特許第6414532号(P6414532)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6414532
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】位相検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/08 20060101AFI20181022BHJP
   H01Q 9/04 20060101ALI20181022BHJP
【FI】
   G01R29/08 F
   H01Q9/04
   G01R29/08 Z
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-202149(P2015-202149)
(22)【出願日】2015年10月13日
(65)【公開番号】特開2017-75801(P2017-75801A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2017年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100087723
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 修
(72)【発明者】
【氏名】田所 幸浩
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏哉
【審査官】 山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第08384372(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0057734(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0271003(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/08
H01Q 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波の位相を検出する位相検出装置において、
支持導体と、
前記支持導体に一端が固定されて、前記電磁波の電界により、長さ方向に垂直な変位成分を有して振動する線状導電体と、
前記線状導電体の長さ方向に垂直な成分を有する静電力を前記線状導電体に印加する制御電極と、
前記線状導電体の前記振動に基づいて生起される振動信号を検出する検出電極と、
前記線状導電体と前記制御電極との間に交流の制御電圧を印加する電源と、
前記検出電極により検出された振動信号の振幅から前記電磁波の位相を検出する位相検出器と、
を有することを特徴とする位相検出装置。
【請求項2】
前記線状導電体は、前記支持導体に固定された固定端とは反対側の他端を自由端とし、前記検出電極は、前記自由端と対面して前記自由端と微小間隙を隔てて設けられており、
前記支持導体と、前記検出電極との間に、電圧を印加するバイアス電源を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の位相検出装置。
【請求項3】
前記バイアス電源は、電圧を可変できる直流電源であることを特徴とする請求項2に記載の位相検出装置。
【請求項4】
前記線状導電体の共振周波数が前記電磁波の周波数に一致するように、前記バイアス電源の電圧が調整されていることを特徴とする請求項3に記載の位相検出装置。
【請求項5】
前記支持導体は第1支持導体と第2支持導体とから成り、前記線状導電体は一端が前記第1支持導体に固定され、他端が前記第2支持導体に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の位相検出装置。
【請求項6】
前記検出電極は、前記線状導電体との間の静電容量を検出することで、前記振動信号を検出することを特徴とする請求項5に記載の位相検出装置。
【請求項7】
前記制御電極は、前記検出電極を兼ねることを特徴とする請求項6に記載の位相検出装置。
【請求項8】
前記制御電圧は、任意の直流電圧でバイアスされた交流電圧であることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の位相検出装置。
【請求項9】
前記直流電圧は、前記線状導電体の共振周波数が前記電磁波の周波数に一致するように調整されていることを特徴とする請求項8に記載の位相検出装置。
【請求項10】
前記制御電圧の周波数は、前記線状導電体の共振周波数に等しく設定されることを特徴とする請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載の位相検出装置。
【請求項11】
前記位相検出器は、前記振動信号の第2高調波の振幅から前記電磁波の位相を検出することを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載の位相検出装置。
【請求項12】
前記線状導電体は、カーボンナノチューブ、金属ワイヤ、又は、導電性シリコンであることを特徴とする請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載の位相検出装置。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12の何れか1項に記載の前記支持導体、前記線状導電体、及び、前記検出電極とを、少なくとも有して前記電磁波を前記線状導電体で受信して前記検出電極から前記電磁波に基づく前記振動信号を電圧の電磁波検出信号として出力する電磁波検出ユニットと、
請求項1乃至請求項12の何れか1項に記載の前記支持導体、前記線状導電体、前記制御電極、前記検出電極、及び、前記電源とを少なくとも有し、前記制御電圧の周波数を前記電磁波の周波数に一致させ、前記電磁波を遮蔽させた状態とし、前記検出電極から前記制御電圧に基づく前記振動信号を電圧の参照信号として出力する参照信号出力ユニットと、
請求項1乃至請求項12の何れか1項に記載の前記支持導体、前記線状導電体、前記制御電極、前記検出電極、及び、前記位相検出器とを少なくとも有し、さらに、前記線状導電体に対して、前記制御電極の配置位置と反対側であって前記制御電極と平行に配置された付加制御電極とを有した位相検出ユニットと、
から成り、
前記電磁波検出ユニットの出力する前記電磁波検出信号を前記制御電極に印加し、前記参照信号出力ユニットの出力する前記参照信号を前記付加制御電極に印加するようにした
ことを特徴とする位相検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小構造で電磁波の位相を検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、非特許文献1には、微小構造で高感度の検波器として、線状に伸びたカーボンナノチューブを、その一端を固定端として陰極に固定し、他端を自由端として、その自由端を平面状の陽極に対面させ、陽極と陰極間に直流バイアス電圧を印加した検波器が知られている。この装置では、カーボンナノチューブの自由端から陽極に向けて、電子の電界放出によるトンネル電流が流れ、その電流の大きさがカーボンナノチューブの自由端と陽極間の距離に応じて変化する。そして、一端を固定されたカーボンナノチューブの片持ち梁は、固有の機械的な共振周波数を有しており、到来波の周波数がその共振周波数に一致するとき、カーボンナノチューブは固定端を中心にして円弧状に大きく振動する。この共振周波数を変化させることができれば、ラジオ波の選局が可能となる。
【0003】
また、カーボンナノチューブの先端には、直流バイアス電圧により電荷がチャージされている。カーボンナノチューブが固定端から直線を中心軸として伸びているとして、先端の電荷は到来波の電界により力を受ける。この力は、到来波の電界のカーボンナノチューブの中心軸に垂直な成分(以下、「垂直成分」という)の大きさに比例する。カーボンナノチューブは、到来波が存在すると、選局状態で、中心軸の両側に同一振幅で大きく振動することになる。この振動により、カーボンナノチューブの自由端と陽極間の距離は、到来電波の2倍の周波数で振動し、その振動の振幅は到来波の電界の垂直成分に比例する。これにより、トンネル電流も、到来波の周波数の2倍の周波数で振動し、その振幅も到来波の電界の垂直成分に比例する。特許文献1、非特許文献1は、このような原理を用いてカーボンナノチューブ、陰極、陽極、及び直流バイアス電源だけで、ラジオ波を検波する装置を提案している。
【0004】
さらに、非特許文献2によると、非特許文献1に記載された構造の他に、カーボンナノチューブに平行に電極を設けて、この電極に電圧V0 で直流バイアスされ、到来波の周波数の2倍の周波数で振幅Vp の交流電圧を印加するようにした装置が開示されている。この装置では、直流バイアス電圧V0 と振幅Vp の値により、カーボンナノチューブの振動の振幅が変化できる、すなわち、利得が制御できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】US8,717,046 B2
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】K.Jensen, J.Weldon, H.Garcia, and A.Zettl, "Nanotube Radio," Nano Letters, vol.7, no.11, pp.3508-3511, Nov. 2007.
【非特許文献2】BJ Aleman, A Sussman, W Mickelson and A Zettl, "A Carbon Nanotube-based NEMS Parametric Amplifier for Enhanced Radio Wave Detection and Electonic Signal Amplification" Journal of Physics: Conference Series 302(2011)012001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電磁波の位相を検出するには、各種の電子回路が用いられている。例えば、PLLを用いた同期検波と直交復調とを用いて、正確に位相情報を得ることができる。
本発明は、このような電子回路を用いることなく新たな原理を利用して、超小型の機構により、電磁波の位相を感度良く検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の発明は、電磁波の位相を検出する位相検出装置において、支持導体と、支持導体に一端が固定されて、電磁波の電界により、長さ方向に垂直な変位成分を有して振動する線状導電体と、線状導電体の長さ方向に垂直な成分を有する静電力を線状導電体に印加する制御電極と、線状導電体の振動に基づいて生起される振動信号を検出する検出電極と、線状導電体と制御電極との間に交流の制御電圧を印加する電源と、検出電極により検出された振動信号の振幅から電磁波の位相を検出する位相検出器と、を有することを特徴とする位相検出装置である。
【0009】
本発明において、支持導体の形状は任意である。線状導電体に電圧を印加できるものであれば任意である。また、線状導電体には、カーボンナノチューブ、金属ワイヤ、又は、導電性シリコンでなど、電磁波により屈曲振動できる電気電導性のあるものを採用することができる。また、線状導電体は一端が支持導体に固定され、他端を振動可能な自由端とした片持ち梁、両端を第1支持導体と第2支持導体とに固定して、中央部が振動可能な状態とした両持ち梁であっても良い。
【0010】
線状導電体を片持ち梁とした場合には、次の構成を採用することができる。
すなわち、上記の第1の発明に加えて、線状導電体は、支持導体に固定された固定端とは反対側の他端を自由端とし、検出電極は、自由端と対面して自由端と微小間隙を隔てて設けられており、支持導体と、検出電極との間に、電圧を印加するバイアス電源を有する位相検出装置としても良い。この構造は、線状導電体の自由端から電子が検出電極に向けて電界放出されて、トンネル電流が流れ、このトンネル電流の大きさが自由端の変位に依存することを利用するものである。この装置により、電磁波と制御電圧との位相差により、電磁波の位相が検出される。
【0011】
また、この構成において、バイアス電源は、電圧を可変できる直流電源としても良い。線状導電体には電子が蓄積され、自由端は検出電極の方にクーロン力を受ける。線状導電体の弾性定数は、このクーロン力に依存し、このクーロン力は、この電圧により変化させることができる。したがって、バイアス電源の電圧により、線状導電体の弾性定数を変化させて、線状導電体の共振周波数を変化させることができる。すなわち、線状導電体が感応する電磁波の周波数を選択することかできる。したがって、本発明において、線状導電体の共振周波数が電磁波の周波数に一致するように、バイアス電源の電圧が調整されていることが望ましい。線状導電体を共振させることで受信感度を大きくすることができる。また、位相検出器は、振動信号のベースバンド信号、基本周波数や第2高調波の振幅から電磁波の位相を検出するようにしても良い。
【0012】
また、線状導電体を両持ち梁とした場合には、次の構成を採用することができる。
すなわち、上記の第1の発明において、支持導体は第1支持導体と第2支持導体とから成り、線状導電体は一端が第1支持導体に固定され、他端が第2支持導体に固定された位相検出装置とすることができる。この構造では、線状導電体の長さ方向の中点が最大振幅となるように、電磁波に応じて振動する。検出電極はこの部分の振動による変位を検出することになる。例えば、検出電極は、線状導電体との間の静電容量を検出することで、振動信号を検出する構造とすることができる。検出電極は、線状導電体に平行であって、その線状導電体に対して制御電極とは反対側に設けも良い。また、制御電極は、検出電極を兼ねるようにしても良い。制御電極に印加する制御電圧の周波数と検出電極により検出される振動信号の周波数とが異なるようにすれば、制御電極と検出電極とが共通であっても振動信号を分離抽出することができる。
【0013】
また、本発明において、制御電圧は、任意の直流電圧でバイアスされた交流電圧とすることができる。そして、その直流電圧は、線状導電体の共振周波数が電磁波の周波数に一致するように調整されていることが望ましい。制御電圧が印加された制御電極により、線状導電体の長さ方向に垂直な成分を有する電界が発生する。この電界により線状導電体はクーロン力を受ける。制御電圧の直流電圧は、一定のクローン力を線状導電体に与えることになり、この直流電圧を変化させることにより、線状導電体の弾性定数を変化させることができる。また、制御電圧の周波数は、線状導電体の共振周波数に等しく設定されることが望ましい。すなわち、受信する電磁波の周波数と制御電圧の周波数と線状導電体の共振周波数とを一致させることが、検出感度を大きくする上で望ましい。また、電磁波の周波数と制御電圧の周波数を一致させることは、位相検出の精度を向上させる上で必要である。
【0014】
また、第2の発明は、第1の発明における支持導体、線状導電体、及び、検出電極とを、少なくとも有して電磁波を線状導電体で受信して検出電極から電磁波に基づく振動信号を電圧の電磁波検出信号として出力する電磁波検出ユニットと、第1の発明における支持導体、線状導電体、制御電極、検出電極、及び、電源とを少なくとも有し、制御電圧の周波数を電磁波の周波数に一致させ、電磁波を遮蔽させた状態とし、検出電極から制御電圧に基づく振動信号を電圧の参照信号として出力する参照信号出力ユニットと、第1の発明における支持導体、線状導電体、制御電極、検出電極、及び、位相検出器とを少なくとも有し、さらに、線状導電体に対して、制御電極の配置位置と反対側であって制御電極と平行に配置された付加制御電極とを有した位相検出ユニットと、から成り、電磁波検出ユニットの出力する電磁波検出信号を制御電極に印加し、参照信号出力ユニットの出力する参照信号を付加制御電極に印加するようにしたことを特徴とする位相検出装置である。
【0015】
この構成においては、電磁波検出ユニットからは電磁波のみによって生じた振動信号が電磁波検出信号として出力され、参照信号出力ユニットからは制御電圧にのによって生じた振動信号が参照信号として出力される。そして、位相検出ユニットの制御電極には電磁波検出信号が印加され、付加制御電極には参照信号が印加される。制御電極と付加制御電極と線状導電体とは平行である。この結果、制御電極により生じる電界の方向と、付加制御電極により生じる電界の方向とは平行であり、線状導電体の長さ方向に垂直となる。この結果、電磁波検出信号と参照信号との位相差に応じて、両電極により生じる合成電界の振幅が変動し、線状導電体の振幅を位相差に応じて変化させることができる。この結果、電磁波の位相の検出感度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、電磁波による電界と制御電極により生起される電界との合成電界を、線状導電体に印加するようにして、線状導電体の振動に基づいて発生する振動信号から電磁波の位相を検出するものである。振動信号は、合成電界に対して非線形性を有する。これにより、電磁波と制御電圧との位相差を感度良く検出することができる。また、線状導電体の共振周波数が比較的低いことから、ラジオ波のような比較的低周波であっても、大きなアンテナを用いずに、サブマイクロスケールの超小型装置として、位相を検波することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の具体的な一実施例に係る信号制御装置を示した構成図。
図2】同実施例におけるカーボンナノチューブ先端と陽極間の距離の増加量Δhと、先端のx座標及びカーボンナノチューブの長さLとの関係を示した説明図。
図3】同実施例装置の第1信号源の出力する電圧とカーボンナノチューブの張力との関係を示した特性図。
図4】同実施例装置の第1信号源の出力する電圧とカーボンナノチューブの自由端の振動モードに関与する弾性定数との関係を示した特性図。
図5】Euler-Bernoulli beam Theory により求めた、検出電極が出力する振動電流が位相により変化することを示した波形図。
図6】同じくEuler-Bernoulli beam Theory により求めた、検出電極が出力する振動電流が位相により変化することを示した波形図。
図7】同じくEuler-Bernoulli beam Theory により求め、検出電極が出力する振動電流の第2高調波の位相と電力スペクトルとの関係を示す特性図。
図8】本発明の具体的な実施例2に係る信号制御装置を示した構成図。
図9】本発明の具体的な実施例3に係る信号制御装置を示した構成図。
図10】本発明の具体的な実施例4に係る信号制御装置を示した構成図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。本発明は下記の実施例に限定されない。
【実施例1】
【0019】
図1は、位相検出装置1を示した構成図である。直線状にy軸方向に伸びたカーボンナノチューブ(以下、「CNT」と記す)14は、その一端を固定端141として、平板状の陰極10の一面10aに固定されている。CNT14の他端は自由端142である。この自由端142に対面するように平板状の陽極12が設けられている。CNT14は線状導電体、陰極10は支持導体、陽極12は検出電極である。
【0020】
陰極10と陽極12との間に直流電圧を印加するバイアス電源16が接続されている。また、CNT14の中心軸(y軸)に平行に平板状の制御電極15が設けられている。この制御電極15には、交流の制御電圧を出力する制御電源17が接続されている。制御電極15は、制御電源17の出力に応じて、CNT14の中心軸に垂直な方向(x軸方向)に交流の制御電界Eref を発生させる。また、外部から到来する電磁波は、CNT14の中心軸とその中心軸の垂直方向とに垂直な方向(−z軸方向、図1の紙面に垂直な方向)からxy面に垂直に入射し、その電界Erad はCNT14の中心軸に垂直な方向(x軸方向)に平行とする。これにより、CNT14の中心軸の位置に、制御電界Eref と到来電磁波の電界Erad との合成電界Ed が形成される。その合成電界Ed によりCNT14の自由端付近に蓄積された電荷がクーロン力を受けて、CNT14は、その中心軸(y軸)を中心にして、その中心軸に垂直な方向(x軸方向)に振動する。また、陰極10と陽極12とを接続する線路18には分岐器19が挿入されており、分岐器19の分岐端子20からCNT14の振動により生じた振動信号u(t)が出力される。さらに、分岐端子20には帯域通過フィルタ41と包絡線検波器42が接続されている。包絡線検波器42の出力w(t)が、求める位相信号Rθ(t)である。
【0021】
次に、本実施例に係る位相検出装置1の作用について説明する。バイアス電源16の出力電圧Vext は、可変直流電圧とする。また、制御電源17の出力する交流電圧は、単一余弦波とする。
【0022】
1.電界放出(トンネル伝導)
CNT14の先端の自由端142と、それと対向する陽極12との間隔(以下、この間隔を「自由端距離」という)をh(t)とする。自由端距離h(t)を時間の関数とするのは、後述するようにCNT14の自由端142がx軸方向に振動するため、その自由端距離が時間と共に変化するためである。
良く知られたように、自由端142から陽極12に向けて電子が電界放出されることによって、線路18に流れる電流I(t)は、(1)式で表される。
【数1】
ただし、As はCNT14の自由端142における中心軸に垂直な断面の面積、c1 ,c2 は、基礎的定数とCNT14の仕事関数により決定される係数である。c1 =3.4×10-5A/V2 ,c2 =7.0×1010V/mである。Eg (h)は、バイアス電源16の出力電圧Vext によって生じる自由端142の表面近傍の電界(以下、「自由端表面電界」という)であり、自由端距離h(t)の関数である。
【0023】
h(t)は、CNT14が湾曲振動して、自由端142がx軸方向に時間tの経過と共に振動する時に、自由端142と陽極12との距離である。h(t)は一次近似として(2)式で表される。
【数2】
また、h0 は、図2に示すように、CNT14が湾曲しておらず直線状態でy軸に平行な状態での自由端142と陽極12との距離、すなわち、自由端距離の最小値である。Δh(t)は、自由端142がx軸方向に時間tの経過と共に湾曲して振動する時の自由端距離のh0 に対する増加量である。なお、Δh(t)>0である。
【0024】
自由端表面電界Eg (h)は、自由端距離hの関数であり、一次近似として(3)式で表すことができる。Egoは、CNT14が湾曲しておらず直線状態でy軸に平行な状態における自由端表面電界である。また、CNT14が湾曲して自由端142がx軸方向に振動して、自由端距離h(t)がΔh(t)だけ増加した時の自由端表面電界のEgoに対する増加量ΔEg (h)は(4)式で表される。ただし、自由端距離h(t)が大きくなると、自由端表面電界Eg (h)は減少するので、Δh(t)>0に対し、ΔEg (h)<0である。
【数3】
【数4】
【0025】
また、トンネル電流I(t)は、CNT14が湾曲しておらず直線状態でy軸に平行な状態でのトンネル電流I0 と、すなわち、トンネル電流I(t)の最大値と、CNT14が湾曲して自由端142がx軸方向に振動して、自由端距離がΔh(t)だけ増加する時のトンネル電流の増加量ΔI(t)を用いて、一次近似として(5)式で定義される。ただし、ΔI(t)<0である。
電流I0 は、自由端表面電界がEg0の時の電流であるので、(1)式により、(6)式で表される。増加量ΔI(t)は、(1)式を自由端表面電界Eg に関して一次展開して、(7)式で与えられる。
【数5】
【数6】
【数7】
(7)式に(4)式の増加量ΔEg (h)と増加量Δh(t)との関係を用いれば、トンネル電流I(t)の増加量ΔI(t)は、(8)式で表される。
【数8】
【0026】
2.CNT14の振動
到来電磁波を単一周波数の余弦波とすると、CNT14の中心軸の位置でのx軸方向の電界Erad は、(9)式で表すことができる。
【数9】
ただし、aは、電磁波の電界Erad (t)の振幅、θは、位相である。ただし、位相θは、後述する制御電界Eref (t)の位相を基準にした位相である。
また、制御電源17の出力する制御電圧は直流バイアスされた交流電圧とし、周波数は到来電磁波の周波数に等しく設定されている。制御電極15によって、CNT14の中心軸の位置で、その中心軸に垂直な方向(x軸方向)に生起される交流の制御電界をEref (t)とする。Eref (t)は(10)式で表される。
【数10】
ただし、bは、制御電界Eref (t)の振幅、Cは、制御電圧の直流バイアスに相当した電界の直流成分である。制御電界Eref (t)の位相を基準としているので、位相は0で表されている。
【0027】
また、CNT14の中心軸の位置における制御電界Eref (t)と到来電磁波の電界Erad (t)との合成電界Ed (t)は、(11)式で表される。簡単のため、Eref とErad とはx成分のみ有しているとしている。
【数11】
ただし、Dは、合成電界Ed (t)の振幅、αは位相、Cは直流成分である。
振幅Dは、(12)式、位相αは(13)式で表される。
【数12】
【数13】
【0028】
CNT14は、141を固定端、142を自由端とする片持ち梁であるので、合成電界Ed により、CNT14の自由端142付近に蓄積される負電荷Qはクーロン力を受けて、中心軸に垂直なx軸方向に湾曲し、その自由端142は、合成電界Ed の極性の変化に応じて、x軸方向に振動する。この振動における自由端142のx座標に関する運動方程式は、(14)式で与えられる。ただし、自由端距離h(t)がx座標の振幅に比べて十分に大きい場合を想定している。
【数14】
ただし、mはCNT14の有効質量、sはダンピング係数、kは弾性定数、QはCNT14の自由端142における蓄積電荷量である。kは弾性定数は、(15)式で与えられる。ただし、弾性定数は、2次以上の非線形項が小さく、一定と見做せる場合である。したがって、説明を簡単にするために、CNT14の自由端142のx座標は、(14)式のように線形の運動法定式で近似されるものとする。
【数15】
ただし、Yはヤング率、PはCNT14の慣性モーメント、LはCNT14の長さである。
【0029】
(14)式の微分方程式の解である、自由端142のx座標x(t)は、(16)式で表される。
【数16】
振幅Bは、(17)式、位相α+φは(18)式、位相φは(19)式で表される。
【数17】
【数18】
【数19】
【0030】
また、CNT14の自由端142の振動に関して、(20)式で表される共振角周波数(以下、単に、「共振周波数」という)ω0 が存在し、共振状態の振幅B0 は、(21)式で表され、共振状態の位相φ0 は、(22)式で表される。
【数20】
【数21】
【数22】
【0031】
そして、合成電界Ed の角周波数(以下、単に、「周波数」という)が、共振周波数ω0 に等しい時、自由端142のx座標xreso(t)は、(23)式で表される。なお、この場合は、到来電磁波の周波数と制御電圧の周波数も共鳴周波数に等しい場合である。
【数23】
【0032】
3.位相検出
トンネル電流I(t)の増加量ΔI(t)は、(8)式から明らかなように、増加量Δh(t)に依存する。自由端142の振動を、CNT14を剛体と仮定し、固定端141を中心とした正負方向の微小量回転振動で近似する。Δh(t)は、図2に示すように、ピタゴラスの定理により、自由端142の位置x(t)とCNT14の長さLとを用いて、(24)式で表される。
【数24】
その近似式は(25)式となる。
【数25】
【0033】
ΔI(t)を表す(8)式に、(25)式を代入すると、ΔI(t)は、(26)式で表される。(28)式で定義される定数Gを用いると、ΔI(t)は、(27)式のように、自由端142のx座標の2乗に比例する。ただし、自由端距離h(t)が増加すると、自由端表面電界Eg は減少するので、∂Eb /∂hは負、定数Gは正として定義されている。
【数26】
【数27】
【数28】
(16)式のx(t)を(27)式に代入して(29)式が得られる。
【数29】
また、合成電界Ed の周波数を共振周波数ω0 として、CNT14を共振状態とすると、共振状態での自由端142のx座標を表す(23)式を(27)式に代入して、(30)式が得られる。
【数30】
【0034】
このように、トンネル電流の増加量ΔI(t)は、周波数ωと2ω(共振状態では2ω0 とω0 )の成分と、直流成分とを有している。(12)式から明らかなように、到来電磁波の位相θにより、合成電界Ed の振幅Dが変化する。分岐器19の分岐端子20から出力される振動信号u(t)は、ΔI(t)である。制御電界Eref の直流成分Cが0の場合には、ΔI(t)は第2高調波(2ω、2ω0 )の成分だけとなる。
【0035】
簡単のために、以下、CNT14が共振状態にある場合で説明する。また、到来電磁波は位相変調されているものとし、本実施例の位相検出装置1において、位相変調信号が復調されることを示す。(9)式で表される電磁波の電界Erad (t)の位相θが変調信号θ(t)である。位相変調されているので、変調指数が十分に小さく、θ(t)の変動幅は十分に小さいと仮定できる。また、(11)式の制御電界Eref において、cos(ωt)に代えて、正弦関数の-bsin(ωt)とすれば、合成電界Ed (t)の振幅Dは、(12)式において、cos(θ) を、sin(θ) に置き換えた式で表される。これは、単に、電磁波の搬送波の位相に対して、制御電圧の位相をπ/2だけ変化させたに過ぎない。
【0036】
したがって、振動信号ΔI(t)を帯域通過フィルタ41に通過させて、第2高調波2ω0 だけを抽出した信号v(t)は、(31)式で表される。
【数31】
この信号v(t)を包絡線検波器42に入力させることで、v(t)の振幅w(t)を得ることができる。位相変調のため、θ(t)は十分に小さいことを想定しているので、w(t)は、(32)式となる。Rは定数である。すなわち、包絡線検波器42の出力w(t)により、変調信号θ(t)を得ることができる。
【数32】
【0037】
なお、(30)式から明らかなように、振動信号ΔI(t)からベースバンドだけを抽出すると、(QD/sωo 2 の項から得られる信号は、(31)式の振幅自体であるので、(32)式のRθ(t)の位相変調信号が復調されることになる。このように振動信号ΔI(t)のベースバンド帯域を抽出することでも、位相変調信号θ(t)を復調することができる。
【0038】
また、制御電界Eref に直流バイアス電圧Cが存在すると、(30)式から明らかなように、一次の項(ω0 )にDが表れる。したがって、振動信号ΔI(t)から周波数ω0 の帯域を抽出することで、同様に、位相変調信号θ(t)を復調することができる。
【0039】
共振周波数ω0 の制御は次のようにして行うことができる。
(20)式から明らかなように共振周波数ω0 はCNT14の弾性定数kに依存する。この弾性定数kは、バイアス電源16の電圧Vext に依存する。図3に示すように、電圧Vext (バイアス電圧)が大きくなる程、CNT14の自由端142は陽極12から大きな引力を受け、CNT14は、中心軸方向のy軸方向に引っ張り応力(張力)が印加される。中心軸方向の引っ張り応力が大きい程、図4に示すように、自由端142の中心軸に垂直なx軸方向の弾性定数kは大きくなる。すなわち、弾性定数kは、k=g(Vext )であり、バイアス電源16の電圧Vext の関数となる。
このようにして、バイアス電源16の電圧Vext を制御することで、CNT14の共振周波数ω0 を到来電磁波の周波数に選択的に一致させることができ、検出する振動信号の利得を大きくすることができるる。すなわち、到来電磁波の選局が可能となる。
【0040】
また、位相変調と周波数変調は等価であるので、到来電磁波が周波数変調信号である場合にも、上記に説明した通り、変調信号を復調することができる。
【0041】
上記の説明では、CNT14の自由端142のx軸方向の運動方程式は(14)式のように線形で表されるとした。しかしながら、弾性定数kが変位xの関数となり、正確には、非線形方程式となり解析解は求まらない。そこで、数値計算により非線形方程式を解き、振動電流ΔI(t)((30)式相当)を求めた。その結果を図5、6に示す。図5図6との差異は、到来電磁波の電界Erad の位相θを変化させたことにより生じている。包絡線の振幅が位相θにより変化していることが分かる。包絡線の振幅の時間変化が(32)式のθ(t)に相当している。
【0042】
また、同様な数値計算により、振動電流ΔI(t)の第2高調波(2ω0 )の電力スペクトルの位相θに対する変化特性を求めた。結果を図7に示す。到来電磁波Erad の位相θにより電力スペクトルが周期的に変化していることが分かる。このことからも、振動電流ΔI(t)から到来電磁波の電界Erad に含まれる位相情報を得ることができることが理解される。
【0043】
制御電圧の位相は、(32)式の復調後の信号w(t)の振幅が大きくなるようにフィードバック制御すれば良い。この振幅が最大となる場合が、到来電磁波の搬送波の位相と制御電圧の位相との差がπ/2となるときである。
また、上述した位相検出装置を2つ平行に近接して設けて、それぞれに与える制御電圧をsin(ωt+β) 、cos(ωt+β) として、位相βを変化させたときに、cos(ωt+β) を制御電圧としたときの、振動電流ΔI(t)の第2高調波が0となるように位相βを決定して、そのときの制御電圧をsin(ωt+β) とした装置の(32)式のw(t)を求める復調信号とすれば、位相信号を感度良く復調することができる。すなわち、これは、電磁波を直交復調することに相当する。
なお、本発明では、通信波、放送波だけでなく、CNT14が感応する周波数の電磁波であれば、任意である。また、位相変調信号θ(t)は、アナログでも、QPSK、QAMなどのディデタル変調信号であっても良い。その場合には、データ送信のプリアンブルとして、隣接するシンボル間の位相差が既知のパイロット信号を送信して、復調時に、検出された位相差が所定の値となるように、制御電圧の位相を変化させることで、正確な位相データの復調が可能となる。
【実施例2】
【0044】
図8は、実施例2に係る位相検出装置である。実施例1の装置と異なる点は、CNT14を中心軸として、制御電極15の位置と対称位置にアース電極30を設けたことが特徴である。この構成により、制御電極15が生起する制御電界Eref を正確にx軸に平行、すなわち、CNT14の中心軸に垂直とすることができる。到来電磁波による電界Erad との合成電界を大きくでき、CNT14の自由端142のx軸方向の振動を効率良く行うことができる。他の構成は、実施例1と同一である。
【実施例3】
【0045】
次に、実施例3に係る位相検出装置2について説明する。
図9において、電磁波検出ユニットUa、参照信号出力ユニットUb、位相検出ユニットUcは、いずれも、図1に示す位相検出器1と同様な構成をしている。バイアス電源16、CNT14、陰極10、陽極12、制御電極15、制御電源17、帯域通過フィルタ41について、対応する部材には同一数字を付し、各ユニット毎の識別符号a,b,cを付している。電磁波検出ユニットUaと参照信号出力ユニットUbは、包絡線検波器42は有していない。位相検出ユニットUcは、制御電極15cと、さらに、CNT14cに対して制御電極15cの反対側に付加制御電極15caを有している。制御電極15c、CNT14c、付加制御電極15caは、相互に平行である。また、位相検出ユニットUcは,帯域通過フィルタ41cと包絡線検波器42cとを有している。
【0046】
電磁波検出ユニットUaは、制御電極がなく制御電界Eref がCNT14aには印加されていない。この場合は、(10)、(11)式において、b=0、C=0、D=aの場合であり、(13)式からα=θである。よって、電磁波検出ユニットUaの出力する振動電流ΔIa(t)は、(30)式において、D=a、α=θと置いた式となる。したがって、電磁波検出ユニットUaの出力する振動電流ΔIa(t)は、到来電磁波にのみ基づく信号となる。
【0047】
参照信号出力ユニットUbは、到来電磁波を遮蔽する構造であり、CNT14bはこの到来電磁波に感応せず、制御電界Eref にのみ感応して振動する。この場合は、(10)、(11)式において、a=0、θ=0、α=0、D=bの場合である。よって、参照信号出力ユニットUbの出力する振動電流ΔIb(t)は、(30)式において、α=0、D=bと置いた式となる。したがって、参照信号出力ユニットUbの出力する振動電流ΔIb(t)は、制御電界Eref にのみ基づく信号となる。
【0048】
帯域通過フィルタ41a、41bは第2高調波(2ω0 )の帯域を通過させるフィルタである。電磁波検出ユニットUaの出力する振動信号ΔIa(t)の第2高調波va (t)は、(33)式のように表される。
【数33】
【0049】
この第2高調波va (t)は、電流電圧変換器51により電圧に変換されて、位相検出ユニットUcの制御電極15cに印加される。参照信号出力ユニットUbの出力する振動信号ΔIb(t)の第2高調波vb (t)は、(34)式のように表される。この第2高調波vb (t)は、電流電圧変換器52により電圧に変換されて、位相検出ユニットUcの制御電極15caに印加される。
【数34】
【0050】
したがって、制御電極15cにより生起される電界Erad は、(9)式に代えて(33)式に比例した関数となり、付加制御電極15caにより生起される電界Eref は、(10)式に代えて(34)式に比例した関数となる。したがって、CNT14cの中心軸における合成電界Ed の振幅Dにおけるa,bは、それぞれ、(33),(34)式の第2高調波の係数に置換した式で表される。また、合成電界Ed は、(11)式において、C=0、ω=2ω0 と置いた式で表される。したがって、位相検出ユニットUcの振動信号ΔIc(t)は、(30)式において、(12)式において新たに定義されるD’をDとおき、ω0 を2ω0 と置いた式で表される。また、帯域通過フィルタ41cを第4高調波(4ω0 )の帯域を通過させるフィルタとすれば、抽出信号vc (t)は、(35)式で表される。ただし、実施例1の場合と同様に、参照信号出力ユニットUbの制御電極17bに印加する制御電圧と、到来電磁波の搬送波の位相がπ/2だけ異なるとした場合である。このような関係を実現する方法は、実施例1で説明した。よって、包絡線検波器42cの出力は、(32)式で表されるベースバンドの復調信号Rθ(t)となる。
【数35】
【実施例4】
【0051】
本実施例は、図10に示すように、CNT14を両持ち梁で構成した場合である。図10において、CNT14の端部は、第1支持導体51と第2支持導体52にそれぞれ固定されている。第1支持導体51と第2支持導体52は接地されている。制御電極15と制御電源17は、実施例1と同様に構成されている。したがって、CNT14は、実施例1と同様に、到来電磁波による電界Erad と、制御電極15により生起される制御電界Eref との合成電界Ed によりCNT14の長さに垂直なx軸方向に振動する。この振動をCNT14と平行に設けられた検出電極53により容量の変化として検出する。容量はCNT14cの自由端のx座標に関して線形ではない。したがって、高調波成分が表れ、上述したのと同様に、検出電極53の検出する振動電流は、(30)式と類似した式で表される。
【0052】
なお、検出電極53を設けずに、制御電極15を流れる電流から第2高調波を分離するようにしても良い。第2高調波の帯域を通過する帯域通過フィルタを用いれば、制御電圧の周波数ωから分離して、CNTの振動により生じた振動電流の第2高調波を分離でき、位相変調信号θ(t)を復調することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
高感度、超小型の位相検出装置を実現することができる。
【符号の説明】
【0054】
1,2…位相検出装置
10…陰極
12…陽極
14…CNT
141…固定端
142自由端
15…制御電極
16…バイアス電源
17…制御電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10