(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シロアリが少ない場合には、シロアリから代謝によって放出する水素も少ない。また、シロアリは、冬期など、気温が低いときは活動が低下し、活動が低下すると代謝によって放出する水素も減少する。したがって、特許文献1の装置は、シロアリの数が少ないときや、シロアリの活動が低下しているときは、シロアリを検知することが困難である。
【0005】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、シロアリの数が少ないときや、シロアリの活動が低下しているときでも、シロアリを検知しやすいシロアリ検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は独立請求項に記載の特徴の組み合わせにより達成され、また、下位請求項は、発明の更なる有利な具体例を規定する。特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
上記目的を達成するための本発明は、シロアリが食する膜材(51)を備え、膜材により囲われる内部に、検知対象ガスを放出するガス放出物(52)が封入された疑似餌(50)と、
疑似餌を収容する収容空間(13)を備え、かつ、シロアリが収容空間に侵入可能な侵入口(14)が形成されている本体部(10)と、
疑似餌から放出された検知対象ガスを検知するガスセンサ(30)とを備えることを特徴とするシロアリ検知装置である。
【0008】
本発明では、本体部の収容空間に疑似餌が収容されている。本体部には、シロアリが侵入可能な侵入口が形成されているので、シロアリは、収容空間に侵入して疑似餌を食べることができる。疑似餌は、シロアリが食する膜材を備え、膜材により囲われる内部に検知対象ガスを放出するガス放出物が封入されている。したがって、膜材がシロアリに食べられた場合には、膜材が破れ、疑似餌の破れた部分から検知対象ガスが放出される。ガスセンサは、疑似餌から放出されたこの検知対象ガスを検知する。疑似餌は膜材でガス放出物を封入する構成であることから、疑似餌がシロアリに食べられた場合に放出される検知対象ガスの量を、シロアリが代謝する代謝ガスよりも多くすることは容易である。
【0009】
そして、疑似餌がシロアリに食べられた場合に放出される検知対象ガスの量を、シロアリが代謝によって排出する代謝ガスよりも多くすれば、代謝ガスを検知することでシロアリを検知する従来技術よりも少ない数のシロアリで、シロアリを検知することができ、また、従来技術よりもシロアリの活動が低下した状態でも、シロアリを検知することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、ガス放出物は、シロアリが放出するガスを、検知対象ガスとして放出する。このようにすれば、ガス放出物が放出する検知対象ガスとシロアリが放出する検知対象ガスとが混ざり、検知対象ガスの濃度が高くなるので、ガスセンサにより検知対象ガスをより早期に検出することができる。
【0011】
請求項3記載の発明では、ガス放出物は、検知対象ガスとして、空気よりも重いガスを放出する。検知対象ガスが空気よりも重いガスであると、疑似餌から放出された検知対象ガスは、本体部の中で滞留しやすくなる。その結果、本体部内の検知対象ガスの濃度が早期に高くなりやすいので、ガスセンサにより検知対象ガスをより早期に検出することができる。
【0012】
請求項4記載の発明では、ガス放出物は、揮発して検知対象ガスとなり、シロアリ検知装置の設置環境下で液体である。ガス放出物が液体であって、揮発して検知対象ガスを放出する場合、ガス放出物が検知対象ガスそのものである場合よりも、多くの量の検知対象ガスを放出することができる。これによって、シロアリが食べる疑似餌の量が少ない状態で、本体部内の検知対象ガスの濃度が高くなりやすいので、ガスセンサにより検知対象ガスをより早期に検出することができる。
【0013】
請求項5記載の発明では、ガス放出物は、揮発性の鎖式飽和炭化水素化合物である。鎖式飽和炭化水素化合物は、不飽和炭化水素と比較すると分子量の割に沸点が低い。したがって、ガス化しやすい。ガス化しやすいことから、本体部内の検知対象ガスの濃度が早期に高くなりやすいので、ガスセンサにより検知対象ガスをより早期に検出することができる。
【0014】
請求項6記載の発明では、ガスセンサは、予め設定された複数種類の検知対象ガスを検出することができるセンサである。
【0015】
このようにすれば、ガスセンサを変更しなくても、ガス放出物を、ガスセンサが検出することができる他の種類の検知対象ガスを放出するガス放出物に変更することができる。よって、設置環境に応じて、設置雰囲気に影響を受けにくい検知対象ガスを放出するガス放出物に変更することが容易になる。たとえば、通常は検知対象ガスとしてメタンを放出するガス放出物を疑似餌に封入し、メタンガスの濃度が比較的高い環境でシロアリ検知装置を用いる場合には、疑似餌に封入するガス放出物を、他の種類の検知対象ガスを放出するガス放出物に変更するということが容易になる。その結果、設置雰囲気の影響を受けて、シロアリの検出が遅れてしまったり、誤検出をしてしまったりすることを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、シロアリ検知装置1は、本体部10、蓋部20、ガスセンサ30、回路部40、疑似餌50を備えている。
【0018】
本体部10は、一方向に開口する筒部11と、その筒部11の開口側の端に形成された円環形状のフランジ部12を備える。筒部11は円筒形状であり、内部が収容空間13である。シロアリ検知装置1は、使用状態では、筒部11が地中に埋設され、フランジ部12が地表面に露出している。
【0019】
筒部11には、シロアリが内部に侵入できるように、複数の侵入口14が形成されている。この侵入口14の数および形状は、シロアリが通ることができれば、特に制限はない。たとえば、侵入口14の形状は、筒部11の周方向に延びるスリット状とすることができる。
【0020】
蓋部20は、本体部10の開口を覆っている円盤状部材であり、蓋部20の収容空間13側の面にガスセンサ30と回路部40が配置されている。ガスセンサ30は、たとえば、回路部40が備える基板に固定されている。
【0021】
ガスセンサ30は、筐体31を備え、この筐体31内に、赤外線光源32、波長可変バンドパスフィルタ33、赤外線検出器34が収容された構成である。筐体31は筒型であり、軸方向が蓋部20と直交するように配置されている。この筐体31には、複数のガス流通穴31sが形成されている。このガス流通穴31sを通って、疑似餌50から放出された検知対象ガスが筐体31内の空間に入り込む。
【0022】
赤外線光源32は、筐体31の蓋部20側の端部に固定されており、他方の端部に向けて赤外線を照射する。波長可変バンドパスフィルタ33は、赤外線領域内において通過させる波長を可変させることができるバンドパスフィルタであり、通過させる波長を測定中に変化させることができる。この波長可変バンドパスフィルタ33は、蓋部20とは反対側の筐体31の端部に固定されている。赤外線検出器34は、波長可変バンドパスフィルタ33を通過した赤外光を検出する検出器である。
【0023】
このガスセンサ30は、以上の構成を備えることで、赤外線吸収スペクトルを測定する。したがって、赤外線を吸収するガスであれば、種々のガスを検出できる。つまり、ガスセンサ30は、2原子分子である水素ガス、酸素ガス、窒素ガスなどの一部のガスを除き、ほとんどのガスを検出することができる。第1実施形態では、ガスセンサ30が検知対象とするガス、すなわち、検知対象ガスはメタンガス52m(
図3参照)である。メタンガス52mは赤外線を吸収するので、ガスセンサ30で検出できる。
【0024】
回路部40は、
図2に示すように、マイクロプロセッサ41と、メモリ42と、無線通信モジュール43とを備えている。これらは、図示しない回路収容ケース内に収容されている。メモリ42には、予め設定された1つまたは複数の検知対象ガスに対する基準赤外線吸収スペクトルが記憶されている。
【0025】
マイクロプロセッサ41は、ガスセンサ30により赤外線吸収スペクトルを測定させて、測定した赤外線吸収スペクトルと、メモリ42に記憶されている基準赤外線吸収スペクトルとを対比することで、検知対象ガスが発生したか否かを判断する。なお、検知対象ガスが発生したか否かは、測定可能な可変波長域の全範囲の赤外線吸収スペクトルを用いて判断してもよいし、検知対象ガスの種類により定まる一部の波長域の赤外線吸収スペクトルのみを用いてもよい。
【0026】
測定した赤外線吸収スペクトルの、検知対象ガスの種類に応じて定まる波長域にピークが存在していれば、検知対象ガスが発生した、すなわち検知対象ガスを検知したと判断する。あるいは、測定した赤外線吸収スペクトルを逐次メモリ42に記憶しておき、所定時間前あるいは所定回数前の測定値との差分スペクトルにおいて、検知対象ガスの種類に応じて定まる波長域にピークが存在していれば、検知対象ガスを検知したと判断してもよい。
【0027】
そして、マイクロプロセッサ41は、検知対象ガスを検知した場合には、無線通信モジュール43を使って、検知対象ガスを検知したことを、所定の通知対象装置に通知する。
【0028】
説明を
図1に戻す。疑似餌50は、収容空間13内において、ガスセンサ30の下端よりも下側に複数堆積している。本実施形態の疑似餌50は球状であり、粒形は100μm程度である。
【0029】
図3に示すように、疑似餌50は、外面が膜材51で形成されており、この膜材51により囲われる内部にガス放出物52が封入された構成である。膜材51は、シロアリが食する材料、たとえばセルロース製である。
【0030】
ガス放出物52は、膜材51が破れると、疑似餌50の外部に検知対象ガスを放出する物質である。本実施形態では、ガス放出物52は、検知対象ガスであるメタンガス52mとする。この疑似餌50の作り方は、たとえば、特許文献2に記載されている方法を用いることができる。
【0031】
特許文献2に記載されている方法では、液体中にマイクロバブルを発生させ、そのマイクロバブルの表面でプレポリマーを重合反応させて、殻(すなわち膜材)を生成させる。マイクロバブルとしてメタンガス52mのマイクロバブルを発生させ、プレポリマーとしてセルロースプレポリマーを用いれば、本実施形態の疑似餌50が生成できる。また、マイクロバブルの径を調整することで、疑似餌50の大きさを調整できる。
【0032】
[シロアリ検知装置1の検知作動]
シロアリ検知装置1は、本体部10の収容空間13に疑似餌50が収容されている。また、本体部10には、シロアリが侵入可能な侵入口14が形成されている。したがって、シロアリは、収容空間13に侵入して疑似餌50を食べることができる。
【0033】
疑似餌50は、外面がシロアリが食する膜材51で形成されており、膜材51により囲われる内部にガス放出物52としてメタンガス52mが封入されている。したがって、膜材51がシロアリに食べられた場合には、疑似餌50からメタンガス52mが本体部10の収容空間13に放出される。収容空間13に放出されたメタンガス52mは、ガス流通穴31sを通ってガスセンサ30の筐体31内の空間に入り込むので、ガスセンサ30は、メタンガス52mを検知する。
【0034】
収容空間13に放出されるメタンガス52mは、疑似餌50から放出されるメタンガス52mのみではない。シロアリの代謝ガスにはメタンガス52mが含まれていることが知られている。したがって、シロアリにより疑似餌50が食べられている状況では、シロアリが代謝したメタンガス52mと、疑似餌50から放出されたメタンガス52mとが混合されるので、収容空間13のメタンガス52mの濃度が、シロアリのみがメタンガス52mを出す場合よりも高くなりやすい。
【0035】
そのため、本実施形態によれば、早期にメタンガス52mを検出することができる。その結果、従来技術よりも少ない数のシロアリで、シロアリを検知することができ、また、従来技術よりもシロアリの活動が低下した状態でも、シロアリを検知することができる。
【0036】
加えて、疑似餌50がシロアリに食べられている量が少ないときには、本体部10内の空間の体積が少ないので、シロアリがまだ少ない時に、特に、メタンガス52mの濃度が高くなりやすい。この点でも、シロアリを早期に検出することができる。
【0037】
また、本実施形態のシロアリ検知装置1が備えるガスセンサ30は、赤外線吸収式ガスセンサであり、赤外線を吸収するガスであれば、種々のガスを検出できる。したがって、ガスセンサ30を変更しなくても、ガス放出物52を、ガスセンサ30が検出することができる他の種類の検知対象ガスを放出するガス放出物52に変更することができる。この特長を利用して、通常は、本実施形態で説明したように、メタンガス52mを封入した疑似餌50を用いるが、メタンガス52mの濃度が比較的高い環境で用いる場合には、他の種類の検知対象ガスを放出するガス放出物52に変更するということが容易になる。その結果、設置雰囲気の影響を受けて、シロアリの検出が遅れてしまったり、誤検出をしてしまったりすることを抑制できる。
【0038】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態を説明する。この第2実施形態以下の説明において、それまでに使用した符号と同一番号の符号を有する要素は、特に言及する場合を除き、それ以前の実施形態における同一符号の要素と同一である。また、構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分については先に説明した実施形態を適用できる。
【0039】
第2実施形態では、ガス放出物52の具体的構成をオクタン52oとする。オクタン52oは、シロアリが出すフェロモンの1つであることが知られている。
【0040】
また、オクタン52oは、炭素数8の鎖式飽和炭化水素化合物であり、融点−60度、沸点125度であるので、シロアリ検知装置1の設置環境下で液体の物体である。なお、シロアリ検知装置1の設置環境下での融点が、シロアリ検知装置1の雰囲気温度よりも低く、シロアリ検知装置1の設置環境下での沸点が、シロアリ検知装置1の雰囲気温度よりも高い物質が、シロアリ検知装置1の設置環境下で液体となる。
【0041】
また、オクタン52oは揮発性であり、液体のオクタンが揮発すると、オクタンガスを放出する。このオクタンガスが検知対象ガスである。オクタン52oは分子量が約114であるので、オクタンガスは空気よりも重い。また、オクタンガスは赤外線を吸収するので、ガスセンサ30で検出できる。
【0042】
シロアリ検知装置1の設置環境下で液体(つまり常温で液体)であるオクタン52oをガス放出物52として封入した疑似餌50は、たとえば、公知の次の方法で作ることができる。
【0043】
まず、乳化剤中にオクタン52oを入れて撹拌することで、オクタン52oの小液滴を乳化剤中に分散させる。なお、撹拌の程度により、オクタン52oの小液滴の大きさを調整できる。次いで、セルロースプレポリマーを乳濁液に投入して、オクタン52oの小液滴表面でセルロースプレポリマーを重合反応させると、オクタン52oが封入された疑似餌50が生成される。
【0044】
[第2実施形態の効果]
第2実施形態では、膜材51がシロアリに食べられた場合には、疑似餌50からオクタンガスが放出される。また、シロアリもオクタンガスを放出する。したがって、シロアリにより疑似餌50が食べられている状況では、オクタンガスの濃度が、シロアリのみがオクタンガスを出す場合よりも高くなりやすい。よって、早期にオクタンガスを検出することができる。その結果、従来技術よりも少ない数のシロアリで、シロアリを検知することができ、また、従来技術よりもシロアリの活動が低下した状態でも、シロアリを検知することができる。
【0045】
また、オクタンガスは空気よりも重い。したがって、疑似餌50から放出されたオクタンガスは、本体部10の中で滞留しやすくなる。その結果、本体部10内のオクタンガスの濃度が早期に高くなりやすいので、ガスセンサ30によりオクタンガスを早期に検出することができる。なお、空気よりも重くても、ガスは拡散現象があるため、収容空間13のガス流通穴31sの高さまでの部分が、全部、オクタンガスにならなくても、オクタンガスはガスセンサ30の筐体31内に入る。
【0046】
さらに、オクタン52oは、シロアリ検知装置1の設置環境下で液体であって、揮発してオクタンガスとなる。疑似餌50に封入されている液体のオクタン52oから揮発して生じるオクタンガスの体積は疑似餌50よりも大きくなる。したがって、疑似餌50にオクタンガスを封入する場合よりも、多くのオクタンガスを放出することができる。これによっても、収容空間13のオクタンガスの濃度が高くなりやすいので、ガスセンサ30によりオクタンガスを早期に検出することができる。
【0047】
また、オクタン52oは鎖式飽和炭化水素化合物である。したがって、分子量の割に沸点が低い。そのため、空気より重くてもガス化しやすい。この特性によって、本体部10内のオクタンガスの濃度が早期に高くなりやすいので、ガスセンサ30によりオクタンガスをより早期に検出することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の変形例も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。なお、以下の説明において、それまでに使用した符号と同一番号の符号を有する要素は、特に言及する場合を除き、それ以前の実施形態における同一符号の要素と同一である。また、構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分については先に説明した実施形態を適用できる。
【0049】
<変形例1>
前述の実施形態では、ガス放出物52として、メタンガス52mとオクタン52oを開示した。しかし、ガス放出物52は、これらに限られない。シロアリは、代謝ガスとして、メタンガスの他に、水素、二酸化炭素を出すことが知られている。したがって、これら水素、あるいは、二酸化炭素を、ガス放出物52として封入してもよい。なお、水素は赤外線を吸収しない。したがって、ガス放出物52として水素を封入する場合、実施形態のガスセンサ30に代えて、たとえば、特許文献1に開示されている水素ガス検知素子を用いる。
【0050】
<変形例2>
また、シロアリが代謝ガス以外に放出するガスとしてフェロモンがあり、第2実施形態では、シロアリが放出するフェロモンの1つであるオクタン52oをガス放出物52としていた。しかし、オクタン52oではないフェロモン、たとえば、テルピノレンなどのテルペン化合物をガス放出物52として用いてもよい。
【0051】
<変形例3>
さらには、シロアリが代謝する代謝ガスでもなく、また、シロアリが出すフェロモンでもない検知対象ガスを発生するガス放出物52を疑似餌50に封入してもよい。
【0052】
シロアリが出すガスとは異なるガスを検知対象ガスとした場合、シロアリが放出するガスを検知する装置よりも早期にシロアリを検知しようとすると、シロアリが疑似餌50を食べることにより疑似餌50から放出される検知対象ガスの量が、シロアリが出すガスよりも多いことが必要である。
【0053】
ここで、膜材51の体積に比較して、封入されるガス放出物52が放出する検知対象ガスの量が十分に多いと、シロアリが疑似餌50を食べることにより、多量の検知対象ガスが放出されることになる。よって、膜材51の体積に比較して、封入されるガス放出物52が放出する検知対象ガスの量が十分に多いと、シロアリが疑似餌50を食べることにより疑似餌50から放出される検知対象ガスの量が、シロアリが出すガスよりも多くなると考えられる。
【0054】
そこで、たとえば、膜材51の体積の2倍以上の量の検知対象ガスを発生するガス放出物52を疑似餌50に封入する。もちろん2倍以上(たとえば、3倍、4倍、10倍)の量の検知対象ガスを発生するガス放出物52を疑似餌50に封入してもよい。
【0055】
なお、前述の実施形態のように、プレポリマーをガス放出物52の表面で重合反応させて膜材51を形成する場合、膜材51の厚さは数μmあるいはそれ以下となることから、膜材51の体積に比較して、封入される検知対象ガスの量が十分に多くなる。また、疑似餌50の粒形を大きくすれば、膜材51の体積に対して、封入される検知対象ガスの量は、さらに多くなる。したがって、検知対象ガスを多く放出するという観点では、疑似餌50の粒形は、たとえば10μm以上、さらには、20μm以上、30μm以上のようにすることが好ましい。
【0056】
<変形例4>
前述の実施形態では、マイクロプロセッサ41が、ガスセンサ30が測定したデータである赤外線吸収スペクトルを取得して、その赤外線吸収スペクトルと基準赤外線吸収スペクトルとを対比して、検知対象ガスが発生したか否かを判断していた。つまり、シロアリ検知装置1の内部で、検知対象ガスが発生したか否かを判断していた。しかし、ガスセンサ30が測定したデータを、無線通信モジュール43などの送信装置により外部に送信し、シロアリ検知装置1の外部で、検知対象ガスが発生したか否かを判断してもよい。
【0057】
<変形例5>
疑似餌50の作り方は、前述の実施形態で説明した作り方に限られない。たとえば、一対の半球状部材を嵌め合わせて球形の膜材51を形成してもよい。また、疑似餌50の形状は、球形である必要はなく、立方体形状など他の形状でもよい。また、疑似餌50の大きさも前述の実施形態に限定されず、種々の大きさとすることができる。たとえば、疑似餌50の大きさを、前述の実施形態よりも大きくして、1ミリ以上としてもよいし、反対に、前述の実施形態よりも小さくして、数十μmあるいはそれ以下としてもよい。
【0058】
<変形例6>
実施形態の疑似餌50は最外面が膜材51であったが、この膜材51の外側をさらに別の膜が覆っていてもよい。