特許第6414560号(P6414560)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6414560
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 5/10 20060101AFI20181022BHJP
   F16H 57/032 20120101ALI20181022BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20181022BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20181022BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20181022BHJP
【FI】
   B22F5/10
   F16H57/032
   B33Y10/00
   B22F3/16
   B22F3/105
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-32111(P2016-32111)
(22)【出願日】2016年2月23日
(65)【公開番号】特開2017-150020(P2017-150020A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2017年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100083013
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 正明
(72)【発明者】
【氏名】上杉 達也
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 忠俊
(72)【発明者】
【氏名】上田 和彦
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−511180(JP,A)
【文献】 特開平10−211659(JP,A)
【文献】 特開2015−030883(JP,A)
【文献】 特開2010−121187(JP,A)
【文献】 特開2000−190086(JP,A)
【文献】 特開2015−093461(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/111777(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00−8/00
B33Y 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と、第2部材を有する構造体の製造方法であって、
三次元積層造形法によって、空洞部と該空洞部の内部残留物を排出するための排出穴とを有する前記第1部材を造形する第1造形工程と、
前記第1部材の前記排出穴から前記内部残留物を除去する第1除去工程と、
三次元積層造形法によって、空洞部と該空洞部の内部残留物を排出するための排出穴とを有する前記第2部材を造形する第2造形工程と、
前記第2部材の前記排出穴から前記内部残留物を除去する第2除去工程と、
前記第1部材の前記排出穴を前記第2部材によって閉塞すると共に前記第2部材の前記排出穴を前記第1部材によって閉塞するように前記第1部材と前記第2部材とを組み付ける組付工程と、を有する
ことを特徴とする構造体の製造方法。
【請求項2】
第1部材と、第2部材を有する構造体の製造方法であって、
三次元積層造形法によって、空洞部と該空洞部の内部残留物を排出するための排出穴とを有する前記第1部材を造形する第1造形工程と、
前記第1部材の前記排出穴から前記内部残留物を除去する第1除去工程と、
三次元積層造形法によって、空洞部と該空洞部の内部残留物を排出するための排出穴とを有する前記第2部材を造形する第2造形工程と、
前記第2部材の前記排出穴から前記内部残留物を除去する第2除去工程と、
前記第1部材の前記排出穴と前記第2部材の前記排出穴とを共に溶接肉部によって閉塞するように前記第1部材と前記第2部材とを組み付ける組付工程と、を有する
ことを特徴とする構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体の製造方法、特に、変速機等の作動流体制御機構を内部に収納する構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される変速機などの構造体のケースは、ケース全体がアルミニウムなどの金属材料を用いて形成されているが、所定の剛性を確保しつつ軽量化することが求められている。
【0003】
これに対し、金属製の構造体のケースの一部を樹脂製に代えて、金属製のフレーム部材と樹脂製のカバー部材とを組み合わせるようにしたものが知られている。例えば特許文献1には、変速機のケースの一部を構成するサイドカバーを、金属製のフレーム部材と、該フレーム部材の間に形成された開口部を塞ぐ樹脂製のカバー部材とによって構成したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−117240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたケースのように、フレーム部材等の専ら強度や剛性を担うための骨格部と、該骨格部を構成する骨部で囲まれた開口部を閉塞するためのカバー部材等の壁面部とでなるケースにおいて、強度や剛性を確保しつつ更なる軽量化を図る場合、中空構造を有する骨格部を三次元積層造形法によって積層造形することが考えられる。
【0006】
ここでいう三次元積層造形法とは、CADデータ等に基づいて、金属等の粉末を薄く敷き詰めた粉末層にレーザを選択的に照射することによって溶融固化させ、この上に新たな粉末層を積層してレーザ照射を行うことを繰り返すことで、複数の層が積層一体化した三次元形状の造形物を製造する方法である。この方法によれば、金型を用いた成形では製造できない中空構造等の複雑な内部構造を有する製品を一体的に造形することが可能である。
【0007】
しかしながら、このような三次元積層造形法によって中空構造を有する骨格部を積層造形する場合、骨格部の内部に形成された空洞部に溶融固化しなかった粉末が残留するので、軽量化を図るためには、この内部残留粉末を造形後に除去する必要がある。この内部残留粉末の除去は、空洞部に連通する複数の排出穴の一つから空洞部内に圧縮空気を送り込んで他の排出穴から外部へ空気と共に内部残留粉末を吹き出すことで、ある程度は可能であるが、空洞部から内部残留粉末を完全に除去することは困難であり、わずかながら内部に粉末が残留する。そのため、構造体が作動流体を制御するための油圧制御バルブ機構を内部に収納する変速機である場合、除去しきれなかった内部残留粉末が骨格部の空洞部から漏れ出して作動流体に混入し、該作動流体が供給された油圧アクチュエータ等が動作不良を起こすおそれがある。そして、この課題は、構成体が変速機である場合に限るものではない。
【0008】
そこで、本発明は、構造体の内部残留物がその外部に漏れ出すのを防止することができる構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0010】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、
第1部材と、第2部材を有する構造体の製造方法であって、
三次元積層造形法によって、空洞部と該空洞部の内部残留物を排出するための排出穴とを有する前記第1部材を造形する第1造形工程と、
前記第1部材の前記排出穴から前記内部残留物を除去する第1除去工程と、
三次元積層造形法によって、空洞部と該空洞部の内部残留物を排出するための排出穴とを有する前記第2部材を造形する第2造形工程と、
前記第2部材の前記排出穴から前記内部残留物を除去する第2除去工程と、
前記第1部材の前記排出穴を前記第2部材によって閉塞すると共に前記第2部材の前記排出穴を前記第1部材によって閉塞するように前記第1部材と前記第2部材とを組み付ける組付工程と、を有する
ことを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、
第1部材と、第2部材を有する構造体の製造方法であって、
三次元積層造形法によって、空洞部と該空洞部の内部残留物を排出するための排出穴とを有する前記第1部材を造形する第1造形工程と、
前記第1部材の前記排出穴から前記内部残留物を除去する第1除去工程と、
三次元積層造形法によって、空洞部と該空洞部の内部残留物を排出するための排出穴とを有する前記第2部材を造形する第2造形工程と、
前記第2部材の前記排出穴から前記内部残留物を除去する第2除去工程と、
前記第1部材の前記排出穴と前記第2部材の前記排出穴とを共に溶接肉部によって閉塞するように前記第1部材と前記第2部材とを組み付ける組付工程と、を有する
ことを特徴とする。
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【発明の効果】
【0016】
本願の請求項1に記載の発明によれば、三次元積層造形法によって、空洞部と該空洞部の内部残留物を排出するための排出穴とを有する第1,第2部材を造形し、該第1,第2部材の排出穴から内部残留物を除去し、第1部材の排出穴を第2部材によって閉塞すると共に第2部材の排出穴を第1部材によって閉塞するように第1部材と第2部材とを組み付けるので、除去しきれなかった内部残留物が第1,第2部材の空洞部から外部へ出ようとしても、閉塞された排出穴を介して外部に漏れ出すことはない。したがって、構造体の内部残留物がその外部に漏れ出すのを防止可能な構造体の製造方法を提供することができる。
【0017】
また、請求項2に記載の発明によれば、三次元積層造形法によって、空洞部と該空洞部の内部残留物を排出するための排出穴とを有する第1,第2部材を造形し、該第1,第2部材の排出穴から内部残留物を除去し、第1部材の排出穴と第2部材の排出穴とを共に溶接肉部によって閉塞するように第1部材と前記第2部材とを組み付けるので、除去しきれなかった内部残留物が第1,第2部材の空洞部から外部へ出ようとしても、閉塞された排出穴を介して外部に漏れ出すことはない。したがって、構造体の内部残留物がその外部に漏れ出すのを防止可能な構造体の製造方法を提供することができる。
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1第1参考例に係る構造体の上面図である。
図2図1におけるY−Y線に沿った構造体の断面図である。
図3図2の骨格部の拡大断面図及び斜視図である。
図4図1におけるA−A線に沿った構造体のケースの断面図である。
図5図1におけるB−B線に沿った構造体のケースの断面図である。
図6】骨格部の変形例の断面図である。
図7】本発明の第実施形態に係る構造体の断面図及び拡大図である。
図8】本発明の第実施形態に係る構造体の断面図及び拡大図である。
図9第2参考例に係る構造体の断面図及び拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0024】
[第1参考例
図1は、第1参考例に係る構造体の上面図である。また、図2は、図1におけるY−Y線に沿った構造体の断面図である。
【0025】
[構造体の構造]
図1に示すように、第1参考例に係る構造体は、車両に搭載される動力伝達装置を構成する変速機1、具体的には入力軸及び出力軸が同一軸線状に配置されたフロントエンジン・リアドライブ車に搭載される縦置き式の変速機である。
【0026】
この変速機1は、軸線が車体前後方向に延びるように配置された変速機構と、該変速機構に供給する油圧を制御するための油圧制御バルブ機構(図示しない)と、が変速機ケース内に収容されている。この変速機構は、変速機ケースの車体前方側に配設されるエンジンなどの駆動源にクラッチを介して接続される入力軸S1と、該入力軸S1と同一軸線上に配置された出力軸と、入力軸S1及び出力軸に平行に配置されたカウンタ軸S2とを有し、入力軸S1、出力軸及びカウンタ軸S2が変速機ケースに回動可能に支持されている。なお、図2には、入力軸S1及びカウンタ軸S2に設けられ、互いに噛合するギヤG1、G2を示している。
【0027】
上述の変速機構を収容する変速機ケースは、クラッチを収納するクラッチハウジングと前記変速機構を収納するミッションケースとが一体的に形成された車体前方側のケース本体部2と、ケース本体部2に結合された車体後方側のエクステンションハウジング3と、をケース構成部材として有している。この変速機ケースは、ケース本体部2の車体後方側に設けられたフランジ部2aとエクステンションハウジング3の車体前方側に設けられたフランジ部3aとをボルト及びナットを用いて締結固定することにより形成されている。
【0028】
これらケース構成部材2、3は、該変速機ケースの骨格を形成する骨格部10と、該骨格部10によって囲まれる開口部を塞ぐように設けられた壁面部20と、を有する。骨格部10は、変速機ケースの軸方向である車体前後方向に延びる複数の第1骨格部11と、変速機ケースの軸方向と直交する方向において変速機ケースの周方向に延びる複数の第2骨格部12と、を有している。
【0029】
図2に示すように、第1骨格部11は、変速機ケースの軸方向と直交する方向における断面において変速機ケースの周方向に離間して複数設けられており、断面略四角形状に形成されている。
【0030】
図3(a)は、図2に示す第1骨格部11の拡大断面図であり、図3(b)は、第1骨格部11の一部を切り欠いた斜視図である。図3(a)に示すように、第1骨格部11は、断面略四角形状の外周面を成し、所定の板厚を有するスキン層11aと、該スキン層11aの内部に一体的に形成され、内部に空洞部13を有する三次元の格子(ラティス)構造部11bと、を有している。特に、本実施形態の場合、格子構造部11bは、正四面体の中心と四つの頂点を結ぶ単位格子が規則的に複数個互いに結合されたダイヤモンド構造を有している。
【0031】
また、第2骨格部12は、変速機ケースの軸方向に離間して変速機ケースの周方向に延びるように複数設けられており、断面略円形状に形成されている。この第2骨格部12は、図示しないが、第1骨格部11と同様に、外周面を成すスキン層の内部に、空洞部を有する三次元の格子構造部が一体的に形成されている。
【0032】
なお、骨格部10は、図6に示すように、複数の孔部が長手方向に延びる構造であってもよい。このとき、例えば、複数の孔部13は、骨格部10の軸方向に交わる断面において骨格部10の断面積に占める複数の孔部13の断面積の割合が骨格部10の外周側から内周側に向かうにつれて大きくなるように形成されてもよい。このような変形例の場合、骨格部10の断面積に占める複数の孔部13の断面積の割合が骨格部10の径方向に等しく形成される場合に比して、所定の剛性を確保するための重量を低減することができる。
【0033】
一方、壁面部20は、図2に示すように、骨格部10に比して肉厚が薄い平板状に形成されている。なお、壁面部20は、少なくとも一方の面に複数の凹部が形成された構造であってもよい。この構造によれば、壁面部20の剛性を確保しながら重量を更に低減することができる。
【0034】
次に、本実施形態の特徴であるケース本体部2とエクステンションハウジング3の合わせ面2b、3bの周辺の構造について、図4図5を参照しながら詳細に説明する。なお、図4図5はそれぞれ、図3のA−A線及びB−B線における断面図である。
【0035】
図4図5に示すように、ケース本体部2とエクステンションハウジング3は、ケース本体部2のフランジ部2aの端面であるケース本体部2の合わせ面2bと、エクステンションハウジング3のフランジ部3aの端面であるエクステンションハウジング3の合わせ面3bと、を対向させて互いに合わせた状態で組み付けられている。
【0036】
このとき、図4に示すように、エクステンションハウジング3に設けられた第1骨格部11の排出穴11cは、そのフランジ部3aの合わせ面3bに開口しているが、エクステンションハウジング3に組み付けられたケース本体部2のフランジ部2aの合わせ面2bによって閉塞されている。そのため、エクステンションハウジング3の第1骨格部11の空洞部13の内部に残留した金属等の粉末は、排出穴11cから外部に漏れ出すことがない。
【0037】
同様に、図5に示すように、ケース本体部2に設けられた第1骨格部11の排出穴11cは、そのフランジ部2aの合わせ面2bに開口しているが、ケース本体部2に組み付けられたエクステンションハウジング3のフランジ部3aの合わせ面3bによって閉塞されている。そのため、ケース本体部2の第1骨格部11の空洞部13の内部に残留した金属等の粉末は、排出穴11cから外部に漏れ出すことがない。
【0038】
したがって、本実施形態の場合、ケース本体部2とエクステンションハウジング3は、これらの合わせ面2b、3bにおいて互いの排出穴11c、11cを閉塞するように組み付けられている。
【0039】
[構造体の製造方法]
上述のように構成された構造体である変速機1は、以下の製造方法によって製造される。
【0040】
まず、例えばアルミニウム等の金属粉末を原料として3Dプリンタを用いて、三次元積層造形法によって変速機ケースの骨格部10と壁面部20を一体的に積層造形する造形工程を行う。
【0041】
この造形工程において、変速機ケースの骨格部10を三次元積層造形法によって形成する場合、骨格部10の内部に形成される孔部13、14には、孔部13の内部に残留する金属粉末を除去するために変速機ケースの表面、好ましくは内周面に連通する排出穴(図示しない)が形成される。
【0042】
ここで、三次元積層造形法として、例えば、CADデータ等に基づいて、材料となる粉末にレーザ又は電子ビームを用いて一層ずつ焼結して造形させていく粉末焼結積層造形法が採用され得る。具体的には、金属等の粉末を薄く敷き詰めた粉末層にレーザ又は電子ビームを選択的に照射することによって溶融固化させ、この上に新たな粉末層を積層してレーザ照射を行うことを繰り返して積層造形する粉末床溶融法(Powder Bed Fusion)や、粉末などを供給しながらレーザ又は電子ビームで溶融し、溶融物を堆積させながら積層造形する指向性エネルギー堆積法(DMP(Direct Metal Deposition))を用いることができる。このような方法によれば、金型を用いた成形では製造できない中空構造等の複雑な内部構造を有する製品を一体的に造形することが可能である。なお、三次元積層造形法は、上述の方式に限るものではない。
【0043】
次に、骨格部10に形成された空洞部13、14の内部に溶融固化せずに残留する金属粉末を骨格部10の排出穴から空洞部13、14の外部へ除去する除去工程を行う。
【0044】
この除去は、具体的には、空洞部13、14に連通する複数の排出穴の一つから空洞部13、14に圧縮空気を送り込んで他の排出穴から空気と共に残留する金属粉末を吹き出したり、積層造形後の変速機ケースに振動を加えて、排出穴から残留する金属粉末を振り落とすことによって行う。
【0045】
なお、除去工程の後、変速機ケースの必要な箇所に切削加工などを行う仕上げ加工工程が実施されてもよい。
【0046】
次に、ケース構成部材2、3を、ボルト及びナットを用いて締結固定することによって、互いに組み付ける組付工程を行うことで、ケース1が得られる。
【0047】
最後に、得られたケース1の内部に、油圧制御バルブ機構を収容する収容工程を行う。
【0048】
以上の製造方法によって、上述のように構成された構造体である変速機1が製造される。
【0049】
発明が適用される構造体について、図7図9を参照しながら、具体的に説明する。
【0050】
[第1実施形態]
図7は、本発明の第実施形態に係る構造体であるギヤ組立体101の断面図及び拡大図である。図7(a)に示すように、ギヤ組立体101は、出力軸に対して同心状に互いに組み付けられた出力ギヤ102とパーキングギヤ103とを有している。
【0051】
ここで、図7(b)に拡大して示すように、出力ギヤ102には、空洞部102aと、該空洞部102aに外部から連通する排出穴102bとが設けられている。同様に、パーキングギヤ103には、空洞部103aに外部から連通する排出穴103bが設けられている。これら出力ギヤ102とパーキングギヤ103は、溶接肉部104によって互いに固定されている。
【0052】
このとき、出力ギヤ102の排出穴102bは、パーキングギヤ103の内周部によって閉塞されると共に、パーキングギヤ103の排出穴103bは、出力ギヤ102のフランジ面によって閉塞されるように組み付けられる。したがって、出力ギヤ102、103の空洞部102a、103aの内部に残留した金属等の粉末は、互いに合わせ面で閉塞されているので、この粉末が外部に漏れ出すのを防止することができる。
【0053】
[第2実施形態]
また、図8は、本発明の第実施形態に係る構造体であるプラネタリギヤ201を構成する1つのピニオンの近傍における断面図及び拡大図である。図8(a)に示すように、プラネタリギヤ201は、ピニオンシャフト202を回転可能に支持するキャリヤ203と、該キャリヤ203に対して溶接によって固定されたギヤ204と、を有している。
【0054】
ここで、図8(b)に拡大して示すように、キャリヤ203には、空洞部203aと、該空洞部203aに外部から連通する排出穴203bとが設けられている。同様に、ギヤ204には、空洞部204aと、該空洞部204aに外部から連通する排出穴204bとが設けられている。これらキャリヤ203とギヤ204は、溶接肉部205によって互いに固定されている。
【0055】
このとき、キャリヤ203の排出穴203bとギヤ204の排出穴204bは共に、溶接肉部205によって閉塞されるように組み付けられる。したがって、キャリヤ203の空洞部203aとギヤ204の空洞部204aの内部に残留した金属等の粉末は、溶接肉部で閉塞されているので、この粉末が外部に漏れ出すのを防止することができる。
【0056】
また、図9は、第2参考例に係る構造体であるデファレンシャルギヤ301の断面図及び拡大図である。図9(a)に示すように、デファレンシャルギヤ301は、リングギヤ302と、該リングギヤ302に一体的に形成されたデフケース303と、該デフケース303に対して固定ピン304によって固定されたピニオンシャフト305と、を有している。図9(b)に示すように、リングギヤ302が固定ピン304によって固定されている。
【0057】
ここで、図9(c)に拡大して示すように、リングギヤ302には、空洞部302aと、該空洞部302aに連通する排出穴302bと、が設けられており、このリングギヤ302と一体的なデフケース303には、排出穴302bに連通して一端が外部に開口する挿入穴303aが設けられている。挿入穴303aの内部に固定ピン304を挿入することで、リングギヤ302がピニオンシャフト305に対して固定されている。
【0058】
このとき、リングギヤ302の排出穴302bと挿入穴303aは、固定ピン304によって共に閉塞される。したがって、リングギヤ302の空洞部302aの内部に残留した金属等の粉末は、固定ピン304によって閉塞されているので、この粉末が外部に漏れ出すのを防止することができる。
【0059】
以上のような構成により、本実施形態によれば以下のような作用効果を奏する。
【0060】
第1,第2実施形態によれば、三次元積層造形法によって、空洞部(空洞部13等)と該空洞部の内部残留物を排出するための排出穴(排出穴11c等)とを有する第1部材(ケース本体部2等)を造形し、該第1部材の排出穴から内部残留物を除去し、第1部材の排出穴を閉塞するように第2部材(エクステンションハウジング3等)を組み付けるので、除去しきれなかった内部残留物が第1部材の空洞部から外部へ出ようとしても、閉塞された排出穴を介して外部に漏れ出すことはない。したがって、構造体(変速機1等)の内部残留物がその外部に漏れ出すのを防止可能な構造体の製造方法を提供することができる。
【0061】
また、第1参考例によれば、ケース本体部2とエクステンションハウジング3は、変速機1の変速機ケースの構成部材であり、ケース本体部2とエクステンションハウジング3の合わせ面2b、3bにおいて排出穴11c、11cを閉塞するので、ケース本体部2とエクステンションハウジング3の内部残留物が排出穴11c、11cを介して外部に漏れ出すのを防止することができる。
【0062】
また、第実施形態によれば、出力ギヤ102とパーキングギヤ103を互いに溶接することによって排出穴102b、103bを閉塞するので、出力ギヤ102とパーキングギヤ103の内部残留物が排出穴102b、103bを介して外部に漏れ出すのを防止することができる。同様に、第実施形態によれば、キャリヤ203とギヤ204を互いに溶接することによって排出穴203b、204bを閉塞するので、キャリヤ203とギヤ204の内部残留物が排出穴203b、204bを介して外部に漏れ出すのを防止することができる。
【0063】
また、第2参考例によれば、リングギヤ302に設けられた排出穴302bと連通する挿入穴303aに固定ピン304を挿入することによって排出穴302bを閉塞するので、リングギヤ302の内部残留物が排出穴302bと挿入穴303aを介して外部に漏れ出すのを防止することができる。
【0064】
また、第1参考例によれば、変速機1は作動流体を制御するための油圧制御バルブ機構を内部に収納するものであるので、オイル等の作動流体に粉末等の内部残留物が混入するおそれがない。
【0065】
また、第1参考例によれば、作動流体制御機構は油圧制御バルブ機構であるので、変速機1の内部残留物が漏れ出して作動流体に混入し、該作動流体が供給された油圧制御バルブ機構等が内部残留物の噛み込みによって動作不良を起こすのを防止することができる。
【0066】
なお、本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
【0067】
例えば、本実施形態では、骨格部を構成する全ての骨部について、内部の構造が共通するが、これに限るものではなく、骨部の場所に応じてその内部の構造が異なっていてもよい。
【0068】
例えば、本実施形態では、三次元積層造形法によってケースの骨格部及び壁面部を一体的に形成しているが、これに限るものではなく、例えば、ケースの骨格部のみを三次元積層造形法によって一体的に形成し、その後に形成された骨格部を成形型の所定位置に挿入して、熱可塑性樹脂等の樹脂材料を用いた射出成形又はアルミニウム等の金属材料を用いたダイカスト鋳造によってケースの骨格部と壁面部とを一体的に形成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上のように、本発明によれば、構造体の内部残留物がその外部に漏れ出すのを防止できる構造体の製造方法を提供することができるから、車両に搭載される自動変速機などの構造体のケースを製造する場合など、車両の製造産業分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0070】
1 変速機(構造体)
2 ケース本体部(第1部材)
2b 合わせ面
3 エクステンションハウジング(第2部材)
3b 合わせ面
11c 排出穴
13 空洞部
303a 挿入穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9