特許第6413546号(P6413546)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6413546
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】内燃機関のオイル分離構造
(51)【国際特許分類】
   F01M 13/04 20060101AFI20181022BHJP
【FI】
   F01M13/04 A
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-193777(P2014-193777)
(22)【出願日】2014年9月24日
(65)【公開番号】特開2016-65471(P2016-65471A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2017年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】特許業務法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡村 翔
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼田 拓
【審査官】 北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−092729(JP,A)
【文献】 特開2007−077851(JP,A)
【文献】 特開2011−032889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】

シリンダブロックとチェーンケースの間に形成されたチェーン収容室と、前記チェーン収容室に連通するクランク室と、前記シリンダブロックの側面に設けられ、ブローバイガスからオイルを分離する複数のオイル分離室とを有し、前記オイル分離室が、前記シリンダブロックの側面に形成されたケース部と、前記シリンダブロックの側面から離隔した位置で前記ケース部を閉塞するカバー部材とを備えた内燃機関のオイル分離構造であって、
前記オイル分離室は、前記チェーン収容室内のブローバイガスが流入する第1の流入口を有する第1のオイル分離室と、前記クランク室内のブローバイガスが流入する第2の流入口が形成された底部を有する第2のオイル分離室と、前記第1のオイル分離室および前記第2のオイル分離室からブローバイガスが流入する第3のオイル分離室とを備え、
前記ケース部は、前記シリンダブロックのシリンダ軸線方向に沿って延び、前記第1のオイル分離室と前記第2のオイル分離室とを仕切る第1のケース側仕切壁と、前記シリンダブロックのクランク軸線方向に沿って延び、前記第2のオイル分離室と前記第3のオイル分離室とを仕切る上壁部を有する第2のケース側仕切壁とを備え、
前記第1の流入口は、前記クランク軸線方向において前記第1のケース側仕切壁に対向しており、
前記第2の流入口は、前記シリンダ軸線方向において前記第2のケース側仕切壁に対向しており、
前記カバー部は、前記第1のケース側仕切壁に突き当てられる第1のカバー側仕切壁と、前記第2のケース側仕切壁に突き当てられる第2のカバー側仕切壁とを備え、
前記第1のカバー側仕切壁に、前記第1のオイル分離室から前記第2のオイル分離室にブローバイガスを流通させる連通孔が形成されることを特徴とする内燃機関のオイル分離構造。
【請求項2】
前記連通孔は、前記第1のケース側仕切壁に突き当てられる前記第1のカバー側仕切壁の突き当て面の一部に切欠き部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のオイル分離構造。
【請求項3】
前記カバー部材が衝突壁を有し、前記衝突壁は、前記連通孔に対向してブローバイガスの流れ方向下流側に設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関のオイル分離構造。
【請求項4】
前記第1のオイル分離室の容積は、前記第2のオイル分離室の容積よりも大きく形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の内燃機関のオイル分離構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のオイル分離構造に関し、特に、ブローバイガスからオイルを分離する内燃機関のオイル分離構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等に搭載された内燃機関のオイル分離構造として、ブローバイガスからオイルを分離するオイルセパレータ室(オイル分離室に相当)を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
オイルセパレータ室は、シリンダブロックの側面の外周壁によって囲まれている。オイルセパレータ室には切欠きを有する複数のオイルバッフルが設けられており、クランク室からブローバイガス導入孔を通してオイルセパレータ室に流入したブローバイガスは、オイルバッフルに衝突してブローバイガスからオイルが分離される。
【0004】
オイルが分離されたブローバイガスは、オイルバッフルの切欠きを通して下流側に設けられたオイルバッフルに衝突して、ブローバイガスからオイルが分離された後、吸気管を通して再度燃焼室に送り込まれ、燃焼室で混合気と共に再度燃焼される。これにより、オイルパンに貯留されるオイルがブローバイガスにより劣化することを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭64−3015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の内燃機関のオイル分離構造にあっては、オイルセパレータ室内においてブローバイガスが燃焼室から離れた位置を通過する構造とはなっていない。
これにより、ブローバイガスが燃焼室による熱を受けてブローバイガス中のオイル蒸気が多く存在し、ブローバイガスからオイルを分離し難い。
【0007】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、ブローバイガスからオイルを分離し易くして、オイルの分離性能を向上できる内燃機関のオイル分離構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、シリンダブロックとチェーンケースの間に形成されたチェーン収容室と、チェーン収容室に連通するクランク室と、シリンダブロックの側面に設けられ、ブローバイガスからオイルを分離する複数のオイル分離室とを有し、オイル分離室が、シリンダブロックの側面に形成されたケース部と、シリンダブロックの側面から離隔した位置でケース部を閉塞するカバー部材とを備えた内燃機関のオイル分離構造であって、オイル分離室は、チェーン収容室内のブローバイガスが流入する第1の流入口を有する第1のオイル分離室と、クランク室内のブローバイガスが流入する第2の流入口が形成された底部を有する第2のオイル分離室と、第1のオイル分離室および第2のオイル分離室からブローバイガスが流入する第3のオイル分離室とを備え、ケース部は、シリンダブロックのシリンダ軸線方向に沿って延び、第1のオイル分離室と第2のオイル分離室とを仕切る第1のケース側仕切壁と、シリンダブロックのクランク軸線方向に沿って延び、第2のオイル分離室と第3のオイル分離室とを仕切る上壁部を有する第2のケース側仕切壁とを備え、第1の流入口は、クランク軸線方向において第1のケース側仕切壁に対向しており、第2の流入口は、シリンダ軸線方向において第2のケース側仕切壁に対向しており、カバー部は、第1のケース側仕切壁に突き当てられる第1のカバー側仕切壁と、第2のケース側仕切壁に突き当てられる第2のカバー側仕切壁とを備え、第1のカバー側仕切壁に、第1のオイル分離室から第2のオイル分離室にブローバイガスを流通させる連通孔が形成されるものから構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シリンダブロックの側面に設けられた複数のオイル分離室が、ケース部に設けられたケース側仕切壁と、カバー部材に設けられ、ケース側仕切壁に突き当てられるカバー側仕切壁とによって仕切られ、カバー側仕切壁に、複数のオイル分離室間でブローバイガスを流通する連通孔が形成される。
【0010】
これにより、シリンダブロックの側面から離れたカバー部材側の連通孔を通して複数のオイル分離室の間でブローバイガスを流通させることができる。このため、ブローバイガスを外気で冷却してブローバイガスに含まれるオイル蒸気の液化を促進できる。
【0011】
したがって、オイルミストの粒径を大きくしてブローバイガスからオイルを容易に分離でき、オイルの分離性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の内燃機関のオイル分離構造の一実施形態を示す図であり、ブローバイガス処理装置の概略構成図である。
図2図2は、本発明の内燃機関のオイル分離構造の一実施形態を示す図であり、ブローバイガス処理装置を備えた内燃機関の正面図である。
図3図3は、本発明の内燃機関のオイル分離構造の一実施形態を示す図であり、図2のIII−III方向矢視断面図である。
図4図4は、本発明の内燃機関のオイル分離構造の一実施形態を示す図であり、シリンダヘッドカバーおよびチェーンケースを取り外した状態のブローバイガス処理装置を備えた内燃機関の斜視図である。
図5図5は、本発明の内燃機関のオイル分離構造の一実施形態を示す図であり、カバー部材を取り外した状態のシリンダブロックの斜視図である。
図6図6は、本発明の内燃機関のオイル分離構造の一実施形態を示す図であり、オイル分離室の拡大図である。
図7図7は、本発明の内燃機関のオイル分離構造の一実施形態を示す図であり、カバー部材の斜視図である。
図8図8は、本発明の内燃機関のオイル分離構造の一実施形態を示す図であり、カバー部材の一部を断面で示すオイル分離室の斜視図である。
図9図9は、本発明の内燃機関のオイル分離構造の一実施形態を示す図であり、カバー部材の一部を断面で示すオイル分離室の斜視図である。
図10図10は、本発明の内燃機関のオイル分離構造の一実施形態を示す図であり、オイル分離室においてブローバイガスとブローバイガスから分離されたオイルの流れを示す図である。
図11図11は、本発明の内燃機関のオイル分離構造の一実施形態を示す図であり、カバー部材が取付けられたシリンダブロックの斜視図である。
図12図12は、本発明の内燃機関のオイル分離構造の一実施形態を示す図であり、図8のXII−XII方向矢視断面図である。
図13図13は、本発明の内燃機関のオイル分離構造の一実施形態を示す図であり、オイル分離室でブローバイガスが滞留する状態を示す図である。
図14図14は、本発明の内燃機関のオイル分離構造の一実施形態を示す図であり、他の形状のカバー部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る内燃機関のオイル分離構造の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1図14は、本発明に係る一実施形態の内燃機関のオイル分離構造を示す図である。
【0014】
まず、構成を説明する。なお、図1図11において、左右前後方向は、運転席から見た車両の左右前後方向を表す。
【0015】
図1図4において、内燃機関としてのエンジン1は、シリンダブロック2と、シリンダブロック2の上部に設けられたシリンダヘッド3と、シリンダヘッド3の上部に設けられたシリンダヘッドカバー4と、シリンダブロック2の下部に設けられたオイルパン5とを備えている。
【0016】
図1において、シリンダブロック2にはシリンダ27内に上下動自在に収容されたピストン28と、ピストン28の上下運動を回転運動に変換するクランク軸6等が収容されており、シリンダブロック2の下部にはクランク軸6を回転自在に支持するクランクケース2Aが一体的に設けられている。また、クランクケース2Aとオイルパン5との間にはクランク室24が形成されている。
【0017】
図1図4において、シリンダヘッド3は、シリンダ27の配列方向に沿って延び、吸気カム7aを備えたカム軸としての吸気カム軸7と、吸気カム軸7と平行に配置されてシリンダ27の配列方向に沿って延び、排気カム8aを備えたカム軸としての排気カム軸8とを備えている。
【0018】
本実施形態のエンジン1は、吸気カム軸7および排気カム軸8が収容されるシリンダヘッド3とシリンダヘッドカバー4との間の空間が動弁室13を構成している。また、吸気カム軸7および排気カム軸8は、複数のカムキャップ3Aによってシリンダヘッド3に回転自在に支持されている。
【0019】
図1において、シリンダヘッド3には吸気ポート29および排気ポート30が形成されており、吸気ポート29および排気ポート30は、吸気カム7aおよび排気カム8aの回転に伴って駆動される吸気バルブ31および排気バルブ32によって開閉される。
【0020】
シリンダヘッド3には吸気マニホールド33が取付けられており、吸気マニホールド33には吸気管34を介してエアクリーナ35が接続されている。エアクリーナ35は、外部から取り入れられる吸入空気Aiを浄化するようになっており、エアクリーナ35によって浄化された吸入空気Aiは、吸気管34から吸気マニホールド33に吸入され、吸気マニホールド33から各吸気ポート29を介して各シリンダ27に分配されて吸入される。
吸気管34にはスロットルバルブ34Aが設けられており、このスロットルバルブ34Aは、シリンダ27に吸入される空気量を調整する。
【0021】
図4において、吸気カム軸7の端部には吸気カムスプロケット9が設けられており、吸気カムスプロケット9にはタイミングチェーン11が巻回されている。排気カム軸8の端部には排気カムスプロケット10が設けられており、この排気カムスプロケット10にはタイミングチェーン11が巻回されている。
【0022】
クランク軸6の端部にはクランクスプロケット12が設けられており、クランクスプロケット12にはタイミングチェーン11が巻回されている。これにより、クランク軸6の回転は、クランクスプロケット12からタイミングチェーン11を介して吸気カムスプロケット9および排気カムスプロケット10に伝達され、吸気カム軸7および排気カム軸8が回転する。
【0023】
吸気カム7aおよび排気カム8aが回転すると、吸気バルブ31および排気バルブ32がそれぞれ吸気ポート29および排気ポート30(図1参照)を開閉することで、シリンダ27の上部に形成された燃焼室14(図1参照)と吸気ポート29および排気ポート30とを連通および遮断する。このようにタイミングチェーン11によって吸気バルブ31および排気バルブ32がクランク軸6の回転に応じて作動される。
【0024】
図2図3において、シリンダブロック2およびシリンダヘッド3の端部(エンジン1の前面側)にはチェーンケース21が設けられている。チェーンケース21は、タイミングチェーン11を覆うとともに、シリンダブロック2とチェーンケース21との間でチェーン収容室22を形成しており(図3参照)、チェーン収容室22は、クランク室24に連通している。
【0025】
図5図6図8図9において、シリンダブロック2の側面2Bにはオイル分離室17が形成されており、オイル分離室17は、シリンダブロック2の側面2Bに形成されたケース部40と、シリンダブロック2の側面2Bに取付けられたカバー部材51(図7参照)とによって4つのオイル分離室41〜44が形成される。
【0026】
図5図6において、オイル分離室41〜44は、シリンダブロック2の側面2Bに形成された複数の仕切壁45A〜45Cを備えている。仕切壁45Aは、シリンダ27の軸線方向に延びており、仕切壁45Aは、クランク軸6の軸線方向において、ケース部40をオイル分離室41とオイル分離室42、43と仕切っている。これにより、オイル分離室41は、オイル分離室42に隣接して設けられる。
【0027】
仕切壁45Bは、クランク軸6の軸線方向に延びており、仕切壁45Bは、シリンダ27の軸線方向において、ケース部40をオイル分離室42とオイル分離室43とを仕切っている。これにより、オイル分離室42は、オイル分離室43に隣接して設けられる。
また、仕切壁45Cは、シリンダ27の軸線方向に延びており、仕切壁45Cは、クランク軸6の軸線方向において、ケース部40をオイル分離室43とオイル分離室44とを仕切っている。
【0028】
オイル分離室41には流入口41Aが形成されており、流入口41Aは、シリンダブロック2に形成された連通路23を介してチェーン収容室22に連通している。これにより、クランク室24からチェーン収容室22に流れるブローバイガスは、連通路23から流入口41Aを通してオイル分離室41に流入する。
【0029】
オイル分離室42に流入口42Aが形成されており、流入口42Aは、シリンダブロック2に形成された連通路20を介してクランク室24に連通している。これにより、クランク室24のブローバイガスは、連通路20から流入口42Aを通してオイル分離室42に直接、流入する。
【0030】
ここで、本実施形態のオイル分離室41は、本発明の第1のオイル分離室を構成し、オイル分離室42は、本発明の第2のオイル分離室を構成する。また、本実施形態のオイル分離室43は、本発明の第3のオイル分離室を構成する。また、本実施形態の流入口41Aは、本発明の第1の流入口を構成し、流入口42Aは、本発明の第2の流入口を構成する。
【0031】
また、オイル分離室41の容積は、オイル分離室42の容積よりも大きく形成されており、本実施形態のオイル分離室41に収容される単位容積当たりのブローバイガスの量は、単位容積当たりのオイル分離室42に収容されるブローバイガスの量よりも多い。
【0032】
図7において、カバー部材51は、平板部52と、平板部52からケース部40に向かって突出する仕切壁53〜55とを含んで構成される。平板部52は、ケース部40を閉止するようになっており(図11参照)、平板部52は、図示しないボルトによってシリンダブロック2の側面2Bに固定される。
【0033】
図8図9において、カバー部材51の仕切壁53は、ケース部40の仕切壁45Aに突き当てられており、オイル分離室41は、仕切壁53および仕切壁45Aによってオイル分離室42、43と仕切られる。
【0034】
カバー部材51の仕切壁54は、クランク軸6の軸線方向に延び、ケース部40の仕切壁45Bに突き当てられる上壁部54Aと、上壁部54Aに対して直交するシリンダ27の軸線方向に延び、上壁部54Aに連続してオイル分離室42に対してクランク軸6の軸線方向中央部に位置する縦壁部54Bとを備えている。これにより、オイル分離室42は、上壁部54Aによってオイル分離室43に対してシリンダ27の軸線方向に分離される。
【0035】
カバー部材51の仕切壁55は、ケース部40の仕切壁45Cに突き当てられており、
オイル分離室43は、仕切壁55および仕切壁45Cによってオイル分離室44と仕切られる。
【0036】
ここで、本実施形態のケース部40の仕切壁45Aは、本発明のケース側仕切壁を構成する。また、カバー部材51の仕切壁53は、本発明の第1のカバー側仕切壁を構成し、カバー部材51の仕切壁54は、本発明の第2のカバー側仕切壁を構成する。
【0037】
仕切壁53には一対の連通孔53a(図12参照)が形成されており、連通孔53aは、流入口41Aからオイル分離室41に流入するブローバイガスをオイル分離室42に流通させる。
【0038】
図7において、カバー部材51は、衝突壁56を有し、衝突壁56は、平板部52からケース部40に向かって突出している。図8図9において、衝突壁56は、仕切壁53の連通孔53aに対向するようにしてオイル分離室42に位置しており、衝突壁56には連通孔53aを通してオイル分離室42に流入するブローバイガスが衝突する。
【0039】
すなわち、衝突壁56は、仕切壁53に対してブローバイガスの流れ方向下流に設けられる。また、クランク軸6の軸線方向と直交する方向(車両の左右方向)に対する衝突壁56の一側面は、仕切壁45Aに突き当てられていないので、衝突壁56に衝突したブローバイガスは、仕切壁45Aと衝突壁56との間の空間からオイル分離室42に流入する。
【0040】
カバー部材51の縦壁部54Bは、連通孔53aに面する衝突壁56の第1の面56aと反対側の衝突壁56の第2の面56bに対向する第3の面54bを有する。これにより、衝突壁56の第2の面56bと縦壁部54Bの第3の面54bとによってブローバイガス通路57が形成され、ブローバイガス通路57によってオイル分離室41、42からオイル分離室43にブローバイガスが案内される。
【0041】
本実施形態のオイル分離室17は、オイル分離室41がオイル分離室42、43に対してチェーン収容室22側に設けられている。また、オイル分離室44は、オイル分離室41と反対側においてオイル分離室43に隣接して設けられている。
【0042】
図8図9において、仕切壁55には連通孔55aが形成されている。カバー部材51は、衝突壁58を有し、衝突壁58は、平板部52からケース部40に向かって突出している。
【0043】
衝突壁58は、仕切壁55の連通孔55aに対向するようにしてオイル分離室44に位置しており、衝突壁58には連通孔55aを通してオイル分離室44に流入するブローバイガスが衝突する。すなわち、衝突壁58は、仕切壁55に対してブローバイガスの流れ方向下流に設けられる。
【0044】
また、クランク軸6の軸線方向と直交する方向に対する衝突壁58の一側面は、仕切壁45Cに突き当てられていないので、衝突壁58に衝突したブローバイガスは、仕切壁45Cと衝突壁58との間の空間からオイル分離室44に流入する。
【0045】
図7図8図12において、カバー部材51の仕切壁53の底部には切欠き53bが形成されており、オイル分離室41においてブローバイガスから分離されたオイルは、切欠き53bとオイル分離室41の底面との間の隙間を通してオイル分離室42に流入する。
【0046】
オイル分離室41、42の底面は、車両の前方からオイル分離室42の流入口42Aに向かって上方から下方に傾斜している。これにより、オイル分離室41からオイル分離室42に流入したオイルは、オイル分離室42の底面に沿って流入口42Aに流入する。
【0047】
図7図8において、カバー部材51の仕切壁55の底部には切欠き55bが形成されている。オイル分離室44においてブローバイガスから分離されたオイルは、切欠き55bを通してオイル分離室42に流入し、オイル分離室42に流入したオイルは、流入口42Aに流入する。
流入口42Aに流入したオイルは、連通路20からクランク室24を通してオイルパン5に戻される。
【0048】
図7図9図11において、カバー部材51の平板部52には排気穴52aが形成されており、排気穴52aは、オイル分離室44に対向している。
【0049】
図1において、排気穴52aは、ブローバイガス排出管36を介して吸気マニホールド33に連通しており、オイル分離室44に流入したブローバイガスは、エンジン1の吸入負圧によってブローバイガス排出管36から吸気マニホールド33を通して吸気管34に吸引される。
【0050】
吸気マニホールド33に吸引されたブローバイガスは、エンジン1の燃焼室14に導入されて混合気と共に燃焼室14で燃焼される。
オイル分離室44とブローバイガス排出管36との間にはPCVバルブ37が設けられており、PCVバルブ37は、オイル分離室44からブローバイガス排出管36に流れるブローバイガス流量を調整する。
【0051】
図1において、シリンダヘッドカバー4とスロットルバルブ34Aに対して上流側の吸気管34とは、新気導入管38によって接続されており、新気導入管38は、吸入空気Aiの一部、すなわち、新気Anを動弁室13に導入する。
【0052】
シリンダブロック2およびシリンダヘッド3には新気流入通路39が形成されており、新気流入通路39は、動弁室13とクランク室24とを連通している。吸入負圧によって新気導入管38から動弁室13に導入された新気Anは、チェーン収容室22から連通路23および流入口41Aを通してオイル分離室41に導入される。
【0053】
また、新気導入管38から動弁室13に導入された新気Anは、新気流入通路39からクランク室24、連通路20および流入口42Aを通してオイル分離室42に導入される。オイル分離室41、42に導入されるブローバイガスは、オイル分離室43を通してオイル分離室44に吸入された後、ブローバイガス排出管36から吸気マニホールド33を介してシリンダ27に導入される。これにより、動弁室13、チェーン収容室22およびクランク室24を含んだエンジン1の内部が新気Anによって換気される。
【0054】
次に、作用を説明する。
図10において、矢印Bは、ブローバイガスの流れを示し、矢印Oは、ブローバイガスから分離されたオイルの流れを示す。
【0055】
チェーン収容室22において、図示しないオイルジェットからタイミングチェーン11にオイルが噴射されることでタイミングチェーン11の潤滑が行われる。このため、チェーン収容室22の換気が十分に行われないと、チェーン収容室22に導入されるブローバイガス中に含まれるNOx(窒素酸化物)と水分が反応して硝酸が生成され、オイルがこの硝酸によって凝集し、スラッジが発生する。
【0056】
このスラッジは、タール状の物質であり、スラッジがエンジン1を潤滑するオイルに混入すると、オイルの劣化を引き起してしまい、油圧系の作動不良やクランク軸6、吸気カム軸7および排気カム軸8等の摺動部材の潤滑不良を引き起こしてしまい、エンジン1の摺動抵抗が増大してエンジン1の燃費が悪化してしまう。
【0057】
図3に示すように、本実施形態のエンジン1においては、シリンダブロック2が、オイル分離室41とチェーン収容室22とを連通する連通路23を有し、連通路23が流入口41Aを通してオイル分離室41に連通している。
【0058】
これにより、チェーン収容室22からオイル分離室41にブローバイガスを直接流すことができる。このため、連通路23を通してチェーン収容室22を直接換気でき、チェーン収容室22にスラッジが発生することを防止できる。
【0059】
チェーン収容室22から連通路23を通してオイル分離室41に向かって流れるブローバイガスBは、図10に示すように、流入口41Aからオイル分離室41に流入する。このブローバイガスBは、連通孔53aを通して流路が絞られることにより、流速が上昇して衝突壁56に衝突する。これにより、ブローバイガスBからオイルOが分離され、分離されたオイルOは、衝突壁56に沿って下方に落下する。
【0060】
衝突壁56に衝突してオイルOが分離されたブローバイガスBは、衝突壁56と仕切壁45Aとの間の空間から衝突壁56の第2の面56bと縦壁部54Bの第3の面54bとによって形成されるブローバイガス通路57により案内されて、オイル分離室43に流入する。
【0061】
一方、クランク室24から連通路20を通してオイル分離室42に向かって流れるブローバイガスBは、流入口42Aからオイル分離室42に流入する。このブローバイガスBは、仕切壁45Bおよび仕切壁54の上壁部54Aに衝突することにより、ブローバイガスBからオイルOが分離され、分離されたオイルOは、オイル分離室42の底面に落下する。
【0062】
仕切壁45Bおよび仕切壁54の上壁部54AによってオイルOが分離されたブローバイガスBは、ブローバイガス通路57により案内されてオイル分離室43に流入する。
【0063】
オイル分離室43に流入したブローバイガスBは、仕切壁55の連通孔55aによって絞られて流速が上昇した後、衝突壁58に衝突することで、ブローバイガスBから分離し切れなかったオイルOが分離される。
【0064】
次いで、オイルOが分離されたブローバイガスBは、仕切壁45Cと衝突壁58との間の空間からオイル分離室44に流入した後、エンジン1の吸入負圧によってカバー部材51の排気穴52aからブローバイガス排出管36、吸気マニホールド33および吸気管34を通して燃焼室14に吸引されて混合気と共に燃焼される。
【0065】
このように、本実施形態のオイル分離構造によれば、カバー部材51に設けられた仕切壁53が、流入口41Aからオイル分離室41に流入するブローバイガスをオイル分離室42に流通する連通孔53aを有し、カバー部材51が、連通孔53aに対向するようにしてオイル分離室42に位置し、連通孔53aを通してオイル分離室42に流入するブローバイガスが衝突する衝突壁56を有する。
【0066】
これにより、流入口41Aからオイル分離室41に流入したブローバイガスを、連通孔53aを通して流速を上昇させた後に衝突壁56に衝突させることでブローバイガスからオイルを容易に分離できる。
【0067】
また、カバー部材51に形成された縦壁部54Bが、連通孔53aに対向する衝突壁56の第1の面56aと反対側の衝突壁56の第2の面56bに対向する第3の面54bを有し、衝突壁56の第2の面56bと縦壁部54Bの第3の面54bとにより形成されるブローバイガス通路57によってオイル分離室41、42からオイル分離室43にブローバイガスを案内する。
【0068】
これにより、オイル分離室41、42に流入されるブローバイガスを、衝突壁56の第2の面56bと縦壁部54Bの第3の面54bとにより形成される共通のブローバイガス通路57によってオイル分離室43に案内できる。
【0069】
このため、オイル分離室41、42からオイル分離室43にブローバイガスを案内するためのブローバイガス通路を別々に形成することを不要にできる。この結果、オイル分離室17を小型化できる。
【0070】
また、本実施形態のオイル分離構造によれば、シリンダブロック2の側面2Bに設けられたオイル分離室41〜44が、ケース部40に設けられた仕切壁45A〜45Cと、カバー部材51に設けられ、仕切壁45A〜45Cに突き当てられる仕切壁53〜55とによって仕切られ、仕切壁53、55に、オイル分離室41〜44間でブローバイガスを流通する連通孔53a、55aが形成される。
【0071】
これにより、シリンダブロック2の側面2Bから離れたカバー部材51側の連通孔53a、55aを通してオイル分離室41〜44の間でブローバイガスを流通させることができる。このため、ブローバイガスを外気で冷却してブローバイガスに含まれるオイル蒸気の液化を促進できる。このため、オイルミストの粒径を大きくしてブローバイガスからオイルを容易に分離でき、オイルの分離性能を向上できる。
【0072】
また、本実施形態のオイル分離構造によれば、オイル分離室41の第1の流入口41Aがチェーン収容室22に連通し、オイル分離室42が第2の流入口42Aを通してクランク室24に連通している。これにより、チェーン収容室22やクランク室24でオイルの凝集によるスラッジの発生を抑制できる。
【0073】
そして、本実施形態のオイル分離構造は、上述したようにオイル分離室17を小型化できるため、シリンダブロック2にチェーン収容室22やクランク室24とオイル分離室41、42とを連通する連通路20、23を構成した場合であっても、シリンダブロック2が大型化することを抑制できる。
【0074】
また、オイル分離室42が、クランク室24に連通し、クランク室24内のブローバイガスが流入する流入口42Aを有するので、オイル分離室41を、流入口41Aおよびチェーン収容室22を通してクランク室24に連通させるとともに、オイル分離室42を、流入口42Aを通してクランク室24に連通させることができる。
【0075】
このため、クランク室24の内圧が上昇したときに、クランク室24の圧力を流入口41A、42Aを通してオイル分離室41、42に逃がすことができ、クランク室24の圧力上昇を速やかに抑制できる。
【0076】
したがって、オイルパン5に貯留されるオイルがオイル分離室41、42に流入することを抑制でき、オイル分離室41、42においてブローバイガスからオイルを確実に分離することができる。この結果、オイルの分離性能を向上できる。
【0077】
また、本実施形態のオイル分離構造によれば、オイル分離室41の容積をオイル分離室42の容積よりも大きくした。これにより、クランク室24においてピストン28の往復動によって流速が速くなるブローバイガスは、オイル分離室41よりも容積の小さいオイル分離室42に導入されて、オイル分離室42の仕切壁45Bおよびカバー部材51の上壁部54Aに高速で衝突することでブローバイガスからオイルを容易に分離することができる。また、仕切壁45Bおよび上壁部54Aに衝突したオイルは、オイル分離室42の底面に落下する。
【0078】
一方、クランク室24からチェーン収容室22を通してオイル分離室41に導入されるブローバイガスは、クランク室24から離隔することでピストン28の往復動による影響が小さいため、オイル分離室42に導入されるブローバイガスよりも流速が遅くなる。
【0079】
オイル分離室41は、オイル分離室42よりも容積が大きいので、オイル分離室41に導入される流速の遅いブローバイガスは、容積の大きいオイル分離室41で滞留して凝集することでオイルの分離を促進させることができる。この結果、オイル分離室41においてオイルの分離性能をより効果的に向上できる。
【0080】
図13は、オイル分離室41でブローバイガスBが滞留する状態を示す図である。図13に示すように、流速の遅いブローバイガスBは、容積の大きいオイル分離室41で滞留して凝集することが明らかである。このようにブローバイガスBが滞留して凝集すると、高速に移動するブローバイガスに比べてブローバイガスBからオイルの分離を促進することができる。
【0081】
また、シリンダブロック2に対するオイル分離室17の設置スペースの制約上、オイル分離室17の設置スペースを大きく取ることができない。これに対して、本実施形態のオイル分離構造では、オイル分離室42の容積を小さくしてもオイル分離室42に流速の速いブローバイガスを導入してオイルの分離性能を向上できるので、オイル分離室42の容積を小さくできる分だけ、オイル分離室17の全体の容積を小さくできる。したがって、オイル分離室17の設置スペースを小さくしつつ、オイルの分離性能をより効果的に向上できる。
【0082】
また、本実施形態のオイル分離構造によれば、オイル分離室41が、オイル分離室42およびオイル分離室43に対してチェーン収容室22側に設けられ、オイル分離室41と反対側においてオイル分離室43に隣接してオイル分離室44が設けられる。
【0083】
これにより、オイル分離室43をオイル分離室41およびオイル分離室44とで挟み込むようにしてオイル分離室17をシリンダブロック2に形成することができる。このため、オイル分離室17をより一層小さいスペースでシリンダブロック2に設置できる。
【0084】
なお、本実施形態のオイル分離構造によれば、流入口41Aを介してオイル分離室41をチェーン収容室22に連通し、流入口42Aを介してオイル分離室42をクランク室24に連通しているが、流入口42Aを介してオイル分離室42をチェーン収容室22に連通し、流入口41Aを介してオイル分離室41をクランク室24に連通してもよい。
【0085】
ここで、本実施形態のカバー部材51によれば、仕切壁53、55にそれぞれ連通孔53a、55aを形成しているが、これに限定されるものではない。例えば、図14に示すように、仕切壁45A、45Cに突き当てられるカバー部材51の仕切壁53、55の突き当て面の一部を切り欠いて切欠き部53c、55cを形成し、仕切壁45A、45Cと仕切壁53、55との間の隙間、すなわち、切欠き部53c、55cを通してブローバイガスを流通させてもよい。
【0086】
このようにすれば、仕切壁53、55の突き当て面の一部を切り欠いて切欠き部53c、55cを連通孔53a、55aの代わりにできる。このため、金型を用いてカバー部材51と一体的に切欠き部53c、55cを形成でき、カバー部材51の生産性を向上できる。
【0087】
本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0088】
1…エンジン(内燃機関)、2…シリンダブロック、2B…側面、40…ケース部、41,42,43,44…オイル分離室、45A,45B,45C…仕切壁(ケース側仕切壁)、53,54,55…仕切壁(カバー側仕切壁)、53a,55a…連通孔、53c,55c…切欠き部、56,58…衝突壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
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