【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
なお、実験例9、10、14、15、16、17、18、19、20が実施例であり、実験例1、2、3、4、5、6、7、8、11、12、13は参考例である。
【0063】
1.ポリアミド化合物の合成
<実験例1> (PA−C6の合成)
ポリアミド化合物(PA−C6)の合成は、下記のスキームに沿って行った(なお、実験例2〜10も同様のスキームに沿って合成した)。
【0064】
【化22】
【0065】
詳細には、フラスコ(100mL)に窒素雰囲気下、1,6−ジアミノヘキサン(1,6−Diaminohexane,C6)(1.09g,7.85mmol)とDMAc(20mL)を入れ、室温でしばらく攪拌後、トリエチルアミン(1.37mL,9.81mmol)を加えた後、0℃で5分攪拌した。その後、酸クロリド(acid chloride)(2)(5.30g,7.85mmol)をDMAc(5mL)に溶かし滴下し、4時間反応させた。反応終了後、メタノールを用い生成物を再沈殿させることにより精製し、ろ過により目的物を得た。生成物は真空乾燥(95℃,6時間)した。白色粉末,収量:4.7g,FT−IR(ATR,cm
−1):3305(NH,amide),2922,2850,2355,1633(C=O,carbonyl),1538,1457,1030,680.
【0066】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化23】
【0067】
<実験例2> (PA−C8の合成)
1,8−ジアミノオクタン(1,8−Diaminooctane,C8)(0.72g,4.87mmol),トリエチルアミン(0.85mL,6.09mmol),酸クロリド(2)(3.29g,4.87mmol),DMAc(25mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。淡黄色粉末,収量:3.0g,FT−IR(ATR,cm
−1):3301.5(NH,amide),2918.7,2846.4,1641.1(C=O,carbonyl),1545.7,1461.8,719.3.
【0068】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化24】
【0069】
<実験例3> (PA−C10の合成)
1,10−ジアミノデカン(1,10−Diaminodecane,C10)(0.85g,4.77mmol),トリエチルアミン(0.83mL,5.96mmol),酸クロリド(2)(3.22g,4.77mmol),DMAc(20mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。白色粉末,収量:3.3g,FT−IR(ATR,cm
−1):3296.7(NH,amide),2918.7,2846.4,1641.1(C=O,carbonyl),1539.9,1459.8,723.2.
【0070】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化25】
【0071】
<実験例4>(PA−C12の合成)
1,12−ジアミノドデカン(1,12−Diaminododecane,C12)(0.86g,4.3mmol),トリエチルアミン(0.76mL,5.4mmol),酸クロリド(2)(2.93g,4.3mmol),DMAc(20mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。白色粉末,収量:3.0g,FT−IR(ATR,cm
−1):3305.4(NH,amide),2918.7,2850.3,1637.3(C=O,carbonyl),1538.0,1457.9,719.3.
【0072】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化26】
【0073】
<実験例5>(PA−Cyの合成)
1,6−ジアミノシクロヘキサン(1,6−Diaminocyclohexane,Cy)(0.58g,5.08mmol),トリエチルアミン(0.89mL,6.35mmol),酸クロリド(2)(3.43g,5.08mmol),DMAc(25mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。白色粉末,収量:3.1g,FT−IR(ATR,cm
−1):3290.0(NH,amide),2916.8,2850.3,1637.3(C=O,carbonyl),1538.0,1453.1,723.2.
【0074】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化27】
【0075】
<実験例6>(PA−PDの合成)
p−フェニレンジアミン(p−Phenylenediamine,PD)(0.65g,5.85mmol),トリエチルアミン(1.02mL,7.31mmol),酸クロリド(2)(3.95g,5.85mmol),DMAc(25mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。淡黄色粉末,収量:3.8g,FT−IR(ATR,cm
−1):3293.8(NH,amide),2922.6,2849.3,1658.5(C=O,carbonyl),1513.8,1461.6,1400.1,835.0,717.4,515.9.
【0076】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化28】
【0077】
<実験例7>(PA−DPEの合成)
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−Diaminodiphenyl ether,DPE)(1.01g,5.06mmol),トリエチルアミン(0.89mL,6.33mmol),酸クロリド(2)(3.42g,5.06mmol),DMAc(25mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。淡黄色繊維状,収量:3.8g,FT−IR(ATR,cm
−1):3290.0(NH,amide),2919.7,2850.3,1653.7(C=O,carbonyl),1497.5,1226.6,831.2.
【0078】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化29】
【0079】
<実験例8>(PA−DPMの合成)
4,4’−ジアミノジフェニルメタン(4,4’−Diaminodiphenyl methane,DPM)(1.0g,5.06mmol),トリエチルアミン(0.71mL,5.06mmol),酸クロリド(2)(3.42g,5.06mmol),DMAc(20mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。淡黄色粉末,収量:3.7g,FT−IR(ATR,cm
−1):3305.4(NH,amide),2919.7,2850.3,1658.5(C=O,carbonyl),1597.7,1513.8,1459.8,1409.7,810.9,715.5,502.4.
【0080】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化30】
【0081】
<実験例9>(PA−BPEの合成)
2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(2,2−Bis[4−(4−aminophenoxy)phenyl propane,BPE)(2.94g,7.02mmol),トリエチルアミン(1.23mL,8.8mmol),酸クロリド(2)(4.74g,7.02mmol),DMAc(25mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。pale brown fiber,収量:7.3g,FT−IR(ATR,cm
−1):3293.8(NH,amide),2917.8,2849.3,1653.7(C=O,carbonyl),1492.6,1220.7,831.2,512.0.
【0082】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化31】
【0083】
<実験例10>(PA−BSの合成)
4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(Bis(4−aminophenyl)sulfone,BS)(1.36g,5.33mmol),トリエチルアミン(0.93mL,6.7mmol),酸クロリド(2)(3.6g,5.33mmol),DMAc(25mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。淡黄色粉末,収量:3.4g,FT−IR(ATR,cm
−1):3313.1(NH,amide),2919.7,2846.4,1666.2(C=O,carbonyl),1592.9,1517.7,1402.0,1301.7,1146.7,1102.1,835.0,551.5.
【0084】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化32】
【0085】
<実験例11>(PA−C12(0.5)/PD(0.5)の合成)
ポリアミド化合物(PA−C12(0.5)/PD(0.5))の合成は、下記のスキームに沿って行った(なお、実験例12〜17も同様のスキームに沿って合成した)。
【0086】
【化33】
【0087】
1,12−ジアミノドデカン(C12)(0.5g,2.5mmol),p−フェニレンジアミン(PD)(0.28g,2.5mmol),トリエチルアミン(1.05mL,7.5mmol),酸クロリド(2)(3.38g,5.0mmol),DMAc(20mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。淡黄色粉末,収量:3.4g,FT−IR(ATR,cm
−1):3297.7(NH,amide),2918.7,2854.1,1645.0(C=O,carbonyl),1549.5,1513.8,1461.8,719.3.
【0088】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化34】
【0089】
<実験例12>(PA−PD(0.5)/DPM(0.5)の合成)
p−フェニレンジアミン(PD)(0.23g,2.1mmol),4,4’−ジアミノジフェニルメタン(DPM)(0.43g,2.1mmol),トリエチルアミン(0.74mL,5.28mmol),酸クロリド(2)(2.85g,4.22mmol),DMAc(20mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。淡黄色粉末,収量:3.0g,FT−IR(ATR,cm
−1):3305.4(NH,amide),2917.8,2849.3,1657.5(C=O,carbonyl),1511.9,1461.8,1405.9,715.5.
【0090】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化35】
【0091】
<実験例13>(PA−PD(0.5)/DPE(0.5)の合成)
p−フェニレンジアミン(PD)(0.29g,2.56mmol),4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DPE)(0.51g,2.56mmol),トリエチルアミン(0.9mL,6.4mmol),酸クロリド(2)(3.46g,5.12mmol),DMAc(25mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。淡黄色粉末,収量:4.0g,FT−IR(ATR,cm
−1):3293.8(NH,amide),2922.6,2846.4,1657.5(C=O,carbonyl),1501.3,1222.6,831.2,715.5,513.9
【0092】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化36】
【0093】
<実験例14>(PA−BPE(0.5)/C4(0.5)の合成)
2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BPE)(1.07g,2.6mmol),1,4−ジアミノブタン(1,4−Diaminbutane,C4)(0.23g,2.6mmol),トリエチルアミン(0.73mL,6.4mmol),酸クロリド(2)(3.51g,5.19mmol),DMAc(25mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。白色粉末,収量:3.8g,FT−IR(ATR,cm
−1):3292.9(NH,amide),1657.5(C=O,carbonyl).
【0094】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化37】
【0095】
<実験例15>(PA−BPE(0.5)/PD(0.5)の合成)
2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BPE)(1.22g,2.92mmol),p−フェニレンジアミン(PD)(0.32g,2.92mmol),トリエチルアミン(1.02mL,7.3mmol),酸クロリド(2)(3.94g,5.83mmol),DMAc(25mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。淡黄色粉末,収量:4.7g,FT−IR(ATR,cm
−1):3293.8(NH,amide),2923.6,2854.1,1653.7(C=O,carbonyl),1501.3,1461.8,1402.0,1230.4,827.3.
【0096】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化38】
【0097】
<実験例16>(PA−BPE(0.75)/DPM(0.25)の合成)
2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BPE)(1.85g,4.44mmol),4,4’−ジアミノジフェニルメタン(DPM)(0.3g,1.48mmol),トリエチルアミン(1.04mL,7.4mmol),酸クロリド(2)(4.0g,5.92mmol),DMAc(25mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。淡黄色粉末,収量:6.2g,FT−IR(ATR,cm
−1):3293.8(NH,amide),1653.7(C=O,carbonyl).
【0098】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化39】
【0099】
<実験例17>(PA−BPE(0.75)/PD(0.25)の合成)
2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BPE)(2.14g,5.13mmol),p−フェニレンジアミン(PD)(0.19g,1.71mmol),トリエチルアミン(1.2mL,8.6mmol),酸クロリド(2)(4.62g,6.84mmol),DMAc(25mL)以外はPA−C6の合成と同様に行った。淡黄色粉末,収量:6.6g,FT−IR(ATR,cm
−1):3292.9(NH,amide),2920.7,2854.1,1657.5(C=O,carbonyl),1497.5,1456.0,1401.0,1230.4,827.3.
【0100】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化40】
【0101】
<<機械的物性評価のためのポリアミド化合物の合成、及び試験片作製>>
<実験例18>(PA/BPEの合成)
セパラブルフラスコ(Separable flask(500mL))に窒素雰囲気下、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BPE)(35.7g,52.85mmol)とDMAc(140mL)を入れ、0℃でしばらくメカニカル攪拌機を用い攪拌後、トリエチルアミン(18.5mL,132.0mmol)加えた後、0℃で5分間攪拌した。その後、酸クロリド(2)(35.7g,52.85mmol)をDMAc(40mL)に溶解させ滴下、室温で4時間反応させた。反応終了後、水を用い生成物を再沈殿させ精製し、4回洗浄した。生成物は真空乾燥(85℃,8時間)した。白色繊維状、収量:50.0g。FT−IR(ATR,cm
−1):3293.8(NH,amide),2917.8,2849.3,1653.7(C=O,carbonyl),1492.6,1220.7,831.2,512.0.
合成されたポリアミド化合物を用いて試験片後述の方法で作製した。成形温度:150〜170℃、金型温度:15〜17℃とした。
【0102】
<実験例19>(PA/BPE(0.8)/DPE(0.2)の合成)
セパラブルフラスコ(Separable flask(500mL))に窒素雰囲気下、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BPE)(27.2g,64.9mmol)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DPE)(3.3g,16.2mmol)とDMAc(180mL)を入れ、0oCでしばらくメカニカル攪拌機を用い攪拌後、トリエチルアミン(28.4mL,202.8mmol)加えた後、0℃で5分間攪拌した。その後、酸クロリド(2)(54.8g,812.1mmol)をDMAc(70mL)に溶解させ滴下、室温で4時間反応させた。反応終了後、水を用い生成物を再沈殿させ精製し、4回洗浄した。生成物は真空乾燥(90℃,8時間)した。白色繊維状、収量:80.0g。FT−IR(ATR,cm
−1):3288.3(NH,amide),2914.3,2846.7,1657.1(C=O,carbonyl),1459.7,1210.4,835.9,706.4,514.3.
合成されたポリアミド化合物を用いて試験片は後述の方法で作製した。成形温度:150〜170℃、金型温度:15〜17℃とした。
【0103】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化41】
【0104】
<実験例20>(PA/BPE(0.8)/NB(0.2)の合成)
2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BPE)(45.4g,67.2mmol)、ビスアミノエチルノルボネン(NB)(2.1g,13.4mmol)とDMAc(170 mL)、トリエチルアミン(23.6mL,168.0mmol),酸クロリド(2)(45.4g,67.2mmol),DMAc(50mL)以外はPA/BPE(0.8)/DPE(0.2)の合成(実験例19)と同様に行った。白色繊維状、収量:64.0g。FT−IR(ATR,cm
−1):3296.7(NH,amide),2921.6,2851.2,1654.6(C=O,carbonyl),1605.4,1541.8,1498.4,1228.4,830.2,721.2,513.0.
合成されたポリアミド化合物を用いて試験片は後述の方法で作製した。成形温度:140〜160℃、金型温度:16〜17℃とした。
【0105】
本実験例で用いたジアミンの化学式を以下に示す。
【化42】
【0106】
2.各種物性の試験方法
〔1〕TGA(Thermogravimetric Analyse,熱重量分析)測定)
試料の重さ:10mg、温度範囲:30−550℃で測定し、熱分解温度T
d(5%重量減少温度)を求めた。TGA測定にはBRUKER−AXS(株)TG−DTA2000SAを用いた。
【0107】
〔2〕吸水率試験
予め真空乾燥したポリアミド化合物を、熱プレスを用いて成形した。長さ43.0mm×幅26.0mm×厚み2.0mmの試験片を用いた。測定条件は以下のとおりとした。
吸水率測定前に、予め真空乾燥(温度:25℃、6時間)した試験片の重さを正確に測定した。その後、イオン交換水(100mL)を入れたビーカー中に24時間浸した。浸した後、試験片をビーカーから取り出し表面についた水を拭いた。重量を正確に測定し、試験片の重量差を求めた。
【0108】
〔3〕動的粘弾性試験
ポリアミド化合物の貯蔵弾性率、tanδの温度依存性について、動的粘弾性測定を行って求めた。試料の幅、厚みを測定して測定パラメータに用いた。測定にはUBM(株)製 動的粘弾性測定装置Rheogel-E4000を用い、測定条件は以下のとおりとした。
測定温度範囲:-100〜100℃、昇温速度:4℃/分、測定周波数:5Hz、歪(ε):(貯蔵弾性率)>10
8Pa:0.05%。試験片は、予め真空乾燥したポリアミドを、熱プレスを用いて成形した。幅5mm x 厚み2.0mm x 長さ30mmの試験片を作成して、これを動的粘弾性測定に用いた。
【0109】
〔4〕機械的物性評価
(1) 試験片作製
射出成形により試験片の作製は、それぞれのポリアミド化合物(バイオポリアミド)をスケールアップ(Scale-up)合成し、集めたサンプル(約500g)を用いた。Toyoseiki社製、Mini Test Press-10を用い、平板状へと成形した。平板状に成形したポリアミド化合物をはさみで切ってペレットとした。得られたペレットを射出成形機(小型電動射出成形機 SE18DUZ、住友重機械工業(株)製)を用いて試験片を成形した。成形条件としては樹脂温度を140〜200℃とし、金型温度は14〜18℃とした。試験片としてJIS K 7162 (t 2mm)の多目的試験片5A型(ダンベル状)、幅 10 mm x 長さ 80 mm x 厚み4mm試験片(短冊状)を成形した。ダンベル状の試験片は引張試験に用いた。短冊状試験片は、K7110のタイプ1試験片に加工しシャルピー衝撃試験と曲げ試験に用いた。
【0110】
(2) 引張試験
引張特性は、引張試験を行い、降伏応力(引張強度)、引張弾性率、破断伸びを評価した。試験片はJIS K 7162の多目的試験片5A型(ダンベル状)を用いた。測定に当たっては、試験片の幅、厚みを測定して用いた。測定には島津製作所製のAGI-50kN型 試験機を用いた。測定条件は、引張速度1 mm/min、引張荷重50kN、測定温度23℃とした。
【0111】
(3) 曲げ試験
曲げ特性は、曲げ試験を行い、曲げ弾性率、曲げ強さを評価した。試験片は、(1)で作製したK7110のタイプ1試験片について、K7171に準拠して評価を行った。試験に当たっては、試験片の幅、厚みを測定した。測定には島津製作所製のAGS−X 10kNX 5試験機を用いた。測定条件は、試験速度2mm/min、最大荷重10kN、測定温度23℃とした。
【0112】
(4) シャルピー衝撃試験
衝撃特性は、ノッチ付シャルピー試験を行い、シャルピー衝撃値を求めて評価した。試験片は、(1)で作製したK7110のタイプ1試験片について、K7111に準拠してノッチを付けて作製した。試験に当たっては、試験片の幅、厚みを測定した。測定にはシャルピー衝撃試験機、株式会社 東洋精機製作所DG−U8を用いた。
【0113】
3.試験結果
〔1〕TGA、吸水率試験、動的粘弾性試験の結果
表1に、2成分ポリアミド化合物の試験結果を示す。
【0114】
【表1】
【0115】
表2に、3成分ポリアミド化合物の試験結果を示す。
【0116】
【表2】
【0117】
図1に、従来のポリアミド化合物と実施例のポリアミド化合物との吸水率のグラフを示す。
また、
図2に従来の衝撃吸収樹脂と実験例のポリアミド化合物のtanδを比較したグラフを示す。
また、
図3に
図2のtanδの値から推定した本発明の実験例のポリアミド化合物の衝撃吸収率を示す。
【0118】
表1、表2、
図1より、いずれの実験例のポリアミド化合物も従来のポリアミド化合物に比べて、耐吸水性が高いことが分かる。
詳細には、実験例のポリアミド化合物は、従来ポリアミド化合物の吸水性(PA6: 9.0%, PA66: 8.5%, PA11: 1.9%, PA12: 1.6%)に比べ耐吸水性が高いことが確認された。これは、本実験例のポリアミド化合物は、分子中に長鎖分子が導入されており、これによって水素結合部分(水を吸う部分)を少なくし、水分子の結合を減らすことができたためであると推測される。
図1より、特に、従来ポリアミド化合物であるPA12の吸水率(1.5%、飽和状態)に比べ本実験例のポリアミド化合物の耐吸水率が約5〜30倍向上したことが分かる。
【0119】
動的粘弾性測定により求めたポリアミドの貯蔵弾性率tanδが上記の表1、2に示されている。表1、2には、動的粘弾性測定により求めた−50℃における貯蔵弾性率とtanδのピークからもとめたガラス転移温度も示した。
粘弾性体に応力を加え変形させると、与えられた力の大部分は内部変形のエネルギーとして貯えられ、応力の除去に際し復元の原動力となる。一方、与えられた力の一部は歪みに伴う内部の分子移動の摩擦のために消費され、最終的に熱に変わる。
内部摩擦の大小を示す値がtanδである。このtanδが大きければ伝達率が小さくエネルギー吸収率が大きくなる。
【0120】
図2に示されるように、実験例のポリアミド化合物のtanδは、従来の衝撃吸収樹脂に匹敵する値を有していることが分かる。
また、
図3に示されるように、
図2のtanδの値から推定した実験例のポリアミド化合物の衝撃吸収率も、従来の衝撃吸収樹脂に匹敵する値を有していることが分かる。
このように、動的粘弾性測定により衝撃吸収率(エネルギー吸収率)を推定できた。一般的に、tanδが高くなるとエネルギー吸収率が高くなる。なお、天然ゴムの衝撃吸収率は25%,tanδ=0.1であり、シリコンゴムの衝撃吸収率は28%,tanδ=0.5であり、ブチルゴムの衝撃吸収率は41%,tanδ=1.0であり、軟質ポリウレタンの衝撃吸収率は58%,tanδ=1.4である。
【0121】
また、成形による得られた試験片は透明であり、本発明のポリアミド化合物は非結晶性樹脂であることが確認された。
【0122】
〔2〕機械的物性評価
表3に、ポリアミド化合物の機械的物性の測定結果を示す。
【0123】
【表3】
【0124】
表3は、左から順番に実験例18、19、20の結果を示す。いずれのポリアミド化合物も引張特性、曲げ特性、及び衝撃特性が優れていることが確認された。
【0125】
<実験例の効果>
実験例のポリアミド化合物は、ソフトセグメントとハードセグメントをアミド結合により連結されており、疎水構造、柔軟なアルキル鎖、伸び特性、剛直性部位をもつ樹脂である。このポリアミド化合物により高強度・高エネルギー吸収性能を兼ね備えた樹脂が実現される。実験例のポリアミドの特徴は、次の3つである。すなわち、〔1〕エネルギー吸収性が高いこと。〔2〕耐吸水率が高いこと。〔3〕非結晶性(透明性)であること、を特徴とする。
また、本実験例18、19、20のポリアミド化合物では、引張特性、曲げ特性、及び衝撃特性が優れていることを特徴とする。
【0126】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または本質から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0127】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。