(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。
【0026】
[X線撮影システムの構成]
図1に、第1の実施形態に係るX線撮影システムを示す。X線撮影システムは、X線撮影装置1とコントローラー5を備える。X線撮影装置1はタルボ・ロー干渉計によるX線撮影を行い、コントローラー5は当該X線撮影により得られた複数のモアレ縞画像を用いて被写体の再構成画像を生成する。
【0027】
X線撮影装置1は、
図1に示すように、X線源11、マルチスリット12、被写体台13、第1格子14、第2格子15、X線検出器16、保持部17、本体部18、体動検出センサー19等を備える。
X線撮影装置1は縦型であり、X線源11、マルチスリット12、被写体台13、第1格子14、第2格子15、X線検出器16は、この順序に重力方向であるz方向に配置される。X線源11の焦点とマルチスリット12間の距離をd1(mm)、X線源11の焦点とX線検出器16間の距離をd2(mm)、マルチスリット12と第1格子14間の距離をd3(mm)、第1格子14と第2格子15間の距離をd4(mm)で表す。なお、被写体台13の位置は、第1格子14と第2格子15との間に設けられていてもよい。
【0028】
距離d1は好ましくは5〜500(mm)であり、さらに好ましくは5〜300(mm)である。
距離d2は、一般的に撮影室の高さは3(m)程度又はそれ以下であることから、少なくとも3000(mm)以下であることが好ましい。なかでも、距離d2は400〜3000(mm)が好ましく、さらに好ましくは500〜2000(mm)である。
X線源11の焦点と第1格子14間の距離(d1+d3)は、好ましくは300〜3000(mm)であり、さらに好ましくは400〜1800(mm)である。
X線源11の焦点と第2格子15間の距離(d1+d3+d4)は、好ましくは400〜3000(mm)であり、さらに好ましくは500〜2000(mm)である。
それぞれの距離は、X線源11から照射されるX線の波長から、第2格子15上に第1格子14による格子像(自己像)が重なる最適な距離を算出し、設定すればよい。
【0029】
X線源11、マルチスリット12、被写体台13、第1格子14、第2格子15、X線検出器16は、同一の保持部17に一体的に保持され、z方向における位置関係が固定されている。保持部17はアーム状に形成され、本体部18に設けられた駆動部18aによりz方向に移動可能に本体部18に取り付けられている。
X線源11は、緩衝部材17aを介して保持されている。緩衝部材17aは、衝撃や振動を吸収できる材料であれば何れの材料を用いてもよいが、例えばエラストマー等が挙げられる。X線源11はX線の照射によって発熱するため、X線源11側の緩衝部材17aは加えて断熱素材であることが好ましい。
【0030】
X線源11はX線管を備え、当該X線管によりX線を発生させて重力方向(z方向)にX線を照射する。X線管としては、例えば医療現場で広く一般に用いられているクーリッジX線管や回転陽極X線管を用いることができる。陽極としては、タングステンやモリブデンを用いることができる。
X線の焦点径は、0.03〜3(mm)が好ましく、さらに好ましくは0.1〜1(mm)である。
X線源11のX線照射方向には、X線の照射範囲を狭めるための図示しない照射野絞りが設けられている。
【0031】
マルチスリット12(第3格子)は回折格子であり、
図2に示すようにx方向に複数のスリットが所定間隔で設けられている。マルチスリット12はシリコンやガラスといったX線の吸収率が低い材質の基板上に、タングステン、鉛、金といったX線の遮蔽力が大きい、つまりX線の吸収率が高い材質により形成される。例えば、フォトリソグラフィーによりレジスト層がスリット状にマスクされ、UVが照射されてスリットのパターンがレジスト層に転写される。露光によって当該パターンと同じ形状のスリット構造が得られ、電鋳法によりスリット構造間に金属が埋め込まれて、マルチスリット12が形成される。
【0032】
マルチスリット12のスリット周期は1〜60(μm)である。スリット周期は、
図2に示すように隣接するスリット間の距離を1周期とする。スリットの幅(x方向の長さ)はスリット周期の1〜60(%)の長さであり、さらに好ましくは10〜40(%)である。スリットの高さ(z方向の長さ)は1〜500(μm)であり、好ましくは1〜150(μm)である。
マルチスリット12のスリット周期をw
0(μm)、第1格子14のスリット周期をw
1(μm)とすると、スリット周期w
0は下記式により求めることができる。
w
0=w
1・(d3+d4)/d4
当該式を満たすように周期w
0を決定することにより、マルチスリット12及び第1格子14の各スリットを通過したX線により形成される自己像が、それぞれ第2格子15上で重なり合い、いわばピントが合った状態とすることができる。
【0033】
図1に示すように、マルチスリット12に隣接して、マルチスリット12をz方向と直交するx方向に移動させる駆動部12aが設けられる。駆動部12aとしては、例えばウォーム減速機等の比較的大きな減速比系の駆動機構を単体で又は組合せて用いることができる。
【0034】
被写体台13は、X線源11からのX線照射経路上の被写体配置位置に設けられた、被写体を載置するための台である。被写体台13には、撮影時に被写体が動かないようにするための図示しない保持具が着脱可能である。
【0035】
第1格子14は、マルチスリット12と同様にx方向に所定の周期の複数のスリットが設けられた回折格子である(
図2参照)。第1格子14は、マルチスリット12と同様にUVを用いたフォトリソグラフィーによって形成することもできるし、いわゆるICP法によりシリコン基板に微細細線で深掘加工を行い、シリコンのみで格子構造を形成することとしてもよい。第1格子14のスリット周期は1〜20(μm)である。スリットの幅はスリット周期の20〜70(%)であり、好ましくは35〜60(%)である。スリットの高さは1〜100(μm)である。
【0036】
第1格子14として位相型を用いる場合、スリットの高さはスリット周期を形成する2種の素材、つまりX線透過部とX線遮蔽部の素材による位相差がπ/8〜15×π/8となる高さとする。好ましくは、π/2又はπとなる高さである。第1格子14として吸収型を用いる場合、スリットの高さはX線遮蔽部によりX線が十分吸収される高さとする。
【0037】
第1格子14が位相型である場合、第1格子14と第2格子15間の距離d4は、次の条件をほぼ満たすことが必要である。
d4=(m+1/2)・w
12/λ
なお、mは整数であり、λはX線の波長である。
【0038】
第2格子15は、マルチスリット12と同様にx方向に所定の周期の複数のスリットが設けられた回折格子である(
図2参照)。第2格子15もフォトリソグラフィーにより形成することができる。第2格子15のスリット周期は1〜20(μm)である。スリットの幅はスリット周期の30〜70(%)であり、好ましくは35〜60(%)である。スリットの高さは1〜100(μm)である。
【0039】
本実施形態では第1格子14及び第2格子15は、それぞれの格子面がz方向に対し垂直(x−y平面内で平行)であり、第1格子14のスリットの方向と第2格子15のスリットの方向とは、x−y平面内で所定角度だけ(わずかに)傾けて配置されているが、両者を平行な配置としても良い。
【0040】
上記マルチスリット12、第1格子14、第2格子15は、例えば下記のように構成することができる。
X線源11の焦点径;300(μm)、管電圧:40(kVp)、付加フィルター:アルミ1.6(mm)
X線源11の焦点からマルチスリット12までの距離d1 : 240(mm)
マルチスリット12から第1格子14までの距離d3 :1110(mm)
マルチスリット12から第2格子15までの距離d3+d4:1370(mm)
マルチスリット12のサイズ:10(mm四方)、スリット周期:22.8(μm)
第1格子14のサイズ:50(mm四方)、スリット周期:4.3(μm)
第2格子15のサイズ:50(mm四方)、スリット周期:5.3(μm)
【0041】
X線検出器16は、照射されたX線に応じて電気信号を生成する変換素子が2次元状に配置され、当該変換素子により生成された電気信号を画像信号として読み取る。
X線検出器16の画素サイズは10〜300(μm)であり、さらに好ましくは50〜200(μm)である。
【0042】
X線検出器16は第2格子15に当接するように保持部17に位置を固定することが好ましい。第2格子15とX線検出器16間の距離が大きくなるほど、X線検出器16により得られるモアレ縞画像がボケるからである。
X線検出器16としては、FPD(Flat Panel Detector)を用いることができる。F
PDには、検出されたX線を光電変換素子を介して電気信号に変換する間接変換型、検出されたX線を直接的に電気信号に変換する直接変換型があるが、何れを用いてもよい。
【0043】
間接変換型は、CsIやGd
2O
2S等のシンチレータプレートの下に、光電変換素子がTFT(薄膜トランジスタ)とともに2次元状に配置されて各画素を構成する。X線検出器16に入射したX線がシンチレータプレートに吸収されると、シンチレータプレートが発光する。この発光した光により、各光電変換素子に電荷が蓄積され、蓄積された電荷は画像信号として読み出される。
【0044】
直接変換型は、アモルファスセレンの熱蒸着により、100〜1000(μm)の膜圧
のアモルファスセレン膜がガラス上に形成され、2次元状に配置されたTFTのアレイ上にアモルファスセレン膜と電極が蒸着される。アモルファスセレン膜がX線を吸収するとき、電子正孔対の形で物質内に電圧が遊離され、電極間の電圧信号がTFTにより読み取られる。
なお、CCD(Charge Coupled Device)、X線カメラ等の撮影手段をX線検出器16
として用いてもよい。
【0045】
本体部18は、
図3に示すように、制御部181、操作部182、表示部183、通信部184、記憶部185等を備えて構成されている。
制御部181は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)等から構成され、記憶部185に記憶されているプログラムとの協働により、各種処理を実行する。制御部181は、X線源11、駆動部12a、駆動部18a、X線検出器16、体動検出センサー19等の各部に接続されており、後述する撮影制御処理を実行し、コントローラー5から入力される撮影条件の設定情報に従って、X線源11からのX線照射のタイミングやX線照射条件、X線検出器16による画像信号の読取タイミング、マルチスリット12の移動等を制御する。制御部181は、撮影制御手段として機能する。
【0046】
操作部182は、曝射スイッチ等を備え、これらの操作に応じた操作信号を生成して制御部181に出力する。
表示部183は制御部181の表示制御に従って、ディスプレイに操作画面やX線撮影装置1の動作状況等を表示する。
【0047】
通信部184は通信インターフェイスを備え、ネットワーク上のコントローラー5と通信する。例えば、通信部184はX線検出器16によって読み取られ、記憶部185に記憶されたモアレ縞画像をコントローラー5に送信する。
【0048】
記憶部185は、制御部181により実行されるプログラム、プログラムの実行に必要なデータを記憶している。また、記憶部185はX線検出器16によって得られた元モアレ縞画像を記憶する。
【0049】
体動検出センサー19は、例えば、被写体の注目領域(例えば、手指が被写体であれば、関節や軟骨等)を外した箇所または保持具等に装着される加速度センサー等により構成され、体動により変化するセンサー値を制御部181に出力する。または、体動検出センサー19は、赤外線センサーにより構成され、被写体の方向に赤外線を照射して体動により変化するセンサーの値を制御部181に出力することとしてもよい。
【0050】
コントローラー5は、オペレーターによる操作に従ってX線撮影装置1の撮影条件の設定等を行う。また、X線撮影装置1により得られた一連のモアレ縞画像を用いて被写体の再構成画像を生成し、生成した再構成画像に各種後処理を施して表示する。
【0051】
コントローラー5は、
図4に示すように、制御部51、操作部52、表示部53、通信部54、記憶部55を備えて構成されている。
制御部51は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory
)等から構成され、記憶部55に記憶されているプログラムとの協働により、後述する再構成画像生成表示処理をはじめとする各種処理を実行する。制御部51は、再構成画像生成手段、体動判別手段、体動画像除去手段、補正手段として機能する。
【0052】
操作部52は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードで押下操作されたキーの押下信号とマウスによる操作信号とを、入力信号として制御部51に出力する。表示部53のディスプレイと一体に構成されたタッチパネルを備え、これらの操作に応じた操作信号を生成して制御部51に出力する構成としてもよい。
【0053】
表示部53は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等のモニターを備えて構成されており、制御部51の表示制御に従って、生成された再構成画像等を表示する。
【0054】
通信部54は、通信インターフェイスを備え、ネットワーク上のX線撮影装置1やX線検出器16と有線又は無線により通信する。例えば、通信部54は、X線撮影装置1に撮影条件や制御信号を送信したり、X線撮影装置1又はX線検出器16からモアレ縞画像を受信したりする。
【0055】
記憶部55は、制御部51により実行されるプログラム、プログラムの実行に必要なデータを記憶している。例えば、記憶部55は、図示しないRIS(Radiology Information System)やHIS(Hospital Information System)等により予約された撮影の情報である撮影オーダー情報を記憶している。撮影オーダー情報は、患者ID及び患者名等の患者情報、撮影部位(被写体部位)情報等を含む。
【0056】
また、記憶部55は、被写体部位と、その被写体部位の撮影に適した撮影条件とを対応付けた撮影条件テーブルを記憶している。
また、記憶部55は、撮影オーダー情報に基づいてX線撮影装置1で取得されたモアレ縞画像に基づき生成された再構成画像等を当該撮影オーダー情報に対応付けて記憶する。
また、記憶部55は、X線検出器16に対応するゲイン補正データ、欠陥画素マップ等を予め記憶する。欠陥画素マップは、X線検出器16の欠陥画素(画素がないものも含む)の位置情報(座標)である。
【0057】
[X線撮影システムの動作]
ここで、上記X線撮影装置1のタルボ・ロー干渉計によるX線撮影方法を説明する。
図5に示すように、X線源11から照射されたX線が第1格子14を透過すると、透過したX線がz方向に一定の間隔で像を結ぶ。この像を自己像といい、自己像が形成される現象をタルボ効果という。自己像を結ぶ位置に第2格子15が自己像と概ね平行に配置され、第2格子15を透過したX線によりモアレ縞画像(
図5においてMoで示す)が得られる。即ち、第1格子14は、周期パターンを形成し、第2格子15は周期パターンをモアレ縞に変換する。X線源11と第1格子14間に被写体(
図5においてHで示す)が存在すると、被写体によってX線の位相がずれるため、
図5に示すようにモアレ縞画像上のモアレ縞は被写体の辺縁を境界に乱れる。このモアレ縞の乱れを、モアレ縞画像を処理することによって検出し、被写体像を画像化することができる。これがタルボ干渉計の原理である。
【0058】
X線撮影装置1では、X線源11と第1格子14との間のX線源11に近い位置に、マルチスリット12が配置され、タルボ・ロー干渉計によるX線撮影が行われる。タルボ干渉計はX線源11が理想的な点線源であることを前提としているが、実際の撮影にはある程度焦点径が大きい焦点が用いられるため、マルチスリット12によってあたかも点線源が複数連なってX線が照射されているかのように多光源化する。これがタルボ・ロー干渉計によるX線撮影法であり、焦点径がある程度大きい場合にも、タルボ干渉計と同様のタルボ効果を得ることができる。
【0059】
本実施形態におけるX線撮影システムでは、コントローラー5において操作部52の操作により撮影オーダー情報が選択されると、選択された撮影オーダー情報の被写体部位に対応する撮影条件が読み出されてX線撮影装置1に設定され、X線撮影装置1において撮影制御処理が実行されてX線撮影が行われる。
【0060】
図6に、第1の実施形態においてX線撮影装置1の制御部181により実行される撮影制御処理(撮影制御処理A)のフローチャートを示す。以下、
図6を参照して撮影制御処理Aの流れについて説明する。
【0061】
まず、オペレーターにより操作部182の曝射スイッチが操作されると(ステップS1;YES)、制御部181は、X線源11、X線検出器16、駆動部12aを制御して縞走査法に基づく撮影を実行し、1枚の再構成画像(1枚の診断用の再構成画像。以下同じ。)を生成するのに必要な一連の元モアレ縞画像を取得する(ステップS2)。
【0062】
縞走査とは、一般的には、格子(マルチスリット12、第1格子14、第2格子15)のうちの何れか1枚(本実施形態では、マルチスリット12とする)をスリット周期方向(x方向)に相対的に動かしてM回(Mは正の整数、M>2)の撮影(Mステップの撮影)を行い、1枚の再構成画像を生成するのに必要なM枚の再構成用のモアレ縞画像を取得することをいう。具体的には、移動させる格子のスリット周期をd(μm)とすると、d/M(μm)ずつ格子をスリット周期方向に動かして撮影を行うことを繰り返し、M枚の再構成用のモアレ縞画像を取得する。
【0063】
図7は、従来の縞走査法による画像取得を模式的に示した図である。
図7を参照して、従来の縞走査法による撮影について説明する。なお、ここでは、M=4とし、4枚の再構成用のモアレ縞画像を取得する場合を例として説明する。
(1)まず、第2格子15が停止した状態でX線源11によるX線の照射が開始される。X線検出器16では前回の撮影により残存する不要な電荷を取り除くリセット後、X線照射のタイミングに合わせて電荷の蓄積が開始される。
(2)予め定められた電荷の蓄積時間(以下、単に蓄積時間という)T0/Mが経過すると、X線源11によるX線の照射が停止される。X線検出器16では、X線の照射停止のタイミングに合わせて蓄積された電荷が画像信号として読み取られ、再構成用のモアレ縞画像G1が取得される。また、駆動部12aによるマルチスリット12の移動が開始され、d/M(μm)移動すると停止される。マルチスリット12が停止すると、X線源11によるX線照射及びX線検出器16によるリセット及び電荷の蓄積開始が行われ、次の撮影が開始される。
(3)、(4)上記(2)と同様の動作により、再構成用のモアレ縞画像G2、G3が取得される。
(5)(4)における電荷の蓄積開始から予め定められた蓄積時間T0/Mが経過すると、X線源11によるX線の照射が停止される。X線検出器16では、X線の照射停止のタイミングに合わせて蓄積された電荷が画像信号として読み取られ、再構成用のモアレ縞画像G4が取得される。
なお、X線照射及び停止は、1回の撮影毎に行うのではなく、一連のモアレ縞画像G1〜G4の撮影中に連続して照射することとしてもよい。
【0064】
ここで、1枚の再構成画像を得るために必要なX線量は部位毎に予め定められており、このX線量に応じた電荷を蓄積するのに必要な総蓄積時間T0も予め定められている。各モアレ縞画像の撮影時における蓄積時間T0/Mは、総蓄積時間T0を撮影回数(ステップ数)Mで割ったものである。タルボ撮影及びタルボ・ロー撮影では、格子によるX線のロスが避けられないため、X線検出器16による総蓄積時間T0及び各モアレ縞画像の撮影時における蓄積時間T0/Mを一般的な単純X線撮影より長くして1モアレ縞画像当たりの検出線量を向上させている。
【0065】
しかしながら、従来の縞走査法においては、1回の撮影毎の蓄積時間が長いため、体動が発生しても蓄積時間中のどのタイミングで発生しているのか特定できない。そのため、再構成画像の生成時に体動の影響(体動ボケ)を取り除くことができない。また、モアレ縞画像1枚当たりに含まれる体動量も大きいものとなる。
【0066】
そこで、本実施形態において、制御部181は、
図8に示すように、1枚の再構成用のモアレ縞画像を1回の撮影で取得していたものをN回(Nは正の整数。N≧2。)に分けて撮影するようにX線検出器16を制御する。即ち、従来の縞走査法による蓄積時間T0/Mを複数の短い蓄積時間T0/MNに分割して、同一格子位置のままN回撮影し、N枚のモアレ縞画像を取得する。この再構成用のモアレ縞画像1枚を構成するN枚のモアレ縞画像のそれぞれを、元モアレ縞画像と呼ぶ。また、再構成用のモアレ縞画像を構成するN枚の元モアレ縞画像群を元モアレ縞画像セットと呼ぶ。
【0067】
具体的に、制御部181は、X線源11によるX線照射及びX線検出器16によるリセット及び電荷蓄積を開始して、蓄積時間T0/MNが経過した後、X線照射及び蓄積を停止し、X線検出器16により元モアレ縞画像を読み取らせる。これを同一格子位置のままN回繰り返して1枚の再構成用のモアレ縞画像を構成するN枚の元モアレ縞画像(元モアレ縞画像セット)を撮影する。N回の元モアレ縞画像の撮影後、マルチスリット12をd/Mだけ移動させて、同様の撮影をM回繰り返すことにより、M枚の再構成用のモアレ縞画像を生成するための一連の元モアレ縞画像(Mセットの元モアレ縞画像セット)を取得する。
【0068】
ここで、X線検出器16による1回の蓄積及び読み取りにより取得されるモアレ縞画像又は元モアレ縞画像の体動量は、以下の(式1)により求めることができる。
体動量=体動速度×X線検出器16の蓄積時間Ts×被写体拡大率・・・(式1)
ただし、体動速度は、被写体部位毎(保持具を使う場合は、保持具の性能により体動速度が異なるため、被写体部位及び保持具の種類の組み合わせ毎)に予め実験によりに計測され、記憶部185に記憶されている。被写体拡大率(撮影倍率)は、被写体とX線検出器16の距離によって決まるもので、部位毎に予め記憶部185に記憶されている。
【0069】
(式1)に示すように、同じ被写体部位を撮影する場合、同じ被写体拡大率であればX線検出器16の蓄積時間Tsが短くなるほど画像上での体動量が少なくなり、X線検出器16から得られる画像1枚当たりの体動ボケの影響が低減される。即ち、1枚の再構成用のモアレ縞画像を生成するのに必要な蓄積時間T0/Mを短い蓄積時間T0/MNに分割してN枚の元モアレ縞画像を取得することで、体動ボケの影響による画像劣化を低減することができる。また、分割して撮影を行うことで、体動の発生したタイミングの元モアレ縞画像を特定することが可能となるので、特定した画像を取り除くか又は体動ボケを補正して再構成用のモアレ縞画像を生成することにより、体動の影響による画像劣化の低減された再構成画像を得ることが可能となる。
【0070】
上述の各元モアレ縞画像を生成するための蓄積時間T0/MNは、Ts=T0/MNとした場合に算出される体動量の値が診断に許容される体動量(体動許容量という)を超えない値となるように設定することが好ましい。体動許容量は、画質に影響しない体動量であり、予め定められている。
体動許容量は、装置の構成や性能によって異なる。例えば、X線検出器16の画素サイズが大きいほど、体動を吸収できるので、体動許容量は増大する。また、X線検出器16のS/N比が低いほど検出器自体の性能が悪いので、体動による画像劣化への寄与は相対的に小さくなる。つまり、S/N比が低いほど体動許容量は増大する。また、被写体拡大率が大きいと体動による体動ボケも拡大されて描写されるため、被写体拡大率が大きいほど体動許容量は小さくなる。なお、X線撮影装置1の記憶部185には、X線撮影装置1の構成や性能に応じた体動許容量が予め記憶されている。
体動量が体動許容量を超えないように蓄積時間T0/MNを決定して撮影を行うようにすることで、1枚当たりの画像に含まれる体動の影響を抑制することができる。
【0071】
一連の撮影開始と同時に、制御部181は、体動検出センサー19による検出を開始させ、体動検出センサー19により体動が検出された場合に、撮影開始からの経過時間を取得することにより、体動が発生した元モアレ縞画像を特定する。
【0072】
一連の撮影が終了すると、制御部181は、各元モアレ縞画像に対し、その元モアレ縞画像が属する元モアレ縞画像セットが何ステップ目の格子位置の撮影かを識別するためのステップID、元モアレ縞画像の撮影順を示す番号、被写体有無、患者ID、体動の有無等を付帯情報として対応付けて、通信部184によりコントローラー5に元モアレ縞画像を送信させる(ステップS3)。通信部184からコントローラー5に対しては1枚の元モアレ縞画像の撮影が終了する毎に1枚ずつ送信することとしてもよいし、1組の元モアレ縞画像セットを構成するN枚の元モアレ縞画像の撮影が終了する毎にその分をまとめて送信してもよいし、1枚の再構成画像を生成するための全ての元モアレ縞画像が得られた後、まとめて送信することとしてもよい。
【0073】
なお、本実施形態においては、被写体台13に被写体を載置したX線撮影(被写体有りでのX線撮影)と被写体台13に被写体を載置しないX線撮影(被写体無しでのX線撮影)が行われ、被写体有りの一連の元モアレ縞画像及び被写体無しの一連の元モアレ縞画像が取得される。モアレ縞画像のうち、被写体有りの再構成用のモアレ縞画像を被写体モアレ縞画像と呼び、被写体無しの再構成用のモアレ縞画像をBGモアレ縞画像と呼ぶ。元モアレ縞画像のうち、被写体有りの元モアレ縞画像を被写体元モアレ縞画像と呼び、被写体無しの元モアレ縞画像をBG元モアレ縞画像と呼ぶ。
【0074】
コントローラー5においては、通信部54により本体部18からの1枚の再構成画像を生成するための一連の被写体元モアレ縞画像及びBG元モアレ縞画像が受信されると、制御部51は、一連の被写体元モアレ縞画像及びBG元モアレ縞画像をメモリに記憶するとともに、再構成画像生成表示処理(再構成画像生成表示処理A)を実行し、受信した一連の被写体元モアレ縞画像及びBG元モアレ縞画像に基づいて吸収画像、微分位相画像、小角散乱画像等の再構成画像を生成し、表示する。
【0075】
図9に、コントローラー5の制御部51により実行される再構成画像生成表示処理Aのフローチャートを示す。再構成画像生成表示処理Aは、操作部52の操作に応じて制御部51と記憶部55に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0076】
まず、制御部51は、通信部54により受信した一連の元モアレ縞画像のうち、体動の発生した被写体元モアレ縞画像を判別する(ステップS11)。ここでは、各被写体元モアレ縞画像の付帯情報に基づいて体動の発生した被写体元モアレ縞画像を判別する。
【0077】
次いで、制御部51は、判別の結果、体動が発生した被写体元モアレ縞画像が存在したか否かを判断する(ステップS12)。
体動が発生した被写体元モアレ縞画像が無いと判断した場合(ステップS12;NO)、制御部51は、Mセットの各被写体元モアレ縞画像セット毎、及びMセットの各BG元モアレ縞画像セット毎に、N枚の元モアレ縞画像を加算してモアレ縞画像を生成する(ステップS13)。これにより、M枚の被写体モアレ縞画像及びM枚のBGモアレ縞画像が生成される。
【0078】
次いで、制御部51は、M枚の被写体モアレ縞画像及びM枚のBGモアレ縞画像に基づいて、吸収画像、微分位相画像、小角散乱画像の3種類の再構成画像を生成し、これを診断用の再構成画像として(ステップS14)、ステップS20に移行する。
【0079】
上記3種類の再構成画像は、例えば、国際公開第2012/029340号パンフレットに記載のように、公知の手法により生成することができる。
まず、被写体モアレ縞画像とBGモアレ縞画像に、オフセット補正処理、ゲイン補正処理、欠陥画素補正処理、X線強度変動補正等が施される。次いで、補正後の被写体モアレ縞画像に基づいて、被写体有りの3種類の再構成画像(吸収画像、微分位相画像、小角散乱画像)が生成される。また、補正後のBGモアレ縞画像に基づいて、被写体無しの3種類の再構成画像(吸収画像、微分位相画像、小角散乱画像)が生成される。
具体的には、M枚のモアレ縞画像のモアレ縞を加算することにより吸収画像が生成される。また、縞走査法の原理を用いてモアレ縞の位相が計算され、微分位相画像が生成される。また、縞走査法の原理を用いてモアレ縞のVisibilityが計算され(Visibility=振幅÷平均値)、小角散乱画像が生成される。
【0080】
次いで、被写体無しの再構成画像を用いて、被写体有りの再構成画像から、モアレ縞の位相の除去と、画像ムラ(アーチファクト)を除去するための補正処理が行われ、最終的な再構成画像が生成される。
例えば、被写体有りの再構成画像が微分位相画像である場合には、被写体有りの微分位相画像の各画素の信号値から被写体無しの微分位相画像の対応する(同じ位置の画素)の信号値を減算する処理が行われる(公知文献(A);Timm Weitkamp,Ana Diazand,Christian David, franz Pfeiffer and Marco Stampanoni, Peter Cloetens and Eric Ziegler, X-ray Phase Imaging with a grating interferometer,OPTICSEXPRESS,Vol.13, No.16,6296-6004(2005)、公知文献(B);Atsushi Momose, Wataru Yashiro, Yoshihiro Takeda, Yoshio Suzuki and Tadashi Hattori, Phase Tomography by X-ray Talbot Interferometry for Biological Imaging, Japanese Journal of Applied Physics, Vol.45, No.6A, 2006, pp.5254-5262(2006)参照)。
被写体有りの再構成画像が吸収画像、小角散乱画像である場合には、公知文献(C)に記載されているように、被写体有りの再構成画像の各画素の信号値を被写体無しの再構成画像の対応する画素の信号値で除算する割り算処理が行われる(公知文献(C);F.Pfeiffer, M.Bech,O.Bunk, P.Kraft, E.F.Eikenberry, CH.Broennimann,C.Grunzweig, and C.David,Hard-X-ray dark-field imaging using a grating interferometer, nature materials Vol.7,134-137(2008))。
【0081】
一方、ステップS12において、体動が発生した被写体元モアレ縞画像が有ると判断した場合(ステップS12;YES)、制御部51は、体動の発生した被写体元モアレ縞画像を一連の被写体元モアレ縞画像から除去(削除)する(ステップS15)。
【0082】
次いで、制御部51は、ステップS15〜S19により、被写体元モアレ縞画像間の被写体位置のズレを補正しつつ被写体の再構成画像の生成を行う。
【0083】
まず、制御部51は、体動による被写体元モアレ縞画像間の被写体位置のズレを補正するために、被写体元モアレ縞画像の平行移動を行う(ステップS16)。
ステップS16においては、例えば、最初に撮影された被写体元モアレ縞画像に対し、体動発生後に撮影された各被写体元モアレ縞画像のそれぞれを設定された方向に設定された画素数分平行移動させた画像を生成する。なお、撮影開始から体動が生じる前までに撮影された被写体元モアレ縞画像(例えば、
図8のG1−1、G1−2)については、最初に撮影された被写体元モアレ縞画像から被写体の位置は移動していないと考えられるため、平行移動は行わなくてよい。各被写体元モアレ縞画像について、移動方向や移動画素数の設定を変えて平行移動を行い、複数の平行移動済み被写体元モアレ縞画像(平行移動済み画像と呼ぶ)を生成する。なお、体動が発生した後、次の体動が発生するまでに撮影された被写体元モアレ縞画像(例えば、
図8のG1−4〜G4−5)は、互いに被写体の位置は同じであると考えられるので、ひとまとまりとして同じ移動方向及び同じ画素数分平行移動させる設定とすると、処理時間を短縮することができる。
【0084】
次いで、制御部51は、Mセットの各被写体元モアレ縞画像セット毎に、N枚の被写体元モアレ縞画像(又は平行移動済み画像)を加算(対応する画素(同じ位置の画素)の信号値を加算)して複数の被写体モアレ縞画像を生成する(ステップS17)。
ステップS16の平行移動済み画像の生成により、例えば、Mセットの各被写体元モアレ縞画像セット内のN枚(体動が生じて除去した画像がある場合は、その枚数分をNからマイナスした枚数)の被写体元モアレ縞画像のそれぞれには、平行移動していない画像と平行移動済み画像(体動発生前については平行移動していない画像のみの場合もある)が存在する。これらを、同じ被写体元モアレ縞画像セット内のN枚の被写体元モアレ縞画像間で総当り的に組み合わせて加算を行い、各被写体元モアレ縞画像セット毎に複数の被写体モアレ縞画像を生成する。或いは、体動が発生した後、次の体動が発生するまでの間に撮影された被写体元モアレ縞画像間(例えば、
図8のG1−1〜G1−5の被写体モアレ縞画像セットの場合は、G1−4とG1−5)では、被写体位置は同じであるため、同じ方向に同じ画素数移動したものをひとまとまりとして扱って他の被写体元モアレ縞画像と組み合わせて加算を行ってもよい。
なお、体動が発生したことにより除去された画像がある被写体元モアレ縞画像セットにおいては、加算後の被写体モアレ縞画像の信号値レベルが低くなり、画質が悪くなる。そこで、このような場合には、被写体元モアレ縞画像を加算した後、信号値レベルを補正することが好ましい。例えば、N枚の被写体元モアレ縞画像を加算して1枚の被写体モアレ縞画像を生成するところ、I枚(Iは正の整数。I<N)の被写体元モアレ縞画像で1枚のモアレ縞画像を生成した場合、生成されたモアレ縞画像の各画素の信号値をN/I倍にすることが好ましい。
【0085】
次いで、制御部51は、Mセットの各被写体元モアレ縞画像セットのそれぞれから生成された複数の被写体モアレ縞画像と、BGモアレ縞画像とを用いて、複数の再構成画像を生成する(ステップS18)。
具体的には、まず、各BG元モアレ縞画像セットにおいて、除去された被写体元モアレ縞画像に対応するBG元モアレ縞画像を除去し、残りのBG元モアレ縞画像を加算(対応する画素の信号値を加算)してBGモアレ縞画像を生成する。次いで、各被写体元モアレ縞画像セットから生成された被写体モアレ縞画像を1枚ずつ取得することにより、M枚の被写体モアレ縞画像を取得し、取得した被写体モアレ縞画像とBGモアレ縞画像とを用いて、吸収画像、微分位相画像、小角散乱画像の3種類の再構成画像を生成する。M枚の被写体モアレ縞画像間の組み合わせは、例えば、総当り的にして複数の再構成画像を生成して行ってもよいし、被写体位置が互いに同じであると推測される被写体モアレ縞画像(例えば、
図8のG2〜G4)は、同じ方向に同じ画素数平行移動させた被写体元モアレ縞画像を加算して生成した被写体モアレ縞画像をひとまとまりとして他の被写体モアレ縞画像(例えば、
図8のG1)と組み合わせることとしてもよい。
M枚の被写体モアレ縞画像とM枚のBGモアレ縞画像に基づく上記3種類の再構成画像の生成は、ステップS14で説明したものと同様の手法により生成することができる。
【0086】
次いで、制御部51は、生成された複数の再構成画像のうち、最も輪郭が明瞭な画像を診断に用いる再構成画像として選択し(ステップS19)、ステップS20に移行する。例えば、生成された各再構成画像において、隣接する画素同士で信号値の差分をとり、その差分が最も大きい画像を最も輪郭が明確な画像として選択することができる。
【0087】
ステップS20において、制御部51は、診断用の再構成画像を撮影オーダー情報に対応付けて記憶部55に記憶させるとともに、診断用の再構成画像を表示部53に表示し(ステップS20)、再構成画像生成表示処理Aを終了する。
【0088】
以上のように、第1の実施形態におけるX線撮影システムによれば、X線撮影装置1の制御部181は、同一格子位置で、X線検出器16において1枚の再構成画像を生成するために用いられる再構成用のモアレ縞画像を1枚取得するのに必要とされる電荷蓄積時間より短い蓄積時間でのモアレ縞画像の取得を複数回行わせることにより、複数の元モアレ縞画像を取得させる。コントローラー5の制御部51は、X線検出器16により取得された複数の元モアレ縞画像を加算して再構成用のモアレ縞画像を生成し、生成した再構成用のモアレ縞画像に基づいて被写体の再構成画像を生成する。
従って、撮影された1枚当たりの画像に入り込む体動ボケの影響を低減することができ、その結果、体動の影響の低減された再構成画像を得ることが可能となる。また、モアレ縞画像を撮影する時間を複数回に分割して撮影することで、体動の発生したタイミングの元モアレ縞画像を特定することが可能となるので、特定した画像を取り除くか又は体動ボケを補正してモアレ縞画像を生成することにより、体動の影響の低減された再構成画像を得ることが可能となる。
【0089】
(体動発生の判別の変形例1)
上記実施形態においては、制御部51は、体動検出センサー19を用いて体動が発生した被写体元モアレ縞画像を判別することとしたが、画像処理により判別することとしてもよい。例えば、各被写体元モアレ縞画像について、1つ前に撮影された被写体元モアレ縞画像との間で対応する画素同士の信号値の差分をとって差分画像を生成する。体動が生じた場合、差分画像において、体動した方向に輪郭の差分が現れるので、差分が生じている画素の幅が予め定められた画素数以上である場合に、体動が発生した画像であると判別する。なお、被写体元モアレ縞画像には被写体の注目領域以外の領域も写っているため、注目領域にROI(関心領域)指定してROI内で体動を判定することが好ましい。ROIは、例えば、撮影時に被写体が載置される領域に応じて予め定められた領域、例えば、画像の中央から所定範囲の領域等として定めてもよいし、被写体の解剖学的構造に基づいて画像解析により定めることとしてもよい。
【0090】
(体動発生の判別の変形例2)
上記変形例1において、体動を判別しやすくするため、被写体元モアレ縞画像の撮影時に被写体とともにマーカーを撮影してもよい。そして、制御部51は、各被写体元モアレ縞画像について、例えば、1つ前に撮影された被写体元モアレ縞画像との間で対応する画素同士の信号値の差分をとって被写体元モアレ縞画像間のマーカー位置のズレを判別し、マーカー位置のズレ(差分が生じている画素の幅)が所定以上である場合に、体動が発生していると判別することとしてもよい。または、各被写体元モアレ縞画像からエッジ検出によりマーカーの輪郭を抽出した後、1つ前に撮影された被写体元モアレ縞画像からエッジを検出した画像との差分をとって元モアレ縞画像間のマーカー位置のズレを判別し、マーカー位置のズレが所定画素以上である場合に、体動が発生していると判別することとしてもよい。
マーカーの素材は、鉛、金属等のX線を透過しにくい材料であることが好ましい。また、造影剤を封入した箱、厚い樹脂等としてもよい。また、マーカーは、被写体上に装着することとしてもよいし、保持具上に装着することとしてもよい。
【0091】
(体動発生の判別の変形例3)
上記変形例2においては、マーカーを被写体上又は保持具上に装着することとしたが、1つのマーカーでは、xy方向の体動しか検出することができない。そこで、
図10(a)に示すように、X線源11とX線検出器16を結ぶ光軸Lと平行方向に、被写体(
図10においてHで示す)を挟んで相似形の2つのマーカー(マーカー31、32)を並べて配置することとしてもよい。このようにすれば、
図10(b)に示すように、xy方向以外の方向に体動が発生した場合であっても体動を判別することができる。即ち、3次元方向の体動を判別することができる。具体的には、撮影中にxy方向以外で体動が発生した場合、
図10(b)に示すように、マーカー31、32の中心を結ぶ軸が光軸Lとずれるため、画像G上で2つのマーカー像の位置関係にずれが生じる。そこで、2つのマーカー像にずれが生じた画像を体動の生じた画像として判別することができる。2つのマーカー像にずれが生じたか否かは、例えば、各被写体元モアレ縞画像からエッジ検出等により2つのマーカー31、32の輪郭を抽出し、2つのマーカー31、32の輪郭がずれているか否かにより判別することができる。なお、xy方向の体動は、2つのマーカーのうち何れかを基準マーカーとし、体動発生の判別の変形例2で説明したように、被写体元モアレ縞画像間の基準マーカーの位置の差分に基づいて判別することができる。なお、
図10(a)、(b)においては、格子の図示は省略している。
【0092】
図11(a)、(b)に、2つのマーカー31、32を備えたマーカー部材3の一例を示す。
図11(a)、(b)に示すように、マーカー部材3は、例えば、コの字型のアーム33の上下に相似形の2つのマーカー31、32を備える。アーム33には、アーム33を伸縮するための伸縮部331が設けられており、アーム33を伸縮させて被写体Hを挟むことができるようになっている。
マーカー31、32の素材としては、画像上で被写体像とマーカー像の境界が明瞭となる素材、例えば、鉛、金属等であることが好ましい。また、造影剤を封入した箱、厚い樹脂等としてもよい。また、マーカー31、32は、被写体上に装着することとしてもよいし、保持具上に装着することとしてもよい。
【0093】
なお、上述のマーカー部材3で被写体を挟むことにより、被写体厚の情報を取得することができるので、この被写体厚の情報を各種画像処理や撮影条件を決める時のパラメーターとして使用することも可能である。
【0094】
(位置ズレ補正の変形例)
上記実施形態においては、被写体元モアレ縞画像間の位置ズレを補正するために、被写体元モアレ縞画像を平行移動させた平行移動済み画像を用いて複数の被写体の再構成画像の生成を行い、最適な診断用の再構成画像を選択する場合を例にとり説明したが、体動の発生した被写体元モアレ縞画像を除去した後、Mセットの各被写体元モアレ縞画像セット毎に、N枚(体動が生じて除去した画像がある場合は、その枚数分をNからマイナスした枚数)の被写体元モアレ縞画像間の位置ズレ補正を行い、位置ズレ補正されたN枚の被写体元モアレ縞画像を加算して被写体モアレ縞画像を生成してもよい。そして、各被写体元モアレ縞画像セット毎に生成されたM枚の被写体モアレ縞画像と、BG元モアレ縞画像セット毎にN枚のBG元モアレ縞画像を加算することにより生成したM枚のBGモアレ縞画像とを用いて、3種類の被写体の再構成画像を生成することとしてもよい。
被写体元モアレ縞画像間の位置ズレ補正は、例えば、上述のように被写体とともにマーカーが撮影されている被写体元モアレ縞画像の場合、各被写体元モアレ縞画像からエッジ検出等によりマーカーの輪郭を抽出し、基準画像(例えば、最初に撮影された被写体元モアレ縞画像)に対し、他の被写体元モアレ縞画像を平行移動させてマーカーの位置(
図11に示すような2つのマーカーを撮影した場合は、何れか一方のマーカー位置)を合わせることで、元モアレ縞画像間の被写体位置のズレを補正することができる。
【0095】
なお、マーカーの形状としては、
図12に示すように、多面体とすることが好ましい。多面体であれば、
図12に示すように頂点の位置ズレからxy方向に回転する体動による位置ズレを検出することができるので、位置ズレ補正を行う際、基準画像に対し、他の被写体元モアレ縞画像を平行移動及び回転させてマーカーの位置(
図11に示すような2つのマーカーを撮影した場合は、何れか一方のマーカー位置)を合わせることで、元モアレ縞画像間の被写体位置のズレを精度良く補正することができる。また、
図13に示す複数の円の組み合わせのように、多面体でなくとも3点の方向を特定できる形状であれば、回転による位置ズレを検出することができる。なお、
図14に示すように、円や球等は、xy方向の回転による位置ズレを検出することができないので好ましくない。
【0096】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態におけるX線撮影システムの構成は、第1の実施形態で説明したものと同様であるので説明を援用する。第2の実施形態においては、撮影制御処理及び再構成画像生成処理が第1の実施形態と異なるので、以下に説明する。
【0097】
図15に、第2の実施形態においてX線撮影装置1の制御部181により実行される撮影制御処理(撮影制御処理B)のフローチャートを示す。
図15を参照して撮影制御処理Bの流れについて説明する。
【0098】
まず、オペレーターにより操作部182の曝射スイッチが操作されると(ステップS21;YES)、制御部181は、X線源11、X線検出器16、駆動部12aを制御して縞走査法による複数ステップの撮影を複数回実行し、1枚の再構成画像を生成するのに必要な一連のモアレ縞画像を取得する(ステップS22)。
【0099】
ステップS22において、制御部181は、
図16に示すように、X線検出器16により、1枚の再構成画像を生成するためのモアレ縞画像セット(
図7のモアレ縞画像G1〜G4)を取得するのに必要とされる総蓄積時間T0よりも短い蓄積時間T0/JでM枚のモアレ縞画像からなるモアレ縞画像セットの撮影をJ回(Jは正の整数。J≧2。)繰り返して、全体の蓄積時間が総蓄積時間T0となるように撮影制御を行う。即ち、総蓄積時間T0をJ分割(
図16においては、5分割)し、それぞれT0/Jの蓄積時間で、低線量の再構成画像(元再構成画像と呼ぶ)を生成するためのモアレ縞画像を1セットずつ取得する。
【0100】
具体的に、制御部181は、第2格子15が停止した状態でX線源11によるX線照射、及びX線検出器16によるリセット及び電荷蓄積を開始し、蓄積時間T0/MJが経過した後、X線照射及び蓄積を停止し、X線検出器16によるモアレ縞画像の読み取りを行わせる。また、駆動部12aを制御してマルチスリット12の移動を開始し、d/M(μm)移動すると停止させる。マルチスリット12の停止後、X線源11によるX線照射及びX線検出器16によるリセット及び電荷の蓄積を開始し、次の撮影を行う。同様の撮影をM回(Mステップ)繰り返すことにより、元再構成画像の生成に必要なM枚のモアレ縞画像(モアレ縞画像セット)を生成する。以上のM枚のモアレ縞画像の取得をJ回繰り返し、1枚の再構成画像の生成に必要なJセットのモアレ縞セットを撮影する。
なお、X線照射及び停止は、1回の撮影毎に行うのではなく、一連のモアレ縞画像の撮影が終了するまで連続して照射することとしてもよい。
【0101】
第1の実施形態で説明したように、同じ被写体部位を撮影する場合、同じ被写体拡大率であればX線検出器16の蓄積時間Tsが短くなるほど画像上での体動量が少なくなり、1枚当たりのモアレ縞画像の体動ボケの影響が低減される。即ち、1枚当たりのモアレ縞画像を生成するのに必要な蓄積時間を従来のT0/Mから蓄積時間T0/MJに短縮することで、体動ボケの影響を低減することができる。
【0102】
各モアレ縞画像を生成するための蓄積時間T0/MJは、(式1)のTs=T0/MJとした場合に算出される体動量の値が許容される体動量(体動許容量という)を超えない値となるように設定することが好ましい。体動量が体動許容量を超えないように蓄積時間T0/MJを決定して撮影を行うようにすることで、1枚当たりの画像に含まれる体動の影響を抑制することができる。これにより、再構成画像に含まれる体動の影響も抑制することができる。
【0103】
ステップS22において得られるJセットのモアレ縞画像セットのそれぞれからは、
図9のステップS14で説明した手法により、吸収画像、微分位相画像、小角散乱画像の3種類の再構成画像を生成することができる。これらの再構成画像は、総蓄積時間T0よりも短い蓄積時間T0/Jで得られたものであり、元再構成画像と呼ぶ。総蓄積時間T0をJ個に分割して撮影することによりJセットのモアレ縞画像セットを生成し、それぞれのモアレ縞画像セットから元再構成画像を生成することで、体動の発生したタイミングの元再構成画像を特定することが可能となるので、特定した画像を取り除くか又は体動ボケを補正して体動の影響の低減された再構成画像を生成することが可能となる。
【0104】
元再構成画像の生成は、X線撮影装置1で行ってもよいし、コントローラー5において行ってもよいが、本実施形態においては、コントローラー5において行うこととして説明する。また、吸収画像の複数の元再構成画像については、互いに対応する画素の信号値を加算することにより、診断用の最終的な吸収画像を生成することができる。微分位相画像及び小角散乱画像の複数の元再構成画像については、互い対応する画素の信号値を平均することにより、診断用の最終的な微分位相画像、小角散乱画像を生成することができる。
【0105】
一連の撮影開始と同時に、制御部181は、体動検出センサー19による検出を開始させ、体動検出センサー19により体動が検出された場合に、撮影開始からの経過時間を取得することにより、体動が発生したモアレ縞画像を特定する。
【0106】
一連の撮影が終了すると、制御部181は、各モアレ縞画像に対し、モアレ縞画像セットを識別するためのセットID、何ステップ目の格子位置の撮影か識別するためのステップID、被写体有無、患者ID、体動の有無等を付帯情報として対応付けて、通信部184によりコントローラー5にモアレ縞画像を送信させる(ステップS23)。通信部184からコントローラー5に対しては1枚のモアレ縞画像の撮影が終了する毎に1枚ずつ送信することとしてもよいし、1枚の元再構成画像を構成するモアレ縞画像1セット分の撮影が終了する毎にその分をまとめて送信してもよいし、1枚の再構成画像を生成するための全てのモアレ縞画像が得られた後、まとめて送信することとしてもよい。
【0107】
なお、本実施形態においては、被写体台13に被写体を載置したX線撮影(被写体有りでのX線撮影)と被写体台13に被写体を載置しないX線撮影(被写体無しでのX線撮影)が行われ、被写体有りの一連のモアレ縞画像及び被写体無しの一連のモアレ縞画像が取得される。本実施形態において、元再構成画像生成用の被写体有りのモアレ縞画像を被写体モアレ縞画像と呼び、元再構成画像生成用の被写体無しのモアレ縞画像をBGモアレ縞画像と呼ぶ。
【0108】
コントローラー5においては、通信部54により本体部18からの1枚の再構成画像を生成するための一連の被写体モアレ縞画像及びBGモアレ縞画像が受信されると、制御部51は、再構成画像生成表示処理(再構成画像生成表示処理B)を実行する。
【0109】
図17に、コントローラー5の制御部51により実行される再構成画像生成表示処理Bのフローチャートを示す。再構成画像生成表示処理Bは、操作部52の操作に応じて制御部51と記憶部55に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0110】
まず、制御部51は、通信部54により受信した各モアレ縞画像セット毎に元再構成画像を生成することにより、J枚の元再構成画像を生成する(ステップS31)。元再構成画像は、
図9のステップS14で説明した再構成画像の生成と同様の手法により生成することができる。
【0111】
次いで、制御部51は、生成した元再構成画像の中から、体動の発生した元再構成画像を判別する(ステップS32)。ここでは、元再構成画像を構成した各モアレ縞画像の付帯情報に基づいて体動の発生した被写体モアレ縞画像を判別し、その被写体モアレ縞画像を含んで生成された元再構成画像を体動の発生した元再構成画像と判定する。
なお、第1の実施形態で説明した(体動発生の判別の変形例1)〜(体動発生の判別の変形例3)の「被写体元モアレ縞画像」を「元再構成画像」とした手法により体動を判別することとしてもよい。
【0112】
次いで、制御部51は、判別の結果、体動が発生した元再構成画像が存在したか否かを判断する(ステップS33)。
体動が発生した元再構成画像が無いと判断した場合(ステップS33;NO)、制御部51は、ステップS36に移行する。
【0113】
体動が発生した元再構成画像が有ると判断した場合(ステップS33;YES)、制御部51は、体動の発生した元再構成画像の除去(削除)又は体動ボケの補正を行う(ステップS34)。
縞走査法での体動補正処理は、体動が発生した各元再構成画像のそれぞれに含まれるボケ補正と、体動により生じた画像間の被写体位置のズレの補正の2種類がある。
ステップS34における補正は、体動の発生した各元再構成画像のそれぞれに含まれる体動ボケを補正するものである。体動ボケの補正の手法としては、例えば、特許第5182380号公報に記載の手法を用いることができる。例えば、PSF(Point Spread Function)を表す行列コンボルーション演算等により、画像(ここでは、元再構成画像)に第1の方向のボケを加えた第1ボケ画像、第2の方向のボケを加えた第2ボケ画像、第3の方向のボケを加えた第3ボケ画像、を生成し、3つのボケ画像のうち元再構成画像とのボケ差が最も小さい画像に加えられたボケの方向と、最も大きい画像に加えられたボケの方向に直交する方向とを用いて元再構成画像に含まれるボケを推定し、推定結果を用いてディコンボルーション演算を行うことにより元再構成画像に含まれるボケを補正することができる。
【0114】
次いで、制御部51は、体動により生じた元再構成画像間の被写体位置のズレを補正する(ステップS35)。
元再構成画像間の被写体位置のズレは、例えば、特開2001−157667号公報等に記載のローカルマッチング処理等を用いて行うことができる。また、第1の実施形態で説明した(位置ズレ補正の変形例)のように、被写体とともにマーカーを撮影しておくこととし、各元再構成画像からエッジ検出等によりマーカーの輪郭を抽出し、基準画像(例えば、最初に撮影されたモアレ縞画像セットに基づいて生成された元再構成画像)に対し、他の元再構成画像を平行移動させてマーカーの位置(
図11に示すような2つのマーカーを撮影した場合は、何れか一方のマーカー位置)を合わせることで、元再構成画像間の被写体位置のズレを補正することとしてもよい。
【0115】
次いで、制御部51は、補正後の複数の元再構成画像に基づいて、診断用の再構成画像を生成する(ステップS36)。上述のように、吸収画像の複数の元再構成画像については、互いに対応する画素の信号値を加算することにより、診断用の最終的な吸収画像を生成する。微分位相画像及び小角散乱画像の複数の元再構成画像については、互い対応する画素の信号値を平均することにより、診断用の最終的な微分位相画像、小角散乱画像を生成する。
【0116】
次いで、制御部51は、生成された再構成画像を撮影オーダー情報に対応付けて記憶部55に記憶させるとともに、生成された再構成画像を診断用の再構成画像として表示部53に表示し(ステップS37)、再構成画像生成表示処理Bを終了する。
【0117】
ここで、
図18に、体動無しのモアレ縞画像とその信号値プロファイル(
図18(a))、及び体動有りのモアレ縞画像とその信号値プロファイル(
図18(b))の比較を示す。
図19に、体動無しの元再構成画像とその信号値プロファイル(
図19(a))、及び体動有りの元再構成画像とその信号値プロファイル(
図19(b))の比較を示す。なお、
図18、
図19は同一撮影により得られた画像である。
図18、
図19で画像の見え方と信号プロファイルを比較すると、元再構成画像のほうが体動の影響による差異が明確に現れていることがわかる。従って、本実施形態のように元再構成画像を用いて体動の発生した画像の判別や体動補正を行うことで、従来の技術(例えば、特許文献1、2)に記載のようにモアレ縞画像を用いた場合に比べて判別精度や補正精度を向上させることができる。即ち、体動の影響による画質劣化を大幅に低減した再構成画像を得ることが可能となる。
【0118】
以上のように、第2の実施形態におけるX線撮影システムによれば、X線撮影装置1の制御部181は、X線検出器16において1枚の再構成画像を生成するためのモアレ縞画像セットを取得するのに必要とされる総電荷蓄積時間より短い蓄積時間でのモアレ縞画像セットの取得を複数回行わせる。コントローラー5の制御部51は、X線検出器16により取得された複数のモアレ縞画像セット毎に、一定周期間隔の複数のモアレ縞画像に基づいて再構成画像よりも低線量の複数の元再構成画像を生成し、生成された複数の元再構成画像に基づいて被写体の再構成画像を生成する。
従って、撮影された1枚当たりの画像に入り込む体動ボケの影響を低減することができ、その結果、体動の影響の低減された再構成画像を得ることが可能となる。また、体動の発生したタイミングの元再構成画像を特定することが可能となるので、特定した画像を取り除くか又は体動ボケを補正してモアレ縞画像を生成することにより、体動の影響の低減された再構成画像を得ることが可能となる。
【0119】
なお、上述した本実施形態における記述は、本発明に係る好適な一例であり、これに限定されるものではない。
【0120】
例えば、上記実施形態では、撮影時にマルチスリット12を第1格子14及び第2格子15に対して移動させる方式のタルボ・ロー干渉計を用いたX線撮影装置を例にとり説明したが、本発明は、マルチスリット12又は第1格子14又は第2格子15の何れか又はそのうちの二つの格子を移動させる方式のタルボ・ロー干渉計を用いたX線撮影装置に適用してもよい。また、本発明は、第1格子14又は第2格子15の何れかを他の格子に対して移動させる方式のタルボ干渉計を用いたX線撮影装置に適用してもよい。
【0121】
また、上記実施形態においては、3種の再構成画像を生成する場合について説明したが、少なくとも一つの再構成画像を生成するX線撮影システムであれば本発明を適用することが可能ある。
【0122】
また、上記実施形態において説明した縞走査法以外にも再構成画像を生成する方法が複数ある。例えば、一枚の被写体モアレ縞画像とBGモアレ縞画像から再構成画像を取得する方法として、公知文献(D)に記載のフーリエ変換法(公知文献(D):M.Takeda, H.Ina, and S.Kobayashi,「Fourier-Transform Methode of Fringe-Pattern Analysis for Computer-Based Topography and Interferometry」J.Opt.Soc.Am.72,156(1982)参照)や特開2012−143491号公報に記載の方法等がある。上述の第1の実施形態は、フーリエ変換法において、被写体モアレ縞画像とBGモアレ縞画像を取得し、再構成画像を生成する際にも適用することができる。
【0123】
また、上記第2の実施形態においては、体動の生じた元再構成画像を体動検出センサー19又は画像処理により判別することとしたが、ユーザの目視により判別することとしてもよい。例えば、元再構成画像をX線撮影装置1において生成する構成とし、生成した元再構成画像を表示部183に表示することとすれば、撮影中に体動が発生した場合に途中でX線照射を中止して無駄な被曝を防止することが可能となる。
【0124】
その他、X線撮影システムを構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。