特許第6414640号(P6414640)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6414640
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】ポリアミド化合物、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/26 20060101AFI20181029BHJP
【FI】
   C08G69/26
【請求項の数】4
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2017-527160(P2017-527160)
(86)(22)【出願日】2016年6月17日
(86)【国際出願番号】JP2016068091
(87)【国際公開番号】WO2017006748
(87)【国際公開日】20170112
【審査請求日】2017年7月19日
(31)【優先権主張番号】特願2015-134897(P2015-134897)
(32)【優先日】2015年7月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 致漢
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−022228(JP,A)
【文献】 特開2013−216653(JP,A)
【文献】 特開2015−086396(JP,A)
【文献】 特開平09−012716(JP,A)
【文献】 特開平04−253727(JP,A)
【文献】 特開2012−184372(JP,A)
【文献】 特表2011−525558(JP,A)
【文献】 特開2009−275216(JP,A)
【文献】 特開昭59−049229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるジカルボン酸単位と、下記一般式(2)で表されるジアミン単位と、を含有することを特徴とするポリアミド化合物。
【化1】

(nは11を示し、mは11を示す。
はn−C19を示す。
はn−C19を示す。)

【化2】

(Aは、下記の群から選ばれる2価の有機基を示す。)

【請求項2】
更に、下記一般式(3)で表されるジアミン単位、を含有することを特徴とする請求項1に記載のポリアミド化合物。
【化3】

(Bは、下記の群から選ばれる2価の有機基を示す。但し、AとBとは異なるものとする。)
【請求項3】
Aは、下記の2価の有機基であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリアミド化合物。
【請求項4】
下記一般式(4)で表される構造を有するジカルボン酸化合物と、ジアミン化合物と、を反応させることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のポリアミド化合物の製造方法。
【化4】

(nは11を示し、mは11の整数を示す。
はn−C19を示す。
はn−C19を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド化合物、及びその製造方法に関する。特に、耐吸水特性等に優れたポリアミド化合物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化防止や資源リスク低減の観点から石油系ポリマーに代わって、植物由来の化合物を出発原料としたポリマーが注目されている(例えば非特許文献1〜3参照)。
ところが、その代表的例のポリ乳酸は、植物由来の化合物であるが、耐熱性、耐加水分解性に課題がある。よって、ポリ乳酸のみでは、適用範囲が限られてしまう。例えば、ポリ乳酸の特性から、ポリ乳酸を適用できない自動車部品等もある。
このような状況のもと、ポリ乳酸以外の植物由来の高性能ポリマーの開発が望まれている。
【0003】
従来からポリアミド化合物として、ε‐カプロラクタムを重合したPA6を始め、ジカルボン酸とジアミンを重合したPA66、PA610、PA1010などが知られている。また、植物由来のポリアミド化合物であるPA11は11−アミノウンデカン酸の重合により得られている。
【0004】
しかしながら、ε‐カプロラクタム、ジカルボン酸とジアミン、11-アミノウンデカンの重合により得られる従来のポリアミド化合物では、十分な特性が得られない場合があった。例えば、柔軟性の不足、吸水率が高い、エネルギー吸収性が低い、結晶性樹脂である等の改善すべき特性を有している場合があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】S. Chatti, M. Bortolussi, A. Loupy, J. C. Blais, D. Bogdal, M. Majdoub. Eur. Polym. J. 38, 1851 (2002).
【非特許文献2】S. Chatti, H. R. Kricheldorf. G. Schwarz. J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. 44, 3616 (2006).
【非特許文献3】C. -H. Lee, H. Takagi, H. Okamoto, M. Kato. J. Appl. Polym. Sci. 127, 530 (2013).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、従来のポリアミド化合物よりも特性が優れたポリアミド化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記従来技術を鑑み、鋭意研究を重ねた結果、新規なポリアミド化合物を開発した。
そして、この新規なポリアミド化合物は、従来のポリアミド化合物には見られない優れた特性を有するという予想外の事実を見いだした。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
【0008】
すなわち、請求項1に記載の発明は、
下記一般式(1)で表されるジカルボン酸単位と、下記一般式(2)で表されるジアミン単位と、を含有することを特徴とするポリアミド化合物であることを要旨とする。
【化1】

(nは11を示し、mは11を示す。
はn−C19を示す。
はn−C19を示す。)
【化2】

(Aは、下記の群から選ばれる2価の有機基を示す。)
【0009】
請求項2に記載の発明は、
更に、下記一般式(3)で表されるジアミン単位、を含有することを特徴とする請求項1に記載のポリアミド化合物である。
【化3】

(Bは、下記の群から選ばれる2価の有機基を示す。但し、AとBとは異なるものとする。)
【0010】
請求項に記載の発明は、Aは、下記の2価の有機基であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリアミド化合物である。

請求項に記載の発明は、
下記一般式(4)で表される構造を有するジカルボン酸化合物と、ジアミン化合物と、を反応させることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のポリアミド化合物の製造方法である。
【化4】

(nは11を示し、mは11を示す。
はn−C19を示す。
はn−C19を示す。)


【発明の効果】
【0011】
本発明のポリアミド化合物は、長鎖を有するから耐吸水特性に優れる。
【0012】
また、本発明のポリアミド化合物の製造方法によれば、耐吸水特性に優れたポリアミド化合物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明する。
図1】従来のポリアミド化合物と実験例のポリアミド化合物との吸水率を比較して示すグラフである。
図2】従来の衝撃吸収樹脂と実験例のポリアミド化合物のtanδを比較して示すグラフである。
図3】tanδの値から推定した実験例のポリアミド化合物の衝撃吸収率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0015】
以下、本発明を詳しく説明する。
〔1〕ポリアミド化合物
本発明のポリアミド化合物は、下記一般式(1)で表されるジカルボン酸単位と、下記一般式(2)で表されるジアミン単位と、を含有する。
【化5】

(nは11を示し、mは11を示す。
はn−C19を示す。
はn−C19を示す。)
【化6】

(Aは、下記の群から選ばれる2価の有機基を示す。)
【0016】
本発明のポリアミド化合物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の構成単位をさらに含んでいてもよい。
【0017】
本発明のポリアミド化合物において、ジカルボン酸単位の含有量は、特に限定されない。ジカルボン酸単位の含有量は、通常、5〜50モル%であり、好ましくは20〜50モル%であり、更に好ましくは30〜50モル%である。
本発明のポリアミド化合物において、ジアミン単位の含有量は、特に限定されない。ジアミン単位の含有量は、通常、5〜50モル%であり、好ましくは20〜50モル%であり、更に好ましくは30〜50モル%である。
ジカルボン酸単位とジアミン単位との含有量の割合は、重合反応の観点から、ほぼ同量であることが好ましく、ジカルボン酸単位の含有量がジアミン単位の含有量の±1モル%であることがより好ましい。
【0018】
〔1−1〕ジカルボン酸単位
本発明のポリアミド化合物では、上述のように下記一般式(1)で表されるジカルボン酸単位を含有する。
【化7】

(nは11を示し、mは11を示す。
はn−C19を示す。
はn−C19を示す。)
【0021】
ジカルボン酸単位として、本発明では、nは11である。また、mは11である。n、mがこの値であると、分子中に水素結合の含有割合が少なくなり、耐水性が向上するからである。
【0022】
本発明では、ジカルボン酸単位として、以下の式(5)に示す単位を有する。式(5)に示す単位は、植物由来であり、地球温暖化防止や資源リスク低減の観点から好ましい。
【化8】
【0023】
本発明のポリアミド化合物中のジカルボン酸単位の合計を100モル%とした場合に、上述の一般式(1)で表されるジカルボン酸単位の含有量は特に限定されない。一般式(1)で表されるジカルボン酸単位を30〜100モル%含むことが好ましく、50〜100モル%含むことが更に好ましく、70〜100モル%含むことが特に好ましい。一般式(1)で表されるジカルボン酸単位の含有量をこの範囲とすると、耐吸水特性が優れるからである。
【0024】
一般式(1)で表されるジカルボン酸単位以外のジカルボン酸単位を構成しうる化合物は、特に限定されない。
例えば、ジカルボン酸化合物の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの炭素数2〜25の直鎖脂肪族ジカルボン酸、又は、トリグリセリドの分留により得られる不飽和脂肪酸を二量化した炭素数14〜48の二量化脂肪族ジカルボン酸(ダイマー酸)及びこれらの水素添加物(水添ダイマー酸)などの脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、および、テレフタル酸、イソフタル酸、1,3−ベンゼン二酢酸、1,4−ベンゼン二酢酸などの芳香族ジカルボン酸を例示できる。また、これらのジカルボン酸化合物の誘導体を用いてもよい。誘導体としては、カルボン酸ハロゲン化物等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のポリアミド化合物中のジカルボン酸単位の合計を100モル%とした場合に、上述の一般式(1)で表されるジカルボン酸以外のジカルボン酸単位の含有量は特に限定されない。一般式(1)で表されるジカルボン酸以外のジカルボン酸単位の含有量は、50モル%未満であることが好ましく、20モル%未満であることが更に好ましく、10モル%未満であることが特に好ましい。一般式(1)で表されるジカルボン酸単位以外のジカルボン酸単位の含有量をこの範囲とすると、耐吸水特性が向上するからである。
【0025】
〔1−2〕ジアミン単位
本発明のポリアミド化合物中のジアミン単位には、少なくとも一般式(2)で表されるジアミン単位が含まれる。
【化9】

(Aは、下記の群から選ばれる2価の有機基を示す。)
【0026】
2価の有機基としては、芳香環を2又は4有する二価の有機基が採用される。これらの2価の有機基を有するジアミン単位を有するポリアミド化合物は衝撃吸収率が高くなる傾向にあるからである。
【0027】
2価の有機基の具体例としては、上述のように下記に示される有機基が採用される。
【化10】
【0028】
また、ジアミン単位を構成しうる化合物としては、下記に示されるジアミンが好適に例示される。
【化11】
【0029】
本発明のポリアミド化合物中のジアミン単位の合計を100モル%とした場合に、上述の一般式(2)で表されるジアミン単位の含有量は特に限定されない。一般式(2)で表されるジアミン単位を5〜100モル%含むことが好ましく、20〜100モル%含むことが更に好ましく、30〜100モル%含むことが特に好ましい。一般式(2)で表されるジアミン酸単位の含有量をこの範囲とすると、耐吸水特性が優れるからである。
【0030】
本発明のポリアミド化合物中のジアミン単位には、上記一般式(2)で表されるジアミン単位の他に、一般式(3)で表されるジアミン単位を含んでいてもよい。
【化12】

(Bは、下記の群から選ばれる2価の有機基を示す。但し、AとBとは異なるものとする。)
【0031】
ポリアミド化合物が、一般式(2)で表されるジアミン単位に加えて、一般式(3)で表されるジアミン単位を含むことによって、種々の特性を付与することが可能となる。
【0032】
一般式(2)で表されるジアミン単位を構成しうる化合物と、一般式(3)で表されるジアミン単位を構成しうる化合物の好ましい組み合わせとしては、例えば、下記の組み合わせが挙げられる。
【化16】

(M−4)

【化17】

(M−5)

【化18】

(M−6)
【0033】
一般式(2)で表されるジアミン単位の他に、一般式(3)で表されるジアミン単位を含んでいる場合には、ポリアミド化合物中のジアミン単位の合計100モル%中に、一般式(2)で表されるジアミン単位及び一般式(3)で表されるジアミン単位の合計を、50〜100モル%含むことが好ましく、60〜100モル%含むことが更に好ましく、70〜100モル%含むことが特に好ましい。この範囲内とすると、耐吸水特性が優れるからである。
一般式(2)で表されるジアミン単位の他に、一般式(3)で表されるジアミン単位を含んでいる場合には、一般式(2)で表されるジアミン単位:一般式(3)で表されるジアミン単位のモル比が1:0.01〜1:100であることが好ましく、1:0.1〜1:10であることが更に好ましく、1:0.3〜1:3であることが更に好ましい。
【0034】
一般式(2)で表されるジアミン単位の他に、一般式(3)で表されるジアミン単位を含むポリアミド化合物においては、一般式(1)で表されるジカルボン酸単位及び一般式(2)で表されるジアミン単位からなるくり返し単位と、一般式(1)で表されるジカルボン酸単位及び一般式(3)で表されるジアミン単位からなるくり返し単位とは、ランダムにポリアミド化合物中に存在していてもよい。
また、一般式(1)で表されるジカルボン酸単位及び一般式(2)で表されるジアミン単位からなるくり返し単位と、一般式(1)で表されるジカルボン酸単位及び一般式(3)で表されるジアミン単位からなるくり返し単位とが、それぞれブロック状になってポリアミド化合物中に存在していてもよい。すなわち、このブロック状の場合には、一般式(1)で表されるジカルボン酸単位及び一般式(2)で表されるジアミン単位からなるくり返し単位のみが集まっているブロックと、一般式(1)で表されるジカルボン酸単位及び一般式(3)で表されるジアミン単位からなるくり返し単位のみが集まっているブロックが存在することになる。そして、これらのブロックを有するポリアミド化合物では、一般式(1)で表されるジカルボン酸単位及び一般式(2)で表されるジアミン単位からなるくり返し単位のみからなるポリアミド化合物の性質と、一般式(1)で表されるジカルボン酸単位及び一般式(3)で表されるジアミン単位からなるくり返し単位のみからなるポリアミド化合物の性質とを兼ね備えている。
【0035】
一般式(2)(3)で表されるジアミン単位以外のジアミン単位を構成しうる化合物は、特に限定されない。
例えば、一般式(2)(3)で表されるジアミン単位以外のジアミンとしては、公知の脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどを挙げることができる。
【0036】
一般式(2)(3)で表されるジアミン単位以外のジアミン単位を構成しうる脂肪族ジアミンとして、例えば1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、ペンタメチレンジアミンなどを挙げることができる。
脂環式ジアミンとして、例えば4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを挙げることができる。
芳香族ジアミンとして、例えばo−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、3,5−ジアミノ安息香酸、ドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ドデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、4−(4’−トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、2,4−ジアミノーN,N―ジアリルアニリン、4−アミノベンジルアミン、3−アミノベンジルアミン、1−(2,4−ジアミノフェニル)ピペラジン−4−カルボン酸、4−(モルホリン−4−イル)ベンゼン−1,3−ジアミン、1,3−ビス(N−(4−アミノフェニル)ピペリジニル)プロパン、α−アミノ−ω−アミノフェニルアルキレンなどを挙げることができる。
これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
本発明のポリアミド化合物中のジアミン単位の合計を100モル%とした場合に、上述の一般式(2)(3)で表されるジアミン以外のジアミン単位の含有量は特に限定されない。一般式(2)(3)で表されるジアミン以外のジアミン単位の含有量は、50モル%未満であることが好ましく、30モル%未満であることが更に好ましく、10モル%未満であることが特に好ましい。一般式(2)(3)で表されるジアミン単位以外のジアミン単位の含有量をこの範囲とすると、耐吸水特性が向上するからである。
【0038】
〔1−3 ポリアミド化合物の重合度〕
本発明のポリアミド化合物の重合度には、特に制限がない。1%の濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が、1.01〜5.0の範囲、更に1.01〜5.0の範囲、特に2.0〜4.0の範囲のものが好ましい。
なお、相対粘度は、ポリアミド化合物1gを96%硫酸100mLに溶解し、キャノンフェンスケ型粘度計にて25℃で測定した落下時間(t)と、同様に測定した96%硫酸そのものの落下時間(t)の比であり、次式で示される。
相対粘度=t/t
【0039】
〔1−4 ポリアミド化合物の特性〕
本発明のポリアミド化合物は、長鎖を有する化合物(ジカルボン酸単位を構成しうるジカルボン酸成分)を用いている。よって、ポリアミド化合物は、分子中に水素結合の含有が少なくなるから、耐吸水特性に優れる。
また、ジアミン単位に、芳香環を有しているので、この部分はハードセグメントとして機能する。他方、ジカルボン酸単位における、−(CH−、−(CH−の部分は、柔らかい性質を与えるソフトセグメントとして機能する。よって、ジアミン単位に、芳香環を有するポリアミド化合物では、ソフトセグメントとハードセグメントがアミド結合により連結された構造となる。したがって、このポリアミド化合物は、疎水構造を有するとともに、ソフトセグメントの柔軟なアルキル鎖によって伸び特性が優れ、しかもハードセグメントの芳香環によって剛直性部位をもつ樹脂となる。
本発明のポリアミド化合物の特徴は、エネルギー吸収性が高いことが挙げられる。また、他の特徴としては、耐吸水率が高いことが挙げられる。また、他の特徴としては、非結晶性(透明性)であることが挙げられる。
これらの特徴は、ε‐カプロラクタム、ジカルボン酸とジアミン、11−アミノウンデカンの重合により得られる従来のポリアミドにはない特徴である。
【0040】
〔2〕ポリアミド化合物の製造方法
本発明のポリアミド化合物の製造方法は、下記一般式(4)で表される構造を有するジカルボン酸化合物と、ジアミン化合物と、を反応させることを特徴とする。
【化19】

(nは11を示し、mは11を示す。
はn−C19を示す。
はn−C19を示す。)
【0042】
ジカルボン酸化合物としては、ジカルボン酸の他、ジカルボン酸のカルボキシル基の水酸基が他のヘテロ原子(炭素、水素、金属以外の原子)に置換したカルボン酸誘導体も用いることができる。カルボン酸誘導体としては、例えば、水酸基がハロゲンに代わったハロゲン化アシル(酸ハロゲン化物)が挙げられる。
【0043】
本発明のポリアミド化合物は、ジアミン単位を構成しうるジアミン成分と、ジカルボン酸単位を構成しうるジカルボン酸成分と、を重縮合させることで製造することができる。重縮合条件等を調整することで重合度を制御できる。
ポリアミド化合物を製造する方法としては、特に限定されない。ポリアミド化合物を製造する方法としては、例えば、(1)酸または塩基触媒を利用する方法、(2)カルボン酸の活性法、(3)トランスエステル化を利用する方法、(4)縮合剤の利用をする方法などが好適に用いられている。ここでは、好適な製造方法として、カルボン酸を活性化した酸クロリドを用いたポリアミド化合物の製造方法を例示する。
【0044】
例えば、下記の製造スキームに沿って製造することができる。ここでは、一般式(1)で表されるジカルボン酸単位と、一般式(2)で表されるジアミン単位とを含む2成分のポリアミド化合物の合成を例に挙げる。
この方法では、ジカルボン酸を活性化して酸クロリドとし、酸クロリドとジアミンとを反応させてポリアミド化合物としている。
【0045】
【化20】
【0046】
次に、一般式(1)で表されるジカルボン酸単位と、一般式(2)で表されるジアミン単位と、一般式(3)で表されるジアミン単位とを含む3成分のポリアミド化合物の合成を例に挙げる。
この方法では、ジカルボン酸を活性化して酸クロリドとし、酸クロリドと2種のジアミンとを反応させてポリアミド化合物としている。
【0047】
【化21】
【0048】
なお、ジカルボン酸を活性化して酸クロリドとしてからジアミンと反応させると、効率的に、耐吸水特性に優れたポリアミド化合物を製造することができる。
【0049】
また、重縮合時に分子量調整剤としてモノアミンやモノカルボン酸を加えてもよい。また、重縮合反応を抑制して所望の重合度とするために、ポリアミド化合物を構成するジアミン成分とカルボン酸成分との比率(モル比)を1からずらして調整してもよい。
【0050】
上述の酸クロリド等のカルボン酸ジハライドとジアミンとの反応により脱ハロゲン化水素反応で重合する場合には、反応が急激に進行するため反応速度制御のため比較的低温で反応させることが好ましい。
例えば、−10℃〜100℃の範囲で行なうことが好ましい。
反応溶媒としては、特に限定されず、公知の溶媒は広く適用できる。例えば、反応溶媒としての有機極性溶媒として、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホン、ジメチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、テトラメチル尿素、N,N′−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、又は2種以上の混合溶媒として用いてもよい。また、必要に応じて塩化水素、ハロゲン化金属塩、たとえば塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化カリウム等を併用して溶解性を向上してもよい。
【0051】
また、生成したポリアミド化合物の溶媒への溶解度、溶液粘度によって異なるが、ポリアミド化合物の濃度(ポリマー濃度)は特に限定されない。ポリアミド化合物の濃度は、例えば、生産性等の観点から、0.1〜40質量%が好ましい。
ポリアミド化合物の濃度は、ポリアミド化合物組成の内容と組成比、溶解度、溶液粘度、取扱性、脱泡の容易性から総合的に判断して決められる。
【0052】
原料の添加方法は、特に限定されない。例えば、反応溶媒にジアミンを添加し、低温下で溶解したのち、一方の原料である酸クロライド等のジカルボン酸ハライドを添加する。この場合ジアミンの劣化を防ぐために不活性雰囲気下(例えば窒素雰囲気下、アルゴンガス雰囲気下)で行うことが好ましい。ジアミンと酸ハライドとのモル比率は、基本的には等モルとすべきであるが、重合度の制御のため一方の原料であるジアミンあるいは酸成分を過剰に加えてもよいし、単官能の有機物、たとえばアニリン、ナフチルアミン、酢酸クロライド、ベンゾイルクロライド等の化合物を適量加えてもよい。
【0053】
また、本発明のポリアミド化合物の場合、特性を改良するために、ジアミンあるいは酸クロライドの一部を反応せしめたのち、残りの原料を添加するというようにポリマーのブロック化を意図した添加方法も採用してよい。
【0054】
このようにして得た重合反応物(ポリアミド化合物)は、副生物であるハロゲン化水素を伴なうために、中和を必要とする。中和剤は一般に知られている塩基性化合物であれば特に限定されない。
中和剤としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ベンジルジメチルアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、テトラエチルアンモニウム塩等を好適に用いることができる。また、このような中和剤は、単独に粉体で添加してもよいが、微粉化して有機溶媒中にスラリーとして分散せしめたものを用いるのが、反応性,操作性の上からも好ましい。
【0055】
以上の方法で得たポリアミド化合物溶液は、水,メタノール等の貧溶媒中で分離することができる。また、中和反応後の溶液もそのまま成形用溶液として用いることもできる。
【0056】
また、本発明のポリアミド化合物の工業的な重縮合方法としては、特に限定されず、公知の方法が広く用いられる。例えば、加圧塩法、常圧滴下法、加圧滴下法、反応押出法等が挙げられる。また、反応温度は出来る限り低い方が、ポリアミド化合物の黄色化やゲル化を抑制でき、安定した性状のポリアミド化合物が得られる。
【0057】
加圧塩法では、ナイロン塩を原料として加圧下にて溶融重縮合を行う方法である。具体的には、ジアミン成分と、ジカルボン酸成分と、必要に応じて他成分と、からなるナイロン塩水溶液を調製した後、該水溶液を濃縮し、次いで加圧下にて昇温し、縮合水を除去しながら重縮合させる。缶内を徐々に常圧に戻しながら、ポリアミド化合物の融点+10℃程度まで昇温し、保持した後、更に、0.02MPaGまで徐々に減圧しつつ、そのままの温度で保持し、重縮合を継続する。一定の撹拌トルクに達したら、缶内を窒素で0.3MPaG程度に加圧してポリアミド化合物を回収する。
【0058】
常圧滴下法では、常圧下にて、ジカルボン酸成分と、必要に応じて他成分とを加熱溶融した混合物に、ジアミン成分を連続的に滴下し、縮合水を除去しながら重縮合させる。なお、生成するポリアミド化合物の融点よりも反応温度が下回らないように、反応系を昇温しながら重縮合反応を行う。
【0059】
加圧滴下法では、まず、重縮合缶にジカルボン酸成分と、必要に応じて他の成分とを仕込み、各成分を撹拌して溶融混合し混合物を調製する。次いで、缶内を好ましくは0.3〜0.4MPaG程度に加圧しながら混合物にジアミン成分を連続的に滴下し、縮合水を除去しながら重縮合させる。この際、生成するポリアミド化合物の融点よりも反応温度が下回らないように、反応系を昇温しながら重縮合反応を行う。設定モル比に達したらジアミン成分の滴下を終了し、缶内を徐々に常圧に戻しながら、ポリアミド化合物の融点+10℃程度まで昇温し、保持した後、更に、0.02MPaGまで徐々に減圧しつつ、そのままの温度で保持し、重縮合を継続する。一定の撹拌トルクに達したら、缶内を窒素で0.3MPaG程度に加圧してポリアミド化合物を回収する。
反応押出法は、アミド交換反応により、ポリアミドの骨格中に組み込む方法である。
【0060】
〔3〕ポリアミド化合物を用いたポリアミド組成物
本発明のポリアミド化合物に、用途や性能に応じて、滑剤、結晶化核剤、白化防止剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、酸化防止剤、耐衝撃性改良材等の添加剤を添加させてポリアミド組成物としてもよい。これらの添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて添加することができる。また、本発明のポリアミド化合物を、要求される用途や性能に応じて、種々の樹脂と混合してポリアミド組成物としてもよい。
【0061】
〔4〕ポリアミド化合物の用途
本発明のポリアミド化合物は、低吸水性が要求されるあらゆる用途に利用できる。例えば、自動車、鉄道車両、船舶、飛行機等の内装材及び外装材等として用いられる。このうち自動車用品としては、自動車用内装材、自動車用インストルメントパネル、自動車用外装材等が挙げられる。具体的には、ドア基材、パッケージトレー、ピラーガーニッシュ、スイッチベース、クオーターパネル、サイドパネル、アームレスト、自動車用ドアトリム、シート構造材、シートバックボード、天井材、コンソールボックス、自動車用ダッシュボード、各種インストルメントパネル、デッキトリム、バンパー、スポイラー、カウリング等が挙げられる。更に、例えば、建築物、家具等の内装材及び外装材等が挙げられる。即ち、ドア表装材、ドア構造材、各種家具(机、椅子、棚、箪笥など)の表装材等が挙げられる。その他、包装体、収容体(トレイ等)、保護用部材、パーティション部材等が挙げられる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
なお、実験例9、10、14、15、16、17、18、19、20が実施例であり、実験例1、2、3、4、5、6、7、8、11、12、13は参考例である。
【0063】
1.ポリアミド化合物の合成

<実験例1> (PA−C6の合成)
ポリアミド化合物(PA−C6)の合成は、下記のスキームに沿って行った(なお、実験例2〜10も同様のスキームに沿って合成した)。
【0064】
【化22】
【0065】
詳細には、フラスコ(100mL)に窒素雰囲気下、1,6−ジアミノヘキサン(1,6−Diaminohexane,C6)(1.09g,7.85mmol)とDMAc(20mL)を入れ、室温でしばらく攪拌後、トリエチルアミン(1.37mL,9.81mmol)を加えた後、0℃で5分攪拌した。その後、酸クロリド(acid chloride)(2)(5.30g,7.85mmol)をDMAc(5mL)に溶かし滴下し、4時間反応させた。反応終了後、メタノールを用い生成物を再沈殿させることにより精製し、ろ過により目的物を得た。生成物は真空乾燥(95℃,6時間)した。白色粉末,収量:4.7g,FT−IR(ATR,cm−1):3305(NH,amide),2922,2850,2355,1633(C=O,carbonyl),1538,1457,1030,680.
【0066】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化23】
【0067】
<実験例2> (PA−C8の合成)
1,8−ジアミノオクタン(1,8−Diaminooctane,C8)(0.72g,4.87mmol),トリエチルアミン(0.85mL,6.09mmol),酸クロリド(2)(3.29g,4.87mmol),DMAc(25mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。淡黄色粉末,収量:3.0g,FT−IR(ATR,cm−1):3301.5(NH,amide),2918.7,2846.4,1641.1(C=O,carbonyl),1545.7,1461.8,719.3.
【0068】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化24】
【0069】
<実験例3> (PA−C10の合成)
1,10−ジアミノデカン(1,10−Diaminodecane,C10)(0.85g,4.77mmol),トリエチルアミン(0.83mL,5.96mmol),酸クロリド(2)(3.22g,4.77mmol),DMAc(20mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。白色粉末,収量:3.3g,FT−IR(ATR,cm−1):3296.7(NH,amide),2918.7,2846.4,1641.1(C=O,carbonyl),1539.9,1459.8,723.2.
【0070】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化25】
【0071】
<実験例4>(PA−C12の合成)
1,12−ジアミノドデカン(1,12−Diaminododecane,C12)(0.86g,4.3mmol),トリエチルアミン(0.76mL,5.4mmol),酸クロリド(2)(2.93g,4.3mmol),DMAc(20mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。白色粉末,収量:3.0g,FT−IR(ATR,cm−1):3305.4(NH,amide),2918.7,2850.3,1637.3(C=O,carbonyl),1538.0,1457.9,719.3.
【0072】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化26】
【0073】
<実験例5>(PA−Cyの合成)
1,6−ジアミノシクロヘキサン(1,6−Diaminocyclohexane,Cy)(0.58g,5.08mmol),トリエチルアミン(0.89mL,6.35mmol),酸クロリド(2)(3.43g,5.08mmol),DMAc(25mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。白色粉末,収量:3.1g,FT−IR(ATR,cm−1):3290.0(NH,amide),2916.8,2850.3,1637.3(C=O,carbonyl),1538.0,1453.1,723.2.
【0074】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化27】
【0075】
<実験例6>(PA−PDの合成)
p−フェニレンジアミン(p−Phenylenediamine,PD)(0.65g,5.85mmol),トリエチルアミン(1.02mL,7.31mmol),酸クロリド(2)(3.95g,5.85mmol),DMAc(25mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。淡黄色粉末,収量:3.8g,FT−IR(ATR,cm−1):3293.8(NH,amide),2922.6,2849.3,1658.5(C=O,carbonyl),1513.8,1461.6,1400.1,835.0,717.4,515.9.
【0076】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化28】
【0077】
<実験例7>(PA−DPEの合成)
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−Diaminodiphenyl ether,DPE)(1.01g,5.06mmol),トリエチルアミン(0.89mL,6.33mmol),酸クロリド(2)(3.42g,5.06mmol),DMAc(25mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。淡黄色繊維状,収量:3.8g,FT−IR(ATR,cm−1):3290.0(NH,amide),2919.7,2850.3,1653.7(C=O,carbonyl),1497.5,1226.6,831.2.
【0078】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化29】
【0079】
<実験例8>(PA−DPMの合成)
4,4’−ジアミノジフェニルメタン(4,4’−Diaminodiphenyl methane,DPM)(1.0g,5.06mmol),トリエチルアミン(0.71mL,5.06mmol),酸クロリド(2)(3.42g,5.06mmol),DMAc(20mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。淡黄色粉末,収量:3.7g,FT−IR(ATR,cm−1):3305.4(NH,amide),2919.7,2850.3,1658.5(C=O,carbonyl),1597.7,1513.8,1459.8,1409.7,810.9,715.5,502.4.
【0080】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化30】
【0081】
<実験例9>(PA−BPEの合成)
2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(2,2−Bis[4−(4−aminophenoxy)phenyl propane,BPE)(2.94g,7.02mmol),トリエチルアミン(1.23mL,8.8mmol),酸クロリド(2)(4.74g,7.02mmol),DMAc(25mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。pale brown fiber,収量:7.3g,FT−IR(ATR,cm−1):3293.8(NH,amide),2917.8,2849.3,1653.7(C=O,carbonyl),1492.6,1220.7,831.2,512.0.
【0082】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化31】
【0083】
<実験例10>(PA−BSの合成)
4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(Bis(4−aminophenyl)sulfone,BS)(1.36g,5.33mmol),トリエチルアミン(0.93mL,6.7mmol),酸クロリド(2)(3.6g,5.33mmol),DMAc(25mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。淡黄色粉末,収量:3.4g,FT−IR(ATR,cm−1):3313.1(NH,amide),2919.7,2846.4,1666.2(C=O,carbonyl),1592.9,1517.7,1402.0,1301.7,1146.7,1102.1,835.0,551.5.
【0084】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化32】
【0085】
<実験例11>(PA−C12(0.5)/PD(0.5)の合成)
ポリアミド化合物(PA−C12(0.5)/PD(0.5))の合成は、下記のスキームに沿って行った(なお、実験例12〜17も同様のスキームに沿って合成した)。
【0086】
【化33】
【0087】
1,12−ジアミノドデカン(C12)(0.5g,2.5mmol),p−フェニレンジアミン(PD)(0.28g,2.5mmol),トリエチルアミン(1.05mL,7.5mmol),酸クロリド(2)(3.38g,5.0mmol),DMAc(20mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。淡黄色粉末,収量:3.4g,FT−IR(ATR,cm−1):3297.7(NH,amide),2918.7,2854.1,1645.0(C=O,carbonyl),1549.5,1513.8,1461.8,719.3.
【0088】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化34】
【0089】
<実験例12>(PA−PD(0.5)/DPM(0.5)の合成)
p−フェニレンジアミン(PD)(0.23g,2.1mmol),4,4’−ジアミノジフェニルメタン(DPM)(0.43g,2.1mmol),トリエチルアミン(0.74mL,5.28mmol),酸クロリド(2)(2.85g,4.22mmol),DMAc(20mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。淡黄色粉末,収量:3.0g,FT−IR(ATR,cm−1):3305.4(NH,amide),2917.8,2849.3,1657.5(C=O,carbonyl),1511.9,1461.8,1405.9,715.5.
【0090】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化35】
【0091】
<実験例13>(PA−PD(0.5)/DPE(0.5)の合成)
p−フェニレンジアミン(PD)(0.29g,2.56mmol),4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DPE)(0.51g,2.56mmol),トリエチルアミン(0.9mL,6.4mmol),酸クロリド(2)(3.46g,5.12mmol),DMAc(25mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。淡黄色粉末,収量:4.0g,FT−IR(ATR,cm−1):3293.8(NH,amide),2922.6,2846.4,1657.5(C=O,carbonyl),1501.3,1222.6,831.2,715.5,513.9
【0092】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化36】
【0093】
<実験例14>(PA−BPE(0.5)/C4(0.5)の合成)
2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BPE)(1.07g,2.6mmol),1,4−ジアミノブタン(1,4−Diaminbutane,C4)(0.23g,2.6mmol),トリエチルアミン(0.73mL,6.4mmol),酸クロリド(2)(3.51g,5.19mmol),DMAc(25mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。白色粉末,収量:3.8g,FT−IR(ATR,cm−1):3292.9(NH,amide),1657.5(C=O,carbonyl).
【0094】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化37】
【0095】
<実験例15>(PA−BPE(0.5)/PD(0.5)の合成)
2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BPE)(1.22g,2.92mmol),p−フェニレンジアミン(PD)(0.32g,2.92mmol),トリエチルアミン(1.02mL,7.3mmol),酸クロリド(2)(3.94g,5.83mmol),DMAc(25mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。淡黄色粉末,収量:4.7g,FT−IR(ATR,cm−1):3293.8(NH,amide),2923.6,2854.1,1653.7(C=O,carbonyl),1501.3,1461.8,1402.0,1230.4,827.3.
【0096】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化38】
【0097】
<実験例16>(PA−BPE(0.75)/DPM(0.25)の合成)
2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BPE)(1.85g,4.44mmol),4,4’−ジアミノジフェニルメタン(DPM)(0.3g,1.48mmol),トリエチルアミン(1.04mL,7.4mmol),酸クロリド(2)(4.0g,5.92mmol),DMAc(25mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。淡黄色粉末,収量:6.2g,FT−IR(ATR,cm−1):3293.8(NH,amide),1653.7(C=O,carbonyl).
【0098】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化39】
【0099】
<実験例17>(PA−BPE(0.75)/PD(0.25)の合成)
2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BPE)(2.14g,5.13mmol),p−フェニレンジアミン(PD)(0.19g,1.71mmol),トリエチルアミン(1.2mL,8.6mmol),酸クロリド(2)(4.62g,6.84mmol),DMAc(25mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。淡黄色粉末,収量:6.6g,FT−IR(ATR,cm−1):3292.9(NH,amide),2920.7,2854.1,1657.5(C=O,carbonyl),1497.5,1456.0,1401.0,1230.4,827.3.
【0100】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化40】
【0101】
<<機械的物性評価のためのポリアミド化合物の合成、及び試験片作製>>
<実験例18>(PA/BPEの合成)
セパラブルフラスコ(Separable flask(500mL))に窒素雰囲気下、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BPE)(35.7g,52.85mmol)とDMAc(140mL)を入れ、0℃でしばらくメカニカル攪拌機を用い攪拌後、トリエチルアミン(18.5mL,132.0mmol)加えた後、0℃で5分間攪拌した。その後、酸クロリド(2)(35.7g,52.85mmol)をDMAc(40mL)に溶解させ滴下、室温で4時間反応させた。反応終了後、水を用い生成物を再沈殿させ精製し、4回洗浄した。生成物は真空乾燥(85℃,8時間)した。白色繊維状、収量:50.0g。FT−IR(ATR,cm−1):3293.8(NH,amide),2917.8,2849.3,1653.7(C=O,carbonyl),1492.6,1220.7,831.2,512.0.
合成されたポリアミド化合物を用いて試験片後述の方法で作製した。成形温度:150〜170℃、金型温度:15〜17℃とした。
【0102】
<実験例19>(PA/BPE(0.8)/DPE(0.2)の合成)
セパラブルフラスコ(Separable flask(500mL))に窒素雰囲気下、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BPE)(27.2g,64.9mmol)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DPE)(3.3g,16.2mmol)とDMAc(180mL)を入れ、0oCでしばらくメカニカル攪拌機を用い攪拌後、トリエチルアミン(28.4mL,202.8mmol)加えた後、0℃で5分間攪拌した。その後、酸クロリド(2)(54.8g,812.1mmol)をDMAc(70mL)に溶解させ滴下、室温で4時間反応させた。反応終了後、水を用い生成物を再沈殿させ精製し、4回洗浄した。生成物は真空乾燥(90℃,8時間)した。白色繊維状、収量:80.0g。FT−IR(ATR,cm−1):3288.3(NH,amide),2914.3,2846.7,1657.1(C=O,carbonyl),1459.7,1210.4,835.9,706.4,514.3.
合成されたポリアミド化合物を用いて試験片は後述の方法で作製した。成形温度:150〜170℃、金型温度:15〜17℃とした。
【0103】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化41】
【0104】
<実験例20>(PA/BPE(0.8)/NB(0.2)の合成)
2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BPE)(45.4g,67.2mmol)、ビスアミノエチルノルボネン(NB)(2.1g,13.4mmol)とDMAc(170 mL)、トリエチルアミン(23.6mL,168.0mmol),酸クロリド(2)(45.4g,67.2mmol),DMAc(50mL)以外はPA/BPE(0.8)/DPE(0.2)の合成(実験例19)と同様に行った。白色繊維状、収量:64.0g。FT−IR(ATR,cm−1):3296.7(NH,amide),2921.6,2851.2,1654.6(C=O,carbonyl),1605.4,1541.8,1498.4,1228.4,830.2,721.2,513.0.
合成されたポリアミド化合物を用いて試験片は後述の方法で作製した。成形温度:140〜160℃、金型温度:16〜17℃とした。
【0105】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化42】
【0106】
2.各種物性の試験方法
〔1〕TGA(Thermogravimetric Analyse,熱重量分析)測定)
試料の重さ:10mg、温度範囲:30−550℃で測定し、熱分解温度T(5%重量減少温度)を求めた。TGA測定にはBRUKER−AXS(株)TG−DTA2000SAを用いた。
【0107】
〔2〕吸水率試験
予め真空乾燥したポリアミド化合物を、熱プレスを用いて成形した。長さ43.0mm×幅26.0mm×厚み2.0mmの試験片を用いた。測定条件は以下のとおりとした。
吸水率測定前に、予め真空乾燥(温度:25℃、6時間)した試験片の重さを正確に測定した。その後、イオン交換水(100mL)を入れたビーカー中に24時間浸した。浸した後、試験片をビーカーから取り出し表面についた水を拭いた。重量を正確に測定し、試験片の重量差を求めた。
【0108】
〔3〕動的粘弾性試験
ポリアミド化合物の貯蔵弾性率、tanδの温度依存性について、動的粘弾性測定を行って求めた。試料の幅、厚みを測定して測定パラメータに用いた。測定にはUBM(株)製 動的粘弾性測定装置Rheogel-E4000を用い、測定条件は以下のとおりとした。
測定温度範囲:-100〜100℃、昇温速度:4℃/分、測定周波数:5Hz、歪(ε):(貯蔵弾性率)>108Pa:0.05%。試験片は、予め真空乾燥したポリアミドを、熱プレスを用いて成形した。幅5mm x 厚み2.0mm x 長さ30mmの試験片を作成して、これを動的粘弾性測定に用いた。
【0109】
〔4〕機械的物性評価
(1) 試験片作製
射出成形により試験片の作製は、それぞれのポリアミド化合物(バイオポリアミド)をスケールアップ(Scale-up)合成し、集めたサンプル(約500g)を用いた。Toyoseiki社製、Mini Test Press-10を用い、平板状へと成形した。平板状に成形したポリアミド化合物をはさみで切ってペレットとした。得られたペレットを射出成形機(小型電動射出成形機 SE18DUZ、住友重機械工業(株)製)を用いて試験片を成形した。成形条件としては樹脂温度を140〜200℃とし、金型温度は14〜18℃とした。試験片としてJIS K 7162 (t 2mm)の多目的試験片5A型(ダンベル状)、幅 10 mm x 長さ 80 mm x 厚み4mm試験片(短冊状)を成形した。ダンベル状の試験片は引張試験に用いた。短冊状試験片は、K7110のタイプ1試験片に加工しシャルピー衝撃試験と曲げ試験に用いた。
【0110】
(2) 引張試験
引張特性は、引張試験を行い、降伏応力(引張強度)、引張弾性率、破断伸びを評価した。試験片はJIS K 7162の多目的試験片5A型(ダンベル状)を用いた。測定に当たっては、試験片の幅、厚みを測定して用いた。測定には島津製作所製のAGI-50kN型 試験機を用いた。測定条件は、引張速度1 mm/min、引張荷重50kN、測定温度23℃とした。
【0111】
(3) 曲げ試験
曲げ特性は、曲げ試験を行い、曲げ弾性率、曲げ強さを評価した。試験片は、(1)で作製したK7110のタイプ1試験片について、K7171に準拠して評価を行った。試験に当たっては、試験片の幅、厚みを測定した。測定には島津製作所製のAGS−X 10kNX 5試験機を用いた。測定条件は、試験速度2mm/min、最大荷重10kN、測定温度23℃とした。
【0112】
(4) シャルピー衝撃試験
衝撃特性は、ノッチ付シャルピー試験を行い、シャルピー衝撃値を求めて評価した。試験片は、(1)で作製したK7110のタイプ1試験片について、K7111に準拠してノッチを付けて作製した。試験に当たっては、試験片の幅、厚みを測定した。測定にはシャルピー衝撃試験機、株式会社 東洋精機製作所DG−U8を用いた。
【0113】
3.試験結果
〔1〕TGA、吸水率試験、動的粘弾性試験の結果
表1に、2成分ポリアミド化合物の試験結果を示す。
【0114】
【表1】
【0115】
表2に、3成分ポリアミド化合物の試験結果を示す。
【0116】
【表2】
【0117】
図1に、従来のポリアミド化合物と実施例のポリアミド化合物との吸水率のグラフを示す。
また、図2に従来の衝撃吸収樹脂と実験例のポリアミド化合物のtanδを比較したグラフを示す。
また、図3図2のtanδの値から推定した本発明の実験例のポリアミド化合物の衝撃吸収率を示す。
【0118】
表1、表2、図1より、いずれの実験例のポリアミド化合物も従来のポリアミド化合物に比べて、耐吸水性が高いことが分かる。
詳細には、実験例のポリアミド化合物は、従来ポリアミド化合物の吸水性(PA6: 9.0%, PA66: 8.5%, PA11: 1.9%, PA12: 1.6%)に比べ耐吸水性が高いことが確認された。これは、本実験例のポリアミド化合物は、分子中に長鎖分子が導入されており、これによって水素結合部分(水を吸う部分)を少なくし、水分子の結合を減らすことができたためであると推測される。
図1より、特に、従来ポリアミド化合物であるPA12の吸水率(1.5%、飽和状態)に比べ本実験例のポリアミド化合物の耐吸水率が約5〜30倍向上したことが分かる。
【0119】
動的粘弾性測定により求めたポリアミドの貯蔵弾性率tanδが上記の表1、2に示されている。表1、2には、動的粘弾性測定により求めた−50℃における貯蔵弾性率とtanδのピークからもとめたガラス転移温度も示した。
粘弾性体に応力を加え変形させると、与えられた力の大部分は内部変形のエネルギーとして貯えられ、応力の除去に際し復元の原動力となる。一方、与えられた力の一部は歪みに伴う内部の分子移動の摩擦のために消費され、最終的に熱に変わる。
内部摩擦の大小を示す値がtanδである。このtanδが大きければ伝達率が小さくエネルギー吸収率が大きくなる。
【0120】
図2に示されるように、実験例のポリアミド化合物のtanδは、従来の衝撃吸収樹脂に匹敵する値を有していることが分かる。
また、図3に示されるように、図2のtanδの値から推定した実験例のポリアミド化合物の衝撃吸収率も、従来の衝撃吸収樹脂に匹敵する値を有していることが分かる。
このように、動的粘弾性測定により衝撃吸収率(エネルギー吸収率)を推定できた。一般的に、tanδが高くなるとエネルギー吸収率が高くなる。なお、天然ゴムの衝撃吸収率は25%,tanδ=0.1であり、シリコンゴムの衝撃吸収率は28%,tanδ=0.5であり、ブチルゴムの衝撃吸収率は41%,tanδ=1.0であり、軟質ポリウレタンの衝撃吸収率は58%,tanδ=1.4である。
【0121】
また、成形による得られた試験片は透明であり、本発明のポリアミド化合物は非結晶性樹脂であることが確認された。
【0122】
〔2〕機械的物性評価
表3に、ポリアミド化合物の機械的物性の測定結果を示す。
【0123】
【表3】
【0124】
表3は、左から順番に実験例18、19、20の結果を示す。いずれのポリアミド化合物も引張特性、曲げ特性、及び衝撃特性が優れていることが確認された。
【0125】
<実験例の効果>
実験例のポリアミド化合物は、ソフトセグメントとハードセグメントをアミド結合により連結されており、疎水構造、柔軟なアルキル鎖、伸び特性、剛直性部位をもつ樹脂である。このポリアミド化合物により高強度・高エネルギー吸収性能を兼ね備えた樹脂が実現される。実験例のポリアミドの特徴は、次の3つである。すなわち、〔1〕エネルギー吸収性が高いこと。〔2〕耐吸水率が高いこと。〔3〕非結晶性(透明性)であること、を特徴とする。
また、本実験例18、19、20のポリアミド化合物では、引張特性、曲げ特性、及び衝撃特性が優れていることを特徴とする。
【0126】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または本質から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0127】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明のポリアミド化合物は、低吸水性が要求されるあらゆる用途に利用できる。例えば、自動車、鉄道車両、船舶、飛行機等のあらゆる部材として利用できる。例えば、内装材及び外装材等として用いられる。このうち自動車用品としては、自動車用内装材、自動車用インストルメントパネル、自動車用外装材等が挙げられる。具体的には、ドア基材、パッケージトレー、ピラーガーニッシュ、スイッチベース、クオーターパネル、サイドパネル、アームレスト、自動車用ドアトリム、シート構造材、シートバックボード、天井材、コンソールボックス、自動車用ダッシュボード、各種インストルメントパネル、デッキトリム、バンパー、スポイラー、カウリング等が挙げられる。更に、例えば、建築物、家具等の内装材及び外装材等が挙げられる。即ち、ドア表装材、ドア構造材、各種家具(机、椅子、棚、箪笥など)の表装材等が挙げられる。その他、包装体、収容体(トレイ等)、保護用部材、パーティション部材等が挙げられる。
図1
図2
図3