(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記負荷判定部は、前記履歴のうち、前記予定積算値に至るまでの所定範囲の負荷に基づいて、前記工具にかかる負荷が安定しているかを判定する請求項1または請求項2記載の工具管理装置。
前記制御部は、前記工具の継続使用が可能である旨を報知した場合、継続使用が指示されたときに前記工具の使用を継続させる請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の工具管理装置。
前記制御部は、前記工具の使用を継続させる場合、予め設定された追加範囲において前記工具の使用を継続させる請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の工具管理装置。
前記制御部は、前記追加範囲内において、前記負荷検知部により検知した前記負荷が所定の閾値を超えた場合、前記工具の使用を終了させる請求項6〜請求項9のいずれか1項に記載の工具管理装置。
前記制御部は、前記工具の継続使用が可能である旨を、前記工具を使用中の工作機械に付属する表示部、及び前記工作機械から離れた端末の表示部のうち少なくとも一方に表示させる請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の工具管理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、工具の使用回数又は使用時間の積算値が予め設定された値に到達した場合であっても、工具のチップを継続して使用することができる場合もある。この場合、一律に積算値が予め設定された値に到達したときに工具の寿命と判定することは、チップを効率的に使用しているとは言えず、コストなどの負担も増加してしまうこととなる。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、工具を効率的に使用することが可能な工具管理装置及び工具管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、ワークを加工する工具の使用積算値を計測する計測部と、工具によるワークの加工中に該工具にかかる負荷を検知する負荷検知部と、計測部で計測された使用積算値が予め設定された予定積算値に到達した場合、予定積算値に至るまでの負荷検知部で検知された負荷の履歴から工具にかかる負荷が安定しているかを判定する負荷判定部と、負荷判定部により安定と判定された場合、工具の使用を継続させ、又は工具の使用を停止して工具の継続使用が可能である旨を報知し、負荷判定部により非安定と判定された場合、工具の使用を終了させる制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、計測部は、工具の使用回数又は使用時間を使用積算値として計測する構成でもよい。また、負荷判定部は、履歴のうち、予定積算値に至るまでの所定範囲の負荷に基づいて、工具にかかる負荷が安定しているかを判定する構成でもよい。
【0008】
また、負荷判定部は、負荷が所定の基準値内にある場合に安定していると判定する構成でもよい。また、制御部は、工具の継続使用が可能である旨を報知した場合、継続使用が指示されたときに工具の使用を継続させる構成でもよい。
【0009】
また、制御部は、工具の使用を継続させる場合予め設定された追加範囲において工具の使用を継続させる構成でもよい。また、制御部は、工具の追加使用回数又は追加使用時間を追加範囲として工具の使用を継続させる構成でもよい。
【0010】
また、制御部は、工具に関して予め取得した情報に基づいて追加範囲を設定する構成でもよい。また、制御部は、予定積算値に至るまでの負荷の上昇割合に基づいて追加範囲を設定する構成でもよい。
【0011】
また、制御部は、追加範囲内において、負荷検知部により検知した負荷が所定の閾値を超えた場合、工具の使用を終了させる構成でもよい。また、制御部は、工具の継続使用が可能である旨を、工具を使用中の工作機械に付属する表示部、及び工作機械から離れた端末の表示部のうち少なくとも一方に表示させる構成でもよい。
【0012】
また、本発明では、ワークを加工する工具の使用積算値を計測することと、工具によるワークの加工中に該工具にかかる負荷を検知することと、使用積算値が予め設定された予定積算値に到達した場合、予定積算値に至るまでの負荷の履歴から工具にかかる負荷が安定しているかを判定することと、安定と判定された場合、工具の使用を継続させ、又は工具の使用を停止して工具の継続使用が可能である旨を報知し、非安定と判定された場合、工具の使用を終了させることと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、工具の使用積算値が予定積算値に達した場合でも工具にかかる負荷が安定している場合は、工具の継続使用が可能となり、工具(チップ)の効率的な使用を実現することができる。また、工具の使用を停止して工具の継続使用が可能である旨を報知する場合は、オペレータに工具の状態を確認させた上で工具の継続使用を実行させることができる。
【0014】
また、計測部は、工具の使用回数又は使用時間を使用積算値として計測するので、複数の工具の使用の計測基準に基づいて工具の寿命を管理することができ、工具の寿命を管理可能な工作機械のバリエーションが増加する。また、負荷判定部は、履歴のうち、予定積算値に至るまでの所定範囲の負荷に基づいて、工具にかかる負荷が安定しているかを判定するので、負荷が安定しているか否かの判定対象の範囲が限定され、この判定を行うための処理負担が軽減される。また、負荷判定部は、負荷が所定の基準値内にある場合に安定していると判定するので、簡易かつ精度の高い判定を実現することができる。
【0015】
また、制御部は、工具の継続使用が可能である旨を報知した場合、継続使用が指示されたときに工具の使用を継続させるので、確実にオペレータに工具の状態を確認させることができる。また、制御部は、工具の使用を継続させる場合、予め設定された追加範囲において工具の使用を継続させるので、工具を安定して使用可能であると想定される範囲内において工具の使用を継続させることができる。また、制御部は、工具の追加使用回数又は追加使用時間を追加範囲として工具の使用を継続させるので、複数の工具の使用の計測基準に基づいて工具の寿命(延命)を管理することができ、工具の寿命を管理可能な工作機械のバリエーションが増加する。
【0016】
また、制御部は、工具に関して予め取得した情報に基づいて追加範囲を設定するので、工具を安定して使用可能であると想定される範囲を追加範囲として確実に設定することができる。また、制御部は、予定積算値に至るまでの負荷の上昇割合に基づいて追加範囲を設定するので、追加範囲における工具の安定使用の精度を向上させることができる。
【0017】
また、制御部は、追加範囲内において、負荷検知部により検知した負荷が所定の閾値を超えた場合、工具の使用を終了させるので、追加範囲において異常が発生した場合に早期に工具の使用を終了させることができる。また、制御部は、工具の継続使用が可能である旨を、工具を使用中の工作機械に付属する表示部、及び工作機械から離れた端末の表示部のうち少なくとも一方に表示させるので、工具の使用が終了されたこと及び工具の継続使用が可能であることを迅速かつ確実にオペレータなどに知らせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。また、図面においては実施形態を説明するため、一部分を大きく又は強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現している場合がある。
【0020】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の工具管理装置を含む工作機械1の構成を示すブロック図である。
図1に示す第1実施形態の工作機械(旋盤)1は、加工データに基づいてワークを加工する機械である。ここで、「加工データ」としては、ワークの加工を行うための加工プログラム及び各種パラメータを含む。また、「ワーク」とは、加工される対象物、すなわち被加工物のことをいう。この工作機械1は、
図1に示すように、旋盤本体10、電流値センサ20、表示部30、演算処理部40、及び記憶部50を有している。なお、この工作機械1は、ワークを加工するための工具の使用を管理する工具管理装置を含んでいる。この工具管理装置は、上記した工作機械1の構成のうち、少なくとも電流値センサ20、表示部30、及び演算処理部40を含む。
【0021】
旋盤本体10は、ワークを回転させ、バイトと呼ばれる工具(ツールともいう。)でワークを削る機械である。ここで、旋盤本体10の構造について簡単に説明する。
図2は、旋盤本体10の構造を示す断面図である。
図2に示すように、旋盤本体10は、主軸モータ(図示せず)の回転力を伝達する主軸11と、ワーク100を保持(把持)するチャック12と、ワーク100を削る工具(ツール)13とを有している。
【0022】
主軸11は、主軸モータ(図示せず)の回転に伴って軸心Aを中心に回転する。チャック12は、軸心Aと同軸上に主軸11に固定されている。このチャック12は、図示しないチャック移動機構の動作に応じて、三方爪12aが径方向(
図2に示す方向S)に移動することによりワーク100を保持する。すなわち、円筒形状のワーク100がチャック12の三方爪12aの間に挿入され、三方爪12aが径方向内側に移動することによりチャック12が閉まる。これにより、円筒形状のワーク100がチャック12に保持(把握)される。この把握力は主軸11が回転した際にワーク100をしっかり保持できる程度の大きな力とされる。この状態で主軸11が回転すると、チャック12も回転し、チャック12に保持されたワーク100も回転する。なお、チャック12における三方爪12aが径方向Sに移動することをストロークという。
【0023】
チャックセンサ12Sは、チャック12がワーク100を保持するときのストロークを検出する変位センサである。このチャックセンサ12Sは、例えば磁気リニアセンサなどの位置センサで構成されている。チャックセンサ12Sは、チャック12のストロークを検出する度に検出信号を演算処理部40に出力する。チャックセンサ12Sが検出するストロークによって加工されたワーク100の個数が判断される。
【0024】
工具13は、回転しているワーク100の周面を削るためのチップ13a(交換用の刃先)が取り付けられている。工具13は、ツール移動機構のX軸モータ(図示せず)の回転に応じて、
図2に示すようなワーク100に向かう方向(X軸方向)に移動する。また、工具13は、ツール移動機構のZ軸モータ(図示せず)の回転に応じて、軸心Aと平行な方(Z軸方向)に移動する。なお、工具13の移動方向のうちのX軸方向を切り込み方向という。また、工具13の切り込み方向の移動量を切り込み量という。また、工具13の移動方向のうちのZ軸方向を送り方向という。また、工具13の送り方向の移動量を送り量という。また、X軸及びZ軸を加工軸という。この工具13が切り込み方向(X軸方向)に移動することにより、チップ13aがワーク100の周面と接触する。これにより、円筒形状のワーク100の周面が削られる。また、この工具13が送り方向(Z軸方向)に移動することにより、ワーク100の周面が送り方向に向かって順に削られていく。
【0025】
なお、工具13として複数種類の工具が用意されている。例えば、
図2に示すようなチップ13aが右片刃バイトの工具、チップが突切りバイトの工具、中ぐりバイトの工具などが用意されている。そして、ツール移動機構が、加工データに基づいて自動的に所定の種類のツールに切り替えることも可能である。
【0026】
上記した「加工データ」は、「ツールの軌跡」、「ツールの送り速度」、「送りの加減速」、及び「ツールの種類」のデータを含んでいる。これらのデータは、工具13の移動及び種類を制御するためのデータである。ここで、「ツールの軌跡」は、工具13の刃先(すなわちチップ13aにおけるワーク100と接触する先端部)がどのような軌跡を描いて移動するかを示すデータである。つまり、「ツールの軌跡」は、工具13の刃先の切り込み量及び送り量がどのように変化するかを示すデータである。このデータは、例えば座標データ(x,y,z)で表される。
【0027】
「ツールの送り速度」は、工具13の送り方向(Z軸方向)の移動速度に関するデータである。「送りの加減速」は、工具13の送り方向の加速度・減速度に関するデータである。「ツールの種類」は、工具13のチップ13aがどのタイプであるか(右片刃バイト、突切りバイト、中ぐりバイトなど)を示すデータである。
【0028】
これら工具13の移動及び種類を制御するためのデータに基づいて工具13(すなわちツール移動機構)が旋盤制御部41により制御される。なお、「ツールの軌跡」、「ツールの送り速度」、「送りの加減速」、及び「ツールの種類」のデータは、加工データの加工プログラムとして設定されてもよく、また、これらのデータは、加工プログラムによって参照されるパラメータとして設定されてもよい。
【0029】
また、「加工データ」は、工具13の移動及び種類を制御するためのデータのほかに、主軸モータの回転速度(回転数)に関するデータ、チャック12の開閉動作を指示するデータなども含んでいる。これらのデータも、加工プログラムとして設定されてもよく、また、これらのデータは、加工プログラムによって参照されるパラメータとして設定されてもよい。
【0030】
図1の説明に戻り、電流値センサ20は、工具13をX軸方向及びZ軸方向に移動させる駆動系のモータ(X軸方向へのトルクを付与するX軸モータ、Z軸方向へのトルクを付与するZ軸モータ)の電流値を監視する。そして、電流値センサ20は、加工軸(X軸、Z軸)毎の電流値を示す検知信号を演算処理部40に出力する。表示部30は、例えば液晶画面(表示画面)に画像を表示する表示装置で構成される。この表示部30は工作機械1に付属されている。なお、この表示部30の表示画面上に操作部としてのタッチパネルが配置されてもよい。
【0031】
演算処理部40は、工具管理装置を含む工作機械1の制御全般を司る処理部である。この演算処理部40は、
図1に示すように、旋盤制御部41、計測部42、負荷検知部43、負荷判定部44、及び制御部45を有している。なお、演算処理部40の構成(演算処理部40が備える各部の構成)は、CPU(Central Processing Unit )やマイクロコンピュータなどの演算装置が記憶部50に記憶されているプログラムに従って実行する制御や処理に相当する。
【0032】
旋盤制御部41は、ワーク100を所望の形状に加工するための加工データに基づいて旋盤本体10を制御する処理部である。具体的には、旋盤制御部41は、加工データに基づいて、旋盤本体10の主軸モータを所定の回転速度で回転させる。また、旋盤制御部41は、加工データに基づいてチャック12が開閉するようにチャック移動機構を制御する。また、旋盤制御部41は、加工データのツール軌跡に基づいて、工具13が所定の軌跡を描いて移動するようにツール移動機構を制御する。また、旋盤制御部41は、加工データの送り速度に基づいて、工具13が所定の送り速度で送り方向に移動するようにツール移動機構を制御する。また、旋盤制御部41は、加工データの送り加減速に基づいて、工具13が所定の加速度で送り方向に移動し、所定の減速度で送り方向に移動するようにツール移動機構を制御する。また、旋盤制御部41は、加工データのツールの種類に基づいて、工具13の種類を自動的に切り替える。
【0033】
計測部42は、チャックセンサ12Sからの検出信号に受け取るごとにカウンタを1ずつ減算して、工具13(チップ13a)を使用して加工されたワーク100の個数(工具13の使用積算値という。)を計測(計数、カウント)する。負荷検知部43は、電流値センサ20からの検知信号に基づいて、ワークの加工中の工具13にかかる負荷を検知する。すなわち、負荷検知部43は、電流値センサ20からの検知信号が示す駆動系のモータ(X軸モータ、Z軸モータ)の電流値のレベルを認識し、認識した電流値のレベルに応じた負荷(すなわち電流値に応じたトルク)のレベルを検知する。負荷判定部44は、計測部42で計測された個数が予め設定された個数に到達した場合、負荷検知部43で検知された負荷の履歴(つまり、予め設定された個数に達する前の所定個数の負荷の値)から工具13にかかる負荷が安定しているか否かを判定する。制御部45は、負荷判定部44により安定と判定された場合、工具13の使用を継続させ、また、負荷判定部44により非安定と判定された場合、工具13の使用を終了させる。
【0034】
記憶部50は、演算処理部40における各部の制御を実行させるためのプログラムを記憶する。また、記憶部50は、演算処理部40における各部の制御を実行させるための各種制御データも記憶する。
【0035】
次に、上記の工具管理装置を含む工作機械1の動作について説明する。
【0036】
図3は、第1実施形態の工具管理方法の一例を示すフローチャートである。また、
図4は、工作機械1で加工されたワークの個数と加工軸(X軸、Z軸)の電流値の波形とを示す図である。
図3に示す処理において、オペレータの操作に応じて工作機械1の動作が開始されると、旋盤制御部41は、加工データに基づいて旋盤本体10を制御することにより、工具13を使用してワーク100を所望の形状に加工する(ステップS1)。
【0037】
次に、計測部42は、工具13の使用積算値(工具13で加工されたワーク100の積算個数)を計測する(ステップS2)。具体的には、
図4に示すように、計測部42は、オペレータによって工具13のチップ13aが交換されたタイミングで、予め設定された個数(例えば
図4に示す例では300個)の値をカウンタに設定する。なお、予め設定された個数は、チップメーカで推奨される個数、オペレータの経験などに基づく個数などとされる。計測部42は、チャックセンサ12Sからの検出信号に受け取るごとにカウンタに設定された個数の値を1ずつ減算して、工具13を使用して加工されたワーク100の個数を計数する。
図4に示す例では、計測部42は、工具13で加工されたワーク100の積算個数を、予め設定された個数(300個)からの残り個数として計数する。
【0038】
また、負荷検知部43は、電流値センサ20からの検知信号に基づいて、加工中の工具13にかかる負荷を検知する(ステップS3)。具体的には、電流値センサ20は、X軸モータの電流値を示す検知信号と、Z軸モータの電流値を示す検知信号とを演算処理部40に出力する。負荷検知部43は、電流値センサ20からの検知信号に基づいて、X軸モータ及びZ軸モータの電流値のレベルに応じた負荷のレベルを検知する。
【0039】
図4においては、X軸及びZ軸の電流値のレベルは振動しており、それらの電流値の最大値(MAX)と最小値(MIN)とをそれぞれプロットした波形を示している。
図4に示すように、X軸及びZ軸の電流値のレベルは同じ傾向で振動しており、X軸及びZ軸の電流値のレベルの波形は似たような波形となる。また、X軸の電流値における最大値及び最小値の波形も似たような波形となる。また、Z軸の電流値における最大値及び最小値の波形も似たような波形となる。X軸及びZ軸の電流値のレベルが高くなるほど、チップ13a(工具13)にかかっている負荷が大きいことを示し、X軸及びZ軸の電流値のレベルが低くなるほど、チップ13aにかかっている負荷が小さいことを示している。また、X軸及びZ軸の電流値のレベルの波形において、最大値及び最小値の差分が大きく乖離した場合は、チップ13aなどの異常(チップ異常又はワーク加工異常)が発生したことを表している。また、
図4に示す閾値は、チップ13aにかかる負荷の異常(チップ13aにかかる負荷が大きすぎること)を判断するためのX軸及びZ軸の電流値(最大値)の境界値である。
【0040】
次に、負荷判定部44は、負荷検知部43で検知している負荷(X軸及びZ軸の電流値のレベル)が閾値を超えたか否かを判定する(ステップS4)。負荷判定部44が負荷が閾値を超えたと判定した場合は(ステップS4のYES)、チップ13aに異常に大きな負荷がかかっていると判断し、制御部45は旋盤本体10の駆動を停止させて工具13の使用を終了させる(ステップS8)。
図4に示す例では、チップ交換タイミングAにおいては、計測部42のカウント値は60(つまりチップ13aで加工されたワーク100の個数が240個)であるが、負荷検知部43で検知している負荷(X軸及びZ軸の電流値のレベル)が閾値を超えているので、旋盤本体10の駆動が停止されて工具13の使用が終了される。この場合、オペレータは工具13のチップ13aを新しいチップ13aに交換するとともに、計測部42のカウンタの値に300を設定する。
【0041】
一方、負荷判定部44が負荷が閾値を超えていないと判定した場合は(ステップS4のNO)、計測部42は工具13の使用積算値が予定積算値(
図4に示す例では300)に到達したか否かを判定する(ステップS5)。具体的には、計測部42はカウンタの値が0になったか否かを判定する。計測部42が工具13の使用積算値が予定積算値に到達していないと判定した場合(ステップS5のNO)、ステップS1の処理に移行する。このように、工具13の使用積算値が予定積算値に達するまでステップS1〜S5の処理が繰り返し実行される。
【0042】
計測部42が工具13の使用積算値が予定積算値に到達したと判定した場合(ステップS5のYES)、負荷判定部44は、工具13にかかる負荷が安定しているか否かを判定する(ステップS6)。負荷判定部44は、工具13にかかる負荷が安定しているか否かを、予定積算値に至るまでの所定範囲(例えば
図4に示す終期の範囲)の負荷が所定の基準値内にあるか否かによって判定する。具体的には、負荷判定部44は、予め設定された300個に至るまでの100個のワーク加工時における電流値のレベルが基準値内にあるか否かを判定する。負荷判定部44は、基準値内にある場合、工具13にかかる負荷が安定していると判定する。逆に、負荷判定部44は、基準値内にない場合、工具13にかかる負荷が安定していない(非安定)と判定する。
【0043】
なお、工具13にかかる負荷が安定しているか否かの判定は上記した態様に限られない。例えば、
図4に示す初期(チップ13aが交換された後の1個目から100個目までのワークの加工時期)、中期(101個目から200個目までのワークの加工時期)、及び終期(201個目から300個目までのワークの加工時期)のそれぞれに異なる基準値を設定する。負荷判定部44は、初期、中期及び終期のそれぞれにおいて、ワーク加工時の電流値のレベルが基準値内にあるか否かを判定する。そして、負荷判定部44は、電流値のレベルがそれぞれの時期の基準値の1つでも超えた場合に負荷が安定していないと判定し、電流値のレベルがそれぞれの時期の基準値内にある場合に負荷が安定していると判定する。
【0044】
また、工具13にかかる負荷が安定しているか否かの判定の別の態様としては、負荷判定部44は、予定積算値(例えば予め設定された個数)に至るまでのワーク加工時の電流値レベルの上昇割合(上昇傾向)を特定する。そして、負荷判定部44は、電流値のレベルの上昇割合が所定割合よりも高い場合に負荷が安定していないと判定し、所定割合よりも低い場合に負荷が安定していると判定する。
【0045】
負荷判定部44が工具13にかかる負荷が安定していると判定した場合は(ステップS6のYES)、制御部45は使用積算値に追加範囲を設定する(ステップS7)。具体的には、制御部45は、予定積算値(例えば予め設定された個数)に至るまでのワーク加工時の電流値レベルの上昇割合(上昇傾向)を特定する。そして、負荷判定部44は、特定した電流値のレベルの上昇割合に基づいて追加範囲としてのカウンタの値(予め設定された個数を超えて加工可能なワークの個数)を決定する。そして、制御部45は、決定した追加範囲に対応する値(
図4に示す例では30)を計測部42のカウンタに設定する。その後、ステップS1の処理に移行する。負荷判定部44が工具13にかかる負荷が安定していていないと判定した場合は(ステップS6のNO)、制御部45は旋盤本体10の駆動を停止させて工具13の使用を終了させる(ステップS8)。
【0046】
図4に示す例では、使用積算値が予定積算値に到達することによりチップ交換タイミングBになったとき、電流値のレベルが基準値内にあるので、工具13にかかる負荷が安定していると判定される。そして、チップ13aが交換されずに、電流値のレベルの上昇割合に基づいて決定された追加範囲(ワーク30個)だけチップ13aの使用が延長される。
【0047】
なお、ステップS7の処理で追加範囲が設定された場合、ステップS1〜S4の処理が実行され、ステップS5において計測部42が工具13の使用積算値が予定積算値に到達したか否かを再び判定する。そして、計測部42が工具13の使用積算値が予定積算値に到達したと判定した場合(
図4に示すチップ交換タイミングC)、ステップS6において負荷判定部44が工具13にかかる負荷が安定しているか否かを再び判定する。このとき、負荷判定部44が工具13にかかる負荷が安定していると判定した場合は、再び、制御部45は使用積算値に追加範囲を設定する(ステップS7参照)。このように、
図3に示す処理では、工具13にかかる負荷が安定している限り、何度も追加範囲が設定されて工具13の使用が継続されることになる。ただし、ステップS7における追加範囲の設定回数を所定回数に限定してもよい。
【0048】
以上に説明したように、本実施形態では、ワーク100を加工する工具13の使用積算値を計測する計測部42と、工具13によるワーク100の加工中に該工具13にかかる負荷を検知する負荷検知部43と、計測部42で計測された使用積算値が予め設定された予定積算値に到達した場合、予定積算値に至るまでの負荷検知部43で検知された負荷の履歴から工具13にかかる負荷が安定しているかを判定する負荷判定部44と、負荷判定部44により安定と判定された場合、工具13の使用を継続させ、負荷判定部44により非安定と判定された場合、工具13の使用を終了させる制御部45とを備える。このような構成によれば、工具13の使用積算値が予定積算値に達した場合でも工具13の継続使用が可能となり、工具13の効率的な使用を実現することができる。
【0049】
<第2実施形態>
上記した第1実施形態では、負荷判定部44が工具13にかかる負荷が安定していると判定した場合(ステップS6のYES参照)、制御部45は使用積算値に追加範囲を設定して、工具13の使用を継続させていた(ステップS1参照)。これに対して、第2実施形態では、負荷判定部44が工具13にかかる負荷が安定していると判定した場合(ステップS6のYES参照)、制御部45は工具13の使用を一旦停止させるとともに、工具13の継続使用が可能である旨をオペレータに報知する。
【0050】
図5は、第2実施形態の工具管理方法の一例を示すフローチャートである。なお、ステップS1〜S6及びS8の処理は
図3に示した処理と同様であるため、重複する説明を省略する。
図5に示す処理において、負荷判定部44が工具13にかかる負荷が安定していると判定した場合(ステップS6のYES)、制御部45は、旋盤本体10の駆動を停止させて工具13の使用を一旦停止させる(ステップS9)。そして、制御部45は、工具13の継続使用が可能である旨をオペレータに報知する(ステップS10)。
【0051】
具体的には、制御部45は、表示部30の表示画面に例えば「工作機械の駆動を停止させました。チップを継続して使用することが可能です。」というような文を表示して、オペレータに工具13(チップ13a)の継続使用が可能である旨を報知する。なお、制御部45は、通信部(図示せず)を介して工作機械1から離れた端末(例えば、オペレータのパソコンなどの端末や、オペレータの携帯電話やスマートフォンなどの携帯端末)に工具13の継続使用が可能である旨を報知(通知)してもよい。オペレータは、工具13の継続使用が可能である旨の報知を受けた場合、工具13の状態や旋盤本体10などの状態を確認する。そして、工具13の状態などが問題ない場合は、オペレータは工作機械1に設けられた不図示の継続ボタンをオンとすることにより、旋盤本体10を駆動させて工具13を継続使用させる。なお、オペレータは、工具13の状態などが問題ないと判断した場合も、チップ13aを交換することも可能である。
【0052】
制御部45は、継続ボタンがオンとなったか否かを判定することで工具13の使用を継続するか否かを判定する(ステップS11)。制御部45は、工具13の使用を継続すると判定した場合(ステップS11のYES)、ステップS1の処理に移行させて工具13の使用を継続させる。このとき、制御部45は、
図3のステップS7に示したように、使用積算値に追加範囲を設定して、その追加範囲だけ工具13の継続使用を許容してもよい。一方、制御部45は、工具13の使用を継続しないと判定した場合(ステップS11のNO)、つまり、継続ボタンがオンとなっていない場合(例えば工具13の使用を停止させた後に所定期間経過した場合)、ステップS8の処理に移行させて工具13の使用を終了させる。
【0053】
以上のように、本実施形態では、工具13の使用を停止して工具13の継続使用が可能である旨を報知するので、オペレータに工具の状態を確認させた上で工具13の継続使用を実行させることができる。
【0054】
以上の実施形態について説明したが、本発明は図示の構成等に限定されるものではなく、各構成の機能や用途などを逸脱しない範囲で変更は可能である。
【0055】
例えば、上記した実施形態では、使用積算値を工具13の使用回数(工具13を使用して加工したワークの個数)としていたが、工具13の使用時間としてもよい。この場合、計測部42は工具13(チップ13a)が使用されている使用時間を計測することになる。工具13の使用回数もワークの個数と一致した数でなくてもよい。また、複数種類の工具13を用いてワークを加工する工作機械1では、工具13の種類ごとに寿命を管理してもよい。
【0056】
また、上記した実施形態では、計測部42は、チャックセンサ12Sからの検出信号に基づいて使用回数を計測(計数)していたが、例えば旋盤本体10からワークの加工の開始又は終了ごとに出力される信号に基づいて使用回数を計測してもよい。
【0057】
また、上記した実施形態は、負荷判定部44は負荷検知部43で検知している負荷が閾値を超えたか否かを判定していたが(ステップS4参照)、負荷判定部44は工具13にかかる負荷が安定しているか否かを判定し(ステップS6参照)、負荷が安定していないと判定した場合に工具13の使用を終了させてもよい(ステップS8参照)。また、負荷判定部44は、ステップS4の実行タイミングにおいて、電流値の最大値と最小値の差分が乖離したと判定した場合に、工具13の使用を終了させてもよい。また、負荷検知部43は、X軸モータ及びZ軸モータの電流値のレベルに基づいて工具13にかかる負荷を検知していたが、X軸モータ及びZ軸モータのいずれか一方の電流値のレベルに基づいて工具13にかかる負荷を検知してもよい。また、負荷検知部43は、主軸モータの電流値のレベルに基づいて工具13にかかる負荷を検知してもよい。