特許第6413701号(P6413701)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6413701
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】生物検出用担体、及び生物の検出方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20181022BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20181022BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20181022BHJP
   C12Q 1/6837 20180101ALI20181022BHJP
【FI】
   C12M1/34 B
   C12M1/00 A
   C12N15/09 200
   C12Q1/6837 ZZNA
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-241121(P2014-241121)
(22)【出願日】2014年11月28日
(65)【公開番号】特開2016-101120(P2016-101120A)
(43)【公開日】2016年6月2日
【審査請求日】2017年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】特許業務法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 隆明
(72)【発明者】
【氏名】一色 淳憲
【審査官】 木原 啓一郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/169099(WO,A1)
【文献】 特開2005−351690(JP,A)
【文献】 特開2014−230497(JP,A)
【文献】 Clin. Chem. Lab. Med.,2000年,Vol. 38, No. 2,p. 87-91
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00−3/10
C12N 15/00−15/90
C12Q 1/00−3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の生物のゲノムにおける増幅対象領域を標識されたプライマーを用いて増幅させ、得られた増幅産物の標識を検出することにより、該ゲノムを有する生物を検出するために用いられる生物検出用担体であって、
前記増幅産物にハイブリダイズする増幅産物検出用プローブが固定化された増幅産物検出用スポットと、
前記標識されたプライマーにハイブリダイズするプライマー検出用プローブが固定化されたプライマー検出用スポットと、を備えた
ことを特徴とする生物検出用担体。
【請求項2】
前記プライマー検出用スポットに、
前記標識されたプライマーを構成するフォワードプライマーにハイブリダイズするプローブ、及び/又は、
前記標識されたプライマーを構成するリバースプライマーにハイブリダイズするプローブが固定化された
ことを特徴とする請求項1記載の生物検出用担体。
【請求項3】
前記標識が、蛍光物質又は発色物質による標識であることを特徴とする請求項1又は2記載の生物検出用担体。
【請求項4】
前記増幅に用いられた反応液における前記標識されたプライマーの有無が、前記プライマー検出用スポットにおける標識の検出にもとづき判定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の生物検出用担体。
【請求項5】
前記増幅に用いられた反応液における前記増幅産物の有無と前記標識されたプライマーの有無が、前記増幅産物検出用スポットと前記プライマー検出用スポットにおける標識の検出にもとづき同時に判定されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の生物検出用担体。
【請求項6】
検出対象の生物のゲノムにおける増幅対象領域を標識されたプライマーを用いて増幅させ、得られた増幅産物の標識を検出することにより、該ゲノムを有する生物を検出する生物の検出方法であって、
前記増幅産物にハイブリダイズする増幅産物検出用プローブが固定化された増幅産物検出用スポットと、前記標識されたプライマーにハイブリダイズするプライマー検出用プローブが固定化されたプライマー検出用スポットと、を備えた担体を用い、
前記増幅産物検出用プローブに前記増幅産物をハイブリダイズさせると共に、前記プライマー検出用プローブに前記標識されたプライマーをハイブリダイズさせ、
前記増幅産物検出用スポットと前記プライマー検出用スポットにおける標識の検出にもとづいて、前記増幅に用いられた反応液における前記増幅産物の有無と前記標識されたプライマーの有無を同時に判定する
ことを特徴とする生物の検出方法。
【請求項7】
前記プライマー検出用スポットにおいて標識が検出された場合、
前記増幅に用いられた反応液に前記標識されたプライマーが含有されていたと判定することを特徴とする請求項6記載の生物の検出方法。
【請求項8】
前記プライマー検出用スポットにおいて標識が検出され、かつ前記増幅産物検出用スポットにおいて標識が検出されなかった場合、
前記増幅産物検出用スポットにおいて標識が検出されなかった理由が、前記増幅に用いられた反応液への前記標識されたプライマーの入れ忘れではないと判定する
ことを特徴とする請求項7記載の生物の検出方法。
【請求項9】
前記プライマー検出用スポットにおいて標識が検出されなかった場合、
前記増幅に用いられた反応液に前記標識されたプライマーが含有されていなかったと判定することを特徴とする請求項6記載の生物の検出方法。
【請求項10】
前記プライマー検出用スポットにおいて標識が検出されず、かつ前記増幅産物検出用スポットにおいて標識が検出されなかった場合、
前記増幅産物検出用スポットにおいて標識が検出されなかった理由が、前記増幅に用いられた反応液への前記標識されたプライマーの入れ忘れであると判定することを特徴とする請求項9記載の生物の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子検査技術に関し、特に遺伝子増幅を行って得られた増幅産物の標識を検出することにより、該遺伝子を有する生物を特定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遺伝子検査では、環境や食品中から生物の細胞等を採取してDNAを抽出し、特定の遺伝子を増幅させる反応を行って、得られた増幅産物のサイズを電気泳動で確認することにより、検査対象の生物の存否の判定が行われている。このようにして増幅産物を得るためには、増幅に用いられる反応液中にプライマーと呼ばれる短いサイズの一本鎖核酸を添加する必要がある。
【0003】
電気泳動の結果が陰性の場合は、通常、検査対象の生物が存在していなかったと判断される。しかしながら、反応液中にプライマーを入れ忘れるという人為的なミスが生じた場合にも電気泳動の結果は陰性となる。したがって、電気泳動の結果が陰性の場合、その原因が、検査対象の生物が存在していなかったことによるものか、あるいはプライマーの入れ忘れによるものかは、判別がつかないという問題があった。
特に、処理しなければならないサンプル数が多い場合や、検査対象の生物種が多いために多数のプライマーを反応液に添加する必要がある場合などには、このような人為的ミスが生じる可能性は増大する。このため、電気泳動の結果が陰性の場合の原因追及が、困難を極めることも少なくなかった。
【0004】
一方、増幅産物の検出方法として、電気泳動のみならず、増幅産物にハイブリダイズするプローブが固定化されたスポットを備えたDNAチップを用いた方法が広く行われている。例えば、特許文献1に記載の食中毒菌検出用担体を用いれば、7種類の食中毒菌をそれぞれ特異的に同時に検出することが可能になっている。
【0005】
【特許文献1】国際公開2011−142119号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなDNAチップを用いても、遺伝子の増幅工程において反応液中にプライマーを添加し忘れたために増幅産物が得られなかった場合には、DNAチップによる検査対象の検査結果は陰性となり、その原因が、検査対象の生物が存在していなかったことによるものか、あるいはプライマーの入れ忘れによるものかは、電気泳動の場合と同様に、やはり判別がつかなかった。
【0007】
そこで、本発明者らは鋭意研究し、DNAチップに増幅産物を検出するためのプローブを固定化したスポットの他に、プライマーを検出するためのプローブを固定化したスポットを備えることによって、DNAチップにより増幅産物を検出すると共に、プライマーの入れ忘れも同時に検出可能にすることに成功し、本発明を完成させた。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、遺伝子検査結果が陰性であった場合に、その原因が、核酸増幅に用いられた反応液中へのプライマーの入れ忘れに起因するものであるか否かを判定可能な生物検出用担体、及び生物の検出方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の生物検出用担体は、検出対象の生物のゲノムにおける増幅対象領域を標識されたプライマーを用いて増幅させ、得られた増幅産物の標識を検出することにより、該ゲノムを有する生物を検出するために用いられる生物検出用担体であって、前記増幅産物にハイブリダイズする増幅産物検出用プローブが固定化された増幅産物検出用スポットと、前記標識されたプライマーにハイブリダイズするプライマー検出用プローブが固定化されたプライマー検出用スポットと、を備えた構成としてある。
【0009】
また、本発明の生物の検出方法は、検出対象の生物のゲノムにおける増幅対象領域を標識されたプライマーを用いて増幅させ、得られた増幅産物の標識を検出することにより、該ゲノムを有する生物を検出する生物の検出方法であって、前記増幅産物にハイブリダイズする増幅産物検出用プローブが固定化された増幅産物検出用スポットと、前記標識されたプライマーにハイブリダイズするプライマー検出用プローブが固定化されたプライマー検出用スポットとを備えた担体を用い、前記増幅産物検出用プローブに前記増幅産物をハイブリダイズさせると共に、前記プライマー検出用プローブに前記標識されたプライマーをハイブリダイズさせ、前記増幅産物検出用スポットと前記プライマー検出用スポットにおける標識の検出にもとづいて、前記増幅に用いられた反応液における前記増幅産物の有無と前記標識されたプライマーの有無を同時に判定する方法としてある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、遺伝子検査結果が陰性であった場合に、その原因が、核酸増幅に用いられた反応液中へのプライマーの入れ忘れに起因するものであるか否かを判定可能な生物検出用担体、及び生物の検出方法の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る生物検出用担体及び生物の検出方法の実施例で用いたPCR反応液の組成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る生物検出用担体及び生物の検出方法の実施例で用いたプライマーの塩基配列を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る生物検出用担体及び生物の検出方法の実施例で用いたプローブの塩基配列を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る生物検出用担体及び生物の検出方法の実施例で用いたDNAチップにおけるS/N比値(配列番号5〜7)を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る生物検出用担体及び生物の検出方法の実施例で用いたDNAチップにおけるS/N比値(配列番号8〜10)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る生物検出用担体及び生物の検出方法について、詳細に説明する。
本実施形態の生物検出用担体は、検出対象の生物のゲノムにおける増幅対象領域を標識されたプライマーを用いて増幅させ、得られた増幅産物の標識を検出することにより、該ゲノムを有する生物を検出するために用いられる生物検出用担体であって、増幅産物にハイブリダイズする増幅産物検出用プローブが固定化された増幅産物検出用スポットと、標識されたプライマーにハイブリダイズするプライマー検出用プローブが固定化されたプライマー検出用スポットとを備えたことを特徴とする。
【0013】
本実施形態の生物検出用担体として、マイクロアレイやDNAチップを好適に用いることができる。また、本実施形態の生物検出用担体として、ニトロセルロースなどの膜を使用しても良い。
【0014】
本実施形態の生物検出用担体の使用に先立って、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)などの核酸増幅反応によって、検査対象の生物のゲノムにおける増幅対象領域(標的領域)が標識されたプライマーを用いて増幅される。すなわち、検査対象の生物の細胞から抽出されたDNA(テンプレート)における遺伝子から選択された標的領域が増幅され、これにより得られた増幅産物は、DNAなどの核酸であり、標識を有している。なお、核酸増幅反応はPCRに限定されず、例えば、LAMP、SDA、LCA等を用いることもできる。また、核酸は核酸アナログであっても良く、例えばペプチド核酸(PNA)、Bridged Nucleic Acid(BNA)/Locked Nucleic Acid(LNA,登録商標)などであっても良い。
【0015】
本実施形態の生物検出用担体には、増幅産物にハイブリダイズする増幅産物検出用プローブがスポッティングされて、当該プローブが固定化された増幅産物検出用スポットを備えている。そして、本実施形態の生物検出用担体に核酸増幅に用いられた反応液を滴下して、増幅産物を増幅産物検出用プローブにハイブリダイズさせ、増幅産物の標識を検出することによって、反応液中における増幅産物の有無を検出することができる。
【0016】
また、本実施形態の生物検出用担体には、標識されたプライマーにハイブリダイズするプライマー検出用プローブがスポッティングされて、当該プローブが固定化されたプライマー検出用スポットを備えている。そして、本実施形態の生物検出用担体に核酸増幅に用いられた反応液を滴下して、プライマーをプライマー検出用プローブにハイブリダイズさせ、プライマーの標識を検出することによって、反応液中におけるプライマーの有無を検出することができる。
【0017】
すなわち、本実施形態の生物検出用担体によれば、増幅産物の有無の検出と同時に、核酸増幅に用いられた反応液中にプライマーが添加されていたか否かを検出することができる。
このため、例えば、反応液中にプライマーが添加されていたことが検出され、かつ増幅産物が検出されなかった場合には、その原因が、反応液中へのプライマーの入れ忘れではなく、検査対象の生物が存在していなかったことによるものと判断することが可能となる。
【0018】
プライマー検出用プローブとしては、標識されたプライマーを構成するフォワードプライマーにハイブリダイズするプローブ、又は、標識されたプライマーを構成するリバースプライマーにハイブリダイズするプローブのいずれか一方を用いることができる。この場合、プライマー検出用スポットには、標識されたプライマーを構成するフォワードプライマーにハイブリダイズするプローブ、又は、標識されたプライマーを構成するリバースプライマーにハイブリダイズするプローブが固定化される。これにより、核酸増幅に用いられた反応液中にプライマーが添加されていたか否かを検出することが可能である。
【0019】
また、プライマー検出用プローブとして、標識されたプライマーを構成するフォワードプライマーにハイブリダイズするプローブ、及び、標識されたプライマーを構成するリバースプライマーにハイブリダイズするプローブの両方を用いることができる。この場合、プライマー検出用スポットには、標識されたプライマーを構成するフォワードプライマーにハイブリダイズするプローブ、及び、標識されたプライマーを構成するリバースプライマーにハイブリダイズするプローブが固定化される。これにより、核酸増幅に用いられた反応液中にプライマーが添加されていたか否かをより確実に検出することが可能となる。
【0020】
本実施形態の生物検出用担体において、標識の方法は特に限定されないが、蛍光標識又は発色物質による標識を好適に用いることができる。
PCRにより蛍光標識を行う場合は、蛍光標識されたプライマーを用いて、末端のみが蛍光標識された増幅産物を得ることができる。
蛍光標識成分としては、Cy5やCy3などを好適に用いることができる。さらに、標識として、ジコキシゲニン、ビオチン、放射性同位体などのその他のものを用いることも可能である。
【0021】
標識の検出は、蛍光スキャニング装置など一般的な標識検出装置を用いて行うことができる。蛍光標識を検出する場合は、例えば、東洋鋼鈑株式会社のBIOSHOT(R)を用いて、増幅産物の蛍光強度値を測定することにより行うことができる。
また、測定結果として、蛍光強度値の他、S/N比値(Signal to Noise ratio,(メディアン蛍光強度値−バックグラウンド値)÷バックグラウンド値)を算出することも好ましい。S/N比値にもとづいて、測定結果が陽性であるか陰性であるかを、精度高く判定することができるためであり、一般にS/N比値が3〜4以上の場合、陽性と判定することができる。なお、以下の実施例では、S/N比値が4以上の場合を陽性と判定している。
【0022】
次に、本実施形態の生物の検出方法について説明する。
本実施形態の生物の検出方法は、検出対象の生物のゲノムにおける増幅対象領域を標識されたプライマーを用いて増幅させ、得られた増幅産物の標識を検出することにより、該ゲノムを有する生物を検出する生物の検出方法であって、増幅産物にハイブリダイズする増幅産物検出用プローブが固定化された増幅産物検出用スポットと、標識されたプライマーにハイブリダイズするプライマー検出用プローブが固定化されたプライマー検出用スポットとを備えた担体を用い、増幅産物検出用プローブに増幅産物をハイブリダイズさせると共に、プライマー検出用プローブに標識されたプライマーをハイブリダイズさせ、増幅産物検出用スポットとプライマー検出用スポットにおける標識の検出にもとづいて、増幅に用いられた反応液における増幅産物の有無と標識されたプライマーの有無を同時に判定することを特徴とする。
【0023】
すなわち、本実施形態の生物の検出方法では、検査対象の生物の細胞からDNAが抽出された後、そのDNAにおける増幅対象領域を増幅するための標識されたプライマーを用いてPCRなどの核酸増幅反応を実施し、標識された増幅産物を生成する(増幅工程)。
なお、検査対象の生物として、カビや食中毒菌などの微生物を選択する場合、増幅工程に先立って、環境や食品中から微生物のサンプリングを行い、複数の微生物を同時に増菌培養した後、得られた培養液からDNAを同時に抽出することが好ましい。
【0024】
次に、本実施形態の生物検出用担体に、増幅に用いられた反応液を接触させて、増幅産物を増幅産物検出用プローブにハイブリダイズさせると共に、プライマーをプライマー検出用プローブにハイブリダイズさせる(ハイブリダイズ工程)。
そして、増幅産物とプライマーの標識を検出することにより、反応液中における増幅産物の有無と、プライマーの有無を同時に判定する(検出工程)。
【0025】
このような本実施形態の生物の検出方法において、プライマー検出用スポットで標識が検出された場合、増幅に用いられた反応液中に標識されたプライマーが含有されていたと判定することができる。
また、プライマー検出用スポットで標識が検出され、かつ増幅産物検出用スポットで標識が検出されなかった場合、増幅産物検出用スポットにおいて標識が検出されなかった理由が、増幅に用いられた反応液へのプライマーの入れ忘れではなく、検査対象の生物が存在していなかったことによるものと判断することが可能となる。
【0026】
さらに、プライマー検出用スポットにおいて標識が検出されなかった場合、増幅に用いられた反応液にプライマーが含有されていなかったと判定することができる。
また、プライマー検出用スポットにおいて標識が検出されず、かつ増幅産物検出用スポットにおいて標識が検出されなかった場合、増幅産物検出用スポットにおいて標識が検出されなかった理由が、増幅に用いられた反応液への標識されたプライマーの入れ忘れであると判定することができる。すなわち、増幅産物検出用スポットにおいて標識が検出されなかった直接的な原因が、反応液中へのプライマーの入れ忘れであることが確認できるため、反応液中にプライマーを入れて再度試験を行い、検査対象の生物の有無を再確認することが可能となる。
【0027】
本実施形態の生物検出用担体及び生物の検出方法において、標識されたプライマーは、当該プライマーにより得られる増幅産物を検出するための増幅産物検出用プローブとはハイブリダイズしないように設計される。また、プライマー検出用プローブは、ハイブリダイズの対象である標識されたプライマーにより得られた増幅産物とは適切にハイブリダイズすることができない。
【0028】
以上説明したように、本実施形態の生物検出用担体及び生物の検出方法によれば、遺伝子検査結果が陰性であった場合に、その原因が、核酸増幅に用いられた反応液中へのプライマーの入れ忘れに起因するものであるか否かを判定することができる。
すなわち、プライマー検出用スポットで標識が検出され、かつ増幅産物検出用スポットで標識が検出されなかった場合には、その原因が、反応液中へのプライマーの入れ忘れではなく、検査対象の生物が存在していなかったことによるものと判断することが可能となる。
また、プライマー検出用スポットにおいて標識が検出されず、かつ増幅産物検出用スポットにおいて標識が検出されなかった場合には、その原因が、反応液中へのプライマーの入れ忘れであることを容易に確認することが可能となる。
【実施例】
【0029】
本実施形態の生物検出用担体及び生物の検出方法の効果を確認するために、プライマーと試料の有無が異なる8種類の反応液を用いてPCRを実施し、増幅産物検出用スポットとプライマー検出用スポットを備えた担体を用いて、増幅産物とプライマーの検出試験を行った。
【0030】
検出対象の生物としては、アスペルギルス フラバス(Aspergillus flavus,菌株番号:JCM10252株)を使用した。この菌株のゲノムは、rRNA遺伝子におけるITS領域及びβチューブリン遺伝子を有している。この菌株をM40Y寒天培地を用いて25℃暗所下で7日間静置培養し、得られた菌糸体を検体とした。次いで、菌糸体の一部を採取し、直径0.5mmジルコニアビーズを入れたチューブに入れ、浸盪装置を用いてカビの細胞を破砕した。そして、DNA抽出装置によりカビのゲノムDNAを抽出した。このDNA抽出液をPCRにおいて使用する試料(テンプレート)とした。
【0031】
次に、8種類のPCR反応液(サンプル1〜8)を図1に記載の組成で調整した。すなわち、緩衝液(Ampdirect G/Crich)4.0μl、緩衝液(Ampdirect addition4)4.0μl、核酸合成基質(dNTP Mixture)1.0μl、ITS用フォワードプライマー(2.5μM)(配列番号1)1.0μl、ITS用リバースプライマー(2.5μM)(配列番号2)1.0μl、βチューブリン用フォワードプライマー(10μM)(配列番号3)1.0μl、βチューブリン用リバースプライマー(10μM)(配列番号4)1.0μl、DNAポリメラーゼ(Nova Taq Hot Start)0.2μl、試料(Asp.flavus DNA濃度:372ng)1.0μl、滅菌水(全量を20μlとする残量分)とし、プライマーと試料について、含めたものと含めないものを準備した。配列番号1〜4の塩基配列を図2に示す。また、サンプル毎に4つの同一の反応液を準備して、それぞれにつき試験を行った。
【0032】
サンプル1〜8におけるプライマーと試料の有無は、以下の通りである。
サンプル1:ITS用、βチューブリン用の各プライマーと、試料の全てを含む。
サンプル2:βチューブリン用のプライマーと、試料のみを含む。
サンプル3:ITS用のプライマーと、試料のみを含む。
サンプル4:試料のみを含む。
サンプル5:ITS用、βチューブリン用の各プライマーのみを含む。
サンプル6:βチューブリン用のプライマーのみを含む。
サンプル7:ITS用のプライマーのみを含む。
サンプル8:プライマー及び試料を含まない。
【0033】
PCRによる遺伝子の増幅には、サーマルサイクラーepグラジエント(エッペンドルフ株式会社)を使用した。反応条件は、以下の通りである。
(1)95℃ 10分
(2)95℃ 30秒(DNA鎖の乖離工程)
(3)56℃ 30秒(アニーリング工程)
(4)72℃ 60秒(DNA合成工程)
(5)72℃ 10分
(2)〜(4)を40サイクル
【0034】
生物検出用担体として、図3に示すプローブを固定化したものを準備した。
すなわち、プライマー検出用スポットとして、配列番号5の塩基配列(ITS用フォワードプライマーの相補鎖)からなるプローブが固定化されたものと、配列番号6の塩基配列(ITS用リバースプライマーの相補鎖)からなるプローブが固定化されたものと、配列番号7の塩基配列(βチューブリン用フォワードプライマーの相補鎖)からなるプローブが固定化されたものと、配列番号8の塩基配列(βチューブリン用リバースプライマーの相補鎖)からなるプローブが固定化されたものの4種類を備え、増幅産物検出用スポットとして、配列番号9の塩基配列(ITS領域検出用)からなるプローブが固定化されたものと、配列番号10の塩基配列(βチューブリン遺伝子検出用)からなるプローブが固定化されたものの2種類を備えたものを準備した。
【0035】
次に、PCR反応液4μLとハイブリダイゼーション用の緩衝液2μL(3×SSC/0.3%SDS クエン酸−生理食塩水−ドデシル硫酸ナトリウム)を混合したものを、上記生物検出用担体に滴下して、45℃で1時間反応させた。
反応後、生物検出用担体を室温下で洗浄液(2×SSC/0.2%SDS溶液、2×SSC溶液の順に)に浸して洗浄を行い、カバーガラスを載せて蛍光検出器Bioshot(東洋鋼鈑株式会社製)により各プローブのスポットの蛍光を検出した。
【0036】
具体的には、プローブにハイブリダイズした増幅産物の標識成分(Cy5)をレーザー光により励起して発光させ、その光量を検出器内に取り付けたCCDカメラにより検出した。また、光量を電気信号に置換して数値化し、蛍光強度値を得た。この蛍光強度値は、当該装置での強度指標であり、単位はない。また、S/N比値を算出した。その結果を図4,5に示す。
【0037】
サンプル1(ITS用、βチューブリン用の各プライマーと、試料の全てを含む)では、配列番号5〜10に対応するスポットは、全て陽性となっている。すなわち、2種類の増幅産物が検出されると共に、4つのプライマーが全て検出されている。
【0038】
サンプル2(βチューブリン用のプライマーと、試料のみを含む)では、配列番号7,8,10に対応するスポットのみが、陽性となっている。すなわち、βチューブリン遺伝子の増幅産物が検出されると共に、βチューブリン用の2つのプライマーが検出されている。
一方、ITS領域の増幅産物と、ITS用のプライマーは検出されていない。したがって、ITS領域の増幅産物が検出されない理由が、反応液中にITS用のプライマーが含まれていないためであることが分かる。
【0039】
サンプル3(ITS用のプライマーと、試料のみを含む)では、配列番号5,6,9に対応するスポットが、陽性となっている。すなわち、ITS領域の増幅産物が検出されると共に、ITS用の2つのプライマーが検出されている。
一方、βチューブリン遺伝子の増幅産物は検出されていないが、本サンプルではβチューブリン用プライマーを含まないにも拘わらず、βチューブリン用フォワードプライマーを検出するための配列番号7に対応するスポットも陽性となっている。その理由としては、ITS領域の増幅産物が、当該スポットに固定化されたプライマー検出用プローブとハイブリダイズしたことが考えられる。
しかしながら、βチューブリン用リバースプライマーを検出するための配列番号8に対応するスポットは陰性であることから、反応液中にβチューブリン用プライマーが適切に含まれていないことが確認できる。したがって、βチューブリン遺伝子の増幅産物が検出されない理由が、反応液中にβチューブリン用プライマーが適切に含まれていないためであることが分かる。
【0040】
サンプル4(試料のみを含む)では、全てのスポットが、陰性となっている。すなわち、増幅産物は検出されず、プライマーも検出されていない。したがって、増幅産物が検出されない理由が、反応液中にプライマーが含まれていないためであることが分かる。この場合、反応液中にプライマーを添加することでサンプル1と同条件の試験を行い、反応液中に試料が含まれていることを適切に確認することが可能となる。
【0041】
サンプル5(ITS用、βチューブリン用の各プライマーのみを含む)では、配列番号5〜8に対応するスポットのみが、陽性となっている。すなわち、増幅産物は検出されず、4つのプライマーのみが検出されている。したがって、増幅産物が検出されない理由が、反応液中に試料が含まれていないためであると判断できる。
【0042】
サンプル6(βチューブリン用のプライマーのみを含む)では、配列番号7,8に対応するスポットのみが、陽性となっている。すなわち、増幅産物は検出されず、βチューブリン用の2つのプライマーのみが検出されている。このとき、βチューブリン用のプライマーが検出されているにも拘わらず、βチューブリン遺伝子の増幅産物が検出されていないことから、反応液中に試料が含まれていないと判断することができる。
【0043】
サンプル7(ITS用のプライマーのみを含む)では、配列番号5,6に対応するスポットのみが、陽性となっている。すなわち、増幅産物は検出されず、ITS用の2つのプライマーのみが検出されている。このとき、ITS用のプライマーが検出されているにも拘わらず、ITS領域の増幅産物が検出されていないことから、反応液中に試料が含まれていないと判断することができる。
【0044】
サンプル8(プライマー及び試料を含まない)では、全てのスポットが、陰性となっている。すなわち、増幅産物は検出されず、プライマーも検出されていない。この場合、増幅産物が検出されない理由は、反応液中にプライマーが含まれていないためであると判断できる。そして、反応液中にプライマーを添加することでサンプル5と同条件の試験を行い、反応液中に試料が含まれていないことを適切に確認することが可能となる。
【0045】
以上の通り、本実施形態の生物検出用担体及び生物の検出方法によれば、反応液中における増幅産物とプライマーの有無を同時に検出することできる。このため、増幅産物が検出されない場合、反応液中にプライマーを添加して再度試験を行うことができ、反応液中における試料の有無を適切に確認することが可能となる。
【0046】
本発明は、以上の実施形態や実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の変更実施が可能である。例えば、本実施形態の生物検出用担体及び生物の検出方法において、プライマー及びプローブの配列は、生物種に応じて適宜選択することが可能である。また、実施例では微生物を対象として実験を行っているが、本発明は、対象とする生物の種類を限ることなく適用することが可能である。さらに、実施例では反応液に複数のプライマーセットを添加しているが、一組のプライマーセットのみを添加して実施することも勿論可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、食品検査、疫学的環境検査、環境検査、臨床試験、及び家畜衛生等において、生物検出用担体を用いて各種標的を検出する場合などに好適に利用することが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]