(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0014】
[樹脂シート]
本発明の樹脂シートは、絶縁樹脂層上に積層して用いられる回路形成用の樹脂シートである。当該樹脂シートは、支持体と、該支持体と接合している樹脂組成物層とを含み、樹脂組成物層の厚さが0.1μm〜6μmであり、樹脂組成物層が(A)エポキシ樹脂及び(B)活性エステル硬化剤を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の樹脂シートと組み合わせて用いられる絶縁樹脂層の詳細は後述する。プリント配線板の製造に際して、本発明の樹脂シートは、樹脂組成物層と絶縁樹脂層とが接合するように、絶縁樹脂層上に積層される。樹脂組成物層と絶縁樹脂層とは一緒になって絶縁層を形成するが、樹脂組成物層由来の絶縁層表面に回路を形成する。
【0016】
<支持体>
支持体は、対向する2つの主面を有する板状体又はフィルムからなる構造体であり、例えば、有機支持体、金属支持体が挙げられる。
【0017】
有機支持体の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、ポリスチレン、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミドなどが挙げられ、プリント配線板を製造する際の加熱圧着の方法及び条件(詳細は後述する。)に応じて、好適な材料を決定することが好ましい。例えば、高温条件を採用する真空熱プレス処理を使用する場合、有機支持体の材料としては、耐熱性の観点から、ガラス転移温度が100℃以上の材料が好ましく、中でもポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミドが好ましい。
【0018】
金属支持体の材料としては、例えば、銅、アルミニウム等が挙げられ、銅が好ましい。銅支持体としては、銅の単金属からなる支持体を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる支持体を用いてもよい。
【0019】
支持体は、樹脂組成物層と接合する側の表面にマット処理、コロナ処理を施してあってもよい。また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する側の表面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型剤の市販品としては、例えば、アルキド樹脂系離型剤である、リンテック(株)製の「SK−1」、「AL−5」、「AL−7」、日立化成ポリマー(株)製の「テスファイン303」、「テスファイン305」などが挙げられる。
【0020】
支持体の厚さは、本発明の目的を損なわないことを条件として特に限定されないが、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上、20μm以上、又は25μm以上である。支持体の厚さの上限は、特に限定されないが、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下、さらにより好ましくは55μm以下、54μm以下、53μm以下、52μm以下、51μm以下、又は50μm以下である。なお、支持体が離型層付き支持体である場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0021】
表面粗度の低い絶縁層を得る観点から、支持体の、樹脂組成物層と接する表面の算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは200nm未満、より好ましくは180nm以下、さらに好ましくは160nm以下、140nm以下、120nm以下、110nm以下、100nm以下、90nm以下、80nm以下、70nm以下、又は60nm以下である。Ra値の下限は、特に限定されないが、通常、0.1nm以上、1nm以上などとし得る。算術平均粗さ(Ra)は、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。非接触型表面粗さ計の具体例としては、ビーコインスツルメンツ社製の「WYKO NT3300」が挙げられる。
【0022】
支持体の、樹脂組成物層と接していない表面(すなわち、樹脂組成物層とは反対側の表面)のRaは、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されず、適宜決定してよい。
【0023】
<樹脂組成物層>
本発明の樹脂シートにおいて、樹脂組成物層の厚さは、絶縁層の薄型化の観点、本発明の樹脂シートと組み合わせて用いられる絶縁樹脂層由来の効果(例えば、低い熱膨張率)を良好に奏する観点から、6μm以下である。樹脂組成物層を薄くすると、該樹脂組成物層にピンホールが生じる場合がある。このようなピンホールの生じた樹脂組成物層は、プリント配線板の絶縁層として使用する場合に回路の微細化の障害となる場合がある。したがって、ピンホールの発生を抑制する技術が求められる。この点、本発明においては、ピンホールの発生を抑制しつつ、樹脂組成物層の厚さをさらに薄くすることができる。例えば、本発明の樹脂シートにおいて、樹脂組成物層は、5.5μm以下、5μm以下、4.5μm以下、又は4μm以下にまで薄くしてもよい。樹脂組成物層の厚さの下限は、ピンホールの発生を抑制する観点、粗化処理後に表面粗度が低い絶縁層を得る観点、良好なリフロー耐性を有する絶縁層を得る観点から、0.1μm以上であり、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.4μm以上、さらに好ましくは0.6μm以上、0.8μm以上、又は1μm以上である。樹脂組成物層の厚さは、例えば、接触式層厚計を用いて測定することができる。接触式層厚計としては、例えば、(株)ミツトヨ製「MCD−25MJ」が挙げられる。
【0024】
本発明の樹脂シートにおいて、樹脂組成物層は、(A)エポキシ樹脂及び(B)活性エステル硬化剤を含む。
【0025】
−(A)エポキシ樹脂−
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発成分を100質量%とした場合に、少なくとも50質量%以上は1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であるのが好ましい。中でも、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」という。)と、1分子中に3個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」という。)とを含むことが好ましい。エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用することで、優れた可撓性を有する樹脂組成物が得られる。また、樹脂組成物の硬化物の破断強度も向上する。
【0027】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及びナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「HP4032」、「HP4032H」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「828US」、「jER828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER807」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学(株)製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)、ナガセケムテックス(株)製の「EX−721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂)、(株)ダイセル製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂)、「PB−3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂)が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
固体状エポキシ樹脂としては、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましい。固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「HP−4700」、「HP−4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N−690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N−695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP−7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「EXA7311」、「EXA7311−G3」、「EXA7311−G4」、「EXA7311−G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)、日本化薬(株)製の「EPPN−502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学(株)製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「YX4000H」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂)、大阪ガスケミカル(株)製の「PG−100」、「CG−500」、三菱化学(株)製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0029】
エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用する場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.1〜1:6の範囲が好ましい。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比を斯かる範囲とすることにより、i)樹脂シートの形態で使用する場合に適度な粘着性がもたらされる、ii)樹脂シートの形態で使用する場合に十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する、並びにiii)十分な破断強度を有する硬化物を得ることができるなどの効果が得られる。上記i)〜iii)の効果の観点から、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂の量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.3〜1:5の範囲がより好ましく、1:0.6〜1:4の範囲がさらに好ましい。
【0030】
樹脂組成物層中のエポキシ樹脂の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す絶縁層を得る観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下又は35質量%以下である。
【0031】
なお、本発明において、樹脂組成物層中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
【0032】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50〜5000、より好ましくは50〜3000、さらに好ましくは80〜2000、さらにより好ましくは110〜1000である。この範囲となることで、硬化物の架橋密度が十分となり表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
【0033】
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは100〜5000、より好ましくは250〜3000、さらに好ましくは400〜1500である。ここで、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0034】
−(B)活性エステル硬化剤−
活性エステル硬化剤は、1分子中に活性エステル基を1個以上有する活性エステル化合物である。本発明者らは、絶縁樹脂層上に積層して用いられる回路形成用の樹脂シートにおいて、エポキシ樹脂の硬化剤として活性エステル硬化剤を使用することにより、粗化処理後の表面粗度が低く且つリフロー耐性が良好な薄型の絶縁層を実現し得ることを見出した。
【0035】
活性エステル硬化剤としては、1分子中に活性エステル基を2個以上有する活性エステル化合物が好ましく、例えば、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する活性エステル化合物が好ましく用いられる。活性エステル硬化剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られる活性エステル化合物が好ましい。中でも、カルボン酸化合物と、フェノール化合物、ナフトール化合物及びチオール化合物から選択される1種以上とを反応させて得られる活性エステル化合物がより好ましく、カルボン酸化合物と、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させて得られる、1分子中に2個以上の活性エステル基を有する芳香族化合物がさらに好ましく、少なくとも2個以上のカルボキシ基を1分子中に有するカルボン酸化合物と、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させて得られる芳香族化合物であって、1分子中に2個以上の活性エステル基を有する芳香族化合物がさらにより好ましい。活性エステル化合物は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。また、少なくとも2個以上のカルボキシ基を1分子中に有するカルボン酸化合物が脂肪族鎖を含む化合物であれば樹脂組成物との相溶性を高くすることができ、芳香環を有する化合物であれば耐熱性を高くすることができる。
【0037】
カルボン酸化合物としては、例えば、炭素原子数1〜20(好ましくは2〜10、より好ましくは2〜8)の脂肪族カルボン酸、炭素原子数7〜20(好ましくは7〜10)の芳香族カルボン酸が挙げられる。脂肪族カルボン酸としては、例えば、酢酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。芳香族カルボン酸としては、例えば、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。中でも、耐熱性の観点から、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、イソフタル酸、テレフタル酸がより好ましい。
【0038】
チオカルボン酸化合物としては、特に制限はないが、例えば、チオ酢酸、チオ安息香酸等が挙げられる。
【0039】
フェノール化合物としては、例えば、炭素原子数6〜40(好ましくは6〜30、より好ましくは6〜23、さらに好ましくは6〜22)のフェノール化合物が挙げられ、好適な具体例としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール等が挙げられる。フェノール化合物としてはまた、フェノールノボラック、特開2013−40270号公報記載のフェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーを使用してもよい。
【0040】
ナフトール化合物としては、例えば、炭素原子数10〜40(好ましくは10〜30、より好ましくは10〜20)のナフトール化合物が挙げられ、好適な具体例としては、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。ナフトール化合物としてはまた、ナフトールノボラックを使用してもよい。
【0041】
中でも、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール、フェノールノボラック、フェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーが好ましく、カテコール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール、フェノールノボラック、フェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーがより好ましく、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジシクロペンタジエン型ジフェノール、フェノールノボラック、フェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーがさらに好ましく、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジシクロペンタジエン型ジフェノール、フェノールノボラック、フェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーがさらにより好ましく、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジシクロペンタジエン型ジフェノール、フェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーが殊更好ましく、ジシクロペンタジエン型ジフェノールが特に好ましい。
【0042】
チオール化合物としては、特に制限はないが、例えば、ベンゼンジチオール、トリアジンジチオール等が挙げられる。
【0043】
活性エステル硬化剤の好適な具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物、芳香族カルボン酸とフェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーとを反応させて得られる活性エステル化合物が挙げられ、中でもジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、芳香族カルボン酸とフェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーとを反応させて得られる活性エステル化合物がより好ましい。なお本発明において、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン−ジシクロペンタレン−フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0044】
活性エステル硬化剤としては、特開2004−277460号公報、特開2013−40270号公報に開示されている活性エステル化合物を用いてもよく、また市販の活性エステル化合物を用いることもできる。活性エステル化合物の市販品としては、例えば、DIC(株)製の「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC−8000−65T」、「HPC−8000L−65M」(ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物)、DIC(株)製の「9416−70BK」(ナフタレン構造を含む活性エステル化合物)、三菱化学(株)製の「DC808」(フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物)、三菱化学(株)製の「YLH1026」(フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物)、DIC(株)製の「EXB9050L−62M」(リン原子含有活性エステル化合物)が挙げられる。
【0045】
粗化処理後の表面粗度が低い薄型の絶縁層を得る観点、良好なリフロー耐性を呈する薄型の絶縁層を実現し得る観点から、樹脂組成物中の活性エステル硬化剤の含有量は、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましく、4質量%以上、5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、8質量%以上又は10質量%以上がさらにより好ましい。活性エステル硬化剤の含有量の上限は特に限定されないが、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、18質量%以下、16質量%以下又は15質量%がさらにより好ましい。
【0046】
また、(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、機械強度の良好な絶縁層を得る観点から、(B)活性エステル硬化剤の反応基数は、0.2〜2が好ましく、0.3〜1.5がより好ましく、0.35〜1がさらに好ましい。ここで、「エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在する各エポキシ樹脂の固形分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値である。また、「反応基」とはエポキシ基と反応することができる官能基のことを意味し、「活性エステル化合物の反応基数」とは、樹脂組成物中に存在する活性エステル化合物の固形分質量を反応基当量で除した値を全て合計した値である。
【0047】
−(C)無機充填材−
樹脂組成物層は、無機充填材をさらに含んでもよい。無機充填材を含むことにより、得られる絶縁層の熱膨張率を低く抑えることができる。
【0048】
無機充填材の材料は特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられ、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。またシリカとしては球形シリカが好ましい。無機充填材は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。市販されている球状溶融シリカとして、(株)アドマテックス製「SO−C2」、「SO−C1」が挙げられる。
【0049】
無機充填材の平均粒径は、特に限定されないが、粗化処理後の表面粗度が低い絶縁層を得る観点から、4μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、2μm以下がさらに好ましく、1μm以下、0.7μm以下、又は0.5μm以下がさらにより好ましい。一方、樹脂ワニスを形成する際に適度な粘度を有し取り扱い性の良好な樹脂ワニスを得る観点から、無機充填材の平均粒径は、0.01μm以上が好ましく、0.03μm以上がより好ましく、0.05μm以上、0.07μm以上、又は0.1μm以上がさらに好ましい。無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製「LA−500」、「LA−750」、「LA−950」等を使用することができる。
【0050】
無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤などの1種以上の表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業(株)製「KBM403」(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM803」(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBE903」(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM573」(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「SZ−31」(ヘキサメチルジシラザン)等が挙げられる。
【0051】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m
2以上が好ましく、0.1mg/m
2以上がより好ましく、0.2mg/m
2以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度やシート形態での溶融粘度の上昇を防止する観点から、1mg/m
2以下が好ましく、0.8mg/m
2以下がより好ましく、0.5mg/m
2以下がさらに好ましい。
【0052】
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、(株)堀場製作所製「EMIA−320V」等を使用することができる。
【0053】
熱膨張率の低い絶縁層を得る観点、良好なリフロー耐性を有する絶縁層を得る観点から、樹脂組成物層中の無機充填材の含有量は、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上、さらにより好ましくは40質量%以上、45質量%以上、又は50質量%以上である。無機充填材の含有量の上限は、ピンホールの発生を抑制する観点、得られる絶縁層の機械強度の観点から、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下である。
【0054】
−(D)ポリマー成分−
樹脂組成物層は、(D1)有機充填材及び(D2)熱可塑性樹脂からなる群から選択されるポリマー成分をさらに含んでもよい。(A)エポキシ樹脂及び(B)活性エステル硬化剤と組み合わせてポリマー成分を含むことにより、ピンホールの発生をさらに抑制し得ると共に、粗化処理後の表面粗度がさらに低い薄型の絶縁層を形成することができる。
【0055】
(D1)有機充填材としては、プリント配線板の製造に際し使用し得る任意の有機充填材を使用してよく、例えば、ゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子などが挙げられ、ゴム粒子が好ましい。
【0056】
ゴム粒子としては、ゴム弾性を示す樹脂に化学的架橋処理を施し、有機溶剤に不溶かつ不融とした樹脂の微粒子体である限り特に限定されず、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、ブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子などが挙げられる。ゴム粒子の市販品としては、例えば、日本合成ゴム(株)製の「XER−91」、アイカ工業(株)製の「スタフィロイドAC3355」、「スタフィロイドAC3816」、「スタフィロイドAC3401N」、「スタフィロイドAC3816N」、「スタフィロイドAC3832」、「スタフィロイドAC4030」、「スタフィロイドAC3364」、「スタフィロイドIM101」、呉羽化学工業(株)製の「パラロイドEXL2655」、「パラロイドEXL2602」などが挙げられる。
【0057】
有機充填材の平均粒子径は、好ましくは0.005μm〜1μmの範囲であり、より好ましくは0.2μm〜0.6μmの範囲である。有機充填材の平均粒子径は、動的光散乱法を用いて測定することができる。例えば、適当な有機溶剤に有機充填材を超音波などにより均一に分散させ、濃厚系粒径アナライザー(大塚電子(株)製「FPAR−1000」)を用いて、有機充填材の粒度分布を質量基準で作成し、そのメディアン径を平均粒子径とすることで測定することができる。
【0058】
(D2)熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は8,000〜70,000の範囲が好ましく、10,000〜60,000の範囲がより好ましく、20,000〜60,000の範囲がさらに好ましい。熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される。具体的には、熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度を40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0060】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱化学(株)製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)が挙げられ、その他にも、新日鉄住金化学(株)製の「FX280」及び「FX293」、三菱化学(株)製の「YL7553」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
【0061】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、例えば、電気化学工業(株)製の「電化ブチラール4000−2」、「電化ブチラール5000−A」、「電化ブチラール6000−C」、「電化ブチラール6000−EP」、積水化学工業(株)製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
【0062】
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化(株)製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006−37083号公報記載のポリイミド)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002−12667号公報及び特開2000−319386号公報等に記載のポリイミド)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0063】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡績(株)製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成工業(株)製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0064】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学(株)製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0065】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0066】
中でも、(A)エポキシ樹脂及び(B)活性エステル硬化剤との組み合わせにおいて、ピンホールの発生をさらに抑制し得る観点、粗化処理後の表面粗度がさらに低い薄型の絶縁層を得る観点から、ポリマー成分としては、有機充填材、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。したがって好適な一実施形態において、(D)ポリマー成分は、有機充填材、フェノキシ樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される1種以上を含む。
【0067】
樹脂組成物層中のポリマー成分の含有量は、ピンホールの発生を抑制する観点、粗化処理後の表面粗度が低い薄型の絶縁層を得る観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、又は8質量%以上である。ポリマー成分の含有量の上限は、好ましくは23質量%以下、より好ましくは22質量%以下、さらに好ましくは21質量%以下、20質量%以下、19質量%以下、18質量%以下、17質量%以下、16質量%以下、又は15質量%以下である。
【0068】
−(E)硬化促進剤−
樹脂組成物層は、硬化促進剤をさらに含んでもよい。硬化促進剤を含むことにより、粗化処理後の絶縁層表面の粗度をさらに低下させ得ると共に、リフロー耐性をさらに向上させることができる。
【0069】
硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、リン系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤等が挙げられる。硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
中でも、(A)エポキシ樹脂及び(B)活性エステル硬化剤との組み合わせにおいて、粗化処理後の表面粗度が特に低い絶縁層を得る観点、特に良好なリフロー耐性を有する絶縁層を得る観点から、硬化促進剤は、イミダゾール系硬化促進剤及びアミン系硬化促進剤からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。
【0071】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体(「イミダゾール−エポキシ樹脂のアダクト体」ともいう。)が挙げられ、イミダゾール−エポキシ樹脂のアダクト体が好ましい。イミダゾール−エポキシ樹脂のアダクト体の具体例としては、三菱化学(株)製の「P200H50」が挙げられる。
【0072】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン等が挙げられ、4−ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセンが好ましい。
【0073】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4−メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0074】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1−メチルグアニジン、1−エチルグアニジン、1−シクロヘキシルグアニジン、1−フェニルグアニジン、1−(o−トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、1−メチルビグアニド、1−エチルビグアニド、1−n−ブチルビグアニド、1−n−オクタデシルビグアニド、1,1−ジメチルビグアニド、1,1−ジエチルビグアニド、1−シクロヘキシルビグアニド、1−アリルビグアニド、1−フェニルビグアニド、1−(o−トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エンが好ましい。
【0075】
これらの中でも、(A)エポキシ樹脂及び(B)活性エステル硬化剤との組み合わせにおいて、粗化処理後の表面粗度が特に低く且つ特に良好なリフロー耐性を有する絶縁層を実現し得る観点から、硬化促進剤としては、イミダゾール−エポキシ樹脂のアダクト体、4−ジメチルアミノピリジンが好ましい。したがって好適な一実施形態において、硬化促進剤は、イミダゾール−エポキシ樹脂のアダクト体、及び4−ジメチルアミノピリジンからなる群から選択される1種以上を含む。
【0076】
粗化処理後の表面粗度が低い絶縁層を得る観点、良好なリフロー耐性を有する絶縁層を得る観点から、樹脂組成物層中の硬化促進剤の含有量は、樹脂組成物層中の樹脂成分を100質量%としたとき、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、又は0.5質量%以上である。該含有量の上限は、好ましくは6質量%以下、より好ましくは5.5質量以下、さらに好ましくは5質量%以下、4.5質量%以下、又は4質量%以下である。なお、硬化促進剤の含有量についていう「樹脂成分」とは、樹脂組成物層を構成する不揮発成分のうち、無機充填材を除いた成分をいう。
【0077】
粗化処理後の表面粗度が特に低く且つ特に良好なリフロー耐性を有する絶縁層を実現し得る観点から、樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は、樹脂組成物層中の(B)活性エステル硬化剤を100質量%としたとき、硬化促進剤の含有量は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.75質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、2質量%以上、又は3質量%以上である。該含有量の上限は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下、30質量%以下、又は25質量%以下である。
【0078】
好適な実施形態において、樹脂組成物層は、(A)エポキシ樹脂及び(B)活性エステル硬化剤に加えて、(C)無機充填材、(D)ポリマー成分及び(E)硬化促進剤をさらに含み、(D)ポリマー成分が有機充填材及び熱可塑性樹脂からなる群から選択され、
樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%としたとき、(C)無機充填剤の含有量が25質量%〜65質量%、(D)ポリマー成分の含有量が0.5質量%〜23質量%であり、
樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%としたとき、(E)硬化促進剤の含有量が0.1質量%〜6質量%である。
【0079】
斯かる実施形態によれば、粗化処理後の表面粗度が低く、良好なリフロー耐性を呈する絶縁層をもたらすことができると共に、ピンホールの発生が抑制された薄型の樹脂組成物層を実現することができる。
【0080】
斯かる実施形態の中でも、(C)無機充填材がシリカであり、(D)ポリマー成分が、有機充填材、フェノキシ樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される1種以上を含み、(E)硬化促進剤が、イミダゾール−エポキシ樹脂のアダクト体、及び4−ジメチルアミノピリジンからなる群から選択される1種以上を含む実施形態は、表面粗度、リフロー耐性、及びピンホール発生の抑制の全てにおいてとりわけ優れた性能を示す。
【0081】
−(F)活性エステル硬化剤以外の硬化剤−
樹脂組成物層は、活性エステル硬化剤以外の硬化剤をさらに含んでもよい。
【0082】
活性エステル硬化剤以外の硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化させる機能を有する限り特に限定されないが、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤等が挙げられる。これらの硬化剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
中でも、(A)エポキシ樹脂及び(B)活性エステル硬化剤との組み合わせにおいて、粗化処理後の表面粗度が特に低い絶縁層を得る観点、特に良好なリフロー耐性を有する絶縁層を得る観点から、活性エステル硬化剤以外の硬化剤としては、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤からなる群から選択される1種以上が好ましい。
【0084】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤、又はノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。また、導体層との密着強度に優れる絶縁層を得る観点から、含窒素フェノール系硬化剤又は含窒素ナフトール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤又はトリアジン骨格含有ナフトール系硬化剤がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び導体層との密着強度を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂が好ましい。フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成(株)製の「MEH−7700」、「MEH−7810」、「MEH−7851」、日本化薬(株)製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金化学(株)製の「SN−170」、「SN−180」、「SN−190」、「SN−475」、「SN−485」、「SN−495」、「SN−375」、「SN−395」、DIC(株)製の「LA−7052」、「LA−7054」、「LA−3018」、「LA−1356」、「TD2090」等が挙げられる。
【0085】
シアネートエステル系硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、ノボラック型(フェノールノボラック型、アルキルフェノールノボラック型など)シアネートエステル系硬化剤、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル系硬化剤、ビスフェノール型(ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型など)シアネートエステル系硬化剤、及びこれらが一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。具体例としては、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート))、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4−シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン(株)製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0086】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、昭和高分子(株)製の「HFB2006M」、四国化成工業(株)製の「P−d」、「F−a」が挙げられる。
【0087】
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル(株)製の「V−03」、「V−07」等が挙げられる。
【0088】
活性エステル硬化剤以外の硬化剤を使用する場合、樹脂組成物中の該硬化剤の含有量は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上、又は2質量%以上である。該含有量の上限は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、14質量%以下、13質量%以下、又は12質量%以下である。
【0089】
−(G)難燃剤−
樹脂組成物層は、難燃剤をさらに含んでもよい。難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。樹脂組成物層中の難燃剤の含有量は特に限定されないが、好ましくは0.5質量%〜10質量%、より好ましくは1質量%〜9質量%である。
【0090】
−その他の添加剤−
樹脂組成物層は、必要に応じて、さらに他の成分を含んでいてもよい。斯かる他の成分としては、例えば、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物、並びに増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、及び着色剤等の樹脂添加剤等が挙げられる。
【0091】
詳細は後述するが、本発明の樹脂シートにおいて、樹脂組成物層は、沸点100℃以上の溶剤と、沸点100℃未満の溶剤とを含む樹脂ワニスを乾燥させることにより得られることが好ましい。これにより、ピンホールの発生をさらに抑制し得ると共に、一層良好なリフロー耐性を有する絶縁層を実現することができる。中でも、樹脂組成物層は、150℃以上の温度で樹脂ワニスを乾燥させることにより得られることが好ましい。
【0092】
本発明の樹脂シートにおいて、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)には、支持体に準じた保護フィルムをさらに積層することができる。保護フィルムの厚さは、特に限定されないが、例えば、1μm〜40μmとし得る。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能であり、プリント配線板の製造において絶縁層を形成する際には、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0093】
本発明の樹脂シートは、絶縁樹脂層上に積層して用いられる回路形成用の樹脂シートである。プリント配線板の製造に際して、本発明の樹脂シートを絶縁樹脂層と組み合わせて使用することにより、粗化処理後の表面粗度が低く、良好なリフロー耐性を有する薄型の絶縁層を実現することができる。中でも、本発明の樹脂シートは、めっきプロセスにより回路形成を行うための樹脂シート(めっきプロセスによる回路形成用の樹脂シート)として特に好適に使用することができる。
【0094】
[樹脂シートの製造方法]
本発明の樹脂シートは、支持体と接合するように厚さ0.1μm〜6μmの樹脂組成物層を設けることにより製造することができる。
【0095】
一実施形態において、本発明の樹脂シートは、下記(i)、(ii)及び(iii)を含む方法により製造することができる。
(i)(A)エポキシ樹脂及び(B)活性エステル硬化剤を含む樹脂組成物を溶剤に溶解させて樹脂ワニスを調製すること
(ii)樹脂ワニスを支持体上に塗布すること
(iii)樹脂ワニスを乾燥させて厚さ0.1μm〜6μmの樹脂組成物層を形成すること
【0096】
(i)において、(A)エポキシ樹脂及び(B)活性エステル硬化剤を含む樹脂組成物を溶剤に溶解させて樹脂ワニスを調製する。(A)エポキシ樹脂及び(B)活性エステル硬化剤をはじめ、樹脂組成物層の形成に使用し得る各成分(すなわち、(C)乃至(G)成分、及びその他の添加剤)の詳細は、上記<樹脂組成物層>において説明したとおりである。
【0097】
樹脂ワニスの調製に使用する溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン類、セロソルブ、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びN−メチルピロリドン等のアミド系溶媒等を挙げることができる。溶剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
樹脂組成物層にピンホールが発生することを抑制する観点、良好なリフロー耐性を有する絶縁層を得る観点から、溶剤としては、沸点100℃以上(好ましくは105℃以上、より好ましくは110℃以上、115℃以上、又は120℃以上)の溶剤と、沸点100℃未満(好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下、85℃以下、又は80℃以下)の溶剤とを組み合わせて使用することが好適である。したがって好適な一実施形態において、溶剤としては、沸点100℃以上の溶剤と沸点100℃未満の溶剤との混合溶剤を使用する。
【0099】
混合溶剤中の沸点100℃以上の溶剤と沸点100℃未満の溶剤の質量比[(沸点100℃以上の溶剤)/(沸点100℃未満の溶剤)]は、好ましくは2/8〜8/2、より好ましくは3/7〜7/3、さらに好ましくは4/6〜6/4、さらにより好ましくは4.5/5.5〜5.5/4.5である。
【0100】
樹脂ワニスは、樹脂ワニス中の不揮発成分の含有量が、好ましくは30質量%〜70質量%、より好ましくは40質量%〜70質量%の範囲となるように、調製することが好ましい。
【0101】
(ii)において、樹脂ワニスを支持体上に塗布する。支持体の詳細は、上記<支持体>において説明したとおりである。
【0102】
樹脂ワニスの塗布は、厚さが均一な塗膜を形成し得る限りにおいて従来公知の任意の方法により実施してよい。例えば、ダイコーター、コンマコーター、グラビアコーター、バーコーター等の塗布装置を用いて樹脂ワニスを支持体上に塗布することができる。
【0103】
表面粗度の低い絶縁層を得る観点から、樹脂ワニスが塗布される支持体の表面の算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは200nm未満である。Raの好適な範囲は、上記<支持体>において説明したとおりである。
【0104】
(iii)において、樹脂ワニスを乾燥させて厚さ0.1μm〜6μmの樹脂組成物層を形成する。樹脂組成物層の厚さの好適な範囲は、上記<樹脂組成物層>において説明したとおりである。
【0105】
樹脂ワニスの乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の乾燥方法により実施してよい。乾燥条件は、樹脂ワニスに含まれる溶剤の沸点等に応じて決定してよい。
【0106】
乾燥処理は、1回のみ実施してもよく、複数回実施してもよい。乾燥処理を複数回実施する場合には、それぞれの乾燥条件は同一であってもよく、相異なっていてもよい。
【0107】
乾燥処理を1回のみ実施する場合、例えば、50℃〜200℃(好ましくは80℃〜200℃、より好ましくは90℃〜200℃)で1分間〜30分間(好ましくは1分間〜20分間、より好ましくは1分間〜15分間)、樹脂ワニスを乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成してよい。良好なリフロー耐性を有する絶縁層を得る観点、絶縁樹脂層としてプリプレグを使用する場合には粗化処理後の絶縁層においてシート状繊維基材が露出するという問題を減じる観点から、150℃以上(好ましくは160℃以上、170℃以上、又は180℃以上)の温度で樹脂ワニスを乾燥させることが好適である。
【0108】
乾燥処理を複数回実施する場合、例えば、2回目以降の乾燥処理を初回の乾燥処理よりも高温で実施してよい。これにより、上記の混合溶剤を用いた場合であっても、初回の乾燥処理によって沸点が低い有機溶剤を揮発させ、さらに2回目以降の乾燥処理によって沸点が高い有機溶剤を効率的に揮発させることができる。例えば、50℃以上150℃未満(好ましくは70℃以上140℃以下、より好ましくは80℃以上130℃以下、又は90℃以上120℃以下)の温度にて初回の乾燥処理を行い、150℃以上200℃以下(好ましくは160℃以上200℃以下、170℃以上200℃以下、又は180℃以上200℃以下)の温度で2回目以降の乾燥処理を行ってよい。乾燥処理を複数回実施する場合、それぞれの乾燥処理の時間は、例えば、1分間〜30分間(好ましくは1分間〜20分間、より好ましくは1分間〜15分間、又は1分間〜10分間)としてよい。
【0109】
なお、(iii)において、必ずしも溶剤を完全に除去する必要はない。樹脂組成物層中の不揮発成分の含有量を100質量%としたとき、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、2質量%以下、又は1質量%以下にて溶剤を含有していてもよい。
【0110】
樹脂シートの製造方法は、(iii)の後、さらに(iv)樹脂組成物層と接合するように保護フィルムを設けることを含んでもよい。保護フィルムは、上記[樹脂シート]において説明したとおりである。
【0111】
(iv)において、保護フィルムは、ロールやプレス圧着等で樹脂組成物層にラミネート処理することが好ましい。ラミネート処理は、市販されている真空ラミネーターを用いて実施することができる。市販されている真空ラミネーターとしては、例えば、(株)名機製作所製の真空加圧式ラミネーター、ニチゴー・モートン(株)製のバキュームアップリケーター等が挙げられる。
【0112】
[積層シート]
本発明の樹脂シートは接着性に優れており、絶縁樹脂層をはじめとする種々のフィルムとの積層シートを容易に形成することが可能である。
【0113】
一実施形態において、本発明の積層シートは、本発明の樹脂シートと、該樹脂シートの樹脂組成物層と接合している絶縁樹脂層とを含む。
【0114】
絶縁樹脂層としては、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して従来公知の絶縁樹脂層を使用できる。絶縁樹脂層の厚さは、絶縁層の薄型化の観点から、好ましくは70μm以下、より好ましくは60μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、又は20μm以下である。絶縁樹脂層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、1μm以上、5μm以上、10μm以上などとし得る。
【0115】
機械強度に優れる薄型の絶縁層を得る観点から、絶縁樹脂層としては、プリプレグが好ましいが、シート状繊維基材を含有しない熱硬化性樹脂組成物層(以下、単に「熱硬化性樹脂組成物層」という。)を使用してもよい。熱硬化性樹脂組成物層は、硬化後に十分な硬度と絶縁性を示す限り特に限定されないが、一般に、エポキシ樹脂及び硬化剤を含む。エポキシ樹脂の種類や含有量は、上記<樹脂組成物層>における(A)エポキシ樹脂について説明したとおりである。硬化剤としては、上記<樹脂組成物層>における(B)活性エステル硬化剤及び(F)活性エステル硬化剤以外の硬化剤、すなわち、活性エステル硬化剤、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤及びベンゾオキサジン系硬化剤からなる群から選択される1種以上を用いてよい。このとき、エポキシ樹脂と硬化剤との量比は、得られる絶縁層の機械強度や耐水性を向上させる観点から、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、好ましくは1:0.2〜1:2、より好ましくは1:0.3〜1:1.5、さらに好ましくは1:0.4〜1:1である。ここで、硬化剤の反応基とは、活性水酸基、活性エステル基等であり、硬化剤の種類によって異なる。得られる絶縁層の熱膨張率を低下させて、絶縁層と導体層との熱膨張の差によるクラックや回路歪みの発生を防止する観点から、熱硬化性樹脂組成物層は、無機充填材をさらに含むことが好ましい。無機充填材としては、上記<樹脂組成物層>における(C)無機充填材を用いてよい。熱硬化性樹脂組成物層中の無機充填材の含有量は、得られる絶縁層の熱膨張率を低下させる観点から、熱硬化性樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、又は75質量%以上である。無機充填材の含有量の上限は、得られる絶縁層の機械強度の観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下又は85質量%以下である。熱硬化性樹脂組成物層に含有させ得る他の成分としては、例えば、上記<樹脂組成物層>において説明した、(D)ポリマー成分、(E)硬化促進剤、及び「その他の添加剤」が挙げられる。
【0116】
好適な一実施形態において、本発明の積層シートは、本発明の樹脂シートと、該樹脂シートの樹脂組成物層と接合しているプリプレグとを含む。
【0117】
プリプレグは、シート状繊維基材中に熱硬化性樹脂組成物を含浸させてなるものである。
【0118】
プリプレグに用いる熱硬化性樹脂組成物は、その硬化物が十分な硬度と絶縁性を有する限りにおいて特に限定されず、プリント配線板の絶縁層の形成に用いられる従来公知の熱硬化性樹脂組成物を用いてよい。例えば、上記の熱硬化性樹脂組成物層の形成に使用する樹脂組成物を用いてよい。あるいはまた、プリプレグに用いる熱硬化性樹脂組成物は、本発明の樹脂シートにおける樹脂組成物層の形成に使用する樹脂組成物と同じであってよい。
【0119】
プリプレグに用いるシート状繊維基材は特に限定されず、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のプリプレグ用基材として常用されているものを用いることができる。絶縁層の薄型化の観点から、シート状繊維基材の厚さは、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、25μm以下又は20μm以下である。シート状繊維基材の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、5μm以上、10μm以上などとし得る。シート状繊維基材として用いられるガラスクロス基材の具体例としては、旭シュエーベル(株)製の「スタイル1027MS」(経糸密度75本/25mm、緯糸密度75本/25mm、布重量20g/m
2、厚さ19μm)、旭シュエーベル(株)製の「スタイル1037MS」(経糸密度70本/25mm、緯糸密度73本/25mm、布重量24g/m
2、厚さ28μm)、(株)有沢製作所製の「1078」(経糸密度54本/25mm、緯糸密度54本/25mm、布重量48g/m
2、厚さ43μm)、(株)有沢製作所製の「1037NS」(経糸密度72本/25mm、緯糸密度69本/25mm、布重量23g/m
2、厚さ21μm)(株)有沢製作所製の「1027NS」(経糸密度75本/25mm、緯糸密度75本/25mm、布重量19.5g/m
2、厚さ16μm)、(株)有沢製作所製の「1015NS」(経糸密度95本/25mm、緯糸密度95本/25mm、布重量17.5g/m
2、厚さ15μm)、(株)有沢製作所製の「1000NS」(経糸密度85本/25mm、緯糸密度85本/25mm、布重量11g/m
2、厚さ10μm)等が挙げられる。また液晶ポリマー不織布の具体例としては、(株)クラレ製の、芳香族ポリエステル不織布のメルトブロー法による「ベクルス」(目付け量6〜15g/m
2)や「ベクトラン」などが挙げられる。
【0120】
プリプレグは、ホットメルト法、ソルベント法等の公知の方法により製造することができる。
【0121】
薄いプリプレグを使用する場合、粗化処理後の絶縁層においてシート状繊維基材が露出する場合がある。斯かるシート状繊維基材の露出は、プリント配線板の製造において微細な回路を形成するにあたって障害となる。この点、(A)エポキシ樹脂及び(B)活性エステル硬化剤を含む樹脂組成物層を、プリプレグと接合するように設けた本発明の積層シートによれば、薄いプリプレグを使用する場合であっても、粗化処理後の絶縁層におけるシート状繊維基材の露出を有利に抑制することができる。例えば、プリプレグの厚さは、70μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、又は30μm以下にまで薄くしてよい。プリプレグの厚さの下限は、特に限定されないが、通常、10μm以上、12μm以上などとし得る。なお、プリプレグの厚さは、熱硬化性樹脂組成物の含浸量を調整することにより、容易に変更することができる。
【0122】
本発明の積層シートは、本発明の樹脂シートの樹脂組成物層と絶縁樹脂層(好ましくはプリプレグ)とが接合するように、本発明の樹脂シートと絶縁樹脂層とを積層することにより製造することができる。例えば、本発明の樹脂シートを、該樹脂シートの樹脂組成物層が絶縁樹脂層と接合するように、絶縁樹脂層にラミネート処理することにより、本発明の積層シートを製造することができる。
【0123】
本発明の樹脂シートと絶縁樹脂層との積層は、作業性が良好であり、一様な接触状態が得られやすいので、ロール圧着やプレス圧着等で、本発明の樹脂シートを絶縁樹脂層にラミネート処理することが好ましい。ラミネート処理は、市販の真空ラミネーターを用いて実施することができる。市販の真空ラミネーターは、先述のとおりである。
【0124】
積層シートの製造において、絶縁樹脂層は、支持体と、該支持体と接合する絶縁樹脂層とを含む接着シートの形態で使用してよい。支持体としては、上記樹脂シートについて説明した支持体と同じものを使用してよい。
【0125】
絶縁樹脂層を接着シートの形態にて使用する場合、絶縁樹脂層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)には、支持体に準じた保護フィルムをさらに積層することができる。保護フィルムとしては、上記樹脂シートについて説明した保護フィルムと同じものを使用してよい。接着シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能であり、積層シートを製造する際には、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0126】
本発明の積層シートは、プリント配線板の絶縁層を形成するための積層シート(プリント配線板の絶縁層用積層シート)として使用することができる。本発明の積層シートを使用するプリント配線板の製造方法に関しては後述することとするが、本発明の積層シートを用いてプリント配線板の絶縁層を形成することにより、粗化処理後の表面粗度が低く、良好なリフロー耐性を有する薄型の絶縁層を実現することができる。中でも、ビルドアップ方式によるプリント配線板の製造において、絶縁層を形成するための積層シート(プリント配線板のビルドアップ絶縁層用積層シート)として好適に使用することができ、その上にめっきプロセスにより回路が形成される絶縁層を形成するための積層シート(めっきプロセスにより回路を形成するプリント配線板のビルドアップ絶縁層用積層シート)としてさらに好適に使用することができる。
【0127】
なお、積層シートの製造に際して絶縁樹脂層を上記接着シートの形態にて使用する場合、得られる積層シートは、絶縁樹脂層の本発明の樹脂シートと接合していない面(すなわち、本発明の樹脂シートとは反対側の面)に、接着シート由来の支持体を有する。積層板、プリント配線板を製造する際には、斯かる接着シート由来の支持体を剥がすことによって使用可能となる。
【0128】
[積層板]
本発明の積層板は、本発明の樹脂シートと、絶縁樹脂層とを、樹脂組成物層と絶縁樹脂層とが接合した状態で、加熱することにより形成された絶縁層を含む。
【0129】
一実施形態において、本発明の積層板は、本発明の樹脂シートと絶縁樹脂層とを用いて、下記工程(I−1)を含む方法により製造することができる(以下、「第1実施形態」ともいう。)。
(I−1)樹脂組成物層同士が互いに対向するように配置された2枚の樹脂シートの間に1枚以上の絶縁樹脂層を配置し、減圧下、200℃以上で加熱及び加圧して一体成型する工程
【0130】
第1実施形態において使用する樹脂シート及び絶縁樹脂層は先述のとおりである。第1実施形態において、絶縁樹脂層は、プリプレグであることが好ましい。
【0131】
工程(I−1)は、例えば、真空熱プレス装置を用いて以下の手順で実施することができる。
【0132】
まず真空熱プレス装置に、樹脂組成物層同士が互いに対向するように配置された2枚の樹脂シートの間に1枚以上の絶縁樹脂層を配置するように積層した積層構造をセットする。
積層構造は、クッション紙、ステンレス板(SUS板)等の金属板、離型フィルムなどを介して真空熱プレス装置にセットすることが好ましい。積層構造は、例えば、クッション紙/金属板/離型フィルム/積層構造(例えば、樹脂シート/絶縁樹脂層/樹脂シート)/離型フィルム/SUS板/クッション紙の順に積層されて真空熱プレス装置にセットされる。
ここで記号「/」はこれを挟むように示されている構成要素同士が互いに接するように配置されていることを意味している(以下、積層構造の説明等において同様である。)。
【0133】
次いで、減圧条件下で積層構造を加熱圧着する真空熱プレス処理を行う。
【0134】
真空熱プレス処理は、加熱されたSUS板等の金属板によって積層構造をその両面側から押圧する従来公知の真空熱プレス装置を用いて実施することができる。市販されている真空熱プレス装置としては、例えば、(株)名機製作所製の「MNPC−V−750−5−200」、北川精機(株)製の「VH1−1603」等が挙げられる。
【0135】
真空熱プレス処理は、1回のみ実施してもよく、2回以上繰り返して実施してもよい。
【0136】
真空熱プレス処理において、圧着圧力(押圧力)は、好ましくは5kgf/cm
2〜80kgf/cm
2(0.49MPa〜7.9MPa)、より好ましくは10kgf/cm
2〜60kgf/cm
2(0.98MPa〜5.9MPa)である。
【0137】
真空熱プレス処理において、雰囲気の圧力、すなわち、処理対象の積層構造が格納されるチャンバ内の減圧時の圧力は、好ましくは3×10
−2MPa以下、より好ましくは1×10
−2MPa以下である。
【0138】
真空熱プレス処理において、加熱温度(T)は、200℃以上であり、好ましくは210℃以上、より好ましくは220℃以上である。加熱温度(T)の上限は特に限定されないが、通常、240℃以下などとし得る。
【0139】
真空熱プレス処理は、粗化処理後の表面粗度が低い絶縁層を得る観点から、温度を段階的に若しくは連続的に上昇させながら、及び/又は温度を段階的に若しくは連続的に下降させながら、実施することが好ましい。斯かる場合、最高到達温度が、上記所望の温度条件を満たすことが好ましい。
【0140】
真空熱プレス処理は、例えば、常温から加熱温度(T)まで昇温速度S
1で昇温し、加熱温度(T)にて所定時間保持した後、降温速度S
2で加熱温度(T)から常温まで降温する加熱条件で実施してよい。昇温速度S
1及び降温速度S
2は、通常0.5℃/分〜30℃/分、好ましくは1℃/分〜10℃/分、より好ましくは2℃/分〜8℃/分である。加熱温度(T)にて保持する時間は、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、通常1分間〜180分間、好ましくは5分間〜150分間、より好ましくは10分間〜120分間である。
【0141】
工程(I−1)は、2枚以上の絶縁樹脂層を用い、絶縁樹脂層同士の間にさらに内層基板を配置して実施してもよい。2枚以上の絶縁樹脂層は、同一でも相異なっていてもよい。
【0142】
本発明において、「内層基板」とは、主として、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板、又は該基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成された回路基板をいう。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物の内層回路基板も本発明でいう「内層基板」に含まれる。
【0143】
工程(I−1)により、樹脂シートの樹脂組成物層と、絶縁樹脂層とは、一体化して絶縁層を形成する。
【0144】
他の実施形態において、本発明の積層板は、本発明の積層シートを用いて、下記工程(II−1)及び(II−2)を含む方法により製造することができる(以下、「第2実施形態」ともいう。)。
(II−1)積層シートを、絶縁樹脂層が内層基板に接するように、内層基板に積層する工程
(II−2)積層シートを熱硬化して絶縁層を形成する工程
【0145】
第2実施形態において使用する積層シート及び内層基板は、先述のとおりである。
【0146】
工程(II−1)において、本発明の積層シートを、絶縁樹脂層が内層基板に接するように、内層基板に積層する。
【0147】
工程(II−1)における積層シートと内層基板との積層は、例えば、支持体側から積層シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。積層シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を積層シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に積層シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0148】
積層シートと内層基板の積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱温度は、好ましくは60℃〜160℃、より好ましくは80℃〜140℃の範囲であり、圧着圧力は、好ましくは1kgf/cm
2〜18kgf/cm
2(0.098MPa〜1.77MPa)、より好ましくは3kgf/cm
2〜15kgf/cm
2(0.29MPa〜1.47MPa)の範囲であり、圧着時間は、好ましくは20秒間〜400秒間、より好ましくは30秒間〜300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0149】
工程(II−1)において、積層シートは、内層基板の片面に積層してもよく、内層基板の両面に積層してもよい。
【0150】
積層シートと内層基板の積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターは、先述のとおりである。
【0151】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された積層シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件としてよい。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0152】
工程(II−2)において、積層シートを熱硬化して絶縁層を形成する。
【0153】
熱硬化の条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
【0154】
例えば、積層シートの熱硬化条件は、樹脂組成物層及び絶縁樹脂層の組成によっても異なるが、硬化温度は120℃〜240℃の範囲(好ましくは150℃〜210℃の範囲、より好ましくは170℃〜190℃の範囲)、硬化時間は5分間〜90分間の範囲(好ましくは10分間〜75分間、より好ましくは15分間〜60分間)としてよい。
【0155】
積層シートを熱硬化させる前に、積層シートを硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、積層シートを熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、積層シートを5分間以上(好ましくは5分間〜150分間、より好ましくは15分間〜120分間)予備加熱してもよい。
【0156】
工程(II−2)により、積層シート中の樹脂組成物層と絶縁樹脂層の双方が熱硬化され、一体化した絶縁層が形成される。
【0157】
本発明により形成される絶縁層は、絶縁樹脂層由来の効果を良好に奏することができる。絶縁樹脂層は、通常、熱膨張率の低い絶縁層をもたらすべく設計されており、本発明によれば、斯かる低熱膨張率という効果を良好に奏する絶縁層を形成することが可能である。一実施形態において、本発明の積層板に含まれる絶縁層は、好ましくは15ppm/℃以下、14ppm/℃以下、又は13ppm/℃以下の線熱膨張係数を示すことができる。絶縁層の線熱膨張係数の下限は特に制限されないが、通常、1ppm以上である。絶縁層の線熱膨張係数は、例えば、熱機械分析等の公知の方法により測定することができる。熱機械分析装置としては、例えば、(株)リガク製の「Thermo Plus TMA8310」が挙げられる。本発明において、絶縁層の線熱膨張係数は、引張加重法(JIS K7197)で熱機械分析を行った際の、平面方向の25℃〜150℃の範囲における平均線熱膨張係数である。
【0158】
第1実施形態及び第2実施形態の別を問わず、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)絶縁層の表面に回路を形成する工程をさらに実施してもよい。したがって一実施形態において、本発明の積層板は、絶縁層の表面に形成された回路を含む。
【0159】
なお、支持体は、第1実施形態及び第2実施形態の別を問わず、絶縁層の表面に回路を形成する以前に除去すればよい。詳細には、第1実施形態において、支持体は、工程(I−1)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)との間、又は工程(IV)と工程(V)との間に除去すればよい。第2実施形態において、支持体は、工程(II−1)と工程(II−2)との間、工程(II−2)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)との間、又は工程(IV)と工程(V)との間に除去すればよい。支持体として有機支持体を使用する場合、該有機支持体は剥離除去することができる。支持体として金属支持体を使用する場合、該金属支持体はエッチング除去することができる。
【0160】
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物層及び絶縁樹脂層の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0161】
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30〜90℃の膨潤液に絶縁層を1分間〜20分間浸漬することにより行うことができる。酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃〜80℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間〜30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%〜10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30〜80℃の中和液に5分間〜30分間浸漬させることにより行うことができる。
【0162】
先述のとおり、薄い絶縁樹脂層を使用して薄型の絶縁層を形成する場合にあっては、形成される絶縁層が粗化処理後に高い表面粗度を呈する場合があった。これに対し、本発明によれば、薄型でありながら粗化処理後に低い表面粗度を示す絶縁層を有利に形成することができる。一実施形態において、粗化処理後の絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは250nm以下、より好ましくは240nm以下、さらに好ましくは220nm以下、さらにより好ましくは200nm以下、190nm以下、180nm以下、170nm以下、160nm以下、又は150nm以下である。Ra値の下限は特に限定はされないが、0.5nm以上が好ましく、1nm以上がより好ましい。絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。非接触型表面粗さ計の具体例としては、ビーコインスツルメンツ社製の「WYKO NT3300」が挙げられる。
【0163】
工程(V)は、絶縁層の表面に回路(導体層)を形成する工程である。
【0164】
導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0165】
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0166】
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、通常3μm〜50μm、好ましくは5μm〜30μmである。
【0167】
導体層は、めっきプロセスにより形成することができる。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0168】
まず、絶縁層の表面に、無電解めっきによりめっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応してめっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチングなどにより除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0169】
絶縁層と導体層とは十分な剥離強度(密着強度)を示すことが求められ、一般に、絶縁層表面の凹凸に起因するアンカー効果によって斯かる密着性を得ている。しかしながら、絶縁層表面の凹凸が大きいと、配線パターン形成時にエッチングで不要なめっきシード層を除去する際、アンカー部分のシード層が除去され難く、アンカー部分のめっきシード層を十分に除去し得る条件でエッチングした場合、配線パターンの溶解が顕著化し、回路の微細化の妨げとなっていた。これに対し、本発明によれば、薄型の絶縁層を形成する場合であっても、絶縁層と導体層との間の十分な剥離強度を保ちつつ、粗化処理後の表面粗度が低い絶縁層を有利に得ることができる。したがって本発明は、回路の微細化と絶縁層の薄型化の双方に著しく寄与するものである。例えば、導体回路幅(ライン;L)と導体回路間の幅(スペース;S)の比(L/S)が好ましくは35/35μm以下、より好ましくは30/30μm以下、さらに好ましくは25/25μm以下、20/20μm以下、15/15μm以下、又は10/10μm以下の微細な回路を歩留まりよく形成することができる。
【0170】
本発明の積層板は、その製造方法や構造(例えば、第1実施形態における内層基板の使用の有無、第1及び第2実施形態における回路の有無など)に応じて、種々の用途に使用し得る。例えば、プリント配線板の製造に用いられる絶縁性コア基板、内層回路基板等の内層基板として用いてもよく、プリント配線板として用いてもよい。
【0171】
[半導体装置]
本発明の積層板からなるプリント配線板を用いて、あるいは本発明の積層板を用いて製造されたプリント配線板を用いて、半導体装置を製造することができる。本発明の積層板を用いることにより、ピーク温度が260℃と高い半田リフロー温度を採用する実装工程において、絶縁層の膨れ等に起因した絶縁層−導体層(回路)間の剥離を有利に抑制することができ、高いリフロー信頼性を実現し得る。
【0172】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【0173】
本発明の半導体装置は、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0174】
本発明の半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、などが挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
【実施例】
【0175】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、「部」は、別途明示のない限り、「質量部」を意味する。
【0176】
<測定方法・評価方法>
まずは各種測定方法・評価方法について説明する。
【0177】
〔評価用基板の調製〕
(1)内層回路基板の下地処理
ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.8mm、松下電工(株)製「R5715ES」)の両面にエッチングにより回路パターンを形成し内層回路基板を作製した。得られた内層回路基板の銅回路を、マイクロエッチング剤(メック(株)製「CZ8100」)で粗化処理した。
【0178】
(2)積層板の作製
実施例及び比較例で作製した樹脂シートと、絶縁樹脂層と、上記(1)で得た内層回路基板とを用いて、支持体/絶縁層/内層回路基板/絶縁層/支持体の層構成を有する積層板を作製した。絶縁樹脂層としては、プリプレグ(日立化成(株)製「GEA−800G」、厚さ0.06mm)を用いた。
【0179】
積層板は、真空熱プレス装置(北川精機(株)製「VH1−1603」)を用いて作製した。詳細には、下記の構造を1セットとし、これを3セット重ねた状態で、真空熱プレス処理することにより実施した。
【0180】
構造:クッション紙/SUS板/離型フィルム/樹脂シート(支持体/樹脂組成物層)/絶縁樹脂層/内層回路基板/絶縁樹脂層/樹脂シート(樹脂組成物層/支持体)/離型フィルム/SUS板/クッション紙
【0181】
クッション紙としては阿波製紙(株)製「AACP−9N」(厚さ800μm)を用い、離型フィルムとしては旭硝子(株)製「アフレックス 50N NT」(厚さ50μm)を用いた。また、SUS板の厚さは1μmであった。
【0182】
真空熱プレス処理の条件は下記のとおりである。
温度:昇温速度5℃/分にて室温(常温)から220℃まで昇温し、220℃にて90分間保持し、その後、降温速度5℃/分にて220℃から室温まで降温
圧力(押圧力):室温からの昇温開始時に押圧力を50kgf/cm
2(4.9MPa)としてこれを降温終了時まで保持
雰囲気の圧力:70mmHg〜74mmHg(9.3×10
−3MPa〜9.9×10
−3MPa)
【0183】
(3)支持体の除去
支持体が有機支持体である場合は、剥離除去した。支持体が金属支持体である場合は、積層板を塩化第二鉄水溶液に25℃で10分間浸漬させ、エッチング除去した。
【0184】
(4)粗化処理
支持体の除去後、積層板を、膨潤液(アトテックジャパン(株)製「スエリングディップ・セキュリガントP」)に60℃で5分間、次いで酸化剤(アトテックジャパン(株)製「コンセントレート・コンパクトCP」、過マンガン酸カリウム濃度約6%、水酸化ナトリウム濃度約4%の水溶液)に80℃で20分間、最後に中和液(アトテックジャパン(株)製「リダクションソリューション・セキュリガントP」)に40℃で5分間浸漬した。得られた基板を「評価基板1」と称する。
【0185】
(5)導体層の形成
その後、セミアディティブ法に従って、絶縁層表面にめっきプロセスにより導体層を形成した。詳細には、無電解銅めっきにより厚さ1μmの銅層を形成した。その後、電解銅めっきを行い、全体厚さ30μmの導体層(銅層)を形成した。得られた基板を「評価基板2」と称する。
【0186】
<樹脂組成物層表面の外観の評価>
実施例及び比較例で作製した樹脂シートを、100mmx100mmの試験片に切断し、マイクロスコープ(KEYENCE(株)製マイクロスコープ「VH−5500」)を用いて樹脂組成物層の表面状態を観察した。下記基準に基づき、樹脂シートにおける樹脂組成物層表面の外観を評価した。
評価基準:
○:ピンホールが2個以下
×:ピンホールが3個以上
【0187】
<絶縁層の線熱膨張係数の測定>
実施例及び比較例で作製した樹脂シートと、絶縁樹脂層とを、樹脂組成物層と絶縁樹脂層とが接合するように配置し、上記〔評価用基板の調製〕記載の加熱圧着条件に準じた条件にて樹脂組成物層と絶縁樹脂層とを硬化させて硬化物フィルムを得た。絶縁樹脂層としては、プリプレグ(日立化成(株)製「GEA−800G」、厚さ0.06mm)を用いた。得られた硬化物フィルムから支持体を除去し、幅約5mm、長さ約15mmの試験片に切断した。該試験片について、熱機械分析装置((株)リガク製「Thermo Plus TMA8310」)を用いて、引張加重法(JIS K7197)にて熱機械分析を行った。詳細には、試験片を熱機械分析装置に装着した後、荷重1g、昇温速度5℃/分、温度範囲25℃〜250℃の測定条件にて連続して2回測定した。そして2回目の測定において、25℃から150℃までの範囲における平均線熱膨張係数(ppm/℃)を算出した。そして下記基準に基づき、絶縁層の線熱膨張係数を評価した。
評価基準:
○:平均線熱膨張係数が15ppm/℃以下
×:平均線熱膨張係数が15ppm/℃より大きい
【0188】
<絶縁層表面の外観の評価>
評価基板1を、100mmx100mmの試験片に切断し、マイクロスコープ(KEYENCE(株)製マイクロスコープ「VH−5500」)を用いて表面状態を観察した。下記基準に基づき、絶縁層表面の外観を評価した。
評価基準:
○:シート状繊維基材の露出なし(0箇所)
×:シート状繊維基材の露出あり(1箇所以上)
【0189】
<絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)の測定>
評価基板1について、非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ社製「WYKO NT3300」)を用いて、VSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして得られる数値によりRa値を求めた。無作為に選んだ10点の平均値を求め、下記基準にて算術平均粗さ(Ra)を評価した。
評価基準:
○:Raの平均値が250nm以下
×:Raの平均値が250nmより大きい
【0190】
<リフロー耐性の評価>
評価基板2を、100mmx100mmの試験片に切断した。得られた試験片について、リフロー装置(アントム(株)製「HAS6116」)を用い、IPC/JEDEC J−STD−020C(「Moisture/Reflow Sensitivity Classification For Nonhermetic Solid State Surface Mount Devices」、2004年7月)に記載されるリフロー温度プロファイル(鉛フリーアセンブリ用プロファイル;ピーク温度260℃)にて模擬的なリフロー工程を20回繰り返した。そして、下記評価基準に従って、リフロー耐性を評価した。
評価基準:
○:絶縁層と導体層間の剥離が2箇所以下
×:絶縁層と導体層間の剥離が3箇所以上
【0191】
<作製例1>支持体1の作製
アルキド系樹脂(日立化成ポリマー(株)製「テスファイン303」、固形分48質量%、トルエンとイソプロピルアルコールを4:1の割合で含む溶剤との混合液)100部、及びp−トルエンスルホン酸溶液(日立化成ポリマー(株)製「ドライヤー900」、固形分50質量%、トルエンとイソプロピルアルコールを4:1の割合で含む溶剤との混合液)2.5部を、トルエンとイソプロピルアルコールを4:1の割合で含む溶剤と混合して、固形分濃度1.5質量%の離型剤液を調製した。該離型剤液を、乾燥後の離型層の厚さが0.1μmとなるようにPPSフィルム(東レ(株)製「トレリナ 25−3030」、厚さ25μm)の片面に塗布し、150℃で1分間乾燥させて、支持体1(離型層付き有機支持体)を調製した。支持体1の離型層表面のRaは110nm、離型層と反対側の表面のRaは110nmであった。
【0192】
<作製例2>支持体2の作製
PPSフィルム(東レ(株)製「トレリナ 25−3030」、厚さ25μm)に代えてポリスチレンフィルム(倉敷紡績(株)製「オイディスCA−F」、厚さ50μm)を使用した以外は、作製例1と同様にして、支持体2(離型層付き有機支持体)を調製した。支持体2の離型層表面のRaは60nm、離型層と反対側の表面のRaは60nmであった。
【0193】
<調製例1>樹脂ワニス1の調製
液状ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)製「ZX1059」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂との1:1混合品、エポキシ当量169)15部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000L」、エポキシ当量約280)40部、フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX6954BH30」、不揮発成分30質量%、MEKとシクロヘキサノンを1:1の割合で含む溶剤との混合液)25部を、MEK40部及びトルエン40部の混合溶剤に撹拌しながら溶解させた。そこへ、トリアジン骨格含有フェノールノボラック系硬化剤(DIC(株)製「LA−7054」、水酸基当量125、不揮発成分60質量%のMEK溶液)12.5部、活性エステル硬化剤(DIC(株)製「HPC8000−65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)35部、イミダゾール系硬化促進剤(三菱化学(株)製「P200H50」、イミダゾール−エポキシ樹脂のアダクト体、不揮発成分50質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)をシクロヘキサノンで不揮発成分25質量%に調整した溶液5部、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業(株)製「BX−5Z」、不揮発成分10質量%、MEKとシクロヘキサノンを1:1の割合で含む溶剤との混合液)50部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ((株)アドマテックス製「SO−C1」、平均粒径0.5μm、単位表面積当たりのカーボン量0.39mg/m
2)80部、ゴム粒子(アイカ工業(株)製「スタフィロイドAC3401N」)3部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニス1を調製した。
【0194】
<調製例2>樹脂ワニス2の調製
活性エステル硬化剤(DIC(株)製「HPC8000−65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)35部に代えて、活性エステル硬化剤(DIC(株)製「HPC8000L−65M」、活性基当量約220、不揮発成分65質量%のMEK溶液)35部を使用した以外は、調製例1と同様にして、樹脂ワニス2を調製した。
【0195】
<調製例3>樹脂ワニス3の調製
1)ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業(株)製「BX−5Z」、不揮発成分10質量%、MEKとシクロヘキサノンを1:1の割合で含む溶剤との混合液)の配合量を20部に変更した点、及び2)フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX6954BH30」、不揮発成分30質量%、MEKとシクロヘキサノンを1:1の割合で含む溶剤との混合液)の配合量を10部に変更した点以外は、調製例1と同様にして、樹脂ワニス3を調製した。
【0196】
<調製例4>樹脂ワニス4の調製
フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX6954BH30」、不揮発成分30質量%、MEKとシクロヘキサノンを1:1の割合で含む溶剤との混合液)の配合量を120部に変更した以外は、調製例1と同様にして、樹脂ワニス4を調製した。
【0197】
<調製例5>樹脂ワニス5の調製
アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ((株)アドマテックス製「SO−C1」、平均粒径0.5μm、単位表面積当たりのカーボン量0.39mg/m
2)の配合量を45部に変更した以外は、調製例1と同様にして、樹脂ワニス5を調製した。
【0198】
<調製例6>樹脂ワニス6の調製
アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ((株)アドマテックス製「SO−C1」、平均粒径0.5μm、単位表面積当たりのカーボン量0.39mg/m
2)の配合量を150部に変更した以外は、調製例1と同様にして、樹脂ワニス6を調製した。
【0199】
<調製例7>樹脂ワニス7の調製
イミダゾール系硬化促進剤(三菱化学(株)製「P200H50」、イミダゾール−エポキシ樹脂のアダクト体、不揮発成分50質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)をシクロヘキサノンで不揮発成分25質量%に調整した溶液の配合量を0.8部に変更した以外は、調製例1と同様にして、樹脂ワニス7を調製した。
【0200】
<調製例8>樹脂ワニス8の調製
イミダゾール系硬化促進剤(三菱化学(株)製「P200H50」、イミダゾール−エポキシ樹脂のアダクト体、不揮発成分50質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)をシクロヘキサノンで不揮発成分25質量%に調整した溶液の配合量を21部に変更した以外は、調製例1と同様にして、樹脂ワニス8を調製した。
【0201】
<調製例9>樹脂ワニス9の調製
1)活性エステル硬化剤(DIC(株)製「HPC8000−65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)の配合量を20部に変更した点、及び2)シアネートエステル系硬化剤(ロンザジャパン(株)製「BA230−75M」、シアネート当量約232、ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー、不揮発成分75質量%のMEK溶液)10部をさらに添加した点以外は、調製例1と同様にして、樹脂ワニス9を調製した。
【0202】
<調製例10>樹脂ワニス10の調製
ゴム粒子(アイカ工業(株)製「スタフィロイドAC3401N」)の配合量を7部に変更した以外は、調製例1と同様にして、樹脂ワニス10を調製した。
【0203】
<調製例11>樹脂ワニス11の調製
1)ゴム粒子(アイカ工業(株)製「スタフィロイドAC3401N」)の配合量を7部に変更した点、2)イミダゾール系硬化促進剤(三菱化学(株)製「P200H50」、イミダゾール−エポキシ樹脂のアダクト体、不揮発成分50質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)をシクロヘキサノンで不揮発成分25質量%に調整した溶液5部に代えて、アミン系硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)10部を使用した以外は、調製例1と同様にして、樹脂ワニス11を調製した。
【0204】
<調製例12>樹脂ワニス12の調製
1)活性エステル硬化剤(DIC(株)製「HPC8000−65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)の配合量を20部に変更した点、及び2)カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル(株)製「V−03」、不揮発成分50質量%のトルエン溶液)10部をさらに添加した点以外は、調製例1と同様にして、樹脂ワニス12を調製した。
【0205】
<調製例13>樹脂ワニス13の調製
活性エステル硬化剤(DIC(株)製「HPC8000−65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)35部に代えて、ナフトール系硬化剤(新日鉄住金化学(株)製「SN485」、水酸基当量215、不揮発成分60質量%のMEK溶液)38部を使用した以外は、調製例1と同様にして、樹脂ワニス13を調製した。
【0206】
<調製例14>樹脂ワニス14の調製
活性エステル硬化剤(DIC(株)製「HPC8000−65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)35部に代えて、シアネートエステル系硬化剤(ロンザジャパン(株)製「BA230−75M」、シアネート当量約232、ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー、不揮発成分75質量%のMEK溶液)30部を使用した以外は、調製例1と同様にして、樹脂ワニス14を調製した。
【0207】
樹脂ワニス1乃至14の組成を表1に示す。
【0208】
【表1】
【0209】
<実施例1>
樹脂ワニス1を、支持体1の離型層表面に均一に塗布し、60℃〜120℃(平均90℃)で3分間乾燥させた後、さらに180℃で4分間乾燥させて、樹脂組成物層の厚さが4μmである樹脂シートを作製した。なお、樹脂組成物層の厚さは、接触式層厚計((株)ミツトヨ製「MCD−25MJ」)を用いて測定した。
【0210】
作製した樹脂シートについて、上記<測定方法・評価方法>に従って、各評価を実施した。別途明示のない限り、以下の実施例及び比較例においても同様である。
【0211】
<実施例2>
樹脂ワニス1に代えて樹脂ワニス2を使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製した。
【0212】
<実施例3>
支持体1に代えて支持体3(金属支持体)を使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製した。支持体3としては、銅箔(JX日鉱日石金属鉱業(株)製「HLP」、厚さ18μm、平滑面のRaは160nm、粗面のRaは450nm)を使用し、該銅箔の平滑面に樹脂ワニス1を塗布した。
【0213】
<実施例4>
支持体1に代えて支持体2を使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製した。
【0214】
<実施例5>
樹脂ワニス1に代えて樹脂ワニス3を使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製した。
【0215】
<実施例6>
樹脂ワニス1に代えて樹脂ワニス4を使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製した。
【0216】
<実施例7>
樹脂ワニス1に代えて樹脂ワニス5を使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製した。
【0217】
<実施例8>
樹脂ワニス1に代えて樹脂ワニス6を使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製した。
【0218】
<実施例9>
樹脂ワニス1に代えて樹脂ワニス7を使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製した。
【0219】
<実施例10>
樹脂ワニス1に代えて樹脂ワニス8を使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製した。
【0220】
<実施例11>
樹脂ワニス1に代えて樹脂ワニス9を使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製した。
【0221】
<実施例12>
樹脂ワニス1に代えて樹脂ワニス10を使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製した。
【0222】
<実施例13>
樹脂ワニス1に代えて樹脂ワニス11を使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製した。
【0223】
<実施例14>
樹脂ワニス1に代えて樹脂ワニス12を使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製した。
【0224】
<比較例1>
比較例1においては、樹脂シートを使用することなく、各評価を実施した。すなわち、上記<測定方法・評価方法>において、樹脂シートを使用することなく、各評価を実施した。
【0225】
<比較例2>
樹脂組成物層の厚さを8μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製した。
【0226】
<比較例3>
樹脂ワニス1に代えて樹脂ワニス13を使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製した。
【0227】
<比較例4>
樹脂ワニス1に代えて樹脂ワニス14を使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製した。
【0228】
【表2】