本発明の実施の形態に係る電極体140から導電性部材410と金属箔420とを分離させた場合の外観を示す斜視図である。
【0027】
蓄電素子10は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。なお、蓄電素子10は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。
【0028】
これらの図に示すように、蓄電素子10は、容器100と、正極端子200と、負極端子300とを備えている。また、容器100の内方には、正極集電体120と、負極集電体130と、電極体140と、導電性部材410と、金属箔420と、スペーサ510及び520とが収容されている。
【0029】
また、蓄電素子10の容器100の内部には電解液(非水電解液)などの液体が封入されているが、当該液体の図示は省略する。なお、容器100に封入される電解液としては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく様々なものを選択することができる。
【0030】
容器100は、矩形筒状で底を備える本体111と、本体111の開口を閉塞する板状部材である蓋体110とで構成されている。また、容器100は、電極体140、導電性部材410、金属箔420、スペーサ510及び520等を内部に収容後、蓋体110と本体111とが溶接等されることにより、内部を密封することができるものとなっている。なお、蓋体110及び本体111の材質は、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金など溶接可能な金属であるのが好ましい。
【0031】
電極体140は、正極と負極とセパレータとを備え、電気を蓄えることができる発電要素である。具体的には、電極体140は、正極と負極との間にセパレータが挟み込まれるように層状に配置されたものを全体が長円形状となるように巻回されて形成された巻回型の電極体である。なお、電極体140の形状は円形状または楕円形状でもよい。また、電極体140の形状は捲回型に限らず、平板状極板を積層した形状でもよい。
【0032】
正極は、アルミニウムまたはアルミニウム合金などからなる長尺帯状の導電性の金属箔である正極基材層の表面に、正極活物質層が形成された電極板である。なお、正極活物質層に用いられる正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。例えば、正極活物質として、LiMPO、LiMSiO、LiMBO(MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種又は2種以上の遷移金属元素)等のポリアニオン化合物、チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム等のスピネル化合物、LiMO(MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種又は2種以上の遷移金属元素)等のリチウム遷移金属酸化物等を用いることができる。
【0033】
負極は、銅または銅合金などからなる長尺帯状の導電性の金属箔である負極基材層の表面に、負極活物質層が形成された電極板である。なお、負極活物質層に用いられる負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。例えば、負極活物質として、リチウム金属、リチウム合金(リチウム−アルミニウム、リチウム−鉛、リチウム−錫、リチウム−アルミニウム−錫、リチウム−ガリウム、及びウッド合金等のリチウム金属含有合金)の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えば黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温焼成炭素、非晶質カーボン等)、金属酸化物、リチウム金属酸化物(LiTi12等)、ポリリン酸化合物などが挙げられる。
【0034】
ここで、電極体140は、正極と負極とが、セパレータを介して、巻回軸(本実施の形態ではX軸方向に平行な仮想軸)の方向に互いにずらして巻回されている。そして、正極及び負極は、それぞれのずらされた方向の端縁部に、活物質層が形成されていない部分(活物質層非形成部)を有している。
【0035】
具体的には、図2及び図3に示すように、電極体140は、巻回軸方向の一端(X軸マイナス方向の端部)に、正極の活物質層非形成部が積層された正極側端部140aを有し、巻回軸方向の他端(X軸プラス方向の端部)に、負極の活物質層非形成部が積層された負極側端部140bを有している。つまり、電極体140は、正極側の端部に正極側端部140aを有し、負極側の端部に負極側端部140bを有している。
【0036】
そして、電極体140は、正極側端部140aが正極集電体120に接合され、負極側端部140bが負極集電体130に接合されることで、正極集電体120及び負極集電体130に接合される。
【0037】
また、電極体140の周囲には、導電性部材410及び金属箔420が巻きつけられている。
【0038】
ここで、導電性部材410及び金属箔420は、長方形状のシート状の部材であり、電極体140に巻き付けられて配置されている。つまり、まず金属箔420が電極体140に巻き付けられ、電極体140に巻き付けられた金属箔420上に導電性部材410が巻き付けられて配置されている。導電性部材410及び金属箔420の詳細な説明については、後述する。
【0039】
正極端子200は、正極集電体120を介して、電極体140の正極に電気的に接続された電極端子であり、負極端子300は、負極集電体130を介して、電極体140の負極に電気的に接続された電極端子である。
【0040】
つまり、正極端子200及び負極端子300は、電極体140に蓄えられている電気を蓄電素子10の外部空間に導出し、また、電極体140に電気を蓄えるために蓄電素子10の内部空間に電気を導入するための金属製の電極端子である。また、正極端子200及び負極端子300は、電極体140の上方に配置された蓋体110に取り付けられている。
【0041】
具体的には、正極端子200は、リベットが蓋体110の貫通孔と正極集電体120の貫通孔とに挿入されて、かしめられることにより、正極集電体120とともに蓋体110に固定される。また、負極端子300は、リベットが蓋体110の貫通孔と負極集電体130の貫通孔とに挿入されて、かしめられることにより、負極集電体130とともに蓋体110に固定される。
【0042】
なお、正極端子200と蓋体110との間、正極集電体120と蓋体110との間、負極端子300と蓋体110との間、及び負極集電体130と蓋体110との間には、パッキン等も配置されているが、同図では省略して図示している。
【0043】
正極集電体120は、電極体140の正極(正極側端部140a)と容器100の本体111の側壁との間に配置され、正極端子200と電極体140の正極とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。なお、正極集電体120は、電極体140の正極基材層と同様、アルミニウムまたはアルミニウム合金などで形成されている。
【0044】
負極集電体130は、電極体140の負極(負極側端部140b)と容器100の本体111の側壁との間に配置され、負極端子300と電極体140の負極とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。なお、負極集電体130は、電極体140の負極基材層と同様、銅または銅合金などで形成されている。
【0045】
スペーサ510及び520は、電極体140と容器100との間に配置され、電極体140と容器100との間の空間を埋めるための絶縁性の部材である。
【0046】
具体的には、スペーサ510は、電極体140の正極側(X軸方向マイナス側)、つまり、電極体140の正極及び正極集電体120と容器100の本体111の側壁との間に配置されている。つまり、スペーサ510は、電極体140の正極及び正極集電体120と容器100の本体111の側壁との間の空間を埋めるための部材である。
【0047】
また、スペーサ520は、電極体140の負極側(X軸方向プラス側)、つまり、電極体140の負極及び負極集電体130と容器100の本体111の側壁との間に配置されている。つまり、スペーサ520は、電極体140の負極及び負極集電体130と容器100の本体111の側壁との間の空間を埋めるための部材である。
【0048】
さらに具体的には、スペーサ510は、正極集電体120のX軸方向マイナス側に、正極集電体120と容器100の本体111の側壁とで挟まれ、かつ当該側壁に沿って延びるように配置されている。また、スペーサ520は、負極集電体130のX軸方向プラス側に、負極集電体130と容器100の本体111の側壁とで挟まれ、かつ当該側壁に沿って延びるように配置されている。
【0049】
つまり、スペーサ510とスペーサ520とは、電極体140をX軸方向の両端から挟み込むように、電極体140の両端と容器100の本体111の両側壁との間に配置されている。
【0050】
ここで、スペーサ510、520は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、セラミック、及びそれらの複合材料などの絶縁性の材料で形成されている。つまり、スペーサ510、520は、電極体140、正極集電体120及び負極集電体130と容器100とを絶縁する。また、スペーサ510、520は、電極体140、正極集電体120及び負極集電体130と容器100との間のスペースを埋めることにより、電極体140、正極集電体120及び負極集電体130が容器100に対して振動しないように支持する。
【0051】
次に、導電性部材410及び金属箔420の構成及び配置について、詳細に説明する。
【0052】
図4は、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10を側方から見た場合の内部構成を示す平面図である。なお、同図は、容器100の本体111を透過して容器100の内部を示した図である。
【0053】
また、図5は、本発明の実施の形態に係る導電性部材410及び金属箔420の正極側の構成及び配置を示す断面図である。具体的には、同図は、図4に示された蓄電素子10の正極側(X軸方向マイナス側)をA−A断面で切断した場合の断面を示す図である。
【0054】
また、図6は、本発明の実施の形態に係る導電性部材410及び金属箔420の負極側の構成及び配置を示す断面図である。具体的には、同図は、図4に示された蓄電素子10の負極側(X軸方向プラス側)をB−B断面で切断した場合の断面を示す図である。
【0055】
これらの図に示すように、導電性部材410は、電極体140と容器100との間に配置される部材である。具体的には、導電性部材410は、電極体140と容器100の長側面との間、つまり、電極体140上に配置された金属箔420と容器100の本体111の長側面との間に配置されている。
【0056】
さらに具体的には、導電性部材410は、内面(電極体140側の面)が金属箔420の外面(容器100側の面)に当接し、外面(容器100側の面)が容器100の本体111の内面に当接して、配置されている。
【0057】
ここで、本実施の形態では、導電性部材410は、導電性フィルムである。つまり、導電性部材410は、絶縁性材料を含有した導電性を有する部材である。具体的には、導電性部材410は、導電性の部材が所定の割合で混合された樹脂から形成された高抵抗の導電性部材である。
【0058】
例えば、導電性部材410は、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンテレフタラート(PET)などの樹脂に、金属粒子などの導電性の部材を満遍なく混合させることで形成されたフィルム状のシートである。なお、導電性部材410の材質や混合割合は限定されず、高抵抗の導電性部材であればどのような材質や混合割合で形成されていてもかまわない。
【0059】
また、導電性部材410の抵抗値は1Ω以上が好ましい。この値よりも小さいと、短絡時に大電流が流れてしまうので好ましくない。
【0060】
また、導電性部材410は、正極集電体120と負極集電体130との間に配置されている。具体的には、導電性部材410は、電極体140の正極に電気的に接続される正極集電体120との距離の方が、電極体140の負極に電気的に接続される負極集電体130との距離よりも近くなるように配置されている。
【0061】
つまり、導電性部材410は、図5に示された正極集電体120との距離P1の方が、図6に示された負極集電体130との距離Q1よりも近くなるように(距離P1の方が距離Q1よりも小さくなるように)、配置されている。
【0062】
ここで、正極集電体120は、電極体140の正極側端部140aに接合されている。つまり、正極集電体120は、電極体140の正極側端部140aに沿って延びる長尺状の電極体接続部121、122を有している。また、正極側端部140aは、電極体140の巻回軸を中心にして二分された正極基材層の束である正極側端部141a、142aを有している。そして、電極体接続部121は正極側端部141aに接合され、電極体接続部122は正極側端部142aに接合されている。
【0063】
また、負極集電体130は、電極体140の負極側端部140bに接合されている。つまり、負極集電体130は、電極体140の負極側端部140bに沿って延びる長尺状の電極体接続部131、132を有している。また、負極側端部140bは、電極体140の巻回軸を中心にして二分された負極基材層の束である負極側端部141b、142bを有している。そして、電極体接続部131は負極側端部141bに接合され、電極体接続部132は負極側端部142bに接合されている。
【0064】
また、導電性部材410は、正極側のスペーサ510と負極側のスペーサ520との間に配置されている。つまり、導電性部材410は、スペーサ510との距離の方が、スペーサ520との距離よりも近くなるように配置されている。
【0065】
ここで、スペーサ510は、電極体140の正極側端部140a及び正極集電体120を覆うように配置されている。つまり、スペーサ510は、正極側端部141a及び142aに接合された電極体接続部121及び122を、両側から挟み込むように配置されている。なお、詳細には、スペーサ510は、正極集電体120を覆う金属箔420をさらに覆うように配置されている。また、スペーサ510は、容器100の本体111の内壁に当接して配置されている。
【0066】
また、スペーサ520は、電極体140の負極側端部140b及び負極集電体130を覆うように配置されている。つまり、スペーサ520は、負極側端部141b及び142bに接合された電極体接続部131及び132を、両側から挟み込むように配置されている。また、スペーサ520は、容器100の本体111の内壁に当接して配置されている。
【0067】
金属箔420は、導電性部材410と電極体140との間に配置される金属箔である。具体的には、金属箔420は、電極体140と容器100の長側面との間、つまり、電極体140と導電性部材410との間に配置されている。
【0068】
また、金属箔420は、端部が、正極集電体120とスペーサ510との間に配置されている。具体的には、金属箔420は、端部が、正極集電体120の電極体接続部121及び122の全体を覆うように、電極体接続部121及び122とスペーサ510との間に配置されている。つまり、金属箔420は、端部が、正極集電体120の電極体接続部121及び122と接続されている。
【0069】
さらに具体的には、金属箔420は、内面(電極体140側の面)が電極体140の外面と正極集電体120の電極体接続部121及び122とに当接し、外面(容器100側の面)が導電性部材410の内面(電極体140側の面)とスペーサ510とに当接して、配置されている。
【0070】
ここで、電極体140の外面にはセパレータが配置されているが、金属箔420は、正極集電体120の電極体接続部121及び122を介して、電極体140の正極と電気的に接続される。なお、金属箔420は、金属製の箔状部材であれば材質は限定されないが、アルミニウムまたはアルミニウム合金など、電極体140の正極基材層や正極集電体120と同等の材質であるのが好ましい。
【0071】
これにより、導電性部材410と電極体140とは、金属箔420と正極集電体120とを介して電気的に接続される。そして、導電性部材410は高抵抗の導電性部材であるため、電極体140と容器100とは、導電性部材410を介して電気的に接続される。具体的には、導電性部材410は、電極体140の正極と容器100とを電気的に接続する。
【0072】
また、金属箔420は、正極集電体120と負極集電体130との間に配置され、また、正極側のスペーサ510と負極側のスペーサ520との間に配置されている。なお、金属箔420は、負極集電体130とスペーサ520との間には配置されていない。このため、金属箔420は、導電性部材410と同様、正極集電体120との距離の方が負極集電体130との距離よりも近くなるように配置され、また、スペーサ510との距離の方が、スペーサ520との距離よりも近くなるように配置されている。
【0073】
以上のように、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10によれば、電極体140と容器100とは、電極体140と容器100との間に配置された導電性部材410を介して、電気的に接続されている。ここで、導電性部材410は、絶縁性材料を基材とした導電性を有する部材であるため、高抵抗の導電性部材である。このため、電極体140の正極と負極とが容器100を介して短絡した場合でも、電極体140と容器100とは高抵抗の導電性部材である導電性部材410を介して電気的に接続されていることから、電極体140から容器100へ大電流が流れるのを抑制することができる。
【0074】
また、導電性部材410は、導電性の部材が所定の割合で混合された樹脂から形成されているため、導電性の部材を所定の割合で樹脂に混合することで、簡易に、導電性部材410を形成することができる。
【0075】
また、電極体140と容器100の短側面との間は、スペースが広く空いている場合が多く、そこに導電性部材410を配置する場合には、導電性部材410の厚さを厚くする必要があるため、導電性部材410の重量アップやコストアップにつながる。これに対し、電極体140は、容器100の長側面に当接するように配置されるため、導電性部材410を電極体140と容器100の長側面との間に配置することで、導電性部材410として厚みの薄い導電性フィルムを用いることができる。
【0076】
また、導電性部材410は、電極体140の正極と電気的に接続されており、正極集電体120との距離の方が負極集電体130との距離よりも近くなるように配置されている。つまり、導電性部材410は、電極体140の正極と導通しているため、電極体140の負極と導通しないように、負極側から離して配置されている。これにより、電極体140の正極と負極とが導電性部材410を介して短絡するのを抑制することができる。
【0077】
また、導電性部材410と電極体140との間に金属箔420を配置することで、容易に、電極体140と導電性部材410とを電気的に接続することができる。
【0078】
(変形例1)
次に、上記実施の形態の変形例1について、説明する。
【0079】
図7は、本発明の実施の形態の変形例1に係る蓄電素子11の構成を示す平面図である。なお、同図は、蓄電素子11を側方から見た場合の内部構成を示す図であり、容器100の本体111を透過して容器100の内部を示している。
【0080】
上記実施の形態では、導電性部材410は、正極集電体120との距離の方が負極集電体130との距離よりも近くなるように配置されていることとした。しかし、本変形例では、同図に示すように、蓄電素子11が有する導電性部材411は、正極集電体120との距離の方が、負極集電体130との距離よりも遠くなるように配置されている。
【0081】
つまり、導電性部材411は、正極集電体120との距離P2の方が、負極集電体130との距離Q2よりも遠くなるように(距離P2の方が距離Q2よりも大きくなるように)、配置されている。
【0082】
なお、蓄電素子11が有する導電性部材411以外の構成においては、上記実施の形態における蓄電素子10が有する構成と同様であるため、説明は省略する。
【0083】
以上のように、本発明の実施の形態の変形例1に係る蓄電素子11によれば、上記実施の形態と同様の効果を奏する。特に、導電性部材411の面積を自由に変更可能であるため、電極体140と容器100との間の抵抗値を容易に制御することができる。
【0084】
(変形例2)
次に、上記実施の形態の変形例2について、説明する。
【0085】
図8は、本発明の実施の形態の変形例2に係る蓄電素子12の構成を示す断面図である。具体的には、同図は、蓄電素子12の正極側(X軸方向マイナス側)をXY平面に平行な平面で切断した場合の断面を示す図である。
【0086】
同図に示すように、蓄電素子12は、上記実施の形態における蓄電素子10の金属箔420に代えて、金属箔430を有している。なお、蓄電素子12が有する金属箔430以外の構成においては、上記実施の形態における蓄電素子10が有する構成と同様であるため、説明は省略する。
【0087】
金属箔430は、電極体140の正極に電気的に接続される正極集電体120と電極体140との間に配置されるとともに、電極体140の最外周のセパレータと導電性部材410との間に配置されている。
【0088】
具体的には、金属箔430は、電極体140の正極側端部140aの正極側端部141aと正極集電体120の電極体接続部121との間に配置され、正極側端部141a及び電極体接続部121とともに接合されている。また、金属箔430は、正極側端部140aの正極側端部142aと正極集電体120の電極体接続部122との間に配置され、正極側端部142a及び電極体接続部122とともに接合されている。
【0089】
また、上記実施の形態と同様に、電極体140の最外周にはセパレータが配置されており、金属箔430は、当該セパレータと導電性部材410との間に配置されている。
【0090】
これにより、上記実施の形態と同様に、電極体140の最外周がセパレータの場合において、金属箔430を介して、電極体140の正極と導電性部材410とを電気的に接続することができる。
【0091】
また、金属箔430は、電極体140と一体に形成されていてもよい。つまり、図9に示すように、金属箔430として電極体140の最外周の正極基材層を用いることで、電極体140の正極と導電性部材410とを電気的に接続することができる。図9は、本発明の実施の形態の変形例2の他の例に係る電極体140の構成を示す斜視図である。具体的には、同図は、巻回された電極体140の最外周を展開した状態を示す図である。
【0092】
つまり、図9に示すように、電極体140は、正極141、セパレータ142及び負極143を有している。そして、正極141は、電極体140の最外周に相当する部分に、正極活物質が塗布されていない正極基材層である金属箔430を有している。つまり、正極活物質を塗布することなく正極基材層を延長することで、金属箔430を有する正極141を形成することができる。
【0093】
これにより、電極体140が巻回された状態において金属箔430が最外周に位置するため、図8に示された構成と同様の構成を実現することができる。
【0094】
以上のように、本発明の実施の形態の変形例2に係る蓄電素子12によれば、上記実施の形態と同様の効果を奏する。特に、正極集電体120と電極体140との間、かつ電極体140の最外周のセパレータと導電性部材410との間に金属箔430を配置することで、容易に、電極体140の正極と導電性部材410とを電気的に接続することができる。
【0095】
(変形例3)
次に、上記実施の形態の変形例3について、説明する。
【0096】
図10は、本発明の実施の形態の変形例3に係る蓄電素子13の構成を示す断面図である。具体的には、同図は、蓄電素子13の正極側(X軸方向マイナス側)をXY平面に平行な平面で切断した場合の断面を示す図である。
【0097】
同図に示すように、蓄電素子13は、上記実施の形態における蓄電素子10の導電性部材410及び金属箔420は有しておらず、また、スペーサ510に代えて、導電性部材440を有している。なお、蓄電素子13が有する導電性部材440以外の構成においては、上記実施の形態における蓄電素子10が有する構成と同様であるため、説明は省略する。
【0098】
導電性部材440は、電極体140の正極に電気的に接続される正極集電体120と容器100との間に配置されるスペーサである。つまり、導電性部材440は、電極体140の正極側端部140aの正極側端部141a、142aに接合された正極集電体120の電極体接続部121、122に当接するとともに、容器100の本体111の内壁に当接して配置されている。
【0099】
なお、導電性部材440は、上記実施の形態における蓄電素子10の導電性部材410と同様の材質によって形成された高抵抗の導電性部材である。これにより、導電性部材440は、電極体140の正極と容器100とを高抵抗で電気的に接続する。
【0100】
以上のように、本発明の実施の形態の変形例3に係る蓄電素子12によれば、上記実施の形態と同様の効果を奏する。特に、導電性部材440は、正極集電体120と容器100との間に配置されるスペーサであるため、正極集電体120を介して電極体140の正極と容器100とを電気的に接続することで、容易に、電極体140の正極と容器100とを電気的に接続することができる。
【0101】
以上、本発明の実施の形態及びその変形例に係る蓄電素子について説明したが、本発明は、上記実施の形態及びその変形例に限定されるものではない。つまり、今回開示された実施の形態及びその変形例は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0102】
例えば、上記実施の形態及びその変形例では、導電性部材及び金属箔は、電極体140の正極に電気的に接続されることとしたが、当該導電性部材または金属箔は、電極体140の負極に電気的に接続されることにしてもかまわない。ただし、容器100の腐食防止等の観点から、当該導電性部材及び金属箔は、電極体140の正極に電気的に接続されるのが好ましい。
【0103】
また、上記実施の形態及びその変形例では、導電性部材及び金属箔は、電極体140の周りを囲うように配置されていることとしたが、当該導電性部材または金属箔は、電極体140の一部に当接する構成でもかまわない。
【0104】
また、上記実施の形態及びその変形例1では、金属箔420は、端部が、正極集電体120の電極体接続部121及び122の全体を覆うように配置されていることとしたが、金属箔420は、正極集電体120の電極体接続部121及び122の一部に当接する構成でもかまわない。
【0105】
また、上記実施の形態及びその変形例では、導電性部材及び金属箔は、電極体140と容器100の長側面との間に配置されることとした。しかし、導電性部材及び金属箔は、電極体140と容器100の短側面との間、または、電極体140と容器100の底面との間に配置される構成でもかまわない。
【0106】
また、上記実施の形態及びその変形例では、導電性部材は、柔軟性の高いフィルム状の部材であることとしたが、導電性部材は、柔軟性の低い板状の部材などであってもよい。
【0107】
また、上記実施の形態及びその変形例では、蓄電素子は、1つの電極体しか備えていないこととしたが、蓄電素子は、2つ以上の電極体を備えていることにしてもよい。
【0108】
また、上記実施の形態及び上記変形例を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。例えば、上記変形例1または2に、変形例3を加えた構成などでもかまわない。
【0109】
なお、本発明は、このような蓄電素子として実現することができるだけでなく、蓄電素子が備える導電性部材としても実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの蓄電素子等に適用できる。
【符号の説明】
【0111】
10、11、12、13 蓄電素子
100 容器
110 蓋体
111 本体
120 正極集電体
121、122 電極体接続部
130 負極集電体
131、132 電極体接続部
140 電極体
140a、141a、142a 正極側端部
140b、141b、142b 負極側端部
141 正極
142 セパレータ
143 負極
200 正極端子
300 負極端子
410、411、440 導電性部材
420、430 金属箔
510、520 スペーサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10