特許第6413797号(P6413797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6413797
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】フロアマット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60N 3/04 20060101AFI20181022BHJP
【FI】
   B60N3/04 A
   B60N3/04 C
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-13759(P2015-13759)
(22)【出願日】2015年1月27日
(65)【公開番号】特開2016-137814(P2016-137814A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2017年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】藤田 繁鉱
【審査官】 森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−089132(JP,A)
【文献】 特開平04−039136(JP,A)
【文献】 特開昭63−267306(JP,A)
【文献】 特開2010−269037(JP,A)
【文献】 実開昭63−189741(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 3/04
A47G 27/00 − 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布及び該基布に植毛された立毛繊維を有するマット材と、該マット材を支持する裏打ち材と、を備えるフロアマットであって、
前記裏打ち材は、前記マット材の裏面及び周縁に一体化されており、前記基布の裏面に配された裏打ち部と、前記裏打ち部に連続して設けられており、前記マット材の前記周縁における前記立毛繊維及び前記基布を外縁側から包み込むように配された周縁部とを備え、且つ、ウレタン材料からなり、
前記周縁部は、前記マット材の前記周縁にある前記立毛繊維を覆い隠しており、
前記周縁部の先端部は、前記立毛繊維の間に埋設されており、且つ、前記周縁における前記立毛繊維と前記先端部よりも内側にある前記立毛繊維とを区画しており、
前記周縁における前記立毛繊維と前記先端部よりも内側にある前記立毛繊維とが、前記基布上に途切れることなく連続して植毛されており、
前記周縁における前記立毛繊維と前記先端部よりも内側にある前記立毛繊維との高さが、揃っていることを特徴とするフロアマット。
【請求項2】
前記裏打ち材は、前記マット材に対して前記ウレタン材料を射出することにより一体成形されている請求項1に記載のフロアマット。
【請求項3】
前記裏打ち材における前記裏打ち部の外表面には、シボ加工がなされている請求項1又は2に記載のフロアマット。
【請求項4】
車両の床面に載置して使用される請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載のフロアマット。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載のフロアマットの製造方法であって、
前記マット材を金型に装着する装着工程と、
前記金型に前記ウレタン材料を注入し、前記マット材の前記裏面及び前記周縁に前記裏打ち材を一体成形する一体成形工程と、を備えており、
前記金型は、前記マット材を装着する一方の型と、前記裏打ち部を形成する裏打ち部キャビティを備える他方の型と、を備えており、
前記一方の型は、前記裏打ち部キャビティに対向するように凹設され前記マット材の前記立毛繊維を収容する立毛繊維収容部と、前記立毛繊維収容部の径方向外側に周設され前記裏打ち材の前記周縁部を形成する周縁部キャビティと、を備えており、
前記周縁部キャビティより径方向内側には、前記裏打ち部キャビティに対向して突設する周縁支持部が設けられており、
前記装着工程では、前記マット材の前記周縁及び前記裏面が、前記金型に注入される前記ウレタン材料に接するように、前記マット材の少なくとも端部が前記周縁支持部によって支持されており、
しかも、前記マット材の端部は、前記周縁支持部の先端が前記基布に突き刺ささることにより、支持されており、
前記マット材の前記周縁にある前記立毛繊維は、前記周縁支持部を介して前記周縁部キャビティの内部に配されていることを特徴とするフロアマットの製造方法。
【請求項6】
前記周縁支持部は、前記周縁部キャビティと前記立毛繊維の収容部との間で突出し、
前記周縁支持部の内周面は、前記周縁部キャビティの内周面に連続するように設けられており、
前記一体成形工程では、前記ウレタン材料は、前記マット材の前記裏面及び前記周縁に回りこみ、前記周縁部キャビティの内縁側において前記周縁部キャビティの内周面及び前記周縁支持部の内周面に沿って前記立毛繊維の間に分け入るように注入される、請求項5に記載のフロアマットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロアマット及びその製造方法に関する。更に詳しくは、軽量で扱いやすく、且つ生産効率に優れるフロアマット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立毛繊維を有する基布からなるマット材と、このマット材を支持する裏打ち材と、を備えるフロアマットが広く普及している(例えば、特許文献1参照)。そして、この種のフロアマットにおいては、周縁部(端末)の保護及び意匠性等の観点から、端末処理することが望まれている。
端末処理が施された具体的なフロアマットしては、例えば、(1)立毛繊維を有する基布からなるマット材と、その裏面に配設され、突起を有するゴム製ニブバッキング層とを備えており、周縁部がオーバーロックミシンにより縫製されているもの、(2)上記マット材と、その裏面に配設された不織布層とを備えており、周縁部がオーバーロックミシンにより縫製されているもの、(3)上記マット材と、その裏面に接着されており、外表面側がスライスされているウレタン層とを備えており、周縁部に布製等の外周テープが縫製されているもの等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−299576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来の端末処理を施す場合には、マット材の裏面にバッキング層やウレタン層等を配設する配設工程に加え、該配設工程後に、周縁部に対して、オーバーロックミシンによる縫製や外周テープの縫製を行う縫製工程が必要であり、生産効率の観点において未だ十分ではなく、工程数の減少が求められている。
また、裏打ち材としてゴム製のニブバッキング層等を用いる場合には、フロアマットの重量が大きくなり、取扱い性の観点において未だ十分ではなく、より軽量化されており、取扱い性に優れたものが求められている。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、軽量で扱いやすく、且つ生産効率に優れるフロアマット及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、基布及び該基布に植毛された立毛繊維を有するマット材と、該マット材を支持する裏打ち材と、を備えるフロアマットであって、
前記裏打ち材は、前記マット材の裏面及び周縁に一体化されており、前記基布の裏面に配された裏打ち部と、前記裏打ち部に連続して設けられており、前記マット材の前記周縁における前記立毛繊維及び前記基布を外縁側から包み込むように配された周縁部とを備え、且つ、ウレタン材料からなり、
前記周縁部は、前記マット材の前記周縁にある前記立毛繊維を覆い隠しており、
前記周縁部の先端部は、前記立毛繊維の間に埋設されており、且つ、前記周縁における前記立毛繊維と前記先端部よりも内側にある前記立毛繊維とを区画しており、
前記周縁における前記立毛繊維と前記先端部よりも内側にある前記立毛繊維とが、前記基布上に途切れることなく連続して植毛されており、
前記周縁における前記立毛繊維と前記先端部よりも内側にある前記立毛繊維との高さが、揃っていることを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記裏打ち材は、前記マット材に対して前記ウレタン材料を射出することにより一体成形されていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記裏打ち材における前記裏打ち部の外表面には、シボ加工がなされていることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のうちのいずれか一項に記載の発明において、車両の床面に載置されて使用されることを要旨とする。
上記問題を解決するために、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載のフロアマットの製造方法であって、
前記マット材を金型に装着する装着工程と、
前記金型に前記ウレタン材料を注入し、前記マット材の裏面及び周縁に前記裏打ち材を一体成形する一体成形工程と、を備えており、
前記金型は、前記マット材を装着する一方の型と、前記裏打ち部を形成する裏打ち部キャビティを備える他方の型と、を備えており、
前記一方の型は、前記裏打ち部キャビティに対向するように凹設され前記マット材の前記立毛繊維を収容する立毛繊維収容部と、前記立毛繊維収容部の径方向外側に周設され前記裏打ち材の前記周縁部を形成する周縁部キャビティと、を備えており、
前記周縁部キャビティより径方向内側には、前記裏打ち部キャビティに対向して突設する周縁支持部が設けられており、
前記装着工程では、前記マット材の前記周縁及び前記裏面が、前記金型に注入される前記ウレタン材料に接するように、前記マット材の少なくとも端部が前記周縁支持部によって支持されており、
しかも、前記マット材の端部は、前記周縁支持部の先端が前記基布に突き刺ささることにより、支持されており、
前記マット材の前記周縁にある前記立毛繊維は、前記周縁支持部を介して前記周縁部キャビティの内部に配されていることを要旨とする。
請求項に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記周縁支持部は、前記周縁部キャビティと前記立毛繊維の収容部との間で突出し、
前記周縁支持部の内周面は、前記周縁部キャビティの内周面に連続するように設けられており、
前記一体成形工程では、前記ウレタン材料は、前記マット材の前記裏面及び前記周縁に回りこみ、前記周縁部キャビティの内縁側において前記周縁部キャビティの内周面及び前記周縁支持部の内周面に沿って前記立毛繊維の間に分け入るように注入される、ことを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のフロアマットによれば、裏打ち材がウレタン製となっており、軽量であり、着脱時等の取扱い性に優れている。更には、裏打ち材がマット材の裏面及び周縁に一体成形されているため、生産効率に優れたものとなっている。
また、裏打ち材における裏打ち部の外表面にシボ加工がなされている場合には、フロアマットの載置面に対する滑りをより抑制することができる。
本発明のフロアマットの製造方法によれば、マット材に対する裏打ち材の形成と、マット材の周縁部における端末処理と、を1つの工程で行うことができる。そのため、製造を簡易化し、製造時間を短縮することができ、フロアマットを効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
図1】実施例に係るフロアマットを模式的に説明する断面図であり、(a)は全体図、(b)は周縁部の拡大図である。
図2】実施例に係るフロアマットの製造方法を示すフローチャートである。
図3】実施例に係る下型を模式的に説明する断面図である。
図4】下型にマット材を装着した状態を模式的に説明する断面図である。
図5】マット材を装着した下型に上型を設置した状態を模式的に説明する断面図である。
図6】金型のキャビティ内にウレタン材料を射出した状態を模式的に説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0010】
本実施形態に係るフロアマットは、基布12及びこの基布12に植毛された立毛繊維11を有するマット材10と、このマット材10を支持する裏打ち材20と、を備える。そして、裏打ち材20は、マット材10の裏面及び周縁に一体化されており、基布12の裏面に配された裏打ち部21と、裏打ち部21に連続して設けられており、マット材10の周縁における立毛繊維11及び基布12を外縁側から包み込むように配された周縁部22とを備え、且つ、ウレタン材料からなり、周縁部22は、マット材10の周縁にある立毛繊維11を覆い隠しており、周縁部22の先端部は、立毛繊維11の間に埋設されており、且つ、周縁における立毛繊維11と先端部よりも内側にある立毛繊維11とを区画しており、周縁における立毛繊維11と先端部よりも内側にある立毛繊維11とが、基布12上に途切れることなく連続して植毛されており、周縁における立毛繊維11と先端部よりも内側にある立毛繊維11との高さが、揃っていることを特徴とする(例えば、図1参照)。
【0011】
上記マット材の基布や立毛繊維に使用される繊維材料は、特に限定されず、公知の材料から適宜選択して使用することができる。
【0012】
本実施形態に係るフロアマットとしては、例えば、裏打ち材20は、マット材10に対してウレタン材料を射出することにより一体成形されている形態とすることができる。
【0013】
上記ウレタン材料は特に限定されず、公知の材料から適宜選択して使用することができる。特に、加水分解しにくい材料を使用することが好ましい。
【0014】
本実施形態に係るフロアマットとしては、例えば、裏打ち材20における裏打ち部21の外表面20aには、シボ加工がなされている形態とすることができる。この場合、フロアマットの載置面に対する滑りをより抑制することができる。
【0015】
また、本実施形態に係るフロアマットとしては、例えば、裏打ち材20の少なくとも裏打ち部21の外表面20aは、硬化処理されている形態とすることができる(例えば、図1参照)。この場合、フロアマットに防水性を付与することができる。更には、表面が滑らかになり、意匠性をより向上させることができる。
【0016】
本実施形態に係るフロアマットとしては、例えば、自動車等の車両の床面に載置されて使用される形態を挙げることができる。具体的には、自動車の車室内で運転席、助手席、後席の少なくとも何れか1箇所の足下に敷設されるものであり、また、自動車の荷室の床面に敷設されるものであってもよい。
【0017】
本実施形態に係るフロアマットの製造方法は、マット材10を金型30、40に装着する装着工程(ステップS2)と、金型30、40にウレタン材料を注入し、マット材10の裏面及び周縁に裏打ち材20を一体成形する一体成形工程(ステップS3)と、を備えている。そして、装着工程(ステップS2)では、マット材10の周縁部及び裏面が、金型30、40に注入されるウレタン材料に接するように、マット材10の少なくとも端部が支持されていることを特徴とする(例えば、図2図6参照)。
この場合、マット材に対する裏打ち材の形成と、マット材の周縁部における端末処理と、を1つの工程で行うことができる。そのため、フロアマットの製造を簡易化し、製造時間を短縮することができ、フロアマットを効率良く製造することができる。
また、周縁部においては、従来のようにオーバーロックミシン等による縫製にて端末処理する必要がなく、一体成形する際に用いる金型の形状等により、周縁部のデザインや意匠性を自由に変更することができる。
【実施例】
【0018】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。尚、本実施例では、自動車等の車両の床面に載置されて使用されるフロアマットを例示する。
【0019】
(1)フロアマットの構成
本実施例に係るフロアマット1は、図1[(a)は全体図、(b)は部分拡大図]に示すように、立毛繊維11及び基布12を有するマット材10と、マット材10を支持する裏打ち材20と、を備えている。マット材10は、基布12に立毛繊維11を植え込んで形成されている。
【0020】
裏打ち材20は、ウレタン材料からなり、マット材10の裏面及び周縁に一体化されており、裏打ち部21と周縁部22とを有している。ウレタン材料には、顔料を含有させる等により適宜着色を行うことができる。裏打ち部21の厚さは特に限定されないが、例えば5mm程度とすることができる。
【0021】
裏打ち部21は、基布12の裏面に配されている。周縁部22は、裏打ち部21に連続して設けられており、マット材10の周縁における立毛繊維11及び基布12を外縁側から包み込むように配されている。裏打ち材20の外表面20aは、硬化処理されると共に、シボ加工が施されている。尚、マット材10と裏打ち材20とは、マット材10に対してウレタン材料を射出することにより一体成形されている。
【0022】
(2)フロアマットの作用
次に、上記構成のフロアマット1の作用について説明する。車両の床にフロアマット1を載置すると、裏打ち材20の裏面が車両の床に接触する。このとき、裏打ち材20の外表面20aはシボ加工されているので、車両の床に対する滑りが抑制される。
【0023】
また、裏打ち材20の外表面20aは硬化処理されているので、例えば、濡れた靴などをマット材10に乗せた場合に、マット材10側から浸入した水分を、裏打ち材20から車両の床側に漏れ出すことが抑制される。このため、フロアマット1を載置した床面が水分で汚れることがなく、降水時でも床面が保護される。
【0024】
また、裏打ち材20の外表面20aは硬化処理されていることで、表面が滑面になり、意匠性が向上される。
【0025】
(3)フロアマットの製造方法
次に、上記構成のフロアマット1の製造方法について、図2に示すフローチャートに沿って説明する。フロアマット1は、上述したように、マット材10に対してウレタン材料を射出することにより一体成形されている。
【0026】
まず、金型の下型30を用意する。下型30は、図3に示すように、裏打ち材20の周縁部22を形成するための周縁部キャビティ31と、マット材10の立毛繊維11を収容する立毛繊維収容部32と、マット材10の基布12の周縁部を支持する周縁支持部33と、を備えている。
【0027】
周縁部キャビティ31の内面は、例えば、鏡面加工されており、一体成形後のフロアマット1を容易に取り出せるようになっている。周縁支持部33は、周縁部キャビティ31と立毛繊維収容部32との間で上側に突出しており、先端は基布12のキャビティ内での移動を防止するために基布12に軽く突き刺さるようになっている。
【0028】
そして、図4に示すように、下型30にマット材10を裏返して装着する(ステップS1、装着工程)。これにより、周縁支持部33に基布12の周縁部が支持される。
【0029】
次に、図5に示すように、下型30に上型40を設置する(ステップS2)。ここで、上型40は、図5に示すように、裏打ち材20の周縁部22を形成するための周縁部キャビティ41と、裏打ち材20の裏打ち部21を形成するための裏打ち部キャビティ42とを備えている。周縁部キャビティ41及び裏打ち部キャビティ42の内面は、例えば、鏡面加工されており、一体成形後のフロアマット1を容易に取り出せるようになっている。更に、裏打ち部キャビティ42の内面には細かい凹凸が形成されており、裏打ち部21の外表面20aにシボ加工をするようになっている。尚、裏打ち部キャビティ42の厚さは、裏打ち材20の最低厚さが5mm以上になることが、ウレタン材料の流通のしやすさの観点から好ましい。
【0030】
また、上型40と下型30とを合わせることにより、マット材10の周縁部及び裏面がウレタン材料に接するようにマット材10の少なくとも端部を支持することでマット材10を装着可能な金型を構成することができる。
【0031】
次に、図6に示すように、金型にウレタン材料を注入し、ウレタン材料がマット材10の裏側及び周縁部に回りこむ。そして、硬化されたウレタン材料が裏打ち材20として、マット材10の裏面及び周縁に一体成形される(ステップS3、一体成形工程)。このとき、ウレタン材料の射出圧はプラスチックの射出圧に比べて小さく、マット材10への浸襲は小さいので、マット材10の変形などを防止できる。また、ウレタン材料は基布12を透過することなく、基布12の裏面に一体化される。金型に接触したウレタン材料は硬化するので、裏打ち部20の外表面20aは硬化処理されることになる。
【0032】
その後は、上型40を離脱し(ステップS4)、フロアマット1を下型30から離脱する(ステップS5)。これにより、フロアマット1が形成される。
【0033】
(4)実施例の効果
本実施例のフロアマット1は、ウレタン材料からなる裏打ち材20を備えており、この裏打ち材20は、基布12の裏面に配された裏打ち部21と、この裏打ち部21に連続して設けられ、マット材10の周縁における立毛繊維11及び基布12を外縁側から包み込むように配された周縁部22と、を備えている。このように、軽量で柔らかく低コストのウレタン材料を用いているので、着脱時等の取扱い性に優れている。また、使用感の悪化やコスト高を抑制することができる。更には、マット材10に対し、裏打ち部21と周縁部22とを一体成形しているため、生産効率に優れたものとなっている。
更に、本実施例では、裏打ち材20の裏打ち部21の外表面20aが硬化処理されているので、フロアマット1を一体成形の型から取り外しやすくなる。また、離型剤が不要になりコスト削減を図ることができる。しかも、表面が滑面になり、意匠性を向上することができる。更に、マット材10側から浸入した水分を、裏打ち材20から漏れ出すことを抑制できる。特に、裏打ち部21と周縁部22とが一体成形されていることから、防水性を向上することができる。
また、本実施例では、裏打ち材20の裏打ち部21の外表面20aがシボ加工されているので、フロアマット1を載置した床に対する滑りを十分に抑制することができる。
【0034】
<変形例1>
上述した実施例では、周縁部キャビティ31、周縁部キャビティ41、裏打ち部キャビティ42の各内面はいずれも鏡面加工されているものとしたが、これに限定されるものではない。例えば、テフロン(登録商標)加工であってもよく、この場合も、一体成形後のフロアマット1を容易に取り出すことができる。あるいは、フロアマット1の形状によっては、キャビティの内面の表面処理を不要にすることができる。
【0035】
<変形例2>
上述した実施例では、裏打ち部21の外表面20aがシボ加工されているものとしたが、これに限定されるものではない。例えば、裏打ち材21の全ての外表面20aにシボ加工を施してもよい。あるいは、裏打ち部21の外表面20aにシボ加工を施さず、裏打ち部21の外表面20aの硬化層を削り取ることでウレタン材料自体の滑りにくさを利用するようにしてもよい。
【0036】
<変形例3>
上述した実施例では、裏打ち材20の周縁部22においては、シボ加工を施していないものとしたが、周縁部キャビティ41の内面形状を適宜設計することにより、周縁部22
のデザインや意匠性を自由に変更することができる。
【0037】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0038】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、床面に載置して使用されるフロアマットに関する技術として好適に利用される。
【符号の説明】
【0040】
1;フロアマット、10;マット材、11;立毛繊維、12;基布、20;裏打ち材、20a;外表面、21;裏打ち部、22;周縁部、30;下型(金型)、40;上型(金型)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6