(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態を説明する。
A.第1実施形態:
A−1.全体構成:
図1は、本発明の第1実施形態としてのカードリーダを示す説明図である。
図1(a)には正面図を示し、
図1(b)には部分断面側面図を示した。カードリーダ10は、図示しないIDカードの情報を読み取るための装置であり、本実施形態では、例えばオフィスへの入退室を管理する入退室管理システムの一部を構成する。IDカードは、オフィスの従業員が所持を義務付けられた個人認証用の非接触型ICカードである。
【0016】
図1に示すように、カードリーダ10は、装置本体20と、カバー40と、押しボタンスイッチ50とを備える。
【0017】
装置本体20は、正面側板部20aと側面側板部20bと背面側板部20cとからなる箱形状であり、背面側板部20cを壁に接するようにして、オフィスの入退室ドアの近傍に取り付けられている。装置本体20の内部には、ICチップ22が実装された回路基板24と、回路基板24に接続されたループアンテナ(アンテナコイル)26とが備えられている。ICチップ22は、データを記憶するメモリと、CPUと、データの変復調等を行う無線部と有する。無線部に回路基板24を介してループアンテナ26が接続される。ループアンテナ26は、正面側板部20aに向かい合って配置されている。なお、「向かい合って」とは、ループアンテナ26のループ面が向かい合うことで、ループ面と正面側板部20aとは、平行もしくは略平行となるように配置される。また、平行もしくは略平行となる配置に換えて、ループ面と正面側板部20aとのなす角が135度から225度までの範囲内としてもよい。
【0018】
カバー40は、装置本体20の正面側板部20aと側面側板部20bの一部とを覆うように、装置本体20に装着されている。カバー40の正面40aに、IDカードの読取エリアRA(
図1(b))が形成される。読取エリアRAは、ループアンテナ26の通信範囲に対応する領域であり、ループアンテナ26のメインローブMLの範囲と、サイドローブSLの範囲の少なくとも一部と、を含む。なお、読取エリアRAは、便宜上に記したものであり、実際は真四角でもないし、読取可否の境界を厳密に区分するものでもない。また、本実施形態では、ループアンテナ26のループ面と正面側板部20aとが、平行もしくは略平行となるように配置されているが、必ずしもこれらの配置に限る必要はなく、ループアンテナ26は、正面側板部20aの付近に設けられて、正面側板部20aに対応したカバー40の正面40aにIDカードの読取エリアRAを形成することができれば、いずれの配置とすることもできる。
【0019】
A−2.IDカードの構成:
図2は、装置本体20にIDカード70を密着した状態のカードリーダ10の正面を示す説明図である。IDカード70は、利用者によって入退室の際に、カードリーダ10の読取エリアRAに密着または近接される。IDカード70としての非接触型ICカードは、内部に、ICチップ72と、ICチップ72に接続されるアンテナコイル74とを備える。カードリーダ10は、ループアンテナ26(
図1)の通信範囲に入ったIDカード70との間でループアンテナ26およびアンテナコイル74を介して通信を行い、IDカード70のICチップ72内のメモリからデータの読み出しを行う。なお、本実施形態では、IDカード70に対してはデータの読み出しだけを行う構成としたが、これに換えて、データの読み出しに加えて、ICチップ72内のメモリへのデータの書き込みを行う構成としてもよい。
【0020】
上記読み出しを行うデータは、本実施形態では、個人を認証する認証データである。入退室管理システムは、カードリーダ10によってIDカード70から読み出した認証データが、予め登録された認証比較用データと一致するか否かを判定し、一致する場合に、オフィスへ入退室するドアの解錠を行う。
【0021】
A−3.押しボタンスイッチの構成:
図1に戻って、カードリーダ10は、前述したように、押しボタンスイッチ50を備える。押しボタンスイッチ50は、カバー40の正面40aに形成された読取エリアRAにおけるループアンテナ26のメインローブMLの範囲内に、両面テープによって貼り付けられている。なお、両面テープに換えて、接着剤、ボルト止め等の他の手法によって取り付けられる構成としてもよい。押しボタンスイッチ50は、本実施形態では、警備機器に連動する「警備」を指定するためのものである。
【0022】
本実施形態において、正面側板部20aと側面側板部20bと背面側板部20cとからなるケース部分に加えてカバー40が、[発明の概要]の欄に記載した本発明の一形態における「
筺体」に相当する。すなわち、装置本体20のケース部分に他の部材が付設されているような場合には、本発明においては、その部材も筺体の一部に該当するものとする。なお、本実施形態では、カバー40を備える構成としたが、これに換えて、カバー40が装着されていない構成とし、押しボタンスイッチ50を装置本体20の正面側板部20aに直接取り付ける構成としてもよい。
【0023】
図3は、押しボタンスイッチ50の内部構成を示す説明図である。押しボタンスイッチ50は、内部に、ICチップ52と、アンテナコイル54と、スイッチ本体56とを備える。
【0024】
アンテナコイル54は、平面内においてコイル状に巻回した面ループ状の形態であり、ICチップ52と接続されている。アンテナコイル54は、棒状、パッチ状、スロット状、螺旋状、パターン状等の様々な形態のアンテナに換えることもできる。
【0025】
ICチップ52は、CPU52a、メモリ52b、無線部52c、および電源整流部52d等を備える。無線部52cは、復調を行う受信部と、変調を行う送信部とを有する。電源整流部52dは、電磁誘導方式により発生した電力を整流する。CPU52aは、復調・変調を制御する処理や、メモリ52bからタグ情報を読み出す処理等を行う。メモリ52bには、タグ情報として、個体を識別する識別データや、押しボタンスイッチであることを示す種別データ等が予め記憶されている。ICチップ52とアンテナコイル54とによって、RFタグ(radio frequency)51が構成される。
【0026】
スイッチ本体56は、アンテナコイル54の途中に組み込まれ、押しボタンスイッチ50の有するボタン形状の操作部58(
図1(a))に対する利用者による押圧操作と連動して、アンテナコイル54をON(回路が閉じた状態)したり、OFF(回路が開いた状態)したりする。本実施形態では、スイッチ本体56は、メンブレンスイッチとしたが、これに換えて、リードスイッチ、マイクロスイッチ、圧電スイッチ、メンブレンスイッチ以外の導電ゴムスイッチ等としてもよい。なお、操作部58の高さh(
図1(b)は、低い方が好ましく、押しボタンとしての機能を損ねることなく、かつ、読取エリアRAに対して密着または近接されるIDカードの読み取りに支障をきたすことのない高さとなっている。押しボタンスイッチ50は、初期状態ではアンテナコイル54はOFFに保たれており、押圧操作を行うとアンテナコイル54はONされる。これに換えて、初期状態ではアンテナをONに保ち、押圧操作を行うとアンテナコイル54はOFFされる構成としてもよい。また、スイッチ本体56は、アンテナコイル54の途中に組み込まれた構成に換えて、ICチップ52内に組み込むことで、アンテナコイル54による送受信をON/OFFする構成としてもよい。
【0027】
図4は、アンテナコイル54がONされた場合に実行されるRFタグ51とICチップ22との間の通信原理を示す説明図である。なお、本実施形態におけるRFタグ51は、カードリーダ10からの信号をエネルギー源として動作するパッシブ型のタグである。装置本体20の有するICチップ22は、ループアンテナ26を介して信号を磁界に乗せて送信する(工程S1)。次いで、押しボタンスイッチ50のRFタグ51は、ループアンテナ26からの磁界をアンテナコイル54を介して受信する(工程S2)。そうすると、RFタグ51のアンテナコイル54はループアンテナ28の動作周波数において共振状態となり、RFタグ51のアンテナコイル54に電力が発生する(工程S3)。続いて、RFタグ51のICチップ52は、発生した電力により、ICチップ52に備えられるCPU52aおよびメモリ52b(
図3)を動作させ(すなわち、起動し)、必要な処理を行う(工程S4)。
【0028】
続いて、ICチップ52は、RFタグ51内のデータを磁界に乗せてアンテナコイル54から返信する(工程S5)。その後、装置本体20の有するループアンテナ26で、RFタグ51からの磁界を受信し(工程S6)、装置本体20の有するICチップ22で、磁界からデータを取り出す(工程S7)。以上のようにして、アンテナコイル54がONされた場合には、押しボタンスイッチ50に備えられるRFタグ51と装置本体20の有するICチップ22との間で通信が行われ、RFタグ51と装置本体20の有するICチップ22は、データの送受信を互いに行うことができる。なお、前述したように、本実施形態では電磁誘導方式によって情報の伝達を行っていたが、これに換えて、電波方式によって伝達を行う構成としてもよい。
【0029】
本実施形態において、ループアンテナ26が[発明の概要]の欄に記載した本発明の一形態における「第1のアンテナ」に相当し、ICチップ22が前記一形態における「制御部」に相当し、押しボタンスイッチ50が前記一形態における「スイッチ部」に相当し、押しボタンスイッチ50が備えるアンテナコイル54が前記一形態における「第2のアンテナ」に相当する。
【0030】
A−4.タグ情報読取処理:
図5は、装置本体20のICチップ22において実行されるタグ情報読取処理を示すフローチャートである。このタグ情報読取処理は、ICチップ22に備えられるCPUにおいて、所定時間毎に繰り返し実行される。処理が開始されると、CPUは、まず、装置本体20の有するループアンテナ26を介してタグ補足信号を送信する(ステップS110)。「タグ補足信号」とは、ループアンテナ26の通信範囲に入ったRFタグを捕捉するための信号であり、通信範囲にRFタグが存在する存在しないに関わらず、タグ補足信号を送信する。ここで言う「RFタグ」は、押しボタンスイッチ50に含まれる前述したRFタグ51は勿論のこと、IDカード70である非接触型ICカードを含む一般的な概念であり、ステップS110では、ループアンテナ26の通信範囲に押しボタンスイッチ50のRFタグ51やIDカード70が存在するか否かを判定するためにタグ捕捉信号を送信する。
【0031】
押しボタンスイッチ50の操作部58(
図1)が押圧操作されて、押しボタンスイッチ50のアンテナコイル54がONとなっている場合、ループアンテナ26(
図1)の通信範囲に押しボタンスイッチ50のRFタグ51が存在することとなり、
図4で既述した原理に従って、そのRFタグ51と装置本体20のICチップ22との間で通信が行われる。この通信によって、RFタグ51は、アンテナコイル54およびループアンテナ26を介して、受信した旨を示す信号(以下、「受取信号」と呼ぶ)を装置本体20のICチップ22に返す。一方、押しボタンスイッチ50の操作部58が押圧操作されずに、アンテナコイル54が非導通状態となっている場合には、ループアンテナ26から送信される電波を受信することができないことから、RFタグ51は、ICチップ22に対して受取信号を返すことはない。
【0032】
また、読取エリアRAにIDカード70が密着または近接されて、ループアンテナ26の通信範囲にIDカード70が存在する場合、
図4と同じ原理で、IDカード70と装置本体20のICチップ22との間で通信が行われることになる。この通信によって、IDカード70のICチップ72は、アンテナコイル74およびループアンテナ26を介して、受取信号を装置本体20のICチップ22に返す。
【0033】
ステップS110に続くステップS120では、CPUは、押しボタンスイッチ50のRFタグ51やIDカード70から、受取信号を受けたか否かを判定する。ここで、受取信号を受けていないと判定された場合に、「リターン」に抜けて、このタグ情報読取処理を一旦終了する。
【0034】
一方、ステップS120で、RFタグ51やIDカード70から受取信号を受けたと判定されると、CPUは、受取信号を受けたRFタグ、すなわち、押しボタンスイッチ50のRFタグ51またはIDカード70に対して、情報読取信号を送信する(ステップS130)。なお、複数のRFタグ、すなわち、押しボタンスイッチ50のRFタグ51とIDカード70との双方から受取信号を受けたと判定された場合には、受信信号を先に受けたRFタグを「受取信号を受けたRFタグ」と扱う。あるいは、双方から受取信号を受けたと判定された場合には、予め定めた一方側、例えば押しボタンスイッチ50のRFタグ51を「受取信号を受けたRFタグ」と扱う構成としてもよい。
【0035】
続いて、CPUは、受
取信号を受けたRFタグから、タグ情報としてのデータを受信する処理を行う(ステップS140)。詳しくは、受
取信号を受けたRFタグが押しボタンスイッチ50のRFタグ51である場合には、ICチップ52のメモリ52bから、先に説明したタグ識別情報としての識別データと種別データとを受信する。受
取信号を受けたRFタグがIDカード70である場合には、ICチップ52のメモリ52bから、同様に識別データと種別データとを受信する。
【0036】
その後、CPUは、ステップS140によって受信した種別データが、「押しボタンスイッチ」と「IDカード」のうちのいずれを示すものであるかを判定し(ステップS150)、「押しボタンスイッチ」であると判定された場合には、予め用意されたボタンスイッチONフラグに値1をセットする(ステップS160)。ボタンスイッチONフラグは、押しボタンスイッチ50がONされたことを示すもので、ICチップ52のメモリ52bに記憶されている。なお、ステップS160において、ステップS140によって受信した識別データが予め登録された登録データと一致するか否かを判別し、一致する場合に限り、ボタンスイッチONフラグに値1をセットするようにしてもよい。こうすることで、押しボタンスイッチ50に換えて別なボタンスイッチが取り付けられることによる不正を防止することができる。
【0037】
一方、ステップS150によって種別データが「IDカード」と判定された場合には、IDカード70に記憶された認証データを読み取る処理を行う(ステップS170)。ステップS160またはステップS170の実行後、CPUは、「リターン」に抜けて、このタグ情報読取処理を一旦終了する。
【0038】
ステップS170によって読み取った認証データは、別ルーチンによって実行される個人認証処理で用いられることになる。個人認証処理によれば、前記認証データを予め登録されたデータと比較することで個人の認証を行う。認証が成立した場合に扉の解錠等がなされる。
【0039】
一方、ステップS160によってボタンスイッチONフラグが値1にセットされた場合には、別ルーチンによって警備機器による警備状態へ移行する処理を行う。なお、ボタンスイッチONフラグが値1である場合に直ちに警備状態へ移行することも可能であるが、本実施例では、ボタンスイッチONフラグが値1にセットされてから所定の期間の間に、IDカード70による前述した認証が成立した場合に、警備状態へ移行する。ボタンスイッチONフラグが値1にセットされてから所定の期間の間に認証が成立しなかった場合には、警備状態への移行は行わない。
【0040】
A−5.実施形態効果:
以上、詳述したように、本実施形態のカードリーダ10によれば、装置本体20のカバー40に押しボタンスイッチ50を取り付けるだけで、押しボタンスイッチ50のRFタグ51による装置本体20のICチップ22との通信によって、警備状態へ移行するスイッチとしての機能を実現することができる。このために、カードリーダ10によれば、押しボタンスイッチ50の取付位置を変える設計変更を容易に行うことができる。
【0041】
図6は、参考例の部分断面側面図である。この参考例のカードリーダ110では、押しボタンスイッチ150は、単なる押しボタンであり、第1実施形態のようにRFタグを備える構成ではなく、ケーブル152によって回路基板124に接続されている。このため、参考例によれば、押しボタンスイッチ150の取り付け位置を他の位置に変更しようとする場合、ボタン用の孔160の位置、ケーブル152の位置、ケーブル152を回路基板124に接続する部品162の位置などを変更する必要がある。したがって、参考例によれば、押しボタンスイッチ150の取り付け位置についての設計変更が容易ではない。これに対して、第1実施形態のカードリーダ10は、押しボタンスイッチ50と装置本体20のICチップ22との間を有線にて接続している訳ではないので、上記の様々な位置変更が不要となり、押しボタンスイッチ150の取り付け位置を変える設計変更が容易である。
【0042】
また、参考例のカードリーダ110では、ボタン用の孔160からの水の浸入を防止するために、カバー140と押しボタンスイッチ150との間にゴムパッキン170を設ける必要があった。これに対して、本実施形態のカードリーダ10では、押しボタンスイッチ50を取り付けの際に、カバー140や装置本体120に孔を開ける必要がないことから、防水対策が容易であるという効果も奏する。また、参考例のカードリーダ110では、押しボタンスイッチ150と回路基板124との間がケーブル152によって接続されていることから、カバー140の取り外しが困難であった。これに対して、本実施形態のカードリーダ10では、カバー40の取り外しが容易であるという効果も奏する。本実施形態のカードリーダ10では、カバー40ごと取り替えることによっても、押しボタンスイッチ50の取付位置を変えることができる。
【0043】
さらに、本実施形態のカードリーダ10によれば、押しボタンスイッチを1つから2以上に増加する等の、押しボタンスイッチを新たに追加する設計変更も容易に行うことができる。
【0044】
さらに、本実施形態のカードリーダ10によれば、押しボタンスイッチ50は、IDカード70の読取エリアRA内に設けられていることから、次のような効果も奏する。
【0045】
読取エリアRAは、IDカード70との間の通信を高い確実性でもって行うことができ、この読取エリアRA内に押しボタンスイッチ50が設けられることから、押しボタンスイッチ50との間の通信も高い確実性でもって行うことができる。その上、押しボタンスイッチ50が押圧操作されていないときには、押しボタンスイッチ50のアンテナコイル54はOFFに保たれループアンテナ26の動作周波数において非共振状態に維持されることから、アンテナコイル54は電波からみれば存在しないものとなり、IDカード70の読み取りの際の障害とはならない。したがって、IDカード70に対する通信、押しボタンスイッチ50に対する通信を共に高い確実性でもって行うことができる。さらに、カードリーダ10によれば、
図6の参考例のように読取エリアの外側にスイッチ部が配置される訳ではないので、装置サイズをコンパクト化することができる。
【0046】
B.第2実施形態:
図7は、本発明の第2実施形態としてのカードリーダを示す説明図である。
図7(a)には正面図を示し、
図7(b)には部分断面側面図を示した。第2実施形態におけるカードリーダ210は、第1実施形態におけるカードリーダ10と比べて、装置本体220およびカバー240の縦方向のサイズが大きい点と、押しボタンスイッチ250の構成とが異なる。また、押しボタンスイッチ250の相違に伴って、カバー240の構成も一部変わっている。
【0047】
押しボタンスイッチ250は、第1実施形態と同様に、ICチップと、アンテナコイルと、スイッチ本体とによって構成されるが、第1実施形態における押しボタンスイッチ50と比較して、アンテナコイル254が、ICチップとスイッチ本体と操作部とを有する本体部258から分離している点が相違する。
【0048】
アンテナコイル254は、カバー240の正面240aの所定位置に埋設されており、電線259によって本体部258に電気的に接続されている。前記所定位置は、読取エリアRAにおける、装置本体220の有するループアンテナ226のメインローブの範囲内である。なお、RFタグに含まれるアンテナコイル254は、極めて薄く作る事が可能であるため、カバー240の厚みの中に収納することが可能である。
【0049】
装置本体220は、第1実施形態における装置本体20と比べて、筺体の縦方向のサイズが大きい点だけが相違し、内部機器であるICチップ22、回路基板24、およびループアンテナ26は同一である。これにより、装置本体220の内側の上部には、アンテナ26等の内部機器が存在しない空間が存在し、アンテナ26の読取エリアRAは、
図7(b)に示すように下側に少しだけ偏っている。
【0050】
カバー240は、第1実施形態におけるカバー40と比べて、装置本体220のサイズに合わせて縦方向のサイズが大きい点と、アンテナコイル254および電線259が埋設されている点とが相違するが、機能的にはカバー40と同一である。カバー240における、読取エリアRAの外側上方に本体部258が配設されている。すなわち、第2実施形態におけるカードリーダ210では、押しボタンスイッチ250のアンテナコイル254は、読取エリアRAにおけるループアンテナ226のメインローブの範囲内に設けられており、押しボタンスイッチ250の残余の構成であるスイッチ本体とICチップとは、読取エリアRAの外側に設けられている。
【0051】
以上のように構成された第2実施形態におけるカードリーダ210によれば、第1実施形態と同様に、装置本体220のカバー240に押しボタンスイッチ250を取り付けるだけで、押しボタンスイッチ50と装置本体220との通信によってスイッチとしての機能を実現することができる。したがって、カードリーダ210によれば、第1実施形態と同様に、押しボタンスイッチ250の取付位置を変えたり、押しボタンスイッチを新たに追加するなどの設計変更を容易に行うことができる。また、第1実施形態と同様に、防水対策の点でも優れている。さらに、第2実施形態におけるカードリーダ210によれば、押しボタンスイッチ50における人が操作する操作部58を読取エリアRAと分離して配置することができることから、操作部58の取り付け位置の自由度が高い。
【0052】
なお、本実施形態では、押しボタンスイッチ250の本体部258は、カバー240の正面240aにおける読取エリアRAの外側に配設されていたが、これに換えて、カバー240の側面240bに本体部258を設ける構成としてもよい。
【0053】
C.第3実施形態:
図8は、本発明の第3実施形態としてのカードリーダを示す部分断面側面図である。第3実施形態におけるカードリーダ310は、例えば、SUICA(登録商標)のチャージ機などに見られるICカードを差し込むタイプのものである。図示するように、ポケット型の差し込み口360が設けられており、この差し込み口360にICカード370が差し込まれる。この差し込み口360の前側の壁面362に、第1実施形態と同一構成の押しボタンスイッチ50が設けられている。
【0054】
また、カードリーダ310は、第1実施形態と同一構成の装置本体20を備える。本実施形態においても、押しボタンスイッチ50は、壁面362におけるループアンテナ26のメインローブの範囲内に取り付けられている。ICカード370が差し込まれている場合においても、押しボタンスイッチ50と装置本体20との間は通信可能となっている。
【0055】
以上のように構成された第3実施形態におけるカードリーダ310は、第1実施形態のカードリーダ10と同様に、押しボタンスイッチ50の取付位置を変えたり、押しボタンスイッチを新たに追加するなどの設計変更を容易に行うことができる。
【0056】
D.第4実施形態:
図9は、本発明の第4実施形態としてのカードリーダが備える温度スイッチの内部構成を示す説明図である。第4実施形態における温度スイッチ450は、第1実施形態における押しボタンスイッチ50と対応する構成要素であり、第4実施形態におけるカードリーダは、この温度スイッチ450以外に、第1実施形態と同一の装置本体とカバーとを備える。
【0057】
図示するように、温度スイッチ450は、第1実施形態における押しボタンスイッチ50と比べて、操作部58(
図1)に換えてバイメタル458を備える点が異なる。バイメタル458は、温度スイッチ450の表面から露出して配置されており、温度検知部として機能する。なお、温度スイッチ450のカバーに対する取り付け位置は、第1実施形態における押しボタンスイッチ50の取り付け位置と同一である。また、温度スイッチ450は、第1実施形態における押しボタンスイッチ50と同様に、ICチップ52とアンテナコイル54とを備える。ICチップ52とアンテナコイル54は、第1実施形態と同一であるので、図示においては同一の符号を付けた。スイッチ本体456は、アンテナコイル54の途中に組み込まれ、バイメタル458の形状変化と連動して、アンテナコイル54をONしたり、OFFしたりする。
【0058】
上記の構成のカードリーダによれば、温度スイッチ450の周囲の温度が所定値以上となったときに、バイメタル458が湾曲変形して、アンテナコイル54をONする。温度スイッチ450の周囲の温度が所定値を下回ると、バイメタル458の湾曲が戻って、アンテナコイル54をOFFする。
【0059】
以上のように構成した第4実施形態のカードリーダによれば、装置本体のカバーに温度スイッチ450を取り付けるだけで、温度スイッチ450のRFタグ51による装置本体との通信によって、火災報知システムへ火災発生を知らせるスイッチとしての機能を実現することができる。したがって、第4実施形態のカードリーダによれば、温度スイッチ450の取付位置を変えたり、押しボタンスイッチを新たに追加するなどの設計変更を容易に行うことができる。なお、第4実施形態は、第1実施形態において操作部58をバイメタル458に換えた構成であるが、これに換えて、第2実施形態および第3実施形態において操作部をバイメタル458に換える構成としてもよい。
【0060】
E.変形例:
この発明は上記の第1ないし第4実施形態やそれらの変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0061】
・変形例1
第1ないし第3実施形態では、スイッチ部が人によって操作され得る操作部を有し、操作部が操作されたときを、所定の条件が満たされたと判断する構成とした。また、第4実施形態では、スイッチ部が温度検知部を有し、温度検知部の検出結果が所定値以上となったときを、所定の条件が満たされたと判断する構成とした。これらに換えて、本発明は、例えば次の例とすることができる。第1の例として、スイッチ部が時計を有し、時計が所定の時間帯を指すときに、所定の条件が満たされたときと判断する構成としてもよい。この第1の例によれば、所定の時間帯だけICカードによる入室を許可する構成とする設計変更を容易に行うことができる。第2の例としては、指を触れるだけで測定可能な指式の血圧計をスイッチ部が有し、血圧計の計測値が所定値以下のときにICカードによる入室を許可する構成としてもよい。この第2の例によれば、血圧が低いときに限り、ICカードによる入室を許可する構成とする設計変更を容易に行うことができる。このように、本発明では、スイッチ部が種々のセンサーや計測器を有し、それらの出力が所定の出力結果となったときに、所定の条件が満たされたと判断する構成とすることができる。
【0062】
・変形例2
前記第1実施形態では、押しボタンスイッチ50は、読取エリアRAにおけるループアンテナ26のメインローブMLの範囲内に設けられていたが、これに替えて、読取エリアRAにおけるループアンテナ26のサイドローブSLの範囲に設けるようにしてもよい。さらに、押しボタンスイッチ50を、カバー40の正面40aにおける読取エリアRAの外側に設けるようにしてもよいし、カバー40の側面40bに設けるようにしてもよい。要は、利用者によって操作可能で、かつ装置本体20の有するICチップ22との間で通信可能であれば、押しボタンスイッチ50は、カバー40を含む筐体のいずれの位置に設ける構成としてもよい。また、前記第2実施形態では、押しボタンスイッチ250のアンテナコイル254は、読取エリアRAにおけるループアンテナ226のメインローブの範囲内に設けられていたが、これに替えて、読取エリアRAにおけるループアンテナ226のサイドローブSLの範囲に設けるようにしてもよい。さらに、アンテナコイル254を、カバー240の正面240aにおける読取エリアRAの外側に設けるようにしてもよいし、カバー240の側面240bに設けるようにしてもよい。要は、装置本体20の有するICチップ22との間で通信可能であれば、アンテナコイル254は、カバー40を含む筐体のいずれの位置に設ける構成としてもよい。
【0063】
・変形例3
前記第1ないし第3実施形態では、押しボタンスイッチ50は「警備」を指定するためのものであったが、これに換えて、警備を解錠するためのものとしてもよい。また、警備についての指定に限る必要もなく、例えば、室内の照明等の機器のオン/オフの指示、ICカードに記録されるチャージ額の入金・出金の指示、ICカードに記録されるポイントの還元の指示、等種々の用途のためのスイッチに換えることができる。
【0064】
・変形例4
前記第1ないし第3実施形態では、押しボタンスイッチを一つだけ備える構成としたが、これに換えて、複数の押しボタンスイッチを備える構成としてもよい。この場合には、各押しボタンスイッチが、ICチップとアンテナコイルとスイッチ本体とをそれぞれ備えるようにする。また、この構成に換えて、アンテナコイルは一つだけ備え、ICチップとスイッチ本体との各組を、上記一つのアンテナコイルに並列に接続する構成としてもよい。各ICチップに記憶されている識別データが異なっていることから、アンテナコイルを共通化しても、どのスイッチ本体が操作されたかを判別することができる。また、複数の押しボタンスイッチを備える場合に、それらの押しボタンスイッチがいずれの順にオンされたかを判定して、所定の順序でオンされた場合に限り、解錠できる構成とすることもできる。
【0065】
・変形例5
前記第1ないし第3実施形態では、押しボタンスイッチの備える操作部の形状は、凸型としたが、これに換えて、周囲からボタンが飛び出さない平型や、へこんでいる凹型、タッチパネルのタイプ等としてもよい。また、操作部は、トグルスイッチなどでもよい。このように、操作部は種々のタイプのスイッチとすることができる。
【0066】
・変形例6
前記各実施形態では、押しボタンスイッチやバイメタルのスイッチが、カバーもしくは装置本体の筺体に両面テープ等によって固設された構成としたが、これに換えて、例えば、カバー等にポケット部を形成して、ポケット部にスイッチを収納可能な構成とすることで、取り外しが容易な構成としてもよい。この構成によれば、設計変更をより容易に行うことができる。また、押しボタンスイッチやバイメタルのスイッチが、カバーに埋め込まれた構成としてもよい。
【0067】
・変形例7
前記各実施形態では、ICカードを個人を識別するためのIDカードとしたが、これに換えて、クレジットカード、キャッシュカード、交通系カード、各種の証明カード等としてもよい。また、カードリーダの用途としても、オフィスへの入退室を管理する入退室管理システムに用いるものに限る必要はなく、様々なシステムに用いることができる。
【0068】
・変形例8
非接触型ICカードは、通信距離に応じて「密着型(Close coupled)」「近接型(Proximity)」「近傍型(Vicinity)」「遠隔型」に分類できるが、前記各実施形態で用いられるIDカードは、いずれのタイプの非接触型ICカードとすることもできる。
【0069】
・変形例9
前記各実施形態では、スイッチ部が備えるRFタグを、電池を内蔵する必要がないパッシブ型のものとしたが、これに換えて、電池を内蔵するアクティブ型や、セミアクティブ型のものとしてもよい。
【0070】
なお、前述した実施形態および各変形例における構成要素の中の、独立請求項で記載された要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。