(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
精錬設備における吹錬処理途中の溶湯の成分濃度を推定する溶湯成分推定装置であって、
前記精錬設備から排出される排ガスの流量及び成分に関する情報を少なくとも含む操業実績情報を格納する実績データベースと、
吹錬
処理反応
途中における溶湯中の炭素濃度と脱炭効率との関係を示す脱炭モデル式及び該
脱炭モデル式を構成するパラメータに関する情報を少なくとも含む
脱炭モデル情報を格納するモデルデータベースと、
前記実績データベースに格納されている操業実績情報と前記モデルデータベースに格納されている
脱炭モデル情報とを用いて、吹錬処理途中の溶湯の成分濃度を推定する推定計算部と、
前記推定計算部によって推定された吹錬処理途中の溶湯の成分濃度に関する情報を出力する出力装置と、を備え、
前記推定計算部は、
以下の数式(6)に示す評価関数又は以下の数式(8)に示す評価関数を最小化する溶湯の炭素濃度を吹錬処理途中の溶湯の炭素濃度として推定することを特徴とする溶湯成分推定装置。
【数1】
【数2】
ここで、σ,α,β,γは重みパラメータ、Ctは現在時刻tにおける溶湯中炭素濃度、Δtはt−1時点〜t時点(1ステップ分)の時間間隔、Rは脱炭効率、Otは現在時刻tにおける上吹送酸速度、Wtotalは主原料及び副原料の装入量の合計値、yt−τ’は現在時刻tよりτ秒前の脱炭速度、Ct−τ’は前回の推定計算で得られた現在時刻tよりτ秒前の溶湯中炭素濃度、Dは誤差係数、D’は誤差係数Dの標準値を示す。
精錬設備における吹錬処理途中の溶湯の成分濃度を推定する溶湯成分推定方法であって、
前記精錬設備から排出される排ガスの流量及び成分に関する情報を少なくとも含む操業実績情報と吹錬
処理反応
途中における溶湯中の炭素濃度と脱炭効率との関係を示す脱炭モデル式及び該
脱炭モデル式を構成するパラメータに関する情報を少なくとも含む
脱炭モデル情報とを用いて、吹錬処理途中の溶湯の成分濃度を推定する推定計算ステップと、
前記推定計算ステップにおいて推定された吹錬処理途中の溶湯の成分濃度に関する情報を出力する出力ステップと、を含み、
前記推定計算ステップは、
以下の数式(6)に示す評価関数又は以下の数式(8)に示す評価関数を最小化する溶湯の炭素濃度を吹錬処理途中の溶湯の炭素濃度として推定するステップを含むことを特徴とする溶湯成分推定方法。
【数3】
【数4】
ここで、σ,α,β,γは重みパラメータ、Ctは現在時刻tにおける溶湯中炭素濃度、Δtはt−1時点〜t時点(1ステップ分)の時間間隔、Rは脱炭効率、Otは現在時刻tにおける上吹送酸速度、Wtotalは主原料及び副原料の装入量の合計値、yt−τ’は現在時刻tよりτ秒前の脱炭速度、Ct−τ’は前回の推定計算で得られた現在時刻tよりτ秒前の溶湯中炭素濃度、Dは誤差係数、D’は誤差係数Dの標準値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である溶湯成分推定装置の構成及びその動作について説明する。
【0013】
〔構成〕
初めに、
図1,
図2を参照して、本発明の一実施形態である溶湯成分推定装置の構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態である溶湯成分推定装置の構成を示す模式図である。
図2は、
図1に示す演算処理部15の構成を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、本発明の一実施形態である溶湯成分推定装置1は、精錬設備2における吹錬処理途中の溶湯101の成分濃度を推定するものである。精錬設備2は、転炉100、ランス102、及びダクト104を備えている。ランス102は、転炉100内の溶湯(溶鋼)101上に配置されている。ランス102の先端から下方の溶湯101に向けて高圧酸素が噴出される。この高圧酸素によって溶湯101内の不純物が酸化されてスラグ103内に取り込まれる(吹錬処理)。
【0015】
転炉100の上部には、排ガス導煙用のダクト104が設置されている。ダクト104の内部には排ガス検出部105が配置されている。排ガス検出部105は、吹錬処理に伴い排出される排ガスの流量及び成分(例えばCO,CO
2,O
2,N
2,H
2O,Ar等)を検出する。排ガス検出部105は、ダクト104内に設けられたオリフィスの前後の差圧に基づいてダクト104内の排ガスの流量を計測する。排ガス検出部105は、排ガス中の各成分の濃度[%]を計測する。排ガスの流量及び成分濃度は、例えば数秒周期で計測される。排ガス検出部105の検出結果を示す信号は制御端末10に送られる。
【0016】
転炉100内の溶湯101には、転炉100の底部に形成されている通気孔106を介して撹拌ガスが吹き込まれる。撹拌ガスはAr等の不活性ガスである。撹拌ガスは、溶湯101を撹拌し、高圧酸素と溶湯101との反応を促進する。流量計107は、転炉100に吹き込まれる撹拌ガスの流量を計測する。吹錬処理開始直前及び吹錬処理後には、溶湯101の温度及び成分濃度の分析が行われる。溶湯101の温度及び成分濃度は、吹錬処理途中で一度又は複数回計測され、計測された温度及び成分濃度に基づいて高圧酸素の供給量(送酸量)及び速度(送酸速度)や撹拌ガスの流量(撹拌ガス流量)等が制御される。
【0017】
本発明の一実施形態である溶湯成分推定装置1が適用される吹錬処理制御システムは、制御端末10、溶湯成分推定装置1、及び表示装置20を主な構成要素として備えている。制御端末10は、パーソナルコンピュータやワークステーション等の情報処理装置によって構成され、溶湯101の成分濃度が所望の範囲内になるように送酸量、送酸速度、及び攪拌ガス流量を制御すると共に、送酸量、送酸速度、及び攪拌ガス流量の実績値のデータを収集する。
【0018】
溶湯成分推定装置1は、パーソナルコンピュータやワークステーション等の情報処理装置によって構成され、入力装置11、モデルデータベース(モデルDB)12、実績データベース(実績DB)13、演算結果データベース(演算結果DB)14、演算処理部15、及び出力装置16を備えている。
【0019】
入力装置11は、精錬設備2に関する各種の計測結果及び実績情報が入力される入力用インターフェースである。入力装置11には、キーボード、マウス、ポインティングディバイス、データ受信装置、及びグラフィカルユーザインターフェース(GUI)等を例示できる。入力装置11は、実績データやパラメータ設定値等を外部から受け取り、その情報のモデルDB12への書き込み、演算処理部15への送信を行う。
【0020】
入力装置11には、精錬設備2における吹錬処理開始前及び吹錬処理途中の少なくとも何れか一方の溶湯101の温度と成分濃度についての計測結果が入力される。温度と成分濃度についての計測結果は、例えばオペレータによる手入力、記録媒体からの読み込み入力等によって入力装置11に入力される。また、入力装置11には、制御端末10から実績情報が入力される。
【0021】
モデルDB12は、精錬設備2における吹錬処理反応に関するモデル式に関する情報を格納している。モデルDB12は、吹錬処理反応に関するモデル式に関する情報として、吹錬処理反応のモデル式及びそのパラメータを格納している。また、モデルDB12には、入力装置11に入力された各種情報が格納される。モデルDB12に格納されているモデル式に関する情報の詳細については後述する。
【0022】
実績DB13は、入力装置11を介して制御端末10から入力された実績情報を格納している。実績情報には、排ガス検出部105によって計測された排ガスの流量及び成分濃度についての情報、送酸量及び送酸速度の情報、撹拌ガス流量の情報、原料(主原料、副原料)投入量の情報、溶湯101の成分、温度情報等が含まれる。
【0023】
演算結果DB14は、演算処理部15による溶湯101中の成分濃度の推定計算結果を格納している。
【0024】
演算処理部15は、CPU等の演算処理装置であり、溶湯成分推定装置1全体の動作を制御する。
図2に示すように、演算処理部15は、制御プログラムを実行することによって、実績情報読込部15a、モデル情報読込部15b、及び推定計算部15cとして機能する。これら各部の機能については後述する。
【0025】
出力装置16は、演算処理部15による溶湯101中の成分濃度の推定計算結果を出力する。出力装置16は、制御端末10及び表示装置20とそれぞれ接続されており、制御端末10及び表示装置20に対して推定計算結果を出力する。制御端末10は、出力装置16から送られる推定計算結果に基づいて送酸量や送酸速度、撹拌ガス流量等の操作量を制御する。また、表示装置(CRT)20は、出力装置16から送られる推定計算結果の推移を画面等の表示部にチャート表示する。
【0026】
〔モデル式の構成〕
次に、
図3を参照して、モデルDB12に格納されているモデル式について説明する。
【0027】
本実施形態では、モデルDB12に格納されているモデル式は、吹錬処理反応途中における溶湯101中の炭素濃度Cと脱炭効率Rとの関係を示す脱炭モデル式である。ここで、脱炭効率Rとは、転炉100内に吹き込まれた単位酸素量に対する溶湯101から取り除かれる炭素量のことを意味する。例えば吹き込まれた酸素によって溶湯101中の炭素Cが酸化されてCO
2になった場合は、22.4[Nm
3](=1kmol)の酸素で1kmolの炭素(12kg)が脱炭されることになるため(C+O
2→CO
2)、脱炭効率Rは以下に示す数式(1)のように計算される。また、溶湯101中の炭素Cが一酸化炭素COになった場合には、22.4[Nm
3](=1kmol)の酸素で2kmolの炭素(24kg)が脱炭されることになる(2C+O
2→2CO)ため、脱炭効率Rは以下に示す数式(2)のように計算される。後者の反応では吹き込まれた酸素が全て一酸化炭素COの生成に使われるため、少ない酸素量でより多くの炭素を取り除くことができ脱炭効率Rが高くなる。
【0029】
脱炭モデル式は、例えば吹錬処理モデルに基づいて定められ、
図3に示す脱炭効率曲線が以下に示す数式(3)で定義されているものとする。ここで、数式(3)において、Cは溶湯101中の炭素濃度[%]を示しており、曲線の形状は炭素濃度Cが大きいほど脱炭効率Rが高いことを示している。また、パラメータm、β、及びRmaxは、いずれもモデルパラメータを示し、正の定数として定められる。パラメータmは、溶湯中の炭素濃度Cの下限値を示し、本実施形態では炭素濃度Cがこの値mよりも小さくならないと仮定している。パラメータβは、転炉100内のスラグ103の重量の関数として設定されている。パラメータβの値は、転炉100に投入された副原料(石灰等)の重量等の操作量に基づいて決定される。パラメータRmaxは、脱炭効率Rの上限値(以下、単に「上限効率」と称する。)を示している。上限効率Rmaxは、上記の反応(2C+O
2→2CO)における脱炭効率Rに溶湯101中の酸素及びスラグ103中の酸素による脱炭反応量の上限値を加えた値である。これらのパラメータ及び脱炭モデル式についての情報はモデルDB12に格納されている。また、操業条件に応じて異なる設定ができるように、モデルDB12には、操業条件とその操業条件に応じたパラメータ(関数)組とが関連づけられて格納されている。
【0031】
数式(3)に示す脱炭モデル式に基づいた脱炭反応モデルを以下の数式(4),(5)に示す。数式(4),(5)において、tは時系列情報の順番を表す添え字を意味し、t番目の次の推定結果にはt+1番目というインデックスがつけられる。インデックスが同じ変数は同じ時刻の変数を意味している。また、C
tは、t時点での溶湯中炭素濃度(%)を示し、O
tはt時点での上吹送酸速度(Nm
3/Hr)、y
tはt時点での脱炭速度(kg/Hr)を示し、Δtはt−1時点〜t時点(1ステップ分)の時間間隔(sec,固定値)を示し、W
totalは主原料及び副原料の装入量の合計値(ton,吹錬中は固定値)を示している。
【0033】
数式(4)では、第2項が脱炭反応によって酸化される炭素濃度を意味しており、この項によって溶湯中の炭素濃度は減少する。なお、本実施形態では、溶湯中炭素濃度を推定している際には、炭素分を含んだ副原料を投入しない操業を想定しているが、推定中に炭素分を含む副原料を投入する場合には数式(4)の右辺にt−1時点〜t時点の間に投入された副原料中の炭素による溶湯中炭素濃度の上昇量の項を追加する。数式(5)は脱炭速度の計算式であり、y
tは排ガス情報から計算できる。これらのパラメータ及び脱炭モデル式についての情報はモデルDB12に格納されている。また、操業条件に応じて異なる設定ができるように、モデルDB12には、操業条件とその操業条件に応じたパラメータ(関数)組とが関連づけられて格納されている。
【0034】
このような構成を有する溶湯成分推定装置1では、演算処理部15が以下に示す溶湯成分推定処理を実行することによって、吹錬処理途中における溶湯の炭素濃度の推定精度を向上させる。以下、
図4に示すフローチャートを参照して、この溶湯成分推定処理を実行する際の演算処理部15の動作について説明する。
【0035】
〔溶湯成分推定処理〕
図4は、本発明の一実施形態である溶湯成分推定処理に流れを示すフローチャートである。
図4に示すフローチャートは、吹錬処理途中に指定されたイベントが発生したタイミングで開始となり、溶湯成分推定処理はステップS1の処理に進む。なお、指定されたイベントとしては、吹錬処理途中の溶湯サンプルの成分濃度情報到着時等を例示できる。
【0036】
ステップS1の処理では、実績情報読込部15aが、実績DB13から吹錬処理途中のチャージの操業情報を収集する。収集される操業情報には、吹錬処理前の溶湯の温度及び成分濃度、吹錬処理後の溶湯の目標温度及び目標成分濃度、吹錬処理途中の溶湯の成分濃度、吹錬種類、吹込酸素量計画値、ランス高さ計画値、副原料投入量計画値、製品規格、使用設備(ランス)種類情報等が含まれる。そして、実績情報読込部15aは、収集した操業情報を推定計算部15cに出力する。これにより、ステップS1の処理は完了し、溶湯成分推定処理はステップS2の処理に進む。
【0037】
ステップS2の処理では、モデル情報読込部15bが、モデルDB12から脱炭モデル式及びそのパラメータに関する情報を読み込み、読み込んだ情報を推定計算部15cに出力する。これにより、ステップS2の処理は完了し、溶湯成分推定処理はステップS3の処理に進む。
【0038】
ステップS3の処理では、推定計算部15cが、溶湯中炭素濃度の推定計算を行うために必要な時系列情報を収集する。時系列情報としては、上吹送酸量、排ガス情報(流量、成分情報)である。収集される時系列情報の範囲は現時点よりもT秒前の時点から現時点までの範囲である。ステップS3及び後述するステップS4の処理は時間Δt毎に実行されるが、Δtは時系列情報の収集時間間隔の整数倍(但し、1以上)に設定されるものとする。本実施例では排ガス流量等の収集間隔を1secと想定しているので、Δtは1sec、2sec、3sec等の値に設定されることになる。これにより、ステップS3の処理は完了し、溶湯成分推定処理はステップS4の処理に進む。
【0039】
ステップS4の処理では、推定計算部15cが、溶湯中炭素濃度の推定計算を実行する。具体的には、推定計算部15cは、以下の数式(6)に示す評価関数を最小化する溶湯中炭素濃度C
t−T,…,C
tを溶湯中炭素濃度の推定値として算出する。なお、tは現在時刻に対応するインデックスであり、t−Tは現在時刻からT秒前の時刻に対応するインデックスである。
【0041】
ここで、数式(6)の第1項目は、溶湯中の炭素の収支バランス関係式の誤差の二乗値、換言すれば、数式(4)によって算出される溶湯中炭素濃度C
tの誤差を小さくするための項である。数式(6)の第2項目及び第3項目は、脱炭モデル式から算出される脱炭速度と排ガス情報から算出される脱炭速度との差の二乗値である。換言すれば、第2項目は、
図3に示す脱炭効率曲線の誤差を小さくするための項であり、第3項目は、前回の推定計算の結果(溶湯中炭素濃度)と今回の推定計算結果との差を小さくするための項である。分母のσ,α,βはいずれもモデルDB12から読み込まれる固定(重み)パラメータであり、ステップS1の処理において収集される操業情報に応じて異なる値を設定できる。また、y
t−τ’,C
t−τ’はそれぞれ、現在時刻よりτ秒前の脱炭速度(排ガス情報から計算)、及び前回の推定計算で得られた現在時刻よりτ秒前の溶湯中炭素濃度を意味している。すなわち、y
t−τ’は以下に示す数式(7)により計算される値である。
【0043】
ここで、数式(7)において、V
t−τは現在時刻よりτ秒前の排ガス流量(Nm
3/Hr)、X
t−τCOは現在時刻よりτ秒前の排ガス中CO濃度(%)、X
t−τCO2は現在時刻よりτ秒前の排ガス中CO
2濃度(%)を意味している。なお、排ガス流量やCO濃度、CO
2濃度の成分分析収集に時間がかかって遅れが発生する場合には、遅れ時間分だけ時間をスライドさせて数式(7)を計算する。この場合には現在時刻付近の時間帯において、排ガス情報が未収集であるため数式(7)の計算ができなくなるが、計算できなかった時間帯分については、数式(6)の第2項に含めずに推定計算を行えばよい。
【0044】
また、排ガス流量や成分濃度の計測値にズレがあって数式(7)の計算で誤差が含まれることがわかっている場合には、数式(6)に示す評価関数を以下の数式(8)に示す形式にするとよい。数式(8)式の第2項には誤差係数Dが追加されており、4項目には誤差計数Dとその標準値D’との2乗誤差項が追加されている。D’、γは設定パラメータであり、モデルDB12から読み込まれる。また、D’は過去実績や経験に基づいて設定する。この場合には評価関数を溶湯中炭素濃度C
t−T,…,C
t及び変数Dを調整することによって最小化する。また、数式(7),(8)において、吹錬途中の溶湯炭素濃度分析値があればその値を第3項のC’に代入してもよい。
【0046】
数式(6)及び数式(8)に示す評価関数を最小化するには様々な方法があるが、例えば準ニュートン法等のような非線形計画法を使うと高速に計算結果を得ることが可能である(参考文献(今野浩、山下浩著:非線形計画法、日科技連)参照)。これにより、ステップS4の処理は完了し、溶湯成分推定処理はステップS5の処理に進む。
【0047】
ステップS5の処理では、推定計算部15cが、吹錬処理が終了したか否かを判別する。判別の結果、吹錬処理が終了した場合(ステップS5:Yes)、推定計算部15cは、一連の溶湯成分推定処理を終了する。一方、吹錬処理が終了していない場合には(ステップS5:No)、推定計算部15cは、溶湯成分推定処理をステップS6の処理に進める。
【0048】
ステップS6の処理では、推定計算部15cが、前回推定計算を行った時点からΔt秒経過したか否かを判別する。判別の結果、Δt秒が経過した場合(ステップS6:Yes)、推定計算部15cは、溶湯成分推定処理をステップS3の処理に戻す。一方、Δt秒が経過していない場合には(ステップS6:No)、推定計算部15cは、溶湯成分推定処理をステップS5の処理に戻す。
【0049】
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態である溶湯成分推定処理では、推定計算部15cが、操業実績情報から推定された脱炭速度とモデル情報から推定された脱炭速度との差に関する項と、溶湯中の炭素の収支バランス関係式の誤差に関する項と、を含む評価関数を最小化する溶湯の炭素濃度を吹錬処理途中の溶湯の炭素濃度として推定する。このような構成によれば、脱炭速度計算式と物質収支バランス関係式との2種類のモデル式を使用するので、排ガス情報に誤差が生じた場合であっても、推定誤差を小さく抑え、精錬設備における吹錬処理途中の溶湯の炭素濃度を精度高く推定することができる。
【0050】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例、及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。