特許第6414375号(P6414375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6414375
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】感光性CTPフレキソ印刷原版
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/00 20060101AFI20181022BHJP
   G03F 7/037 20060101ALI20181022BHJP
   G03F 7/11 20060101ALI20181022BHJP
【FI】
   G03F7/00 502
   G03F7/037
   G03F7/11
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-541720(P2018-541720)
(86)(22)【出願日】2018年3月27日
(86)【国際出願番号】JP2018012493
【審査請求日】2018年8月9日
(31)【優先権主張番号】特願2017-70529(P2017-70529)
(32)【優先日】2017年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】松尾 啓介
(72)【発明者】
【氏名】米倉 弘倫
【審査官】 塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−022229(JP,A)
【文献】 特開2015−150798(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/062082(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00 − 7/40
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも支持体、感光性樹脂層、バリヤ層、及び感熱マスク層が順次積層されてなる感光性凸版印刷原版であって、バリヤ層が、分子内に塩基性窒素原子を含有するポリアミド樹脂(A)と、分子内にアルキレングリコール構造単位を40〜70質量%含有するポリアミド樹脂(B)とを含有し、且つポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)の合計量に対するポリアミド樹脂(B)の含有量が25〜52質量%であることを特徴とする水現像可能な感光性CTPフレキソ印刷原版。
【請求項2】
ポリアミド樹脂(B)が、ポリエーテルアミド又はポリエーテルエステルアミドであり、アルキレングリコール構造単位が、数平均分子量400〜1000のポリエチレングリコール又はポリエチレングリコール共重合体に由来することを特徴とする請求項1に記載の水現像可能な感光性CTPフレキソ印刷原版。
【請求項3】
ポリアミド樹脂(A)が、ピペラジン環を分子内に含有するポリアミドであることを特徴とする請求項1又は2に記載の水現像可能な感光性CTPフレキソ印刷原版。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータ製版技術により凸版印刷版を製造するために使用される感光性CTPフレキソ印刷原版に関し、特に、低温作業時でも皺の発生しない感光性フレキソCTP印刷原版に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フレキソ印刷の分野において、デジタル画像形成技術として知られるコンピュータ製版技術(Computer to Plate、CTP技術)は、極めて一般的なものになってきている。CTP技術は、コンピュータ上で処理された情報を印刷原版上に直接出力してレリーフとなる凹凸パターンを得る方法である。この技術により、ネガフィルムの製造工程が不要となり、コストとネガ作成に必要な時間を削減できる。
【0003】
CTP技術では、光重合すべきでない領域を覆うために、従来から用いられているネガフィルムが印刷版内で形成統合されるマスクに取って代えられる。この統合マスクを得る方法として、感光性樹脂層上に化学線に対して不透明な感赤外線層(感熱マスク層)を設け、赤外線レーザでこの感赤外線層を蒸発させることにより画像マスクを形成する方法が広く使用されている(特許文献1参照)。
【0004】
感熱マスク層には、放射線不透明材料であるカーボンブラックとバインダーよりなるものが一般的に使われている。感熱マスク層は、赤外線レーザによりアブレーションされるものであり、より薄い層が、アブレーション効率の点から好ましい。また、薄膜であるほどレリーフに与える皺の影響も少ない。ただし、感熱マスク層は、光重合層に対する化学放射線の透過を阻止するために、一般的に2.0以上の透過光学濃度(遮光性)が求められる。
【0005】
特許文献1の感光性フレキソCTP印刷原版は、感光性樹脂層、保護層、感赤外線層から構成されており、保護層は、バリヤ層とも呼ばれる。感光性樹脂層と感赤外線層との間に配置されるバリヤ層は、感光性樹脂層と感赤外線層の間の物質移動を防ぐ働きと、大気中の酸素による感光性樹脂層の重合阻害を防ぐ働きを有しており、重要な役割を果たす。
【0006】
しかし、これらの水現像可能な感光性樹脂層をCTP版の感光性樹脂層として使用すると、感光性樹脂の柔軟性が高いため、版面に皺が発生する問題がある。この皺は、レーザ加工の際に版をドラムに取り付けた後、版を取りはずして平面に戻したときに発生するものである。上記問題は、ラテックスを主成分とする感光性樹脂層を使用する場合に特に顕著になる。これは、ラテックスが微粒子状で存在しており、版がより柔軟であるためと考えられる。
【0007】
皺の問題に対して、特許文献2には、保護層(バリヤ層)のバインダーポリマーであるポリビニルアルコールに対して特定の可塑剤を多量に配合することで保護層を柔軟にし、皺の発生を少なくすることが提案されている。また、特許文献3には、保護層のヤング率及び層厚を適切に制御することで、皺の発生を少なくすることが提案されている。
【0008】
最近、感光性CTPフレキソ印刷原版は、ネガフィルムを用いるアナログ版に替わって主な製版技術となりつつある。その結果、CTP印刷原版は、夏場の高温高湿度環境から冬場の低温低湿度環境までの幅広い環境条件下で作業することとなった。しかしながら、特許文献2や特許文献3の印刷原版では、冬場の低温低湿度環境下での皺の発生を効果的に防止することができなかった。従って、一年間を通じた皺の発生の防止とバリヤ性とを両立した高性能な保護層(バリヤ層)を持つ感光性CTPフレキソ印刷原版が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表平7−506201号公報
【特許文献2】特許第5573675号
【特許文献3】特許第4332865号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、一年間の環境変化に対してCTP印刷原版の取り扱い中に皺が発生することなく、バリヤ性にも優れた感光性CTPフレキソ印刷原版を提供することにある。特に、冬場の低温低湿度下においても皺の発生のない感光性フレキソ印刷原版を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意研究を行った結果、分子内に塩基性窒素原子を含有するポリアミド樹脂(A)、及び分子内にアルキレングリコール構造単位を特定の割合で含有するポリアミド樹脂(B)という二種類の特定のポリアミド樹脂をバリヤ層中に含有させることによって、バリヤ性を維持しながら、冬場の低温低湿度下での皺の発生を効果的に防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(3)の構成を有するものである。
(1)少なくとも支持体、感光性樹脂層、バリヤ層、及び感熱マスク層が順次積層されてなる感光性凸版印刷原版であって、バリヤ層が、分子内に塩基性窒素原子を含有するポリアミド樹脂(A)と、分子内にアルキレングリコール構造単位を40〜70質量%含有するポリアミド樹脂(B)とを含有し、且つポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)の合計量に対するポリアミド樹脂(B)の含有量が25〜52質量%であることを特徴とする水現像可能な感光性CTPフレキソ印刷原版。
(2)ポリアミド樹脂(B)が、ポリエーテルアミド又はポリエーテルエステルアミドであり、アルキレングリコール構造単位が、数平均分子量400〜1000のポリエチレングリコール又はポリエチレングリコール共重合体に由来することを特徴とする(1)に記載の水現像可能な感光性CTPフレキソ印刷原版。
(3)ポリアミド樹脂(A)が、ピペラジン環を分子内に含有するポリアミドであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の水現像可能な感光性CTPフレキソ印刷原版。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、冬場の低温低湿度を含む一年間を通じた環境変化に対してCTP印刷原版の取り扱い中に皺が発生することなく、バリヤ性にも優れた感光性CTPフレキソ印刷原版を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のフレキソ印刷原版を詳細に説明する。
【0015】
本発明のフレキソ印刷原版は、少なくとも支持体、感光性樹脂層、バリヤ層、及び感熱マスク層が順次積層された基本構成を有する。
【0016】
本発明のフレキソ印刷原版に使用される支持体は、可撓性であるが、寸法安定性に優れた材料が好ましく、例えばスチール、アルミニウム、銅、ニッケルなどの金属製支持体、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、またはポリカーボネートフィルムなどの熱可塑性樹脂製支持体を使用することができる。これらの中でも、寸法安定性に優れ、充分に高い粘弾性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。支持体の厚みは、機械的特性、形状安定化あるいは印刷版製版時の取り扱い性等から、50〜350μm、好ましくは100〜250μmが望ましい。また、必要により、支持体と感光性樹脂層との接着性を向上させるために、それらの間に接着剤を設けても良い。
【0017】
本発明のフレキソ印刷原版に使用される感光性樹脂層は、合成高分子化合物、光重合性不飽和化合物、及び光重合開始剤の必須成分と、可塑剤、熱重合防止剤、染料、顔料、紫外線吸収剤、香料、又は酸化防止剤などの任意の添加剤とを含有するものである。
【0018】
本発明のフレキソ印刷原版に使用されるバリヤ層は、光硬化していない感光性樹脂層の柔軟性が高い場合にその効果が発揮される。柔軟性の評価は、押し込み変位量で評価できる。本発明では、感光性樹脂層の押し込み変位量が5μm以上の場合でも皺発生を低減することができる。柔軟性が高い感光性樹脂層としては、例えば高分子化合物としてラテックスより得られる水分散性重合体を含有する感光性樹脂層を挙げることができる。
【0019】
水分散性重合体を得ることが可能なラテックスとしては、ポリブタジエンラテックス、天然ゴムラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、ポリクロロプレンラテックス、ポリイソプレンラテックス、ポリウレタンラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、ビニルピリジン重合体ラテックス、ブチル重合体ラテックス、チオコール重合体ラテックス、アクリレート重合体ラテックスなどの水分散ラテックス重合体や、これらの重合体にアクリル酸やメタクリル酸などの他の成分を共重合して得られる重合体が挙げられる。これらの中でも、分子鎖中にブタジエン骨格またはイソプレン骨格を含有する水分散ラテックス重合体が、硬度やゴム弾性の点から好ましく用いられる。具体的には、ポリブタジエンラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、ポリイソプレンラテックスが好ましい。ラテックスより得られる重合体は、独立した微粒子として光重合性不飽和化合物中に存在することが好ましい。
【0020】
本発明のフレキソ印刷原版に使用される感光性樹脂層は、合成高分子化合物として水現像性を低下させない範囲で固形の合成ゴムを含有しても良い。具体的な合成ゴムとしては、ブタジエンゴム、ニトリル・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン・イソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴムから選ばれる合成ゴムである。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併合して用いてもよい。この中でも、ブタジエンゴム、ニトリル・ブタジエンゴムが好ましく、ブタジエンゴムが最も好ましい。また、共役ジエン系ゴム成分の水分散ラテックスから得られる疎水性重合体とゴムとが、それぞれ共通の骨格構造を有することが好ましい。これにより、感光性樹脂層の機械的強度が向上し、耐刷性を備えた印刷版を得ることができる。感光性樹脂層を構成する感光性樹脂組成物中の共役ジエン系ゴム成分の配合量は、好ましくは1〜10質量%、さらに好ましくは1〜7質量%である。
【0021】
感光性樹脂組成物には、柔軟性を付与するなどの目的で可塑剤を添加することができる。可塑剤の配合量は、0.1〜30質量%であることが好ましい。より好ましくは5〜20質量%である。配合量が上記下限未満の場合、感光性樹脂組成物に柔軟性を付与できる効果が小さくなるおそれがある。上記上限を超えると、感光性樹脂組成物の強度に問題が生じるおそれがある。
【0022】
可塑剤としては、一般的に版材を柔軟化する性質を有するものであれば特に限定されるものではないが、他成分と相溶性が良好なものが好ましい。具体的には、室温で液状のポリエン化合物やエステル結合を有する化合物が挙げられる。室温で液状のポリエン化合物としては、液状のポリブタジエン、ポリイソプレン、さらにそれらの末端基あるいは側鎖を変性したマレイン化物、エポキシ化物などが挙げられる。エステル結合を有する化合物としては、フタル酸エステル、リン酸エステル、セバシン酸エステル、アジピン酸エステル、分子量1000〜3000のポリエステル等が挙げられる。
【0023】
本発明の感光性CTPフレキソ印刷原版は、感光性樹脂層と感熱マスク層との間に、分子内に塩基性窒素原子を含有するポリアミド樹脂(A)と、分子内にアルキレングリコール構造単位を40〜70質量%含有するポリアミド樹脂(B)とを含有するバリヤ層を設けることを最大の特徴とする。このような二種類の特定のポリアミド樹脂を含有するバリヤ層を設けることで、酸素による重合障害を受けることがない優れた画像再現性、さらには低温でのCTP原版取扱い時にも皺の発生することがない高度な性能を有するフレキソCTP原版を提供することができる。
【0024】
分子内に塩基性窒素原子を含有するポリアミド樹脂(A)とは、主鎖または側鎖の一部分に塩基性窒素原子を含有するポリアミド樹脂である。塩基性窒素原子とは、アミド基ではないアミノ基を構成する窒素原子である。そのようなポリアミドとしては、第3級窒素原子を主鎖中に有するポリアミドが好ましい。塩基性窒素原子を含有するポリアミド樹脂(A)としては、例えば、塩基性窒素原子を含むジアミンとして、ピペラジン環を有するジアミンやメチルイミノビスプロピルアミン等の塩基性窒素原子を含むジアミンをジアミン成分として用いて共重合することにより得られるポリアミドである。ポリアミド樹脂(A)は、水溶性であることが好ましい。水溶性の面から、ポリアミド樹脂(A)は、ピペラジン環を有するジアミンを用いることが特に好ましい。ピペラジン環を有するジアミンとしては、1,4−ビス(3−アミノエチル)ピペラジン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペラジンなどが挙げられる。また、ポリアミド樹脂(A)は物性面より一部に塩基性窒素原子を含有しないジアミン、ジカルボン酸やアミノカルボン酸等の原料を用いて共重合しても良い。分子内に塩基性窒素原子を含有するポリアミド樹脂を得る方法は、例えば特開昭50−7605号公報に開示されている。
【0025】
分子内にアルキレングリコール構造単位を40〜70質量%含有するポリアミド樹脂(B)とは、共重合ポリアミド中に6−ナイロン及び/又は66−ナイロンを60〜30質量%含有し、且つアルキレングリコール構造単位を40〜70質量%含有するポリアミド樹脂である。アルキレングリコール構造単位としては、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール共重合体に由来するものが好ましく、特にポリエチレングリコールに由来するものが水現像性の面から好ましい。ポリエチレングリコール共重合体としては、ポリエチレングリコールの含有率が50質量%以上の共重合体であり、共重合する成分としてポリプロピレングリコールやポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。アルキレングリコール構造単位の含有率は、好ましくは40〜65質量%である。アルキレングリコール構造単位の含有率が上記下限未満の場合には、ポリエーテル結合の量が少なくなりすぎるため、低温作業時の皺の発生を防止できず、またバリヤ層のコート性にも劣るおそれがある。また、アルキレングリコール構造単位の含有率が上記上限を越えた場合には、感熱バリヤ層として脆くなり、レリーフ網点トップのエッジ再現性に劣るおそれがある。
アルキレングリコール構造単位の由来するポリエチレングリコールやポリエチレングリコール共重合体の数平均分子量としては、バリヤ層の膜物性とガラス転移点の面から400〜1000が好ましく、400〜800がより好ましい。また、水溶性を向上させるためにポリアミド樹脂(B)の分子中に塩基性窒素原子を含有させても良い。
【0026】
分子内にアルキレングリコール構造単位を含有するポリアミド樹脂(B)としては、ポリエーテルアミド又はポリエーテルエステルアミドが使用できるが、耐加水分解性の面よりポリエーテルアミドが好ましい。ポリエーテルアミドは、特開昭55−79437号公報に従って合成することができる。具体的には、ポリエチレングリコールの両末端にアクリロニトリルを付加し、これを水素還元して得たα,ω−ジアミノポリエチレングリコールをジアミン成分として用いることでポリエーテルアミドを合成することができる。一方、ポリエーテルエステルアミドは、ポリエチレングリコールを原料として用い、エステル結合によりポリエチレングリコールを分子内に導入するという一般的な方法で合成できる。
【0027】
本発明では、分子内に塩基性窒素原子を含有するポリアミド樹脂(A)は、バリヤ層に水溶性又は水分散性を付与すると共にバリヤ層に適度な硬度を付与する役割を有する。一方、分子内にアルキレングリコール構造単位を40〜70質量%含有するポリアミド樹脂(B)は、アルキレングリコール構造単位中のポリエーテル結合の存在により、CTP印刷原版の取り扱い中の皺の発生を防止する役割を有する。
【0028】
バリヤ層中のポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)の合計量に対するポリアミド樹脂(B)の含有量は、25〜52質量%であり、好ましくは25〜50質量%である。ポリアミド樹脂(B)の含有率が上記下限未満では、低温作業時の皺発生を防止できないおそれがある。また、ポリアミド樹脂(B)の含有率が上記上限を越える場合には、ポリアミド樹脂(A)の量が少なすぎて、バリヤ層の硬度が低下して、レリーフ網点トップのエッジ再現性に劣るおそれがある。
【0029】
バリヤ層は、性能に悪影響を及ぼさない範囲で添加剤を含有しても良い。添加剤としては、可塑剤、各種安定剤などが挙げられる。また、バリヤ層の欠点を低減するために性能に悪影響を及ぼさない範囲で、消泡剤やレベリング剤等の添加剤を配合しても良い。
【0030】
消泡剤としては、メタノール、エタノール、ブタノールなど低級アルコール系消泡剤、シリコーン系消泡剤、鉱物油系消泡剤、トリブチルホスフェート、オレイン酸などの有機極性化合物系消泡剤、ポリプロピレングリコール誘導体などのポリエーテル系消泡剤などが挙げられる。その使用量は、バリヤ層の質量に対して通常、5質量%以下である。
【0031】
レベリング剤としては、アクリル系レベリング剤、ビニルエーテル系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、フッ素−ケイ素系レベリング剤、アセチレングリコール系レベリング剤等が挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。このようなレベリング剤の中でも、アクリル系レベリング剤、ビニルエーテル系レベリング剤、アセチレングリコール系レベリング剤を用いることが好ましい。これにより、得られるバリヤ層の表面を、より平坦化することができる。
【0032】
一般的には、バリヤ層は2種類の機能を有していると考えられてきた。1つは、隣接する感光性樹脂層あるいは感熱マスク層との間で物質が移動することを防ぐ『層間バリヤ性』が挙げられる。もう1つは、感光性樹脂層に向かってマスクを介して活性光線を全面照射する際の重合阻害を防ぐ『酸素バリヤ性』が挙げられる。『酸素バリヤ性』に問題が有る場合、作製した感光性印刷原版において微小網点が得られない、又は微小網点の端部の形状が丸みを帯びる、といったトラブルの原因となる。従って、網点径が所定のサイズ通り得られるかどうかが重要である。
【0033】
本発明のフレキソ印刷原版使用される感熱マスク層は、赤外線レーザーを吸収して熱に変換する機能と紫外光を遮断する機能を有する材料であるカーボンブラックと、その分散バインダーと、被膜形成可能なバインダーポリマーとから構成される。分散バインダーと被膜形成可能なバインダーポリマーとは、兼用することもできる。また、これら以外の任意成分として、顔料分散剤、フィラー、界面活性剤又は塗布助剤などを、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
【0034】
本発明のフレキソ印刷原版に使用される感熱マスク層は、特に限定されないが、水現像性であることが好ましい。具体的な感熱マスク層としては、極性基含有ポリアミドとブチラール樹脂とを組合せた感熱マスク層(特許第4200510号)、感光性樹脂層中のポリマーと同じ構造を持つポリマーとアクリル樹脂とを含有する感熱マスク層(特許第5710961号)、アニオン性ポリマーと側鎖にエステル結合を有するケン化度が0%以上90%以下のポリマーとを含有する感熱マスク層(特許第5525074号)などが挙げられる。
【0035】
本発明のフレキソ印刷原版を製造する方法は特に限定されないが、一般的には以下のようにして製造される。
まず、感熱マスク層のカーボンブラック以外のバインダー等の成分を適当な溶媒に溶解させ、そこにカーボンブラックを分散させて分散液を作製する。次に、このような分散液を感熱マスク層用支持体(例えばポリエチレンテレフタレートフィルム)上に塗布して、溶媒を蒸発させる。その後、バリヤ層成分を上塗りし、一方の積層体を作成する。さらに、これとは別に、支持体上に塗工により感光性樹脂層を形成し、他方の積層体を作成する。このようにして得られた二つの積層体を、圧力及び/又は加熱下に、感光性樹脂層がバリヤ層に隣接するように積層する。なお、感熱マスク層用支持体は、印刷原版の完成後はその表面の保護フィルムとして機能する。
【0036】
本発明のCTP印刷原版から印刷版を製造する方法としては、保護フィルムが存在する場合には、まず保護フィルムを感光性印刷版から除去する。その後、感熱マスク層をIRレーザにより画像様に照射して、感光性樹脂層上にマスクを形成する。好適なIRレーザの例としては、ND/YAGレーザ(1064nm)又はダイオードレーザ(例、830nm)を挙げることができる。コンピュータ製版技術に好適なレーザシステムは、市販されており、例えばCDI Spark(エスコ・グラフィックス社)を使用することができる。このレーザシステムは、印刷原版を保持する回転円筒ドラム、IRレーザの照射装置、及びレイアウトコンピュータを含み、画像情報は、レイアウトコンピュータからレーザ装置に直接移される。
【0037】
画像情報を感熱マスク層に書き込んだ後、感光性印刷原版にマスクを介して活性光線を全面照射する。これは版をレーザシリンダに取り付けた状態で行うことも可能であるが、版をレーザ装置から除去し、慣用の平板な照射ユニットで照射する方が規格外の版サイズに対応可能な点で有利であり、一般的である。活性光線としては、150〜500nm、特に300〜400nmの波長を有する紫外線を使用することができる。その光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ジルコニウムランプ、カーボンアーク灯、紫外線用蛍光灯等を使用することができる。その後、照射された版は現像され、印刷版を得る。現像工程は、慣用の現像ユニットで実施することができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中(本文)の部数は質量部を表わす。
【0039】
以下に各実施例に用いた材料を説明する。
【0040】
<塩基性窒素原子を含有するポリアミド樹脂(A)の合成>
A−1:ε−カプロラクタム520質量部、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジンアジペート400質量部、3−ビスアミノメチルシクロヘキサンアジペート80質量部と水1000質量部をオートクレーブ中に仕込み、窒素置換後、密閉して徐々に加熱した。内圧が1MPaに達した時点から、その圧力を保持できなくなるまで水を留出させ、約2時間で常圧に戻し、その後1時間常圧で反応させた。最高重合反応温度は255℃であった。これにより、塩基性窒素原子含有ポリアミド樹脂を得た。
A−2:ε−カプロラクタム 90質量部、N−(2−アミノエチル)ピペラジンとアジピン酸のナイロン塩 910質量部および水1000質量部をオートクレーブに入れ、内部の空気を窒素ガスで置換した後に200℃で1時間加熱し、次いで水分を除去して、水溶性の塩基性窒素原子含有ポリアミド樹脂を得た。
A−3:ε−カプロラクタム540質量部、1,4−ビス(3−アミノエチル)ピペラジンアジペート380質量部、3−ビスアミノメチルシクロヘキサンアジペート80質量部と水1000質量部をオートクレーブ中に仕込み、窒素置換後、密閉して徐々に加熱した。内圧が1MPaに達した時点から、その圧力を保持できなくなるまで水を留出させ、約2時間で常圧に戻し、その後1時間常圧で反応させた。最高重合反応温度は255℃であった。これにより、塩基性窒素原子含有ポリアミド樹脂を得た。
【0041】
<アルキレングリコール構造単位を含有するポリアミド樹脂(B)の合成>
B−1:数平均分子量600のポリエチレングリコールの両末端にアクリロニトリルを付加し、これを水素還元して得たα、ω−ジアミノポリエチレングリコールとアジピン酸との当モル塩790質量部、ε−カプロラクタム210質量部を通常の条件で溶融重合した。得られたポリアミドは、分子中にアルキレングリコール構造単位を59質量%含有するPEG含有ポリアミド樹脂であった。
B−2:数平均分子量600のポリエチレングリコールの両末端にアクリロニトリルを付加し、これを水素還元して得たα、ω−ジアミノポリエチレングリコールとアジピン酸との当モル塩604質量部、ε−カプロラクタム396質量部をB−1と同様にして溶融重合した。得られたポリアミドは、分子中にアルキレングリコール構造単位を45質量%含有するPEG含有ポリアミド樹脂であった。
B−3:数平均分子量600のポリエチレングリコールの両末端にアクリロニトリルを付加し、これを水素還元して得たα、ω−ジアミノポリエチレングリコールとアジピン酸との当モル塩839質量部、ε−カプロラクタム261質量部をB−1と同様にして溶融重合した。得られたポリアミドは、分子中にアルキレングリコール構造単位を55質量%含有するPEG含有ポリアミド樹脂であった。
B−4:数平均分子量500のポリエチレングリコールの両末端にアクリロニトリルを付加し、これを水素還元して得たα、ω−ジアミノポリエチレングリコールとアジピン酸との当モル塩790質量部、ε−カプロラクタム210質量部を通常の条件で溶融重合した。得られたポリアミドは、分子中にアルキレングリコール構造単位を54質量%含有するPEG含有ポリアミド樹脂であった。
B−5:数平均分子量800のポリエチレングリコールの両末端にアクリロニトリルを付加し、これを水素還元して得たα、ω−ジアミノポリエチレングリコールとアジピン酸との当モル塩730質量部、ε−カプロラクタム270質量部を通常の条件で溶融重合した。得られたポリアミドは、分子中にアルキレングリコール構造単位を57質量%含有するPEG含有ポリアミド樹脂であった。
B−6:数平均分子量600のポリエチレングリコールの両末端にアクリロニトリルを付加し、これを水素還元して得たα、ω−ジアミノポリエチレングリコールとアジピン酸との当モル塩987質量部、ε−カプロラクタム13質量部をB−1と同様にして溶融重合した。得られたポリアミドは、分子中にアルキレングリコール構造単位を74質量%含有するPEG含有ポリアミド樹脂であった。
B−7:数平均分子量600のポリエチレングリコールの両末端にアクリロニトリルを付加し、これを水素還元して得たα、ω−ジアミノポリエチレングリコールとアジピン酸との当モル塩120質量部、ε−カプロラクタム880質量部をB−1と同様にして溶融重合した。得られたポリアミドは、分子中にアルキレングリコール構造単位を9質量%含有するPEG含有ポリアミド樹脂であった。
B−8:数平均分子量600のポリエチレングリコールの両末端にアクリロニトリルを付加し、これを水素還元して得たα、ω−ジアミノポリエチレングリコールとアジピン酸との当モル塩605質量部、ε−カプロラクタム395質量部を通常の条件で溶融重合した。得られたポリアミドは、分子中にアルキレングリコール構造単位を35質量%含有するPEG含有ポリアミド樹脂であった。
なお、得られたポリアミド樹脂B−1〜B−8の分子中のアルキレングリコール構造単位の含有率は、原料の仕込み投入量から計算した。
【0042】
<バリヤ層用塗工液組成物作成>
表1の組成比率のポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)とを固形分濃度が10質量%となるように60℃でエタノールに溶解し、バリヤ層用塗工液作成を作成した。
【0043】
<感熱マスク層作成>
感熱マスク層の塗工液には、カーボンブラック分散液(オリエント化学工業(株)製、AMBK−8)と共重合ポリアミドの混合物を用いた。混合物中の各成分の混合割合は、固形分質量比でカーボンブラック:ブチラール樹脂:共重合ポリアミド=35:28:37であった。次にPETフィルム(東洋紡績(株)、E5000、厚さ100μm)の両面に離型処理を施した後、感熱マスク層塗工液をバーコーター♯12を用いて塗工し、120℃×5分乾燥した。この時の光学濃度は2.3であった。この光学濃度は白黒透過濃度計DM−520(大日本スクリーン製造(株))によって測定した。
【0044】
<バリヤ層を設けた感熱マスク層積層体のフィルムの作成>
作成した感熱マスク層の上に、バリヤ層用塗工液を所定の厚みになるように適切な種類のバーコーターを用いて塗工し、120℃×5分乾燥し、バリヤ層を最上層に設けた感熱マスク層積層体のフィルムを得た。
【0045】
<感光性樹脂層用感光性樹脂組成物の作成>
アクリロニトリル−ブタジエンラテックス(Nipol SX1503 不揮発分42% 日本ゼオン(株)製)10質量部、ブタジエンラテックス(Nipol LX111NF 不揮発分55% 日本ゼオン(株)製)58質量部、オリゴブタジエンアクリレート(ABU−2S 共栄社化学(株)製)28質量部、ラウリルメタクリレート(ライトエステルL 共栄社化学(株)製)4質量部、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート4質量部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1質量部、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.1質量部、その他の添加剤としてノニオン系界面活性剤0.1質量部をトルエン15質量部とともに容器中で混合し、次に加圧ニーダーを用いて105℃で混練し、その後トルエンと水を減圧除去することにより、感光性樹脂層に用いる感光性樹脂組成物を得た。この組成物の押し込み変位量を測定したところ、15μmであった。
【0046】
<印刷原版作成>
共重合ポリエステル系接着剤を塗工したPETフィルム支持体(東洋紡績(株)、E5000、厚さ125μm)上に上記感光性樹脂組成物を配置し、その上からバリヤ層を最上層に設けた感熱マスク層積層体のフィルムを重ね合わせた。ヒートプレス機を用いて100℃でラミネートし、PET支持体、接着層、感光性樹脂層、保護層、感熱マスク層および離型処理PET保護フィルム(カバーフィルム)からなるフレキソ印刷原版を得た。版の総厚は1.90mmであった。
【0047】
<印刷原版からの印刷版の作成>
原版のPET支持体側から化学線(光源Philips10R、365nmにおける照度8mW/cm)を1分間照射した。続いて、離型処理PETフィルム(カバーフィルム)を剥離した。この版を、Digital Imager Spark(バルコ社製)の回転ドラムに感熱マスク層が表側にくるように巻き付け、真空引き後、画像形成を行った。アブレーション後、版を取り出し平面に戻し、化学線(光源Philips10R、365nmにおける照度8mW/cm)を6分照射した。その後、A&V(株)製現像機(Stuck System)で、40℃で8分現像を行った。現像液には、食器洗剤Cascade(米国P&G製)を1%添加した水道水を使用した。現像後、60℃で10分乾燥し、化学線を10分間照射し、最後に表面粘着性を除去するために殺菌灯を5分間照射した。
【0048】
<評価方法>
耐皺性:作製したフレキソ印刷版原版を幅20cmで長さが20cmにカットし、評価サンプルとした。サンプルを10℃又は30℃の恒温室で相対湿度25%の条件下、平面台の上に24時間保存し、サンプルを調整した。その後にサンプルのカバーシートを剥がし、円筒状のロール(直径200mm)にバリヤ層が外側になるように巻き付けて5分間固定した後、これを取り外して平坦な場所に5分間静置した。その後、目視でバリヤ層の表面を観察し、以下の基準で判定した。
○:バリヤ層に皺が確認されなかったもの△:バリヤ層の一部に皺が確認されたもの
×:バリヤ層の全面に皺が確認されたもの
【0049】
バリヤ層のコート性:本発明のバリヤ層をA4サイズPETフィルム上に、バーコーターを用いてハンドコートした。サンプルは、常温でハンドコート後、100℃に設定した熱風乾燥機に入れて10分間静置した。その後、熱風乾燥機からサンプルを取出し、目視でバリヤ層の表面を観察し、以下の基準で判定した。
○:バリヤ層のコート面が平滑なもの×:バリヤ層のコート面にスジ・ハジキのような欠点が確認されたもの
【0050】
水現像性:作製したフレキソ印刷版原版を現像液に浸し、40℃で5分間、現像機専用ブラシで擦りながら、バリヤ層の水現像性を以下の基準で判定した。
○:バリヤ層の水現像が可能なもの
×:バリヤ層の水現像が不可能なもの
【0051】
レリーフ網点トップのエッジ再現性:ネガフィルム150線2%相当のCTP層を用いて150線2%網点トップの形状を評価した。評価は顕微鏡を用いて100倍に拡大した150線2%網点トップの形状を断面で観察し、以下の判定基準で判定した。
○:網点トップにおいてフラットな部分の直径がネガフィルム150線2%相当を再現し、端部の形状に丸みがない。△:網点トップにおいてフラットな部分がネガフィルム150線2%相当よりも小さくなり、端部の形状に丸みがある。×:網点トップにおいてフラットな部分が見られず、端部の形状が丸くなっている。
【0052】
押し込み変位量の測定:支持体の上に1.70mmの厚みを有する感光性樹脂層が配置された印刷原版に直径10mmの円盤状の圧子を120g重の荷重で60秒間負荷し、その際の変位量をONO SOKKI製LINEAR SENSOR(GS−112)を用いて測定した。押し込み変位量が大きいほど、版は柔軟である。
【0053】
実施例1
<感熱マスク層作成>で作成した感熱マスク層を準備した。次に、表1に示す実施例1のバリヤ層組成比率で<バリヤ層用塗工液組成物の作成>に従って塗工液組成物を作成した。次に、<バリヤ層を設けた感熱マスク層積層体のフィルムの作成>に従って、バリヤ層を厚みが1.5μmとなるように感熱マスク層上に塗布・乾燥し、バリヤ層を最上層に設けた感熱マスク層積層体のフィルムを得た。得られた感熱マスク層積層体のフィルムを<印刷原版作成>に従って感光性樹脂層とラミネートし、PET支持体、接着層、感光性樹脂層、保護層、感熱マスク層および離型処理PET保護フィルム(カバーフィルム)からなるフレキソ印刷原版を得た。版の総厚は1.90mmであった。なお、実施例1に用いた感光性樹脂層は、<感光性樹脂層用感光性樹脂組成物の作成>で作成したものを用いた。
【0054】
実施例2〜9、比較例1〜5
実施例1の製造方法に従って、表1に記載の感熱マスク層組成(質量比)で作成した感熱マスク層を設けたフィルムを用いて実施例1の感光性樹脂層を設け、PET支持体、接着層、感光性樹脂層、保護層、感熱マスク層および離型処理PET保護フィルム(カバーフィルム)からなるフレキソ印刷原版を得た。版の総厚は1.90mmであった。得られた感熱マスク層及びCTPフレキソ印刷原版を用いて性能評価を行った。これらの性能評価の結果を以下の表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1から分かるように、本発明の構成要件を満たす実施例1〜9は、耐皺性、バリヤ層のコート性、水現像性、及びレリーフ網点トップのエッジ再現性のいずれにも優れる。これに対して、ポリアミド樹脂(B)の含有量が少ない比較例1は、耐皺性に劣る。ポリアミド樹脂(B)の含有量が多い比較例2及びポリアミド樹脂(B)中のアルキレングリコール構造単位の量が多い比較例3は、レリーフ網点トップのエッジ再現性に劣る。ポリアミド樹脂(B)中のアレキレングリコール構造単位の量が少ない比較例4及び比較例5は、低温での耐皺性、バリヤ層のコート性及びレリーフ網点トップのエッジ再現性に劣る。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、冬場の低温低湿度を含む一年間を通じた環境変化に対してCTP印刷原版の取り扱い中に皺が発生することなく、バリヤ性にも優れた感光性CTPフレキソ印刷原版を提供することができる。従って、本発明は、極めて有用である。
【要約】
一年間の環境変化に対してCTP印刷原版の取り扱い中に皺が発生すことなく、バリヤ性にも優れた感光性CTPフレキソ印刷原版を提供する。少なくとも支持体、感光性樹脂層、バリヤ層、及び感熱マスク層が順次積層されてなる感光性凸版印刷原版であって、バリヤ層が、分子内に塩基性窒素原子を含有するポリアミド樹脂(A)と、分子内にアルキレングリコール構造単位を40〜70質量%含有するポリアミド樹脂(B)とを含有し、且つポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)の合計量に対するポリアミド樹脂(B)の含有量が25〜52質量%であることを特徴とする水現像可能な感光性CTPフレキソ印刷原版。