(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、静電容量のずれを低減することのできる物理量センサー、物理量センサー装置、電子機器および移動体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]
本適用例の物理量センサーは、可動電極指を備える可動部を有する第1構造体と、
前記可動電極指に対向して配置される第1固定電極指を備える第2構造体と、
前記可動電極指に対向して配置される第2固定電極指を備える第3構造体と、
前記第1構造体と前記第2構造体との間に静電容量を形成する第1静電容量形成部および前記第1構造体と前記第3構造体との間に静電容量を形成する第2静電容量形成部の少なくとも一方を有する静電容量形成部と、を有することを特徴とする。
【0007】
このように、第1静電容量形成部や第2静電容量形成部を設けることで、第1構造体と第2構造体との間の静電容量と、第1構造体と第3構造体との間の静電容量との差(ずれ)を小さくする(好ましくはゼロとする)ことができる。
【0008】
[適用例2]
本適用例の物理量センサーでは、前記静電容量形成部は、前記第1静電容量形成部および前記第2静電容量形成部を共に有し、
前記第1静電容量形成部における静電容量と、前記第2静電容量形成部における静電容量とが異なっていることが好ましい。
【0009】
これにより、第1構造体と第2構造体との間の静電容量と、第1構造体と第3構造体との間の静電容量との差を効果的に低減することができる。
【0010】
[適用例3]
本適用例の物理量センサーでは、前記第1構造体は、前記可動部と、
前記可動部を支持する支持部と、を有し、
前記支持部は、前記支持部から延出し、先端部が前記第1固定電極指と対向する延出部を有し、
前記延出部と前記第1固定電極指とが対向することで、前記第1静電容量形成部が構成されていることが好ましい。
これにより、第1静電容量形成部の構成が簡単となる。
【0011】
[適用例4]
本適用例の物理量センサーでは、前記第1構造体は、前記可動部と、
前記可動部を支持する支持部と、を有し、
前記支持部は、前記支持部から延出し、先端部が前記第2固定電極指と対向する延出部を有し、
前記延出部と前記第2固定電極指とが対向することで、前記第2静電容量形成部が構成されていることが好ましい。
これにより、第2静電容量形成部の構成が簡単となる。
【0012】
[適用例5]
本適用例の物理量センサーでは、前記第2構造体は、複数の前記第1固定電極指と、
前記支持部の周囲を通って配置され、前記複数の第1固定電極指を接続する接続部と、を有し、
前記接続部と前記支持部とが対向することで、前記第1静電容量形成部が構成されていることが好ましい。
これにより、第1静電容量形成部の構成が簡単となる。
【0013】
[適用例6]
本適用例の物理量センサーでは、前記第3構造体は、複数の前記第2固定電極指と、
前記支持部の周囲を通って配置され、前記複数の第2固定電極指を接続する接続部と、を有し、
前記接続部と前記支持部とが対向することで、前記第2静電容量形成部が構成されていることが好ましい。
これにより、第2静電容量形成部の構成が簡単となる。
【0014】
[適用例7]
本適用例の物理量センサーでは、前記第1構造体は、前記可動部と、
前記可動部に電気的に接続される配線と、を有し、
前記配線と前記第2構造体とが交差することで、前記第1静電容量形成部が構成されていることが好ましい。
これにより、第1静電容量形成部の構成が簡単となる。
【0015】
[適用例8]
本適用例の物理量センサーでは、前記第1構造体は、前記可動部と、
前記可動部に電気的に接続される配線と、を有し、
前記配線と第3構造体とが交差することで、前記第2静電容量形成部が構成されていることが好ましい。
これにより、第2静電容量形成部の構成が簡単となる。
【0016】
[適用例9]
本適用例の物理量センサー装置は、上記適用例の物理量センサーと、
前記物理量センサーに電気的に接続されている電子部品と、を有することを特徴とする。
これにより、信頼性の高い物理量センサー装置が得られる。
【0017】
[適用例10]
本適用例の電子機器は、上記適用例の物理量センサーを有することを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子機器が得られる。
【0018】
[適用例11]
本適用例の移動体は、上記適用例の物理量センサーを有することを特徴とする。
これにより、信頼性の高い移動体が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の物理量センサー、物理量センサー装置、電子機器および移動体を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0021】
1.物理量センサー
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る物理量センサーを示す斜視図である。
図2は、
図1に示す物理量センサーを示す平面図である。
図3は、
図2中のA−A線断面図およびB−B線断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、
図2中の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」と言う。また、各図には、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸およびZ軸が図示されている。また、以下では、X軸に平行な方向を「X軸方向」、Y軸に平行な方向を「Y軸方向」、Z軸に平行な方向を「Z軸方向」とも言う。
【0022】
図1および
図2に示す物理量センサー1は、例えば、慣性センサーとして使用することができ、具体的には、X軸方向の加速度を測定するための加速度センサーとして利用可能である。このような物理量センサー1は、ベース基板2と、ベース基板2に接合・支持された素子片3と、素子片3に電気的に接続された導体パターン4と、素子片3を覆うように設けられた蓋部材5と、を有する。以下、物理量センサー1を構成する各部を順次詳細に説明する。
【0023】
(ベース基板)
ベース基板2は、板状をなし、その上面に開口する空洞部(凹部)21が設けられている。この空洞部21は、ベース基板2を平面視したときに、素子片3の後述する可動部33および連結部34、35を包含(内包)するように形成されている。このような空洞部21は、素子片3の可動部33および連結部34、35がベース基板2に接触するのを防止する逃げ部を構成する。なお、この逃げ部は、空洞部21に代えて、ベース基板2をその厚さ方向に貫通する開口部であってもよい。
【0024】
また、ベース基板2の上面には凹部22、23、24が、それぞれ、空洞部21の外周に沿って設けられている。そして、これら凹部22、23、24内に導体パターン4が配置されている。具体的には、凹部22内には導体パターン4の配線41および端子44が配置されており、凹部23内には導体パターン4の配線42および端子45が配置されており、凹部24内には導体パターン4の配線43および端子46が配置されている。
【0025】
このようなベース基板2の構成材料としては、具体的には、高抵抗なシリコン材料、ガラス材料を用いるのが好ましく、特に、素子片3がシリコン材料を主材料として構成されている場合、アルカリ金属イオン(可動イオン)を含むガラス材料(例えば、パイレックスガラス(登録商標)のような硼珪酸ガラス)を用いるのが好ましい。これにより、素子片3がシリコンを主材料として構成されている場合、ベース基板2と素子片3とを陽極接合することができる。
【0026】
(素子片)
素子片3は、支持部31、32と、可動部33と、連結部34、35と、第1、第2固定電極部38、39と、を有している。また、可動部33は、基部331と、可動電極部332と、を有している。また、支持部31、32、可動部33および連結部34、35は、一体的に形成されている。
【0027】
このような素子片3は、加速度の変化に応じて、可動部33が連結部34、35を弾性変形させながらX軸方向(+X軸方向または−X軸方向)に変位する。このような変位に伴って、可動電極部332と第1固定電極部38との隙間および可動電極部332と第2固定電極部39との隙間がそれぞれ変化する。このような変位に伴って、可動電極部332と第1固定電極部38との間の静電容量C1、および、可動電極部332と第2固定電極部39との間の静電容量C2の大きさがそれぞれ変化する。したがって、物理量センサー1は、これらの静電容量C1、C2の変化に基づいて加速度を検出する。
【0028】
また、支持部31、32は、ベース基板2に接合されている。具体的には、支持部31は、ベース基板2の上面の空洞部21に対して−X軸方向側の部分に接合されており、一方、支持部32は、ベース基板2の上面の空洞部21に対して+X軸方向側の部分に接合されている。
【0029】
本実施形態では、支持部31、32の形状が異なっており、特に、支持部32は、Y軸方向両側に延出する一対の延出部321、322を有している。延出部321は、+Y軸方向に延出し、その途中で略直角に屈曲して、先端が−X軸方向に向けて延びている。同様に、延出部322は、−Y軸方向に延出し、その途中で略直角に屈曲して、先端が−X軸方向に向けて延びている。延出部321、322は、第1固定電極部38との間に静電容量を形成して容量のオフセットを調整するのに用いられる部位であるが、このことについては、後に詳細に説明する。
【0030】
このような2つの支持部31、32の間に可動部33が設けられている。可動部33は、支持部31に対して連結部34を介して連結されるとともに、支持部32に対して連結部35を介して連結されている。より具体的には、基部331の一方の端部が連結部34を介して支持部31に連結されるとともに、他方の端部が連結部35を介して支持部32に連結されている。連結部34、35は、可動部33を支持部31、32に対して変位可能に連結している。本実施形態では、連結部34、35は、
図2にて矢印aで示すように、X軸方向(+X軸方向または−X軸方向)に可動部33を変位し得るように構成されている。
【0031】
このようにベース基板2に対してX軸方向に変位可能に支持された基部331の幅方向での両側(±Y軸方向側)には、可動電極部332が設けられている。可動電極部332は、可動部33からY軸方向に突出し、櫛歯状をなすようにX軸方向に沿って並ぶ複数の可動電極指333を備えている。また、可動電極指333は、第1、第2固定電極部38、39に対して間隔を隔てて対向するように設けられている。
【0032】
第1固定電極部38は、各可動電極指333の一方側(−X軸方向側)に配置され、対応する可動電極指333に対して間隔を隔てて噛み合う櫛歯状をなすように並ぶ複数の第1固定電極指381を有している。このような複数の第1固定電極指381は、その基端部(可動部33とは反対側の端部)にて、それぞれ、ベース基板2の上面に接合されている。また、+Y軸方向側に位置する複数の第1固定電極指381は、X軸方向に延びる連結部382によって機械的かつ電気的に接続されている。一方、−Y軸方向側に位置する複数の第1固定電極指381は、互いに独立して配置されている。
【0033】
これに対して、第2固定電極部39は、各可動電極指333の他方側(+X軸方向側)に配置され、対応する可動電極指333に対して間隔を隔てて噛み合う櫛歯状をなすように並ぶ複数の第2固定電極指391を有している。このような複数の第2固定電極指391は、その基端部(可動部33とは反対側の端部)にて、それぞれ、ベース基板2の上面に接合されている。また、−Y軸方向側に位置する複数の第2固定電極指391は、X軸方向に延びる連結部392によって機械的かつ電気的に接続されている。一方、+Y軸方向側に位置する複数の第2固定電極指391は、互いに独立して配置されている。
【0034】
このような素子片3の構成材料としては、前述したような静電容量の変化に基づく物理量の検出が可能であれば、特に限定されないが、半導体が好ましく、具体的には、例えば、単結晶シリコン、ポリシリコン等のシリコン材料を用いるのが好ましい。シリコン材料は、エッチングにより高精度に加工することができるため、素子片3をシリコンを主材料として構成することにより、素子片3の寸法精度を優れたものとし、その結果、物理量センサー1の高感度化を図ることができる。また、シリコンは疲労が少ないため、物理量センサー1の耐久性を向上させることもできる。また、素子片3を構成するシリコン材料には、リン、ボロン等の不純物がドープされているのが好ましい。これにより、素子片3の導電性を優れたものとすることができる。
【0035】
このような素子片3とベース基板2との接合方法は、特に限定されないが、前述したようにシリコンを主材料として素子片3を構成し、かつ、アルカリ金属イオンを含むガラス材料でベース基板2を構成した場合には、陽極接合法を用いるのが好ましい。これにより、素子片3をベース基板2に強固に接合することができる。そのため、物理量センサー1の耐衝撃性を向上させることができる。また、素子片3をベース基板2の所望の位置に高精度に接合することができる。そのため、物理量センサー1の高感度化を図ることができる。
【0036】
(導体パターン)
導体パターン4は、ベース基板2の凹部22、23、24内に設けられている。この導体パターン4は、
図4〜
図6に示すように、凹部22内に設けられている配線41および端子44と、凹部23内に設けられている配線42および端子45と、凹部24内に設けられている配線43および端子46と、を有している。
【0037】
配線41は、ベース基板2の空洞部21の外側に設けられ、空洞部21の外周に沿うように形成されている。そして、配線41の一端部は、ベース基板2の外周部(蓋部材5の外側の部分)において端子44に接続されている。また、配線41の他端部は、
図3(a)に示すように、導電性部材(バンプ)47を介して支持部32(可動電極指333)に電気的に接続されている。
【0038】
また、配線42は、ベース基板2の空洞部21の外側に設けられ、空洞部21の外周に沿うように形成されている。そして、配線42の一端部は、ベース基板2の外周部(蓋部材5の外側の部分)において端子45に接続されている。また、配線42は、
図3(b)に示すように、導電性部材(バンプ)48を介して第1固定電極指381に電気的に接続されている。
【0039】
また、配線43は、ベース基板2の空洞部21の外側に設けられ、空洞部21の外周に沿うように形成されている。そして、配線43の一端部は、ベース基板2の外周部(蓋部材5の外側の部分)において端子46に接続されている。また、配線43は、
図3(b)に示すように、導電性部材(バンプ)49を介して第2固定電極指391に電気的に接続されている。
【0040】
なお、
図2に示すように、配線42、43は、途中で交差している。そのため、この交差部では、配線42と配線43との間に絶縁膜を介在させる等の絶縁処理が施されている。また、蓋部材5と配線41、42、43との間には隙間(すなわち、蓋部材5の内外を連通する連通孔)が形成されており、この隙間は、蓋部材5内の圧力を調整したり、不活性ガスを充填したりするのを用いることができる。この隙間は、蓋部材5内を所定の雰囲気とした後に、接着剤等の封止材によって塞いでもよい。
【0041】
このような配線41〜43や端子44〜46の構成材料としては、それぞれ、導電性を有するものであれば特に限定されず、各種電極材料を用いることができるが、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In
3O
3、SnO
2、Sb含有SnO
2、Al含有ZnO等の酸化物(透明電極材料)、Au、Pt、Ag、Cu、Alまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
このような配線41、42、43および端子44、45、46を設けることで、端子44、45の間から可動電極部332と第1固定電極指381との間の静電容量C1を測定することができ、端子44、46の間から可動電極部332と第2固定電極指391との間の静電容量C2を測定することができる。そして、静電容量C1、C2の変化に基づいて、物理量センサー1に加わった±X軸方向の加速度を検出することができる。
【0043】
(蓋部材)
蓋部材5は、板状をなし、その下面に開口する凹部51が設けられている。また、凹部51は、素子片3の可動部33の変位を許容するように形成されている。そして、蓋部材5の下面がベース基板2の上面に接合されている。蓋部材5とベース基板2との接合方法としては、特に限定されず、例えば、接着剤を用いた接合方法、陽極接合法、直接接合法等を用いることができる。また、蓋部材5の構成材料としては、前述したような機能を発揮し得るものであれば、特に限定されないが、例えば、シリコン材料、ガラス材料等を好適に用いることができる。なお、蓋部材5をベース基板2に接合しただけの状態では、ベース基板2に形成されている凹部22、23、24を介して内部空間Sの内外が連通されている。そのため、図示しないが、TEOSCVD法等で形成されたSiO
2膜によって凹部22、23、24が封止されており、これにより、内部空間Sが気密封止されている。
【0044】
以上、物理量センサー1の構成について説明した。次に、支持部32が有する延出部321、322の機能について説明する。後述するように、例えば、物理量センサー1には検出回路を備えたICチップ102が接続され、このICチップ102が、可動電極部332と第1固定電極部38との間の静電容量C1、および、可動電極部332と第2固定電極部39との間の静電容量C2の変化に基づいて、加わった加速度(物理量)を検出する。ここで、物理量センサー1は、加速度が加わっていない自然状態において、静電容量C1と静電容量C2とが等しくなるよう、すなわち、静電容量C1、C2のオフセットがゼロとなるように設計されている。このように設計することによって、受けた加速度をより正確に検出できる。一方で、製造精度等の問題によって静電容量C1と静電容量C2とが僅かにずれてしまった場合には、ICチップ102内の補正回路等を用いて、静電容量C1、C2のオフセットがゼロになるような補正を行うことで、正確な検出を行うことができる。
【0045】
ここで、実際には、静電容量C1は、端子44、45間の静電容量C1’として検出され、静電容量C2は、端子44、46間の静電容量C2’として検出されるため、静電容量C1、C2を等しくしても、例えば、配線41、42間や配線41、43間に形成される寄生容量や、配線41と第1固定電極部38の間や配線41と第2固定電極部39との間に形成される寄生容量等の影響によって、静電容量C1’、C2’に差が生じる場合がある。静電容量C1’、C2’の差ΔC’が僅か(所定範囲内)であれば、前述したようにICチップ102による補正が可能となり問題とならないが、差ΔC’が大きければ(所定範囲外であれば)、前述したようなICチップ102による補正ができない。このようなものは、検出精度を保証することができず、結果として、物理量センサー1の製造歩留まりが低下する。
【0046】
そこで、本実施形態では、静電容量C1’、C2’の差ΔC’をICチップ102の補正可能範囲内に収めることができるように、好ましくは差ΔC’をゼロとするように、調整用の容量を形成するための静電容量形成部7を設けている。すなわち、物理量センサー1は、支持部31、32、可動部33、連結部34、35、配線41および端子44を備えた第1構造体11と、第1固定電極部38、配線42および端子45を備えた第2構造体12と、第2固定電極部39、配線43および端子46を備えた第3構造体13と、第1構造体11と第2構造体12との間および第1構造体11と第3構造体13との間の少なくとも一方に静電容量を形成して、差ΔC’をICチップ102の補正可能範囲内とする静電容量形成部7と、を有している。以下、静電容量形成部7について詳細に説明するが、以下では、静電容量形成部7を設けない状態にて、静電容量C2’>静電容量C1’なる関係を満足しているものとする。
【0047】
上述のように、静電容量形成部7を設けない状態にて、静電容量C2’>静電容量C1’なる関係を満足しているので、静電容量形成部7は、静電容量C1’を大きくするための第1静電容量形成部71を有している。本実施形態の第1静電容量形成部71は、
図2に示すように、支持部32の延出部321の先端面321aと最も+X軸方向側に位置する第1固定電極指381(381’)の側面とが対向することにより構成され、また、支持部32の延出部322の先端面322aと最も+X軸方向側に位置する第1固定電極指381(381”)の側面とが対向することにより構成されている。
【0048】
これら2つの第1静電容量形成部71は、それぞれ、先端面321a、322aと第1固定電極指381’、381”との離間距離や、先端面321a、322aの面積(第1固定電極指381’、381”との対向面積)を適宜調整することで所定の大きさの容量となっている。
【0049】
このような第1静電容量形成部71を設けることで、静電容量C1’を大きくすることができ、差ΔC’を小さくする(好ましくはゼロにする)ことができる。よって、差ΔC’をICチップ102の補正可能範囲内に収めることができ、製造歩留まりが向上する。なお、本実施形態では、2つの第1静電容量形成部71が設けられているが、1つの第1静電容量形成部71で十分に差ΔC’を小さくすることができれば、一方の第1静電容量形成部71を省略してもよい。
【0050】
第1静電容量形成部71を上述のような構成とすることで、装置の過度な大型化を伴うことなく、第1静電容量形成部71の構成が簡単となる。また、延出部321、322や第1固定電極指381は、シリコン基板をエッチングすることで得られるため、先端面321a、322aの面積や、延出部321、322と第1固定電極指381との離間距離を高精度に制御することができる。そのため、第1静電容量形成部71の容量の、設計値からのずれを小さく抑えることができ、よって、差ΔC’をより小さくすることができる。
【0051】
<第2実施形態>
次に、本発明の物理量センサーの第2実施形態について説明する。
図4は、本発明の第2実施形態に係る物理量センサーを示す平面図である。
【0052】
本実施形態にかかる物理量センサーは、静電容量形成部の構成が異なる以外は、前述した第1実施形態にかかる物理量センサーと同様である。
【0053】
なお、以下の説明では、第2実施形態の物理量センサーに関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、
図4では前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0054】
本実施形態の物理量センサー1の静電容量形成部7は、
図4に示すように、端子44、45(第1、第2構造体11、12)間に静電容量を形成する第1静電容量形成部71と、端子44、46(第1、第3構造体11、13)間に静電容量を形成する第2静電容量形成部72と、を有している。第1静電容量形成部71の構成は、前述した第1実施形態と同様である。一方、第2静電容量形成部72は、以下のようにして構成されている。
【0055】
すなわち、本実施形態の物理量センサー1では、支持部31がY軸方向両側に延出する一対の延出部311、312を有している。延出部311は、+Y軸方向に延出し、その途中で略直角に屈曲して、先端が+X軸方向に向けて延びている。同様に、延出部312は、−Y軸方向に延出し、その途中で略直角に屈曲して、先端が+X軸方向に向けて延びている。そして、延出部311の先端面311aと第2固定電極指391(391’)の側面とが対向することで1つの第2静電容量形成部72が形成され、延出部312の先端面312aと第2固定電極指391(391”)の側面とが対向することで1つの第2静電容量形成部72が形成されている。
【0056】
ここで、静電容量形成部7を設けない状態にて、静電容量C2’>静電容量C1’なる関係を満足しているので、第1静電容量形成部71で形成さる容量よりも、第2静電容量形成部72で形成される容量が小さくなっている(すなわち、第1、第2静電容量形成部71、72の容量が異なっている)。これにより、差ΔC’を小さくする(好ましくはゼロにする)ことができ、差ΔC’をICチップ102の補正可能範囲内に収めることができる。よって、製造歩留まりが向上する。
【0057】
なお、本実施形態では、先端面311a、312aの面積を、先端面321a、322aの面積よりも小さくすることで、第1静電容量形成部71で形成さる容量よりも、第2静電容量形成部72で形成される容量を小さくしているが、他にも、先端面321a、322aと第1固定電極指381’、381”との離間距離よりも、先端面311a、312aと第2固定電極指391’、391”との離間距離を広くすることで、第1静電容量形成部71で形成さる容量よりも、第2静電容量形成部72で形成される容量を小さくしてもよい。また、第1、第2静電容量形成部71、72は、それぞれ、2つずつ設けられているが、数は限定されず、いずれか一方を省略してもよいし、反対に、1つ以上を追加してもよい。
【0058】
このように、静電容量形成部7が第1、第2静電容量形成部71、72を有することで、支持部32の機械的強度を保つことができる。具体的に説明すると、例えば、前述した第1実施形態のように、第1静電容量形成部71のみを設ける場合、仮に、静電容量形成部7を設けない状態における差ΔC’がそれほど大きくない場合には、第1静電容量形成部71で形成される容量を小さく抑えるために、例えば、先端面321a、322aを小さくする必要がある。すると、延出部321、322が細くなってしまい、衝撃等によって支持部32が破損してしまうおそれもある。これに対して、本実施形態のように、第1静電容量形成部71に加えて第2静電容量形成部72を設けると、第2静電容量形成部72によって増えた容量を相殺する分だけ、延出部321、322の先端面321a、322aを広くしなければならない。そのため、延出部321、322を十分に太く保つことができ、機械的強度が十分に維持される。
【0059】
このような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0060】
<第3実施形態>
次に、本発明の物理量センサーの第3実施形態について説明する。
図5は、本発明の第3実施形態に係る物理量センサーを示す平面図である。
【0061】
本実施形態にかかる物理量センサーは、静電容量形成部の構成が異なる以外は、前述した第1実施形態にかかる物理量センサーと同様である。
【0062】
なお、以下の説明では、第3実施形態の物理量センサーに関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、
図5では前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0063】
本実施形態の物理量センサー1では、支持部31の延出部311、312がそれぞれY軸方向に延在しており、前述した第2実施形態のように途中でX軸方向に屈曲していない。同様に、支持部32の延出部321、322がそれぞれY軸方向に延在しており、前述した第2実施形態のように途中でX軸方向に屈曲していない。
【0064】
また、第1固定電極部38は、複数の第1固定電極指381と、+Y軸方向側に位置する全ての第1固定電極指381および−Y軸方向側に位置するもののうち最も+X軸方向側に位置する第1固定電極指381を連結する連結部382と、を有している。なお、−Y軸方向側に位置する第1固定電極指381のうちの連結部382に連結されていないものは、配線42および導電性部材48(図示せず)を介して連結部382に接続されている。
【0065】
連結部382は、支持部32の+X側の近傍を通過するようにしてY軸方向に延在している部分382aを有している。そして、このような部分382aと支持部32とが対向することで第1静電容量形成部71が形成されている。なお、例えば、部分382aと支持部32との離間距離や延出部321、322の長さを適宜調整することで、第1静電容量形成部71の容量を調整することができる。
【0066】
同様に、第2固定電極部39は、複数の第2固定電極指391と、−Y軸方向側に位置する全ての第2固定電極指391および+Y軸方向側に位置するもののうち最も−X軸方向側に位置する第2固定電極指391を連結する連結部392と、を有している。なお、+Y軸方向側に位置する第2固定電極指391のうちの連結部392に連結されていないものは、配線43および導電性部材49(図示せず)を介して連結部392に接続されている。
【0067】
連結部392は、支持部31の−X側の近傍を通過するようにしてY軸方向に延在している部分392aを有している。そして、このような部分392aと支持部31とが対向することで第2静電容量形成部72が形成されている。なお、例えば、部分392aと支持部31との離間距離や延出部311、312の長さを適宜調整することで、第2静電容量形成部72の容量を調整することができる。
【0068】
第1静電容量形成部71を上述のような構成とすることで、第1静電容量形成部71の構成が簡単となる。また、支持部32と部分382aとの対向面積を広く確保することができるので、静電容量C1の調整範囲が広くなる。第2静電容量形成部72についても同様のことが言える。
【0069】
このような第3実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0070】
<第4実施形態>
次に、本発明の物理量センサーの第4実施形態について説明する。
図6は、本発明の第4実施形態に係る物理量センサーを示す平面図である。
【0071】
本実施形態にかかる物理量センサーは、静電容量形成部の構成が異なる以外は、前述した第3実施形態にかかる物理量センサーと同様である。
【0072】
なお、以下の説明では、第4実施形態の物理量センサーに関し、前述した第3実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、
図6および
図7では前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0073】
本実施形態の物理量センサー1では、
図6に示すように、支持部31から延出部311、312が省略されており、支持部32から延出部321、322が省略されている。また、配線41は、支持部32と端子44とを接続する第1配線部411と、支持部32から+X軸方向へ延びる第2配線部412とを有している。そして、第2配線部412と連結部382の部分382aとが交差することで第1静電容量形成部71が形成され、第1配線部411と連結部392の部分392aとが交差することで第2静電容量形成部72が形成されている。なお、例えば、第2配線部412と部分382aとの離間距離や部分382aの幅(X軸方向の長さ)を適宜調整することで、第1静電容量形成部71の容量を調整することができる。第2静電容量形成部72についても同様である。
【0074】
第1、第2静電容量形成部71、72を上述のような構成とすることで、第1、第2静電容量形成部71、72の構成が簡単となる。
【0075】
このような第4実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0076】
2.物理量センサー装置
次に、本発明の物理量センサー装置を説明する。
【0077】
図7は、本発明の物理量センサー装置の一例を示す模式図である。
図7に示す物理量センサー装置100は、基板101と、接着層103を介して基板101の上面に固定されている物理量センサー1と、接着層104を介して物理量センサー1の上面に固定されているICチップ(電子部品)102と、を有している。そして、物理量センサー1およびICチップ102が基板101の下面を露出させた状態で、モールド材Mによってモールドされている。なお、接着層103、104としては、例えば、半田、銀ペースト、樹脂系接着剤(ダイアタッチ剤)等を用いることができる。また、モールド材Mとしては、例えば、熱硬化型のエポキシ樹脂を用いることができ、例えば、トランスファーモールド法によってモールドすることができる。
【0078】
また、基板101の上面には複数の端子101aが配置されており、下面には図示しない内部配線やキャスタレーションを介して端子101aに接続されている複数の実装端子101bが配置されている。このような基板101としては、特に限定されないが、例えば、シリコン基板、セラミック基板、樹脂基板、ガラス基板、ガラスエポキシ基板等を用いることができる。
【0079】
また、ICチップ102には、例えば、物理量センサー1を駆動する駆動回路や、差動信号から加速度を検出する検出回路や、検出回路からの信号を所定の信号に変換して出力する出力回路等が含まれている。このようなICチップ102は、ボンディングワイヤー105を介して物理量センサー1の端子44、45、46と電気的に接続されており、ボンディングワイヤー106を介して基板101の端子101aに電気的に接続されている。
【0080】
このような物理量センサー装置100は、物理量センサー1を備えているので、優れた信頼性を有している。
【0081】
3.電子機器
次に、本発明の電子機器を説明する。
【0082】
図8は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピューターの構成を示す斜視図である。
【0083】
この図において、パーソナルコンピューター1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部1108を備えた表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。このようなパーソナルコンピューター1100には、その落下や傾斜を計測するための加速度や角速度等の物理量を計測する物理量センサー1が搭載されている。このように、上述した物理量センサー1を搭載することで、信頼性の高いパーソナルコンピューター1100を得ることができる。
【0084】
図9は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【0085】
この図において、携帯電話機1200は、アンテナ(図示せず)、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206を備え、操作ボタン1202と受話口1204との間には、表示部1208が配置されている。このような携帯電話機1200には、その落下や傾斜を計測するための加速度や角速度等の物理量を計測する物理量センサー1が搭載されている。このように、上述した物理量センサー1を搭載することで、信頼性の高い携帯電話機1200を得ることができる。
【0086】
図10は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
【0087】
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0088】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部1310が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、表示部1310は、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。また、ケース1302の正面側(図中裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
【0089】
撮影者が表示部1310に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、メモリ1308に転送・格納される。また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示されるように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピューター1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、メモリ1308に格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピューター1440に出力される構成になっている。このようなディジタルスチルカメラ1300には、その落下や傾斜を計測するための加速度や角速度等の物理量を計測する物理量センサー1が搭載されている。このように、上述した物理量センサー1を搭載することで、信頼性の高いディジタルスチルカメラ1300を得ることができる。
【0090】
なお、本発明の電子機器は、
図8のパーソナルコンピューター(モバイル型パーソナルコンピューター)、
図9の携帯電話機、
図10のディジタルスチルカメラの他にも、例えば、インクジェット式吐出装置(例えばインクジェットプリンタ)、ラップトップ型パーソナルコンピューター、テレビ、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ等に適用することができる。
【0091】
4.移動体
次に、本発明の移動体を説明する。
図11は、本発明の移動体を適用した自動車を示す斜視図である。
【0092】
自動車1500には物理量センサー1が内蔵されており、例えば、物理量センサー1によって車体1501の姿勢を検出することができる。物理量センサー1の検出信号は、車体姿勢制御装置1502に供給され、車体姿勢制御装置1502は、その信号に基づいて車体1501の姿勢を検出し、検出結果に応じてサスペンションの硬軟を制御したり、個々の車輪1503のブレーキを制御したりすることができる。
【0093】
以上、本発明の物理量センサー、物理量センサー装置、電子機器および移動体を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、本発明は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。