【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中(本文)の部数は質量部を表わす。
【0039】
以下に各実施例に用いた材料を説明する。
【0040】
<塩基性窒素原子を含有するポリアミド樹脂(A)の合成>
A−1:ε−カプロラクタム520質量部、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジンアジペート400質量部、3−ビスアミノメチルシクロヘキサンアジペート80質量部と水1000質量部をオートクレーブ中に仕込み、窒素置換後、密閉して徐々に加熱した。内圧が1MPaに達した時点から、その圧力を保持できなくなるまで水を留出させ、約2時間で常圧に戻し、その後1時間常圧で反応させた。最高重合反応温度は255℃であった。これにより、塩基性窒素原子含有ポリアミド樹脂を得た。
A−2:ε−カプロラクタム 90質量部、N−(2−アミノエチル)ピペラジンとアジピン酸のナイロン塩 910質量部および水1000質量部をオートクレーブに入れ、内部の空気を窒素ガスで置換した後に200℃で1時間加熱し、次いで水分を除去して、水溶性の塩基性窒素原子含有ポリアミド樹脂を得た。
A−3:ε−カプロラクタム540質量部、1,4−ビス(3−アミノエチル)ピペラジンアジペート380質量部、3−ビスアミノメチルシクロヘキサンアジペート80質量部と水1000質量部をオートクレーブ中に仕込み、窒素置換後、密閉して徐々に加熱した。内圧が1MPaに達した時点から、その圧力を保持できなくなるまで水を留出させ、約2時間で常圧に戻し、その後1時間常圧で反応させた。最高重合反応温度は255℃であった。これにより、塩基性窒素原子含有ポリアミド樹脂を得た。
【0041】
<アルキレングリコール構造単位を含有するポリアミド樹脂(B)の合成>
B−1:数平均分子量600のポリエチレングリコールの両末端にアクリロニトリルを付加し、これを水素還元して得たα、ω−ジアミノポリエチレングリコールとアジピン酸との当モル塩790質量部、ε−カプロラクタム210質量部を通常の条件で溶融重合した。得られたポリアミドは、分子中にアルキレングリコール構造単位を59質量%含有するPEG含有ポリアミド樹脂であった。
B−2:数平均分子量600のポリエチレングリコールの両末端にアクリロニトリルを付加し、これを水素還元して得たα、ω−ジアミノポリエチレングリコールとアジピン酸との当モル塩604質量部、ε−カプロラクタム396質量部をB−1と同様にして溶融重合した。得られたポリアミドは、分子中にアルキレングリコール構造単位を45質量%含有するPEG含有ポリアミド樹脂であった。
B−3:数平均分子量600のポリエチレングリコールの両末端にアクリロニトリルを付加し、これを水素還元して得たα、ω−ジアミノポリエチレングリコールとアジピン酸との当モル塩839質量部、ε−カプロラクタム261質量部をB−1と同様にして溶融重合した。得られたポリアミドは、分子中にアルキレングリコール構造単位を55質量%含有するPEG含有ポリアミド樹脂であった。
B−4:数平均分子量500のポリエチレングリコールの両末端にアクリロニトリルを付加し、これを水素還元して得たα、ω−ジアミノポリエチレングリコールとアジピン酸との当モル塩790質量部、ε−カプロラクタム210質量部を通常の条件で溶融重合した。得られたポリアミドは、分子中にアルキレングリコール構造単位を54質量%含有するPEG含有ポリアミド樹脂であった。
B−5:数平均分子量800のポリエチレングリコールの両末端にアクリロニトリルを付加し、これを水素還元して得たα、ω−ジアミノポリエチレングリコールとアジピン酸との当モル塩730質量部、ε−カプロラクタム270質量部を通常の条件で溶融重合した。得られたポリアミドは、分子中にアルキレングリコール構造単位を57質量%含有するPEG含有ポリアミド樹脂であった。
B−6:数平均分子量600のポリエチレングリコールの両末端にアクリロニトリルを付加し、これを水素還元して得たα、ω−ジアミノポリエチレングリコールとアジピン酸との当モル塩987質量部、ε−カプロラクタム13質量部をB−1と同様にして溶融重合した。得られたポリアミドは、分子中にアルキレングリコール構造単位を74質量%含有するPEG含有ポリアミド樹脂であった。
B−7:数平均分子量600のポリエチレングリコールの両末端にアクリロニトリルを付加し、これを水素還元して得たα、ω−ジアミノポリエチレングリコールとアジピン酸との当モル塩120質量部、ε−カプロラクタム880質量部をB−1と同様にして溶融重合した。得られたポリアミドは、分子中にアルキレングリコール構造単位を9質量%含有するPEG含有ポリアミド樹脂であった。
B−8:数平均分子量600のポリエチレングリコールの両末端にアクリロニトリルを付加し、これを水素還元して得たα、ω−ジアミノポリエチレングリコールとアジピン酸との当モル塩605質量部、ε−カプロラクタム395質量部を通常の条件で溶融重合した。得られたポリアミドは、分子中にアルキレングリコール構造単位を35質量%含有するPEG含有ポリアミド樹脂であった。
なお、得られたポリアミド樹脂B−1〜B−8の分子中のアルキレングリコール構造単位の含有率は、原料の仕込み投入量から計算した。
【0042】
<バリヤ層用塗工液組成物作成>
表1の組成比率のポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)とを固形分濃度が10質量%となるように60℃でエタノールに溶解し、バリヤ層用塗工液作成を作成した。
【0043】
<感熱マスク層作成>
感熱マスク層の塗工液には、カーボンブラック分散液(オリエント化学工業(株)製、AMBK−8)と共重合ポリアミドの混合物を用いた。混合物中の各成分の混合割合は、固形分質量比でカーボンブラック:ブチラール樹脂:共重合ポリアミド=35:28:37であった。次にPETフィルム(東洋紡績(株)、E5000、厚さ100μm)の両面に離型処理を施した後、感熱マスク層塗工液をバーコーター♯12を用いて塗工し、120℃×5分乾燥した。この時の光学濃度は2.3であった。この光学濃度は白黒透過濃度計DM−520(大日本スクリーン製造(株))によって測定した。
【0044】
<バリヤ層を設けた感熱マスク層積層体のフィルムの作成>
作成した感熱マスク層の上に、バリヤ層用塗工液を所定の厚みになるように適切な種類のバーコーターを用いて塗工し、120℃×5分乾燥し、バリヤ層を最上層に設けた感熱マスク層積層体のフィルムを得た。
【0045】
<感光性樹脂層用感光性樹脂組成物の作成>
アクリロニトリル−ブタジエンラテックス(Nipol SX1503 不揮発分42% 日本ゼオン(株)製)10質量部、ブタジエンラテックス(Nipol LX111NF 不揮発分55% 日本ゼオン(株)製)58質量部、オリゴブタジエンアクリレート(ABU−2S 共栄社化学(株)製)28質量部、ラウリルメタクリレート(ライトエステルL 共栄社化学(株)製)4質量部、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート4質量部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1質量部、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.1質量部、その他の添加剤としてノニオン系界面活性剤0.1質量部をトルエン15質量部とともに容器中で混合し、次に加圧ニーダーを用いて105℃で混練し、その後トルエンと水を減圧除去することにより、感光性樹脂層に用いる感光性樹脂組成物を得た。この組成物の押し込み変位量を測定したところ、15μmであった。
【0046】
<印刷原版作成>
共重合ポリエステル系接着剤を塗工したPETフィルム支持体(東洋紡績(株)、E5000、厚さ125μm)上に上記感光性樹脂組成物を配置し、その上からバリヤ層を最上層に設けた感熱マスク層積層体のフィルムを重ね合わせた。ヒートプレス機を用いて100℃でラミネートし、PET支持体、接着層、感光性樹脂層、保護層、感熱マスク層および離型処理PET保護フィルム(カバーフィルム)からなるフレキソ印刷原版を得た。版の総厚は1.90mmであった。
【0047】
<印刷原版からの印刷版の作成>
原版のPET支持体側から化学線(光源Philips10R、365nmにおける照度8mW/cm
2)を1分間照射した。続いて、離型処理PETフィルム(カバーフィルム)を剥離した。この版を、Digital Imager Spark(バルコ社製)の回転ドラムに感熱マスク層が表側にくるように巻き付け、真空引き後、画像形成を行った。アブレーション後、版を取り出し平面に戻し、化学線(光源Philips10R、365nmにおける照度8mW/cm
2)を6分照射した。その後、A&V(株)製現像機(Stuck System)で、40℃で8分現像を行った。現像液には、食器洗剤Cascade(米国P&G製)を1%添加した水道水を使用した。現像後、60℃で10分乾燥し、化学線を10分間照射し、最後に表面粘着性を除去するために殺菌灯を5分間照射した。
【0048】
<評価方法>
耐皺性:作製したフレキソ印刷版原版を幅20cmで長さが20cmにカットし、評価サンプルとした。サンプルを10℃又は30℃の恒温室で相対湿度25%の条件下、平面台の上に24時間保存し、サンプルを調整した。その後にサンプルのカバーシートを剥がし、円筒状のロール(直径200mm)にバリヤ層が外側になるように巻き付けて5分間固定した後、これを取り外して平坦な場所に5分間静置した。その後、目視でバリヤ層の表面を観察し、以下の基準で判定した。
○:バリヤ層に皺が確認されなかったもの△:バリヤ層の一部に皺が確認されたもの
×:バリヤ層の全面に皺が確認されたもの
【0049】
バリヤ層のコート性:本発明のバリヤ層をA4サイズPETフィルム上に、バーコーターを用いてハンドコートした。サンプルは、常温でハンドコート後、100℃に設定した熱風乾燥機に入れて10分間静置した。その後、熱風乾燥機からサンプルを取出し、目視でバリヤ層の表面を観察し、以下の基準で判定した。
○:バリヤ層のコート面が平滑なもの×:バリヤ層のコート面にスジ・ハジキのような欠点が確認されたもの
【0050】
水現像性:作製したフレキソ印刷版原版を現像液に浸し、40℃で5分間、現像機専用ブラシで擦りながら、バリヤ層の水現像性を以下の基準で判定した。
○:バリヤ層の水現像が可能なもの
×:バリヤ層の水現像が不可能なもの
【0051】
レリーフ網点トップのエッジ再現性:ネガフィルム150線2%相当のCTP層を用いて150線2%網点トップの形状を評価した。評価は顕微鏡を用いて100倍に拡大した150線2%網点トップの形状を断面で観察し、以下の判定基準で判定した。
○:網点トップにおいてフラットな部分の直径がネガフィルム150線2%相当を再現し、端部の形状に丸みがない。△:網点トップにおいてフラットな部分がネガフィルム150線2%相当よりも小さくなり、端部の形状に丸みがある。×:網点トップにおいてフラットな部分が見られず、端部の形状が丸くなっている。
【0052】
押し込み変位量の測定:支持体の上に1.70mmの厚みを有する感光性樹脂層が配置された印刷原版に直径10mmの円盤状の圧子を120g重の荷重で60秒間負荷し、その際の変位量をONO SOKKI製LINEAR SENSOR(GS−112)を用いて測定した。押し込み変位量が大きいほど、版は柔軟である。
【0053】
実施例1
<感熱マスク層作成>で作成した感熱マスク層を準備した。次に、表1に示す実施例1のバリヤ層組成比率で<バリヤ層用塗工液組成物の作成>に従って塗工液組成物を作成した。次に、<バリヤ層を設けた感熱マスク層積層体のフィルムの作成>に従って、バリヤ層を厚みが1.5μmとなるように感熱マスク層上に塗布・乾燥し、バリヤ層を最上層に設けた感熱マスク層積層体のフィルムを得た。得られた感熱マスク層積層体のフィルムを<印刷原版作成>に従って感光性樹脂層とラミネートし、PET支持体、接着層、感光性樹脂層、保護層、感熱マスク層および離型処理PET保護フィルム(カバーフィルム)からなるフレキソ印刷原版を得た。版の総厚は1.90mmであった。なお、実施例1に用いた感光性樹脂層は、<感光性樹脂層用感光性樹脂組成物の作成>で作成したものを用いた。
【0054】
実施例2〜9、比較例1〜5
実施例1の製造方法に従って、表1に記載の感熱マスク層組成(質量比)で作成した感熱マスク層を設けたフィルムを用いて実施例1の感光性樹脂層を設け、PET支持体、接着層、感光性樹脂層、保護層、感熱マスク層および離型処理PET保護フィルム(カバーフィルム)からなるフレキソ印刷原版を得た。版の総厚は1.90mmであった。得られた感熱マスク層及びCTPフレキソ印刷原版を用いて性能評価を行った。これらの性能評価の結果を以下の表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1から分かるように、本発明の構成要件を満たす実施例1〜9は、耐皺性、バリヤ層のコート性、水現像性、及びレリーフ網点トップのエッジ再現性のいずれにも優れる。これに対して、ポリアミド樹脂(B)の含有量が少ない比較例1は、耐皺性に劣る。ポリアミド樹脂(B)の含有量が多い比較例2及びポリアミド樹脂(B)中のアルキレングリコール構造単位の量が多い比較例3は、レリーフ網点トップのエッジ再現性に劣る。ポリアミド樹脂(B)中のアレキレングリコール構造単位の量が少ない比較例4及び比較例5は、低温での耐皺性、バリヤ層のコート性及びレリーフ網点トップのエッジ再現性に劣る。