【実施例】
【0031】
(測定方法)
(1)膜厚
膜厚は、FIB(収束イオンビーム)法により金属積層フィルムを切断し、その断面をTEM(透過型電子顕微鏡)により観察することで測定した。なお、観察画像において画像の縦方向に占める膜厚の割合が50%以上になるよう、倍率を1,000〜50,000倍の範囲で適宜調整して測定した。
【0032】
(2)オイル付着量
金属積層フィルムについて、理学電機工業社製の蛍光X線分析装置RIX 3000を用い、試料板の上にフィルムを載せ、30mmφの測定面積でオイルの代表的な元素の強度を求め、別に検量線を作成しておき、オイル量をこの検量線を用いて算出した。
【0033】
(3)プラズマ電流密度
連続式蒸着機において、処理幅L[m]、速度V[m/min]、処理電力W[W]とした場合に、下の式により算出した。
【0034】
【数1】
【0035】
(4)ぬれ指数
JIS K−6768(1999)に従い測定した。
【0036】
(5)ケイ素含有量
ケイ素含有量は、得られた金属積層フィルムのXPS(X線光電子分光法)分析により実施した。銅層の表面より、アルゴンイオンにより以下の条件でエッチングを行いながらXPS分析を実施し、深さ方向の元素組成プロファイルを得た。銅層の表面よりエッチングを行っていき、元素組成が初めて金属元素1at%未満でかつ、炭素元素が40at%以上となる深さを銅層とプラスチックフィルムとの界面とした。ここでat%とは原子組成百分率を表し、全原子数を100としたときの各元素の原子数を表す。
【0037】
アルゴンイオンによるエッチング条件詳細を以下に記載する。
・イオン種:アルゴン
・イオンビーム強度:3kV 10mA
・エッチング速度:5.3nm/min(SiO
2のエッチングレートで換算した値)。
【0038】
(ii)上記方法により得られた測定箇所におけるXPS分析を実施した。XPS分析の詳細条件を下記する。
・装置:SSI社製 SSX−100
・励起X線:単結晶分光 Al Ka1線(1,486.6eV)
・光電子脱出角度:35度
・X線スポット:表面分析 短軸1,000μm×長軸1,750μmの楕円形。
【0039】
(6)耐湿性
耐湿性は金属積層フィルムを85℃85%RHの恒温恒湿槽内にフィルム1枚の状態で100時間放置した後に、明度と色度を測定した。
【0040】
測定面内25箇所の反射色度をコニカミノルタ製CM−2500dを用い、JIS Z 8722(2009年改訂)に準拠し測定した。測定条件は測定角2°、光源D65とし正反射を除いた値SCEを反射色度値L
*、a
*、b
*とした。
【0041】
前述の通り、金属層が銅の場合は酸化あるいは水酸化した場合に最表面の色が銅色から褐色、青色、紫色へと変化することから、高温高湿試験後の明度と色度を測定することにより耐湿性を評価することができる。
【0042】
明度L
*、色度a
*、色度b
*がすべて以下の範囲内にある場合は「良好」、1つでも範囲外のものがある場合は「不良」と判定した。
明度L
*:3以上5以下
色度a
*:絶対値19以上24以下
色度b
*:絶対値5以上8以下。
【0043】
(実施例1)
プラスチックフィルム(4)として東レ株式会社製PETフィルム(商品名:“ルミラー”(登録商標)U48)を用いた。プラスチックフィルムの厚みは100μmであった。
【0044】
プラスチックフィルム(4)の一方の面(これを上面側とする)に、ロールトゥロールにて銅層(2)を、厚みが2.0μmとなるようにEB蒸着法で成膜した。電子銃の出力は成膜幅に対して53.5kW/mとした。
【0045】
さらに、銅層(2)の上面側に、ロールトゥロールにて東レダウコーニングシリコーン社製フェニルメチルジメチルポリシロキサンオイル(商品名:“SH702”)を加熱蒸着し、続けてオイル付着面に、O
2ガスを微量供給しながら250kHz、5kWのパルスDC電源を用いてグロー放電を発生させてグロー放電処理を施した(処理電力密度 E=30.0W・min/m
2)。ここで、オイル付着量を0.5μg/10cm
2となるようにオイル蒸着量を制御した。
【0046】
得られた金属積層フィルムの最表面(1)のぬれ指数を測定したところ43mN/mであることを確認した。
【0047】
また、銅層のケイ素含有量を分析したところ最表面(1)が3.4at%、銅層とプラスチックフィルムとの界面(3)が0.7at%と最表面におけるケイ素含有量が、銅層とプラスチックフィルムとの界面におけるケイ素含有量よりも多いことを確認した。
【0048】
得られた金属積層フィルムの耐湿性の試験を実施したところ試験前後でL
*、a
*、b
*いずれも良好な値であり耐湿性が良好であることを確認した。
【0049】
(実施例2)
グロー放電処理電力密度を E=15.0W・min/m
2とする以外は実施例1と同様の方法で金属積層フィルムを得た。
【0050】
得られた金属積層フィルムの最表面(1)のぬれ指数を測定したところ34mN/mであることを確認した。
【0051】
また、銅層のケイ素含有量を分析したところ最表面(1)が5.7at%、銅層とプラスチックフィルムとの界面(3)が0.3at%と最表面におけるケイ素含有量が、銅層とプラスチックフィルムとの界面におけるケイ素含有量よりも多いことを確認した。
【0052】
得られた金属積層フィルムの耐湿性の試験を実施したところ試験前後でL
*、a
*、b
*いずれも良好な値であり耐湿性が良好であることを確認した。
【0053】
(実施例3)
グロー放電処理電力密度を E=50.0W・min/m
2とする以外は実施例1と同様の方法で金属積層フィルムを得た。
【0054】
得られた金属積層フィルムの最表面(1)のぬれ指数を測定したところ56mN/mであることを確認した。
【0055】
また、銅層のケイ素含有量を分析したところ最表面(1)が2.8at%、銅層とプラスチックフィルムとの界面(3)が1.4at%と最表面におけるケイ素含有量が、銅層とプラスチックフィルムとの界面におけるケイ素含有量よりも多いことを確認した。
【0056】
得られた金属積層フィルムの耐湿性の試験を実施したところ試験前後でL
*、a
*、b
*いずれも良好な値であり耐湿性が良好であることを確認した。
【0057】
(実施例4)
オイル付着量を1.0μg/10cm
2となるようにオイル蒸着量を制御する以外は実施例1と同様の方法で金属積層フィルムを得た。
【0058】
得られた金属積層フィルムの最表面(1)のぬれ指数を測定したところ40mN/mであることを確認した。
【0059】
また、銅層のケイ素含有量を分析したところ最表面(1)が6.4at%、銅層とプラスチックフィルムとの界面(3)が0.6at%と最表面におけるケイ素含有量が、銅層とプラスチックフィルムとの界面におけるケイ素含有量よりも多いことを確認した。
【0060】
得られた金属積層フィルムの耐湿性の試験を実施したところ試験前後でL
*、a
*、b
*いずれも良好な値であり耐湿性が良好であることを確認した。
【0061】
(実施例5)
銅層(2)を、厚みが0.5μmとなるようにEB蒸着法で成膜する以外は実施例1と同様の方法で金属積層フィルムを得た。
【0062】
得られた金属積層フィルムの最表面(1)のぬれ指数を測定したところ43mN/mであることを確認した。
【0063】
また、銅層のケイ素含有量を分析したところ最表面(1)が2.6at%、銅層とプラスチックフィルムとの界面(3)が1.9at%と最表面におけるケイ素含有量が、銅層とプラスチックフィルムとの界面におけるケイ素含有量よりも多いことを確認した。
【0064】
得られた金属積層フィルムの耐湿性の試験を実施したところ試験前後でL
*、a
*、b
*いずれも良好な値であり耐湿性が良好であることを確認した。
【0065】
(比較例1)
フェニルメチルジメチルポリシロキサンオイルを加熱蒸着しない以外は実施例1と同様の方法で金属積層フィルムを得た。
【0066】
得られた金属積層フィルムの最表面(1)のぬれ指数を測定したところ65mN/mであることを確認した。
【0067】
また、銅層のケイ素含有量を分析したところ最表面(1)が0at%、銅層とプラスチックフィルムとの界面(3)が0at%であることを確認した。
【0068】
得られた金属積層フィルムの耐湿性の試験を実施したところ試験前後でL
*、a
*、b
*の値が不良であり耐湿性が不良であることを確認した。
【0069】
(比較例2)
グロー放電処理をしない以外は実施例1と同様の方法で金属積層フィルムを得た。
【0070】
得られた金属積層フィルムの最表面(1)のぬれ指数を測定したところ25mN/mであることを確認した。
【0071】
また、銅層のケイ素含有量を分析したところ最表面(1)が7.8at%、銅層とプラスチックフィルムとの界面(3)が0at%であることを確認した。
【0072】
得られた金属積層フィルムの耐湿性の試験を実施したところ試験前後でL
*、a
*、b
*の値が不良であり耐湿性が不良であることを確認した。
【0073】
(比較例3)
グロー放電処理電力密度を E=1.0W・min/m
2とする以外は実施例1と同様の方法で金属積層フィルムを得た。
【0074】
得られた金属積層フィルムの最表面(1)のぬれ指数を測定したところ28mN/mであることを確認した。
【0075】
また、銅層のケイ素含有量を分析したところ最表面(1)が6.4at%、銅層とプラスチックフィルムとの界面(3)が0.1at%であることを確認した。
【0076】
得られた金属積層フィルムの耐湿性の試験を実施したところ試験前後でL
*、a
*、b
*の値が不良であり耐湿性が不良であることを確認した。
【0077】
(比較例4)
銅層(2)を、厚みが0.05μmとなるようにEB蒸着法で成膜する以外は実施例1と同様の方法で金属積層フィルムを得た。
【0078】
得られた金属積層フィルムの最表面(1)のぬれ指数を測定したところ62mN/mであることを確認した。
【0079】
また、銅層のケイ素含有量を分析したところ最表面(1)が2.8at%、銅層とプラスチックフィルムとの界面(3)が2.8at%であることを確認した。
【0080】
得られた金属積層フィルムの耐湿性の試験を実施したところ試験前後でL
*、a
*、b
*の値が不良であり耐湿性が不良であることを確認した。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】