(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態の説明]
まず、本発明の一側面に係る光コネクタフェルールの一実施形態を列記して説明する。
【0011】
一実施形態に係る光コネクタフェルールは、前端、後端、上面、及び下面を有する光コネクタフェルールであって、前記上面に開口する窓と、前記前端と前記窓との間を第1方向に沿って貫通しており、前記前端側の細径部分と前記窓側の太径部分とを含む複数のファイバ孔と、前記太径部分のそれぞれから前記第1方向に沿って延び、前記第1方向に直交する第2方向に開口を有する複数のファイバ溝と、を備え、前記開口の幅が、前記太径部分の直径よりも小さく、前記ファイバ溝の深さが、前記太径部分の半径よりも小さい。
【0012】
この光コネクタフェルールによれば、成形される光コネクタフェルールのファイバ孔の傾きが抑制されているため、光結合時に接続精度の低下が抑制される。よって、接続損失の増大を抑制することができる。
【0013】
一実施形態に係る光コネクタフェルールにおいては、前記ファイバ溝は、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向における両端に突出部分を有し、前記開口は、前記突出部分によって形成されてもよい。
【0014】
一実施形態に係る光コネクタフェルールにおいては、前記突出部分の高さは、前記ファイバ孔の前記太径部分において最も大きくてもよい。
【0015】
一実施形態に係る光コネクタフェルールにおいては、前記突出部分の高さは、前記ファイバ孔の前記太径部分において最も小さくてもよい。
【0016】
一実施形態に係る光コネクタフェルールにおいては、前記突出部分の高さは、前記ファイバ孔の前記太径部分から前記第1方向に沿って実質的に等しくてもよい。
【0017】
一実施形態に係る光コネクタフェルールにおいては、前記突出部分の外周は、曲率を有する形状であってもよい。
【0018】
一実施形態に係る光コネクタフェルールにおいては、前記突出部分の外周は、前記第3方向に対して互いに異なる角度を有する複数の平面を含む形状であってもよい。
【0020】
実施形態に係る光コネクタフェルールの製造方法、光コネクタフェルール、及び、光コネクタフェルールを製造するための金型の具体例を、添付図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
図1は、本実施形態に係る光コネクタフェルールを示す図である。
図2は、
図1に示された光コネクタフェルールのII−II断面を示す図である。理解の容易のため、図中にはXYZ直行座標系が示される。X軸は光コネクタフェルールの前後方向である第1方向、Z軸は光コネクタフェルールの高さ方向である第2方向、Y軸は光コネクタフェルールの幅方向である第3方向である。
【0022】
図1及び
図2に示されるように、光コネクタフェルール2は、前端2b、後端2c、上面2a、及び、下面2dを有する。上面2aは、XY平面に沿って延びる。前端2bは、YZ平面に沿って延び、接続相手の別の光コネクタフェルールに当接する。光コネクタフェルール2は、ガイドピンが挿入される2本のガイド孔21と、2本のガイド孔21の間に配置された複数(本実施形態では24)のファイバ孔22とを有する。2本のガイド孔21及び複数のファイバ孔22は、光コネクタフェルール2の前端2b側から後端2c側に向けてX軸方向に沿って延び、前端2bに開口している。各ファイバ孔22は、窓25側の太径部分22aと、前端2b側の細径部分22bと、を含む。ファイバ孔22の後端には、ファイバ溝23が設けられている。ファイバ溝23は、ファイバ孔22の太径部分22aからX方向に沿って延びる。上面2aには、窓25が形成されている。窓25は、ファイバ孔22と後端2cとを貫通している。ファイバ孔22は、前端2bと窓25との間を貫通している。光ファイバは、光コネクタフェルール2の後端2c側から挿入され、ファイバ溝23にガイドされてファイバ孔22に挿入され、窓25から注入される接着剤によって固定される。
【0023】
複数のファイバ孔22は、下面2d側の第1ファイバ孔列22Aと、上面2a側の第2ファイバ孔列22Bと、を構成する。第1ファイバ孔列22Aと第2ファイバ孔列22Bとは、Y方向に並ぶ複数のファイバ孔22を含む。
【0024】
図3、
図4及び
図5は、光コネクタフェルール2を製造するために用いられる金型を示す図である。
図3は、金型1の分解斜視図である。
図4は、金型1のXZ平面に沿った断面図である。
図5は、金型1の中金型12を示す斜視図である。
【0025】
金型1は、上金型10(第1金型)、下金型11(第2金型)、及び中金型12を備える。上金型10及び下金型11はキャビティ15を形成し、中金型12はキャビティ15内に配置される。下金型11は、キャビティ15を画成する底面11aを有する。中金型12は、光コネクタフェルール2のガイド孔21を形成するための2本のガイド孔ピン125を備える。2本のガイド孔ピン125の間には、光コネクタフェルール2のファイバ孔22を形成するための複数のファイバ孔ピン126が配置される。ガイド孔ピン125及びファイバ孔ピン126の後端は、一対の把持部材121及び122に把持されている。ファイバ孔ピン126の後端はさらに、把持部材121及び122よりも薄い上把持部123、下把持部124及びスペーサー129によって把持されている。上把持部123、下把持部124及びスペーサー129は、把持部材121及び122によって把持されている。把持部材121及び122は、ネジによって互いに固定されている。
【0026】
複数のファイバ孔ピン126は第1ピン列126Aと第2ピン列126Bを構成する。第1ピン列126A及び第2ピン列126Bは、Y方向に並ぶ複数のファイバ孔ピン126を含む。第1ピン列126Aは、光コネクタフェルール2の第1ファイバ孔列22Aを形成し、第2ピン列126Bは、第2ファイバ孔列22Bを形成する。
【0027】
下金型11の後端には、2本のガイド孔ピン125をそれぞれ位置決めするための2つのV溝112が形成されている。2つのV溝112の間には、上把持部123、下把持部124及びスペーサー129を収容する凹部119が形成されている。下金型11の先端には、ピン保持部材113が配置される。ピン保持部材113には、2本のガイド孔ピン125の先端部をそれぞれ固定する2つの挿通孔113aと、ファイバ孔ピン126の先端部をそれぞれ固定する挿通孔113bとが形成されている。
【0028】
下金型11の底面11aの中央には、光コネクタフェルール2に窓25を形成する突起114が設けられている。
図6に示すように、突起114は、ファイバ孔ピン126それぞれの後端部を収容する挿通孔115を備える。突起114の上端の先端側には、段差部118が形成されている。段差118において、挿通孔115の先端側はC溝116とされ、上部(Z方向)が開口されている。
【0029】
図7は、金型1のC溝116及び光コネクタフェルール2の溝23を示す図である。
図8は比較例としての金型を示す図であり、段差118において挿通孔115の先端側に形成された溝116Aを示す。
【0030】
図6、
図7、及び
図8に示されるように、C溝116の開口は、Y方向に幅Wを有する。幅Wは、ファイバ孔ピン126の直径Rよりも小さい。
【0031】
図8に示す金型の溝116Aは、ファイバ孔ピン126の周の半周以下を覆う。
図7に示すC溝116は、ファイバ孔ピン126の周の半周よりも広い範囲を覆う。
【0032】
金型1を用いて光コネクタフェルール2を製造する方法を説明する。まず、把持部材121及び122により、ガイド孔ピン125及びファイバ孔ピン126を把持し、中金型12を構成する。そして、ガイド孔ピン125を、ピン保持部材113の挿通孔113aに挿通し、さらに、ファイバ孔ピン126を突起114の挿通孔115及びピン保持部材113の挿通孔113bに挿通し、中金型12を下金型11に固定する。そして、上金型10と下金型11とを閉じ、キャビティ15を形成する。
【0033】
そして、キャビティ15に樹脂(例えばポリフェニレンサルファイド)を注入し、固化する。その後、中金型12を引き抜き、上金型10と下金型11とを開くことにより、光コネクタフェルール2が得られる。
【0034】
ここで、キャビティ15に注入される樹脂の流れを説明する。
図9は、金型1のXY平面に沿った断面を示し、
図10は、その部分拡大図である。キャビティ15に注入される樹脂のうち、下金型11の底面11aに沿う樹脂の流れは、突起114によって妨げられるため、底面11aに対向する上金型10の面10aに沿う樹脂の流れよりも遅くなる。その結果、樹脂は、矢印A1に示すように、面10a側からファイバ孔ピン126に向けて流れ込む。この樹脂の流れにより、
図10に示すように、ファイバ孔ピン126が撓んでしまう。
【0035】
図11(a)〜
図11(c)は、金型1(突起114)のC溝116の変形例を示すYZ平面に沿った断面図である。
図11(a)に示すC溝116は、YZ平面に沿った断面において、開口の両端116aに、開口に向けて拡径する拡径部分117を有する。拡径部分117は、曲率R0を有していてもよい。曲率R0は、例えば、5〜30μmである。
図11(b)に示すC溝116は、両端116aに、平面117bにより形成された拡径部分117を有する。
図11(c)に示すC溝116は、両端116aに、Y軸に対して互いに異なる角度を有する複数の平面117b,117cにより形成された拡径部分117を有する。このようなC溝116を有する金型1を用いて製造される光コネクタフェルール2は、YZ平面に沿った断面におけるファイバ溝23の開口の両端に、突出部分23aを有する。突出部分23aは、ファイバ孔22に光ファイバを挿入する際に、光ファイバがファイバ溝23から外れることを抑制する。
【0036】
図12(a)は、
図11(b)に示した金型1の一例におけるC溝116のXIII−XIII断面(XZ平面に沿った断面)を示す図である。
図12(b)は、
図12(a)に示されるXIIIb−XIIIb断面(YZ平面に沿った断面)を示す図である。
図12(c)は、
図12(a)に示されるXIIIc−XIIIc断面(YZ平面に沿った断面)を示す図である。拡径部分117の深さDは、挿通孔115側から反対側にわたって実質的に等しい。この場合、光コネクタフェルール2の製造時に、ファイバ孔ピン126の位置ズレを防止できる。
【0037】
図13(a)は、
図11(b)に示した金型1の他の一例におけるC溝116のXIII−XIII断面(XZ平面に沿った断面)を示す図である。
図13(b)は、
図13()に示されるXIVb−XIVb断面(YZ平面に沿った断面)を示す図である。
図13(c)は、
図13(a)に示されるXIVc−XIVc断面(YZ平面に沿った断面)を示す図である。拡径部分117の深さDは、挿通孔115の反対側よりも、挿通孔115側において深くなっている。
【0038】
図14(a)は、
図11(b)に示した金型1のさらに他の一例におけるC溝116のXIII−XIII断面(XZ平面に沿った断面)を示す図である。
図14(b)は、
図14(a)に示されるXVb−XVb断面(YZ平面に沿った断面)を示す図である。
図14(c)は、
図14(a)に示されるXVc−XVc断面(YZ平面に沿った断面)を示す図である。拡径部分117の深さDは、挿通孔115側よりも、反対側において深くなっている。
【0039】
図15(a)は、
図12(a)〜
図12(c)に示した金型1を用いて製造した光コネクタフェルール2のファイバ溝23を示すXZ平面に沿った断面図である。
図15(b)は、
図15(a)に示されるXVIb−XVIb断面(YZ平面に沿った断面)を示す図である。
図15(c)は、
図15(a)に示されるXVIc−XVIc断面(YZ平面に沿った断面)を示す図である。拡径部分117によって形成される突出部分23aの高さHは、ファイバ孔22の太径部分22a側から反対側にわたって、実質的に等しい。
【0040】
図16(a)は、
図14(a)〜
図14(c)に示した金型1を用いて製造した光コネクタフェルール2のファイバ溝23を示すXZ平面に沿った断面図である。
図16(b)は、
図16(a)に示されるXVIIb−XVIIb断面(YZ平面に沿った断面)を示す図である。
図16(c)は、
図16(a)に示されるXVIIc−XVIIc断面(YZ平面に沿った断面)を示す図である。突出部分23aの高さHは、ファイバ孔22の太径部分22a側よりも、反対側において高くなっている。これにより、ファイバ孔22に光ファイバを挿入する際に、ファイバ溝23の全長において光ファイバが外れにくくなる。
【0041】
図17(a)は、
図13(a)〜
図13(c)に示した金型1を用いて製造した光コネクタフェルール2のファイバ溝23示すXZ平面に沿った断面図である。
図17(b)は、
図17(a)に示されるXVIIIb−XVIIIb断面(YZ平面に沿った断面)を示す図である。
図17(c)は、
図17(a)に示されるXVIIIc−XVIIIc断面(YZ平面に沿った断面)を示す図である。突出部分23aの高さHは、ファイバ孔22の太径部分22aの反対側よりもファイバ孔22の太径部分22a側において高くなっている。これにより、ファイバ孔22の近くにおいて光ファイバがファイバ溝23から外れにくくなるので、光ファイバを容易にファイバ孔22に挿入できる。