特許第6414424号(P6414424)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6414424
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】セラミックシート製造用離型フィルム
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/30 20060101AFI20181022BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20181022BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20181022BHJP
【FI】
   B28B1/30 101
   B32B27/00 L
   B32B27/36
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-191395(P2014-191395)
(22)【出願日】2014年9月19日
(65)【公開番号】特開2016-60158(P2016-60158A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中谷 充晴
(72)【発明者】
【氏名】愛澤 眸
(72)【発明者】
【氏名】森 憲一
【審査官】 高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−062179(JP,A)
【文献】 特開2014−144636(JP,A)
【文献】 特開2006−181994(JP,A)
【文献】 特開2002−121075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
B28B1/30
C08J7/04−7/06
H01G4/00−4/224;4/255−4/40
H01G13/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層以上からなる二軸配向ポリエステルフィルムを基材とし、前記基材は、粒子を実質的に含有していない表面層Aと粒子を含有する表面層Bを有し、表面層Aの表面上に離型塗布層が積層され、かつ表面層Bの表面上に平滑化塗布層が積層されてなり、平滑化塗布層が易滑性樹脂及び架橋剤を含み、易滑性樹脂がシリコーングラフトアクリル樹脂であり、架橋剤がイソシアネート又はカルボジイミドであり、平滑化塗布層の領域表面平均粗さ(Sa)が5nm以上25nm以下かつ最大突起高さ(P)が800nm以下であることを特徴するセラミックシート製造用離型フィルム。
(但し、易滑性樹脂とは、ポリエステルフィルムに積層したときの表面自由エネルギーγsが25mN/m以下のものを言う。)
【請求項2】
表面層Bに含有する粒子が、シリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子であり、粒子の合計が表面層B中に5000〜15000ppm含有されていることを特徴とする請求項1に記載のセラミックシート製造用離型フィルム。
【請求項3】
前記離型フィルムの離型塗布層の領域表面平均粗さ(Sa)が5nm以下かつ最大突起高さ30nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のセラミックシート製造用離型フィルム。
【請求項4】
前記離型フィルムの離型塗布層と平滑化塗布層を重ね合わせたときの静摩擦係数μsが0.1以上2.0以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のセラミックシート製造用離型フィルム。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載のセラミックシート製造用離型フィルムを用いて作成することを特徴とするセラミックシートの製造方法
【請求項6】
セラミックシートが0.2μm〜1.0μmの厚みを有することを特徴とする請求項に記載のセラミックシートの製造方法
【請求項7】
請求項またはに記載のセラミックシートの製造方法をいることを特徴とするセラミックコンデンサの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超薄層のセラミックシート製造用離型フィルムに関するものであり、詳しくは超薄層のセラミックシート製造時にピンホール及び厚みムラによる工程不良の発生を抑制したものを製造し得る、超薄層のセラミックシート製造用離型フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来ポリエステルフィルムを基材とし、その上に離型層を積層した離型フィルムは、積層セラミックコンデンサ、セラミック基板等のセラミックシート成型用に使用されている。近年、積層セラミックコンデンサの小型化・大容量化に伴い、セラミックシートの厚みも薄膜化する傾向にある。そのため、ポリエステルフィルムの離型層表面にセラミックシートを成型する場合、離型層表面の微小な突起が成型したセラミックシートに影響を与え、ハジキやピンホール等の欠点を生じやすくなるといった問題点があった。そのため、優れた平坦性を有する離型層表面を実現するための手法が種々開発されてきた。
【0003】
しかしながら、近年、さらなるセラミックシートの薄膜化が進み、1.0μm以下、より詳しくは0.2μm〜1.0μmの厚みのセラミックシートが要求されるようになってきた。そのため、離型層表面をどれだけ平坦にしても、セラミックシート塗布後の巻取りにおいて、離型層の反対面の突起が、巻き取られたセラミックシートに影響を与え、厚み不良やピンホール欠点が生じるという問題が発生してきた。このため、離型層表面だけでなく、離型層の反対面にも高い平坦性が必要とされているが、離型層表面だけでなく、離型層の反対面の平坦性も高くすると、滑り性やエア抜け性が低下し、離型フィルムロール作成時に、シワや平面性が低下するという問題点があった。また、滑り性が低下すると、離型フィルム製造工程やセラミックシート製造工程での搬送ロールに対する滑り性が低下し、ハンドリング性に劣るという問題点もあった。
【0004】
そこで、離型層の反対面を平坦化する検討として、ポリエステル基材中の粒子を制御することで、離型層表面及び反対面の突起を制御した離型フィルムが提案されている(特許文献1、2参照)。しかし、この方法では、粒子の凝集によって最大突起が大きくなる場合があり、より薄膜化されたセラミックシートの製造工程では、ピンホールなどの欠点を完全になくすことができない場合がある。
【0005】
また、離型層に粒子を含有させ、離型層とは反対面を平滑化しても、ハンドリング性を低下させない方法が提案されている(特許文献3参照)。更には、ハンドリング性と平滑性を両立する方法として、粒子を含まないポリエステル基材に、平滑な離型層を作成後、離型層とは反対面に、樹脂層を塗工し、樹脂の相分離現象を使用して樹脂層のみで凹凸をつける方法が提案されている(特許文献4参照)。
【0006】
しかし、特許文献3に記載される方法によると、フィラーにより、適度な突起を表面に設けることができるが、粒子の凝集による粗大突起の発生や、粒子が脱落することによる工程汚染の問題がある。一方、特許文献4に記載される方法を用いると、基材、塗布層ともにフィラーを含有しないため、粗大突起の問題は発生しないが、樹脂の相分離現象を利用して凹凸を制御しているため、凹凸が不十分で、滑り性が悪くなりハンドリング性が低下することがある。
【0007】
そのため、特許文献3または特許文献4に記載されるようなフィルムで作成したフィルムロールは、滑り性が悪く、エア抜けが十分でないため、作成したときは、平滑なフィルムであっても、フィルムロールを作成してから経時で、帯状のシワなどの発生により、平面性が悪化し、平滑性が失われることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−62179号公報
【特許文献2】特開2014−12372号公報
【特許文献3】特開2010−69868号公報
【特許文献4】特開2013−60555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記実情に鑑み鋭意検討した結果、得られたものであり、超薄層のセラミックシート製造時に、厚み不良やピンホール等の欠点を実質上生じることがなく、ハンドリング性に優れた超薄層のセラミックシート製造用離型フィルムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、表面粗さを制御したポリエステルフィルムを用い、片面に離型塗布層、もう一方の表面に、平滑化塗布層を設けることでさらに高次に表面粗さと滑り性を制御することができ、0.2〜1.0μmの厚みの超薄層のセラミックシート製造時に、厚み不良やピンホール等の欠点を実質上生じることがなく、ハンドリング性に優れた超薄層のセラミックシート製造用離型フィルムを提供することができることを見出した。
【0011】
即ち、本発明は以下の構成よりなる。
1. 2層以上からなる二軸配向ポリエステルフィルムを基材とし、前記基材は、粒子を実質的に含有していない表面層Aと粒子を含有する表面層Bを有し、表面層Aの表面上に離型塗布層が積層され、かつ表面層Bの表面上に平滑化塗布層が積層されてなり、平滑化塗布層が易滑性樹脂及び架橋剤を含み、易滑性樹脂がシリコーングラフトアクリル樹脂であり、架橋剤がイソシアネート又はカルボジイミドであり、平滑化塗布層の領域表面平均粗さ(Sa)が5nm以上25nm以下かつ最大突起高さ(P)が800nm以下であることを特徴するセラミックシート製造用離型フィルム。
(但し、易滑性樹脂とは、ポリエステルフィルムに積層したときの表面自由エネルギーγsが25mN/m以下のものを言う。)
2. 表面層Bに含有する粒子が、シリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子であり、粒子の合計が表面層B中に5000〜15000ppm含有されていることを特徴とする上記第1に記載のセラミックシート製造用離型フィルム。
3. 前記離型フィルムの離型塗布層の領域表面平均粗さ(Sa)が5nm以下かつ最大突起高さ30nm以下であることを特徴とする上記第1または第2に記載のセラミックシート製造用離型フィルム。
4. 前記離型フィルムの離型塗布層と平滑化塗布層を重ね合わせたときの静摩擦係数μsが0.1以上2.0以下であることを特徴とする上記第1〜第のいずれかに記載のセラミックシート製造用離型フィルム。
5. 上記第1〜第のいずれかに記載のセラミックシート製造用離型フィルムを用いて作成することを特徴とするセラミックシートの製造方法。
6. セラミックシートが0.2μm〜1.0μmの厚みを有することを特徴とする上記第に記載のセラミックシートの製造方法
7. 上記第または第に記載のセラミックシートの製造方法をいることを特徴とするセラミックコンデンサの製造方法
【発明の効果】
【0012】
本発明の超薄層のセラミックシート製造用離型フィルムは、従来のセラミックシート製造用離型フィルムと比較して、離型層表面の平坦性が高く、さらに反対面の平坦性およびハンドリング性にも優れるため、0.2〜1.0μmの超薄層のセラミックシート製造時の厚み不良やピンホール等の欠点を実質上生じることなく、超薄層のセラミックシートを製造することができる。さらに、本発明の離型フィルムを用いたロールは、フィルムロール形成後の経時での巻姿も良好なため、超薄膜セラミックシート製造時のハンドリング性を良好に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明の超薄層セラミックシート製造用離型フィルムを構成する基材フィルムは、実質的に粒子を含有しない表面層Aと、粒子を含有する表面層Bを有した少なくとも2層からなる二軸配向ポリエステルフィルムであり、前記表面層A上に離型層が積層され、かつ前記表面層B上に平滑化塗布層を設けられたものである。
【0015】
本発明の超薄層セラミックシート製造用離型フィルムの離型層と平滑化塗布層との間の静摩擦係数μsは、0.1以上2.0以下であることが好ましい。μsが、2.0以下であれば滑り性が良好であり、ロールに巻き上げるときにシワなどが発生することがなく、平面性が良好であり、セラミックシートの成型に好適に使用できる。また、μsが0.1以上であると、滑り性が高過ぎず、ロールに巻き上げるときにズレが発生することがなく好ましい。
【0016】
(ポリエステルフィルム)
本発明の基材として用いる二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、特に限定されず、離型フィルム基材として通常一般に使用されているポリエステルをフィルム成形したものを使用することが出来るが、好ましくは、芳香族二塩基酸成分とジオール成分からなる結晶性の線状飽和ポリエステルであるのが良く、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート又はこれらの樹脂の構成成分を主成分とする共重合体がさらに好適であり、とりわけポリエチレンテレフタレートから形成されたポリエステルフィルムが特に好適である。ポリエチレンテレフタレートは、エチレンテレフタレートの繰り返し単位が好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上であり、他のジカルボン酸成分、ジオール成分が少量共重合されていてもよいが、コストの点から、テレフタル酸とエチレングリコールのみから製造されたものが好ましい。また、本発明のフィルムの効果を阻害しない範囲内で、公知の添加剤、例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶化剤などを添加してもよい。
【0017】
上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの固有粘度は0.50〜0.70dl/gが好ましく、0.52〜0.62dl/gがより好ましい。固有粘度が0.50dl/g以上の場合、延伸工程で破断が多く発生することがなく好ましい。逆に、0.70dl/g以下の場合、所定の製品幅に裁断するときの裁断性が良く、寸法不良が発生ないので好ましい。また、原料は十分に真空乾燥することが好ましい。
【0018】
本発明における二軸配向ポリエステルフィルムの製造法は特に限定されず、従来一般に用いられている方法を用いることが出来る。例えば、前記ポリエステルを押出機にて溶融して、フィルム状に押出し、回転冷却ドラムにて冷却することにより未延伸フィルムを得て、該未延伸フィルムを二軸延伸することにより得ることが出来る。二軸延伸フィルムは、縦方向あるいは横方向の一軸延伸フィルムを横方向または縦方向に逐次二軸延伸する方法、或いは未延伸フィルムを縦方向と横方向に同時二軸延伸する方法で得ることが出来る。
【0019】
本発明において、ポリエステルフィルム延伸時の延伸温度はポリエステルの二次転移点(Tg)以上とすることが好ましい。縦、横おのおのの方向に1〜8倍、特に2〜6倍の延伸をすることが好ましい。
【0020】
上記ポリエステルフィルムは、厚みが12〜50μmであることが好ましく、さらに好ましくは15〜38μmである。フィルムの厚みが12μm以上であれば、フィルム生産時や加工工程、成型の時に、熱により変形するおそれがなく好ましい。一方、フィルムの厚みが50μm以下であれば、使用後に廃棄するフィルムの量が極度に多くならず、環境負荷を小さくする上で好ましい。
【0021】
上記二軸配向ポリエステルフィルム基材は、少なくとも2層以上の多層構成からなる積層ポリエステルフィルムであることが好ましい。このポリエステルフィルムは、少なくとも実質的に粒子を含有しない表面層Aと、粒子を含有する表面層Bを有し、離型層を塗布する側の層をA層、その反対面の平滑化塗布層を塗布する側の層をB層、これら以外の芯層をC層とすると、厚み方向の層構成は離型層/A/B/平滑化塗布層、あるいは離型層/A/C/B/平滑化塗布層等の積層構造が挙げられる。当然ながらC層は複数の層構成であっても構わない。
【0022】
本発明における二軸配向ポリエステルフィルム基材において、離型層を塗布する面を形成する表面層Aは、実質的に粒子を含有しないことが好ましい。このとき、表面層Aの領域表面平均粗さ(Sa)は、7nm以下が好ましい。Saが7nm以下であると、積層する超薄層セラミックシートの成型時にピンホールなどの発生が起こりにくく好ましい。表面層Aの領域表面平均粗さ(Sa)は小さいほど好ましいと言えるが、0.1nm以上であって構わない。この「粒子を実質的に含有しない」とは、例えば無機粒子の場合、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に50ppm以下、好ましくは10ppm以下、最も好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。これは積極的に粒子をフィルム中に添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分や、原料樹脂あるいはフィルムの製造工程におけるラインや装置に付着した汚れが剥離して、フィルム中に混入する場合があるためである。
【0023】
本発明における二軸配向ポリエステルフィルム基材において、離型層を塗布する面の反対面を形成する表面層Bは、フィルムの滑り性や空気の抜けやすさの観点から、粒子を含有することが好ましく、特にシリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子を用いることが好ましい。含有される粒子含有量は、表面層B中に粒子の合計で5000〜15000ppm含有することが好ましい。このとき、表面層Bのフィルムの領域表面平均粗さ(Sa)は、20〜40nmの範囲であることが好ましい。シリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子の合計が5000ppm以上、Saが20nm以上の場合には、フィルムをロール状に巻き上げるときに、空気を均一に逃がすことができ、巻き姿が良好で平面性良好により、超薄層セラミックシートの製造に好適なものとなる。また、シリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子の合計が15000ppm以下、Saが40nm以下の場合には、滑剤の凝集が生じにくく、粗大突起ができないため、超薄層のセラミックシート製造時に品質が安定し好ましい。
【0024】
上記B層に含有する粒子としては、シリカ及び/又は炭酸カルシウム以外に不活性な無機粒子及び/又は耐熱性有機粒子などを用いることができるが、透明性やコストの観点からシリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子を用いることがより好ましいが、他に使用できる無機粒子としては、アルミナ−シリカ複合酸化物粒子、ヒドロキシアパタイト粒子などが挙げられる。また、耐熱性有機粒子としては、架橋ポリアクリル系粒子、架橋ポリスチレン粒子、ベンゾグアナミン系粒子などが挙げられる。またシリカ粒子を用いる場合、多孔質のコロイダルシリカが好ましく、炭酸カルシウム粒子を用いる場合は、ポリアクリル酸系の高分子化合物で表面処理を施した軽質炭酸カルシウムが、滑剤の脱落防止の観点から好ましい。
【0025】
上記表面層Bに添加する粒子の平均粒子径は、0.1μm以上2.0μm以下が好ましく、0.5μm以上1.0μm以下が特に好ましい。粒子の平均粒子径が0.1μm以上であれば、離型層の滑り性が良好であり好ましい。また、平均粒子径が2.0μm以下であれば、離型層表面に粗大粒子によるピンホールが発生するおそれがなく好ましい。
【0026】
上記表面層Bには素材の異なる粒子を2種類以上含有させてもよい。また、同種の粒子で平均粒径の異なるものを含有させてもよい。
【0027】
上記離型層を設ける側の層である表面層Aには、ピンホール低減の観点から、滑剤などの粒子の混入を防ぐため、再生原料などを使用しないことが好ましい。
【0028】
上記離型層を設ける側の層である表面層Aの厚み比率は、基材フィルムの全層厚みの20%以上50%以下であることが好ましい。20%以上であれば、表面層Bなどに含まれる粒子の影響をフィルム内部から受けづらく、領域表面平均粗さSaが上記の範囲を満足することが容易であり好ましい。基材フィルムの全層の厚みの50%以下であると、表面層Bにおける再生原料の使用比率を増やすことができ、環境負荷が小さく好ましい。
【0029】
また、経済性の観点から上記表面層A以外の層(表面層Bもしくは前述の中間層C)には、50〜90質量%のフィルム屑やペットボトルの再生原料を使用することができる。この場合でも、B層に含まれる滑剤の種類や量、粒径ならびに領域表面平均粗さ(Sa)は、上記の範囲を満足することが好ましい。
【0030】
また、後に塗布する離型層や平滑化塗布層との密着性を向上させたり、帯電を防止するなどのために表面層A及び/または表面層Bの表面に製膜工程内の延伸前または一軸延伸後のフィルムにコート層を設けてもよい。コロナ処理などを施すこともできる。
【0031】
(離型塗布層)
本発明における離型塗布層を構成する樹脂には特に限定はなく、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、各種ワックス、脂肪族オレフィンなどを用いることができ、各樹脂を単独もしくは、2種類以上併用することもできる。
【0032】
本発明の離型塗布層として、例えばシリコーン樹脂とは、分子内にシリコーン構造を有する樹脂のことであり、硬化型シリコーン、シリコーングラフト樹脂、アルキル変性などの変性シリコーン樹脂などが挙げられるが、移行性などの観点から反応性の硬化シリコーン樹脂を用いることが好ましい。反応性の硬化シリコーン樹脂としては、付加反応系のもの、縮合反応系のもの、紫外線もしくは電子線硬化系のものなどを用いることができる。より好ましくは、低温で加工できる低温硬化性の付加反応系のもの、および紫外線もしくは、電子線硬化系のものがよい。これらのものを用いることで、ポリエステルフィルムへの塗工加工時に、低温で加工できる。そのため、加工時におけるポリエステルフィルムへの熱ダメージが少なく、平面性の高いポリエステルフィルムが得られ、0.2〜1.0μm厚みの超薄膜セラミックシート製造時にもピンホールなどの欠点が少ないセラミックシートを得ることができる。
【0033】
付加反応系のシリコーン樹脂としては、例えば末端もしくは側鎖にビニル基を導入したポリジメチルシロキサンとハイドロジエンシロキサンとを、白金触媒を用いて反応させて硬化させるものが挙げられる。このとき、120℃で30秒以内に硬化できる樹脂を用いる方が、低温での加工ができ、より好ましい。例としては、東レ・ダウコーンニング社製の低温付加硬化型(LTC1006L、LTC1056L、LTC300B、LTC303E、LTC310、LTC314、LTC350G、LTC450A、LTC371G、LTC750A、LTC755、LTC760Aなど)および熱UV硬化型(LTC851、BY24−510、BY24−561、BY24−562など)、信越化学社製の溶剤付加+UV硬化型(X62−5040、X62−5065、X62−5072T、KS5508など)、デュアルキュア硬化型(X62−2835、X62−2834、X62−1980など)などが挙げられる。
【0034】
縮合反応系のシリコーン樹脂としては、例えば、末端にOH基をもつポリジメチルシロキサンと末端にH基をもつポリジメチルシロキサンを、有機錫触媒を用いて縮合反応させ、3次元架橋構造をつくるものが挙げられる。
【0035】
紫外線硬化系のシリコーン樹脂としては、例えば最も基本的なタイプとして通常のシリコーンゴム架橋と同じラジカル反応を利用するもの、不飽和基を導入して光硬化させるもの、紫外線でオニウム塩を分解して強酸を発生させ、これでエポキシ基を開裂させて架橋させるもの、ビニルシロキサンへのチオールの付加反応で架橋するもの等が挙げられる。また、前記紫外線の代わりに電子線を用いることもできる。電子線は紫外線よりもエネルギーが強く、紫外線硬化の場合のように開始剤を用いなくても、ラジカルによる架橋反応を行うことが可能である。使用する樹脂の例としては、信越化学社製のUV硬化系シリコーン(X62−7028A/B、X62−7052、X62−7205、X62−7622、X62−7629、X62−7660など)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のUV硬化系シリコーン(TPR6502、TPR6501、TPR6500、UV9300、UV9315、XS56−A2982、UV9430など)、荒川化学社製のUV硬化系シリコーン(シリコリースUV POLY200、POLY215、POLY201、KF−UV265AMなど)が挙げられる。
【0036】
上記、紫外線硬化系のシリコーン樹脂としては、アクリレート変性や、グリシドキシ変性されたポリジメチルシロキサンなどを用いることもできる。これら変性されたポリジメチルシロキサンを、多官能のアクリレート樹脂やエポキシ樹脂などと混合し、開始剤存在下で使用することでも良好な離型性能を出すことができる。
【0037】
その他用いられる樹脂の例としては、ステアリル変性アルキド樹脂およびメチル化メラミンの反応などで得られるアルキド系樹脂なども好適である。
【0038】
本発明の離型塗布層に上記樹脂を用いる場合は、1種類で使用してもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、剥離力を調整するために、軽剥離添加剤や、重剥離添加剤といった添加剤を混合することも可能である。
【0039】
本発明の離型塗布層には、粒径が1μm以下の粒子などを含有することができるが、ピンホール発生の観点から粒子など突起を形成するものは含有しないほうが好ましい。
【0040】
本発明の離型塗布層には、密着向上剤や、帯電防止剤などの添加剤などを添加してもよい。また、基材との密着性を向上させるために、離型塗布層を設ける前にポリエステルフィルム表面に、アンカーコート、コロナ処理、プラズマ処理、大気圧プラズマ処理等の前処理をすることも好ましい。
【0041】
本発明において、離型塗布層の厚みは、その使用目的に応じて設定すれば良く、特に限定されないが、好ましくは、硬化後の離型塗布層重量が0.01〜0.5g/m2となる範囲がよい。離型層の厚みが上記範囲より小さいと剥離性能が低下しやすい。また、上記範囲より大きいと、硬化時間が長くなり、離型フィルムの平面性の低下によるセラミックシートの厚みムラが生じやすい恐れがある。また、硬化時間が長くなると、離型層を構成する樹脂が凝集しやすくなり、突起を形成し、セラミックシートのピンホール欠点が生じる恐れがある。
【0042】
離型塗布層を形成させたフィルム表面は、その上で塗布・成型するセラミックシートに欠陥を発生させないために、平坦であることが望ましく、領域表面平均粗さ(Sa)が5nm以下かつ最大突起高さ(P)が30nm以下であることが好ましい。さらには領域表面平均粗さ5nm以下かつ最大突起高さ20nm以下がより好ましい。領域表面粗さが5nm以下、且つ、最大突起高さが30nm以下であれば、セラミックシート形成時に、ピンホールなどの欠点を発生がなく、歩留まりが良好で好ましい。領域表面平均粗さ(Sa)は小さいほど好ましいと言えるが、0.1nm以上であっても構わず、0.3nm以上であっても構わない。最大突起高さ(P)も小さいほど好ましいと言えるが、1nm以上でも構わず、3nm以上であっても構わない。
【0043】
本発明において、離型塗布層の形成方法は、特に限定されず、離型性の樹脂を溶解もしくは分散させた塗液を、基材のポリエステルフィルムの一方の面に塗布等により展開し、溶媒等を乾燥により除去後、加熱乾燥、熱硬化または紫外線硬化させる方法が用いられる。このとき、溶媒乾燥、熱硬化時の乾燥温度は、180℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることがもっとも好ましい。その加熱時間は、30秒以下が好ましく、20秒以下がより好ましい。180℃以下の場合、フィルムの平面性が保たれ、セラミックシートの厚みムラを引き起こす恐れが小さく好ましい。120℃以下であるとフィルムの平面性を損なうことなく加工することができ、セラミックシートの厚みムラを引き起こす恐れが更に低下するので特に好ましい。
【0044】
本発明において、離型塗布層を塗布するときの塗液の表面張力は、特に限定されないが30mN/m以下であることが好ましい。表面張力を前記のようにすることで、塗工後の塗れ性が向上し、乾燥後の塗膜表面の凹凸を低減することができる。
【0045】
本発明において、離型塗布層を塗布するときの塗液には、特に限定されないが、沸点が90℃以上の溶剤を添加することが好ましい。沸点が90℃以上の溶剤を添加することで、乾燥時の突沸を防ぎ、塗膜がレベリングさせることができ、乾燥後の塗膜表面の平滑性を向上させることができる。その添加量としては、塗液全体に対し、10〜80質量%程度添加することが好ましい。
【0046】
上記塗液の塗布法としては、公知の任意の塗布法が適用出来、例えばグラビアコート法やリバースコート法などのロールコート法、ワイヤーバーなどのバーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、等の従来から知られている方法が利用できる。
【0047】
(平滑化塗布層)
本発明の離型フィルムにおいて、表面層Bの上に、平滑化塗布層が設けられている。
領域表面平均粗さを制御した表面層B上に、さらに平滑化塗布層を設けることで、より高度に領域表面平均粗さと最大突起高さを制御することができる。そのため、0.2〜1.0μmの超薄層セラミックシートを離型塗布層に成型後、ロール状に巻き取った後でも、平滑化塗布層の凹凸転写がなく超薄層セラミックシートのピンホールなどの欠点を抑制することができる。
【0048】
本発明における平滑化塗布層の領域表面平均粗さ(Sa)は5nm以上25nm以下かつ最大突起高さ(P)は800nm以下であることが好ましい。より好ましくは、領域表面平均粗さ(Sa)は7nm以上23nm以下かつ最大突起高さ(P)が750nm以下であり、Saが10nm以上20nm以下かつPが700nm以下がさらに好ましい。領域表面粗さ(Sa)が5nm以上であれば、滑り性が良く巻き取り時にシワなどが発生せず平面性が保たれるので好ましい。一方、領域表面平均粗さ(Sa)が25nm以下であり、且つ、最大突起高さ(P)が800nm以下の場合には、セラミックシート塗布後の巻取りにおいて、巻き取られたセラミックシートに、平滑化塗布層の突起の凹凸が転写されることがなく、ピンホールなどの欠点を生じるおそれが小さいので好ましい。最大突起高さ(P)は小さいことが好ましいが、10nm以上であっても構わず、20nm以上であっても構わない。
【0049】
本発明における平滑化塗布層を構成する樹脂は、特に限定されないが、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂などを用いることができる。これらの樹脂を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0050】
平滑化塗布層の構成する樹脂の一部には、高度に平滑な表面でも滑り性を保持するために、易滑性樹脂を用いることが好ましい。易滑性樹脂とは、ポリエステルフィルム上に塗布後、乾燥及び/又は硬化して積層した樹脂層の表面自由エネルギーγsが25mN/m以下であるものをいい、例としては、シリコーン系樹脂やフッ素系の樹脂、長鎖アルキル変性された樹脂などが挙げられる。
【0051】
本発明の平滑化塗布層中の樹脂に占める易滑性樹脂の割合は、特に限定はされないが、1質量%〜100質量%含有することが好ましい。1質量%以上から滑り性向上の効果が期待でき、より好ましくは3質量%以上、特に好ましくは5%以上ある。上限はもちろん100質量%である。
【0052】
本発明で易滑性樹脂として用いるシリコーン系樹脂の例としては、硬化型シリコーン、シリコーングラフトアクリル樹脂、エポキシ変性シリコーン、アクリレート変性シリコーン、アミノ変性シリコーンなどが挙げられる。
【0053】
本発明で易滑性樹脂として用いるフッ素系樹脂の例としては、パーフルオロアルキル基がグラフトされた樹脂や、フッ素原子をもつオレフィン化合物と共重合した樹脂などが挙げられる。
【0054】
本発明で易滑性樹脂として用いる長鎖アルキル変性された樹脂の例としては、(メタ)アクリル酸エステルを主なる繰り返し単位とする重合体であり、エステル交換された部分が炭素数12〜30の長鎖アルキル基である樹脂などが挙げられる。
【0055】
本発明の平滑化塗布層に用いられる樹脂の数平均分子量Mnは250〜20000であることが好ましい。より好ましくは、300〜15000であり、さらに好ましくは500〜10000である。数平均分子量が20000以下の場合、表面層B塗布時の流動性が良好でレベリング性が良好であるため、凹凸を効果的に埋めることができ、領域表面粗さを上記範囲にすることが容易となり好ましい。また、数平均分子量Mnが250以上の場合、乾燥時に樹脂の凝集が起こりにくく、粗大突起が発生することがないため、最大高さが上記範囲にすることが容易となり好ましい。
【0056】
本発明の平滑化塗布層の厚みは、0.2〜2.0μmであることが好ましく、0.3〜1.5μmであることがさらに好ましい。厚みが、0.2μm以上の場合、B層の凹凸を埋めることが容易であり、最大高さを上記範囲にすることが容易であり好ましい。また、厚みが2.0μm以下であれば、平滑性が向上し過ぎることがなく、滑り性を満足できるので好ましい。
【0057】
本発明の平滑化塗布層の表面自由エネルギーγsは、30mN/m以下であることが好ましく、より好ましくは23mN/m以下である。これにより、高度に平滑化したポリエステルフィルムでも、離型ポリエステルフィルムの製造工程やセラミックシート製造工程での搬送ロールに対する滑り性の悪化を防ぎ、シワの発生や、ブロッキングを防止することができる。しかしながら、あまりにも平滑化塗布層の表面自由エネルギーγsが小さすぎるとロール状に巻き取った場合に巻きずれが発生するおそれがあるので、下限は12mN/m以上であることが好ましい。
【0058】
本発明の塗布層には、必要に応じて架橋剤を添加することも好ましい。架橋剤を添加することで、平滑化塗布層の耐溶剤性、移行性などを抑制することができる。添加できる架橋剤の種類は、特に限定されないが、イソシアネート系、カルボジイミド系、エポキシ系、メラミン系、オキサゾリン系などを用いることができる。
【0059】
例えば、本発明の平滑化塗布層に、シリコーングラフトアクリル樹脂を用いる場合、架橋剤として、イソシアネートやカルボジイミドを使用することで、シリコーングラフトアクリル樹脂が離型層に移行し、離型層の剥離性に悪影響を与える可能性を抑制することができるので好ましい。
【0060】
本発明の平滑化塗布層を構成する樹脂の一部には、離型層で用いられる樹脂と同程度の帯電列のものを含有することが好ましい。例えば、離型層にシリコーン系樹脂を用いる場合、塗布層にもシリコーン系樹脂を含有する方が好ましい。同程度の帯電列の樹脂を混合することで、接触時の帯電を抑制し、フィルムロールからフィルムを巻き出す際の剥離帯電を少なくすることができる。
【0061】
本発明における平滑化塗布層の加工方法については、特に限定されないが、離型塗布層と同時に両面加工する方法、または片面を加工後に反対面を加工する方法で加工することができる。後者の場合は、離型層を加工した後に塗布層を加工するほうが好ましい。離型層は、セラミックシート層を積層するため、平面性が塗布層に比べ、より均一なものが必要になる。そのため、離型層を塗布するときに、離型層の反対面の滑り性が良い方が塗布時にシワなどが入りにくく、より均一に塗工することができる。
【0062】
また、平滑化塗布層の加工は、ポリエステルフィルム製膜時に塗工するインラインコートではなく、ポリエステルフィルム製膜後に加工するオフラインコートで加工することが好ましい。オフラインで行なう方が塗工時の張力や巻取時の張力などを高度に制御できるため、平滑性と滑り性を高度に両立することができる。
【0063】
上記塗液の塗布法としては、公知の任意の塗布法が適用出来、例えばグラビアコート法やリバースコート法などのロールコート法、ワイヤーバーなどのバーコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法等の従来から知られている方法が利用できる。
【実施例】
【0064】
以下に、実施例を用いて本発明のさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。本発明で用いた特性値は下記の方法を用いて評価した。なお、以下の実施例1〜7、10及び11は、それぞれ参考例1〜7、10及び11と読み替えることとする。
【0065】
(表面粗さ)
非接触表面形状計測システム(VertScan R550H−M100)を用いて、下記の条件で測定した値である。領域表面平均粗さ(Sa)は、5回測定の平均値を採用し、最大突起高さ(P)は5回測定の最大値を採用した。
(測定条件)
・測定モード:WAVEモード
・対物レンズ:50倍
・0.5×Tubeレンズ
・測定面積 187×139μm
【0066】
(静摩擦係数)
離型フィルムロールから8cm×5cmの面積に切り出し、試料フィルムを作成した。これを大きさ6cm×5cmの底面を有する重さ1.4kgの金属製直方体底面に、平滑化塗布層が表に現れるように固定した。この時、試料フィルムの5cm幅方向と金属直方体の5cm幅方向を合わせ、試料フィルムの長手方向の一辺を折り曲げ、金属直方体の側面に粘着テープで固定した。
【0067】
次いで、同じ離型フィルムロールから20cm×10cmの面積に試料フィルムを切り出し、離型層表面が表に現れるように、平らな金属板上に長手方向端部を粘着テープで固定した。この上に試料フィルムを貼り付けた金属製直方体の測定面を接するように置き、引っ張りスピード200mm/分、23℃、65%RH条件下で静摩擦係数(μs)を測定した。
滑り性について、以下の基準で判断した。
○:0.1<μs<1.5
△:1.5<μs<2.5
× :摩擦係数が高すぎて測定不可
【0068】
(表面自由エネルギー)
表面張力が既知である水、およびヨウ化メチレンの本発明中に記載のフィルムもしくは樹脂に対する接触角:θw、θyを接触角計(協和界面科学株式会社製:CA-X型)を用い、25℃、50%RHの条件下で測定した。これらの測定値を用い、以下のようにして、本発明中で記載のフィルムもしくは樹脂の表面張力γsを算出した。
【0069】
表面自由エネルギーγsは、分散性成分γsdと極性成分γspとの和である。すなわち、
γs=γsd+γsp (式1)
また、Youngの式より、
γs=γsw+γw×cosθw (式2)
γs=γsy+γy×cosθy (式3)
ここで、γswはフィルムもしくは樹脂と水との間に働く張力、γswはフィルムもしくは樹脂とヨウ化メチレンとの間に働く張力、γwは水の表面張力、γyはヨウ化メチレンの表面張力である。
また、Fowkesの式より、
γsw=γs+γw−2×(γsd×γwd)1/2−2×(γsp×γwp)1/2 (式4)
γsy=γs+γy−2×(γsd×γyd)1/2−2×(γsp×γyp)1/2 (式5)
である。ここで、γwdは水の表面張力の分散性成分、γwpは水の表面張力の極性成分、γydはヨウ化メチレンの表面張力の分散性成分、γypはヨウ化メチレンの表面張力の極性成分である。
式1から式5の連立方程式を解くことにより、フィルムもしくは樹脂の表面張力γs=γsd+γspを算出できる。この時、水の表面張力(γw)は72.8dyne/cm、ヨウ化メチレンの表面張力(γy)は50.5dyne/cm、水の表面張力の分散性成分(γwd)は21.8dyne/cm、水の表面張力の極性成分(γwp)は51.0dyne/cm、ヨウ化メチレンの表面張力の分散性成分(γyd)は49.5dyne/cm、ヨウ化メチレンの表面張力の極性成分(γyp)は1.3dyne/cmを用いた。
【0070】
(セラミックグリーンシートのピンホール評価)
下記、材料からなる組成物を攪拌混合し、2.0mmのガラスビーズを分散媒とするペイントシェーカーを用いて2時間分散し、セラミックスラリーを得た。
トルエン 22.5質量%
エタノール 22.5質量%
チタン酸バリウム(富士チタン社製 HPBT−1) 50 質量%
ポリビニルブチラール(積水化学社製 エスレックBH−3) 5 質量%
次いで得られた離型フィルムサンプルの離型面にアプリケーターを用いて乾燥後のスラリーが1μmの厚みになるように塗布し90℃で1分乾燥後、スラリー面と平滑化塗布層面を重ね合わせ、10分間、1kg/cm2の加重を掛けたあと、離型フィルムを剥離し、セラミックグリーンシートを得た。
得られたセラミックグリーンシートのフィルム幅方向の中央領域において25cmの範囲でセラミックスラリーの塗布面の反対面から光を当て、光が透過して見えるピンホールの発生状況を観察し、下記基準で目視判定した。
○:ピンホールの発生なし
△:ピンホールの発生がほぼなし
×:ピンホールの発生が多数あり
【0071】
(耐溶剤性)
本発明のフィルムの平滑化塗布層にトルエン/エタノール=1/1の溶剤を付着した綿棒で擦ったときの外観変化から評価した。
○:外観に変化なし
△:外観にやや変化あり(白化)
×:外観が大幅に変化(白くなる)
【0072】
(平滑化塗布層の移行性評価)
本発明のフィルムの平滑化塗布層を、未処理のPETフィルムにを重ね合わせ、1kg/cmの加重を10分間かけたあと、未処理のPETフィルムに移行したシリコーン成分をマジックペンの弾き具合で評価した。評価基準は、以下の通りとして目視判断した。
○:マジックペンが全く弾かない
△:マジックペンが少し弾く
×:マジックペンが著しく弾く
【0073】
(ポリエチレンテレフタレートペレット(PETI)の調製)
エステル化反応装置として、攪拌装置、分縮器、原料仕込口及び生成物取出口を有する3段の完全混合槽よりなる連続エステル化反応装置を用いた。TPA(テレフタル酸)を2トン/時とし、EG(エチレングリコール)をTPA1モルに対して2モルとし、三酸化アンチモンを生成PETに対してSb原子が160ppmとなる量とし、これらのスラリーをエステル化反応装置の第1エステル化反応缶に連続供給し、常圧にて平均滞留時間4時間、255℃で反応させた。次いで、第1エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第2エステル化反応缶に供給し、第2エステル化反応缶内に第1エステル化反応缶から留去されるEGを生成PETに対して8質量%供給し、さらに、生成PETに対してMg原子が65ppmとなる量の酢酸マグネシウム四水塩を含むEG溶液と、生成PETに対してP原子が40ppmのとなる量のTMPA(リン酸トリメチル)を含むEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間1時間、260℃で反応させた。次いで、第2エステル化反応缶の反応生成物を連続的に系外に取り出して第3エステル化反応缶に供給し、高圧分散機(日本精機社製)を用いて39MPa(400kg/cm)の圧力で平均処理回数5パスの分散処理をした平均粒径が0.9μmの多孔質コロイダルシリカ0.2質量%と、ポリアクリル酸のアンモニウム塩を炭酸カルシウムあたり1質量%付着させた平均粒径が0.6μmの合成炭酸カルシウム0.4質量%とを、それぞれ10%のEGスラリーとして添加しながら、常圧にて平均滞留時間0.5時間、260℃で反応させた。第3エステル化反応缶内で生成したエステル化反応生成物を3段の連続重縮合反応装置に連続的に供給して重縮合を行い、95%カット径が20μmのステンレススチール繊維を焼結したフィルターで濾過を行ってから、限外濾過を行って水中に押出し、冷却後にチップ状にカットして、固有粘度0.60dl/gのPETチップを得た(以後、PET(I)と略す)。PETチップ中の滑剤含有量は0.6質量%であった。
【0074】
(ポリエチレンテレフタレートペレット(PETII)の調製)
一方、上記PETチップの製造において、炭酸カルシウム、シリカ等の粒子を全く含有しない固有粘度0.62dl/gのPETチップを得た(以後、PET(II)と略す。)。
【0075】
(積層フィルムX1の製造)
これらのPETチップを乾燥後、285℃で溶融し、別個の溶融押出し機押出機により290℃で溶融し、95%カット径が15μmのステンレススチール繊維を焼結したフィルターと、95%カット径が15μmのステンレススチール粒子を焼結したフィルターの2段の濾過を行って、フィードブロック内で合流して、PET(I)を表面層B(反離型面側層)、PET(II)を表面層A(離型面側層)となるように積層し、シート状に45m/分のスピードで押出(キャステイング)し、静電密着法により30℃のキャスティングドラム上に静電密着・冷却させ、固有粘度が0.59dl/gの未延伸ポリエチレンテレフタレートシートを得た。層比率は各押出機の吐出量計算でPET(I)/(II)=60%/40%となるように調整した。次いで、この未延伸シートを赤外線ヒーターで加熱した後、ロール温度80℃でロール間のスピード差により縦方向に3.5倍延伸した。その後、テンターに導き、140℃で横方向に4.2倍の延伸を行なった。次いで、熱固定ゾーンにおいて、210℃で熱処理した。その後、横方向に170℃で2.3%の緩和処理をして、厚さ31μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムX1を得た。得られたフィルムX1の表面層AのSaは2nm、表面層BのSaは28nmであった。
【0076】
(離型層Y1の形成)
下記実施例1〜11及び比較例1〜5において、UV硬化型シリコーン樹脂(モメンティブ社製 UV9300)100質量部と硬化触媒ビス(アルキルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート1質量部を、トルエン/メチルエチルケトン/ヘプタン(=3:5:2)溶液で希釈し、固形分2質量%の離型剤溶液を調製した。この離剤溶液を積層フィルムX1の粒子を含有しない表面層Aに乾燥重量0.1g/m2となるようにリバースグラビアコーターにて塗布し、次いで、90℃の熱風で30秒間乾燥した後、直ちに無電極ランプ(フュージョン株式会社製Hバルブ)にて紫外線照射(300mJ/cm2)を行い、離型層Y1を形成した。
【0077】
但し、基材フィルムとしてE5100を使用した比較例2においては、任意の片面に実施例1と同様に離型層を塗布し、その後、平滑性塗布層は、基材の前記離型層を塗布した面の反対表面に塗布した。
【0078】
(離型層Y2の形成)
下記実施例12において、熱付加型シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング社製 LTC310)100質量部と硬化触媒(東レダウ・コーニング社製 SRX212)を2質量部をトルエン/メチルエチルケトン=5/5溶液で希釈し、固形分2質量%の離型剤溶液を調整した。この離剤溶液を積層フィルムX1の粒子を含有しない表面層Aに乾燥重量0.1g/m2となるようにリバースグラビアコーターにて塗布し、次いで、120℃の熱風で30秒間乾燥し離型層Y2を形成した。
【0079】
(平滑化塗布層)
(易滑性樹脂(1))
(1)−1: シリコーン変性アクリル樹脂(γs:18mN/m、アクリル骨格の計算Tg:120℃、酸価:65mgKOH/g, )
(1)−2: アクリレート基を有する変性ポリジメチルシロキサン(ビックケミージャパン社製 BYK3505 γs:19mN/m)
(1)−3:脂環式エポキシ変性シリコーン樹脂(γs17mN/m,モメンティブ社製UV9430)
【0080】
(樹脂(2))
(2)−1:ポリエステル樹脂(東洋紡製 バイロン220、Mn3000)
(2)−2:ポリエステル樹脂(東洋紡製 バイロン226 Mn8000)
(2)−3:ポリエステル樹脂(東洋紡製 バイロン270 Mn23000)
(2)−4:アクリレート化合物(新中村化学工業製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 分子量578)
(2)−5:エポキシ変性アクリル樹脂(Tg100℃、Mn11000)
【0081】
(架橋剤(3))
(3)−1:イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業製、コロネートL)
(3)−2:カルボジイミド架橋剤(日清紡ケミカル製、カルボジライトV−05)
【0082】
(平滑化塗布層Z1の形成)
シリコーン変性アクリル樹脂(1)−1 (γs:18dyne/cm、アクリル骨格の計算Tg:120℃、酸価:65mgKOH/g)を、トルエン/メチルエチルケトン(=1:1)溶液で希釈し、固形分10質量%の塗工液z1を調製した。この塗工液z1を積層フィルムの離型層と反対面に乾燥重量0.7g/m2となるようにリバースグラビアコーターにて塗布し、120℃30秒乾燥することで平滑化塗布層C1を形成した。
【0083】
(平滑化塗布層Z2〜Z7の形成)
表1に記載の樹脂、混合割合、膜厚になるように調整し、平滑化塗布層Z1と同様の方法で平滑化塗布層Z2〜Z7を形成した。
【0084】
(平滑化塗布層Z8、Z9の形成)
表1に記載の必要になるように、架橋剤を添加し、160℃30秒乾燥すること以外は、平滑化塗布層Z1と同様の方法で平滑化塗布層Z8、Z9を形成した。
【0085】
(平滑化塗布層Z10の形成)
表1に記載の樹脂を混合し、光開始剤(イルガキュア184、BASF製)を添加し、塗工後90℃30秒乾燥した後、直ちに無電極ランプ(フュージョン株式会社製Hバルブ)にて紫外線照射(300mJ/cm2)すること以外は、平滑化塗布層Z1と同様の方法で平滑化塗布層Z10を形成した。
【0086】
(平滑化塗布層Z11の形成)
表1に記載の樹脂を混合し、硬化触媒ビス(アルキルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート1質量部添加する以外は、平滑化塗布層Z10と同様の方法にて平滑化塗布層Z11形成した。
【0087】
実施例1
積層フィルムX1の表面層A上に離型層Y1を形成した後に、表面層B上に平滑化塗布層Z1を形成することで超薄層セラミックシート製造用離型フィルムを得た。
【0088】
実施例2〜12
表1に記載の組み合わせで超薄層セラミックシート製造用離型フィルムを得た。
【0089】
比較例1
平滑化塗布層を形成しないこと以外は、実施例1と同様の方法で超薄層セラミックシート製造用離型フィルムを得た。
【0090】
比較例2
積層フィルムX1の代わりに、E5100−25μm(東洋紡製)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で超薄層セラミックシート製造用離型フィルムを得た。E5100は、表面層A、表面層Bともに粒子を含有しており、表面層A、表面層Bの両層のSaがともに31nmであった。
【0091】
比較例3〜5
表1記載の組み合わせで、超薄層セラミックシート製造用離型フィルムを得た。
【0092】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明のセラミックシート製造用離型フィルムは、従来のセラミックシート製造用離型フィルムと比較して、離型層表面の平坦性が高く、さらに反対面の平坦性およびハンドリング性にも優れるため、0.2〜1.0μmの超薄層のセラミックシート製造時の厚み不良やピンホール等の欠点を実質上生じることなく、超薄層のセラミックシートを製造することを可能とした。さらに、本発明の離型フィルムを用いたフィルムロールは、フィルムロール形成後の経時での巻姿も良好なため、超薄膜のセラミックシート製造時のハンドリング性を良好に保つことができる。