(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
過給機を備えた内燃機関を搭載した車両において、アクセルペダルを踏み込んで加速要求を行った場合、加速の初期では、過給機による過給が徐々に働いて吸気が過給されるが、加速要求の期間が比較的長い場合、特に加速の後期において(過給機保護のため過給機の回転数は一定回転数に保たれる)、内燃機関の回転数も大きく上昇して内燃機関の吸入量が増加していくので、吸気の過給状態が徐々に低下していく(
図3参照)。また似た形態として多段過給機を備えた内燃機関を搭載した車両においてアクセルペダルを踏み込んで加速要求を行った場合、加速の初期では高圧側過給機と低圧側過給機の両方を作動させて過給するが、加速要求の期間が比較的長い場合、高圧側過給機の作動範囲を超えてくるため過回転保護をする必要がある。この形態の場合、
図3の例に示す時間・圧力比特性は、高圧側過給機の特性を示している。
図3の例に示す時間・圧力比特性は、横軸を時間、縦軸を圧力比(過給機の吐出側通路内の圧力/過給機の吸入側通路内の圧力)とした特性を示しており、時間taにてアクセルペダルを踏込んで踏込み状態を維持(加速要求を維持)した状態を示している。
図3の例に示すように、アクセルペダルを踏み込んだ時間taから時間tcまでの間では、「過給機の吐出側通路内の圧力>過給機の吸入側通路内の圧力」であるので、吸気の過給が有効に働いていることがわかる。しかし、
図3に示すように、時間の経過に伴って、吸気の過給状態が徐々に低下し、時間tcよりも後では、「過給機の吐出側通路内の圧力<過給機の吸入側通路内の圧力」となり、この場合は過給機が吸気抵抗となってしまっているので、過給機をバイパスするほうがよい。従って、「過給機の吐出側通路内の圧力=過給機の吸入側通路内の圧力」となった時間tcのタイミングにて、閉じていた吸気バイパス弁を開いて「過給機の吐出側通路内の圧力=過給機の吸入側通路内の圧力」とすることが好ましい。
【0005】
しかし、特許文献1には、加速要求の期間が比較的長い場合、「過給機の吐出側通路内の圧力>過給機の吸入側通路内の圧力」の状態から、やがて「過給機の吐出側通路内の圧力<過給機の吸入側通路内の圧力」の状態になる点も、
図3における時間tcにて吸気バイパス弁を閉状態から開状態に制御することが好ましい点も、記載されていない。
【0006】
なお、
図3に示す特性上において、時間tcのタイミングの検出が適切でなく、時間tbにて吸気バイパス弁を閉状態から開状態とした場合は、「過給機の吐出側通路内の圧力>過給機の吸入側通路内の圧力」であるので、過給機の吐出側通路から吸入側通路へと吸気の一部が逆流してエンジン出力にもたつきや減速ショック等が発生する可能性があるので好ましくない。また、
図3に示す特性上において、時間tcのタイミングの検出が適切でなく、時間tdにて吸気バイパス弁を閉状態から開状態とした場合は、時間tcから時間tdの間、「過給機の吐出側通路内の圧力<吸入側通路内の圧力」の状態であるので、この期間は過給機が吸気抵抗となりエンジン出力が低減されてしまう点と、吸気バイパス弁を閉状態から開状態としたときにエンジン出力のショック等が発生する可能性があるので好ましくない。加速要求の期間が比較的長い場合に、「過給機の吐出側通路内の圧力>過給機の吸入側通路内の圧力」の状態から「過給機の吐出側通路内の圧力<過給機の吸入側通路内の圧力」の状態になる時間tc(
図3参照)のタイミングを適切に検出するには、過給機の吐出側通路内に第1圧力センサを設け、過給機の吸入側通路内に第2圧力センサを設ければよいが、これでは2つの圧力センサを必要としてしまう。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、センサの増加を抑制し、より少ないセンサにて、「過給機の吐出側通路内の圧力>過給機の吸入側通路内の圧力」の状態から「過給機の吐出側通路内の圧力<過給機の吸入側通路内の圧力」の状態になるタイミングをより精度よく検出することができる、内燃機関の吸気バイパス制御方法及び内燃機関の吸気バイパス制御システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る内燃機関の吸気バイパス制御方法及び内燃機関の吸気バイパス制御システムは次の手段をとる。まず、本発明の第1の発明は、内燃機関への吸気を過給する過給機と、前記吸気を前記過給機へと導く過給機吸入通路と、前記過給機から吐出した前記吸気を前記内燃機関へと導く過給機吐出通路と、前記過給機をバイパスして前記過給機吸入通路と前記過給機吐出通路とを連通する吸気バイパス通路と、前記吸気バイパス通路の開度を調整する吸気バイパス弁と、前記吸気バイパス弁を制御する制御手段と、前記過給機の回転数である過給機回転数に応じた、前記吸気の流量である吸気流量と、過給機吐出通路内の吸気の圧力に関する情報と、の関係を示す吸気流量・圧力特性が記憶された記憶手段と、を有する内燃機関の吸気バイパス制御方法である。そして、前記制御手段を用いて、前記吸気バイパス弁の閉状態からの前記内燃機関の加速時において、前記過給機回転数と前記吸気流量と前記吸気流量・圧力特性とに基づいて、前記過給機吸入通路内の圧力よりも前記過給機吐出通路内の圧力のほうが高い状態から、前記過給機吸入通路内の圧力よりも前記過給機吐出通路内の圧力のほうが低い状態へと切り替わる切り替わりタイミングを
、前記過給機吸入通路内の圧力と前記過給機吐出通路内の圧力のどちらの圧力も検出することなく、前記吸気流量・圧力特性と前記過給機回転数に応じて決まる流量閾値に対して、前記吸気流量が前記流量閾値未満から前記流量閾値以上に切り替わることにて判定し、判定した前記切り替わりタイミングの近傍にて、前記バイパス弁を閉状態から開状態へと切り替える。
【0009】
この第1の発明では、過給機吸入通路内の圧力及び過給機吐出通路内の圧力の検出を必要としない。また、吸気流量を検出する吸気流量検出手段は、通常の内燃機関では当然のように設けられているので、新たに吸気流量検出手段を設ける必要が無く、新たに設ける検出手段は、過給機回転数を検出する検出手段のみでよい。また、例えば制御手段から回転数が制御される電動モータにて駆動される過給機の場合は、過給機回転数を検出する検出手段も必要としない。従って、センサの増加を抑制し、より少ないセンサにて、内燃機関の吸気バイパス制御方法を実現することができる。また、過給機回転数と吸気流量と吸気流量・圧力特性とに基づいて(過給機回転数と吸気流量と圧力の間には、所定の関係が成立している)、過給機吸入通路内の圧力よりも過給機吐出通路内の圧力のほうが高い状態から、過給機吸入通路内の圧力よりも過給機吐出通路内の圧力のほうが低い状態へと切り替わる切り替わりタイミングを判定することで、切り替わりタイミングを、より精度よく検出することができる。
【0010】
次に、本発明の第2の発明は、内燃機関への吸気を過給する過給機と、前記吸気を前記過給機へと導く過給機吸入通路と、前記過給機から吐出した前記吸気を前記内燃機関へと導く過給機吐出通路と、前記過給機をバイパスして前記過給機吸入通路と前記過給機吐出通路とを連通する吸気バイパス通路と、前記吸気バイパス通路の開度を調整する吸気バイパス弁と、前記吸気バイパス弁を制御する制御手段と、前記過給機の回転数を検出可能な過給機回転数検出手段と、前記吸気の流量を検出可能な吸気流量検出手段と、前記過給機の回転数である過給機回転数に応じた、前記吸気の流量である吸気流量と、過給機吐出通路内の吸気の圧力に関する情報と、の関係を示す吸気流量・圧力特性が記憶された記憶手段と、を有する内燃機関の吸気バイパス制御システムである。そして、前記制御手段は、前記吸気バイパス弁の閉状態からの前記内燃機関の加速時において、前記過給機回転数検出手段を用いて検出した前記過給機回転数と、前記吸気流量検出手段を用いて検出した前記吸気流量と、前記記憶手段に記憶されている前記吸気流量・圧力特性と、に基づいて、前記過給機吸入通路内の圧力よりも前記過給機吐出通路内の圧力のほうが高い状態から、前記過給機吸入通路内の圧力よりも前記過給機吐出通路内の圧力のほうが低い状態へと切り替わる切り替わりタイミングを
、前記過給機吸入通路内の圧力と前記過給機吐出通路内の圧力のどちらの圧力も検出することなく、前記吸気流量・圧力特性と前記過給機回転数に応じて決まる流量閾値に対して、前記吸気流量が前記流量閾値未満から前記流量閾値以上に切り替わることにて判定し、判定した前記切り替わりタイミングの近傍にて、前記バイパス弁を閉状態から開状態へと切り替える。
【0011】
この第2の発明では、第1の発明と同様、センサの増加を抑制し、より少ないセンサにて、内燃機関の吸気バイパス制御システムを実現することができる。また、第1の発明と同様、過給機吸入通路内の圧力よりも過給機吐出通路内の圧力のほうが高い状態から、過給機吸入通路内の圧力よりも過給機吐出通路内の圧力のほうが低い状態へと切り替わる切り替わりタイミングを、より精度よく検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。以下、内燃機関としてディーゼルエンジンを搭載した車両を例として説明する。なお、
図1の例では、第1過給機21と第2過給機22との2つの過給機を有する内燃機関の吸気バイパス制御システム1の例を示している。
【0014】
●[内燃機関の吸気バイパス制御システム1の全体構成(
図1)]
図1に示すように、内燃機関の吸気バイパス制御システム1は、内燃機関40、吸気流量検出手段71、アクセル踏込み量検出手段72、インジェクタ81、符号11A、11B、11C、12A、12B、12Cにて示す各吸気通路、吸気マニホルド13、排気マニホルド33、符号32A、32C、31A、31Cにて示す各排気通路、第1過給機21、第2過給機22、制御手段60等を有している。なお、内燃機関の吸気バイパス制御システム1は、
図1の例に示す構成に限定されるものではない。
【0015】
吸気流量検出手段71は、例えば内燃機関40が吸入する空気の流量(体積や重量等)を検出する流量センサであり、吸気流量に応じた検出信号を制御手段60に出力する。
【0016】
アクセル踏込み量検出手段72は、例えばアクセルペダルの角度を検出する角度センサであり、運転者によるアクセルペダルの踏込み量に応じた検出信号を制御手段60に出力する。
【0017】
インジェクタ81は、制御手段60からの駆動信号に基づいて、内燃機関40の各シリンダ内に燃料を噴射する。例えば制御手段60は、アクセルペダルの踏込み量等に応じた燃料量を算出し、所定のタイミングにてインジェクタ81から燃料を噴射する。
【0018】
各吸気通路は、第1過給機吸入通路11A、第1過給機吐出通路11C、第1吸気バイパス通路11B、第2過給機吸入通路12A、第2過給機吐出通路12C、第2吸気バイパス通路12B、にて構成されている。
【0019】
第1過給機吸入通路11Aは、吸気流量検出手段71からの吸気を第1コンプレッサ21C(第1過給機)へと導く通路である。また、第1過給機吐出通路11Cは、第1コンプレッサ21C(第1過給機)にて過給された吸気が吐出される通路であり、第2コンプレッサ22C(第2過給機)へと吸気を導く第2過給機吸入通路12Aに接続されている。また、第1吸気バイパス通路11Bは、第1コンプレッサ21C(第1過給機)をバイパスして第1過給機吸入通路11Aと第1過給機吐出通路11Cとを連通するように接続されている。また、第1吸気バイパス通路11B内には、第1吸気バイパス通路11Bの開度を調整する第1吸気バイパス弁51が設けられている。例えば第1吸気バイパス弁51は、制御手段60からの制御信号に基づいて第1吸気バイパス通路11Bを開状態または閉状態にする。
【0020】
第2過給機吸入通路12Aは、第1過給機吐出通路11Cからの吸気を第2コンプレッサ22C(第2過給機)へと導く通路である。また、第2過給機吐出通路12Cは、第2コンプレッサ22C(第2過給機)にて過給された吸気が吐出される通路であり、内燃機関40へと吸気を導く吸気マニホルド13に接続されている。また、第2吸気バイパス通路12Bは、第2コンプレッサ22C(第2過給機)をバイパスして第2過給機吸入通路12Aと第2過給機吐出通路12Cとを連通するように接続されている。また、第2吸気バイパス通路12B内には、第2吸気バイパス通路12Bの開度を調整する第2吸気バイパス弁52が設けられている。例えば第2吸気バイパス弁52は、制御手段60からの制御信号に基づいて第2吸気バイパス通路12Bを開状態または閉状態にする。また、吸気マニホルド13は、第2過給機吐出通路12Cからの吸気を内燃機関40の各シリンダに分配する。なお、第2吸気バイパス弁52は必須であるが、第1吸気バイパス弁51は省略してもよい。
【0021】
各排気通路は、第2タービン吸入通路32A、第2タービン吐出通路32C、第1タービン吸入通路31A、第1タービン吐出通路31C、にて構成されている。
【0022】
第2タービン吸入通路32Aは、内燃機関40の各シリンダからの排気であって排気マニホルド33からの排気を第2タービン22Tへと導く通路である。また、第2タービン吐出通路32Cは、第2タービン22Tを通った排気が吐出される通路であり、第1タービン21Tへと排気を導く第1タービン吸入通路31Aに接続されている。また第1タービン吸入通路31Aは、第2タービン吐出通路32Cからの排気を第1タービン21Tへと導く通路である。また、第1タービン吐出通路31Cは、第1タービン21Tを通った排気が吐出される通路である。
【0023】
第1過給機21は、第1コンプレッサ21C、第1タービン21T、第1シャフト21Jにて構成された、いわゆるターボチャージャである。第1シャフト21Jの一方端に取り付けられた第1タービン21Tは、排気エネルギーによって回転駆動され、第1シャフト21Jの他方端に取り付けられた第1コンプレッサ21Cを回転駆動する。同様に、第2過給機22は、第2コンプレッサ22C、第2タービン22T、第2シャフト22Jにて構成された、いわゆるターボチャージャである。第2シャフト22Jの一方端に取り付けられた第2タービン22Tは、排気エネルギーによって回転駆動され、第2シャフト22Jの他方端に取り付けられた第2コンプレッサ22Cを回転駆動する。また、第1過給機回転数検出手段21Sは、第1過給機21の第1シャフト21Jの回転数に応じた検出信号を制御手段60に出力し、第2過給機回転数検出手段22Sは、第2過給機22の第2シャフト22Jの回転数に応じた検出信号を制御手段60に出力する。例えば第2過給機22は、内燃機関40の回転数が低回転領域及び中回転領域である場合に主に使用され、第1過給機21は、内燃機関40の回転数が低回転領域、中回転領域、高回転領域と、全域にわたって使用される。
【0024】
なお、第1タービン21T及び第1過給機回転数検出手段21Sの代わりに、制御手段60から回転数が制御される第1電動モータ41を取り付けて第1コンプレッサ21Cを回転駆動するようにしてもよい。この場合、制御手段60は、第1電動モータ41の回転数を制御するので、第1過給機回転数検出手段21Sを用いなくても第1電動モータ41の回転数を認識することができる。つまり、制御手段60による第1電動モータ41の回転数の制御が、第1過給機回転数検出手段21Sの代用となる。同様に、第2タービン22T及び第2過給機回転数検出手段22Sの代わりに、制御手段60から回転数が制御される第2電動モータ42を取り付けて第2コンプレッサ22Cを回転駆動するようにしてもよい。この場合、制御手段60は、第2電動モータ42の回転数を制御するので、第2過給機回転数検出手段22Sを用いなくても第2電動モータ42の回転数を認識することができる。つまり、制御手段60による第2電動モータ42の回転数の制御が、第2過給機回転数検出手段22Sの代用となる。また、第1過給機と第2過給機の組合せは、(第1タービンを備えた第1過給機、第2タービンを備えた第2過給機)、(第1タービンを備えた第1過給機、第2電動モータを備えた第2過給機)、(第1電動モータを備えた第1過給機、第2タービンを備えた第2過給機)、(第1電動モータを備えた第1過給機、第2電動モータを備えた第2過給機)の組合せがあり、どの組合せとしてもよい。
【0025】
制御手段60は、CPU等を備えた制御装置であり、吸気流量検出手段71やアクセル踏込み量検出手段72や第1過給機回転数検出手段21Sや第2過給機回転数検出手段22S等からの検出信号を取り込み、インジェクタ81や第1吸気バイパス弁51や第2吸気バイパス弁52等に制御信号を出力する。また制御手段60は記憶手段を有しており、記憶手段には、後述する処理手順を実行するためのプログラムや、後述する吸気流量・圧力特性等が記憶されている。
【0026】
上記の構成の内燃機関の吸気バイパス制御システム1を搭載した車両の場合、例えば第2吸気バイパス弁52が閉状態である場合に、運転者が、20[%]程度のアクセルペダルの踏込み量から、100[%](全開)まで踏込むような加速要求を行った場合、時間の経過に対する圧力比(第2過給機吐出通路12C内の圧力/第2過給機吸入通路12A内の圧力)は、
図3の例に示す特性となる。
図3の例では、時間taにてアクセルペダルが踏込まれて加速の要求が発生した後、時間ta〜時間tcまでの期間では「第2過給機吐出通路12C内の圧力>第2過給機吸入通路12A内の圧力」の状態であり、時間tcのタイミングでは「第2過給機吐出通路12C内の圧力=第2過給機吸入通路12A内の圧力」の状態であり、時間tcよりも後では「第2過給機吐出通路12C内の圧力<第2過給機吸入通路12A内の圧力」の状態であることを示している。前述したように、時間tcのタイミングを精度よく検出し、当該時間tcのタイミングにて第2吸気バイパス弁52を閉状態から開状態へと切り替えることで、切り替えのショック等が低減され、適切なエンジン出力を得ることができる。以下、第2過給機22を例として、第2過給機吸入通路12A及び第2過給機吐出通路12Cのどちらにも圧力センサを設けることなく、より適切に時間tcのタイミングを検出する、本実施の形態の処理手順について説明する。
【0027】
●[制御手段60の処理手順(
図2〜
図4)]
図2のフローチャートに示す処理は、制御手段60にて、例えば所定時間(例えば数10[ms])毎に起動され、制御手段60は、当該処理が起動されるとステップS10に進む。なお、
図2に示す処理の説明として、第2過給機22の第2吸気バイパス弁52を制御する処理を例として説明する。
【0028】
ステップS10にて制御手段60は、現在、内燃機関(または車両)が定常運転中であるか否かを判定し、定常運転中である場合(Yes)はステップSA0に進み、定常運転中でない場合(No)はステップS20に進む。例えば制御手段60は、車両の走行速度の変化量やアクセルペダルの踏込み量の変化量が所定範囲内である状態が所定時間継続した場合に、定常運転中であると判定する。
【0029】
ステップS20に進んだ場合、制御手段60は、現在、内燃機関(または車両)が加速中であるか否かを判定し、加速中である場合(Yes)はステップS30に進み、加速中でない場合(No)はステップSB0に進む。例えば制御手段60は、アクセル踏込み量検出手段72にて検出したアクセルペダルの踏込み量が所定[%]以上の場合や、吸気流量検出手段71にて検出した吸気の流量の増加割合が所定割合以上の場合や、内燃機関のクランクシャフトの回転数の増加割合が所定割合以上の場合や、車両の速度の増加割合が所定割合以上の場合や、インジェクタ81からの噴射量の増加割合が所定割合以上の場合等にて、加速中であるか否かを判定する。なお、内燃機関(または車両)が加速中であるか否かの判定方法は、特に限定しない。
【0030】
ステップSA0の処理は、定常運転時に第2吸気バイパス弁を開状態または閉状態に制御する既存の処理であるので、詳細については説明を省略する。また、ステップSB0の処理は、減速運転時に第2吸気バイパス弁を開状態または閉状態に制御する既存の処理であるので、詳細については説明を省略する。
【0031】
ステップS30に進んだ場合、制御手段60は、第2過給機が作動中であるか否かを判定し、第2過給機が作動中である場合(Yes)はステップS40に進み、第2過給機が作動中でない場合(No)は処理を終了する。例えば、第2過給機22が第2タービン22T及び第2過給機回転数検出手段22S(
図1参照)を備えている場合は、第2過給機回転数検出手段22Sにて検出した回転数が所定回転数以上である場合に第2過給機が作動中であると判定し、第2過給機22が第2タービン22T及び第2過給機回転数検出手段22Sの代わりに第2電動モータ42(
図1参照)を備えている場合は、第2電動モータ42が作動中である場合に第2過給機が作動中であると判定する。なお、処理を終了した場合、第2吸気バイパス弁は、現在の状態が維持される。
【0032】
ステップS40に進んだ場合、制御手段60は、吸気流量、過給機回転数を検出してステップS50に進む。例えば制御手段60は、吸気流量検出手段71からの検出信号に基づいて吸気流量を検出し、第2過給機が第2タービン及び第2過給機回転数検出手段を備えている場合は第2過給機回転数検出手段からの検出信号に基づいて第2過給機(第2コンプレッサ)の回転数を検出し、第2過給機が第2電動モータを備えている場合は回転数を制御している第2電動モータの回転数から第2コンプレッサの回転数を知る。
【0033】
ステップS50にて制御手段60は、検出した第2過給機の回転数と、記憶手段に記憶されている吸気流量・圧力特性から、圧力比=1.0となる流量閾値Qnを算出してステップS60に進む。例えば、第2過給機用の吸気流量・圧力特性は、
図4の例に示すグラフであり、横軸は吸気流量であり、縦軸は圧力比(第2過給機吐出通路内の圧力/第2過給機吸入通路内の圧力)である。そして第2過給機用の吸気流量・圧力特性は、第2過給機の回転数Nnに応じた、吸気流量と、第2過給機吐出通路内の吸気の圧力に関する情報(この場合、上記の圧力比)と、の関係を示している。例えば
図4の例では、第2過給機の回転数がN1[rpm]である場合、圧力比=1.0となる流量閾値はQ1であり、第2過給機の回転数がN2[rpm]である場合、圧力比=1.0となる流量閾値はQ2である。また、第2過給機の回転数がN1[rpm]からN2[rpm]の間にある場合は、N1[rpm]における流量閾値Q1とN2[rpm]における流量閾値Q2とを間を補間して求めることができる。
【0034】
ステップS60にて制御手段60は、ステップS40にて検出した吸気流量が、ステップS50にて求めた流量閾値以上であるか否かを判定し、吸気流量が流量閾値以上である場合(Yes)はステップS70に進み、吸気流量が流量閾値未満である場合(No)は処理を終了する。処理を終了した場合、第2吸気バイパス弁は、現在の状態が維持される。
図4において吸気流量が流量閾値と一致しているときは、
図3における時間tcのタイミング(切り替わりタイミングに相当)である。また、
図4において吸気流量が流量閾値よりも小さいときは、
図3における時間ta〜時間tcの間のタイミングである。また、
図4において吸気流量が流量閾値より大きいときは、
図3における時間tcより後のタイミングである。従って、吸気流量が吸気閾値よりも小さな状態から、吸気流量が徐々に増加していき、吸気流量が吸気閾値と一致したタイミングが、
図3における時間tcのタイミング(切り替わりタイミングの近傍のタイミング)であると判定し、当該時間tcのタイミング(切り替わりタイミングの近傍のタイミング)にてステップS70に進む。
【0035】
ステップS70に進んだ場合、制御手段60は、第2吸気バイパス弁を開状態に制御して処理を終了する。このように、(第2吸気バイパス弁の閉状態からの)内燃機関の加速時において、第2過給機吸入通路12A内の圧力及び第2過給機吐出通路12C内の圧力を検出することなく、第2過給機の回転数と吸気流量と(第2過給機用の)吸気流量・圧力特性とに基づいて、第2過給機吸入通路12A内の圧力よりも第2過給機吐出通路12C内の圧力のほうが高い状態から、第2過給機吸入通路12A内の圧力よりも第2過給機吐出通路12C内の圧力のほうが低い状態へと切り替わる切り替わりタイミング(時間tcのタイミング)を判定し、判定した切り替わりタイミングの近傍にて、第2吸気バイパス弁52を閉状態から開状態へと切り替える。
【0036】
上記の処理手順は、第2過給機用の吸気流量・圧力特性と、第2過給機の回転数から流量閾値を求めて第2吸気バイパス弁を制御したが、上記の処理手順と同様の手順にて、第1過給機用の吸気流量・圧力特性と、第1過給機の回転数から流量閾値を求めて第1吸気バイパス弁を制御することもできる。
【0037】
本実施の形態にて説明した、内燃機関の吸気バイパス制御システム1、及び内燃機関の吸気バイパス制御方法は、過給機吸入通路内の圧力の検出も、過給機吐出通路内の圧力の検出も不要であり、過給機吸入通路に圧力センサを設ける必要が無く、過給機吐出通路に圧力センサを設ける必要も無い。また、吸気流量検出手段71は、新たに追加する必要が無く、既に設けられている吸気流量検出手段を流用することができる。また、タービンを備えた過給機の場合は過給機回転数検出手段を必要とするが、1台の過給機に対して2個の圧力センサを設ける必要が無く1個の過給機回転数検出手段を設ければよいので、センサの増加を抑制し、より少ないセンサにて、内燃機関の吸気バイパス制御システム、及び内燃機関の吸気バイパス制御方法を実現できる。さらに、電動モータを備えた過給機の場合は、過給機回転数検出手段を省略することができるので、さらに少ないセンサにて、内燃機関の吸気バイパス制御システム、及び内燃機関の吸気バイパス制御方法を実現できる。また、過給機の回転数と、吸気流量・圧力特性と、吸気流量とから、「過給機の吐出側通路内の圧力>過給機の吸入側通路内の圧力」の状態から「過給機の吐出側通路内の圧力<過給機の吸入側通路内の圧力」の状態になるタイミングを適切に検出することができる。
【0038】
本発明の内燃機関の吸気バイパス制御システム1、及び内燃機関の吸気バイパス制御方法は、本実施の形態で説明した構造、構成、外観、形状、処理手順等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
【0039】
また本実施の形態の説明では、第1過給機21と第2過給機22とを直列に配置した、いわゆるシーケンシャルターボを備えた内燃機関を例として説明したが、第1過給機21または第2過給機22の一方を備えた内燃機関に適用することもできる。
【0040】
また第1過給機21、第2過給機22としては、排気エネルギーを利用したターボチャージャに限定されず、電動モータを用いた過給機や、エンジンの回転動力を利用した過給機等、内燃機関への吸気を過給する種々の過給機を使用することができる。
【0041】
また本実施の形態の説明では、第1吸気バイパス弁及び第2吸気バイパス弁は、開状態または閉状態の2通りの状態に制御される弁の例で説明したが、開状態と閉状態の間の任意の開度に調整可能な弁を用いてもよい。
【0042】
また、本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。