(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、混信を避けるために赤外線センサを備えることはコスト増となる。そこで、混信を避けるために、送信波の送信間隔をランダムに変更することも考えられる。送信波を送信してから反射波を受信するまでの時間差は、送信間隔の変動の影響を受けない。これに対して、自装置の超音波センサが送信波を送信する時間をランダムに変更すると、他装置の超音波センサからの送信波を受信するまでの時間差はランダムに変動する。他装置の超音波センサが送信波を送信するタイミングは、自装置の超音波センサが送信波を送信する送信間隔の影響を受けないからである。したがって、送信波の送信間隔をランダムに変更すると、混信を見分けることができる。
【0008】
同機種の障害物検出装置同士での混信であれば、他装置の障害物検出装置が備える超音波センサも、同様に、送信間隔をランダムに変更する。自装置の超音波センサが送信間隔を変更しても、他装置の超音波センサも送信間隔を変更し、変更後も送信間隔が一致してしまうと、混信を見分けることができない。
【0009】
送信間隔が一致する可能性を低くするためには、できるだけ多くの送信間隔を用意する必要がある。しかし、多数の送信間隔を用意すると、用意する送信間隔が少ない場合に比較して、最も長い送信間隔が長くなる。最も長い送信間隔は、装置の最小処理周期×用意する送信間隔の数よりも短くすることができないからである。そして、その多数の送信間隔からランダムに送信間隔を選択すると、送受信周期が長くなってしまうという問題がある。
【0010】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、混信により障害物を誤判定してしまうことを抑制しつつ、コストアップも抑制し、かつ、送受信周期が長くなってしまうことも抑制することができる障害物検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は独立請求項に記載の特徴の組み合わせにより達成され、また、下位請求項は、発明の更なる有利な具体例を規定する。特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0012】
上記目的を達成するための本発明は、車両に搭載され、超音波である送信波を繰り返し送信し、かつ、外部から入力される超音波を受信する送受信部(11)と、送受信部から送信波を送信させる送信制御部(14)と、送受信部が受信する超音波である受信波の信号レベルを検出する受信回路部(13)と、送受信部が送信波を送信した時点と、受信回路部が検出する受信波の信号レベルから定まる受信波受信時点との時間差に基づいて、送信波を反射した物体までの距離を逐次算出する距離算出部(15)と、距離算出部が算出した物体までの距離を記憶する記憶部(22)と、記憶部に記憶された物体までの距離と、今回、距離算出部が算出した物体までの距離とに基づいて、物体が障害物であるか否かを判定する障害物判定部(26)と、送信制御部が送受信部から送信波を送信させる前に、受信回路部が検出する受信波の信号レベルを観測する受信レベル観測部(16)とを備え、障害物判定部は、受信レベル観測部が観測した受信波の信号レベルが所定閾値を超えたことに基づいて、所定期間の間、物体が障害物であるか否かの判定に用いる物体までの距離のデータ数である判定データ数を、受信波の信号レベルが所定閾値を超えていない場合の判定データ数よりも多い増加判定数とす
る障害物検出装置
であって、送受信部、送信制御部、受信回路部を備えた超音波センサ(10)を複数備え、受信レベル観測部は、複数の超音波センサの受信回路部が検出する受信波の信号レベルをそれぞれ観測し、障害物判定部は、所定閾値を超えた信号レベルを検出した超音波センサ、および、この超音波センサに隣接する超音波センサに対する判定データ数を、所定期間の間、増加判定数とする。
【0013】
この発明によれば、送信制御部が送受信部から送信波を送信させる前に、受信回路部が検出する受信波の信号レベルを観測する。送信波の送信前であることから、受信波の信号レベルが高い場合、他装置に備えられている送受信部が送信した送信波を受信している可能性が高い。この時点では、送信波の送信前であるため、他装置の送受信部が送信した送信波を受信しても、距離算出部が算出する物体までの距離に影響はない。しかし、この後、他装置の送受信部が送信波を送信するタイミングがずれていって、自装置の送受信部が送信波を送信した後に、他装置の送受信部が送信波を送信するようになる可能性も十分にある。
【0014】
そこで、本発明では、送信波の送信前に受信レベル観測部が観測した受信波の信号レベルが所定閾値を超えたことに基づいて、所定期間の間、判定データ数を、受信波の信号レベルが所定閾値を超えていない場合の判定データ数よりも多い増加判定数とする。判定データ数が多くなるので、混信が生じていても障害物であると判定されにくくなる。よって、混信により障害物を誤判定してしまうことが抑制される。
【0015】
なお、自装置の送受信部が送信波を送信した後に、他装置の送受信部が送信波を送信するようになった後では、受信回路部が検出した受信波が、自装置の送受信部が送信した送信波から生じた反射波であるか、他装置の送受信部が送信した送信波であるかを区別することは困難である。しかし、本発明では、自装置の送受信部から送信波を送信させる前に、受信波の信号レベルを観測するので、他装置の送受信部が送信した送信波を自装置の送受信部が受信する可能性があることを精度よく判定できる。そのため、不必要なときにまで、判定データ数を増加させてしまうことを抑制できる。
【0016】
また、判定データ数を増加させるという制御により誤判定を抑制していることから、赤外線センサなどのハードウェアを追加する必要がない。したがって、コストアップも抑制できる。
【0017】
また、多数の送信間隔から送信間隔を選択する必要もないので、送受信周期が長くなってしまうことも抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示す運転支援システム1は、車両に搭載され、超音波センサ10、ECU20、ブザー30を備えている。なお、超音波センサ10とECU20により、障害物検出装置が構成される。
【0020】
(超音波センサ10の構成)
超音波センサ10は、車両の前端面、後端面、側面のいずれかに備えられる。超音波センサ10は、送受信部11、送信回路部12、受信回路部13、送信制御部14、距離算出部15、受信レベル観測部16、通信部17を備える。
【0021】
送受信部11は、超音波である送信波を発生させ、その送信波を送信するとともに、外部から入ってくる超音波、すなわち受信波を受信する。そして、受信波の大きさを示す信号を受信回路部13に出力する。
【0022】
送信回路部12は、送信制御部14から送信指示信号が入力された場合にパルス信号を生成し、そのパルス信号を送受信部11に出力する。送受信部11は、このパルス信号により駆動させられて、パルス状の送信波を送信する。
【0023】
受信回路部13は、送受信部11から入力された受信波の大きさを示す信号に対して、増幅およびA/D変換を行い、増幅およびA/D変換後の信号(以下、受信信号)を、距離算出部15に出力する。
【0024】
送信制御部14は、ECU20から送信された送信指示信号を通信部17から取得した場合に、送信指示信号を送信回路部12に出力する。また、送信指示信号を出力したことを距離算出部15に通知する。
【0025】
距離算出部15は、送受信部11が送信波を送信してから、物体検出閾値以上の受信波を受信するまでの時間差から、物体までの距離を算出する。送受信部11が送信波を送信する時点は、送信制御部14から、送信指示信号を出力したことの通知を受けた時点とする。物体検出閾値以上の受信波を受信した時点は、送信波を送信した時点の所定時間以降において、最初に、受信信号が物体検出閾値を超えた時点とする。所定時間以降としているのは、送信波を送信した残響が存在している期間を除くためである。この時間差に音速を乗じた値の1/2が物体までの距離である。距離算出部15が算出した物体までの距離を、以下、検知距離という。
【0026】
受信レベル観測部16は、送信制御部14が送受信部11から送信波を送信させる前に、受信信号レベル、すなわち、受信信号の大きさを観測する。そして、受信信号レベルが物体検出閾値以上であって、かつ、受信信号レベルが物体検出閾値を超えている時間が、送信波の送信時間に近似している場合に、混信波を検出したとする。混信波とは、自身の運転支援システム1が備えている超音波センサ10以外の超音波センサから送信された送信波である。混信波を検出したことは、通信部17を介してECU20に通知する。
【0027】
通信部17は、距離算出部15が算出した検知距離や、受信レベル観測部16が出力した、物体検出閾値以上の受信波を検出したことを示す通知を、LINバス50を介して、ECU20の通信部21に送信する。また、通信部17は、ECU20の通信部21が送信した送信指示信号を受信して、その送信指示信号を送信制御部14に出力する。
【0028】
(ECU20の構成)
ECU20は、通信部21、記憶部22、距離取得部23、車速取得部24、送信タイミング制御部25、障害物判定部26を備える。このECU20は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェースなどを備えた公知の回路構成である。ECU20は、ROMに記憶されているプログラムをCPUが実行することで、距離取得部23、車速取得部24、送信タイミング制御部25、障害物判定部26として機能する。なお、ECU20が実行する機能の一部または全部を、一つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。
【0029】
通信部21は、通信インターフェースであり、LINバス50を介して、超音波センサ10と通信する。また、ECU20は、車内LAN60を介して、ブザー30に吹鳴信号を出力する。記憶部22は、書き込み可能な記憶部であり、距離取得部23が取得した検知距離が記憶される。距離取得部23は、通信部21およびLINバス50を介して、超音波センサ10の距離算出部15が算出した検知距離を取得し、取得した検知距離を記憶部22に記憶する。
【0030】
車速取得部24は、車内LAN60を介して車速を取得する。送信タイミング制御部25は、超音波センサ10から送信波を送信させるタイミングを制御するために、送信指示信号を超音波センサ10に出力する。障害物判定部26は、超音波センサ10から取得した今回の検知距離、および、記憶部22に記憶されている検知距離に基づいて、検知距離に障害物が存在するか否かを判定する。ブザー30は、障害物判定部26から吹鳴信号が入力された場合に吹鳴する。
【0031】
距離取得部23、車速取得部24、送信タイミング制御部25、障害物判定部26の処理は、後に
図3、4を用いてさらに説明する。
【0032】
(超音波センサ10が行う処理)
次に、
図2を用いて、超音波センサ10が実行する処理の流れを説明する。超音波センサ10は、たとえば、通電時、この
図2に示す処理を繰り返し実行する。
図2において、ステップS2、S10、S12は送信制御部14が行い、ステップS4〜S8は受信レベル観測部16が行い、ステップS14は受信回路部13が行い、ステップS16、S18は距離算出部15が行う。
【0033】
ステップS2では、ECU20の送信タイミング制御部25が出力した送信指示信号を、通信部17を介して取得したか否かを判断する。この判断がNOであればステップS2を繰り返し、YESであればステップS4に進む。
【0034】
ステップS4では、受信信号レベルを観測する。ステップS6では、予め設定されている観測期間が経過したか否かを判断する。この判断がNOであればステップS4に戻り、受信信号レベルの観測を継続する。ステップS6の判断がYESであればステップS8に進む。
【0035】
ステップS8では、観測結果をECU20に通知する。観測結果とは、混信波を検出したか否かである。混信波を検出したかどうかは、前述したように、受信信号レベルが物体検出閾値を超えている時間が、送信波の送信時間に近似しているか否かにより決定する。送信波の送信時間をT1時間とすると、たとえば、受信信号レベルが物体検出閾値を超えている時間が、T1時間を基準として定まる一定範囲内である場合に、受信信号レベルが物体検出閾値を超えている時間が、送信波の送信時間に近似しているとする。なお、物体検出閾値は請求項の所定閾値に相当する。
【0036】
ステップS10では、送受信部11から送信波を送信させる。すなわち、送信指示信号を送信回路部12に出力する。送信指示信号が入力されると、送信回路部12はパルス信号を生成し、そのパルス信号を送受信部11に出力する。これにより、パルス状の送信波が送受信部11から送信される。ステップS12では、送信指示信号を出力したことを距離算出部15に通知する。
【0037】
ステップS14では、予め設定された送受信期間の間、受信信号を検出する。この送受信期間の開始時点は送信波を送信した時点である。ステップS16では、送信波を送信した時点と、受信信号の信号レベルが物体検知閾値を超えた時点との時間差を算出し、この時間差に音速を乗じた値の1/2を検知距離として算出する。なお、受信信号レベルが物体検知閾値を超えた時点が受信波受信時点である。ステップS18では、ステップS16で算出した検知距離をECU20に出力する。なお、ステップS18において、ステップS8の観測結果の通知を同時に実施してもよい。すなわち、1つの通信フレーム内に観測結果と検知距離とが格納されていてもよい。こうすることで通信時間を短縮できる。
【0038】
(ECU20が行う処理)
次に、
図3、
図4を用いて、ECU20の距離取得部23、車速取得部24、送信タイミング制御部25、障害物判定部26が実行する処理を説明する。
図3に示す処理は、所定の障害物検出条件が成立している場合に繰り返し実行する。障害物検出条件は、たとえば、車速が一定車速未満であるという条件である。一定車速は、たとえば、30km/hである。
【0039】
図3において、ステップS20、S22は送信タイミング制御部25が実行する。ステップS20では、送信タイミングになったか否かを判断する。送信タイミングは後述するステップS40で決定している。このステップS20の判断がNOであればステップS20を繰り返す。一方、ステップS20の判断がYESであれば、ステップS22に進む。
【0040】
ステップS22では、送信指示信号を、通信部21、LINバス50を介して、超音波センサ10に出力する。
【0041】
ステップS24〜S32は障害物判定部26が実行する。ステップS24では、超音波センサ10から観測結果を取得する。ステップS26では、超音波センサ10が混信波を検出したか否かを判断する。この判断は、超音波センサ10から送信された観測結果から判断する。
【0042】
混信波を検出したと判断した場合にはステップS26の判断をYESとしてステップS28に進む。混信波を検出していないと判断した場合には、ステップS26の判断をNOとしてステップS30に進む。
【0043】
ステップS28では、観測フラグをONとし、かつ、ON時間をリセットする。ON時間をリセットすると、ON時間は予め設定されている所定期間になる。この所定期間は、大きく設定しすぎると、障害物と判定する時点を遅らせた状態が継続してしまうため、たとえば数秒〜20秒の間であり、超音波センサ10から送信波を送信させるタイミングの制御方法や想定する混信源によっても異なる。
【0044】
一方、ステップS26の判断がNOである場合に実行するステップS30では、観測フラグがONである場合に、観測フラグのON時間を、このステップS30を実行する周期分だけ減算する。観測フラグがOFFであれば、このステップS30では何も実行せず、ステップS32に進む。
【0045】
ステップS32では、観測フラグのON、OFFを決定する。このステップS32を実行する時点で、観測フラグがONであり、ON時間が0よりも大きい値であれば観測フラグをONのままとする。一方、ON時間が0以下になっていれば、観測フラグをOFFにする。また、このステップS32を実行する時点で観測フラグがOFFになっていれば、OFFのままとする。
【0046】
ステップS28またはステップS32を実行した後は、ステップS34に進む。ステップS34では、超音波センサ10から検知距離を取得する。そして、取得した検知距離を記憶部22に記憶する。このステップS34は、距離取得部23が行う。なお、ステップS34はステップ24と同時に実施してもよい。すなわち、1つの通信フレーム内に観測結果と検知距離とが格納されていてもよい。こうすることで通信時間を短縮できる。
【0047】
続くステップS36では、障害物判定数を決定する。このステップS36の処理は
図4に詳しく示す。
図4において、ステップS56は車速取得部24が行う。その他の処理は、障害物判定部26が行う。
【0048】
ステップS50では、観測フラグがONになっているか否かを判断する。この判断がNOであればステップS52に進む。ステップS52では、超音波センサ10が検出した物体、すなわち、超音波センサ10が出力した検知距離に存在する物体が、障害物であるか否かの判定に用いる検知距離のデータ数である判定データ数を、予め設定されている通常時判定数に決定する。
【0049】
ステップS50の判断がYESであればステップS54に進む。ステップS54では、検知距離が、予め設定された近距離閾値よりも短いか否かを判断する。この判断がNOである場合にも、ステップS52に進み、判定データ数を通常時判定数とする。ステップS54の判断がYESである場合にはステップS56に進む。
【0050】
ステップS56では、車速を取得する。続くステップS58では、ステップS56で取得した車速に基づいて、車両が走行中であるか否かを判断する。車両が走行中であると判断した場合(S58:YES)には、ステップS52に進み、判定データ数を通常時判定数とする。車両が走行中でないと判断した場合(S58:YES)には、ステップS60に進む。
【0051】
ステップS60では、判定データ数を通常判定数よりも多い数に設定された増加判定数に決定する。ステップS60またはS52を実行して判定データ数を決定したら
図4の処理を終了する。
図4の処理を終了したら、
図3のステップS38を実行する。
【0052】
ステップS38では、今回のステップS34で取得した検知距離、および記憶部22に記憶されている検知距離、すなわち、過去の検知距離を用いて、検知距離に存在する物体が障害物であるか否かを判定する。検知距離に存在する物体が障害物であるか否かは、具体的には、検知距離と、検知距離閾値と、判定データ数とから定まる障害物判定条件が成立したか否かを判定する。たとえば、連続して検知距離が検知距離閾値以下となっている回数が、判定データ数を超えたことを障害物判定条件とする。障害物判定条件が成立した場合には、障害物を検出したことを車両の運転者に知らせるために、ブザー30を吹鳴させる。
【0053】
なお、検知距離閾値が複数設定されており、検知距離閾値ごとに、判定データ数が設定されていてもよい。たとえば、相対的に短い検知距離閾値に対しては、相対的に小さい判定データ数が設定されていてもよい。これにより、近距離に障害物が存在する場合には判定を迅速に行うことができる。検知距離閾値が複数設定されており、検知距離閾値ごとに判定データ数が設定されている場合、通常時判定数、増加判定数は、検知距離閾値ごとに決定することになる。
【0054】
続くステップS40では、次回の送信タイミングを決定する。次回の送信タイミングは、送受信期間が経過してから、待ち時間を経過した時点である。この待ち時間は複数用意されており、複数の待ち時間から、順番に異なる待ち時間を用いて、あるいは、ランダムに選択した待ち時間を用いて、次回の送信タイミングを決定する。
【0055】
なお、複数の待ち時間は、最も長い待ち時間を選択しても、送信タイミングがそれほど長くならない程度になっている。たとえば、最も長い待ち時間を15msとする。最も長い待ち時間を15msとし、最小処理周期が5msとすれば、用意できる待ち時間の数は最大で3種類である。したがって、本実施形態では、用意する待ち時間の数を、数種類、多くても5種類程度とする。
【0056】
(実施形態の効果)
以上、説明した本実施形態によれば、超音波センサ10の受信レベル観測部16は、送信制御部14が送受信部11から送信波を送信させる前に、受信回路部13が検出する受信信号レベルを観測する(S4、S6)。
【0057】
自身の超音波センサ10が送信波を送信する前であることから、その送信波が物体で反射して生じた反射波を受信する可能性はない。したがって、受信信号レベルが高い場合、他装置に備えられている超音波センサ10が送信した送信波を受信している可能性が高い。この時点では、送信波の送信前であるため、他装置に備えられている超音波センサ10が送信した送信波を受信しても、距離算出部15が算出する検知距離に影響はない。しかし、この後、他装置の超音波センサ10が送信波を送信するタイミングがずれていって、自装置の送受信部11が送信波を送信した後に、他装置の超音波センサ10が送信波を送信するようになる可能性も十分にある。
【0058】
そこで、本実施形態では、送信波の送信前に受信レベル観測部16が観測した受信信号レベルが物体検出閾値を超えたことに基づいて、観測フラグをONにし、ON時間をリセットする。ON時間は所定期間の間、継続する。この観測フラグがONであり、かつ、ステップS54の判断がYES、ステップS58の判断がNOであれば、判定データ数を、通常時判定数よりも多い増加判定数とする(S60)。判定データ数が多くなるので、混信が生じていても障害物であると判定されにくくなる。すなわち、障害物と判定すべき物体が存在しないのに、混信により、障害物が存在すると誤判定してしまうことが抑制される。
【0059】
なお、自装置の超音波センサ10が送信波を送信した後に、他装置の超音波センサ10が送信波を送信するようになった後では、受信波が、自装置が送信した送信波から生じた反射波であるか、他装置が送信した送信波であるかを区別することは困難である。しかし、本実施形態では、自装置の送受信部11から送信波を送信させる前に受信信号レベルを観測するので、他装置の超音波センサ10が送信した送信波を自装置の超音波センサ10が受信する可能性があることを精度よく判定できる。そのため、不必要なときにまで、判定データ数を増加させてしまうことを抑制できる。
【0060】
また、本実施形態では、誤判定を抑制するために、赤外線センサなどのハードウェアを追加していないので、コストアップも抑制できる。
【0061】
また、本実施形態では、待ち時間を複数用意して、送信間隔を変更するようにしているが、複数の待ち時間は、最も長い待ち時間を選択しても、送信タイミングがそれほど長くならないようになっている。すなわち、送信タイミングから次の送信タイミングまでの期間である送受信周期が長くなってしまうことも抑制できる。
【0062】
また、本実施形態では、観測フラグがONであっても(S50:YES)、検知距離が近距離閾値以下であれば(S54:NO)、判定データ数を通常時判定数とする。すなわち、送信波の送信前に混信波を検出しており、その検出時点からON時間が経過していなくても、検知距離が近距離閾値以下であれば、判定データ数を増加させない。これにより、近距離に物体が存在している場合に、障害物と判定する時点が遅れてしまうことを抑制できる。
【0063】
さらに、本実施形態では、観測フラグがONであっても(S50:YES)、走行中であれば(S58:YES)、判定データ数を通常時判定数とする。そのため、車両が静止しているときと比較して障害物判定を迅速に行う必要がある走行中において、障害物と判定する時点が遅れてしまうことを抑制できる。走行中は混信源との相対的な位置関係が時々刻々と変化するため、静止時と比較すると混信による障害物の誤判定のリスクが低いと考えられるため、障害物判定を迅速に行うことを優先させるのである。
【0064】
また、本実施形態では、混信波を検出したか否かの判断において、受信信号レベルが物体検出閾値を超えたか否かに加えて、受信信号レベルが物体検出閾値を超えている時間が、送信波の送信時間に近似しているか否かも判断する(S8)。これにより、混信ではない原因で超音波センサ10が受信した超音波に基づいて、混信のための処理である判定データ数を増加させるという処理を行なってしまうことを抑制できる。すなわち、混信ではないのに、判定データ数を増加させてしまうことを抑制できる。
【0065】
また、本実施形態では、次回の送信タイミングを逐次変更している。これにより、混信により他装置が送信した送信波を受信したとしても、自装置の送受信部11が送信波を送信した時点と、混信により他装置が送信した送信波を受信した時点との時間差が変動する可能性が高くなる。特に、増加判定数としている場合には、データ数が多くなっている分、増加判定数の間に時間差が変動する可能性が高くなる。よって、混信により障害物を誤判定してしまうことを、より抑制できる。
【0066】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態を説明する。この第2実施形態以下の説明において、それまでに使用した符号と同一番号の符号を有する要素は、特に言及する場合を除き、それ以前の実施形態における同一符号の要素と同一である。また、構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分については先に説明した実施形態を適用できる。
【0067】
第2実施形態では、運転支援システム100は、
図5に示すように、4つの超音波センサ10A〜10Dを備える。これら4つの超音波センサ10A〜10Dの構成は、いずれも、第1実施形態の超音波センサ10と同じである。
【0068】
4つの超音波センサ10A〜10Dは、
図6に示すように、いずれも、車両Cの一方の端面、すなわち、前端面あるいは後端面に備えられる。ここでは、超音波センサ10A、10Bは、車両Cの端面の直線部分に配置され、超音波センサ10C、10Dは、それぞれ、車両Cのコーナー部に配置されているとする。
【0069】
なお、4つの超音波センサ10が車両Cの両端面にそれぞれ備えられていてもよい。4つの超音波センサ10が車両Cの両端面にそれぞれ備えられている場合、一方の端面に備えられている4つの超音波センサ10に対する制御と、他方の端面に備えられている4つの超音波センサ10に対する制御は同じである。したがって、説明の便宜上、本実施形態では、4つの超音波センサ10が車両Cの一方の端面に備えられているとする。
【0070】
第2実施形態でも、ECU20は、
図3の処理を実行する。ただし、以下に説明する部分は、第1実施形態と異なる処理を行う。ステップS20では、送信タイミングとなったか否かを判断する。4つの超音波センサ10A〜10Dを備えている第2実施形態では、それら4つの超音波センサ10A〜10Dを順次用いて超音波の送受信を行う。
図7に、第2実施形態における1回分の送受信周期の構成を例示している。
図7において、T
A、T
B、T
C、T
Dは、それぞれ、超音波センサ10A〜10Dの送受信期間を示している。
【0071】
各送受信期間T
A、T
B、T
C、T
Dは、観測期間T
A1、T
B1、T
C1、T
D1を期間の最初に含んでおり、その観測期間T
A1、T
B1、T
C1、T
D1の経過後に送信波を送信する。したがって、各観測期間T
A1、T
B1、T
C1、T
D1は、どの超音波センサ10A〜10Dも、送信波を送信していない。また、Δtは待ち時間である。なお、
図7に例示した送受信周期の構成とは異なり、超音波センサ10C、10Dは同時に超音波を送受信するようにしてもよい。
【0072】
第2実施形態におけるステップS20では、
図7に例示したような予め設定された送受信周期に従い、各超音波センサ10A〜10Dの送信タイミングを判断する。
【0073】
また、ステップS28では混信波を検出した超音波センサ10に加えて、その超音波センサ10に隣接する超音波センサ10についても、観測フラグをONとし、かつ、ON時間をリセットする。たとえば、超音波センサ10Aが混信波を検出した場合、超音波センサ10Aに加えて、超音波センサ10C、10Bについても、観測フラグをONとし、かつ、ON時間をリセットする。その他のステップの処理は第1実施形態と同じである。
【0074】
(第2実施形態の効果)
この第2実施形態では、混信波を検出した超音波センサ10に加えて、その超音波センサ10に隣接する超音波センサ10についても、観測フラグをONとし、かつ、ON時間をリセットする。これにより、混信波を検出した超音波センサ10に加えて、その超音波センサ10に隣接する超音波センサ10についても、ON時間の間、判定データ数が増加判定数となる。
【0075】
混信波を検出した超音波センサ10に隣接する超音波センサ10も、今後、混信が生じる可能性が高い。したがって、第2実施形態のようにすれば、混信波を検出した超音波センサ10に隣接する超音波センサ10についても、障害物が存在すると誤判定してしまうことが抑制される。
【0076】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の変形例も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【0077】
<変形例1>
たとえば、第2実施形態のように、車両Cの一方の端面に複数の超音波センサ10A〜10Dを備えている場合において、それら複数の超音波センサ10A〜10Dの少なくとも一つが混信波を検出した場合、以下のようにしてもよい。すなわち、それら複数の超音波センサ10A〜10Dの全部に対して、観測フラグをONとし、かつ、ON時間をリセットしてもよい。これにより、全部の超音波センサ10A〜10Dに対する判定データ数が、ON時間の間、増加判定数となる。
【0078】
<変形例2>
前述の実施形態では、受信信号レベルが物体検出閾値以上であって、かつ、受信信号レベルが物体検出閾値を超えている時間が、送信波の送信時間に近似している場合に、混信波を検出したとしていた。しかし、受信信号レベルが物体検出閾値を超えている期間を条件とせず、受信信号レベルが物体検出閾値以上であれば、混信波を検出したとしてもよい。
【0079】
<変形例3>
障害物を検出したと判定した場合に、ブザー30を吹鳴させることに代えて、あるいは、ブザー30を吹鳴させることに加えて、車両を減速あるいは停止させる制御を行ってもよい。
【0080】
<変形例4>
送信波を送信する超音波センサ10に隣接する超音波センサ10が、超音波の受信のみを行なって検知距離を算出するようにしてもよい。たとえば、
図6の配置において、超音波センサ10Aが送信波を送信した後、超音波センサ10Aに加えて、超音波センサ10C、10Bが、超音波センサ10Aと同じ期間、受信波を受信して検知距離を算出する。この場合、送信波を送信する超音波センサに加えて、受信のみを行う超音波センサ10も、観測期間の間、受信信号を観測して、観測結果をECU20に通知するようにしてもよい。
【0081】
<変形例5、6>
図4のステップS54を省略してもよい(変形例5)。また、ステップS56、S58を省略してもよい(変形例6)。
【0082】
<変形例7>
前述の実施形態では、超音波センサ10が距離算出部15を備えていたが、距離算出部15をECU20が備えていてもよい。すなわち、検知距離をECU20が算出してもよい。
【0083】
検知距離をECU20が算出する場合、超音波センサ10は、前述の時間差までを算出し、この時間差をECU20に送信する。そして、ECU20が、時間差に音速を乗じた値の1/2を計算して検知距離とする。
【0084】
あるいは、時間差もECU20が算出してもよい。この場合、超音波センサ10は、物体検出閾値以上の反射波を受信したことをECU20に送信する。超音波センサ10の送受信部11が送信波を送信した時点は、その超音波センサ10から送信波を送信したことを取得してもよいし、ECU20が超音波センサ10に送信指示信号を出力した時点としてもよい。