(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6414470
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】水処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/28 20060101AFI20181022BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20181022BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20181022BHJP
【FI】
C02F1/28 F
B01J20/28 A
B01J20/34 A
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-4088(P2015-4088)
(22)【出願日】2015年1月13日
(65)【公開番号】特開2016-129862(P2016-129862A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2017年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】河野 大樹
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 勉
(72)【発明者】
【氏名】板山 繁
【審査官】
富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−142729(JP,A)
【文献】
特開昭60−225641(JP,A)
【文献】
特開2008−133327(JP,A)
【文献】
特開2004−351312(JP,A)
【文献】
米国特許第05681476(US,A)
【文献】
特開昭50−016353(JP,A)
【文献】
特開2010−036155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/28
B01J 20/28
B01J 20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着素子が収容された処理槽と当該処理槽に接続した配管ラインとを備え、二種以上の被吸着物質を含有する被処理水を前記吸着素子に接触させて被吸着物質を吸着する吸着処理と、前記吸着素子に水蒸気を接触させて吸着した被吸着物質を脱着する脱着処理とを交互に繰返す吸脱着運転を実施して、被処理水を清浄化する水処理装置において、
前記吸脱着運転を一定時間実施した後、前記吸着素子に前記水蒸気よりも高温の高温水蒸気を供給して前記吸着素子を再生する再生処理を実施し、当該再生処理後に、前記吸脱着運転を再開することを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記吸着工処理と前記脱着処理との間に、ガスを供給して前記吸着素子に付着した余剰の被処理水を除去してこれを除去水として排出する請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記除去水の除去に使用するガスが水蒸気である請求項2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記除去水が、被処理水として供給されるように構成された請求項2または3に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記水蒸気の温度が100℃以上140℃未満であり、前記高温水蒸気の温度が140℃以上450℃以下である請求項1から4のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記二種以上の被吸着物質を含有する被処理水が、沸点140℃未満の被吸着物質と140℃以上の被吸着物質とをそれぞれ一種以上含む請求項1から5のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項7】
吸着素子を用いて被処理水を清浄化する水処理方法において、
二種以上の被吸着物質を含有する被処理水を前記吸着素子に接触させて被吸着物質を吸着する吸着処理と、前記吸着素子に水蒸気を接触させて吸着した被吸着物質を脱着する脱着処理とを交互に繰返す吸脱着工程と、
前記吸脱着工程を一定時間実施した後、前記吸着素子に前記水蒸気よりも高温の高温水蒸気を供給して前記吸着素子を再生する再生工程と、を含み
前記再生工程後に、前記吸脱着工程を再開することを特徴とする水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被吸着物質を含有する水から被吸着物質を除去することで水を清浄化する水処理装置に関し、特に、各種工場や研究施設等から排出される被吸着物質を含有する産業排水、最終処分場から排出される浸出水および地下水等を被処理水として被吸着物質を効率的に除去することで当該被処理水を清浄化する水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被処理水を吸着材に接触させて被吸着物質の吸着除去する吸着工程と、加熱ガスを吸着材に接触させて被吸着物質を吸着材から脱着させる脱着工程を交互に行う吸脱着運転を行う水処理装置が検討されている(例えば、特許文献1)。この水処理装置は、基本的には吸着材の交換が必要なく、被吸着物質を高効率で安定的に除去することができる。
【0003】
使用する吸着材としては、活性炭素繊維が知られている。活性炭素繊維は吸着速度が速く、ミクロポア容積が大きいので、少ない吸着材量で高効率に有機溶剤をはじめとする被吸着物質を除去できる特性が一般的に知られている。また、加熱ガスとしては、経済性や吸着材の耐熱温度の観点から140℃前後の加熱空気や水蒸気が使用される。
【0004】
このように、使用する吸着材や加熱ガス温度で上記水処理装置の特性を活かす場合、被処理水中から吸着除去の対象物質は、有機溶剤に代表される低沸点、低分子量の被吸着物質となる。例えば、有機溶剤回収装置から排出される有機溶剤含有排水処理、半導体工場などから排出されるイソプロピルアルコールなどの排水処理、産業排水、浸出水および地下水などに含まれる1,4−ジオキサン除去、地下水、井戸水および上水などに含まれるトリクロロエチレン除去など挙げられる。
【0005】
しかし、実際の被処理水中には様々な被吸着物質が含まれるケースが殆どである。例えば、被処理水中に難脱着物質も共存し、これらの物質が吸着材に吸着や付着した場合、上記温度の加熱ガスでは吸着材から脱着しにくいため、細孔に残存して吸着能を低下させ(いわゆる劣化)、吸着材の交換頻度が増える課題があった。
【0006】
ここで説明する難脱着物質としては、有機ポリマー、有機オリゴマー、タンパク質、糖類、脂肪酸、脂肪酸エステル、アミン、アミド化合物、油脂、樹脂、界面活性剤、高沸点溶剤などの140℃以上の沸点である有機物質、硫酸塩、硫化物、鉄サビなどの無機物が挙げられる。
【0007】
このような難脱着物質を含む被処理水を処理する場合、加熱ガスの温度を上げて吸脱着運転を行う方策があるが、加熱ガスを昇温するためのランニングコストの増大の課題があった。難脱着物質の物性や濃度などに応じて効果的に事前除去できる前処理装置を付帯させて、加熱ガスの昇温を回避して、吸着材の寿命を延命する方策もあるが、完全な事前除去は困難であり、運転時間に応じて徐々に前処理で事前除去されなかった微量の難脱着物質が吸着材に蓄積・残存して劣化するので、前処理装置による吸着材の延命効果が経済的に低いケースもあった。同様に被処理水中に難脱着物質が微量に含まれる場合においても、長時間吸脱着運転を実施すれば、吸着材は劣化する課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−55712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記技術の課題を背景になされたもので、低沸点の被吸着物質を主成分として含有し、さらに高沸点で難脱着な被吸着物質も共存する被処理水に対して、低コストで高効率で安定的に除去できると共に、吸着材の交換頻度を減らして経済性を高めた水処理装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、ついに本発明を完成するに到った。即ち本発明は、以下の通りである。
(1)二種以上の被吸着物質を含有する被処理水を接触させることで被吸着物質を吸着し、水蒸気を接触させることで吸着した被吸着物質を脱着する繊維状の吸着素子を含み、前記吸着素子に被処理水を供給することで被吸着物質を前記吸着素子に吸着させて処理水として排出する吸着工程と、前記吸着素子に低温水蒸気を供給することで被吸着物質を前記吸着素子から脱着させて、液化凝縮させ、被吸着物質を含有する水を濃縮水として排出する脱着工程とを有し、前記吸着工程と前記脱着工程を交互に繰返す吸脱着運転を実施して、被処理水から被吸着物質を除去して、水を清浄化するとともに、前記吸脱着運転を一定時間実施した後、前記吸着素子に高温水蒸気を供給することで前記吸着素子を再生させる再生工程を行い、その後吸脱着運転を再開することを特徴とする水処理装置。
(2)前記吸着工程と脱着工程の間に、ガスを供給して前記吸着素子に付着した余剰の被処理水を除去してこれを除去水として排出する(1)に記載の水処理装置。
(3)前記除去水の除去に使用するガスが水蒸気である(2)に記載の水処理装置。
(4)前記除去水が、被処理水として供給されるように構成された(2)または(3)に記載の水処理装置。
(5)前記低温水蒸気の温度が100℃以上140℃未満であり、前記高温水蒸気の温度が140℃以上450℃以下である(1)から(4)のいずれかに記載の水処理装置。
(6)前記二種以上の被吸着物質を含有する被処理水が、沸点140℃未満と140℃以上の被吸着物質をそれぞれ一種ずつ以上含む(1)から(5)のいずれかに記載の水処理装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明による水処理装置は、難脱着な被処理物質(以下、「難脱着物質」ということがある)が共存する水処理においても、被処理水中の被吸着物質を高い効率で連続的に除去するとともに、基本的に吸着材の交換の必要が無く、低コストに水を清浄化できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施に使用できる水処理装置の構成図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す図の実施の形態においては、同一または対応する部分については、適宜省略し、その説明についても繰り返さないことにする。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態における水処理装置のシステム構成図の1つである。
【0015】
本発明における被処理水は、二種以上の被吸着物質を含んでおり、低温水蒸気で脱着が容易な低沸点被吸着物質と低温水蒸気では脱着困難な難脱着物質が含まれている。
【0016】
水処理装置100は、吸着素子としての吸着材111、121がそれぞれ収容された第1処理槽110および第2処理槽120を有している。吸着材111、121は、被処理水を接触させることで被処理水に含有される被吸着物質を吸着する。したがって、水処理装置100においては、吸着材111、121に被処理水を供給することで被吸着物質が吸着材111、121によって吸着され、これにより被処理水が清浄化されて処理水として排出されることになる。吸着材111、121は、水蒸気を接触させることで吸着した被吸着物質が脱着される。第1処理層110および第2処理層120から排出される水蒸気と脱着された被吸着物質は、凝縮器130によって冷却凝縮されて、濃縮水として水処理装置100外へ排出される。
【0017】
第1処理槽110および第2処理槽120には、被処理水(原水)の供給ライン、処理水の排出ライン、低温水蒸気の供給ライン、高温水蒸気の供給ライン、濃縮水の排出ラインの配管が接続されており、各ラインにはバルブ等を用いて各処理槽に対して接続/非接続状態に切替えられる流路切替手段が接続された構成となっている。
【0018】
次に、低温水蒸気を使用した吸脱着運転(吸着工程と脱着工程の繰返し運転)について説明する。第1処理槽110と第2処理槽120とは、上述したバルブの開閉を操作することによって、交互に吸着槽および脱着槽として機能する。第1処理槽110が吸着槽として機能している場合には、第2処理槽120は脱着槽として機能する。具体的には、被処理水(原水)が第1処理槽110へ供給され、処理水が第1処理槽110から排出されるように流路が確保される場合は、第2処理槽120は低温水蒸気が供給され、濃縮水が第2処理槽120から排出される流路構成となる。本実施の形態における水処理装置100においては、吸着槽(吸着工程)と脱着槽(脱着工程)とが経時的に交互に切り替わるように構成されている。
【0019】
以上に説明した低温水蒸気を使用した吸脱着運転によって、低沸点被吸着物質は吸着材111、121に吸着されて被処理水から除去され、低温水蒸気によって吸着材111、121から脱着して濃縮水に含有されて排出する。難脱着物質は、低温水蒸気では脱着困難なため、基本的には濃縮水に含有せず、低温水蒸気による脱着後も吸着材111、112に残存する。
【0020】
次に、高温水蒸気を使用した再生について説明する。一定時間、低温水蒸気による吸脱着運転が実施されると、吸着材111、121に残存する難脱着物質の影響で、低沸点被吸着物質の吸着に必要な細孔が閉塞し、吸着効率が低下しはじめる。この段階で、第1処理槽110および第2処理槽120に高温水蒸気が供給され、吸着材111、121が再生される。具体的に第1処理槽110を用いて説明すると、高温水蒸気が第一処理槽へ供給されることによって、吸着材111に吸着した難脱着物質が吸着材111から脱着する事で低沸点被吸着物質の吸着に必要な細孔の閉塞がなくなり(再生)、脱着した難脱着物質は再生水に含有されて排出する。再生が完了すると、低温水蒸気を使用した吸脱着運転に移行する。
【0021】
図示しないが、水処理装置100は、吸着槽から脱着槽に切替わった際に、吸着材111、121に付着する水分を除去(脱水)して除去水として排出してから、脱着を開始する方が好ましい。吸着材111、121の付着水を事前に除去してから脱着を行う方が、脱着効率を高めることができるからである。付着水の除去手段は、自重抜き、圧縮空気・窒素・水蒸気などの高圧ガスでの高速パージ、真空ポンプなどを用いた吸引などの手段が使用できるが、水蒸気が好ましい。パージ処理によるパージガスが発生しないので、別途ガス処理装置を必要とせず、処理槽の予熱ができるので、脱着効率が高まるからである。
【0022】
また、除去水は被処理水へ返送され、再度処理されるような構成が好ましい。除去水を他の水処理装置で別途処理する必要がなくなるからである。
【0023】
また、
図1では二つの処理槽を用いて説明したが、処理槽数は特に限定しない。例えば、処理槽は単槽でも良く、脱着および再生中は被処理水をタンクなどに貯めて、脱着および再生後に吸着すれば良い。また、処理槽は三つでも良く、二つの処理槽が吸脱着運転をしている間に、残る一つの処理槽は再生を行い、これを順番に実施する方式でも良い。
【0024】
本発明の実施形態における低温水蒸気の温度は100℃以上140℃未満が好ましい。100℃未満では水蒸気が凝縮して脱着に必要な熱量が得られず、140℃以上の場合、二次的に水蒸気を加熱しなければならないので経済的に不利だからである。水蒸気の圧力は特に限定しない。
【0025】
本発明の実施形態における高温水蒸気の温度は140℃以上450℃以下が好ましい。140℃未満では難脱着物質の脱着が困難であり、450℃を越えると吸着材の脆化などのリスクが高くなるからである。高温水蒸気の供給方法は、高圧水蒸気を供給したり、二次的に低圧水蒸気を加熱して過熱水蒸気をする方法があり、特に限定はしないが、処理槽の耐圧構造を避ける観点から過熱水蒸気を採用する方が良い。
【0026】
本発明の実施形態における濃縮水は、被吸着物質の物性などに応じて適宜二次処理すれば良い。例えば、濃縮水を曝気処理して被吸着物質を揮発除去したあと、揮発した被吸着物質を含む曝気ガスを燃焼装置(例えば、触媒酸化装置)で燃焼処理する方法や、濃縮水を廃液燃焼装置にて処理する方法や、被吸着物質が有価物である場合は、蒸留設備や蒸発濃縮装置などで濃縮処理して再利用する方法がある。また、再生水についても、難脱着物質の物性などに応じて適宜二次処理すれば良い。上記濃縮水と混合して二次処理しても良いし、別々に二次処理しても良い。
【0027】
本発明の実施形態における低沸点被吸着物質は沸点140℃未満の被吸着物質とする。例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエチレン、イソプロピルアルコール、エタノール、ブタノール、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、1,4−ジオキサン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、ジオキソラン、酢酸、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ヘキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどである。
【0028】
本発明の実施形態における難脱着物質は沸点140℃以上の物質とする。前述の通り、有機ポリマー、有機オリゴマー、タンパク質、糖類、脂肪酸、脂肪酸エステル、アミン、アミド化合物、油脂、樹脂、界面活性剤、ダイオキシン類、高沸点溶剤などの有機物質や、硫酸塩、硫化物、鉄サビ等の無機物である。また、脱着中に重合反応を起こし、吸着材表面で樹脂化する有機物質も、難脱着物質に含む。例えば、シクロヘキサノン、アクリル酸エステル、エピクロロヒドリン、アジピン酸などである。
【0029】
以上において説明した水処理装置とすることにより、水処理装置100は、通常運転では、脱着に低温水蒸気を使用し、高温水蒸気は吸着材の再生が必要な時にのみ使用することで、使用ユーティリティー量の増大を防止しつつ、基本的に吸着材の交換が必要なく、被処理水から高効率に被吸着物質を除去することができる。
【0030】
また、以上において説明した本発明の実施の形態においては、ポンプ等の流体搬送手段やストレージタンク等の流体貯留手段などの構成要素を特に示すことなく説明を行なったが、これら構成要素は必要に応じて適宜の位置に配置すればよい。
【0031】
このように、今回開示した上記各実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【実施例】
【0032】
評価は下記の方法によりおこなった。
(BET比表面積)
BET比表面積は、液体窒素の沸点(−195.8℃)雰囲気下、相対圧力0.0〜0.15の範囲で上昇させたときの試料への窒素吸着量を数点測定し、BETプロットにより試料単位質量あたりの表面積(m
2/g)を求めた。
(被吸着物質除去効果)
被処理水は1,4−ジオキサン10mg/Lおよびサイクリックトリマー(CT)0.1mg/Lを含む水とした。サイクリックトリマーとは、ポリエチレンテレフタレート製造過程で生成される有機オリゴマーである。水処理装置の入出の1,4−ジオキサン、CT濃度を測定し、各被吸着物質排出量を算出して除去効果を確認した。
(被吸着物質濃度評価)
1,4−ジオキサンはガスクロマトグラフ法、CTは液体クロマトグラフ法により定量した。
【0033】
[実施例1]
システムとしては、
図1に示す実施の形態を使用した。
水処理装置の吸着材として、BET比表面積2000m
2/gの活性炭素繊維を使用した重量0.2kgの吸着素子を2個作成し、
図1の水処理装置に設置して、被処理水を処理水量50L/hになるように導入し、処理水を得た。
【0034】
次に、120℃の低温水蒸気を供給して吸着材の付着水を除去(脱水)した後、除去水は原水へ返送した。次に120℃の低温水蒸気を吸着材に供給し脱着を実施した。吸着素子から排出された脱着ガスは冷却凝縮後に濃縮水として回収した。吸着時間は20min、脱水時間は0.5min、脱着時間は2minの切替サイクルとして吸脱着運転を実施した。運転開始から10時間後の処理水中の1,4−ジオキサン濃度は0.05mg/L以下、CT濃度は0.01mg/L以下であった。
【0035】
運転開始から800時間後に、吸脱着運転を一時停止させ、120℃の低温水蒸気を電気ヒーターで300℃まで加温させた高温水蒸気を19.5min供給して再生を実施した。吸着素子から排出された再生ガスは冷却凝縮後に再生水として回収した。再生完了後、上記と同様の条件で吸脱着運転を再開させた。表1に示す通り、吸脱着運転の再開から200時間後(運転開始から約1000時間後)の処理水中の1,4−ジオキサン濃度は0.05mg/L以下、CT濃度は0.01mg/L以下であり、高効率に安定的に被吸着物質を除去することが可能であった。
【0036】
また、表2に示す通り、再生前後の吸着材を採取し、BET比表面積を測定したところ、再生前は1500m
2/g(表2の数値にあわせました)であるのに対し、再生後は2000m
2/gであり、高温水蒸気によって運転前の比表面積まで吸着材が再生されている。
【0037】
また、表3に示す通り、1000時間で脱着および再生に使用した低温水蒸気量は1120kg、高温水蒸気量は10kg、電気ヒーターの使用電力は0.2kwであった。
【0038】
[比較例1]
実施例1の水処理装置を高温水蒸気による再生なしで、1000時間の吸脱着運転を実施した。その際の処理水中の1,4−ジオキサン濃度は、表1に示す通り、5mg/Lと、実施例1の10倍の濃度であった。
【0039】
また、表2に示す通り、1000時間吸脱着運転後のBET比表面積を測定したところ、1500m
2/gであり、500m
2/gの比表面積が低減する結果となった。
【0040】
[比較例2]
実施例1の水処理装置を再生工程なしで、脱着工程に300℃の高温水蒸気を使用して1000時間吸脱着運転を実施した。その際の処理水中の1,4−ジオキサン濃度は0.05mg/L以下、CT濃度は0.01mg/L以下と、実施例1と同様の良好な性能であった。
【0041】
また、1000時間吸脱着運転後のBET比表面積を測定したところ、2000m
2/gであり、比表面積の低減はない結果となった。
【0042】
しかし、表3に示す通り、1000時間で脱着に使用した低温水蒸気量は360kg、高温水蒸気量は9000kg、電気ヒーターの使用電力は180kwと実施例1と比べて非常に熱源を使用する結果となった。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【符号の説明】
【0046】
100:水処理装置
110:第1処理槽
111:吸着材
120:第2処理槽
121:吸着材
130:凝縮器