(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属が、アルミニウム(Al)及びチタン(Ti)から選ばれる少なくとも1種の金属であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
前記金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属が、前記中間層に含有されていることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の光学フィルム。
前記金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属が、前記金属酸化物ガスバリアー層に含有されていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の光学フィルム。
前記界面又は前記中間層における前記金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属の含有量が、前記界面又は前記中間層における全原子量に対して0.2〜10at%であることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の光学フィルム。
前記金属酸化物ガスバリアー層が、前記半導体ナノ粒子層の両面側にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の光学フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の光学フィルムは、基材上に、金属酸化物ガスバリアー層と、半導体ナノ粒子及び紫外線硬化樹脂を含有する半導体ナノ粒子層とを備える光学フィルムであって、前記半導体ナノ粒子層と前記金属酸化物ガスバリアー層との界面に、金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属を含有するか、又は、半導体ナノ粒子層と前記金属酸化物ガスバリアー層との間に、金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属を含有する中間層を備えることを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項13までの各請求項に共通する又は対応する技術的特徴である。
本発明は、前記金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属が、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)、ゲルマニウム(Ge)、ホウ素(B)、リチウム(Li)、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)及びバナジウム(V)から選ばれる少なくとも1種の金属であることが好ましい。これらの元素を含有する金属アルコキシド又は金属キレート化合物は、溶液中において単体で比較的安定であり、かつ、半導体ナノ粒子層と金属酸化物ガスバリアー層との接着性を良好に向上させることができる。
また、本発明は、前記金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属が、アルミニウム(Al)であることが好ましい。これにより、半導体ナノ粒子層と金属酸化物ガスバリアー層との接着性をより効果的に向上させることができる。
また、本発明は、前記紫外線硬化樹脂が、エポキシ基を有することが好ましい。エポキシ基を有する紫外線硬化樹脂は、金属アルコキシド又は金属キレート化合物との相互作用が強いため、半導体ナノ粒子層と金属酸化物ガスバリアー層との接着性をより効果的に向上させることができる。
また、本発明は、前記中間層は、パーヒドロポリシラザンの改質体を含有することが好ましい。
また、本発明は、前記金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属が、前記中間層に含有されていることが好ましい。これにより、半導体ナノ粒子層と金属酸化物ガスバリアー層との間に、金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属をより確実に存在させることができる。
また、本発明は、前記金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属が、前記金属酸化物ガスバリアー層に含有されていることが好ましい。これにより、光学フィルム全体の層厚を低減することができる。
また、本発明は、前記界面又は前記中間層における前記金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属の含有量が、前記界面又は前記中間層における全原子量に対して0.2〜10at%であることが好ましい。これにより、半導体ナノ粒子層と金属酸化物ガスバリアー層との接着性をより効果的に向上させることができる。
【0026】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0027】
《光学フィルムの構成》
本発明の光学フィルムは、基材上に、金属酸化物ガスバリアー層と、半導体ナノ粒子及び紫外線硬化樹脂を含有する半導体ナノ粒子層と、を備え、半導体ナノ粒子層と金属酸化物ガスバリアー層との界面に、金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属を含有するか、又は、半導体ナノ粒子層と金属酸化物ガスバリアー層との間に、金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属を含有する中間層を備える。
本発明の光学フィルムを構成する各層及びその材料等について以下に説明する。
【0028】
《基材》
本発明の光学フィルムに用いることのできる基材としては、ガラス、プラスチック等、特に限定はないが、透光性を有するものが用いられる。透光性を有する基材として好ましく用いられる材料は、例えば、ガラス、石英、樹脂フィルム等を挙げることができる。特に好ましくは、光学フィルムにフレキシブル性を与えることが可能な樹脂フィルムである。
基材の厚さとしては、特に制限されるものではなく、いずれの厚さであっても良いが、フィルムとしてシワや折れを発生させにくく良好な取扱い性を得る点から6μm以上、柔軟性を確保する点から300μm以下が好ましい。更には、耐熱性や材料コストの観点から12μm以上、150μm以下がより好ましい。
【0029】
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリルあるいはポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)あるいはアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等を挙げられる。
【0030】
《半導体ナノ粒子層》
半導体ナノ粒子層は、半導体ナノ粒子及び紫外線硬化樹脂を含有して構成されている。
半導体ナノ粒子層は、2層以上設けられているものとしても良い。この場合には、2層以上の各半導体ナノ粒子層に、それぞれ異なる発光波長の半導体ナノ粒子が含有されていることが好ましい。
【0031】
半導体ナノ粒子層の形成方法としては、基材上に、半導体ナノ粒子及び紫外線硬化樹脂を含有する半導体ナノ粒子層形成用塗布液を塗布後、乾燥し、紫外線等による活性エネルギー線照射処理することにより形成することができる。
【0032】
半導体ナノ粒子層形成用塗布液の塗布方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法、リバースコート法、ダイコート法等が挙げられる。
塗布量はウェット層厚として0.1〜40μmが適当で、好ましくは、0.5〜30μmである。また、ドライ層厚としては平均層厚0.1〜30μm、好ましくは1〜20μmである。
【0033】
半導体ナノ粒子層を形成する半導体ナノ粒子層形成用塗布液には溶媒が含まれていても良い。当該塗布液に含有される有機溶媒としては、例えば、炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒からも適宜選択し、又はこれらを混合し利用できる。また、溶媒としては、半導体ナノ粒子と反応しないものであることが好ましく、例えばトルエン等が挙げられる。
【0034】
紫外線照射処理の光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、紫外線の照射量は、通常50〜5000mJ/cm
2、好ましくは50〜1500mJ/cm
2である。
【0035】
《半導体ナノ粒子》
本発明の光学フィルムを構成する半導体ナノ粒子層には、半導体ナノ粒子が含有されている。すなわち、半導体ナノ粒子は、半導体ナノ粒子層形成用塗布液に含有されているものである。
【0036】
本発明に係る半導体ナノ粒子とは、半導体材料の結晶で構成され、量子閉じ込め効果を有する所定の大きさの粒子をいい、その粒子径が数nm〜数十nm程度の微粒子であり、下記に示す量子ドット効果が得られるものをいう。
【0037】
本発明に係る半導体ナノ粒子の粒子径としては、具体的には1〜20nmの範囲内であることが好ましく、更に好ましくは1〜10nmの範囲内である。
【0038】
このような半導体ナノ粒子のエネルギー準位Eは、一般に、プランク定数を「h」と、電子の有効質量を「m」と、半導体ナノ粒子の半径を「R」としたとき、下式(1)で表される。
【0039】
式(1)
E∝h
2/mR
2
式(1)で示されるように、半導体ナノ粒子のバンドギャップは、「R
−2」に比例して大きくなり、いわゆる、量子ドット効果が得られる。このように、半導体ナノ粒子の粒子径を制御、規定することによって、半導体ナノ粒子のバンドギャップ値を制御することができる。すなわち、微粒子の粒子径を制御、規定することにより、通常の原子にはない多様性を持たせることができる。そのため、光によって励起させたり、光を所望の波長の光に変換して出射させたりすることができる。本発明では、このような発光性の半導体ナノ粒子材料を半導体ナノ粒子と定義する。
【0040】
半導体ナノ粒子の平均粒子径は、上述したように、数nm〜数十nm程度であるが、目的とする発光色に対応する平均粒子径に設定する。例えば、赤発光を得たい場合には、半導体ナノ粒子の平均粒子径としては3.0〜20nmの範囲内に設定することが好ましく、緑発光を得たい場合には、半導体ナノ粒子の平均粒子径を1.5〜10nmの範囲内に設定することが好ましく、青色発光を得たい場合には、半導体ナノ粒子の平均粒子径を1.0〜3.0nmの範囲内に設定することが好ましい。
【0041】
平均粒子径の測定方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)により半導体ナノ粒子の粒子観察を行い、そこから粒子径分布の数平均粒子径として求める方法や、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて平均粒子径を求める方法、動的光散乱法による粒径測定装置、例えば、Malvern社製、「ZETASIZERNano Series Nano−ZS」を用いて測定することができる。その他にも、X線小角散乱法により得られたスペクトルから半導体ナノ粒子の粒子径分布シミュレーション計算を用いて粒子径分布を導出する方法などが挙げられるが、本発明においては、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて平均粒子径を求める方法が好ましい。
【0042】
また、本発明に係る半導体ナノ粒子においては、アスペクト比(長軸径/短軸径)の値が、1.0〜2.0の範囲内であることが好ましく、より好ましくは1.1〜1.7の範囲である。本発明に係る半導体ナノ粒子に係るアスペクト比(長軸径/短軸径)についても、例えば、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、長軸径及び短軸径を測定して求めることができる。なお、測定する個体数としては、300個以上であることが好ましい。
【0043】
半導体ナノ粒子の添加量は、半導体ナノ粒子層の全構成物質を100質量%としたとき、0.01〜50質量%の範囲内であることが好ましく、0.5〜30質量%の範囲内であることがより好ましく、2.0〜25質量%の範囲内であることが最も好ましい。添加量が0.01質量%以上であれば、十分な輝度効率を得ることができ、50質量%以下であれば、適度な半導体ナノ粒子の粒子間距離を維持でき、量子サイズ効果を十分に発揮させることができる。
【0044】
(1)半導体ナノ粒子の構成材料
半導体ナノ粒子の構成材料としては、例えば、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ等の周期表第14族元素の単体、リン(黒リン)等の周期表第15族元素の単体、セレン、テルル等の周期表第16族元素の単体、炭化ケイ素(SiC)等の複数の周期表第14族元素からなる化合物、酸化スズ(IV)(SnO
2)、硫化スズ(II、IV)(Sn(II)Sn(IV)S
3)、硫化スズ(IV)(SnS
2)、硫化スズ(II)(SnS)、セレン化スズ(II)(SnSe)、テルル化スズ(II)(SnTe)、硫化鉛(II)(PbS)、セレン化鉛(II)(PbSe)、テルル化鉛(II)(PbTe)等の周期表第14族元素と周期表第16族元素との化合物、窒化ホウ素(BN)、リン化ホウ素(BP)、ヒ化ホウ素(BAs)、窒化アルミニウム(AlN)、リン化アルミニウム(AlP)、ヒ化アルミニウム(AlAs)、アンチモン化アルミニウム(AlSb)、窒化ガリウム(GaN)、リン化ガリウム(GaP)、ヒ化ガリウム(GaAs)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、窒化インジウム(InN)、リン化インジウム(InP)、ヒ化インジウム(InAs)、アンチモン化インジウム(InSb)等の周期表第13族元素と周期表第15族元素との化合物(あるいはIII−V族化合物半導体)、硫化アルミニウム(Al
2S
3)、セレン化アルミニウム(Al
2Se
3)、硫化ガリウム(Ga
2S
3)、セレン化ガリウム(Ga
2Se
3)、テルル化ガリウム(Ga
2Te
3)、酸化インジウム(In
2O
3)、硫化インジウム(In
2S
3)、セレン化インジウム(In
2Se
3)、テルル化インジウム(In
2Te
3)等の周期表第13族元素と周期表第16族元素との化合物、塩化タリウム(I)(TlCl)、臭化タリウム(I)(TlBr)、ヨウ化タリウム(I)(TlI)等の周期表第13族元素と周期表第17族元素との化合物、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、酸化カドミウム(CdO)、硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)、テルル化カドミウム(CdTe)、硫化水銀(HgS)、セレン化水銀(HgSe)、テルル化水銀(HgTe)等の周期表第12族元素と周期表第16族元素との化合物(あるいはII−VI族化合物半導体)、硫化ヒ素(III)(As
2S
3)、セレン化ヒ素(III)(As
2Se
3)、テルル化ヒ素(III)(As
2Te
3)、硫化アンチモン(III)(Sb
2S
3)、セレン化アンチモン(III)(Sb
2Se
3)、テルル化アンチモン(III)(Sb
2Te
3)、硫化ビスマス(III)(Bi
2S
3)、セレン化ビスマス(III)(Bi
2Se
3)、テルル化ビスマス(III)(Bi
2Te
3)等の周期表第15族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化銅(I)(Cu
2O)、セレン化銅(I)(Cu
2Se)等の周期表第11族元素と周期表第16族元素との化合物、塩化銅(I)(CuCl)、臭化銅(I)(CuBr)、ヨウ化銅(I)(CuI)、塩化銀(AgCl)、臭化銀(AgBr)等の周期表第11族元素と周期表第17族元素との化合物、酸化ニッケル(II)(NiO)等の周期表第10族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化コバルト(II)(CoO)、硫化コバルト(II)(CoS)等の周期表第9族元素と周期表第16族元素との化合物、四酸化三鉄(Fe
3O
4)、硫化鉄(II)(FeS)等の周期表第8族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化マンガン(II)(MnO)等の周期表第7族元素と周期表第16族元素との化合物、硫化モリブデン(IV)(MoS
2)、酸化タングステン(IV)(WO
2)等の周期表第6族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化バナジウム(II)(VO)、酸化バナジウム(IV)(VO
2)、酸化タンタル(V)(Ta
2O
5)等の周期表第5族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化チタン(TiO
2、Ti
2O
5、Ti
2O
3、Ti
5O
9等)等の周期表第4族元素と周期表第16族元素との化合物、硫化マグネシウム(MgS)、セレン化マグネシウム(MgSe)等の周期表第2族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化カドミウム(II)クロム(III)(CdCr
2O
4)、セレン化カドミウム(II)クロム(III)(CdCr
2Se
4)、硫化銅(II)クロム(III)(CuCr
2S
4)、セレン化水銀(II)クロム(III)(HgCr
2Se
4)等のカルコゲンスピネル類、バリウムチタネート(BaTiO
3)等が挙げられるが、SnS
2、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe等の周期表第14族元素と周期表第16族元素との化合物、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb等のIII−V族化合物半導体、Ga
2O
3、Ga
2S
3、Ga
2Se
3、Ga
2Te
3、In
2O
3、In
2S
3、In
2Se
3、In
2Te
3等の周期表第13族元素と周期表第16族元素との化合物、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、HgO、HgS、HgSe、HgTe等のII−VI族化合物半導体、As
2O
3、As
2S
3、As
2Se
3、As
2Te
3、Sb
2O
3、Sb
2S
3、Sb
2Se
3、Sb
2Te
3、Bi
2O
3、Bi
2S
3、Bi
2Se
3、Bi
2Te
3等の周期表第15族元素と周期表第16族元素との化合物、MgS、MgSe等の周期表第2族元素と周期表第16族元素との化合物が好ましく、中でも、Si、Ge、GaN、GaP、InN、InP、Ga
2O
3、Ga
2S
3、In
2O
3、In
2S
3、ZnO、ZnS、CdO、CdSがより好ましい。これらの物質は、毒性の高い陰性元素を含まないので耐環境汚染性や生物への安全性に優れており、また、可視光領域で純粋なスペクトルを安定して得ることができるので、発光デバイスの形成に有利である。これらの材料のうち、CdSe、ZnSe、CdSは、発光の安定性の点で好ましい。発光効率、高屈折率、安全性、経済性の観点から、ZnO、ZnSの半導体ナノ粒子が好ましい。また、上記の材料は、1種で用いるものであっても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0045】
なお、上述した半導体ナノ粒子には、必要に応じて微量の各種元素を不純物としてドープすることができる。このようなドープ物質を添加することにより発光特性を大きく向上させることができる。
【0046】
本発明でいう発光波長(バンドギャップ)とは、無機物である半導体ナノ粒子の場合は、価電子帯と伝導帯のエネルギー差を半導体ナノ粒子におけるバンドギャップ(eV)であり、発光波長(nm)=1240/バンドギャップ(eV)で表される。
【0047】
半導体ナノ粒子のバンドギャップ(eV)は、Taucプロットを用いて測定することができる。
【0048】
バンドギャップ(eV)の光科学的測定手法の一つであるTaucプロットについて説明する。
【0049】
Taucプロットを用いたバンドギャップ(E
0)の測定原理を以下に示す。
【0050】
半導体材料の長波長側の光学吸収端近傍の比較的吸収の大きい領域において、光吸収係数αと光エネルギーhν(ただし、hはプランク常数、νは振動数)、及びバンドキャップエネルギーE
0の間には次式(A)、が成り立つと考えられている。なお、次式(A)において、Bは定数を表す。
【0051】
式(A)
αhν=B(hν−E
0)
2
したがって、吸収スペクトルを測定し、そこから(αhν)の0.5乗に対してhνをプロット(いわゆる、Taucプロット)し、直線区間を外挿したα=0におけるhνの値が求めようとする半導体ナノ粒子のバンドギャップエネルギーE
0となる。
【0052】
なお、半導体ナノ粒子の場合は、吸収と発光のスペクトルの差異(ストークスシフト)が小さく、また波形もシャープであるため、簡便には発光スペクトルの極大波長をバンドギャップの指標として用いることもできる。
【0053】
また、他の方法として、これら有機及び無機機能材料のエネルギー準位を見積もる方法としては、走査型トンネル分光法、紫外線光電子分光法、X線光電子分光法、オージェ電子分光法により求められるエネルギー準位から求める方法及び光学的にバンドギャップを見積もる方法が挙げられる。
【0054】
半導体ナノ粒子の表面は、無機物の被覆層又は有機配位子で構成された被膜で被覆されたものであるのが好ましい。すなわち、半導体ナノ粒子の表面は、半導体ナノ粒子材料で構成されたコア領域と、無機物の被覆層又は有機配位子で構成されたシェル領域とを有するコア・シェル構造を有するものであるのが好ましい。
【0055】
このコア・シェル構造は、少なくとも2種類の化合物で形成されていることが好ましく、2種類以上の化合物でグラジエント構造(傾斜構造)を形成していても良い。これにより、塗布液中における半導体ナノ粒子の凝集を効果的に防止することができ、半導体ナノ粒子の分散性を向上させることができるとともに、輝度効率が向上し、本発明の光学フィルムを用いた発光デバイスを連続駆動させた場合に色ズレの発生を抑制することができる。また、被覆層の存在により、安定的に発光特性が得られる。
【0056】
また、半導体ナノ粒子の表面が被膜(シェル部)で被覆されていると、後述するような表面修飾剤を半導体ナノ粒子の表面付近に確実に担持させることができる。
【0057】
被膜(シェル部)の厚さは、特に限定されないが、0.1〜10nmの範囲内であることが好ましく、0.1〜5nmの範囲内であることがより好ましい。
【0058】
一般に、半導体ナノ粒子の平均粒子径により発光色を制御することができ、被膜の厚さが上記範囲内の値であれば、被膜の厚さが原子数個分に相当する厚さから半導体ナノ粒子1個に満たない厚さであり、半導体ナノ粒子を高密度で充填することができ、十分な発光量が得られる。また、被膜の存在により、お互いのコア粒子の粒子表面に存在する欠陥、ダングリングボンドへの電子トラップによる非発光の電子エネルギーの転移を抑制でき、量子効率の低下を抑えることができる。
【0059】
(2)表面修飾剤
半導体ナノ粒子を含有している本発明の半導体ナノ粒子層形成用塗布液を用いて半導体ナノ粒子層を形成する際、本発明の半導体ナノ粒子層形成用塗布液においては、半導体ナノ粒子の表面近傍に、表面修飾剤が付着していることが好ましい。これにより、半導体ナノ粒子層形成用塗布液中における半導体ナノ粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができる。また、半導体ナノ粒子の製造時において、半導体ナノ粒子表面に表面修飾剤を付着させることにより、形成される半導体ナノ粒子の形状が真球度の高いものとなり、また、半導体ナノ粒子の粒子径分布を狭く抑えられるため、特に優れたものとすることができる。
【0060】
本発明で適用可能な表面修飾剤としては、半導体ナノ粒子の表面に直接付着したものであっても良いし、シェルを介して付着したもの(表面修飾剤が直接付着するのはシェルで、半導体ナノ粒子のコア部には接触していないもの)であっても良い。
【0061】
表面修飾剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン類;ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;トリ(n−ヘキシル)アミン、トリ(n−オクチル)アミン、トリ(n−デシル)アミン等の第3級アミン類;トリプロピルホスフィンオキシド、トリブチルホスフィンオキシド、トリヘキシルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド、トリデシルホスフィンオキシド等の有機リン化合物;ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジエステル類;ピリジン、ルチジン、コリジン、キノリン類の含窒素芳香族化合物等の有機窒素化合物;ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン等のアミノアルカン類;ジブチルスルフィド等のジアルキルスルフィド類;ジメチルスルホキシドやジブチルスルホキシド等のジアルキルスルホキシド類;チオフェン等の含硫黄芳香族化合物等の有機硫黄化合物;パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸;アルコール類;ソルビタン脂肪酸エステル類;脂肪酸変性ポリエステル類;3級アミン変性ポリウレタン類;ポリエチレンイミン類等が挙げられるが、半導体ナノ粒子が後述するような方法で調製されるものである場合、表面修飾剤としては、高温液相において半導体ナノ粒子の微粒子に配位して、安定化する物質であるのが好ましく、具体的には、トリアルキルホスフィン類、有機リン化合物、アミノアルカン類、第3級アミン類、有機窒素化合物、ジアルキルスルフィド類、ジアルキルスルホキシド類、有機硫黄化合物、高級脂肪酸、アルコール類が好ましい。このような表面修飾剤を用いることにより、塗布液中における半導体ナノ粒子の分散性を特に優れたものとすることができる。また、半導体ナノ粒子の製造時において形成される半導体ナノ粒子の形状をより真球度の高いものとし、半導体ナノ粒子の粒度分布をよりシャープなものとすることができる。
【0062】
本発明において、前述のように、半導体ナノ粒子のサイズ(平均粒子径)としては、1〜20nmの範囲内であることが好ましい。本発明において、半導体ナノ粒子のサイズとは、半導体ナノ粒子材料で構成されたコア領域と、不活性な無機物の被覆層又は有機配位子で構成されたシェル領域及び表面修飾剤で構成されるトータルのサイズを表す。表面修飾剤やシェルが含まれない場合は、それを含まないサイズを表す。
【0063】
(3)半導体ナノ粒子の製造方法
半導体ナノ粒子の製造方法としては、従来行われている公知の任意の方法を用いることができる。また、Aldrich社、CrystalPlex社、NNLab社等から市販品として購入することもできる。
【0064】
例えば、高真空下のプロセスとしては、分子ビームエピタキシー法、CVD法等;液相製造方法としては、原料水溶液を、例えば、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン等のアルカン類、又はベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等の非極性有機溶媒中の逆ミセルとして存在させ、この逆ミセル相中にて結晶成長させる逆ミセル法、熱分解性原料を高温の液相有機媒体に注入して結晶成長させるホットソープ法、更に、ホットソープ法と同様に、酸塩基反応を駆動力として比較的低い温度で結晶成長を伴う溶液反応法等が挙げられる。これらの製造方法から任意の方法を使用することができるが、中でも、液相製造方法が好ましい。
【0065】
なお、液相製造方法において、半導体ナノ粒子の合成に際して、表面に存在する有機表面修飾剤を初期表面修飾剤という。例えば、ホットソープ法における初期表面修飾剤の例としては、トリアルキルホスフィン類、トリアルキルホスフィンオキシド類、アルキルアミン類、ジアルキルスルホキシド類、アルカンホスホン酸等が挙げられる。これらの初期表面修飾剤は、交換反応により上述の表面修飾剤に交換することが好ましい。
【0066】
具体的には、例えば、前述したホットソープ法により得られるトリオクチルホスフィンオキシド等の初期表面修飾剤は、表面修飾剤を含有する液相中で行う交換反応により、上述の表面修飾剤と交換することが可能である。
【0067】
《紫外線硬化樹脂》
本発明の光学フィルムを構成する半導体ナノ粒子層には、紫外線硬化樹脂が含有されている。すなわち、紫外線硬化樹脂は、半導体ナノ粒子層形成用塗布液に含有されているものである。
【0068】
紫外線硬化樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。中でも組成中にエポキシ基を有する紫外線硬化型アクリレート系樹脂が、後述する金属アルコキシド又は金属キレート化合物との相互作用が強いため、好ましい。
これにより、定かではないが半導体ナノ粒子層の金属酸化物ガスバリアー層側界面又は中間層に存在する金属アルコキシド又は金属キレート化合物と、相互作用又は反応することによって、半導体ナノ粒子層と金属酸化物ガスバリアー層との接着性及び耐久性が向上しているもの推定している。
【0069】
紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、又はプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、アクリレートは、メタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する。)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等のヒドロキシ基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる。例えば、特開昭59−151110号公報に記載のものを用いることができる。また、例えば、ユニディック17−806(DIC株式会社製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン株式会社製)1部との混合物等が好ましく用いられる。
【0070】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させると容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151112号公報に記載のものを用いることができる。
【0071】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光重合開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることができ、特開平1−105738号公報に記載のものを用いることができる。
【0072】
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
【0073】
これら紫外線硬化樹脂の光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及びその誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができる。光増感剤とともに使用しても良い。上記光重合開始剤も光増感剤として使用できる。また、エポキシアクリレート系の光重合開始剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の光増感剤を用いることができる。紫外線硬化樹脂組成物に用いられる光重合開始剤又は光増感剤は、該組成物100質量部に対して0.1〜15質量部であり、好ましくは1〜10質量部である。
【0074】
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることができる。また、不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることができる。市販品としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(ADEKA株式会社製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学株式会社製);セイカビームPHC2210(S)、PHCX−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業株式会社製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー株式会社製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(DIC株式会社製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料株式会社製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業株式会社製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子株式会社製);RCC−15C(グレース・ジャパン株式会社製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成株式会社製)、NKハードB−420、NKエステルA−DOG、NKエステルA−IBD−2E(新中村化学工業株式会社製)等を適宜選択して利用できる。また、具体的化合物例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジオキサングリコールアクリレート、エトキシ化アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
【0075】
《金属酸化物ガスバリアー層》
金属酸化物ガスバリアー層は、金属酸化物を含有して構成され、上記半導体ナノ粒子層への酸素や水の侵入を抑制する層である。
【0076】
金属酸化物ガスバリアー層の形成方法としては、金属やその酸化物等を蒸発させて、基材上に成膜する物理気相成長法(PVD法)や、目的とする薄膜の成分を含む原料ガス(例えば、テトラエトキシシラン(TEOS)に代表される有機ケイ素化合物等)を供給し、基材表面又は気相中での化学反応により膜を堆積する化学気相成長法(CVD法)、半導体レーザー等を用いて、例えば、金属Siを蒸発させ酸素の存在下で基材上に堆積するスパッタ法等が挙げられる。中でも、本発明においては、化学気相成長法(CVD法)又は物理気相成長法(PVD法)であることが好ましく、更に好ましくは、プラズマ放電を行うプラズマ化学気相成長法(プラズマCVD法)であり、特に好ましくは、有機ケイ素化合物を含む原料ガスを用いて、磁場を印加したローラー間に放電空間を有する放電プラズマ化学気相成長法(「ローラーCVD法」ともいう。)を用いた方法である。
【0077】
また、金属酸化物ガスバリアー層の形成方法としては、ポリシラザンを含有する金属酸化物ガスバリアー層形成用塗布液を塗布、乾燥して塗膜を形成した後、形成した塗膜に真空紫外光を照射して改質処理を施すことにより形成することもできる。
【0078】
金属酸化物ガスバリアー層の層厚は、5〜3000nmの範囲内であることが好ましく、10〜2000nmの範囲内であることより好ましく、50〜1000nmの範囲内であることが特に好ましい。金属酸化物ガスバリアー層の層厚が前記範囲内であれば、酸素や水蒸気に対するガスバリアー性に優れ、屈曲によるガスバリアー性の低下がみられない。
【0079】
(1)CVD法による金属酸化物ガスバリアー層の形成
金属酸化物ガスバリアー層は、生産性の観点から、ロール・ツー・ロール方式で基材表面に形成する方法が好ましい。また、プラズマCVD法によりガスバリアー層を製造する際に用いることが可能な形成装置としては、特に制限されないが、少なくとも一対の磁場を印加した成膜ローラーと、プラズマ電源とを備え、かつ一対の磁場を印加した成膜ローラー間において放電することが可能な構成となっている装置であることが好ましい。具体的には、
図1に示すようなCVD装置S1を用いることができ、CVD装置S1によれば、プラズマCVD法を利用しながらロール・ツー・ロール方式で製造することが可能となる。
【0080】
CVD装置S1としては、主には、
図1に示すように、基材2を積層したロール状の繰り出しローラー11Aと、基材2を搬送するための搬送ローラー22及び23と、一対の成膜ローラー31及び32と、成膜ガス供給管41と、プラズマ発生用電源51と、巻取りローラー11Bとを備えている。また、成膜ローラー31及び成膜ローラー32の内部には、成膜ローラーが回転しても、回転しないように固定された磁場発生装置61及び62がそれぞれ設けられている。
【0081】
CVD装置S1としては、上記の成膜ローラー31及び32等の各構成部位が、
図1に示すように真空チャンバー16内に配置されている。更に、真空チャンバー16には、真空排気手段である真空ポンプ17が排気口18を介して接続されており、この真空ポンプ17及び成膜ガス供給管41により真空チャンバー16内の圧力を適宜調整することが可能となっている。なお、真空ポンプ17は、真空チャンバー16の内部を真空状態又は真空に準じた低圧状態まで排気することができる。
【0082】
このように構成されるCVD装置S1を用いて金属酸化物ガスバリアー層を形成する際には、
図1に示すように、一対の成膜ローラー31及び32のそれぞれに基材2を引き回して配置し、一対の成膜ローラー31及び32間に電圧を印加して、プラズマを発生させて、プラズマ放電空間を形成する。
次いで、成膜ガス供給管41より金属酸化物ガスバリアー層形成用の成膜ガスを放電空間に供給しながら、連続搬送している基材2の一方の面に、金属酸化物ガスバリアー層を形成した後、巻取りローラー11Bによりロール状に巻き取られる。
【0083】
(金属酸化物ガスバリアー層形成用の成膜ガス)
ローラーCVD法で金属酸化物ガスバリアー層を形成する場合において、成膜ガス等としては、原料ガス、反応ガス、キャリアガス、放電ガスが単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0084】
金属酸化物ガスバリアー層の形成に用いられる成膜ガス中の原料ガスとしては、形成するガスバリアー層の材質に応じて適宜選択して使用することができる。このような原料ガスとしては、例えば、ケイ素を含有する有機ケイ素化合物や炭素を含有する有機化合物ガスを用いることができるが、本発明に係る金属酸化物ガスバリアー層においては、少なくとも炭素原子を含有する金属酸化物層を形成することができる原料ガスが好ましい。
【0085】
本発明に適用可能な有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(略称:HMDSO)、ヘキサメチルジシラン(略称:HMDS)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン(略称:TMOS)、テトラエトキシシラン(略称:TEOS)、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。これらの有機ケイ素化合物の中でも、化合物の取扱い性及び得られるガスバリアー層のガスバリアー性等の特性の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。これらの有機ケイ素化合物は、単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、炭素を含有する有機化合物ガスとしては、例えば、メタン、エタン、エチレン、アセチレンを例示することができる。これら有機ケイ素化合物ガスや有機化合物ガスは、金属酸化物ガスバリアー層の種類に応じて適切な原料ガスが選択される。
【0086】
また、成膜ガスとしては、上記原料ガスの他に、反応ガスを用いても良い。このような反応ガスとしては、原料ガスと反応して酸化物、窒化物等の無機化合物となるガスを適宜選択して使用することができる。酸化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、酸素、オゾンを用いることができる。また、窒化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、窒素、アンモニアを用いることができる。これらの反応ガスは、単独又は2種以上を組み合わせて使用することができ、例えば、酸窒化物を形成する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組み合わせて使用することができる。
【0087】
また、成膜ガスとしては、原料ガスを真空チャンバー内に供給するために、必要に応じて、キャリアガスを用いても良い。更に、成膜ガスとしては、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて、放電用ガスを用いても良い。このようなキャリアガス及び放電用ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガスや水素ガスを用いることができる。
【0088】
また、真空チャンバー16内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができるが、0.5Pa〜50Paの範囲内とすることが好ましい。
【0089】
本発明の光学フィルムは、金属酸化物ガスバリアー層を複数層備えていても良く、そのうちの少なくとも1層は上記のような化学気相成長法(CVD法)又は物理気相成長法(PVD法)で形成されることが好ましい。このように形成されることで、金属酸化物ガスバリアー層上に半導体ナノ粒子層を塗布積層したときの密着性を高くすることができるため、長期間にわたる耐久性を良好に維持できる。
【0090】
(2)塗布法による金属酸化物ガスバリアー層の形成
塗布法により基材上に金属酸化物ガスバリアー層を形成する方法としては、例えば、ポリシラザンを含む金属酸化物ガスバリアー層形成用塗布液を、基材上に塗布及び乾燥して形成された層(ポリシラザン含有層)に、真空紫外光を照射するポリシラザンの改質処理を施して、ガスバリアー性を有するポリシラザン改質層である金属酸化物ガスバリアー層に転化する方法が用いられる。
【0091】
また、塗布及び乾燥によって形成したポリシラザン含有層上に、保護層を塗布して積層し、その保護層の塗膜面側から真空紫外光を照射するなどの改質処理を施すことによって、ポリシラザン含有層をガスバリアー層に改質して形成することもできる。
【0092】
(ポリシラザンを含む金属酸化物ガスバリアー層形成用塗布液の塗布)
上記したように、金属酸化物ガスバリアー層は、ポリシラザンを含む金属酸化物ガスバリアー層形成用塗布液を塗布し、塗膜を形成する湿式塗布方法によって形成することができる。
【0093】
本発明で用いられる「ポリシラザン」とは、ケイ素−窒素結合を持つポリマーで、Si−N、Si−H、N−H等の結合を有するSiO
2、Si
3N
4及び両方の中間固溶体SiO
xN
y等から構成されるセラミック前駆体無機ポリマーである。
【0094】
そのポリシラザンを含む金属酸化物ガスバリアー層形成用塗布液を塗布する湿式塗布方法としては、従来公知の方法から適宜選択して用いることができる。具体例な塗布方法としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。
【0095】
基材上に形成するポリシラザン含有層の層厚としては、目的に応じて適宜設定されるが、乾燥後の層厚としては、1nm〜100μmの範囲内であることが好ましく、更に好ましくは10nm〜10μmの範囲内であり、最も好ましくは10nm〜1μmの範囲内である。
【0096】
本発明の光学フィルムにおいて、金属酸化物ガスバリアー層が、上述のようにポリシラザンを含有する金属酸化物ガスバリアー層形成用塗布液を塗布、乾燥し、真空紫外光を照射して改質処理を施すことにより形成される場合、当該金属酸化物ガスバリアー層は、半導体ナノ粒子層の上に積層されることが好ましい。この態様により、金属酸化物ガスバリアー層を支持するための基材が不要となり、光学フィルムとしての厚さを低減することができ、同時に屈曲性、材料コストの面で有利な構成とすることができる。
【0097】
《金属アルコキシド又は金属キレート化合物》
本発明の光学フィルムにおいて、金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属が界面又は中間層に存在することで、半導体ナノ粒子層と金属酸化物ガスバリアー層と反応、相互作用し、接着性を向上させることができる。
ここで、光学フィルム製造時には、半導体ナノ粒子層と金属酸化物ガスバリアー層との界面又は中間層に金属アルコキシド又は金属キレート化合物を含有させるものであるが、他の各種層を積層させた後は、金属アルコキシド又は金属キレート化合物は半導体ナノ粒子層や金属酸化物ガスバリアー層の構成成分と結合又は相互作用しているものと考えられる。したがって、添加された金属アルコキシド又は金属キレート化合物は、金属アルコキシド又は金属キレート化合物の形態ではなく、金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属として存在しているものと考えている。
本発明に係る金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属は、当該金属が含有される界面又は中間層に未反応の金属アルコキシドないしは金属キレート、あるいは金属キレートの配位から外れた配位子の有機物が一部存在することから判断することができる。
要因は明らかではないが、これらの化合物の存在により界面の相互作用に影響して、本発明の作用が発現するものと推定している。
これらの存在は、赤外分光法、固体NMR、X線光電子分光分析等の分析方法を単独、または組み合わせることで容易に検出可能である。
【0098】
本発明に係る金属アルコキシド又は金属キレートの例としては、例えば、ベリリウムアセチルアセトネート、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリn−プロピル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリn−ブチル、ホウ酸トリtert−ブチル、マグネシウムエトキシド、マグネシウムエトキシエトキシド、マグネシウムメトキシエトキシド、マグネシウムアセチルアセトネート、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリn−プロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリn−ブトキシド、アルミニウムトリsec−ブトキシド、アルミニウムトリtert−ブトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムエチルアセトアセテートジn−ブチレート、アルミニウムジエチルアセトアセテートモノn−ブチレート、アルミニウムジイソプロピレートモノsec−ブチレート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ビス(エチルアセトアセテート)(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウム、アルミニウムアルキルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムオキサイドイソプロポキサイドトリマー、アルミニウムオキサイドオクチレートトリマー、カルシウムメトキシド、カルシウムエトキシド、カルシウムイソプロポキシド、カルシウムアセチルアセトネート、スカンジウムアセチルアセトネート、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラノルマルプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンテトライソブトキシド、チタンジイソプロポキシジノルマルブトキシド、チタンジターシャリーブトキシジイソプロポキシド、チタンテトラtert−ブトキシド、チタンテトライソオクチロキシド、チタンテトラステアリルアルコキシド、バナジウムトリイソブトキシドオキシド、トリス(2,4−ペンタンジオナト)クロム、クロムn−プロポキシド、クロムイソプロポキシド、マンガンメトキシド、トリス(2,4−ペンタンジオナト)マンガン、鉄メトキシド、鉄エトキシド、鉄n−プロポキシド、鉄イソプロポキシド、トリス(2,4−ペンタンジオナト)鉄、コバルトイソプロポキシド、トリス(2,4−ペンタンジオナト)コバルト、ニッケルアセチルアセトネート、銅メトキシド、銅エトキシド、銅イソプロポキシド、銅アセチルアセトネート、亜鉛エトキシド、亜鉛エトキシエトキシド、亜鉛メトキシエトキシド、ガリウムメトキシド、ガリウムエトキシド、ガリウムイソプロポキシド、ガリウムアセチルアセトナート、ゲルマニウムメトキシド、ゲルマニウムエトキシド、ゲルマニウムイソプロポキシド、ゲルマニウムn−ブトキシド、ゲルマニウムtert−ブトキシド、エチルトリエトキシゲルマニウム、ストロンチウムイソプロポキシド、イットリウムn−プロポキシド、イットリウムイソプロポキシド、イットリウムアセチルアセトネート、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムn−プロポキシド、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムtert−ブトキシド、テトラキス(2,4−ペンタンジオナト)ジルコニウム、ニオブエトキシド、ニオブn−ブトキシド、ニオブtert−ブトキシド、モリブデンエトキシド、モリブデンアセチルアセトネート、パラジウムアセチルアセトネート、銀アセチルアセトネート、カドミウムアセチルアセトネート、トリス(2,4−ペンタンジオナト)インジウム、インジウムイソプロポキシド、インジウムイソプロポキシド、インジウムn−ブトキシド、インジウムメトキシエトキシド、スズn−ブトキシド、スズtert−ブトキシド、スズアセチルアセトネート、バリウムジイソプロポキシド、バリウムtert−ブトキシド、バリウムアセチルアセトネート、ランタンイソプロポキシド、ランタンメトキシエトキシド、ランタンアセチルアセトネート、セリウムn−ブトキシド、セリウムtert−ブトキシド、セリウムアセチルアセトネート、プラセオジムメトキシエトキシド、プラセオジムアセチルアセトネート、ネオジムメトキシエトキシド、ネオジムアセチルアセトネート、ネオジムメトキシエトキシド、サマリウムイソプロポキシド、サマリウムアセチルアセトネート、ユーロピウムアセチルアセトネート、ガドリニウムアセチルアセトネート、テルビウムアセチルアセトネート、ホルミウムアセチルアセトネート、イッテルビウムアセチルアセトネート、ルテチウムアセチルアセトネート、ハフニウムエトキシド、ハフニウムn−ブトキシド、ハフニウムtert−ブトキシド、ハフニウムアセチルアセトネート、タンタルメトキシド、タンタルエトキシド、タンタルn−ブトキシド、タンタルブトキシド、タンタルテトラメトキシドアセチルアセトネート、タングステンエトキシド、イリジウムアセチルアセトネート、イリジウムジカルボニルアセチルアセトネート、タリウムエトキシド、タリウムアセチルアセトネート、鉛アセチルアセトネート等が挙げられる。これら添加元素のアルコキシドの中でも、ホウ酸トリイソプロピル、マグネシウムエトキシド、アルミニウムトリsec−ブトキシド、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、カルシウムイソプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、ガリウムイソプロポキシド、アルミニウムジイソプロピレートモノsec−ブチレート、アルミニウムエチルアセトアセテートジn−ブチレート、アルミニウムジエチルアセトアセテートモノn−ブチレートが好ましい。
【0099】
本発明に係る金属アルコキシド又は金属キレート化合物に含有される金属元素は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)、ゲルマニウム(Ge)、ホウ素(B)、リチウム(Li)、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)及びバナジウム(V)から選ばれる少なくとも1種の金属であることが好ましい。さらに好ましくは、アルミニウム(Al)及びチタン(Ti)から選ばれる少なくとも1種の金属である。これらの金属元素を含有する金属アルコキシド又は金属キレート化合物は、溶液中において単体で比較的安定であり、かつ、半導体ナノ粒子層と金属酸化物ガスバリアー層との接着性を良好に向上させることができる。
【0100】
中でも、金属アルコキシド又は金属キレート化合物に含有される金属元素は、着色が少なく透明性が高い点においてアルミニウム(Al)であることが好ましい。
アルミニウムを含む金属アルコキシド又は金属キレート化合物として、具体的には、例えば、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリn−プロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリn−ブトキシド、アルミニウムトリsec−ブトキシド、アルミニウムトリtert−ブトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムエチルアセトアセテートジn−ブチレート、アルミニウムジエチルアセトアセテートモノn−ブチレート、アルミニウムジイソプロピレートモノsec−ブチレート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ビス(エチルアセトアセテート)(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウム、アルミニウムアルキルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムオキサイドイソプロポキサイドトリマー、アルミニウムオキサイドオクチレートトリマー等が挙げられる。これらの中でも、アルミニウムトリsec−ブトキシド、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロピレートモノsec−ブチレート、アルミニウムエチルアセトアセテートジn−ブチレート、アルミニウムジエチルアセトアセテートモノn−ブチレート等が好ましい。
【0101】
《半導体ナノ粒子層と金属酸化物ガスバリアー層との界面》
本発明の光学フィルムにおける半導体ナノ粒子層と金属酸化物ガスバリアー層との界面とは、半導体ナノ粒子層と金属酸化物ガスバリアー層とが接する面であり、金属酸化物ガスバリアー層の構成成分が最小となる位置を中心として厚さ方向に前後20nmの領域の内部と定義される。
ここで、当該界面について
図2を参照して説明する。
図2は、横軸が、金属酸化物ガスバリアー層の基材側の面を0としたときの厚さ方向の距離(nm)、縦軸が、各層の構成成分の原子組成比率(%)を示すグラフである。
図2において、線Aが金属酸化物ガスバリアー層の構成成分の比率を示し、線Bが金属アルコキシド又は金属キレート化合物に由来する金属の比率を示すものであり、半導体ナノ粒子層の構成成分の比率は省略している。
図2においては、金属酸化物ガスバリアー層の構成成分の比率が最小(
図2では0%)となる位置Cを中心として厚さ方向に前後20nmの領域を合わせた領域Dが界面となる。
また、半導体ナノ粒子層と金属酸化物ガスバリアー層との間に後述の中間層が設けられている場合には、当該中間層に、金属アルコキシド又は金属キレート化合物に由来する金属が含有されているものである。
【0102】
半導体ナノ粒子層と金属酸化物ガスバリアー層との界面、又は、半導体ナノ粒子層と金属酸化物ガスバリアー層との間に設けられる中間層において、金属アルコキシド又は金属キレート化合物に由来する金属の含有量は、当該界面又は中間層における全原子量に対する金属原子組成比率(at%)が0.2〜10at%の範囲である。この範囲に調整することにより良好な耐久性と発光効率を両立することができる。すなわち、0.2%以上とすることでより好ましい層間の密着性を確保でき、かつ10at%以下とすることで光の透過性をより高く維持することができると推定している。
【0103】
半導体ナノ粒子層と金属酸化物ガスバリアー層との界面又は中間層における金属アルコキシド又は金属キレート化合物に由来する金属の含有量の測定方法は下記の方法にて測定することができる。
すなわち、上記金属の含有量は、下記測定条件により、金属酸化物ガスバリアー層の表面からの深さ(厚さ)方向の組成をXPS分析により測定し、求めることができる。当該測定は、光学フィルムの面方向において無作為に選ばれる10箇所に対して行い、その平均値をもって上記数値範囲内であるか否かを判断することが好ましい。
・装置:QUANTERASXM(アルバック・ファイ株式会社製)
・X線源:単色化Al−Kα
・測定領域:Si2p、C1s、N1s、O1s
・スパッタイオン:Ar(2keV)
・デプスプロファイル:1分間のスパッタ後に測定を繰り返す
・データ処理:MultiPak(アルバック・ファイ株式会社製)
・定量:バックグラウンドをShirley法で求め、得られたピーク面積から相対感度係数法を用いて定量した。
【0104】
《金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属の添加方法》
半導体ナノ粒子層と金属酸化物ガスバリアー層との界面又は中間層に、金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属を含有させる方法としては、次の方法を挙げることができる。例えば、半導体ナノ粒子層又は金属酸化物ガスバリアー層の表面に、溶媒中に金属アルコキシド又は金属キレート化合物を含有させた塗布液を塗布して乾燥させた後、半導体ナノ粒子層又は金属酸化物ガスバリアー層を積層する方法や、半導体ナノ粒子層又は金属酸化物ガスバリアー層を形成するための層形成用塗布液やその原料中に、金属アルコキシド又は金属キレート化合物を添加して、当該金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属を半導体ナノ粒子層又は金属酸化物ガスバリアー層の層内に含有させることで、当該金属を界面に含有させる方法、等を挙げることができる。
その他の方法として、下記の中間層の層内に添加する方法も好ましい態様である。
【0105】
《中間層》
本発明の光学フィルムは、半導体ナノ粒子層と金属酸化物ガスバリアー層との間に、中間層を更に備えていても良い。
中間層は、本発明に係る金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属と、それを保持するための有機又は無機の化合物と、を含有して構成されている。
【0106】
中間層に含有される有機又は無機の化合物としては、金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属を保持し、かつ、当該金属が含有されていることによる半導体ナノ粒子層と金属酸化物ガスバリアー層との接着性を損なうものでなければ特に制限はない。このような性質を有する化合物として、好ましくは、有機又は無機のパーヒドロポリシラザン化合物溶液を塗布し、乾燥して、反応させたものを挙げることができる。
【0107】
パーヒドロポリシラザン化合物としては、上記した金属酸化物ガスバリアー層の形成に用いられるものと同様のものを好ましく用いることができる。この場合、中間層を形成するための中間層形成用塗布液中の金属アルコキシド又は金属キレート化合物のパーヒドロポリシラザンに対する添加量は質量比として、1〜30%であることが好ましい。
【0108】
中間層の層厚としては、好ましくは1〜1200nmである。
【0109】
中間層は、上記した金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属を含有するので、半導体ナノ粒子層と金属酸化物ガスバリアー層との接着層として機能させることができる。
また、半導体ナノ粒子層に含有される紫外線硬化樹脂に対して中間層形成後に紫外線照射する場合に、上記したように構成される中間層は、紫外領域の波長の光の透過率が高いため、半導体ナノ粒子層の紫外線硬化に要するエネルギー量を低減することができる。
また、中間層は、バックライト光源による紫外から青色の波長領域の光の吸収が少ないため、光源光の透過率を高く維持でき、その結果、半導体ナノ粒子層中の半導体ナノ粒子の発光効率を高く確保することが可能となる。
また、中間層は、一般的な接着材料を用いる場合と比べて、接着に要する層の厚さを低減することができるため、光の透過率を低下させることなく、また、接着材料自体の色味による光学フィルムの着色を抑制することができる。
【0110】
《金属アルコキシド又は金属キレート化合物の含有位置》
本発明の光学フィルムにおいて、金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属を含有させる位置としては、当該金属アルコキシド又は金属キレート化合物に由来する金属が、半導体ナノ粒子層と金属酸化物ガスバリアー層との界面又は中間層に存在していれば、いずれの位置であっても良い。
【0111】
図3は、本発明の光学フィルムの構成例を示した概略断面図である。なお、
図3A〜
図3Fに示す光学フィルムの各構成は一例であって、これらに限定されるものではない。
【0112】
図3Aに示す光学フィルム100は、基材101上に、蒸着法により形成された第1金属酸化物ガスバリアー層102と、金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属が含有された第1中間層103と、半導体ナノ粒子104及び紫外線硬化樹脂が含有された半導体ナノ粒子層105と、金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属が含有された第2中間層106と、塗布法により形成された第2金属酸化物ガスバリアー層107と、を備えて構成されている。
すなわち、
図3Aに示す光学フィルム100においては、金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属は第1中間層103と第2中間層106とに含有されている。
【0113】
図3Bに示す光学フィルム200は、基材201上に、蒸着法により形成された第1金属酸化物ガスバリアー層202と、金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属が含有された第1中間層203と、半導体ナノ粒子204及び紫外線硬化樹脂が含有された半導体ナノ粒子層205と、金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属が含有された第2中間層206と、蒸着法により形成された第2金属酸化物ガスバリアー層207と、基材208と、を備えて構成されている。
すなわち、
図3Bに示す光学フィルム200においては、金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属を第1中間層203と第2中間層206とに含有されている。
【0114】
図3Cに示す光学フィルム300は、基材301上に、塗布法により形成された第1金属酸化物ガスバリアー層302と、金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属が含有された第1中間層303と、半導体ナノ粒子304及び紫外線硬化樹脂が含有された半導体ナノ粒子層305と、金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属が含有された第2中間層306と、塗布法により形成された第2金属酸化物ガスバリアー層307と、を備えて構成されている。
すなわち、
図3Cに示す光学フィルム300においては、金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属は第1中間層303と第2中間層306とに含有されている。
【0115】
図3Dに示す光学フィルム400は、基材401上に、塗布法により形成され金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属が含有された第1金属酸化物ガスバリアー層402と、半導体ナノ粒子404及び紫外線硬化樹脂が含有された半導体ナノ粒子層405と、塗布法により形成され金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属が含有された第2金属酸化物ガスバリアー層407と、を備えて構成されている。
すなわち、
図3Dに示す光学フィルム400においては、金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属は第1金属酸化物ガスバリアー層402と第2金属酸化物ガスバリアー層407とに含有されている。
【0116】
図3Eに示す光学フィルム500は、基材501上に、塗布法により形成された第1金属酸化物ガスバリアー層502と、金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属が含有された中間層503と、半導体ナノ粒子504及び紫外線硬化樹脂が含有された半導体ナノ粒子層505と、塗布法により形成され金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属が含有された第2金属酸化物ガスバリアー層507と、を備えて構成されている。
すなわち、
図3Eに示す光学フィルム500においては、金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属は中間層503と第2金属酸化物ガスバリアー層507とに含有されている。
【0117】
図3Fに示す光学フィルム600は、基材601上に、塗布法により形成された第1金属酸化物ガスバリアー層602と、半導体ナノ粒子604、紫外線硬化樹脂及び金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属が含有された半導体ナノ粒子層605と、塗布法により形成された第2金属酸化物ガスバリアー層607と、を備えて構成されている。
すなわち、
図3Fに示す光学フィルム600においては、金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属は半導体ナノ粒子層605に含有されている。
【0118】
このように、金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属は、半導体ナノ粒子層と金属酸化物ガスバリアー層との界面又は中間層に存在させることができれば、いずれの層に含有させても良いが、中間層に含有させる場合には、金属アルコキシド又は金属キレート化合物の添加量を低減できるため、製造コストを低減する上で好ましい。また、中間層に含有させる場合には、半導体ナノ粒子層や金属酸化物ガスバリアー層を劣化させるおそれがないため好ましい。
【0119】
《本発明の光学フィルムの効果》
金属酸化物ガスバリアー層は、一般に、半導体ナノ粒子層のマトリクス樹脂(エポキシ樹脂やアクリル樹脂等)との接着性が悪く、半導体ナノ粒子層上に金属酸化物ガスバリアー層を形成した状態で高温高湿環境下に長時間放置すると、剥離や浮きを生じ、その隙間から酸素や水蒸気が浸透することにより、半導体ナノ粒子の発光効率を低下させる。このような問題に対し、本発明のように、半導体ナノ粒子層と金属酸化物ガスバリアー層との界面又は中間層に、金属アルコキシド又は金属キレート化合物を存在させることにより、半導体ナノ粒子層中の組成物及び金属酸化物ガスバリアー層の組成物と結合又は相互作用させることができ、両者の接着性を向上させることができるものと推察している。
【実施例】
【0120】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0121】
《試料1の作製》
(1)基材の準備
基材として、熱可塑性樹脂支持体であって、両面に易接着加工された厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製、コスモシャインA4300、PETと略記する。)を用い、この基材を温度25℃、相対湿度55%の環境下で96時間保管して調湿した。
【0122】
上記基材の易接着面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR(登録商標)Z7501を乾燥後の層厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、80℃で3分間の乾燥を行った後、窒素雰囲気下、高圧水銀ランプを使用して、硬化条件;1.0J/cm
2で硬化を行い、両面にアンカーコート層を形成した。このようにして基材を準備した。
【0123】
(2)第1金属酸化物ガスバリアー層の形成
次に、
図1に示すCVD装置S1を用い、下記の成膜条件(プラズマCVD条件)により、基材上に第1金属酸化物ガスバリアー層を厚さ300nm成膜した。
【0124】
〈第1金属酸化物ガスバリアー層の成膜条件〉
原料ガス:ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)
供給量:50sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute、0℃、1気圧基準)
反応ガス:酸素ガス(O
2)
供給量:500sccm(0℃、1気圧基準)
真空チャンバー内の真空度:1.5Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.9kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
樹脂基材ユニットの搬送速度:1.0m/min
【0125】
(3)第1中間層の形成
パーヒドロポリシラザン(アクアミカ NN120−10、無触媒タイプ、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製)の10質量%ジブチルエーテル溶液10gに、下記に示す構造のアルミニウムs−ブトキシド(ワコーケミカル(株)製)(以下、C1とする。)を0.5g添加し、第1中間層形成用塗布液を調製した。
【0126】
【化1】
【0127】
第1金属酸化物ガスバリアー層上に、調製した第1中間層形成用塗布液を乾燥後の層厚が90nmになるように塗布して乾燥し、第1中間層を形成した。
【0128】
(4)半導体ナノ粒子層の形成
Se粉末0.7896gを、トリオクチルホスフィン(TOP)7.4gへ添加し、混合物を150℃まで加熱して(窒素気流下)、TOP−Seストック溶液を調製した。別途、酸化カドミウム(CdO)0.450g及びステアリン酸8gをアルゴン雰囲気下、三口フラスコ中で150℃まで加熱した。CdOが溶解した後、このCdO溶液を室温まで冷却した。このCdO溶液に、トリオクチルホスフィンオキサイド(TOPO)8g及び1−ヘプタデシル−オクタデシルアミン(HDA)12gを添加し、混合物を再び150℃まで加熱した後、TOP−Seストック溶液を素早く添加した。その後、チャンバーの温度を220℃まで加熱し、更に一定の速度で120分かけて250℃まで上昇させた(0.25℃/分)。その後、温度を100℃まで下げ、酢酸亜鉛二水和物を添加撹拌し溶解させた後、ヘキサメチルジシリルチアンのトリオクチルホスフィン溶液を滴下し、数時間撹拌を続けて反応を終了させ、CdSe/ZnS(半導体ナノ粒子)を得た。
【0129】
半導体ナノ粒子を透過型電子顕微鏡により直接観察することで、得られた粒子が、CdSeのコア部の表面をZnSシェルが覆ったコア・シェル構造のCdSe/ZnS半導体ナノ粒子であることを確認した。また、CdSe/ZnS半導体ナノ粒子は、コア部の粒子径が2.0〜4.0nm、コア部の粒子径分布が6〜40%であることを確認した。光学特性は、発光ピーク波長が、410〜700nmであり、発光半値幅は、35〜90nmであることを確認した。発光効率は、最大で73.9%に達した。
【0130】
半導体ナノ粒子に内包される半導体ナノ粒子成分の粒径を赤色と緑色に発光するように調整し、更にその内包する半導体ナノ粒子の赤色、緑色成分が0.75mg、4.12mgになるようにトルエン溶媒に分散させ、更にエポキシアクリレート DIC(株)製UV硬化型樹脂ユニディックV−5500に、光重合開始剤イルガキュア184(BASFジャパン製)を、固形分比(質量%)で樹脂/開始剤:95/5になるように調整したUV硬化樹脂を加え、半導体ナノ粒子の重量含有率が1%になる半導体ナノ粒子層形成用塗布液を調製した。
【0131】
調製した半導体ナノ粒子層形成用塗布液を、第1中間層の上に乾燥層厚100μmになるように塗布し、75℃で3分間加熱した後、高圧水銀ランプを使用して硬化条件;1.5J/cm
2で硬化を行った。このようにして半導体ナノ粒子層を形成した。
【0132】
(5)第2中間層の形成
上記第1中間層と同様にして、半導体ナノ粒子層の第1中間層が形成された面の反対側の面に第2中間層を形成した。
【0133】
(6)第2金属酸化物ガスバリアー層の形成
パーヒドロポリシラザン(アクアミカ NAX120−10、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製)の20質量%ジブチルエーテル溶液10gに、ジブチルエーテルを添加して希釈することにより第2金属酸化物ガスバリアー層形成用塗布液を調製した。
【0134】
上記調製した第2金属酸化物ガスバリアー層形成用塗布液を、ワイヤレスバーにて、乾燥後の(平均)層厚が120nmとなるように塗布し、温度85℃、相対湿度55%の雰囲気下で1分間処理して乾燥させ、更に温度25℃、相対湿度10%(露点温度−8℃)の雰囲気下に10分間保持し、除湿処理を行って、ポリシラザン含有層を形成した。
【0135】
次いで、上記形成したポリシラザン含有層に対し、下記紫外線装置にて下記条件で紫外線照射処理を行ってポリシラザン含有層を改質し、第2中間層上に第2金属酸化物ガスバリアー層を形成した。
【0136】
装置:株式会社 エム・ディ・コム製エキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200
照射波長:172nm
ランプ封入ガス:Xe
エキシマランプ光強度:130mW/cm
2(172nm)
試料と光源の距離:1mm
ステージ加熱温度:70℃
照射装置内の酸素濃度:0.1%
エキシマランプ照射時間:15秒
【0137】
以上のようにして、試料1の光学フィルムを作製した。
【0138】
《試料2の作製》
上記試料1の作製において、中間層形成用塗布液に添加したアルミニウム有機化合物を、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート(ALCH、川研ファインケミカル(株)製)(以下、C2とする。)に変更した以外は同様にして、試料2の光学フィルムを作製した。
C2の構造式を以下に示す。
【0139】
【化2】
【0140】
《試料3の作製》
上記試料1の作製において、中間層形成用塗布液に添加したアルミニウム有機化合物を、アルミニウム系カップリング剤であるアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート(味の素ファインテクノ(株)製、プレンアクトAL−M)(以下、C3とする。)に変更した以外は同様にして、試料3の光学フィルムを作製した。
C3の構造式を以下に示す。
【0141】
【化3】
【0142】
《試料4の作製》
上記試料1の作製において、中間層形成用塗布液にアルミニウム有機化合物C1を添加しない以外は同様にして、試料4の光学フィルムを作製した。
【0143】
《試料5の作製》
(1)基材の準備
基材として、熱可塑性樹脂支持体であって、両面に易接着加工された厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製、コスモシャインA4300、PETと略記する。)を用い、この基材を温度25℃、相対湿度55%の環境下で96時間保管して調湿した。
【0144】
上記基材の易接着面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR(登録商標)Z7501を乾燥後の層厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、80℃で3分間の乾燥を行った後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプを使用して、硬化条件;1.0J/cm
2で硬化を行い、両面にアンカーコート層を形成した。
【0145】
(2)第1金属酸化物ガスバリアー層の形成
【0146】
パーヒドロポリシラザン(アクアミカ NN120−10、無触媒タイプ、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製)の10質量%ジブチルエーテル溶液10gに、アルミニウム有機化合物C2を0.1g添加し、第1金属酸化物ガスバリアー層形成用塗布液を調製した。
【0147】
基材上に、調製した第1金属酸化物ガスバリアー層形成用塗布液を乾燥後の層厚が180nmになるように塗布して乾燥し、ポリシラザン含有層を形成した。
【0148】
次いで、上記形成したポリシラザン含有層に対し、下記紫外線装置にて下記条件で紫外線照射処理を行ってポリシラザン含有層を改質し、第1金属酸化物ガスバリアー層を形成した。
【0149】
装置:株式会社 エム・ディ・コム製エキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200
照射波長:172nm
ランプ封入ガス:Xe
エキシマランプ光強度:130mW/cm
2(172nm)
試料と光源の距離:1mm
ステージ加熱温度:70℃
照射装置内の酸素濃度:0.1%
エキシマランプ照射時間:15秒
【0150】
(3)半導体ナノ粒子層の形成
試料1の作製における半導体ナノ粒子層の形成と同様にして、第1金属酸化物ガスバリアー層の上に半導体ナノ粒子層を形成した。
【0151】
(4)第2金属酸化物ガスバリアー層の形成
パーヒドロポリシラザン(アクアミカ NN120−10、無触媒タイプ、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製)の10質量%ジブチルエーテル溶液10gに、アルミニウム有機化合物C2を0.1g添加し、第2金属酸化物ガスバリアー層形成用塗布液を調製した。
【0152】
調製した第2金属酸化物ガスバリアー層形成用塗布液を用いて、上記第1金属酸化物ガスバリアー層と同様にして、半導体ナノ粒子層の上に第2金属酸化物ガスバリアー層を形成した。
【0153】
以上のようにして、試料5の光学フィルムを作製した。
【0154】
《試料6の作製》
試料2の作製において、第2中間層を形成せず、第2金属酸化物ガスバリアー層の形成方法を試料5の第2金属酸化物ガスバリアー層の形成方法に変更した以外は同様にして、試料6の光学フィルムを作製した。
【0155】
《試料7の作製》
(1)第1基材の準備
試料2の基材と同様にして、第1基材を準備した。
【0156】
(2)第1金属酸化物ガスバリアー層の形成
試料2の第1金属酸化物ガスバリアー層と同様にして、第1基材の上に、第1金属酸化物ガスバリアー層を形成した。
【0157】
(3)第1中間層の形成
試料2の第1中間層と同様にして、第1金属酸化物ガスバリアー層の上に第1中間層を形成した。
【0158】
(4)第2基材の準備
試料2の基材と同様にして、第2基材を準備した。
【0159】
(5)第2金属酸化物ガスバリアー層の形成
試料2の第1金属酸化物ガスバリアー層と同様にして、第2基材の上に、第2金属酸化物ガスバリアー層を形成した。
【0160】
(6)第2中間層の形成
試料2の第1中間層と同様にして、第2金属酸化物ガスバリアー層の上に第2中間層を形成した。
【0161】
(7)半導体ナノ粒子層の形成
試料2と同様にして調製した半導体ナノ粒子層形成用塗布液を、第1中間層の上に乾燥層厚100μmになるように塗布し、75℃で3分間加熱した。第1中間層上に塗布された半導体ナノ粒子層形成用塗布液に、第2中間層及び第2金属酸化物ガスバリアー層が対向するように、第1基材と第2基材とを貼り合わせた後、高圧水銀ランプを使用して硬化条件;2.5J/cm
2で硬化を行った。このようにして半導体ナノ粒子層を形成した。
【0162】
以上のようにして、試料7の光学フィルムを作製した。
【0163】
《試料8の作製》
試料7の作製において、第1中間層及び第2中間層の形成方法を次の方法に変更した以外は同様にして、試料8の光学フィルムを作製した。
すなわち、特表2013−508895号公報の実施例に記載されるNorland Adhesives社製光学接着剤68Tを、第1金属酸化物ガスバリアー層及び半導体ナノ粒子層の上にそれぞれ平均層厚が3μmとなるように塗布した後、窒素雰囲気下、高圧水銀ランプを使用して硬化条件;3.8J/cm
2で硬化を行った。このようにして第1中間層及び第2中間層を形成した。
【0164】
《試料9の作製》
試料7の作製において、第1基材及び第2基材を、厚さ188μmのシクロオレフィンポリマー(COP)樹脂フィルム(ゼオノアフィルムZF14−188:日本ゼオン商品名)に変更し、第1金属酸化物ガスバリアー層、第2金属酸化物ガスバリアー層、第1中間層及び第2中間層を形成しなかった以外は同様にして、試料9の光学フィルムを作製した。
【0165】
《試料10の作製》
試料2の作製において、第1金属酸化物ガスバリアー層の形成方法を次の方法に変更した以外は同様にして、試料10の光学フィルムを作製した。
【0166】
パーヒドロポリシラザン(アクアミカ NAX120−10、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製)の20質量%ジブチルエーテル溶液10gに、ジブチルエーテルを添加して希釈することにより第1金属酸化物ガスバリアー層形成用塗布液を調製した。
【0167】
上記調製した第1金属酸化物ガスバリアー層形成用塗布液を、ワイヤレスバーにて、乾燥後の(平均)層厚が120nmとなるように塗布し、温度85℃、相対湿度55%の雰囲気下で1分間処理して乾燥させ、更に温度25℃、相対湿度10%(露点温度−8℃)の雰囲気下に10分間保持し、除湿処理を行って、ポリシラザン含有層を形成した。
【0168】
次いで、上記形成したポリシラザン含有層に対し、下記紫外線装置にて下記条件で紫外線照射処理を行ってポリシラザン含有層を改質し、第1金属酸化物ガスバリアー層を形成した。
【0169】
装置:株式会社 エム・ディ・コム製エキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200
照射波長:172nm
ランプ封入ガス:Xe
エキシマランプ光強度:130mW/cm
2(172nm)
試料と光源の距離:1mm
ステージ加熱温度:70℃
照射装置内の酸素濃度:0.1%
エキシマランプ照射時間:15秒
【0170】
《試料11の作製》
試料10の作製において、第1中間層及び第2中間層を形成せず、半導体ナノ粒子層の形成方法を次の方法に変更した以外は同様にして、試料11の光学フィルムを作製した。
【0171】
半導体ナノ粒子に内包される半導体ナノ粒子成分の粒径を赤色と緑色に発光するように調整し、更にその内包する半導体ナノ粒子の赤色、緑色成分が0.75mg、4.12mgになるようにトルエン溶媒に分散させ、更にエポキシアクリレート DIC(株)製UV硬化型樹脂ユニディックV−5500に、光重合開始剤イルガキュア184(BASFジャパン製)を、固形分比(質量%)で樹脂/開始剤:95/5になるように調整したUV硬化樹脂溶液を加え、半導体ナノ粒子の質量含有率が1%になる塗布液を調製した。当該塗布液に対して、アルミニウム有機化合物C2のヘキサン溶液を、全体の質量固形分として0.5%となるように添加し、半導体ナノ粒子層形成用塗布液を調製した。
【0172】
調製した半導体ナノ粒子層形成用塗布液を、第1金属酸化物ガスバリアー層の上に塗布した。
【0173】
第1金属酸化物ガスバリアー層上に塗布された半導体ナノ粒子層形成用塗布液の上に、試料10の第2金属酸化物ガスバリアー層と同様にして、第2金属酸化物ガスバリアー層を形成した後、高圧水銀ランプを使用して硬化条件;2.5J/cm
2で硬化を行った。このようにして半導体ナノ粒子層を形成した。
【0174】
《試料12〜15の作製》
試料2の作製において、中間層形成用塗布液に添加するALCHの添加量を、界面又は中間層における全原子量に対する、金属アルコキシド又は金属キレート化合物に由来する金属の原子組成比(表1中、「界面又は中間層の原子組成比」)が表1に記載のとおりになるように変更した以外は同様にして、試料12〜15の光学フィルムを作製した。なお、当該原子組成比は、後述する元素分布プロファイルの測定により求めた。
【0175】
《試料16の作製》
試料2の作製において、半導体ナノ粒子層形成用塗布液に添加したUV硬化型樹脂をエポキシ非含有コーティング用UV硬化型樹脂(ウレタンアクリレート)ユニディックV−4263(DIC(株)製)に変更した以外は同様にして、試料16の光学フィルムを作製した。
【0176】
《試料17の作製》
試料2の作製において、中間層形成用塗布液に添加するアルミニウム有機化合物をテトライソプロピルチタネート オルガチックスTA−10(マツモトファインケミカル(株)製)に変更し、その添加量を後述する元素分布プロファイルの測定によって測定される界面又は中間層の原子組成比が試料2と同様になるように設定した以外は同様にして、試料17の光学フィルムを作製した。
【0177】
《試料1〜17の評価》
上記のようにして作製した試料1〜17について下記の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0178】
〈元素分布プロファイルの測定〉
作製した試料1〜17について、界面又は中間層における全原子量に対する金属アルコキシド又は金属キレート化合物に由来する金属の原子組成比(表1中、「界面又は中間層の原子組成比」)を次のようにして求めた。すなわち、第1金属酸化物ガスバリアー層の基材側の表面からの深さ(厚さ)方向の組成をXPS分析により測定した。XPS分析の条件を下記に示す。
・装置:QUANTERASXM(アルバック・ファイ株式会社製)
・X線源:単色化Al−Kα
・測定領域:Si2p、C1s、N1s、O1s
・スパッタイオン:Ar(2keV)
・デプスプロファイル:1分間のスパッタ後に測定を繰り返す
・データ処理:MultiPak(アルバック・ファイ株式会社製)
・定量:バックグラウンドをShirley法で求め、得られたピーク面積から相対感度係数法を用いて定量した。
なお、界面の原子組成比は、層内において第1金属酸化物ガスバリアー層の構成成分の比率が最小となる位置を中心として厚さ方向に前後20nmの領域を合わせたものを界面であるものとして求めた。
【0179】
(1)屈曲耐性の評価
試料1〜17を曲率半径が1cmとなるように180度湾曲させる操作を100回繰り返し、65℃、85%RHの環境下で1000時間の加速劣化処理を施した前後で、試料の状態を目視観察した。
5:加速劣化処理前後で外観に変化なし
4:加速劣化処理前に外観に変化なし、加速劣化処理後に試料角部に僅かな浮きが発生
3:加速劣化処理前に外観に変化なし、加速劣化処理後に試料一辺部に僅かな浮きが発生
2:加速劣化処理前に試料一辺部に浮き、加速劣化処理後に試料全辺に剥離が発生
1:加速劣化処理前に試料全辺に剥離が発生
【0180】
(2)初期発光効率の評価
光学フィルム1〜17を405nmの青紫光で励起したときに、色温度が7000Kの白色発光の発光効率を測定した。測定には、大塚電子(株)製の発光測定システムMCPD−7000を用いた。光学フィルムの代替として厚さ0.1mmの無アルカリガラスを用いた比較試料の効率を100としたときの発光効率を下記の基準で評価した。
5:95以上
4:90以上〜95未満
3:80以上〜90未満
2:65以上〜80未満
1:65未満
【0181】
(3)保存後の発光効率の評価(耐久性評価)
上記作製した各試料1〜17に対し、65℃、85%RHの環境下で1000時間の加速劣化処理を施した後、上記発光効率を測定し、加速劣化処理前の発光効率に対する加速劣化処理後の発光効率の比を求め、下記の基準で評価した。
5:比が0.95以上
4:比が0.90以上〜0.95未満
3:比が0.80以上〜0.90未満
2:比が0.50以上〜0.80未満
1:比が0.50未満
【0182】
【表1】
【0183】
(4)まとめ
表1に示すように、半導体ナノ粒子層と金属酸化物ガスバリアー層との界面、又は、半導体ナノ粒子層と金属酸化物ガスバリアー層との間の中間層に金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属が含有されている本発明の試料1〜3、5〜7、10〜17の光学フィルムは、比較例の試料4、8、9の光学フィルムよりも機能性に優れていることが分かる。
本発明の光学フィルムは屈曲耐性に優れていることから、界面又は中間層に金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属が含有されていることで半導体ナノ粒子層と金属酸化物ガスバリアー層との接着性が向上し、半導体ナノ粒子への酸素や水の侵入による劣化を効果的に抑制できたものと考えられる。
また、本発明の光学フィルムは発光効率に優れていることから、界面又は中間層に金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属を含有させるのみで光学フィルム全体の層厚を増大させることないため、高い透明性を有しているものと考えられる。
また、本発明の光学フィルムは保存前後で発光効率が著しく低下していないことから、耐久性を長期にわたって保持することができているものと考えられる。
【0184】
また、本発明の試料1〜3、5〜7、10〜17の光学フィルムがいずれも機能性に優れていることから、金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属は、半導体ナノ粒子層と金属酸化物ガスバリアー層との界面又は中間層に存在していれば、金属酸化物ガスバリアー層、中間層及び半導体ナノ粒子層のうちいずれの位置に含有されていても良く、高機能な光学フィルムとすることができることが分かる。
また、本発明の試料13、14の光学フィルムが、試料12、15の光学フィルムよりも、機能性に優れていることから、界面又は中間層に含有される金属量としては、0.2〜10at%の範囲内であることが好ましいことが分かる。
また、本発明の試料2の光学フィルムが、試料16の光学フィルムよりも、機能性に優れていることから、半導体ナノ粒子層に含有される紫外線硬化樹脂は、エポキシ樹脂であることが好ましいことが分かる。
また、本発明の試料2の光学フィルムが、試料17の光学フィルムよりも、機能性に優れていることから、界面又は中間層に含有される金属アルコキシド又は金属キレート化合物由来の金属はアルミニウムであることが好ましいことが分かる。