(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る二次粒子30の模式的な断面図である。
本実施形態に係る造粒粉10は、二次粒子30を含む。二次粒子30は、一次粒子20を凝集させることにより形成された球状の粒子である。一次粒子20は鱗片状の窒化ホウ素である。二次粒子30は、コア部310とシェル部320とを有する。コア部310は二次粒子30の中心を含む。シェル部320はコア部310を覆っている。コア部310における一次粒子20の密度は、シェル部320における一次粒子20の密度よりも低い。以下に詳しく説明する。
【0016】
なお、本実施形態において、「放熱シート」はBステージ状態の樹脂を含むものをいう。また、「放熱部材」は硬化されたCステージ状態の樹脂を含むものをいい、たとえばさらに金属部材などを含んでも良い。放熱部材の形状は特に限定されず、任意の形状とすることができる。
【0017】
造粒粉10は、二次粒子30が密度の高いシェル部320を有することで水分を吸収しにくい。そのため、造粒粉10を用いて製造する樹脂組成物、放熱シート、および放熱部材の耐湿性能を向上させることができる。
【0018】
また、二次粒子30が密度の高いシェル部320を有することで、二次粒子30の耐圧力性が高くなる。そのため、造粒粉10を含む樹脂組成物、放熱シート、および放熱部材を製造する際、圧縮されても二次粒子30の形状が保たれる。二次粒子30の形状がつぶれずに維持されることにより、放熱シートや放熱部材の中に、一次粒子20を等方的に含有させることができ、等方的な熱伝導特性が得られる。
【0019】
一方、造粒粉10は二次粒子30が密度の低いコア部310を有することで一次粒子20の量を削減でき、低コスト化を図れる。
【0020】
二次粒子30は一次粒子20を凝集させることにより形成された球状の粒子である。なお、ここで球状とは真球には限らず、楕円回転体や、一次粒子20の凝集体が球形化され丸みを帯びた形状を含む。
【0021】
なお、造粒粉10は、二次粒子30を主として含めばよく、凝集していない一次粒子20や、コア部310およびシェル部320を有さない一次粒子20の凝集粒子、その他の構成粒子、不純物などをさらに含んでもよい。
【0022】
以下に、造粒粉10の製造方法について説明する。造粒粉10は、一次粒子20を凝集させることにより形成された二次粒子30を含む。
【0023】
一次粒子20としては、六方晶の窒化ホウ素粒子を用いることができる。一次粒子20の平均長径は特に限定されないが、効率良く二次粒子30を形成する観点、および良好な熱伝導性を得る観点から、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。また、同様の観点から、一次粒子20の平均長径は50μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましい。
なお、この平均長径は走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いた観察により測定することができる。たとえば、以下の手順で測定する。まず、二次粒子30または二次粒子30を含む放熱シートをミクロトームなどで切断し、断面を作製する。次いで、走査型電子顕微鏡により、数千倍に拡大した断面像を数枚撮影する。次いで、任意の二次粒子30を選択し、写真から確認できる各一次粒子20の最長の断面長さを長径として測定する。このとき、100個以上の一次粒子20について長径を測定し、それらの平均値を平均長径とする。
【0024】
二次粒子30は、バインダー樹脂をさらに含むことが好ましい。バインダー樹脂は、バインダーとして作用し得るものであれば特に限定されるものではなく、例として熱可塑性樹脂であっても、熱硬化性樹脂であってもよい。バインダー樹脂としては、たとえば、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)樹脂や、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル系樹脂、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタンからなる群から選ばれる1種以上を用いることができる。
これらの中でもバインダーとしてはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、および不飽和ポリエステル樹脂からなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。このようなバインダーを含むことで、効率良く二次粒子が形成できる。
【0025】
二次粒子30中に含まれるバインダーの含有量は、特に限定されないが、コア部310とシェル部320とを有する二次粒子30を効率良く得る観点から、当該二次粒子100質量%に対し、5質量%以上が好ましく、12質量%以上がより好ましい。また、当該含有量は、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。
【0026】
二次粒子30は、ほかに特性向上を目的とした無機粉末、金属粉、樹脂の硬化触媒や硬化促進剤などを含んでもよい。
【0027】
本実施形態に係る造粒粉10は、たとえば次のようにして作製することができる。まず、一次粒子20と、バインダー樹脂とを、ミキサー等を用いて混合する。なお、バインダー樹脂は必要に応じて溶剤に溶かして加えることができる。こうして得られたスラリーを、機械的粒子複合化装置の処理容器に入れ、機械的粒子複合化装置を駆動する。このことで一次粒子20は凝集され、球形化される。こうして得られた凝集物を、乾燥オーブンを用いて加熱処理し、二次粒子30を得る。加熱処理は大気下で行うことができる。加熱処理の温度はたとえば90℃以上150℃以下とすることができ、加熱時間はたとえば30分以上5時間以下とすることができる。このように、本実施形態に係る造粒粉10は焼結することなく製造することができ、製造コストを低減できる。
【0028】
ここで、機械的粒子複合化装置について説明する。機械的粒子複合化装置とは、複数種の粉体等の原料に対して圧縮力やせん断力および衝撃力を含む機械的作用を加えることで、複数種の粉体等の原料同士が結合した粉体を得ることができる装置である。機械的作用を加える方式としては、一つあるいは複数の撹拌翼等を備えた回転体と撹拌翼等の先端部と近接した内周面を備えた混合容器を有し、撹拌翼等を回転させる方式や、撹拌翼等を固定し、または回転させながら混合容器を回転させる等の方式が挙げられる。撹拌翼等の形状については、機械的作用を加えることができれば特に制限はなく、楕円型や板状等が挙げられる。また、撹拌翼等は、回転方向に対して角度をもってもよい。また、混合容器はその内面に溝等の加工を施してもよい。
【0029】
上記攪拌翼等を高速回転させることにより、個々の粒子に圧縮力やせん断力および衝撃力を含む機械的作用を加えることで、コア部310とシェル部320とを有する二次粒子30が形成される。
【0030】
機械的粒子複合化装置としては、たとえば、株式会社奈良機械製作所製ハイブリダイゼーション、川崎重工業株式会社製クリプトロン、ホソカワミクロン株式会社製メカノフュージョンおよびノビルタ、株式会社徳寿工作所製シータコンポーザ、岡田精工株式会社製メカノミル、日本コークス工業株式会社製COMPOSI、宇部興産株式会社製CFミル等が挙げられるが、この限りではない。
【0031】
攪拌翼等の回転速度は、500rpm以上が好ましく、2000rpm以上がより好ましい。また、攪拌翼の回転速度は5000rpm以下が好ましく、4000rpm以下がより好ましい。上記下限値以上であることによりコア部310の表面がシェル部320により十分に被覆され、上記上限値以下であることにより、処理時の発熱を抑制し、過粉砕を防止することができる。
【0032】
機械的粒子複合化装置を用いて一次粒子20を凝集させる際、処理容器内の温度は、基材、被覆粒子に応じて設定されるが、たとえば5℃以上50℃以下とすることができる。また、機械的粒子複合化装置による処理時間は、原料に応じて設定されるが、30秒以上が好ましく、1分以上がより好ましく、10分以上がさらに好ましい。一方、当該処理時間は、120分以下が好ましく、90分以下がより好ましく、60分以下がさらに好ましい。上記下限値以上、上限以下とすることで、より効率的に二次粒子30を得られる。
【0033】
本実施形態に係る二次粒子30では、コア部310において、一次粒子20が不規則な向きで凝集していることが好ましい。
シェル部320における一次粒子20は、二次粒子30の外周面に沿うようにコア部310を覆い、二次粒子30の半径方向に積層するように配向していることが好ましい。
なお、シェル部320における一次粒子20がコア部310の外周面全体を覆っていることが好ましいが、コア部310の一部が露出していても良い。また、これらの構造を有する二次粒子30が混在していても良い。
シェル部320の最表面、すなわち二次粒子30の最表面を形成する複数の一次粒子20は互いに圧縮されて一体化されていても良い。
二次粒子30の形状やコア部310およびシェル部320の状態は、走査型電子顕微鏡を用いて外観や断面を観察することによって確認できる。
なお、シェル部320において一次粒子20が配向している場合、一次粒子20同士が一体化されて、界面が必ずしも明瞭に観察されないことがある。この場合、電子顕微鏡による二次粒子30の断面像において、シェル部320に見られる空孔が、二次粒子30の外周に沿った線状に観察されることにより、一次粒子20の上記の様な配向状態が理解できる。ここで、外周に沿った線状とは、外周に沿う方向の長さが、当該方向に垂直な方向の長さより長い形をいう。
【0034】
二次粒子30のシェル部320の平均厚さは、造粒粉10を使用する用途に応じて変更することができるが、一般的には、5.0nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることがさらに好ましい。一方、シェル部320の平均厚さは50μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。シェル部320の平均厚さを上述の範囲とすることにより、シェル部320が安定して形状を維持することができ、かつ、被覆層としての機能を効果的に発現することができる。なお、シェル部320は、一定の厚さで形成されていることが好ましいが、例えば、部分によって厚さにムラがあってもよいし、コア部310の一部がシェル部320に覆われていなくても用いることができる。
【0035】
シェル部320の平均厚さは、たとえば以下の方法により算出することができる。まず、クロスセクションポリッシャ(SM−09010、日本電子製)を用いて、二次粒子30を切断し断面を露出する。そして、露出した二次粒子30の断面を、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM−7401F)を用いて観察する。観察で得られた画像のコア部310とシェル部320の界面から二次粒子30の最外面までの平均距離を画像解析より求め、当該二次粒子30のシェル部320の厚さとして算出する。20個以上の二次粒子30について算出した厚さの平均値を、シェル部320の平均厚さとする。
【0036】
耐湿性能、耐圧力性をより向上させる観点から、シェル部320の厚みは、二次粒子30の直径に対して20%以上を占めることが好ましい。
耐湿性能、耐圧力性をより向上させる観点から、シェル部320の厚みは平均して一次粒子20の鱗片の厚みの10倍以上であることが好ましい。
耐湿性能、耐圧力性をより向上させる観点から、シェル部320の厚みは平均で表層から10nm以上あることが好ましい。
二次粒子30のシェル部320の厚みは、上述のように走査型電子顕微鏡を用いて断面を観察することによって確認できる。
【0037】
二次粒子30の平均球形度は0.70以上であることが好ましく、0.75以上であることがより好ましい。二次粒子30の平均球形度が上記下限以上であれば、樹脂組成物に多量に添加することができる。多量に添加しても、樹脂組成物の粘度が上昇して製造効率が低下することが生じにくいからである。平均球形度は、具体的には以下のように測定することができる。粒子の投影像の周囲長をL、粒子の投影像の面積をSとしたとき、4πS/L
2で表される値を球形度として求める。そして、当該球形度を10000個について測定し、平均値を平均球形度として得ることができる。二次粒子30の平均球形度はたとえば粒子画像分析装置(マルバーン社製、モフォロギ G3)を用いて測定することができる。
【0038】
造粒粉10の吸油量は、当該造粒粉100gあたり70mL以下であることが好ましく、50mL以下であることがより好ましく、25mL以下であることがさらに好ましい。上記上限以下であれば、造粒粉10を用いて、熱伝導率に優れる放熱シートや放熱部材を得ることができる。本実施形態に係る二次粒子30は密度の高いシェル部320を有するため、吸油量が低い造粒粉10を得ることができる。そのため、高湿度の環境においても水分を吸収しにくく、絶縁性や熱伝導率が影響を受けにくい。吸油量はたとえば吸油量測定装置(あさひ総研社製、S−500)を用いて測定することができる。
【0039】
二次粒子30のメディアン径D
50(0)は、ハンドリング性向上の観点から、30μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、60μm以上であることがさらに好ましい。二次粒子30のメディアン径D
50(0)は、たとえばフランホーファー回折理論およびミーの散乱理論による解析を利用したレーザー回折式粒度分布計(堀場製作所製、LA−950V2)を用いて、湿式法にて測定を行い測定することができる。体積基準で粒度分布を解析し、粉体をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側と小さい側が等量となる径をメディアン径とする。湿式法での測定では、純水50mL中に測定試料を少量(たとえば3mg程度。試料により測定に最適な量を調整する。)を加えた後、界面活性剤を添加し、超音波バス中で3分間処理し、試料が分散した溶液を用いる。
【0040】
二次粒子30を圧縮した場合の、圧縮後のメディアン径D
50(1)は、ハンドリング性向上の観点から30μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、60μm以上であることがさらに好ましい。二次粒子30の圧縮は(株式会社ナノシーズ製、NS−S500)を用いて行うことができ、10MPaで120秒間、造粒粉10を圧縮する。圧縮後の二次粒子30のメディアン径D
50(1)は、たとえばレーザー回折式粒度分布計(堀場製作所製、LA−950V2)を用いて測定することができる。
【0041】
二次粒子30の圧縮前後のメディアン径の比は0.4以上であることが好ましい。具体的には、二次粒子30を10MPaで圧縮した場合の、圧縮前のメディアン径をD
50(0)とし、圧縮後のメディアン径をD
50(1)としたとき、D
50(1)/D
50(0)で表される圧縮前後のメディアン径の比が0.4以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。D
50(1)/D
50(0)の値が上記下限以上であれば、造粒粉10を含む放熱シートや放熱部材の製造において、圧縮された場合にも、二次粒子30の形状がつぶれずに維持され、耐湿性能に優れる放熱シートや放熱部材を得ることができる。また、二次粒子30の形状がつぶれずに維持されることにより、放熱シートや放熱部材の中に、一次粒子20を等方的に含有させることができ、等方的な熱伝導特性が得られる。
【0042】
二次粒子30の粒径の算術標準偏差は、ハンドリング性向上の観点から、5μm以上であることが好ましく、40μm以上であることがより好ましく、60μm以上であることがさらに好ましい。一方で、二次粒子30の粒径の算術標準偏差は、性能安定性の観点から70μm以下であることが好ましい。二次粒子30の粒径の算術標準偏差は、たとえばレーザー回折式粒度分布計(堀場製作所製、LA−950V2)を用いて測定できる。
【0043】
造粒粉10の比表面積は、5.0m
2/g以下であることが好ましく、3.0m
2/g以下であることがより好ましい。比表面積が上記上限以下であれば、樹脂組成物に添加しても粘性が上がりにくく、成形性を損なうことがない。そのため、樹脂組成物に添加する造粒粉10の量を多くすることができる。一方、造粒粉10の比表面積は、2.0m
2/g以上であることが好ましく、2.6m
2/g以上であることがより好ましい。比表面積が上記下限以上であれば、高湿度下での耐電圧性に優れる放熱部材や放熱シートをより確実に得ることができる。造粒粉10の比表面積は、たとえばガス/蒸気吸着量測定装置(日本ベル株式会社製、BELSORP−max)にて窒素吸着によるBET法によって測定できる。
【0044】
造粒粉10の摩擦角は、ハンドリングの容易さおよび成形性の観点から、10.0°以下であることが好ましく、8.0°以下であることがより好ましい。摩擦角を上記上限以下とすることで、粉体の流動性が高くなり、ハンドリング性を向上させることができる。二次粒子30の摩擦角は、たとえば粉体層せん断力測定想定(株式会社ナノシーズ製、NS−S500)を用いて測定できる。
【0045】
造粒粉10のかさ密度は、1.50g/cm
3以下であることが好ましく、1.20g/cm
3以下であることがより好ましい。一方、当該かさ密度は、ハンドリング性向上の観点から、0.50g/cm
3以上であることが好ましく、0.90g/cm
3以上であることがより好ましい。また、かさ密度が上記上限以下、下限以上であれば、熱伝導性と成形性の性能バランスに優れる放熱シートや放熱部材を得ることができる。造粒粉10のかさ密度は、たとえばパウダテスタ(ホソカワミクロン株式会社製、PT−X)を用いて固めかさ密度として測定できる。
【0046】
造粒粉10の真比重は、3.5g/cm
3以下であることが好ましく、3.0g/cm
3以下であることがより好ましい。一方、当該真比重は、1.0g/cm
3以上であることが好ましく、2.0g/cm
3以上であることがより好ましい。真比重が上記上限以下、下限以上であれば、熱伝導性と成形性の性能バランスに優れる放熱シートや放熱部材を得ることができる。造粒粉10の真比重は、たとえば自動湿式真密度測定器(株式会社セイシン企業製、MAT−7000)を用いて液相置換法で測定できる。
【0047】
二次粒子30の組成、粉体処理装置の駆動条件、加熱処理の条件等を調整することで、上述したような二次粒子30および造粒粉10を得ることができる。
【0048】
以下に、本実施形態に係る放熱用樹脂組成物、放熱シート140、および放熱部材について説明する。
【0049】
図2は、本実施形態に係る放熱シート140の模式的な断面図である。
本実施形態に係る放熱用樹脂組成物は、上記の造粒粉10と、熱硬化性樹脂(A)とを含む。放熱シート140は当該放熱用樹脂組成物からなり、たとえば
図2のように二次粒子30、および熱硬化性樹脂410を含む。放熱シート140における熱硬化性樹脂410はたとえば熱硬化性樹脂(A)をBステージ化したものである。二次粒子30は上述したようなコア部310とシェル部320を有する。また、本実施形態に係る放熱部材は当該放熱用樹脂組成物の硬化体を含む。以下で詳細に説明する。
【0050】
二次粒子30は密度の高いシェル部320を有するため、放熱シート140および放熱部材において、二次粒子30は球状を維持することができる。また、二次粒子30はシェル部320を有するため、吸湿性が低く、耐湿性に優れる放熱シート140および放熱部材を実現できる。
【0051】
(熱硬化性樹脂(A))
熱硬化性樹脂(A)としては、たとえば、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ビスマレイミド樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂(A)として、これらの中の1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
熱硬化性樹脂(A)としては、エポキシ樹脂(A1)が好ましい。エポキシ樹脂(A1)を使用することで、ガラス転移温度を高くするとともに、放熱用樹脂組成物、放熱シート140、および放熱部材の熱伝導性を向上させることができる。
【0052】
エポキシ樹脂(A1)としては、たとえば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4'−(1,3−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4'−(1,4−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4'−シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノール基メタン型ノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタン型ノボラック型エポキシ樹脂,縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂等のアリールアルキレン型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂等のナフタレン型エポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;フェノキシ型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ノルボルネン型エポキシ樹脂;アダマンタン型エポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0053】
エポキシ樹脂(A1)として、これらの中の1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0054】
エポキシ樹脂(A1)の中でも、得られる放熱用樹脂組成物、放熱シート140、および放熱部材の耐熱性および絶縁信頼性をより一層向上できる観点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂からなる群から選択される一種または二種以上が好ましい。
【0055】
放熱用樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂(A)の含有量は、その目的に応じて適宜調整されればよく、特に限定されないが、放熱用樹脂組成物を100質量%として、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。一方、当該含有量は30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。熱硬化性樹脂(A)の含有量が上記下限値以上であると、放熱用樹脂組成物のハンドリング性が向上し、放熱シート140および放熱部材を形成するのが容易となるとともに放熱シート140および放熱部材の強度が向上する。熱硬化性樹脂(A)の含有量が上記上限値以下であると、放熱シート140および放熱部材の線膨張率や弾性率がより一層向上したり、放熱シート140、および放熱部材の熱伝導性がより一層向上したりする。
【0056】
(充填剤(B))
本実施形態に係る放熱用樹脂組成物は、充填剤(B)を含む。充填剤(B)は、上述した造粒粉10を含み、造粒粉10は、二次粒子30を含む。二次粒子30は、一次粒子20を凝集させることにより形成された球状の粒子である。一次粒子20は鱗片状の窒化ホウ素である。二次粒子30は、コア部310とシェル部320とを有する。コア部310は二次粒子30の中心を含む。シェル部320はコア部310を覆っている。コア部310における一次粒子20の密度は、シェル部320における一次粒子20の密度よりも低い。
【0057】
放熱用樹脂組成物に含まれる充填剤(B)100質量%に対して二次粒子30を50質量%以上含むことが好ましく、60質量%以上含むことがより好ましい。上記下限以上であれば、ボイドが少なく、良好な熱伝導特性および絶縁性が得られる。
また、放熱用樹脂組成物に含まれる二次粒子30の含有量は、放熱用樹脂組成物を100質量%として、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。一方、当該含有量は95質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。二次粒子30の含有量を上記下限値以上とすることにより、放熱シート140、および放熱部材における熱伝導性や機械的強度の向上をより効果的に図ることができる。一方で、二次粒子30の含有量を上記上限値以下とすることにより、放熱用樹脂組成物の成形における作業性を向上させ、放熱シート140および放熱部材の膜厚の均一性をより一層良好なものとすることができる。
【0058】
本実施形態に係る充填剤(B)は、放熱用樹脂組成物、放熱シート140、および放熱部材の熱伝導性をより一層向上させる観点から、二次粒子30に加えて、二次粒子30を構成しない鱗片状窒化ホウ素の粒子をさらに含むのが好ましい。当該粒子は、一次粒子20と同じ粒子でもよいし、異なる粒子でも良い。この鱗片状窒化ホウ素の粒子の平均長径は、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。一方、当該平均長径は、70μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましい。放熱用樹脂組成物に含まれる二次粒子30を構成しない鱗片状窒化ホウ素の粒子の含有量は、特に限定されないが、放熱用樹脂組成物を100質量%として、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。一方、当該含有量は50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。これにより、熱伝導性と電気絶縁性のバランスにより一層優れた放熱シート140および放熱部材を実現することができる。充填剤として鱗片状窒化ホウ素のみを含むような場合には、圧縮された際、窒化ホウ素の主面が放熱シートの主面に平行になるよう配向してしまい、放熱シートの厚さ方向の熱伝導率が低下するのに対し、本実施形態に係る放熱シート140および放熱部材では、二次粒子30が含まれることにより、二次粒子30を構成しない鱗片状窒化ホウ素の粒子が、二次粒子30同士の間に分散され、ランダムな方向を向くため、厚さ方向の熱伝導率が向上する。
【0059】
充填剤(B)は、熱伝導性と電気絶縁性とのバランスを図る観点から、本発明の効果を損なわない範囲において、たとえばシリカ、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素等をさらに含んでもよい。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0060】
(硬化剤(C))
放熱用樹脂組成物は、それぞれ熱硬化性樹脂(A)としてエポキシ樹脂(A1)を用いる場合、さらに硬化剤(C)を含むのが好ましい。
硬化剤(C)としては、硬化触媒(C−1)およびフェノール系硬化剤(C−2)から選択される1種以上を用いることができる。
硬化触媒(C−1)としては、たとえばナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)等の有機金属塩;トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の3級アミン類;2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジエチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類;トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン、1,2−ビス−(ジフェニルホスフィノ)エタン等の有機リン化合物;フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノール等のフェノール化合物;酢酸、安息香酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸;等、またはこの混合物が挙げられる。硬化触媒(C−1)として、これらの中の誘導体も含めて1種類を単独で用いることもできるし、これらの誘導体も含めて2種類以上を併用したりすることもできる。
放熱用樹脂組成物中に含まれる硬化触媒(C−1)の含有量は、特に限定されないが、放熱用樹脂組成物を100質量%として、0.001質量%以上1質量%以下が好ましい。
【0061】
また、フェノール系硬化剤(C−2)としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、トリスフェノールメタン型ノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、アミノトリアジンノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物;レゾール型フェノール樹脂等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
これらの中でも、ガラス転移温度の向上及び線膨張係数の低減の観点から、フェノール系硬化剤(C−2)がノボラック型フェノール樹脂またはレゾール型フェノール樹脂が好ましい。
フェノール系硬化剤の含有量は、特に限定されないが、放熱用樹脂組成物を100質量%として、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。一方、当該含有量は、30質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
【0062】
(カップリング剤(D))
放熱用樹脂組成物はカップリング剤をさらに含んでもよい。カップリング剤(D)は、熱硬化性樹脂(A)と充填剤(B)との界面の濡れ性を向上させることができる。
【0063】
カップリング剤(D)としては、通常用いられるものなら何でも使用できるが、具体的にはエポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤の中から選ばれる1種以上のカップリング剤を使用することが好ましい。
カップリング剤(D)の添加量は特に限定されないが、充填剤(B)を100質量%として0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。一方、当該添加量は、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。
【0064】
放熱用樹脂組成物はフェノキシ樹脂(E)をさらに含んでもよい。フェノキシ樹脂(E)を含むことにより放熱シート140や放熱部材の耐屈曲性を向上できる。
また、フェノキシ樹脂(E)を含むことにより、放熱シート140および放熱部材の弾性率を低下させることが可能となり、放熱シート140および放熱部材の応力緩和力を向上させることができる。
また、フェノキシ樹脂(E)を含むと、粘度上昇により、流動性が低減し、ボイド等が発生することを抑制できる。また、放熱シート140を金属部材と密着させて用いる場合や、放熱部材に金属部材を含む場合などに、金属と放熱用樹脂組成物の硬化体との密着性を向上できる。これらの相乗効果により、半導体装置の絶縁信頼性をより一層高めることができる。
【0065】
フェノキシ樹脂(E)としては、たとえば、ビスフェノール骨格を有するフェノキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するフェノキシ樹脂、アントラセン骨格を有するフェノキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。また、これらの骨格を複数種有した構造のフェノキシ樹脂を用いることもできる。
【0066】
フェノキシ樹脂(E)の含有量は、たとえば、放熱用樹脂組成物、放熱シート140、および放熱部材をそれぞれ100質量%として、3質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0067】
(その他の成分)
放熱用樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、ほかに酸化防止剤、レベリング剤等を含むことができる。
【0068】
本実施形態に係る放熱用樹脂組成物、放熱シート140、および放熱部材はたとえば以下のようにして作製することができる。
まず、上述の各成分を溶媒へ添加して、ワニス状の放熱用樹脂組成物を得る。本実施形態においては、たとえば溶媒中に熱硬化性樹脂(A)等を添加して樹脂ワニスを作製したのち、当該樹脂ワニスへ充填剤(B)を入れて三本ロール等を用いて混練することにより放熱用樹脂組成物を得ることができる。これにより、充填剤(B)をより均一に、熱硬化性樹脂(A)中へ分散させることができる。
上記溶媒としては特に限定されないが、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0069】
次いで、上記放熱用樹脂組成物をシート状に成形して、放熱シート140を形成する。本実施形態においては、たとえば基材上にワニス状の上記放熱用樹脂組成物を塗布した後、これを加熱して乾燥させる。この乾燥処理により、放熱用樹脂組成物からなる樹脂膜はBステージ化され、基材上に形成された放熱シート140を得ることができる。基材及び放熱シート140を合わせて、以後「基材付き樹脂膜」と呼ぶ。基材としては、たとえば剥離可能なキャリア材等を構成する金属箔やPET(Poly ethylene terephthalate)フィルムが挙げられる。また、放熱用樹脂組成物の乾燥処理は、たとえば80℃以上150℃以下、5分以上1時間以下の条件において行われる。樹脂層の膜厚は、たとえば50μm以上500μm以下である。
【0070】
なお、乾燥処理に次いで、上記基材付き樹脂膜を二本のロール間に通して圧縮することにより樹脂膜(放熱シート140)内の気泡を除去することが好ましい。本実施形態においては、このようにロールによる圧縮圧力をかけて気泡を除去する工程を含むことにより、放熱シート140および放熱部材の熱伝導率を向上させることができる。これは、気泡を除去することにより放熱シート140および放熱部材内における樹脂成分の密度が上昇すること等が要因として推定される。ここで、圧縮圧力はたとえば5MPa以上20MPa以下とすることができる。なお、圧縮する際、同時に加熱を行って硬化させ、Cステージ化することもできる。ここで、加熱温度はたとえば、150℃以上200℃以下とすることができる。
【0071】
放熱シート140の25℃における熱伝導率は、6W/(m・K)以上が好ましく、7W/(m・K)以上がより好ましい。また、放熱シート140の175℃における熱伝導率は、6W/(m・K)以上が好ましい。各熱伝導率が上記下限以上であることによって、放熱シート140を用いて動作の安定性に優れる半導体装置を得ることができる。
【0072】
また、Bステージ状態の放熱シート140を金属部材等に適用した上で、硬化させることで、上記の放熱用樹脂組成物の硬化体を含む放熱部材を得ることができる。具体的にはまず、金属部材上に上記基材付き樹脂膜を、放熱シート140の露出面が金属部材の方に向くようにして積層する。金属部材はたとえば金属製のヒートシンクやリードフレームである。そして、基材を剥離した後、たとえば150℃以上200℃以下で加熱して放熱シート140を硬化させる。
【0073】
なお、基材付き樹脂膜を作製することなく、ワニス状の放熱用樹脂組成物を直接金属部材などの上に塗布し、硬化させて放熱部材を得てもよい。また、ワニス上の放熱用樹脂組成物を所望の形状に成形して放熱部材を得ることもできる。成形には、たとえば射出成形、圧縮成形等の方法を用いることができる。放熱部材は放熱用樹脂組成物のみから成るものでも良いし、上記の様に金属部材などをさらに含むものでも良い。
【0074】
上記の放熱部材や放熱シートを含む半導体装置として、放熱性に優れ、動作の安定性、信頼性に優れる半導体装置を得ることができる。
【0075】
なお、放熱シート140はたとえば熱伝導シートとして用いることもできる。また、放熱部材はたとえば熱伝導部材として用いることもできる。
【0076】
以下に、本実施形態に係る半導体装置100について説明する。
半導体装置100は、上記の放熱用樹脂組成物の硬化体144を放熱部材として含む。
図3は、半導体装置100の構造の一例を模式的に示した断面図である。
【0077】
以下においては、説明を簡単にするため、半導体装置100の各構成要素の位置関係(上下関係等)が各図に示す関係であるものとして説明を行う場合がある。ただし、この説明における位置関係は、半導体装置100の使用時や製造時の位置関係とは無関係である。
【0078】
本実施形態に係る半導体装置100は、ヒートシンク130と、ヒートシンク130の第1面131側に設けられた半導体チップ110と、ヒートシンク130の第1面131とは反対側の第2面132に接合された硬化体144と、半導体チップ110およびヒートシンク130を封止している封止樹脂180と、を備えている。
以下、詳細に説明する。
【0079】
半導体装置100は、例えば、上記の構成の他に、導電層120、金属層150、リード160およびワイヤ(金属配線)170を有する。
【0080】
半導体チップ110の上面111には図示しない電極パターンが形成され、半導体チップ110の下面112には図示しない導電パターンが形成されている。半導体チップ110の下面112は、銀ペースト等の導電層120を介してヒートシンク130の第1面131に固着されている。半導体チップ110の上面111の電極パターンは、ワイヤ170を介してリード160の電極161に電気的に接続されている。
【0081】
ヒートシンク130は、金属板により構成されている。
【0082】
封止樹脂180は、半導体チップ110およびヒートシンク130の他に、ワイヤ170と、導電層120と、リード160の一部分ずつとを内部に封止している。各リード160の他の一部分ずつは、封止樹脂180の側面より、該封止樹脂180の外部に突出している。本実施形態の場合、例えば、封止樹脂180の下面182とヒートシンク130の第2面132とが互いに同一平面上に位置している。
【0083】
硬化体144の上面141は、ヒートシンク130の第2面132と、封止樹脂180の下面182と、に対して貼り付けられている。つまり、封止樹脂180は、ヒートシンク130の周囲において硬化体144のヒートシンク130側の面(上面141)に接している。
【0084】
硬化体144の下面142には、金属層150の上面151が固着されている。すなわち、金属層150の一方の面(上面151)は、硬化体144におけるヒートシンク130側とは反対側の面(下面142)に対して固着されている。
【0085】
平面視において、金属層150の上面151の外形線と、硬化体144におけるヒートシンク130側とは反対側の面(下面142)の外形線とが重なっていることが好ましい。
【0086】
また、金属層150は、その一方の面(上面151)に対する反対側の面(下面152)の全面が封止樹脂180から露出している。なお、本実施形態の場合、上記のように、硬化体144は、その上面141が、ヒートシンク130の第2面132および封止樹脂180の下面182に貼り付けられているため、硬化体144は、その上面141を除き、封止樹脂180の外部に露出している。そして、金属層150は、その全体が封止樹脂180の外部に露出している。
【0087】
なお、ヒートシンク130の第2面132および第1面131は、例えば、それぞれ平坦に形成されている。
【0088】
半導体装置100の実装床面積は、特に限定されないが、一例として、10×10mm以上100×100mm以下とすることができる。ここで、半導体装置100の実装床面積とは、金属層150の下面152の面積である。
【0089】
また、一のヒートシンク130に搭載された半導体チップ110の数は、特に限定されない。1つであっても良いし、複数であっても良い。例えば、3つ以上(6個等)とすることもできる。すなわち、一例として、一のヒートシンク130の第1面131側に3つ以上の半導体チップ110が設けられ、封止樹脂180はこれら3つ以上の半導体チップ110を一括して封止してもよい。
【0090】
半導体装置100は、例えば、パワー半導体装置である。この半導体装置100は、例えば、封止樹脂180内に2つの半導体チップ110が封止された2in1、封止樹脂180内に6つの半導体チップ110が封止された6in1または封止樹脂180内に7つの半導体チップ110が封止された7in1の構成とすることができる。
【0091】
次に、本実施形態に係る半導体装置100を製造する方法の一例を説明する。
【0092】
先ず、ヒートシンク130および半導体チップ110を準備し、銀ペースト等の導電層120を介して、半導体チップ110の下面112をヒートシンク130の第1面131に固着する。
【0093】
次に、リード160を含むリードフレーム(全体図示略)を準備し、半導体チップ110の上面の電極パターンとリード160の電極161とをワイヤ170を介して相互に電気的に接続する。
【0094】
次に、半導体チップ110と、導電層120と、ヒートシンク130と、ワイヤ170と、リード160の一部分ずつとを封止樹脂180により一括して封止する。
【0095】
次に、放熱シート140を準備し、この放熱シート140の上面141を、ヒートシンク130の第2面132と、封止樹脂180の下面182と、に対して貼り付ける。更に、金属層150の一方の面(上面151)を、放熱シート140におけるヒートシンク130側とは反対側の面(下面142)に対して固着する。次いで、放熱シート140を加熱硬化させ、硬化体144とする。なお、放熱シート140をヒートシンク130および封止樹脂180に対して貼り付ける前に、予め放熱シート140の下面142に金属層150を固着しておいてもよい。
次に、各リード160をリードフレームの枠体(図示略)から切断する。こうして、
図3に示すような構造の半導体装置100が得られる。
【0096】
以上のような実施形態によれば、半導体装置100は、ヒートシンク130と、ヒートシンク130の第1面131側に設けられた半導体チップ110と、ヒートシンク130の第1面131とは反対側の第2面132に貼り付けられた絶縁性の硬化体144と、半導体チップ110およびヒートシンク130を封止している封止樹脂180と、を備えている。
【0097】
次に、本実施形態の作用および効果について説明する。
本実施形態によれば、二次粒子30は密度の高いシェル部320を有するため、二次粒子30を含む造粒粉10を用いて作製した放熱シート140および放熱部材において、二次粒子30は球状を維持することができる。さらに、二次粒子30は密度の高いシェル部320を有するため、吸湿性が低い。よってこれらの複合的な効果により、耐湿性に優れる放熱シートおよび放熱部材を実現できる。また、耐久性に優れる半導体装置を得ることができる。
【0098】
また、本実施形態によれば、二次粒子30は球状であるためハンドリング性、および分散性に優れる。加えて、球状であるため、熱硬化性樹脂組成物に多く含有させても熱硬化性樹脂組成物の粘度が高くなりにくい。すなわち、熱硬化性樹脂組成物に二次粒子30を多く含有させることができる。さらに、二次粒子30は密度の高いシェル部320を有するため、圧縮されても球状を維持することができる。これらの複合的な効果により、二次粒子30を含む造粒粉10を用いた場合、熱伝導性および絶縁性に優れる熱硬化性樹脂組成物、放熱シート、および放熱部材を製造安定性よく製造することができる。
【0099】
また、本実施形態によれば、二次粒子30は二次粒子30全体として一次粒子20の向きが等方的である。加えて、二次粒子30は密度の高いシェル部320を有するため、二次粒子30を含む造粒粉10を用いて作製した放熱シート140および放熱部材において、二次粒子30は球状を維持することができる。よって、これらの複合的な効果により、等方的な熱伝導率および電気抵抗率を有する放熱シート140および放熱部材を得ることができる。
【0100】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 一次粒子を凝集させることにより形成された球状の二次粒子を含み、
前記一次粒子は鱗片状の窒化ホウ素であり、
前記二次粒子は、前記二次粒子の中心を含むコア部と、前記コア部を覆うシェル部とを有し、
前記コア部における前記一次粒子の密度は、前記シェル部における前記一次粒子の密度よりも低い、造粒粉。
2. 1.に記載の造粒粉において、
前記シェル部における前記一次粒子が、前記二次粒子の外周面に沿うように全体を覆い、前記二次粒子の半径方向に積層するように配向している、造粒粉。
3. 2.に記載の造粒粉において、
前記一次粒子は、前記コア部において、不規則な向きで凝集している、造粒粉。
4. 1.から3.のいずれか一つに記載の造粒粉において、
前記二次粒子の平均球形度が0.70以上である、造粒粉。
5. 1.から4.のいずれか一つに記載の造粒粉において、
100gあたりの吸油量が70mL以下である、造粒粉。
6. 1.から5.のいずれか一つに記載の造粒粉において、
前記二次粒子は、10MPaで圧縮した場合の、圧縮前のメディアン径をD50(0)とし、圧縮後のメディアン径をD50(1)としたとき、D50(1)/D50(0)が0.4以上である、造粒粉。
7. 1.から6.のいずれか一つに記載の造粒粉において、
前記二次粒子の粒径の算術標準偏差は5μm以上70μm以下である造粒粉。
8. 1.から7.のいずれか一つに記載の造粒粉において、
前記二次粒子は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、および不飽和ポリエステル樹脂からなる群から選ばれる1種以上のバインダーをさらに含む造粒粉。
9. 1.から8.のいずれか一つに記載の造粒粉と、
熱硬化性樹脂とを含む放熱用樹脂組成物。
10. 9.に記載の放熱用樹脂組成物からなる放熱シート。
11. 9.に記載の放熱用樹脂組成物の硬化体を含む半導体装置。
12. 9.に記載の放熱用樹脂組成物の硬化体を含む放熱部材。
13. 12.に記載の放熱部材を含む半導体装置。
【実施例】
【0101】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、それぞれの厚みは平均膜厚で表わされている。
【0102】
(実施例1)
<二次粒子の形成>
以下のように二次粒子を含む造粒粉を作製した。
まず、一次粒子として六方晶窒化ホウ素1(昭和電工株式会社製、UHP−1K)87.8質量%と、バインダーとしてレゾール型フェノール樹脂1(住友ベークライト株式会社製、PR−940C)12.2質量%とを、ミキサーを用いて5分間混合した。そうして得られた混合物A1を、機械的粒子複合化装置(ホソカワミクロン株式会社製、ノビルタ)のケーシング(処理容器)にセットした。なお、上記機械的粒子複合化装置(粉体処理装置)は、被処理粉体を受け入れるケーシングと、ケーシングに対して相対回転され、その外周にケーシングの内面との間で被処理粉体に圧縮剪断力を加える羽根部を設けた回転翼とを備えるものである。機械的粒子複合化装置のジャケットをチラー水にて15℃に保ちながら、攪拌翼を回転速度3000rpmで40分間、駆動させた。そうして、ケーシングに、混合物A1の凝集物を得た。
【0103】
得られた凝集物をケーシングから取り出し、乾燥オーブンを用いて大気下にて120℃で2時間、加熱処理を行い、二次粒子1からなる造粒粉1を得た。
【0104】
<放熱シートの作製>
得られた造粒粉を用いて放熱シートを作製した。まず、予め熱硬化性樹脂(A)と硬化触媒(C−1)とフェノール系硬化剤(C−2)と希釈溶剤とを混合した溶液に造粒粉1を含む充填剤(B)を加え、ディスパーザーを用いて10分間混合し、混合物B1を得た。
【0105】
放熱シートの各成分と配合量の詳細は下記の通りである。
熱硬化性樹脂(A):ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、YX4000K) 15.2質量%
充填剤(B):造粒粉1 47.2質量%、および六方晶窒化ホウ素2(昭和電工株式会社製、UHP−2) 29.6質量%
硬化触媒(C−1):2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、2PHZ−PW) 0.1質量%
フェノール系硬化剤(C−2):トリスフェノールメタン型ノボラック樹脂(明和化成株式会社製、MEH−7500) 7.9質量%
【0106】
次に、得られた混合物B1を銅箔上にコンマーターを用いて塗布し、乾燥機にて120℃で15分間の加熱処理を行い、Bステージ化した。その後、プレス機を用いて、ツール圧10MPa、ツール温度180℃の条件下で、当該基板を挟み込むようにして30分間にわたってプレスすることにより、厚さ200μmのCステージ状態の放熱シート硬化体1(放熱部材)を得た。
【0107】
<二次粒子および造粒粉の評価>
得られた二次粒子1および造粒粉1について、以下の各評価を行った。
【0108】
(断面観察)
二次粒子1の断面を観察した。二次粒子1の断面観察は以下のようにして行った。まず、得られた二次粒子1を基板上に少量付着させ、クロスセクションポリッシャ(SM−09010、日本電子製)を用いて、基板上の二次粒子1を切断し、断面を露出した。そして、露出した二次粒子の断面を走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM−7401F)を用いて観察した。
【0109】
観察の結果、二次粒子1はコア部およびシェル部を有し、コア部における一次粒子の密度が、シェル部における一次粒子の密度よりも低いことが分かった。また、シェル部における一次粒子が二次粒子の外周面に沿うように全体を覆い、二次粒子の半径方向に積層するように配向していた。コア部における一次粒子は不規則な向きを向いて凝集しており、配向していなかった。
【0110】
(球形度)
二次粒子1の球形度を粒子画像分析装置(マルバーン社製、モフォロギ G3)を用いて測定した。なお、電子顕微鏡による観察では、造粒粉1中には未凝集の一次粒子等は見られず、断面を確認した50個の粒子の全てがコア部およびシェル部を有していたため、造粒粉1について分離処理などを経ずに測定を行い、その結果を二次粒子1の球形度とした。当該装置では、粒子の投影像の周囲長をL、粒子の投影像の面積をSとしたとき、4πS/L
2で表される値を球形度として求めている。10000個について測定し、平均値を平均球形度として求めた。二次粒子1の球形度は0.76であった。
【0111】
(比表面積)
造粒粉1の比表面積を測定した。測定は、ガス/蒸気吸着量測定装置(日本ベル株式会社製、BELSORP−max)にて窒素吸着によるBET法によって行った。
二次粒子1の比表面積は2.8m
2/gであった。
【0112】
(吸油量)
造粒粉1の吸油量を測定した。測定は、吸油量測定装置(あさひ総研社製、S−500)を用いて行った。造粒粉1の吸油量は100gあたり23mLであった。
【0113】
(メディアン径,粒径の算術標準偏差)
二次粒子1のメディアン径および粒径の算術標準偏差を測定した。なお、上述した球形度の測定と同様、造粒粉1を測定した結果を二次粒子1のメディアン径、粒径とした。メディアン径および粒径の算術標準偏差は、レーザー回折式粒度分布計(堀場製作所製、LA−950V2)を用いて測定した。二次粒子1のメディアン径D
50(0)は60μmであり、粒径の算術標準偏差は60μmであった。
また、二次粒子1について圧縮を行った後に、同様にメディアン径を測定した。圧縮処理は粉体層せん断力測定装置(株式会社ナノシーズ製、NS−S500)を用いて行い、7gの造粒粉1に対し、10MPaの圧力を120秒間加えた。二次粒子1の圧縮後のメディアン径D
50(1)は60μmであった。D
50(1)/D
50(0)で表される圧縮前後のメディアン径の比は1.0と算出された。
【0114】
(かさ密度)
造粒粉1のかさ密度を測定した。具体的には、パウダテスタ(ホソカワミクロン株式会社製、PT−X)を用い、25mLのサンプルセルを使用して造粒粉1に対して、タッピングストローク18mm、タッピング回数180回の条件でかさ密度(固めかさ密度)を測定した。造粒粉1のかさ密度は1.02g/cm
3であった。
【0115】
(真比重)
造粒粉1の真比重を測定した。測定は、自動湿式真密度測定器(株式会社セイシン企業製、MAT−7000)を用いて液相置換法で行った。媒液としてn−ブタノール用いた。造粒粉1の真比重は2.17g/cm
3であった。
【0116】
(ハンドリング性)
造粒粉1のハンドリング性を評価した。
まず、造粒粉200gを、400Lの容量のミキサーに投入し、1000rpmで5分間ミキサーを駆動させた。ミキサーを停止させた後、ミキサーの内壁への造粒粉の吸着状態を確認した。内壁の全面に造粒粉の付着が見られる場合を×、内壁の一部の領域に造粒粉の付着が見られる場合を○、内壁に造粒粉の付着が見られない場合を◎として評価した。造粒粉1においては、付着が見られず、◎と評価した。
【0117】
(摩擦角)
造粒粉1の摩擦角を測定した。測定は粉体層せん断力測定想定(株式会社ナノシーズ製、NS−S500)を用いて行った。具体的には、摩擦角は以下のように測定した。まず、試料セルに造粒粉1を入れた。この試料セルは、側面に間隙を有して上下に2分割されており、直径15mmの円筒形をしている。次に造粒粉1を入れた試料セルの上に上杵を静かに乗せ、上杵を降下させて造粒粉1に垂直下向きの力を印加した。この際に上杵にかかる力を荷重センサで測定し、力の大きさが目標値まで到達したところで上杵の降下を停止した。荷重センサの値をモニタリングし、十分に力が緩和して変動が小さくなった後、下部のセルを10μm/秒で水平方向に動かし、試料セルの間隙にせん断をかけた。この際に、下部のセルに印加されるせん断方向の力の大きさと、下部のセルに上杵により印加される水力方向の力の大きさを荷重センサでモニタリングし、せん断方向の力が最大となった時点の当該力の大きさと、その時点の垂直方向の力の大きさを記録した。上杵から試料に印加していた力を一旦開放し、下部のセルを測定開始前の位置に戻した。再度上杵を下降させて被覆粒子に目標値の大きさの力をかけ、前記と同様の方法で造粒粉1にせん断をかけた際の各力の大きさを記録した。この作業を、目標値を順に50N、100N、150Nとして、計3回の測定結果を記録した。記録した力の大きさを試料セルの断面積で除して応力を算出した。垂直方向の応力を横軸、せん断方向の応力を縦軸としてグラフにプロットし、最小二乗法で得られた近似線と横軸とのなす角を摩擦角として求めた。
造粒粉1の摩擦角は7.6°であった。
【0118】
<放熱シートの評価>
得られた放熱シート硬化体1について、以下の各評価を行った。
【0119】
(断面観察)
放熱シート硬化体1の断面を観察した。放熱シート硬化体1の断面観察は以下のようにして行った。
まず、クロスセクションポリッシャ(SM−09010、日本電子製)を用いて、放熱シート硬化体1を切断し、断面を露出した。そして、露出した放熱シート硬化体1の断面を、走査型電子顕微鏡(JSM−7401F、日本電子製)を用いて観察した。
図4は、放熱シート硬化体1の断面を、走査型電子顕微鏡で観察した結果を示す図である。放熱シート硬化体1では、二次粒子の形態が保たれたまま、シート内に分散していることが分かった。
【0120】
(熱伝導率)
放熱シート硬化体1の密度を水中置換法により測定し、比熱を示差走査熱量測定(DSC:Differential Scanning Calorimetry)により測定し、さらに、レーザーフラッシュ法により熱拡散率を測定した。そして、厚み方向における熱伝導率を以下の式(1)から算出した。
λ=ρ×c×α×1000 (1)
ここで、λは熱伝導率[W/(m・K)]、ρは密度[kg/m
3]、cは比熱[kJ/(kg・K)]、αは熱拡散率[m
2/s]である。なお、25℃および175℃における熱伝導率をそれぞれ測定した。
【0121】
25℃における熱伝導率について、求めた熱伝導率が7W/(m・K)以上の場合を◎、6W/(m・K)以上7W/(m・K)未満の場合を○、6W/(m・K)未満の場合を×として評価した。
放熱シート硬化体1の熱伝導率は25℃において7W/(m・K)以上であったため、◎と評価した。
175℃における熱伝導率について、求めた熱伝導率が6W/(m・K)以上の場合を○、6W/(m・K)未満の場合を×として評価した。
放熱シート硬化体1の熱伝導率は175℃において6W/(m・K)以上であったため、○と評価した。
【0122】
(耐電圧)
耐電圧は、耐電圧試験器によって測定した。周波数は60Hzとした。求めた耐電圧が1000V以上の場合を○、1000V未満の場合を×として評価した。
さらに、高湿度下での耐電圧性能を評価した。高湿度下での耐電圧性能は、85℃、85%RHの環境において、60Hz、1000Vの電圧を印加し続け、500時間経過する間に絶縁破壊されなかった場合を○、絶縁破壊された場合を×として評価した。
放熱シート硬化体1の耐電圧および高湿度下での耐電圧性能はいずれも○と評価された。
【0123】
(実施例2)
粉体処理装置の攪拌翼の駆動時間を20分間とした以外は実施例1と同様にして、二次粒子2からなる造粒粉2を得た。また、造粒粉1の代わりに造粒粉2を用いた以外は実施例1と同様にして放熱シート硬化体2を得た。得られた造粒粉2、二次粒子2、および放熱シート硬化体2について、実施例1と同様に評価した。
二次粒子2を走査型電子顕微鏡で観察した結果から、二次粒子2はコア部およびシェル部を有し、コア部における一次粒子の密度が、シェル部における一次粒子の密度よりも低いことが分かった。また、シェル部における一次粒子が二次粒子の外周面に沿うように全体を覆い、二次粒子の半径方向に積層するように配向していた。コア部における一次粒子は不規則な向きを向いて凝集しており、配向していなかった。また、放熱シート硬化体2の断面を走査型電子顕微鏡で観察した結果から、二次粒子の形態が保たれたまま、シート内に含まれていることが分かった。その他の評価結果は表2の通りであった。
【0124】
(実施例3)
レゾール型フェノール樹脂1の代わりにレゾール型フェノール樹脂2(住友ベークライト株式会社製、PR−53074)を用いた以外は実施例1と同様にして、二次粒子3からなる造粒粉3を得た。また、造粒粉1の代わりに造粒粉3を用いた以外は実施例1と同様にして放熱シート硬化体3を得た。得られた造粒粉3、二次粒子3、および放熱シート硬化体3について、実施例1と同様に評価した。
二次粒子3を走査型電子顕微鏡で観察した結果から、二次粒子3はコア部およびシェル部を有し、コア部における一次粒子の密度が、シェル部における一次粒子の密度よりも低いことが分かった。また、シェル部における一次粒子が二次粒子の外周面に沿うように全体を覆い、二次粒子の半径方向に積層するように配向していた。コア部における一次粒子は不規則な向きを向いて凝集しており、配向していなかった。また、放熱シート硬化体3の断面を走査型電子顕微鏡で観察した結果から、二次粒子の形態が保たれたまま、シート内に含まれていることが分かった。その他の評価結果は表2の通りであった。
【0125】
(実施例4)
六方晶窒化ホウ素1の代わりに六方晶窒化ホウ素2(昭和電工株式会社製、UHP−2)を用いた以外は実施例1と同様にして、二次粒子4からなる造粒粉4を得た。また、造粒粉1の代わりに造粒粉4を用いた以外は実施例1と同様にして放熱シート硬化体4を得た。得られた造粒粉4、二次粒子4、および放熱シート硬化体4について、実施例1と同様に評価した。
二次粒子4を走査型電子顕微鏡で観察した結果から、二次粒子4はコア部およびシェル部を有し、コア部における一次粒子の密度が、シェル部における一次粒子の密度よりも低いことが分かった。また、シェル部における一次粒子が二次粒子の外周面に沿うように全体を覆い、二次粒子の半径方向に積層するように配向していた。コア部における一次粒子は不規則な向きを向いて凝集しており、配向していなかった。また、放熱シート硬化体4の断面を走査型電子顕微鏡で観察した結果から、二次粒子の形態が保たれたまま、シート内に含まれていることが分かった。その他の評価結果は表2の通りであった。
【0126】
(比較例1)
造粒粉1の代わりに六方晶窒化ホウ素凝集粒子(HP−40、水島合金鉄製)を造粒粉5として用い、各成文と配合量を以下の様に変更した以外は、実施例1と同様にして放熱シート硬化体5を得た。
造粒粉5、二次粒子5および放熱シート硬化体5について、実施例1と同様に評価した。なお、造粒粉5に含まれる凝集粒子を二次粒子5として評価した。
【0127】
放熱シートの各成分と配合量の詳細は下記の通りである。
熱硬化性樹脂(A):ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、YX4000K) 16.8質量%
充填剤(B):造粒粉5 74.4質量%
硬化触媒(C−1):2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、2PHZ−PW) 0.1質量%
フェノール系硬化剤(C−2):トリスフェノールメタン型ノボラック樹脂(明和化成株式会社製、MEH−7500) 8.7質量%
【0128】
図5(a)は、二次粒子3の断面を、走査型電子顕微鏡で観察した結果を示す図である。二次粒子5の内部において、中央部とその外周部とで一次粒子の密度に違いが無く、一次粒子は、ランダムな方向を向いて凝集していることが分かった。このように、二次粒子5は一次粒子の密度が互いに違うコア部とシェル部を有していなかった。
【0129】
また、
図5(b)は、放熱シート硬化体5の断面を、走査型電子顕微鏡で観察した結果を示す図である。放熱シート硬化体5では粒子の形態がほとんど維持されていないことが分かった。その他の評価結果は表2の通りであった。
【0130】
(比較例2)
造粒粉5の代わりに六方晶窒化ホウ素凝集粒子(FP70、電気化学工業製)を造粒粉6として用いた以外は、比較例1と同様にして放熱シート硬化体6を得た。
造粒粉6、二次粒子6および放熱シート硬化体6について、実施例1と同様に評価した。なお、造粒粉6に含まれる凝集粒子を二次粒子6として評価した。
【0131】
二次粒子6の断面を、走査型電子顕微鏡で観察したところ、二次粒子6は一次粒子の密度が互いに違うコア部とシェル部を有していなかった。また、放熱シート硬化体6の断面を、走査型電子顕微鏡で観察したところ、放熱シート硬化体6では粒子の形態がほとんど維持されていないことが分かった。その他の評価結果は表2の通りであった。
【0132】
以上の条件および評価結果を表1および表2に示す。
【0133】
【表1】
【0134】
【表2】
【0135】
実施例1から実施例4の放熱シート硬化体は高湿度下における耐電圧性能が高かった。よって、耐湿性に優れる放熱シートが得られることが確認できた。一方、比較例1および比較例2の放熱シート硬化体は高湿度下における耐電圧性能に劣っていた。各比較例では高湿度下で二次粒子が水分を吸収するなどし、絶縁性を低下させたと考えられる。
【0136】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。