(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧電駆動装置を小さな空間(例えばロボットの関節内)に収容して用いる場合、従来の圧電体を用いた圧電駆動装置では配線スペースが不足する可能性があるため、圧電体を薄くしたいという要望があった。圧電体を薄くしすぎると、発生力が小さくなり駆動に必要な変位が得られなくなるので、変位を大きくするために機械的品質係数Qmを大きくする必要がある。更に、小さな空間に圧電駆動装置を収容するために発熱を抑える必要があり、機械的品質係数Qmを高くして振動に伴う機械的損失を減らす必要があった。このように、従来は、被駆動体を駆動することができる小型の圧電駆動装置の適切な構成については十分に検討されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
(1)本発明の一形態によれば、圧電駆動装置が提供される。この圧電駆動装置は、振動板と、前記振動板に設けられた圧電振動体と、を備え、前記圧電振動体は、基板と、前記基板に設けられた第1電極と、前記第1電極に設けられた圧電体と、前記圧電体に設けられた第2電極とを有する。この形態によれば、圧電振動体は、基板を備えているので、圧電体を薄くしても、圧電振動体の機械的強度や機械的品質係数Qmを大きくできる。その結果、小型の圧電駆動装置の適切な構成を実現できる。
【0007】
(2)上記形態の圧電駆動装置において、前記圧電振動体は、前記第2電極に絶縁層を有し、前記絶縁層に、前記第1電極と接続される第1リード電極と、前記第2電極と接続される第2リード電極と、を有してもよい。この形態によれば、第1リード電極、第2リード電極に配線して、第1リード電極、第2リード電極から電圧を印加できる。第1電極、第2電極に直接配線する場合に比べて、配線を接続する位置の下に圧電体が存在しないので、配線の接続時に圧電体の静電破壊等が起きにくく圧電体の電流リークを抑制できる。
【0008】
(3)上記形態の圧電駆動装置において、前記第2電極と前記振動板とが前記圧電体と前記第1電極と前記基板とを挟むように、前記圧電振動体が前記振動板に設けられていてもよい。
(4)上記形態の圧電駆動装置において、前記基板と前記振動板とが前記第1電極と前記圧電体と前記第2電極とを挟むように、前記圧電振動体が前記振動板に設けられていてもよい。圧電振動体は、基板側が振動板に接していてもよく、第2電極側が振動板に接していてもよい。
【0009】
(5)上記形態の圧電駆動装置において、 前記振動板は、複数の配線を有する配線層を有し、前記圧電振動体は、前記第2電極の上に絶縁層を有し、前記第1リード電極は、前記複数の配線のうちの第1の配線と接続され、前記第2リード電極は、前記複数の配線のうちの第2の配線と接続されていてもよい。この形態によれば、振動板上の第1の配線、第2の配線に配線できるので、配線の接続時に圧電体の静電破壊等が起きにくく圧電体の電流リークを抑制できる。
【0010】
(6)上記形態の圧電駆動装置において、前記基板は、シリコン基板であってもよい。圧電体の機械的品質係数Qmの値は、数千であるのに対し、シリコン基板の機械的品質係数Qmの値は、10万程度である。したがって、この形態によれば、圧電駆動装置の機械的品質係数Qmの値を大きくできる。
【0011】
(7)上記形態の圧電駆動装置において、前記基板の厚さは、10μm以上100μm以下であってもよい。基板の厚さを10μm以上とすれば、基板上の成膜処理の際に基板を比較的容易に取扱うことができる。また、基板の厚みを100μm以下とすれば、薄膜で形成された圧電体の伸縮に応じて、基板を容易に振動させることができる。
【0012】
(8)上記形態の圧電駆動装置において、前記圧電体の厚さは、50nm以上20μm以下であってもよい。圧電体の厚さを50nm(0.05μm)以上とすれば、圧電体の伸縮に応じて十分に大きな力を発生することができる。また、圧電体の厚さを20μm以下とすれば、圧電駆動装置を十分に小型化することができる。
【0013】
(9)上記形態の圧電駆動装置において、 前記振動板は、第1面及び第2面を有し、
前記圧電振動体は、前記振動板の前記第1面及び前記第2面に設けられてもよい。この形態によれば、振動板の第1面及び第2面に圧電素子が設けられているので、圧電駆動装置の駆動力を大きく出来る。
【0014】
(10)上記形態の圧電駆動装置において、前記振動板は、被駆動体に接触する突起部を備えていてもよい。この形態によれば、突起部により被駆動体を押して被駆動体を駆動できる。
【0015】
(11)本発明の一形態によれば、ロボットが提供される。このロボットは、複数のリンク部と、前記複数のリンク部を接続する関節部と、前記複数のリンク部を前記関節部で回動させる、上記形態のいずれかに記載の圧電駆動装置と、を備える。この形態によれば、圧電駆動装置をロボットの駆動に利用できる。
【0016】
(12)本発明の一形態によれば、ロボットの駆動方法が提供される。この駆動方法は、前記圧電駆動装置の前記第1電極と前記第2電極との間に周期的に変化する電圧を印加することで前記圧電駆動装置を駆動し、前記複数のリンク部を前記関節部で回動させる。
【0017】
(13)本発明の一形態によれば、上記形態の圧電駆動装置の駆動方法が提供される。この駆動方法は、前記第1電極と前記第2電極との間に、周期的に変化する電圧であって、前記圧電体に印加される電界の方向が前記電極のうちの一方の電極から他方の電極に向かう一方向である脈流である電圧を印加する。この形態によれば、圧電体に印加される電圧は一方向だけなので、圧電体の耐久性を向上できる。
【0018】
本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、圧電駆動装置の他、圧電駆動装置の駆動方法、圧電駆動装置の製造方法、圧電駆動装置を搭載するロボット、圧電駆動装置を搭載するロボットの駆動方法、送液ポンプ、投薬ポンプ等、様々な形態で実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
・第1実施形態:
図1(A)は、本発明の第1実施形態における圧電駆動装置10の概略構成を示す平面図であり、
図1(B)はそのB−B断面図である。圧電駆動装置10は、振動板200と、振動板200の両面(第1面211(「表面」とも呼ぶ)と第2面212(「裏面」とも呼ぶ))にそれぞれ配置された2つの圧電振動体100とを備える。圧電振動体100は、基板120と、基板120の上に形成された第1電極130と、第1電極130の上に形成された圧電体140と、圧電体140の上に形成された第2電極150と、を備えている。第1電極130と第2電極150は、圧電体140を挟持している。2つの圧電振動体100は、振動板200を中心として対称に配置されている。2つの圧電振動体100は同じ構成を有しているので、以下では特に断らない限り、振動板200の上側にある圧電振動体100の構成を説明する。
【0021】
圧電振動体100の基板120は、第1電極130と圧電体140と第2電極150を成膜プロセスで形成するための基板として使用される。また、基板120は機械的な振動を行う振動板としての機能も有する。基板120は、例えば、Si,Al
2O
3,ZrO
2などで形成することができる。Si製の基板120として、例えば半導体製造用のSiウェハーを利用することが可能である。この実施形態において、基板120の平面形状は長方形である。基板120の厚みは、例えば10μm以上100μm以下の範囲とすることが好ましい。基板120の厚みを10μm以上とすれば、基板120上の成膜処理の際に基板120を比較的容易に取扱うことができる。なお、基板120の厚みを50μm以上とすれば、基板120をさらに容易に取扱うことができる。また、基板120の厚みを100μm以下とすれば、薄膜で形成された圧電体140の伸縮に応じて、基板120を容易に振動させることができる。
【0022】
第1電極130は、基板120上に形成された1つの連続的な導電体層として形成されている。一方、第2電極150は、
図1(A)に示すように、5つの導電体層150a〜150e(「第2電極150a〜150e」とも呼ぶ)に区分されている。中央にある第2電極150eは、基板120の幅方向の中央において、基板120の長手方向のほぼ全体に亘る長方形形状に形成されている。他の4つの第2電極150a,150b,150c,150dは、同一の平面形状を有しており、基板120の四隅の位置に形成されている。
図1の例では、第1電極130と第2電極150は、いずれも長方形の平面形状を有している。第1電極130や第2電極150は、例えばスパッタリングによって形成される薄膜である。第1電極130や第2電極150の材料としては、例えばAl(アルミニウム)や、Ni(ニッケル)、Au(金)、Pt(白金)、Ir(イリジウム)などの導電性の高い任意の材料を利用可能である。なお、第1電極130を1つの連続的な導電体層とする代わりに、第2電極150a〜150eと実質的に同じ平面形状を有する5つの導電体層に区分してもよい。なお、第2電極150a〜150eの間の電気的接続のための配線(又は配線層及び絶縁層)と、第1電極130及び第2電極150a〜150eと駆動回路との間の電気的接続のための配線(又は配線層及び絶縁層)とは、
図1では図示が省略されている。
【0023】
圧電体140は、第2電極150a〜150eと実質的に同じ平面形状を有する5つの圧電体層として形成されている。この代わりに、圧電体140を、第1電極130と実質的に同じ平面形状を有する1つの連続的な圧電体層として形成してもよい。第1電極130と圧電体140と第2電極150a〜150eとの積層構造によって、5つの圧電素子110a〜110e(
図1(A))が構成される。
【0024】
圧電体140は、例えばゾル−ゲル法やスパッタリング法によって形成される薄膜である。圧電体140の材料としては、ABO
3型のペロブスカイト構造を採るセラミックスなど、圧電効果を示す任意の材料を利用可能である。ABO
3型のペロブスカイト構造を採るセラミックスとしては、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、タングステン酸ナトリウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)、タンタル酸ストロンチウムビスマス(SBT)、メタニオブ酸鉛、亜鉛ニオブ酸鉛、スカンジウムニオブ酸鉛等を用いることが可能である。またセラミック以外の圧電効果を示す材料、例えばポリフッ化ビニリデン、水晶等を用いることも可能である。圧電体140の厚みは、例えば50nm(0.05μm)以上20μm以下の範囲とすることが好ましい。この範囲の厚みを有する圧電体140の薄膜は、成膜プロセスを利用して容易に形成することができる。圧電体140の厚みを0.05μm以上とすれば、圧電体140の伸縮に応じて十分に大きな力を発生することができる。また、圧電体140の厚みを20μm以下とすれば、圧電駆動装置10を十分に小型化することができる。
【0025】
図2は、振動板200の平面図である。振動板200は、長方形形状の振動体部210と、振動体部210の左右の長辺からそれぞれ3本ずつ延びる接続部220とを有しており、また、左右の3本の接続部220にそれぞれ接続された2つの取付部230を有している。なお、
図2では、図示の便宜上、振動体部210にハッチングを付している。取付部230は、ネジ240によって他の部材に圧電駆動装置10を取り付けるために用いられる。振動板200は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、銅、銅合金、鉄−ニッケル合金などの金属材料で形成することが可能である。
【0026】
振動体部210の上面(第1面)及び下面(第2面)には、圧電振動体100(
図1)がそれぞれ接着剤を用いて接着される。振動体部210の長さLと幅Wの比は、L:W=約7:2とすることが好ましい。この比は、振動体部210がその平面に沿って左右に屈曲する超音波振動(後述)を行うために好ましい値である。振動体部210の長さLは、例えば3.5mm以上30mm以下の範囲とすることができ、幅Wは、例えば1mm以上8mm以下の範囲とすることができる。なお、振動体部210が超音波振動を行うために、長さLは50mm以下とすることが好ましい。振動体部210の厚み(振動板200の厚み)は、例えば50μm以上700μm以下の範囲とすることができる。振動体部210の厚みを50μm以上とすれば、圧電振動体100を支持するために十分な剛性を有するものとなる。また、振動体部210の厚みを700μm以下とすれば、圧電振動体100の変形に応じて十分に大きな変形を発生することができる。
【0027】
振動板200の一方の短辺には、突起部20(「接触部」又は「作用部」とも呼ぶ)が設けられている。突起部20は、被駆動体と接触して、被駆動体に力を与えるための部材である。突起部20は、セラミックス(例えばAl
2O
3)などの耐久性がある材料で形成することが好ましい。
【0028】
図3は、圧電駆動装置10と駆動回路300の電気的接続状態を示す説明図である。5つの第2電極150a〜150eのうちで、対角にある一対の第2電極150a,150dが配線151を介して互いに電気的に接続され、他の対角の一対の第2電極150b,150cも配線152を介して互いに電気的に接続されている。これらの配線151,152は成膜処理によって形成しても良く、或いは、ワイヤ状の配線によって実現してもよい。
図3の右側にある3つの第2電極150b,150e,150dと、第1電極130(
図1)は、配線310,312,314,320を介して駆動回路300に電気的に接続されている。駆動回路300は、一対の第2電極150a,150dと第1電極130との間に周期的に変化する交流電圧又は脈流電圧を印加することにより、圧電駆動装置10を超音波振動させて、突起部20に接触するローター(被駆動体)を所定の回転方向に回転させることが可能である。ここで、「脈流電圧」とは、交流電圧にDCオフセットを付加した電圧を意味し、その電圧(電界)の向きは、一方の電極から他方の電極に向かう一方向である。また、他の一対の第2電極150b,150cと第1電極130との間に交流電圧又は脈流電圧を印加することにより、突起部20に接触するローターを逆方向に回転させることが可能である。このような電圧の印加は、振動板200の両面に設けられた2つの圧電振動体100に同時に行われる。なお、
図3に示した配線151,152,310,312,314,320を構成する配線(又は配線層及び絶縁層)は、
図1では図示が省略されている。
【0029】
図4は、圧電駆動装置10の動作の例を示す説明図である。圧電駆動装置10の突起部20は、被駆動体としてのローター50の外周に接触している。
図4に示す例では、駆動回路300(
図3)は、一対の第2電極150a,150dと第1電極130との間に交流電圧又は脈流電圧を印加しており、圧電素子110a,110dは
図4の矢印xの方向に伸縮する。これに応じて、圧電駆動装置10の振動体部210が振動体部210の平面内で屈曲して蛇行形状(S字形状)に変形し、突起部20の先端が矢印yの向きに往復運動するか、又は、楕円運動する。その結果、ローター50は、その中心51の周りに所定の方向z(
図4では時計回り方向)に回転する。
図2で説明した振動板200の3つの接続部220(
図2)は、このような振動体部210の振動の節(ふし)の位置に設けられている。なお、駆動回路300が、他の一対の第2電極150b,150cと第1電極130との間に交流電圧又は脈流電圧を印加する場合には、ローター50は逆方向に回転する。なお、中央の第2電極150eに、一対の第2電極150a,150d(又は他の一対の第2電極150b,150c)と同じ電圧を印加すれば、圧電駆動装置10が長手方向に伸縮するので、突起部20からローター50に与える力をより大きくすることが可能である。なお、圧電駆動装置10(又は圧電振動体100)のこのような動作については、上記先行技術文献1(特開2004−320979号公報、又は、対応する米国特許第7224102号)に記載されており、その開示内容は参照により組み込まれる。
【0030】
図5は、
図1(B)に示した断面構造の一例を更に詳細に示した断面図である。圧電振動体100は、基板120と、絶縁層125と、第1電極130と、圧電体140と、第2電極150と、絶縁層160と、リード電極171、172と、を備える。なお、
図5では、複数の第2電極150と、複数のリード電極171、172については、添え字「c」または「d」を付記して区別している。なお、
図5では、
図3に示した配線151,152は図示が省略されている。
【0031】
絶縁層125は、基板120上に形成されており、基板120と、第1電極130との間を絶縁する。第1電極130は、絶縁層125の上に形成されている。圧電体140は、第1電極130の上に形成されている。第2電極150は、圧電体140の上に形成されている。絶縁層160は、第2電極150の上に形成されている。なお、絶縁層160は、第1リード電極171が第1電極130と接触でき、第2リード電極172が第2電極150と接触できるように、その一部に開口(コンタクトホール)を有している。第1リード電極171は、絶縁層160の上に形成され、第1電極130と接している。第2リード電極172は、絶縁層160の上に形成され、第2電極150と接している。なお、2つのリード電極171,172は、互いに直接接続されていない。なお、
図5では、図示の都合上、圧電素子110cと圧電素子110dの境界に近い位置に第2リード電極172c、172dを形成しているが、圧電素子110cと圧電素子110dの境界と反対側、振動板200の長手方向の両端側にそれぞれ第2リード電極172c、172dが形成されていてもよい。この場合、第1リード電極171c、171dと、第2リード電極172c、172dと幅方向(振動板200の短手方向)の位置が異なれば、互いに接続されない。第2リード電極172c、172dは、下部に圧電体140が存在しない領域まで伸びていても良い。下部に圧電体140が存在しない領域で配線151、152、314を第2リード電極に接続すれば、配線の接続による圧電体140の静電破壊が発生し難い。
【0032】
図6は、圧電駆動装置10の製造フローチャートを示す説明図である。ステップS100では、基板120上に圧電素子110を形成することによって、圧電振動体100を形成する。この際、基板120としては、例えばSiウェハーを利用することができる。1枚のSiウェハー上には、圧電振動体100を複数個形成することが可能である。またSiは機械的品質係数Qmの値が10万程度と大きいため、圧電振動体100や、圧電駆動装置10の機械的品質係数Qmを大きく出来る。ステップS200では、圧電振動体100が形成された基板120をダイシングして、個々の圧電振動体100に分割する。なお、基板120をダイシングする前に基板120の裏面を研磨して、基板120を所望の厚さにしても良い。ステップS300では、2つの圧電振動体100を振動板200の両面に接着剤で接着する。ステップS400では、圧電振動体100の配線層と駆動回路とを配線で電気的に接続する。
【0033】
図7は、
図6のステップS100における圧電振動体100の製造プロセスを示す説明図である。
図7では、基板120上に、
図5の右半分の上部に示した圧電素子110dを形成するプロセスを示している。ステップS110では、基板120を準備し、基板120の表面に絶縁層125を形成する。絶縁層125としては、例えば、基板120の表面を熱酸化して形成されるSiO
2層を利用することができる。その他に、絶縁層としてアルミナ(Al
2O
3)、アクリルやポリイミドなどの有機材料を用いることができる。なお、基板120が絶縁体である場合には、絶縁層125を形成する工程は省略可能である。
【0034】
ステップS120では、絶縁層125の上に第1電極130を形成する。第1電極130は、例えば、スパッタリングにより形成できる。
【0035】
ステップS130では、第1電極130の上に圧電体140を形成する。具体的には、例えばゾル−ゲル法を用いて圧電体140を形成することが可能である。すなわち、圧電体材料のゾルゲル溶液を基板120(第1電極130)の上に滴下し、基板120を高速回転させることにより、第1電極130の上にゾルゲル溶液の薄膜を形成する。その後、200〜300℃の温度で仮焼きして第1電極130の上に圧電体材料の第1層を形成する。その後、ゾルゲル溶液の滴下、高速回転、仮焼き、のサイクルを複数回繰り返すことによって、第1電極130の上に所望の厚さまで圧電体層を形成する。なお、1サイクルで形成される圧電体の一層の厚みは、ゾルゲル溶液の粘度や、基板120の回転速度にも依存するが、約50nm〜150nmの厚さとなる。所望の厚さまで圧電体層を形成した後、600℃〜1000℃の温度で焼結することにより、圧電体140を形成する。焼結後の圧電体140の厚さを、50nm(0.05μm)以上20μm以下とすれば、小型の圧電駆動装置10を実現できる。なお、圧電体140の厚さを0.05μm以上とすれば、圧電体140の伸縮に応じて十分に大きな力を発生することができる。また、圧電体140の厚さを20μm以下とすれば、圧電体140に印加する電圧を600V以下としても十分に大きな力を発生することができる。その結果、圧電駆動装置10を駆動するための駆動回路300を安価な素子で構成できる。なお、圧電体の厚さを400nm以上としてもよく、この場合、圧電素子で発生する力を大きく出来る。なお、仮焼きや焼結の温度、時間は、一例であり、圧電体材料により、適宜選択される。
【0036】
ゾル−ゲル法を用いて圧電体材料の薄膜を形成した後に焼結した場合には、原料粉末を混合して焼結する従来の焼結法と比較して、(a)薄膜を形成しやすい、(b)格子方向を揃えて結晶化し易い、(c)圧電体の耐圧を向上できる、というメリットがある。
【0037】
ステップS140では、圧電体140の上に第2電極150を形成する。第2電極150の形成は、第1電極と同様に、スパッタリングにより行うことが出来る。
【0038】
ステップS150では、第2電極150と圧電体140をパターニングする。本実施形態では、アルゴンイオンビームを用いたイオンミリングにより、第2電極150と圧電体140のパターニングを行っている。なお、イオンミリングの時間を制御することにより、第2電極150と圧電体140のみをパターニングし、第1電極130をパターニングしないことが可能である。なお、イオンミリングを用いてパターニングを行う代わりに、他の任意のパターニング方法(例えば、塩素系のガスを用いたドライエッチング)によりパターニングを行っても良い。
【0039】
ステップS160では、第1電極130と第2電極150の上に絶縁層160を形成する。絶縁層160としては、リン含有シリコン酸化膜(PSG膜)、ボロン・リン含有シリコン酸化膜(BPSG膜)、NSG膜(ボロンやリン等の不純物を含まないシリコン酸化膜)、窒化ケイ素膜(Si
3N
4膜)等を用いることが可能である。絶縁層160は、例えばCVD法により形成できる。絶縁層160の形成後には、第1電極130と第2電極150とのコンタクトホール163、165を形成するためのパターニングを行う。
【0040】
ステップS170では、リード電極用の導電体層を形成し、パターニングを行う。この導電体層は、例えばアルミニウムで形成することができ、スパッタリングにより形成される。その後、導電体層をパターニングすることによって、第1リード電極171と第2リード電極172を形成する。第1リード電極171は、第1電極130と接続され、第2リード電極172は、第2電極150と接続されている。なお、圧電素子110a〜110eの第1電極130が1つの連続的な導電体層を形成する場合には、他の圧電素子110a、110b、110c、110eには、第2リード電極172が形成されていなくてもよい。第2リード電極172は、下部に圧電体140が存在しない領域まで伸びていても良い。配線151、152、314を、下部に圧電体140が存在しない領域で第2リード電極172と接続すれば、配線の接続による影響は、圧電体140に及ばない。また、第1リード電極171、第2リード電極172は、いずれも、絶縁層160の上側に残っていてもよい。振動板200に配線層を形成し、基板120と振動板200の間に圧電素子110を配置するときに、振動板200の配線層と、第1リード電極171、第2リード電極172との間を、電気的に接続し易くできる。
【0041】
その後、図示していないが、第1リード電極171及び第2リード電極172の上にパッシベーション膜を形成する。パッシベーション膜は、例えばSiN、ポリイミドを用いて形成できる。そして、パッシベーション膜に、第1リード電極171及び第2リード電極172を配線151,152,310,312,314,320(
図3)と接続するための開口部(コンタクトホール)を形成する。
【0042】
図8は、圧電駆動装置10と、駆動回路300との配線の一例を示す説明図である。ここでは、圧電駆動装置10の表面側と裏面側における配線の結線状態を示している。なお、図示の便宜上電極150a〜150e等のサイズは、
図1と多少異なる。圧電駆動装置の表面と裏面には、それぞれ、第2電極150a、150b、150c、150d、150eと、第1リード電極171a、171b、171c、171d、171eと、第2リード電極172a、172b、172c、172d、172eが設けられている。ここでは、圧電素子110a〜110eを区別するために、第2電極150、第1リード電極171、第2リード電極172の末尾に添字a、b、c、d、eを付記している。なお、第1電極130が1つの連続的な導電体層を形成する場合には、
図8において破線で示した第1リード電極171a、171b、171c、171eについては、形成されていなくても良い。
【0043】
圧電駆動装置10の各電極を接続する配線は、以下のように配線されている。
・配線151は、表面側の第2リード電極172aと172dとを接続する。
・配線152は、表面側の第2リード電極172bと172cとを接続する。
・配線182aは、表面側の第2リード電極172aと、裏面側の第2リード電極172aとを接続する。
・配線182bは、表面側の第2リード電極172bと、裏面側の第2リード電極172bとを接続する。
・配線182cは、表面側の第2リード電極172cと、裏面側の第2リード電極172cとを接続する。
・配線182dは、表面側の第2リード電極172dと、裏面側の第2リード電極172dとを接続する。
【0044】
圧電駆動装置10の各電極と駆動回路とは、以下のように接続されている。
・配線310は、駆動回路300と、表面側の第2リード電極172bとを接続する。
・配線312は、駆動回路300と、表面側の第2リード電極172e及び裏面側の第2リード電極172eとを接続する。
・配線314は、駆動回路300と、表面側の第2リード電極172dとを接続する。
・配線320は、駆動回路300と、表面側の第1リード電極171d及び裏面側の第1リード電極171dと、を接続する。
【0045】
配線310と320の間に交流電圧あるいは脈流電圧を印加すれば、上述したように、圧電素子110b、110c(
図1(A))を駆動できる。また、配線314と320の間に交流電圧あるいは脈流電圧を印加すれば、圧電素子110a、110d(
図1(A))を駆動できる。配線312と320の間に交流電圧あるいは脈流電圧を印加すれば、圧電素子110e(
図1(A))を駆動できる。
【0046】
以上、本実施形態によれば、圧電振動体100は、基板120と、基板120上に設けられた第1電極130と、第1電極130の上に設けられた圧電体140と、圧電体140の上に設けられた第2電極150とを有するので、圧電体140の厚さを薄くしても、圧電振動体の機械的強度や機械的品質係数Qmを大きく出来る。また、本実施形態では、基板120として、シリコン基板を用いる。圧電体140の機械的品質係数Qmの値は、数千であるのに対し、シリコン基板120の機械的品質係数Qmの値は、10万程度である。したがって、圧電駆動装置10の機械的品質係数Qmの値を大きくできる。
【0047】
本実施形態によれば、基板120の厚さは、10μm以上100μm以下であってもよい。基板120の厚さを10μm以上とすれば、基板120上の成膜処理の際に基板120を比較的容易に取扱うことができる。また、基板120の厚みを100μm以下とすれば、薄膜で形成された圧電体140の伸縮に応じて、基板120を容易に振動させることができる。
【0048】
本実施形態によれば、圧電体140の厚さを50nm(0.05μm)以上20μm以下とするので、小型の圧電駆動装置10を実現できる。なお、圧電体140の厚さを0.05μm以上とすれば、圧電体140の伸縮に応じて十分に大きな力を発生することができる。また、圧電体140の厚さを20μm以下とすれば、圧電体140に印加する電圧を600V以下としても十分に大きな力を発生することができる。従って、圧電駆動装置10を駆動するための駆動回路300を安価な素子で構成できる。但し、実際には圧電体140に印加する電圧は、20〜40Vの範囲で十分である。なお、圧電体の厚さを400nm以上としてもよく、この場合、圧電素子で発生する力を大きく出来る。
【0049】
本実施形態によれば、圧電振動体100は、第2電極150の上に絶縁層160を有し、絶縁層160の上に、第1電極130と接続される第1リード電極171と、第2電極150と接続される第2リード電極172と、を有しているので、第1リード電極171、第2リード電極172に配線151、152、310、312、314、320を配線して、第1リード電極171、第2リード電極172から電圧を印加できる。また、第1電極130、第2電極150に直接配線する場合に比べて、配線の接続時に圧電体140の静電破壊等が起きにくく圧電体140の電流リークを抑制できる。
【0050】
圧電体140を、ゾル−ゲル法により形成するようにすれば、薄い圧電体を形成しやすい点で好ましい。また、圧電体の結晶の格子方向を揃え易いので、同じ電圧を加えたときの圧電体の形状の変形を大きくすることができ、また、耐圧を大きく出来る点で好ましい。なお、圧電体140は、スパッタ法により形成されていても良い。スパッタ法によっても、ゾル−ゲル法と同様の効果を得ることが出来る。
【0051】
・圧電駆動装置の他の実施形態:
図9は、本発明の他の実施形態としての圧電駆動装置10aの断面図であり、第1実施形態の
図1(B)に対応する図である。この圧電駆動装置10aでは、圧電振動体100が、
図1(B)とは上下を逆にした状態で振動板200に配置されている。すなわち、ここでは、第2電極150が振動板200に近く、基板120が振動板200から最も遠くなるように配置されている。なお、
図9においても、
図1(B)と同様に、第2電極150a〜150eの間の電気的接続のための配線(又は配線層及び絶縁層)と、第1電極130及び第2電極150a〜150eと駆動回路との間の電気的接続のための配線(又は配線層及び絶縁層)とは、図示が省略されている。この圧電駆動装置10aも、第1実施形態と同様な効果を達成することができる。
【0052】
図10は、
図9に示す圧電駆動装置10aの製造工程を示す説明図である。ステップS510では、振動板200を準備し、絶縁層202を形成する。絶縁層202は、例えば、ポリイミドなどの絶縁性樹脂を用いて形成可能である。ステップS520では、絶縁層202の上に配線層204を形成し、配線層204をパターニングする。配線層204は、第1の配線と、第2の配線とを含んでいる。配線層204としては、銅やアルミニウムを用いることができる。ステップS530では、配線層204の上に絶縁層206を形成し、開口部をパターニングする。絶縁層206は、例えば、ソルダーレジストを用いて形成できる。
【0053】
ステップS540では、
図6のステップS200(
図7)により個々に作成された圧電振動体100を振動板200の両面に貼り付ける。このとき、配線層204と、第1リード電極171、第2リード電極172との間に導電性部材208を配置し、導電性部材208を介して電気的に接触させる。具体的には、配線層204の第1の配線と第1リード電極171とを電気的に接触させ、配線層204の第2の配線と第2リード電極172とを電気的に接触させる。導電性部材208を介すれば、振動板200の配線層204と、圧電振動体100の第1リード電極171、第2リード電極172と、の間に段差があっても、その段差を緩和して電気的に接触させることができる。導電性部材208として、例えば、マイクロバンプや導電性ペーストを用いることが出来る。
図10(E)の第1面側は、圧電振動体100を貼り付けた状態、第2面側は、圧電振動体100を貼り付ける直前の状態を示している。なお、
図10(E)に示す圧電振動体100の上部には、上述したパッシベーション膜180が形成されている。パッシベーション膜180は、第1リード電極171、第2リード電極172の周りを保護するとともに、第1リード電極171、第2リード電極172と、他の部材との間の電気的ショートを抑制する。なお、この実施形態では、第2リード電極172の形状を、下部に圧電体140が存在しない領域まで伸ばしているが、伸ばさなくてもよい。これは、導電性部材208を介して振動板200の配線層204と接続されるので、第2リード電極172は、下部に圧電体140が存在しない領域まで伸ばす必要がないからである。
【0054】
その後、配線層204と、駆動回路300(
図8)を配線310、312、314、320で接続する。すなわち、この実施形態では、配線310、312、314、320で第1リード電極171、第2リード電極172に直接配線をするのではなく、配線層204を介して配線をする。そのため、振動する圧電振動体100に直接配線しなくてもよく、圧電振動体100が振動しても、配線が外れにくい。本実施形態では、圧電振動体100を振動板200に貼り付けた後に配線310、312、314、320を接続したが、先に、圧電振動体100に配線310、312、314、320を接続した後に、圧電振動体100を振動板200に貼り付けてもよい。
【0055】
図11(A)は、本発明の更に他の実施形態としての圧電駆動装置10bの平面図であり、第1実施形態の
図1(A)に対応する図である。
図11(A)〜(C)では、図示の便宜上、振動板200の接続部220や取付部230は図示が省略されている。
図11(A)の圧電駆動装置10bでは、一対の第2電極150b,150cが省略されている。この圧電駆動装置10bも、
図4に示すような1つの方向zにローター50を回転させることが可能である。なお、
図11(A)の3つの第2電極150a,150e,150dには同じ電圧が印加されるので、これらの3つの第2電極150a,150e,150dを、連続する1つの電極層として形成してもよい。
【0056】
図11(B)は、本発明の更に他の実施形態としての圧電駆動装置10cの平面図である。この圧電駆動装置10cでは、
図1(A)の中央の第2電極150eが省略されており、他の4つの第2電極150a,150b,150c,150dが
図1(A)よりも大きな面積に形成されている。この圧電駆動装置10cも、第1実施形態とほぼ同様な効果を達成することができる。
【0057】
図11(C)は、本発明の更に他の実施形態としての圧電駆動装置10dの平面図である。この圧電駆動装置10dでは、
図1(A)の4つの第2電極150a,150b,150c,150dが省略されており、1つの第2電極150eが大きな面積で形成されている。この圧電駆動装置10dは、長手方向に伸縮するだけであるが、突起部20から被駆動体(図示省略)に対して大きな力を与えることが可能である。
【0058】
図1及び
図11(A)〜(C)から理解できるように、圧電振動体100の第2電極150としては、少なくとも1つの電極層を設けることができる。但し、
図1及び
図11(A),(B)に示す実施形態のように、長方形の圧電振動体100の対角の位置に第2電極150を設けるようにすれば、圧電振動体100及び振動板200を、その平面内で屈曲する蛇行形状に変形させることが可能である点で好ましい。
【0059】
・圧電駆動装置を用いた装置の実施形態:
上述した圧電駆動装置10は、共振を利用することで被駆動体に対して大きな力を与えることができるものであり、各種の装置に適用可能である。圧電駆動装置10は、例えば、ロボット(電子部品搬送装置(ICハンドラー)も含む)、投薬用ポンプ、時計のカレンダー送り装置、印刷装置(例えば紙送り機構。ただし、ヘッドに利用される圧電駆動装置では、振動板を共振させないので、ヘッドには適用不可である。)等の各種の機器における駆動装置として用いることが出来る。以下、代表的な実施の形態について説明する。
【0060】
図12は、上述の圧電駆動装置10を利用したロボット2050の一例を示す説明図である。ロボット2050は、複数本のリンク部2012(「リンク部材」とも呼ぶ)と、それらリンク部2012の間を回動又は屈曲可能な状態で接続する複数の関節部2020とを備えたアーム2010(「腕部」とも呼ぶ)を有している。それぞれの関節部2020には、上述した圧電駆動装置10が内蔵されており、圧電駆動装置10を用いて関節部2020を任意の角度だけ回動又は屈曲させることが可能である。アーム2010の先端には、ロボットハンド2000が接続されている。ロボットハンド2000は、一対の把持部2003を備えている。ロボットハンド2000にも圧電駆動装置10が内蔵されており、圧電駆動装置10を用いて把持部2003を開閉して物を把持することが可能である。また、ロボットハンド2000とアーム2010との間にも圧電駆動装置10が設けられており、圧電駆動装置10を用いてロボットハンド2000をアーム2010に対して回転させることも可能である。
【0061】
図13は、
図12に示したロボット2050の手首部分の説明図である。手首の関節部2020は、手首回動部2022を挟持しており、手首回動部2022に手首のリンク部2012が、手首回動部2022の中心軸O周りに回動可能に取り付けられている。手首回動部2022は、圧電駆動装置10を備えており、圧電駆動装置10は、手首のリンク部2012及びロボットハンド2000を中心軸O周りに回動させる。ロボットハンド2000には、複数の把持部2003が立設されている。把持部2003の基端部はロボットハンド2000内で移動可能となっており、この把持部2003の根元の部分に圧電駆動装置10が搭載されている。このため、圧電駆動装置10を動作させることで、把持部2003を移動させて対象物を把持することができる。
【0062】
なお、ロボットとしては、単腕のロボットに限らず、腕の数が2以上の多腕ロボットにも圧電駆動装置10を適用可能である。ここで、手首の関節部2020やロボットハンド2000の内部には、圧電駆動装置10の他に、力覚センサーやジャイロセンサー等の各種装置に電力を供給する電力線や、信号を伝達する信号線等が含まれ、非常に多くの配線が必要になる。従って、関節部2020やロボットハンド2000の内部に配線を配置することは非常に困難だった。しかしながら、上述した実施形態の圧電駆動装置10は、通常の電動モーターや、従来の圧電駆動装置よりも駆動電流を小さくできるので、関節部2020(特に、アーム2010の先端の関節部)やロボットハンド2000のような小さな空間でも配線を配置することが可能になる。
【0063】
図13は、上述の圧電駆動装置10を利用した送液ポンプ2200の一例を示す説明図である。送液ポンプ2200は、ケース2230内に、リザーバー2211と、チューブ2212と、圧電駆動装置10と、ローター2222と、減速伝達機構2223と、カム2202と、複数のフィンガー2213、2214、2215、2216、2217、2218、2219と、が設けられている。リザーバー2211は、輸送対象である液体を収容するための収容部である。チューブ2212は、リザーバー2211から送り出される液体を輸送するための管である。圧電駆動装置10の突起部20は、ローター2222の側面に押し付けた状態で設けられており、圧電駆動装置10がローター2222を回転駆動する。ローター2222の回転力は減速伝達機構2223を介してカム2202に伝達される。フィンガー2213から2219はチューブ2212を閉塞させるための部材である。カム2202が回転すると、カム2202の突起部2202Aによってフィンガー2213から2219が順番に放射方向外側に押される。フィンガー2213から2219は、輸送方向上流側(リザーバー2211側)から順にチューブ2212を閉塞する。これにより、チューブ2212内の液体が順に下流側に輸送される。こうすれば、極く僅かな量を精度良く送液可能で、しかも小型な送液ポンプ2200を実現することができる。なお、各部材の配置は図示されたものには限られない。また、フィンガーなどの部材を備えず、ローター2222に設けられたボールなどがチューブ2212を閉塞する構成であってもよい。上記のような送液ポンプ2200は、インシュリンなどの薬液を人体に投与する投薬装置などに活用できる。ここで、上述した実施形態の圧電駆動装置10を用いることにより、従来の圧電駆動装置よりも駆動電流が小さくなるので、投薬装置の消費電力を抑制することができる。従って、投薬装置を電池駆動する場合は、特に有効である。
【0064】
・変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0065】
・変形例1:
上記実施形態では、基板120の上に第1電極130と圧電体140と第2電極150とが形成されていたが、基板120を省略して、振動板200の上に第1電極130と圧電体140と第2電極150とを形成するようにしてもよい。
【0066】
・変形例2:
上記実施形態では、振動板200の両面にそれぞれ1つの圧電振動体100を設けていたが、圧電振動体100の一方を省略することも可能である。但し、振動板200の両面にそれぞれ圧電振動体100を設けるようにすれば、振動板200をその平面内で屈曲した蛇行形状に変形させることがより容易である点で好ましい。
【0067】
以上、いくつかの実施例に基づいて本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。