【実施例1】
【0016】
図1は実施例1の画像形成装置の説明図である。
図1において、実施例1の画像形成装置の一例としての複写機Uは、画像形成装置の本体の一例であって、画像記録装置の一例としてのプリンタ部U1を有する。プリンタ部U1の上部には、読取部の一例であって、画像読取装置の一例としてのスキャナ部U2が支持されている。スキャナ部U2の上部には、原稿の搬送装置の一例としてのオートフィーダU3が支持されている。実施例1のスキャナ部U2には、入力部の一例としてのユーザインタフェースU0が支持されている。前記ユーザインタフェースU0は、操作者が入力をして、複写機Uの操作が可能である。
また、プリンタ部U1の右部には、後処理装置U4が配置されている。
【0017】
オートフィーダU3の上部には、媒体の収容容器の一例としての原稿トレイTG1が配置されている。原稿トレイTG1には、複写しようとする複数の原稿Giが重ねて収容可能である。原稿トレイTG1の下方には、原稿の排出部の一例としての原稿の排紙トレイTG2が形成されている。原稿トレイTG1と原稿の排紙トレイTG2との間には、原稿の搬送路U3aに沿って、原稿の搬送ロールU3bが配置されている。
【0018】
スキャナ部U2の上面には、透明な原稿台の一例としてのプラテンガラスPGが配置されている。実施例1のスキャナ部U2には、プラテンガラスPGの下方に、読取り用の光学系Aが配置されている。実施例1の読取り用の光学系Aは、プラテンガラスPGの下面に沿って、左右方向に移動可能に支持されている。なお、読取り用の光学系Aは、通常時は、
図1に示す初期位置に停止している。
読取り用の光学系Aの右方には、撮像部材の一例としての撮像素子CCDが配置されている。撮像素子CCDには、画像処理部GSが電気的に接続されている。
画像処理部GSは、プリンタ部U1の制御部Cや書込回路Dに電気的に接続されている。書込回路Dは、Y:イエロー、M:マゼンタ、C:シアン、K:黒の露光装置ROSy,ROSm,ROSc,ROSkに電気的に接続されている。
【0019】
図1において、各露光装置ROSy〜ROSkの下方には、像保持体の一例としての感光体ドラムPy,Pm,Pc,Pkが配置されている。
K色用の感光体ドラムPkの周囲には、感光体ドラムPkの回転方向に沿って、帯電器CRk、現像装置GK、1次転写器の一例としての1次転写ロールT1k、像保持体の清掃器の一例としてのドラムクリーナCLkが配置されている。
帯電器CRkには、電源回路Eから、感光体ドラムPkを帯電させるための帯電電圧が印加される。現像装置GKは、現像剤の保持体の一例としての現像ロールR0を有する。現像ロールR0には、電源回路Eから、現像電圧が印加される。1次転写ロールT1kには、電源回路Eから、現像剤の帯電極性とは逆極性の1次転写電圧が印加される。
【0020】
なお、実施例1では、感光体ドラムPk、帯電器CRkおよびドラムクリーナCLkが、像保持体ユニットUKとしてユニット化されている。像保持体ユニットUKは、プリンタ部U1に対して、着脱可能に支持されている。
Y,M,Cの各色についても、K色と同様に構成された像保持体ユニットUY,UM,UCが設けられている。したがって、各像保持体ユニットUY,UM,UCも、感光体ドラムPy,Pm,Pc、帯電器CRy,CRm,CRc、ドラムクリーナCLy,CLm,CLcを有する。
また、実施例1では、現像装置GY〜GKも、ユニット化されており、プリンタ部U1に対して着脱可能に支持されている。
前記各像保持体ユニットUY,UM,UC,UKと現像装置GY,GM,GC,GKとにより、トナー像の形成部材UY+GY,UM+GM,UC+GC,UK+GKが構成されている。
【0021】
像保持体ユニットUY〜UKの下方には、中間転写装置の一例としてのベルトモジュールBMが配置されている。前記ベルトモジュールBMは、中間転写体の一例としての中間転写ベルトBと、中間転写体の支持部材の一例としてのベルト支持ロールRd,Rt,Rw,Rf,T2aと、1次転写ロールT1y,T1m,T1c,T1kとを有する。ベルト支持ロールRd,Rt,Rw,Rf,T2aは、駆動部材の一例としてのベルト駆動ロールRd、張力付与部材の一例としてのテンションロールRt、蛇行防止部材の一例としてのウォーキングロールRw、従動部材の一例としての複数のアイドラロールRf、および、二次転写用の対向部材の一例としてのバックアップロールT2aを有する。
中間転写ベルトBは前記ベルト支持ロールRd,Rt,Rw,Rf,T2aにより矢印Ya方向に回転移動可能に支持されている。
【0022】
前記バックアップロールT2aの下方には2次転写ユニットUtが配置されている。2次転写ユニットUtは、二次転写部材の一例としての2次転写ロールT2bを有する。2次転写ロールT2bは、中間転写ベルトBを挟んでバックアップロールT2aに離隔および接触可能に支持されている。前記2次転写ロールT2bが中間転写ベルトBと接触する領域により、画像記録領域の一例としての2次転写領域Q4が形成されている。また、前記バックアップロールT2aには、電圧印加用の接触部材の一例としてのコンタクトロールT2cが接触している。前記コンタクトロールT2cには、電源回路Eから、予め設定された時期に、トナーの帯電極性と同極性の2次転写電圧が印加される。前記各ロールT2a〜T2cにより2次転写器T2が構成されている。
【0023】
中間転写ベルトBの回転方向に対して、2次転写領域Q4の下流側には、中間転写体の清掃器の一例としてのベルトクリーナCLBが配置されている。
前記1次転写ロールT1y〜T1k、中間転写ベルトB、2次転写器T2、ベルトクリーナCLB等により、感光体ドラムPy〜Pk表面の画像をシートSに転写する転写装置T1+B+T2+CLBが構成されている。
【0024】
プリンタ部U1の下部には、媒体の収容部の一例としての給紙トレイTR1〜TR3が出入可能に支持されている。給紙トレイTR1〜TR3には、媒体の一例としてのシートSが収容される。
各給紙トレイTR1〜TR3の左上方には、媒体の取出部材の一例としてのピックアップロールRpが配置されている。ピックアップロールRpの左方には、捌き部材の一例としての捌きロールRsが配置されている。
各給紙トレイTR1〜TR3の左方には、上方に延びる媒体の搬送路SH1が形成されている。搬送路SH1には、媒体の搬送部材の一例としての搬送ロールRaが複数配置されている。
搬送路SH1には、シートSの搬送方向の下流部であり且つ2次転写領域Q4の上流側に、送出部材の一例としてのレジロールRrが配置されている。
【0025】
シートSの搬送方向に対して、レジロールRrの下流側には、媒体の案内部材の一例としてのレジガイドSGrおよび転写前のシートガイドSG1が順に配置されている。
シートSの搬送方向に対して、2次転写領域Q4の下流側には、媒体の案内部材の一例としての転写後のシートガイドSG2が配置されている。シートSの搬送方向に対して、転写後のシートガイドSG2の下流側には、媒体の搬送部材の一例としての搬送ベルトBHが配置されている。
シートSの搬送方向に対して、搬送ベルトBHの下流側には、定着装置Fが配置されている。前記定着装置Fは、加熱定着部材の一例としての加熱ロールFhと、加圧定着部材の一例としての加圧ロールFpとを有する。加熱ロールFhと加圧ロールFpとが接触する領域により定着領域Q5が形成されている。
【0026】
シートSの搬送方向に対して、定着装置Fの下流側には、媒体の搬送路の一例としての排出路SH3が形成されている。排出路SH3は、後処理装置U4に向けて右方に延びている。
排出路SH3の下流端には、媒体の搬送路の一例としての反転路SH4の上流端が接続されている。実施例1の反転路SH4は、2次転写ユニットUtの下方且つ最上段の給紙トレイTR1の上方の間を通じて、レジロールRrの上流側で搬送路SH1に合流する。排出路SH3と反転路SH4との分岐部には、搬送路の切替部材の一例としての第1のゲートGT1が配置されている。
【0027】
後処理装置U4には、媒体の搬送路の一例としての処理路SH5が形成されている。処理路SH5には、湾曲の補正装置の一例としてのデカーラU4aが配置されている。実施例1のデカーラU4aは、湾曲の補正部材の一例としての第1のカール補正部材h1および第2のカール補正部材h2を有する。
シートSの搬送方向に対して、デカーラU4aの下流側には、排出部材の一例としての排出ロールRhが配置されている。シートSの搬送方向に対して、排出ロールRhの下流側には、排出部の一例としての排出トレイTH1が配置されている。実施例1の排出トレイTH1は、シートSの積載量に応じて、上下方向に移動可能に支持されている。
前記符号SH1〜SH5が付された要素により、実施例1の媒体の搬送路SHが構成されている。また、前記符号SH,Ra,Rr,Rh,SGr,SG1,SG2,BH,GT1等が付された要素により、媒体の搬送系SUが構成されている。
【0028】
(画像形成動作の説明)
図1において、実施例1の複写機Uでは、ユーザインタフェースU0においてコピースタートキーが入力されると、スキャナ部U2は、原稿を読取る。
前記オートフィーダU3を使用して自動的に原稿を搬送して複写を行う場合は、読取り用の光学系Aは初期位置に停止した状態で、プラテンガラスPG上の読み取り位置を順次通過する各原稿Giを露光する。したがって、原稿トレイTG1に収容された複数の原稿Giは、プラテンガラスPG上の原稿の読み取り位置を順次通過して、原稿の排紙トレイTG2に排出される。
原稿Giを作業者が手でプラテンガラスPG上に置いて複写を行う場合、読取り用の光学系Aが左右方向に移動して、プラテンガラスPG上の原稿が、露光されながら走査される。
【0029】
原稿Giからの反射光は、読取り用の光学系Aを通って、撮像素子CCDに集光される。前記撮像素子CCDは、撮像面上に集光された原稿の反射光を電気信号に変換する。
画像処理部GSは、撮像素子CCDから入力された読取信号を、デジタルの画像信号に変換して、プリンタ部U1の書込回路Dに出力する。書込回路Dは、画像処理部GSから入力されたY:イエロー、M:マゼンタ、C:シアン、K:黒の画像情報に応じたレーザ駆動信号を、予め設定された時期に、書込装置の一例としての各色の露光装置ROSy,ROSm,ROSc,ROSkに出力する。
なお、制御部Cは、書込回路Dが信号を出力する時期や電源回路E等を制御する信号を出力する。
【0030】
感光体ドラムPy〜Pkは、それぞれ帯電器CRy〜CRkにより表面が帯電される。
表面が帯電された感光体ドラムPy〜Pkは、露光装置ROSy〜ROSkの出力する書込光の一例としてのレーザビームLy,Lm,Lc,Lkにより、静電潜像が形成される。感光体ドラムPy〜Pkの表面の静電潜像は、現像装置GY〜GKにより、Y:イエロー、M:マゼンタ、C:シアン、K:黒の色の可視像の一例としてのトナー像に現像される。
【0031】
感光体ドラムPy〜Pk表面上のトナー像は、1次転写ロールT1y〜T1kにより、中間転写ベルトB上に転写される。多色画像、いわゆる、カラー画像が形成される場合、中間転写ベルトBに、各感光体ドラムPy〜Pkのトナー像が順次重ねて転写される。また、黒画像データのみの場合は、K:黒の感光体ドラムPkおよび現像装置GKのみが使用されて、黒のトナー像のみが形成される。したがって、中間転写ベルトBにも黒のトナー像のみが転写される。
1次転写がされた後、感光体ドラムPy〜Pkの表面に残留したトナーは、ドラムクリーナCLy〜CLkによりクリーニングされる。
中間転写ベルトBに転写されたトナー像は、2次転写領域Q4に搬送される。
【0032】
前記各トレイTR1〜TR3のシートSは、予め設定された給紙時期にピックアップロールRpにより取り出される。ピックアップロールRpで取り出されたシートSは、複数枚のシートSが重なった状態で取り出された場合には、捌きロールRsで1枚づつ分離される。捌きロールRsを通過したシートSは、複数の搬送ロールRaにより、レジロールRrに搬送される。
【0033】
レジロールRrは、トナー像が2次転写領域Q4に搬送される時期に合わせて、シートSを送り出す。レジロールRrで送り出されたシートSは、ガイドSGr,SG1で案内されて2次転写領域Q4に搬送される。
中間転写ベルトB上のトナー像は、2次転写領域Q4を通過する際に、2次転写器T2により、シートSに転写される。なお、カラー画像の場合は、中間転写ベルトBの表面に重ねて1次転写されたトナー像が、一括してシートSに2次転写される。
2次転写領域Q4を通過した後の中間転写ベルトBは、ベルトクリーナCLBにより、残留したトナーが清掃される。
【0034】
トナー像が2次転写されたシートSは、転写後の媒体案内部材SG2、定着前の媒体搬送部材の一例としての搬送ベルトBHを通って定着装置Fに搬送される。シートSの表面のトナー像は、定着領域Q5を通過する際に、定着装置Fにより加熱定着される。定着領域Q5でトナー像が加熱定着されたシートSは、排出路SH3を搬送される。
シートSが排出トレイTH1に排出される場合、排出路SH3を搬送されたシートSは、後処理装置U4の処理路SH5に搬入される。切替ゲートh3は、処理路SH5に搬送されたシートSの湾曲、いわゆるカールの方向に応じて、第1のカール補正部材h1または第2のカール補正部材h2に搬送先を切り替える。各カール補正部材h1,h2は、通過するシートSのカールを補正する。カールが補正されたシートSは、排出ロールRhにより排出トレイTH1に排出される。
【0035】
シートSが両面印刷される場合、シートSの後端が第1のゲートGT1を通過後に、第1のゲートGT1は、シートSの搬送先を、反転路SH4に切り替える。そして、排出路SH3の下流端の搬送ロールRaや処理路SH5の搬送ロールRaが逆回転する。したがって、第1のゲートGT1を通過したシートSは、搬送ロールRaにより搬送方向が前後逆転された状態で反転路SH4に搬入される。すなわち、シートSはスイッチバックされる。スイッチバックされたシートSは、反転路SH4を搬送されて、レジロールRrに、表裏が反転した状態で搬送される。
【0036】
(実施例1の転写装置の説明)
図2は実施例1の転写装置の説明図である。
図1,2において、実施例1のベルトモジュールBMは、電界の発生部材の一例であり、中間転写体の支持部材の一例としての支持ロール1を有する。支持ロール1はベルトモジュールBMの図示しない枠体に回転可能に支持されている。支持ロール1は、中間転写ベルトBの回転方向に対して、最下流の1次転写ロールT1kの下流側且つ2次転写器T2のバックアップロールT2aの上流側に配置される。実施例1では、最下流の1次転写ロールT1kよりも下流側に配置されたアイドラロールRfと、バックアップロールT2aよりも上流側に配置されたテンションロールRtとの間に配置されている。支持ロール1は中間転写ベルトBの内表面に接触している。実施例1では、支持ロール1は、第1転写部材の一例としての1次転写ロールT1y〜T1kと同様に構成されている。
【0037】
前記支持ロール1に対して、中間転写ベルトBを挟んで対向する位置には、電界の発生部材の一例であり、対向部材の一例としての対向ロール2が配置されている。対向ロール2は、中間転写ベルトBの外表面に対して隙間H1を空けて配置されている。対向ロール2は、前後方向に延びる軸2aを有している。また、対向ロール2は、軸2aに支持された円筒状のロール本体2bを有している。ロール本体2bは、軸方向の長さが、中間転写ベルトB上にトナー像が保持される範囲よりも長く構成されている。対向ロール2が、支持ロール1の部分で中間転写ベルトBと対向する領域、すなわち、隙間H1の領域により、実施例1の隙間領域Q11が構成されている。実施例1の対向ロール2では、軸2aが回転可能に支持されている。実施例1の対向ロール2は、図示しない駆動源から駆動を受けて、隙間領域Q11において中間転写ベルトBと同じ方向に回転する。
前記対向ロール2と、支持ロール1とにより、実施例1の電界の発生部材3が構成される。なお、各感光体ドラムPy〜Pkと中間転写ベルトBが対向する領域により、各1次転写領域Q3y,Q3m,Q3c,Q3kが構成される。また、各1次転写領域Q3y〜Q3kの全体により、実施例1の第1転写部Q3が構成されている。よって、実施例1の支持ロール1と対向ロール2とは、中間転写ベルトBの回転方向に対して、第1転写部Q3よりも下流側且つ、第2転写部の一例としての2次転写領域Q4よりも上流側に配置されている。
【0038】
前記対向ロール2の回転方向に対して、隙間領域Q11の下流側には、対向部材の清掃部材の一例としての対向クリーナ11が配置されている。対向クリーナ11は、支持体の一例としてのケース12を有する。前記ケース12は対向ロール2に沿って前後方向に延びている。ケース12には、現像剤を収容可能な収容空間12aが形成されている。また、ケース12の対向ロール2側には、対向ロール2に沿って開放された開口部12bが形成されている。前記対向ロール2の回転方向に対して、開口部12bの下流端部12b1には、清掃部材の一例としてのブレード13が支持されている。ブレード13は、対向ロール2に沿って前後方向に延びる板状に形成されている。実施例1のブレード13は、対向ロール2の回転方向に対して下流から上流に向かって延びており、先端13aが、いわゆるカウンタの方向で対向ロール2の表面に接触している。
【0039】
図3は実施例1の転写装置に印加される電圧の説明図である。
図3において、実施例1では、1次転写ロールT1y,T1m,T1c,T1kに対して、1次転写用の電源回路Ecy,Ecm,Ecc,Eckが接続されている。第1電圧印加手段の一例としての1次転写用の電源回路Ecy〜Eckは、予め設定された直流電圧V1y,V1m,V1c,V1kのみを1次転写ロールT1y,T1m,T1c,T1kに印加する。すなわち、1次転写用の電源回路Ecy〜Eckは、周期的に極性が切り替わる交番電圧を印加しない。
また、実施例1では、2次転写器T2のコンタクトロールT2cに対して、2次転写用の電源回路Edが接続されている。
【0040】
第2電圧印加手段の一例としての2次転写用の電源回路Edは、予め設定された直流電圧V2のみをコンタクトロールT2cに印加する。すなわち、2次転写用の電源回路Edは、交番電圧を印加しない。ここで、第2転写部材の一例としての2次転写ロールT2bは、電気的に接地されて、いわゆるアースされている。よって、電圧が印加されると、コンタクトロールT2cに接触するバックアップロールT2aと、2次転写ロールT2bとの間には、トナーをシートSに転写させる電界が形成される。なお、実施例1では、コンタクトロールT2cに電源回路Edを接続し、2次転写ロールT2bをアースする構成を例示したが、これに限定されない。すなわち、コンタクトロールT2cをアースして、トナーを転写させる電界が生じるように2次転写ロールT2bに電源回路を接続する構成も可能である。
【0041】
また、電界の発生部材3において、実施例1では、支持ロール1に対して、電圧印加手段の一例としての対向用の電源回路Efが接続されている。対向用の電源回路Efは、周期的に極性が切り替わる交番電圧の一例としての正弦波状の交流電圧V3aを支持ロール1に印加する。実施例1では、対向用の電源回路Efは、交流電圧の電源回路Efaと、直流電圧の電源回路Efbとを有しており、交流電圧V3aを、直流電圧V3bに重畳して印加する。交流電圧V3aが重畳して印加されると、支持ロール1と、対向ロール2との間には交番電界の一例としての交流電界が形成される。なお、実施例1では、支持ロール1に対向用の電源回路Efを接続し、対向ロール2をアースする構成を例示したが、これに限定されない。すなわち、支持ロール1をアースして、対向ロール2に電源回路を接続する構成が可能である。また、支持ロール1に直流電圧の電源回路を接続し、対向ロール2に交流電圧の電源回路を接続することなども可能である。
【0042】
なお、実施例1では、一例として、現像剤は、正極性に帯電するキャリアと、負極性に帯電するトナーとが混合された2成分現像剤が使用される。よって、実施例1の感光体ドラムPy〜Pkには、負極性のトナー像が保持される。したがって、これに応じて、実施例1では、1次転写ロールT1y〜T1kには、予め設定された直流電圧の一例として、正極性の直流電圧V1y〜V1kが印加される。また、コンタクトロールT2cには、予め設定された直流電圧の一例として、負極性の直流電圧V2が印加される。さらに、支持ロール1には、予め設定された直流電圧の一例として、正極性の直流電圧V3bが印加される。
【0043】
また、電界の発生部材3において、実施例1では、隙間H1は100[μm]に設定される。ただし、隙間H1は、100[μm]に限定されない。すなわち、隙間H1は、20[μm]以上且つ200[μm]に好適に設定可能である。なお、隙間H1を20[μm]未満にすると、電界が作用した場合に、隙間領域Q11の間隔が狭くてトナーが動き難い。また、隙間H1を200[μm]より大きくすると、間隔が広すぎて電界が弱くなり易い。すなわち、中間転写ベルトB上のトナーに対して作用する力が弱くなる。
前記1次転写ロールT1y〜T1k、中間転写ベルトB、2次転写器T2、ベルトクリ
ーナCLB、電界の発生部材3、対向クリーナ11、電源回路Ecy〜Eck,Ed,Ef等により、感光体ドラムPy〜Pk表面の画像をシートSに転写する実施例1の転写装置T1+B+T2+CLBが構成されている。
【0044】
(実施例1の制御部の説明)
図3において、複写機Uの制御部Cは、外部との信号の入出力等を行う入出力インター
フェースI/Oを有する。また、制御部Cは、必要な処理を行うためのプログラムおよび
情報等が記憶されたROM:リードオンリーメモリを有する。また、制御部Cは、必要な
データを一時的に記憶するためのRAM:ランダムアクセスメモリを有する。また、制御
部Cは、ROM等に記憶されたプログラムに応じた処理を行うCPU:中央演算処理装置
を有する。したがって、実施例1の制御部Cは、小型の情報処理装置、いわゆるマイクロ
コンピュータにより構成されている。よって、制御部Cは、ROM等に記憶されたプログ
ラムを実行することにより種々の機能を実現することができる。
【0045】
実施例1の制御部Cは、1次転写電圧の制御手段C1と、2次転写電圧の制御手段C2と、対向電圧の制御手段C3とを有する。
第1電源制御手段の一例としての1次転写電圧の制御手段C1は、1次転写用の電源回路Ecy〜Eckを制御して、1次転写ロールT1y〜T1kに印加する1次転写電圧V1y〜V1kを制御する。
第2電源制御手段の一例としての2次転写電圧の制御手段C2は、2次転写用の電源回路Edを制御して、2次転写器T2に印加する2次転写電圧V2を制御する。
【0046】
電源制御手段の一例であり、電界の発生部材の電圧の制御手段の一例としての対向電圧の制御手段C3は、対向用の電源回路Efを制御して、電界の発生部材3に印加する電圧V3a+V3bを制御する。すなわち、対向電圧の制御手段C3は、電源回路Efを介して交流電圧V3aを重畳した電圧V3a+V3bを印加し、隙間領域Q11に交番電界の一例としての交流電界を形成する。実施例1では、対向電圧の制御手段C3は、トナー像を転写するシートSの種類に応じて、電圧V3a+V3bの印加、非印加を制御する。具体的には、実施例1では、表面の凹凸が大きい媒体の一例として「エンボス紙」が予め設定されている。また、電気抵抗のバラツキが大きい媒体の一例として「和紙」が予めが設定されている。さらに、表面の凹凸が小さく且つ電気抵抗のバラツキが小さい媒体の一例として、「普通紙」、「薄紙」、「厚紙」が予め設定されている。
【0047】
そして、実施例1の対向電圧の制御手段C3は、「エンボス紙」や「和紙」にトナー像を転写する場合には、対向用の電源回路Efを介して電圧V3a+V3bを印加する。すなわち、「エンボス紙」や「和紙」にトナー像を転写する場合には、隙間領域Q11に交流電界を形成する。また、実施例1の対向電圧の制御手段C3は、「普通紙」や「薄紙」、「厚紙」にトナー像を転写する場合には、電圧V3a+V3bを非印加、すなわち、印加しない。すなわち、「普通紙」や「薄紙」、「厚紙」にトナー像を転写する場合には、電圧V3a+V3bの印加を停止して、隙間領域Q11に交流電界を形成しない。なお、実施例1の複写機Uでは、給紙トレイTR1〜TR3に収容されたシートSの種類はユーザインターフェースU0を通じて予め入力される。よって、画像形成動作の一例としてのジョブが開始されると、使用する給紙トレイTR1〜TR3が選択される際に、予め入力されているシートSの種類を取得可能である。よって、実施例1の対向電圧の制御手段C3は、使用される給紙トレイTR1〜TR3に応じて、シートSの種類を特定し、交流電圧の印加、非印加を制御する。
【0048】
(転写装置の作用)
前記構成を備えた実施例1の複写機Uでは、コピースタートキーが入力されると、セットされた原稿Giから画像が読み取られる。そして、読み取った画像に応じて、トナー像の形成部材UY+GY〜UK+GKはそれぞれの色のトナー像を形成する。ここで、1次転写ロールT1y〜T1kには直流電圧V1y〜V1kが印加されており、感光体ドラムPy〜Pkと中間転写ベルトBが対向する1次転写領域Q3y〜Q3kには、直流電圧V1y〜V1kに応じた電界が形成される。よって、感光体ドラムPy〜Pk上のトナー像は前記電界の作用を受けて、中間転写ベルトB上に1次転写される。中間転写ベルトB上に転写されたトナー像は、中間転写ベルトBの回転に伴って、下流側の隙間領域Q11に搬送される。実施例1の隙間領域Q11には、トナー像が転写されるシートSの種類に応じて、交流電界が形成される。
【0049】
すなわち、表面の凹凸が大きい「エンボス紙」や、電気抵抗のバラツキが大きい「和紙」に対して、トナー像を転写する場合には、電圧V3a+V3bが、電界の発生部材3に印加される。よって、対向ロール2と支持ロール1との間、すなわち、対向ロール2と中間転写ベルトBとの間で交流電界が形成される。よって、中間転写ベルトB上のトナーが隙間領域Q11を通過する際にトナーは交流電界の作用を受ける。したがって、実施例1では、隙間領域Q11において、トナーが中間転写ベルトBに対して離間、接近する方向の力を受けて、振動する。ここで、隙間領域Q11では、直流電圧V3bも印加されている。よって、隙間領域Q11を通過したトナーは、中間転写ベルトBから離間しても最終的には中間転写ベルトB上に移動する。
【0050】
また、表面の凹凸が小さく且つ電気抵抗のバラツキが小さい「普通紙」や「薄紙」、「厚紙」にトナー像を転写する場合には、電圧V3a+V3bの印加が停止される。よって、隙間領域Q11を通過する際に、中間転写ベルトB上のトナー像には交流電界は作用しない。したがって、トナー像は中間転写ベルトB上に保持された状態で隙間領域Q11を通過する。
隙間領域Q11を通過したトナー像は2次転写領域Q2に搬送される。ここで、2次転写器T2には、直流電圧V2が印加される。すなわち、2次転写領域Q4には、直流電圧V2に応じた電界が生じる。すなわち、中間転写ベルトB上のトナー像に合わせて、シートSが2次転写領域Q4に到達すると、中間転写ベルトB上のトナー像には静電気力が作用して、シートS上にトナー像が2次転写される。
なお、トナー像が転写されたシートSは定着装置Fなどを通過して、排出トレイTH1に排出される。
【0051】
ここで、特許文献1,2では、中間転写ベルトB上のトナー像をシートSに転写させる際に、直流電圧に交流電圧を重畳して印加している。すなわち、特許文献1,2では、表面の凹凸の差が大きいシートSにトナー像を転写する場合に、直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加している。これにより、特許文献1,2では、シートS表面の凹部にもトナーを転写し易くして、表面の凹凸にならった濃度模様の発生を抑制している。なお、特許文献1,2によれば、交流電圧を重畳した場合、中間転写ベルトB上のトナーは、シートSの凹部が隙間となって振動する。トナーが凹部で振動すると、振動したトナーが、中間転写ベルトB上に付着したままのトナーにも衝突する。よって、付着したままのトナーが移動する。そして、これが繰り返され、付着力の低下したトナーが移動して、さらに付着したままのトナーに衝突する。よって、トナーと中間転写ベルトBとの付着力が低減される。したがって、直流電圧のみを印加する構成では付着力が大きいままでトナーが凹部には転写され難いが、交流電圧を重畳すると、トナーは凹部にも転写し易くなる。
【0052】
ここで、シートSにトナーを転写させる直流電圧は、シートSの抵抗を考慮して設定する必要がある。特に、2次転写領域Q4において必要とされる直流電圧は、近年の複写機Uの高速化に対する要求や、厚紙をシートSとして使用することへの要求に伴って高くなっている。よって、2次転写領域Q4では印加される電圧が高くなる傾向にある。
その上、2次転写領域Q4で重畳される交流電圧は、直流電圧に応じて設定する必要がある。例えば、特許文献2では、交流電圧の最大値と最小値の差、いわゆる、ピークトゥピーク電圧Vppは、直流電圧の4倍以上に設定される。また、特許文献1では、ピークトゥピーク電圧Vppは、直流電圧の6倍以上に設定される。よって、近年の高電圧化を考慮しつつ、特許文献2の設定を満たそうとすると、ピークトゥピーク電圧Vppは、10[kV]程度になってしまう場合もある。すなわち、直流電圧の設定値が大きくなることに伴い、交流電圧のピークトゥピーク電圧Vppは更に大きくなり易い。そして、このように高い電圧が印加される構成では、シートSにトナー像を転写する際に放電が発生し易い。そして、転写時に放電が生じると、画像の一部が欠ける画質欠陥、いわゆる、白点が生じる恐れがある。また、中間転写ベルトBなどの転写装置T1+B+T2+CLBの部材の劣化を促進させ、部材の寿命を低下させる恐れもある。
【0053】
これに対して、実施例1では、「エンボス紙」や「和紙」にトナー像を転写する場合に、2次転写領域Q4ではなく、2次転写領域Q4の上流側の隙間領域Q11で交流電界を形成している。そして、隙間領域Q11を通過するトナーに中間転写ベルトBから離れる方向の力を作用させて振動させたりして、中間転写ベルトBとトナーとの付着力を低下させている。このとき、実施例1では、シートSを介さずに交流電界を形成している。よって、実施例1では、2次転写領域Q4とは異なり、シートSの抵抗を考慮する必要がなく、シートSの転写に必要な直流電圧を基準として、交流電圧を設定する必要がない。よって、トナーの付着力の低減だけを目的として交流電圧V3aを設定し易く、交流電圧V3aのピークトゥピーク電圧が過大になることを抑制し易い。また、直流電圧V3bも、振動するトナーが対向ロール2に移動しない程度に設定すれば良く、過大になることを抑制し易い。したがって、隙間領域Q11に印加する電圧V3a+V3bの大きさは小さくし易い。
【0054】
また、中間転写ベルトB上のトナー像は、2次転写領域Q4に到達する前に付着力が低減されている。よって、2次転写領域Q4において、交流電圧を重畳しなくても、直流電圧V2のみでトナー像を転写させることが可能である。その上、印加する直流電圧V2の絶対値は、付着力が大きい場合に比べて、小さくし易い。よって、実施例1では、2次転写領域Q4においても、印加する電圧V2の大きさを小さくし易くなっている。よって、直流電圧V2の印加時にノイズなどで変動があってもピーク電圧も小さくなり易い。
したがって、実施例1では、2次転写領域Q4でトナーの付着力を低減させる交流電圧を印加する場合に比べて、放電の発生が低減され、転写装置T1+B+T2+CLBの部材の劣化を抑制し易くなっている。また、画像に白点が生じることも抑制されている。よって、実施例1では、画像に白点が生じたり、転写装置T1+B+T2+CLBの部材の劣化するなどの放電ディフェクトが生じ難くなっている。また、実施例1では、転写不良が抑制され易くなっている。
【0055】
また、一般に、特許文献1,2のように、2次転写領域Q4でトナーを振動させる構成では、抵抗にバラつきのある「和紙」が使用される場合、抵抗のバラつきに応じ、転写電界にムラが発生する。そして、転写電界が小さい場所では、トナーの付着力が大きいと、シートSにトナーが転写され難い場合がある。よって、トナー像が転写された場合に、転写電界のムラに応じて、画像に濃度ムラが生じる場合がある。したがって、「和紙」等ではトナーの付着力を予め低減させておくことが望ましい。
ここで、実施例1では、2次転写領域Q4の上流側の隙間領域Q11において、トナーの付着力が低減される。よって、トナー像は、トナーの付着力が低減した状態で、2次転写領域Q4に到達する。したがって、転写電界にムラが生じても、中間転写ベルトB上のトナー像がシートSに転写され易くなっている。すなわち、2次転写領域Q4に到達する前にトナーの付着力が低減されていない場合に比べて、実施例1では、抵抗のバラツキが大きい「和紙」に対しても、トナー像にムラのない状態で転写させ易くなっている。
【0056】
さらに、実施例1では、「普通紙」や「薄紙」、「厚紙」にトナー像を転写する場合には、電界の発生部材3に電圧V3a+V3bを非印加、すなわち、印加しない。そして、「エンボス紙」や「和紙」にトナー像を転写する場合については、電界の発生部材3に電圧V3a+V3bを印加している。ここで、「普通紙」や「薄紙」、「厚紙」などは、シートSの表面の凹凸の差が少ない。また、「普通紙」などは、抵抗にバラツキが少ない。よって、「普通紙」などにトナー像を転写する場合には、トナーの付着力を低減させずに直流電圧V2のみを印加する構成であっても、トナー像がシートSに十分に転写され易い。したがって、実施例1では、全ての種類のシートSに対して、トナーの付着力を低減する電圧を印加する場合に比べて、電力の消費量を減らしつつ、トナー像を転写させ易くなっている。すなわち、実施例1は、省エネルギーの構成となっている。
【0057】
なお、実施例1では、隙間領域Q11における隙間H1は100[μm]に設定されている。よって、交流電界が作用した場合に、トナーが振動し易くなっている。なお、トナーの粒径が一例として5[μm]とすると、20[μm]以上且つ200[μm]以下であれば、トナーは特に振動し易い。
また、実施例1の対向ロール2には、対向クリーナ11が配置されている。ここで、隙間領域Q11でトナーが振動すると、対向ロール2の表面にはトナーが付着する恐れがある。そして、対向ロール2にトナーが付着すると、後続のトナー像が隙間領域Q11を通過する際に、対向ロール2に付着していたトナーが混入して、後続のトナー像の画質を悪化させる恐れがある。これに対して、実施例1では、ジョブ時に対向ロール2が回転する。よって、対向ロール2にトナーが付着しても、対向ロール2が回転して対向クリーナ11の位置まで回転して表面が清掃ブレード13で清掃される。したがって、実施例1では、後続のトナー像の画質を悪化させることが抑制されている。
【0058】
(実験例)
次に、実施例1の効果を確かめる実験を行った。
実験では、富士ゼロックス社製の700 Digital Color Pressの画像形成装置Uを使用し、転写装置T1+B+T2+CLBを実験用に改造して使用した。
より詳細には下記の構成とした。
中間転写ベルトBは、2層構造とした。また、各層とも、ポリイミド樹脂にカーボンブラックを分散して作製した。外周面側の層は67[μm]とし、内周面側の層は33[μm]とした。また、中間転写ベルトBの体積抵抗率は12.5[lоgΩ・cm]であった。そして、内周面側の表面抵抗率は10.3[lоgΩ/□]であった。ここで、体積抵抗率及び表面抵抗率の測定は、R8340Aデジタル超高抵抗/微小電流計(株式会社アドバンテスト製)及びURプローブMCP−HTP12(ダイヤインスツルメンツ株式会社製)を用いて行った。体積抵抗率を測定する際に、中間転写ベルトBには、19.6[N]の荷重をかけた状態で、500[V]を10[s]印加させて行った。体積抵抗率及び表面抵抗率の測定環境は、室温22[℃]、湿度55[%]であった。
【0059】
2次転写器T2において、バックアップロールT2aは、直径20[mm]とした。また、バックアップロールT2aについて、体積抵抗値は6.5[lоg・Ω]で、硬度は65度(アスカーC)であった。そして、2次転写ロールT2bは、直径24[mm]とした。また、2次転写ロールT2bについて、体積抵抗値は7.0[lоg・Ω]で、硬度は75度(アスカーC)であった。
電界の発生部材3において、支持ロール1は、直径20[mm]とした。また、支持ロール1について、体積抵抗値は6.5[lоg・Ω]で、硬度は65度(アスカーC)であった。そして、対向ロール3は、直径24[mm]とした。また、対向ロール3について、体積抵抗値は7.0[lоg・Ω]で、硬度は75度(アスカーC)であった。なお、実験例の対向ロール2は、中間転写ベルトBに接近離間可能に支持させて、隙間H1を調整可能とした。
尚、この実験は、室温22[℃]、湿度55[%]で行った。
【0060】
(実験例1−1)
実験例1−1では、電界の発生部材3に印加する電圧について、直流電圧V3bは、0.6[kV]とした。また、交流電圧V3bは、Vpp=3.6[kV]とした。なお、Vppは、交流電圧のピークトゥピーク電圧である。また、電界の発生部材3における隙間H1は200[μm]とした。
また、2次転写器T2に印加する電圧について、交流電圧はVpp=0[kV]とした。すなわち、交流電圧は非印加とした。また、直流電圧はVdc=−4[kV]とした。なお、Vdcは、直流電圧の値である。
上記のように設定した電圧の下で、シートSの搬送速度を440[mm/s]として、エンボス紙(レザック66 250gsm)にベタ画像のトナー像を転写して行った。そして、エンボス紙に対する転写性の官能評価であるエンボスG:グレードの評価と、白点の発生の程度について評価を行った。なお、エンボスGは、G0が最良の転写性を示す。そして、Gの数が増加するほど悪化していることを示す。G2が許容レベルである。
【0061】
また、和紙(MOZLA社製、曼荼羅、純白、厚口A3)を用いて、和紙に対する転写性の評価を行った。和紙に対する評価は、Y,M,Cの3色それぞれの100%パッチを重ね合わせたいわゆる、プロセスブラックの300%パッチ画像を用いた。そして、プロセスブラック300%パッチにおいて、用紙上、最下層となるY色の濃度が1.8以上の場合には転写性が良好と評価した。また、プロセスブラック300%のパッチのY色の濃度が1.8未満の場合には転写性が不良と評価した。なお、プロセスブラックでは、Y,M,Cが順に重なって黒となる。よって、K色のトナーのみの黒に比べて、トナー像の厚みや量が多くなる。
さらに、A4の普通紙を10000枚印刷した後に、中間転写ベルトBの抵抗低下量を測定した。なお、中間転写ベルトBの抵抗が低下するほど劣化していることを示す。
【0062】
(実験例1−2)
実験例1−2では、電界の発生部材3における隙間H1を20[μm]とした。その他の条件、測定方法は実験例1−1と同様に行った。
(実験例1−3)
実験例1−3では、電界の発生部材3における隙間H1を10[μm]とした。なお、隙間H1の10[μm]は、隙間の特に望ましい数値範囲から外れている。その他の条件、測定方法は実験例1−1と同様に行った。
(実験例1−4)
実験例1−4では、電界の発生部材3における隙間H1を250[μm]とした。なお、隙間H1の250[μm]は、隙間の特に望ましい数値範囲から外れている。その他の条件、測定方法は実験例1−1と同様に行った。
【0063】
(比較例1)
比較例1では、電界の発生部材3に印加する電圧について、直流電圧V3bは、0[kV]とした。また、交流電圧V3bは、Vpp=0[kV]とした。すなわち、比較例1では、電界の発生部材3に電圧をオフとした。また、隙間H1を0[μm]とした。つまり、隙間をなくしている。よって、比較例1では、2次転写領域Q4の上流側では、トナーを振動させない構成とした。
また、2次転写器T2に印加する電圧について、交流電圧はVpp=0[kV]とした。また、直流電圧はVdc=−4[kV]とした。
すなわち、比較例1では、トナーを振動させずに、トナー像を直流電圧のみでシートSに転写する設定とした。
その他の条件、測定方法は実験例1−1と同様に行った。
【0064】
(比較例2)
比較例2では、2次転写器T2に印加する電圧について、直流電圧はVdc=−1.6[kV]とした。また、交流電圧はVpp=9.6[kV]とした。よって、2次転写器T2に印加される電圧の絶対値の最大値は、6.4[kV]となる。なお、2次転写電圧として、交流電圧を直流電圧に重畳する構成では、直流電圧のみでトナー像を転写する場合に比べて、直流電圧の大きさは40%程度に設定することが可能である。その他の条件、測定方法は比較例1と同様に行った。
(比較例3)
比較例3では、2次転写器T2に印加する電圧について、直流電圧はVdc=−1.6[kV]とした。また、交流電圧はVpp=6.0[kV]とした。よって、2次転写器T2に印加される電圧の絶対値の最大値は、4.6[kV]となる。その他の条件、測定方法は比較例1と同様に行った。
【0065】
(実験例1−1〜1−4と、比較例1〜3の実験結果)
図4は実験例1−1ないし1−4と比較例1ないし3の説明図であり、
図4Aは条件と実験結果の説明図、
図4BはエンボスGの評価基準の説明図である。
図4において、2次転写領域Q4で直流電圧のみが印加された実験例1−1〜1−4および比較例1では、白点が認められなかった。また、中間転写ベルトBの抵抗低下も認められなかった。これに対して、2次転写時に、直流電圧に交流電圧を重畳する比較例2、3では、白点の発生が認められた。また、中間転写ベルトBの抵抗低下量も認められた。よって、2次転写領域Q4において、交流電圧を重畳する構成では、放電に伴う問題が生じていることが確認された。
【0066】
また、実験例1−1〜1−4と、比較例1とでは、隙間領域Q11でトナーに交流電界を作用させるか否かの点で違いがある。ここで、交流電界を作用させない比較例1では、エンボスGの評価が、最低のG6であった。これに対して、実験例1−1〜1−4では、エンボスGの評価が、悪くてもG5.5であり、最低のG6よりも評価が良かった。よって、トナー像を直流電圧で転写させる場合に、隙間領域Q11で交流電界を作用させてトナーを振動させた方が、エンボス紙に対する転写性が向上することが確認された。
【0067】
また、隙間H1が200[μm]の実験例1−1では、エンボスGの評価はG2である。さらに、隙間H1が20[μm]の実験例1−2では、エンボスGの評価はG1である。また、隙間H1が10[μm]である実験例1−3では、エンボスGの評価はG5である。さらに、隙間H1が250[μm]である実験例1−4では、エンボスGの評価がG5.5である。よって、隙間H1の広さによってエンボスGの評価が変わっている。特に、実験例1−1と実験例1−2ではエンボスGの評価は許容レベルにある。しかし、実験例1−3と実験例1−4ではエンボスGの評価は許容レベルにない。
【0068】
これは、トナーの粒径が5[μm]程度とすると、隙間H1が10[μm]の実験例1−3では、トナーが交流電界を受けて振動するのに狭すぎるためと考えられる。逆に、隙間H1が250[μm]の実験例1−4では、電圧が作用した場合に間隔が広すぎて電界が弱くなり、トナーが振動する力を受け難いためと考えられる。
よって、隙間H1を、20[μm]以上且つ200[μm]以下に設定することが特に望ましいことも確認された。
【0069】
さらに、エンボスGの評価がG2やG1になる実験例1,2では、実験例3,4、比較例1〜3では解消されなかった和紙に対する転写性も改善されている。よって、2次転写領域Q4に到達する前に、トナーの付着力を低減すると、抵抗にバラツキのあるシートSに対しても良好な転写性を得られることが確認された。
なお、比較例2では、エンボスGの評価はG2である。よって、2次転写領域Q4で交流電界を重畳する構成でも、許容レベルの評価は得られる。しかしながら、比較例2では交流電圧のピークトゥピーク電圧が大きくなり易い。よって、比較例2では、エンボスGの評価が同じG2の実験例1−1に対して、白点が発生したり、中間転写ベルトBの抵抗低下量が大きくなるという問題が生じる。さらに、和紙の転写性も得られていない。
【0070】
(実験例2)
実験例2では、実験用の画像形成装置Uの構成を基に、2次転写領域Q4において、中間転写ベルトB上のトナーにかかる力の大きさをシミュレーションした。実験例2では、「普通紙」と、「和紙」と、「エンボス紙」とのそれぞれについて、2次転写電圧V2を印加して、中間転写ベルトB上のトナーに生じる静電気力をシミュレーションした。また、実験例2では、比較例1の構成のトナーの付着力と、実験例1−2の構成のトナーの付着力とを測定した。すなわち、交流電界を作用させない場合と作用させた場合の付着力を測定した。
【0071】
(実験例2の実験結果)
図5は実験例2の実験結果の説明図であり、
図5Aは2次転写領域にシートを挟んだ場合の2次転写電圧と静電気力の関係の説明図、
図5Bは交流電界の作用の有無とトナーの付着力の説明図、
図5Cは
図5Aと
図5Bとをまとめた説明図である。なお、
図5において横軸に印加する2次転写電圧[kV]をとった。また、縦軸に中間転写ベルトB上に作用する力[nN]をとった。
図5Aにおいて、普通紙S1を2次転写領域Q4に配置した場合、中間転写ベルトBと2次転写ロールT2bとの間隔は5[μm]となった。ここで、約3[kV]の2次転写電圧V2を印加した場合、中間転写ベルトB上のトナーには約30[nN]の静電気力が生じることが分かった。そして、印加する2次転写電圧V2を増加させると、静電気力が増加する傾向が認められた。しかし、約5[kV]の2次転写電圧V2を印加すると、約53[nN]の静電気力を示し、その後は、二次転写電圧V2を増加させても、約53[nN]よりも低下した約50[nN]の静電気力となることが分かった。
【0072】
また、和紙S2を2次転写領域Q4に配置した場合、中間転写ベルトBと2次転写ロールT2bとの間隔は10[μm]となった。ここで、和紙は抵抗のバラツキが大きい。よって、和紙S2については、高抵抗部S2aと低抵抗部S2bとについて、それぞれ別々にトナーに生じる静電気力をシミュレーションした。高抵抗部S2aについて、約2[kV]の2次転写電圧V2を印加した場合、中間転写ベルトB上のトナーには約14[nN]の静電気力が生じることが分かった。そして、印加する2次転写電圧V2を増加させると、静電気力が増加する傾向を示した。しかし、2次転写電圧V2が約3[kV]〜約5[kV]の範囲では、2次転写電圧を増加させても静電気力は約28[nN]となることが分かった。また、2次転写電圧V2を増加させて約6[kV]にすると、静電気力の減少が確認された。一方、低抵抗部S2bについては、電圧と静電気力の関係が高抵抗部S2aと同様の傾向を示すことが分かった。ただし、低抵抗部S2bでは、全体的に、低電圧側で、高抵抗部の電圧と同様の静電気力となることが分かった。
よって、2次転写電圧V2が同じでも、低抵抗部と高抵抗部とでは静電気力にムラが生じ易いことが確認された。
【0073】
さらに、エンボス紙S3を2次転写領域Q4に配置した場合、中間転写ベルトBと2次転写ロールT2bとの間隔は70[μm]となった。エンボス紙S3では、2次転写電圧V2が約1.8[kV]〜約3.2[kV]の範囲では、2次転写電圧V2の増加に伴って静電気力が増加する傾向にあった。しかし、2次転写電圧V2が約3.2[kV]を越えると、静電気力の変化は見られなかった。なお、エンボス紙の場合は、生じる静電気力が全体的に小さく、10[nN]未満であった。
【0074】
図5Bにおいて、交流電界を作用させない場合、トナーの付着力F1は点線で示す約28[nN]と観測された。また、交流電界を作用させてトナーを振動させた場合、トナーの付着力F2は実線で示す約4[nN]と観測された。よって、交流電界を作用させた場合に、トナーの付着力が低減されることが確認された。
ここで、トナーをシートSに転写させる場合、トナーの付着力よりも大きい静電気力をトナーに作用させる必要がある。すなわち、
図5Cにおいて、トナーに交流電界を作用させない場合の付着力F1では、普通紙S1や、和紙S2の場合しか、トナーの付着力を上回らない。しかも、和紙S2では、高抵抗部S2aで上回ると低抵抗部S2bで下回り、高抵抗部S2aで下回ると低抵抗部S2bが上回る傾向にある。よって、和紙S2では転写ムラが生じ易いこともわかる。また、エンボス紙S3では、静電気力がトナーの付着力を下回っており、転写が不能である。
【0075】
これに対して、トナーの付着力が低減された付着力F2では、エンボス紙の静電気力でもトナーの付着力を上回る。また、和紙S2においても、高抵抗部S2aと低抵抗部S2bとのいずれにおいても、静電気力がトナーの付着力を上回り易くなっている。よって、トナーに交番電界を作用させて付着力が低減される実施例1では、エンボス紙S3や、和紙S2でも、トナーを転写させ易くなっていることが確認された。なお、普通紙S1は、トナーの付着力を低減させなくても転写可能であることも確認された。