特許第6414545号(P6414545)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三洋電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6414545-非水電解質二次電池 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6414545
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20181022BHJP
   H01M 10/058 20100101ALN20181022BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20181022BHJP
【FI】
   H01M4/13
   !H01M10/058
   !H01M10/052
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-502744(P2015-502744)
(86)(22)【出願日】2014年2月10日
(86)【国際出願番号】JP2014000691
(87)【国際公開番号】WO2014132578
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2016年3月10日
(31)【優先権主張番号】特願2013-38095(P2013-38095)
(32)【優先日】2013年2月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104732
【弁理士】
【氏名又は名称】徳田 佳昭
(74)【代理人】
【識別番号】100116078
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 浩希
(72)【発明者】
【氏名】小林 径
(72)【発明者】
【氏名】平岡 樹
(72)【発明者】
【氏名】白神 匡洋
(72)【発明者】
【氏名】砂野 泰三
【審査官】 瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/068767(WO,A1)
【文献】 特開平11−144706(JP,A)
【文献】 国際公開第1999/026306(WO,A1)
【文献】 特開2011−029075(JP,A)
【文献】 特開2013−125697(JP,A)
【文献】 特開2012−216385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/14−2/18、4/00−4/62、
10/05−10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水電解質二次電池であって、
正極と、負極と、前記負極上に配置された多孔質層と、セパレータと、非水電解質と、を備え、
前記非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを備え、
前記多孔質層は、扁平な空隙を備え、
前記扁平な空隙の短軸方向は多孔質層の面方向に垂直であり、長軸方向は多孔質層の面方向に水平であって、
前記空隙の表面は、有機物膜を備える、非水電解質二次電池。
【請求項2】
請求項1に記載の非水電解質二次電池であって、
前記空隙の、前記短軸に対する前記長軸の比が、1.4〜2.2である、非水電解質二次電池。
【請求項3】
請求項1または2に記載の非水電解質二次電池であって、
前記空隙が、前記多孔質層の負極と対向していない側の表面上に、凹状に存在する、非水電解質二次電池。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池であって、
前記多孔質層の面方向に垂直な断面における、前記空隙の占める面積比率が40〜80%である、非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池の高エネルギー密度化、高出力化に向け、負極活物質として、黒鉛等の炭素質材料に替えてケイ素、ゲルマニウム、錫及び亜鉛などのリチウムと合金化する金属材料や、これらの金属の酸化物などを用いることが検討されている。
【0003】
リチウムと合金化する金属材料やこれらの金属の酸化物からなる負極活物質は、初回の充電時には正極活物質からのリチウムが負極活物質中に取り込まれるが、このリチウムの全てが放電時に取り出すことができるわけではなく、不特定量が負極活物質中に固定されてしまい、不可逆容量となる。下記特許文献1には、不可逆容量を補うため、金属リチウム粉末を含む膜を負極上に形成した、非水電解質二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−98151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の非水電解質二次電池では、初回充放電効率やサイクル特性を充分に改善することができないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明に係る非水電解質二次電池は、正極と、負極と、負極上に配置された多孔質層と、セパレータと、非水電解質と、を備え、多孔質層は、扁平な空隙を備え、上記扁平な空隙の短軸は多孔質層の面方向に垂直な方向を有し、長軸は多孔質層の面方向に水平な方向を有する、ことを特徴とする。また、非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを備える。
【0007】
上記多孔質層が備える、扁平な空隙は、扁平状のリチウム粒子が、負極活物質へリチウム補填されることで形成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の非水電解質二次電池によれば、初回充放電効率及びサイクル特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態の一例である、多孔質層を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
実施形態の説明で参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された構成要素の寸法比率などは、現物と異なる場合がある。具体的な寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。本明細書において「略**」とは、「略同等」を例に挙げて説明すると、全く同一はもとより、実質的に同一と認められるものを含む意図である。
【0011】
本発明の実施形態の一例である非水電解質二次電池は、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、負極上に配置された多孔質層と、非水溶媒を含む非水電解質と、セパレータと、を備える。非水電解質二次電池の一例としては、正極及び負極がセパレータを介して巻回されてなる電極体と、非水電解質とが外装体に収容された構造が挙げられる。
【0012】
〔正極〕
正極は、正極集電体と、正極集電体上に形成された正極活物質層とで構成されることが好適である。正極集電体には、例えば、導電性を有する薄膜体、特にアルミニウムなどの正極の電位範囲で安定な金属箔や合金箔、アルミニウムなどの金属表層を有するフィルムが用いられる。正極活物質層は、正極活物質の他に、導電材及び結着剤を含むことが好ましい。
【0013】
正極活物質は、特に限定されないが、好ましくはリチウム含有遷移金属酸化物である。リチウム含有遷移金属酸化物は、Mg、Al等の非遷移金属元素を含有するものであってもよい。具体例としては、コバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウムに代表されるオリビン型リン酸リチウム、Ni−Co−Mn、Ni−Mn−Al、Ni−Co−Al等のリチウム含有遷移金属酸化物が挙げられる。正極活物質は、これらを1種単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【0014】
導電材には、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料、及びこれらの2種以上の混合物などを用いることができる。結着剤には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアセテート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、及びこれらの2種以上の混合物などを用いることができる。
【0015】
〔負極〕
負極は、負極集電体と、負極集電体上に形成された負極活物質層とを備えることが好適である。負極集電体には、例えば、導電性を有する薄膜体、特に銅などの負極の電位範囲で安定な金属箔や合金箔、銅などの金属表層を有するフィルムが用いられる。負極活物質層は、負極活物質の他に、結着剤を含むことが好適である。結着剤としては、正極の場合と同様にポリテトラフルオロエチレン等を用いることもできるが、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)やポリイミド等を用いることが好ましい。結着剤は、カルボキシメチルセルロース等の増粘剤と併用されてもよい。
【0016】
負極活物質は、リチウムと合金化する金属材料やこれら金属の酸化物を備える。好ましくは、負極活物質は、シリコン(Si)、シリコン合金、又はシリコン酸化物である。さらに好ましくは、負極活物質は、シリコン、シリコン合金、又はシリコン酸化物(SiOx、x=0.5〜1.5)から構成される母粒子と、母粒子の表面の少なくとも一部を覆う導電性の被覆層とを有する。負極活物質は、高容量化とサイクル特性向上の両立の観点から、充放電による体積変化がリチウムと合金化する金属材料やこれらの金属の酸化物よりも小さい他の負極活物質、例えば黒鉛やハードカーボン等の炭素材料と混合して用いる
ことが好適である。
【0017】
被覆層は、SiやSiOxよりも導電性の高い材料から構成される導電層である。被覆層を構成する導電材料としては、電気化学的に安定なものが好ましく、炭素材料、金属、及び金属化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0018】
負極活物質は、リチウムと合金化する金属材料やこれら金属の酸化物と黒鉛やハードカーボン等の炭素材料とを混合して用いる場合、リチウムと合金化する金属材料やこれら金属の酸化物と炭素材料との質量比は、1:99〜20:80が好ましい。質量比が当該範囲内であれば、高容量化とサイクル特性向上を両立し易くなる。一方、負極活物質の総質量に対するリチウムと合金化する金属材料やこれら金属の酸化物の割合が1質量%よりも低い場合は、リチウムと合金化する金属材料やこれら金属の酸化物を添加して高容量化するメリットが小さくなる。
【0019】
〔多孔質層〕
以下、多孔質層について詳説する。
図1に例示するように、多孔質層は、扁平な空隙を備える。上記扁平な空隙の短軸方向は多孔質層の面方向に略垂直な方向を有し、長軸方向は多孔質層の面方向に略水平な方向を有する。なお、扁平な空隙の、多孔質層の面方向に水平な断面は、略円状である。
【0020】
上記扁平な空隙は、扁平なリチウム粒子を備える層を負極上に配置して、その後、電気化学的にリチウムを負極活物質中に吸蔵させることで、図1に例示するような、扁平な空隙を備える多孔質層を形成させることが好適である。
【0021】
扁平なリチウム粒子を備える層は、球状のリチウム粒子を備える層を圧延して形成させることが好適である。圧延の条件は、例えば、層中の球状のリチウム粒子が、扁平なリチウム粒子に変形する範囲であれば制限はないが、線圧10kgf/cm〜1000kgf/cmの条件で圧延することが好ましい。
【0022】
扁平な空隙の、短軸に対する長軸の比は、1.2〜5.0 が好ましく、さらに好ましくは、1.4〜2.2 である。当該範囲内であれば、多孔質層における、面方向の電解液の浸透速度が速くなり、面方向の電解液受入れ性がより良好となる。短軸に対する長軸の比が小さすぎると、面方向の電解液受入れ性が低下する傾向があり、大きすぎると、多孔質層の形状を保ちにくくなる傾向がある。
【0023】
扁平な空隙は、多孔質層の負極と対向していない側の表面上に、凹状に存在することが好適である。表面上の凹状の空隙により、電解液受入れ性がさらに向上する。
【0024】
扁平な空隙は、多孔質層の面方向に略垂直な断面に対する面積比率が20〜90%、さらに好ましくは40〜80%であることが好適である。上記面積比率が少なすぎると、面方向の電解液受入れ性が低下する傾向があり、上記面積比率が大きすぎると、多孔質層の強度が弱くなって多孔質層の形状を保ちにくくなる傾向がある。
【0025】
扁平な空隙の大きさは、短軸方向が1〜35μm、長軸方向が2〜70μmであることが好適である。
【0026】
扁平な空隙の表面は、有機物膜を備えていることが好適である。リチウム粒子を含む層を形成する際、リチウム粒子は、その表面を有機物膜で覆われていたほうが、空気中の水分等による失活反応が抑制されるためである。
【0027】
有機物膜は、リチウムと合金化しない、電気化学的に安定なものから構成されることが好ましい。例えば、有機ゴム、有機樹脂、金属炭酸塩からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0028】
多孔質層は、導電材を含んでいることが好適である。導電材としては、上記正極や負極に用いられる導電材を用いることが好ましい。多孔質層に導電材が含まれると、負極活物質層へのリチウム補填が進みやすくなる。
【0029】
多孔質層の厚みは、負極活物質層の不可逆容量の大きさによって異なるものであり、適宜調整するものである。
【0030】
面方向に扁平なリチウム粒子を備える層は、負極上に形成されることが好ましい。言い換えると、多孔質層は、負極上に形成されていることが好ましい。リチウム粒子を備える層が負極上に形成されることにより、負極活物質層へのリチウム補填が進みやすくなる。
【0031】
〔非水電解質〕
非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水電解質は、液体電解質(非水電解液)に限定されず、ゲル状ポリマー等を用いた固体電解質であってもよい。非水溶媒には、例えば、エステル類、エーテル類、ニトリル類(アセトニトリル等)、アミド類(ジメチルホルムアミド等)、及びこれらの2種以上の混合溶媒などを用いることができる。
【0032】
上記エステル類の例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン等のカルボン酸エステル類などが挙げられる。
【0033】
上記エーテル類の例としては、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、1,3−ジオキサン、フラン、1,8−シネオール等の環状エーテル、1,2−ジメトキシエタン、エチルビニルエーテル、エチルフェニルエーテル、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,1−ジメトキシメタン、1,1−ジエトキシエタン、トリエチレングリコールジメチルエーテル等の鎖状エーテル類などが挙げられる。
【0034】
非水溶媒としては、上記例示した溶媒のうち、少なくとも環状カーボネートを用いることが好ましく、環状カーボネートと鎖状カーボネートを併用することがより好ましい。また、非水溶媒には、各種溶媒の水素をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を用いてもよい。
【0035】
電解質塩は、リチウム塩であることが好ましい。リチウム塩の例としては、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiN(SO2CF32、LiN(SO2CF52、LiPF6-x(Cn2n+1x(1<x<6,nは1又は2)などが挙げられる。リチウム塩は、これらを1種単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。リチウム塩の濃度は、非水溶媒1L当り0.8〜1.8molとすることが好ましい。
【0036】
〔セパレータ〕
セパレータには、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布等が挙げられる。セパレータの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好適である。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
<実施例1>
[正極の作製]
コバルト酸リチウム、アセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデンを質量比で100:1.5:1.5となるように、適量のN−メチルピロリドンとともにミキサーで混合し、正極合剤スラリーを調製した。この正極合剤スラリーを厚さ15μmのAl箔からなる正極集電体シートの両面に塗布し、乾燥させ、圧延後に所定のラミネート材製の電池ケースに対応する大きさに裁断し、実験例1のリチウムイオン電池で使用する正極を得た。正極活物質層の充填密度は、3.8g/mLであった。
【0039】
[負極の作製]
(負極活物質層の作製)
導電性炭素材料で被覆された平均粒径(D50)6μmのSiO粒子と、平均粒径(D50)25μmの黒鉛と、カルボキシメチルセルロースと、スチレンブタジエンラバーとを、質量比で10:90:1:1となるように、適量の水とともにミキサーで混合し、負極合剤スラリーを調製した。この負極合剤スラリーを厚さ10μmの銅箔からなる負極集電体シートの両面に塗布し、乾燥させ、圧延した。負極活物質層の充填密度は、1.60g/mLであった。
【0040】
(リチウム粒子を含む層の作製)
FMC社製SLMPと、アセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデンを質量比で64:16:20となるように、適量のN−メチルピロリドンとともにミキサーで混合し、スラリーを調製した。このスラリーを、負極活物質層上に塗布し、乾燥させた。なお、FMC社製SLMPは、表面に有機物膜を備える球状のリチウム粒子である。
【0041】
(リチウム粒子を含む層の圧延)
負極上に形成し乾燥させたリチウム粒子を含む層を、直径65mmのロールの間を300kgf/cmの線圧を印加して圧延した。所定のラミネート材製の電池ケースに対応する大きさに裁断し、実験例1のリチウムイオン電池で使用する負極を得た。
【0042】
[非水電解液の調製]
EC:DEC=3:7(容積比)となるように混合した非水溶媒に、LiPF6を1.0mol/Lとなるように添加して非水電解液を調製した。
【0043】
[試験セルC1の作製]
上記各電極にタブをそれぞれ取り付け、タブが最外周部に位置するようにセパレータを介して上記正極及び上記負極を渦巻き状に巻回して電極体を作製した。当該電極体をアルミニウムラミネートシートで構成される外装体に挿入して、105℃で2時間真空乾燥した後、上記非水電解液を注入し、外装体の開口部を封止して試験セルC1を作製した。なお、試験セルC1の設計容量は800mAhである。
【0044】
<比較例1>
負極活物質層上へのリチウム粒子を含む層の形成後、圧延を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして試験セルR1を得た。
【0045】
<比較例2>
負極活物質層上へリチウム粒子を含む層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして試験セルR2を得た。
【0046】
<電池性能評価>
電池C1、R1及びR2について、初回充放電効率及びサイクル特性の評価を行い、表1に示した。
【0047】
[初回充放電効率]
・充電;0.5Itの電流で電圧が4.3Vになるまで定電流充電を行い、その後電圧が4.3Vで0.05Itの電流になるまで定電圧充電を行った。
・放電;0.2Itの電流で電圧が2.75Vになるまで定電流放電を行った。
・休止;上記充電と上記放電との間の休止時間は10分とした。
1サイクル目の充電容量に対する1サイクル目の放電容量の割合を、初回充放電効率とした。
初回充放電効率(%)
=(1サイクル目の放電容量/1サイクル目の充電容量)×100
【0048】
[サイクル試験]
上記充放電条件で各試験セルについてサイクル試験を行った。
1サイクル目の放電容量に対する50サイクル目の放電容量の割合を、サイクル特性とした。
サイクル特性(%)
=(50サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0049】
【表1】
【0050】
表1から解るように、リチウム粒子を含む層を負極上に配置したC1及びR1では、リチウムが負極活物質層中に補填されて、初回充放電効率及びサイクル特性が改善される。
【0051】
リチウム粒子を含む層を圧延したC1は、リチウム粒子を含む層を圧延しなかったR1よりも、初回充放電効率及びサイクル特性が優れている。これは、C1では、多孔質層中において面方向に扁平な空隙が形成されるので、多孔質層中に球状の空隙が形成されるR1と比べて、空隙の、多孔質層の面方向における電解液受入性が向上することによるものと考えられる。
【0052】
<空隙断面積の占有率及び空隙の短軸、長軸の測定>
初回充放電後の電池C1、R1から負極を取り出し、クロスセクションポリッシャを用いて、負極の厚み方向の断面(面方向に垂直な断面)を作製し、SEM観察を行った。この断面のうち、1mmの長さの領域を測定領域として抜き出し、扁平状の空隙の面積占有率および空隙の短軸、長軸をSEM画像より測定した。
面積占有率
=扁平状の空隙の総面積/(測定領域内における多孔質層の最大厚み × 1mm)
面積占有率、短軸、長軸および短軸と長軸の比率の平均値を表2に示した。C1における短軸と長軸の比率の最小値は1.4であり、最大値は2.2であった。
【0053】
【表2】
【符号の説明】
【0054】
10 負極、11 負極集電体、12 負極活物質層、13 多孔質層、14 空隙。
図1