特許第6414799号(P6414799)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6414799樹脂組成物、プリプレグ、積層板、金属箔張積層板及びプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6414799
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】樹脂組成物、プリプレグ、積層板、金属箔張積層板及びプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20181022BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20181022BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20181022BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20181022BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20181022BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20181022BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20181022BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C08K9/06
   C08K3/00
   C08K3/22
   C08J5/24CEZ
   H05K1/03 610R
   H05K1/03 610K
   H05K1/03 610L
   B32B15/08 U
【請求項の数】23
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2014-557455(P2014-557455)
(86)(22)【出願日】2014年1月14日
(86)【国際出願番号】JP2014050430
(87)【国際公開番号】WO2014112464
(87)【国際公開日】20140724
【審査請求日】2016年11月17日
(31)【優先権主張番号】特願2013-4411(P2013-4411)
(32)【優先日】2013年1月15日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-217997(P2013-217997)
(32)【優先日】2013年10月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】富澤 克哉
(72)【発明者】
【氏名】千葉 友
(72)【発明者】
【氏名】高橋 博史
(72)【発明者】
【氏名】志賀 英祐
(72)【発明者】
【氏名】植山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】野水 健太郎
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/010672(WO,A1)
【文献】 特表2010−519068(JP,A)
【文献】 特開2012−153752(JP,A)
【文献】 特開2012−102169(JP,A)
【文献】 特開2012−131946(JP,A)
【文献】 特開2012−131947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 101/00
C08K 9/06
C08K 3/00
C08K 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が1.0nm〜100nmのアルミナ及び/又はベーマイトのナノ粒子(A)、平均粒子径が0.20μm〜100μmの微粒子(B)及び熱硬化性樹脂(C)を含有する樹脂組成物であって、前記ナノ粒子(A)は、その表面がポリシロキサンベースの改質剤によって処理されたものである、樹脂組成物。
【請求項2】
前記ナノ粒子(A)が、リン酸エステル、リン酸エステル塩、及びアルキルベンゼンスルホン酸からなる群より選ばれる1種以上の分散助剤によって処理されたものである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記微粒子(B)を、前記熱硬化性樹脂(C)100質量部に対して、200質量部以上含有する、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記微粒子(B)が、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ベーマイト、酸化チタン、シリコーンゴム及びシリコーン複合パウダーからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記ナノ粒子(A)が、溶剤又は樹脂中に1次粒子として分散されたものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱硬化性樹脂(C)が、シアン酸エステル化合物(D)、フェノール樹脂(E)、マレイミド化合物(F)、エポキシ樹脂(G)及びBT樹脂(H)からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記シアン酸エステル化合物(D)が、下記式(2)及び/又は下記式(3)で表される化合物である、請求項6に記載の樹脂組成物。
【化1】
(式中、Rは各々独立に水素原子又はメチル基を示し、nは1以上の整数を示す。)
【化2】
(式中、Rは各々独立に水素原子又はメチル基を示し、nは1以上の整数を示す。)
【請求項8】
前記マレイミド化合物(F)が、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス{4−(4−マレイミドフェノキシ)−フェニル}プロパン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン及び下記式(6)で表されるマレイミド化合物からなる群より選ばれる1種以上である、請求項6又は7に記載の樹脂組成物。
【化3】
(式中、Rは各々独立に水素原子又はメチル基を示し、nは1以上の整数を示す。)
【請求項9】
前記エポキシ樹脂(G)が、下記式(7)、(8)、(9)、(11)及び(12)で表される化合物からなる群より選ばれる1種以上である、請求項6〜8のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【化4】
(式中、R10は各々独立に水素原子又はメチル基を示し、nは1以上の整数を示す。)
【化5】
(式中、R11は各々独立に水素原子又はメチル基を示し、nは1以上の整数を示す。)
【化6】
(式中、R12は各々独立に水素原子又はメチル基を示し、nは1以上の整数を示す。)
【化7】
(式中、R13は各々独立に水素原子又はメチル基を示す。)
【化8】
(式中、R14は各々独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、又はアルキル部位の炭素原子数が1〜4のアラルキル基を示す。)
【請求項10】
前記フェノール樹脂(E)が、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、アミノトリアジンノボラック型フェノール樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂、下記式(4)で表されるナフトールアラルキル型フェノール樹脂、及び下記式(5)で表されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂からなる群より選ばれる1種以上である、請求項6〜9のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【化9】
(式中、Rは各々独立に水素原子又はメチル基を示し、nは1以上の整数を示す。)
【化10】
(式中、Rは各々独立に水素原子又はメチル基を示し、nは1以上の整数を示す)
【請求項11】
下記式(13)で表されるイミダゾール化合物を更に含有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【化11】
(式中、Arは各々独立にフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基若しくはアントラセニル基、又はその水酸基変性物を示し、R15は水素原子若しくはアルキル基又はその水酸基変性物、あるいはアリール基を示す。)
【請求項12】
前記アルミナナノ粒子(A)を、前記微粒子(B)の総質量に対して0.010〜5質量%含有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
前記熱硬化性樹脂(C)が、シアン酸エステル化合物(D)を、前記熱硬化性樹脂(C)の総量100質量部に対して、10〜60質量部含有する、請求項6〜12のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
前記熱硬化性樹脂(C)が、フェノール樹脂(E)を、前記熱硬化性樹脂(C)の総量100質量部に対して、10〜60質量部含有する、請求項6〜13のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
前記熱硬化性樹脂(C)が、マレイミド化合物(F)を、前記熱硬化性樹脂(C)の総量100質量部に対して、3.0〜50質量部含有する、請求項6〜14のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
前記熱硬化性樹脂(C)が、エポキシ樹脂(G)を、前記熱硬化性樹脂(C)の総量100質量部に対して、10〜80質量部含有する、請求項6〜15のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項17】
前記熱硬化性樹脂(C)が、BT樹脂(H)を、前記熱硬化性樹脂(C)の総量100質量部に対して、20〜80質量部含有する、請求項6〜16のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項18】
前記ナノ粒子(A)が、アルミナナノ粒子である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項19】
基材と、その基材に含浸又は塗布した請求項1〜18のいずれか一項に記載の樹脂組成物と、を含有するプリプレグ。
【請求項20】
前記基材が、Eガラスクロス、Tガラスクロス、Sガラスクロス、Qガラスクロス及び有機繊維からなる群より選ばれる1種以上である、請求項19に記載のプリプレグ。
【請求項21】
請求項19又は20に記載のプリプレグを1枚以上含有する積層板。
【請求項22】
請求項19又は20に記載のプリプレグと、そのプリプレグに積層した金属箔と、を含有する金属箔張積層板。
【請求項23】
絶縁層と、前記絶縁層の表面に形成された導体層とを含むプリント配線板であって、前記絶縁層が、請求項1〜18のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含むプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、プリプレグ、積層板、金属箔張積層板及びプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器や通信機、パーソナルコンピューター等に広く用いられている半導体パッケージの高機能化・小型化が進むに従い、高集積化や高密度実装化が近年益々加速している。それに伴い、半導体パッケージに使用されている積層板に対しての要求も多岐にわたり、耐熱性や信頼性に加え、低熱膨張、高熱伝導性及び高弾性など様々な特性が要求されている。
【0003】
それらの中でも、特に低熱膨張の積層板が強く求められている。これは、下記の要因による。すなわち、半導体素子と半導体プラスチックパッケージ用プリント配線板の熱膨張率の差が大きく、製造工程において熱衝撃が加わった時に熱膨張差により半導体プラスチックパッケージに反りが発生する。そうすると、半導体素子と半導体プラスチックパッケージ用プリント配線板間や、半導体プラスチックパッケージと実装されるプリント配線板間で接続不良が生じてしまう。そこで、低熱膨張の積層板を用いることにより、熱膨張差をなるべく小さくしようという意図である。
【0004】
また、近年では、積層板の高熱伝導性に対する要求も強くなっている。これは、エンジンコントロールユニットの自動車駆動部への搭載が検討されるなど、半導体プラスチックパッケージが高温環境下で使用される機会が増えていることや、高集積化や高密度実装化に伴う設置部品数の増加により発熱量が増加しているためである。これらに対する熱対策として、ヒートシンクや放熱フィンの検討や、積層板にサーマルビアを設けるなどの対策が採られている。しかしながら、これらの対策では十分とはいえず、積層板自体の放熱性を高めるために、更なる高熱伝導性が求められている。
【0005】
積層板に低熱膨張や高熱伝導性を付与する方法として、種々の特性に優れたフィラーを高い割合で充填させる方法が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。また、フィラーの高充填は、積層板に低熱膨張や高熱伝導性を付与する以外にも、弾性率などの機械特性、耐燃性、電気特性及び白色度を向上させることができることから、積層板の高機能化に有用な手法として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−73543号公報
【特許文献2】特開2003−268136号公報
【特許文献3】特開2001−348488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らは、低熱膨張や高熱伝導性等の特性を付与するために、積層板にフィラーを高い割合で充填すると、以下の問題が生じることを見出した。
(1)樹脂組成物の体積比率が小さくなって流動性が低下し、その結果、樹脂組成物をガラスクロス等の基材に含浸させて半硬化して得られるプリプレグの粘度が悪化する。
(2)そのようなプリプレグを金属箔と重ねて硬化させた金属箔張積層板にクラックやボイドが発生し、成型性が悪化する。
(3)ボイドの発生により、金属箔張積層板の吸湿耐熱性、弾性率、及び、銅箔と積層板の絶縁層との密着強度が悪化する。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、粘度が金属箔張積層板を作製するのに都合が良いほど低いプリプレグを作製することでき、しかも、吸湿耐熱性に優れた金属箔張積層板を作製することが可能な樹脂組成物、並びに、その樹脂組成物を用いて作製されるプリプレグ、積層板及びプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、かかる問題点の解決のため鋭意検討した結果、特定のナノ粒子を、特定粒径の微粒子及び熱硬化性樹脂と共に含有する樹脂組成物が上記目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、下記のとおりである。
[1]平均粒子径が1.0nm〜100nmのアルミナ及び/又はベーマイトのナノ粒子(A)、平均粒子径が0.20μm〜100μmの微粒子(B)及び熱硬化性樹脂(C)を含有する樹脂組成物であって、前記ナノ粒子(A)は、その表面がポリシロキサンベースの改質剤によって処理されたものである、樹脂組成物。
[2]前記ナノ粒子(A)が、リン酸エステル、リン酸エステル塩、及びアルキルベンゼンスルホン酸からなる群より選ばれる1種以上の分散助剤によって処理されたものである、上記樹脂組成物。
[3]前記微粒子(B)を、前記熱硬化性樹脂(C)100質量部に対して、200質量部以上含有する、上記いずれかの樹脂組成物。
[4]前記微粒子(B)が、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ベーマイト、酸化チタン、シリコーンゴム及びシリコーン複合パウダーからなる群より選ばれる1種以上である、上記いずれかの樹脂組成物。
[5]前記ナノ粒子(A)が、溶剤又は樹脂中に1次粒子として分散されたものである、上記いずれかの樹脂組成物。
[6]前記熱硬化性樹脂(C)が、シアン酸エステル化合物(D)、フェノール樹脂(E)、マレイミド化合物(F)、エポキシ樹脂(G)及びBT樹脂(H)からなる群より選ばれる1種以上である、上記いずれかの樹脂組成物。
[7]前記シアン酸エステル化合物(D)が、下記式(2)及び/又は下記式(3)で表される化合物である、上記いずれかの樹脂組成物。
【化1】
(式中、Rは各々独立に水素原子又はメチル基を示し、nは1以上の整数を示す。)
【化2】
(式中、Rは各々独立に水素原子又はメチル基を示し、nは1以上の整数を示す。)
[8]前記マレイミド化合物(F)が、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス{4−(4−マレイミドフェノキシ)−フェニル}プロパン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン及び下記式(6)で表されるマレイミド化合物からなる群より選ばれる1種以上である、上記いずれかの樹脂組成物。
【化3】
(式中、Rは各々独立に水素原子又はメチル基を示し、nは1以上の整数を示す。)
[9]前記エポキシ樹脂(G)が、下記式(7)、(8)、(9)、(11)及び(12)で表される化合物からなる群より選ばれる1種以上である、上記いずれかの樹脂組成物。
【化4】
(式中、R10は各々独立に水素原子又はメチル基を示し、nは1以上の整数を示す。)
【化5】
(式中、R11は各々独立に水素原子又はメチル基を示し、nは1以上の整数を示す。)
【化6】
(式中、R12は各々独立に水素原子又はメチル基を示し、nは1以上の整数を示す。)
【化7】
(式中、R13は各々独立に水素原子又はメチル基を示す。)
【化8】
(式中、R14は各々独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、又はアルキル部位の炭素原子数が1〜4のアラルキル基を示す。)
[10]前記フェノール樹脂(E)が、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、アミノトリアジンノボラック型フェノール樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂、下記式(4)で表されるナフトールアラルキル型フェノール樹脂、及び下記式(5)で表されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂からなる群より選ばれる1種以上である、上記いずれかの樹脂組成物。
【化9】
(式中、Rは各々独立に水素原子又はメチル基を示し、nは1以上の整数を示す。)
【化10】
(式中、Rは各々独立に水素原子又はメチル基を示し、nは1以上の整数を示す)
[11]下記式(13)で表されるイミダゾール化合物を更に含有する、上記いずれかの樹脂組成物。
【化11】
(式中、Arは各々独立にフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基若しくはアントラセニル基、又はその水酸基変性物を示し、R15は水素原子若しくはアルキル基又はその水酸基変性物、あるいはアリール基を示す。)
[12]前記アルミナナノ粒子(A)を、前記微粒子(B)の総質量に対して0.010〜5質量%含有する、上記いずれかの樹脂組成物。
[13]前記熱硬化性樹脂(C)が、シアン酸エステル化合物(D)を、前記熱硬化性樹脂(C)の総量100質量部に対して、10〜60質量部含有する、上記いずれかの樹脂組成物。
[14]前記熱硬化性樹脂(C)が、フェノール樹脂(E)を、前記熱硬化性樹脂(C)の総量100質量部に対して、10〜60質量部含有する、上記いずれかの樹脂組成物。
[15]前記熱硬化性樹脂(C)が、マレイミド化合物(F)を、前記熱硬化性樹脂(C)の総量100質量部に対して、3.0〜50質量部含有する、上記いずれかの樹脂組成物。
[16]前記熱硬化性樹脂(C)が、エポキシ樹脂(G)を、前記熱硬化性樹脂(C)の総量100質量部に対して、10〜80質量部含有する、上記いずれかの樹脂組成物。
[17]前記熱硬化性樹脂(C)が、BT樹脂(H)を、前記熱硬化性樹脂(C)の総量100質量部に対して、20〜80質量部含有する、上記いずれかの樹脂組成物。
[18]前記ナノ粒子(A)が、アルミナナノ粒子である、上記いずれかの樹脂組成物。
[19]基材と、その基材に含浸又は塗布した上記いずれかの樹脂組成物と、を含有するプリプレグ。
[20]前記基材が、Eガラスクロス、Tガラスクロス、Sガラスクロス、Qガラスクロス及び有機繊維からなる群より選ばれる1種以上である、上記プリプレグ。
[21]上記いずれかのプリプレグを1枚以上含有する積層板。
[22]上記いずれかのプリプレグと、そのプリプレグに積層した金属箔と、を含有する金属箔張積層板。
[23]絶縁層と、前記絶縁層の表面に形成された導体層とを含むプリント配線板であって、前記絶縁層が、上記いずれかの樹脂組成物を含むプリント配線板。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、粘度が金属箔張積層板を作製するのに都合が良いほど低いプリプレグを作製することができ、しかも、吸湿耐熱性に優れた金属箔張積層板を作製することが可能な樹脂組成物、並びに、その樹脂組成物を用いて作製されるプリプレグ、積層板及びプリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0012】
本実施形態の樹脂組成物は、平均粒子径が1.0〜100nmのアルミナ及び/又はベーマイトのナノ粒子(A)、平均粒子径が0.20〜100μmの微粒子(B)及び熱硬化性樹脂(C)を含有し、ナノ粒子(A)は、その表面がポリシロキサンベースの改質剤によって処理されたものである。
【0013】
本実施形態において、平均粒子径が1.0nm〜100nmのアルミナ及び/又はベーマイトのナノ粒子(A)において、アルミナはAlの化学式で表される酸化アルミニウムであり、ベーマイトは、アルミナの水和物である。そのナノ粒子(A)は、平均粒子径(D50)が1.0nm〜100nmのナノ粒子であれば、結晶構造は特に限定されない。アルミナとしては、例えば、α型アルミナ、β型アルミナ、γ型アルミナ、及びδ型アルミナが挙げられる。ここで、「D50」とは、メジアン径(メディアン径)であり、測定した粉体の粒度分布を2つに分けたときの大きい側の体積と、小さい側の体積とが、全粉体のそれの50%を占めるときの粒子径で、一般的には湿式レーザー回折・散乱法により測定される。
このようなナノ粒子(A)は、樹脂組成物において、後に詳述する複数の微粒子(B)(以下、「フィラー」ともいう。)の間に入り込み、そのフィラーを潤滑させる効果を有すると考えられる。よって、樹脂組成物におけるフィラー含有量が多い場合にも、フィラー同士の凝集を防ぎ、得られた積層板においてフィラー含有量が多い場合に予想される種々の不具合を解決することができる。このような効果をより有効且つ確実に奏する観点から、ナノ粒子(A)はアルミナナノ粒子を含むことが好ましい。
【0014】
本実施形態で用いられるナノ粒子(A)の製法は特に限定されず、また、市販のものを用いてもよい。このうち、アルミナナノ粒子(A)の製法は特に限定されないが、非多孔質であり嵩が小さいことから、プラズマ気相合成によって製造されることが好ましい。プラズマ気相合成とは、金属又は金属酸化物をプラズマエネルギーによって高温蒸発させ、酸素などの反応ガスを加えた後、冷却する製法である。嵩が小さいことで、成形性悪化の要因となるアルミナナノ粒子表面による熱硬化性樹脂(C)の拘束を抑制することができるので、より効果的かつ確実にアルミナナノ粒子による成形性の改善効果を得ることができる。
【0015】
また、本実施形態で用いられるナノ粒子(A)は、反応性基を有するものであると好ましい。反応性基としては、例えば、水酸基、及びハロゲン原子を有する基が挙げられる。この中でも水酸基が好ましく、後述の改質剤と反応するように配置されると好ましい。
【0016】
また、本実施形態で用いられるナノ粒子(A)は、表面処理を施されたものである。
この表面処理はポリシロキサンベースの改質剤、すなわち、ポリシロキサン骨格を主骨格として有する改質剤を用いて施される。改質剤は、ナノ粒子(A)の表面に化学的な相互作用により吸着するものが好ましく、例えば、下記式(1)で表されるポリシロキサンが挙げられ、これが好ましい。ここで、下記式(1)において,xは0〜2の整数を示し、好ましくは0であり、yは1〜10の整数を示し、好ましくは2〜5の整数であり、Rは1〜18個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜3個の炭素原子を有する1価の有機基を示す。Rはヘテロ原子及び/又は置換基を有していてもよい1価の有機基を示し、好ましくは、水酸基又は加水分解性基を示し、加水分解性基は、1〜6個、好ましくは1〜2個の炭素原子を有する直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基;好ましくは塩素原子であるハロゲン原子;1〜4個、好ましくは1〜2個の炭素原子を有するカルボン酸基を示す。Rはヘテロ原子や置換基を有してもよい2価の有機基を示し、好ましくは、酸素原子;1〜8個の炭素原子を有する直鎖又は分岐(好ましくは直鎖)のアルキレン基;アルキレンエーテル基;アルキレンチオエーテル基;好ましくは酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレン若しくは酸化スチレン又は酸化物の混合物に基づく、又はスタティスティク若しくはブロックポリエーテルに基づくアルキレンポリエーテル基;アリーレンポリエーテル基;アルキレンポリエステル基;あるいは、エステル及び/若しくはエーテル基に加えて、ウレタン及び/若しくは尿素基を有する有機脂肪族、芳香族又はアリル脂肪族基である。Rは4〜200個のシロキサン構造単位及び珪素原子上に炭素数1〜18のアルキル基を有する1価又は多価の置換基であって、炭素数1〜18のアルキル基が、ポリエーテル基を有する基(G1)、ポリエステル基を有する基(G2)、アリルアルキル基を有する基(G3)及び過フッ素化アルキル基を有する基(G4)から選択される1つ又は複数の改質基(G)によって、部分的且つ独立して置換されたものである。
【化12】
【0017】
このような改質剤により表面処理を施すことによって、樹脂組成物中の微粒子(B)の凝集を防ぎ、樹脂組成物中での流動性を高く維持することが可能となる。特に、ナノ粒子(A)の表面が選択的に改質剤により処理を施されていることにより、微粒子(B)の間に入り込んだナノ粒子(A)同士が接触した場合の潤滑性を高めることができるので、プリプレグの粘度低下に一層効果的に寄与することができると考えられる。また、上記改質剤は、熱硬化性樹脂(C)と反応し難いものであるため、ナノ粒子(A)が熱硬化性樹脂(C)に拘束されるのを防ぐことができ、より効果的に潤滑性を高めることが可能となる。
【0018】
また、表面処理には、ポリシロキサンベースの改質剤に加えて、リン酸エステル、リン酸エステル塩及びアルキルベンゼンスルホン酸からなる群より選ばれる1種以上の分散助剤を併用することも可能であり、特にポリシロキサンベースの改質剤に加え、リン酸エステル及びアルキルベンゼンスルホン酸を併用することが好ましい。
ポリシロキサンベースの改質剤によって粒子の表面張力を低下させることで効果的に凝集を防ぎ、更に、リン酸エステル及びアルキルベンゼンスルホン酸等の分散助剤を補助的に使用し、粒子表面に立体障害を形成することで、分散状態を安定化させることができる。
【0019】
上記改質基(G)について、ポリエーテル基を有する基(G1)は、下記式(1A)
【化13】
で表される1種又は2種以上の酸化アルキレンに基づいており、ここで、R’は、水素原子、フェニル基又はアルキル基を示すものであると好ましい。また、基(G1)は、116〜15000ダルトンの範囲内の分子量を有すると好ましい。
【0020】
また、ポリエステル基を有する基(G2)は、脂肪族、脂環式及び/若しくは芳香族ポリエステル基を有する基、又は、これらの基のうち1種を有する基;下記式(1B)
【化14】
で表される基、及び下記式(1C)
【化15】
で表される基からなる群より選ばれる1種以上、好ましくはそれら3種、を有するものであることが好ましい。また、基(G2)は、好ましくは344〜4000ダルトンの範囲内、より好ましくは500〜2000ダルトンの範囲内、更に好ましくは500〜1500ダルトンの範囲の分子量を有する。
【0021】
アリルアルキル基を有する基(G3)は、フェニルプロピル基又はこの基を有する基であると好ましく、フェニルプロピル基は2−フェニルプロピル基であるとより好ましい。
【0022】
過フッ素化アルキル基を有する基(G4)は、3〜8個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル基、又はこの基を有する基であると好ましい。あるいは、基(G4)は、3〜8個の炭素原子を有するテトラヒドロ過フッ素化アルキル基、又はこの基を有する基であると好ましく、テトラヒドロ過フッ素化アルキル基は、1,1,2,2−テトラヒドロ過フッ素化アルキル基であるとより好ましい。
【0023】
ナノ粒子(A)は、上記改質剤を、ナノ粒子(A)の総量に対して0.01〜50質量%含むことが好ましく、0.05〜30質量%含むことがより好ましく、0.1〜15質量%含むことが更に好ましい。
【0024】
また、ナノ粒子(A)は溶剤又は樹脂中に1次粒子として分散されていることが好ましい。上記のようにナノ粒子が1次粒子として樹脂組成物中に安定して存在することで、ナノ粒子(A)が微粒子(B)の潤滑剤としてより十分に効果を発揮することができるようになる。
また、ナノ粒子(A)の形状は特に限定されないが、樹脂組成物中での流動性を高める観点から、球状が好ましい。
【0025】
本実施形態におけるナノ粒子(A)は、分散処理を施された市販品を用いることもできる。アルミナナノ粒子の製品例としては、ビックケミー社製のNANOBYK−3610(製品名)が挙げられる。また、ベーマイトナノ粒子の製品例としては、ビックケミー社製のLP−X−21121(製品名)が挙げられる。
【0026】
本実施形態において用いられるナノ粒子(A)の樹脂組成物における含有量は、微粒子(B)の総質量(100質量%)に対して、0.01〜10.0質量%であることが好ましい。微粒子(B)の含有量を上記の好ましい範囲内とすることで、プリプレグの粘度を、より効果的に低下させることができる。同様の観点から、ナノ粒子(A)の含有量は、微粒子(B)の総質量に対して、0.1〜5.0質量%であることがより好ましい。
【0027】
ここで、「微粒子(B)の総質量」とは、後述の種々の無機フィラー、有機フィラー及び有機/無機複合体フィラーの質量の合計量を指すものとする。
【0028】
本実施形態の樹脂組成物において用いられる平均粒子径が0.20μm〜100μmの微粒子(B)としては、例えば、無機フィラー、有機フィラー及び無機/有機複合体フィラーが挙げられる。より具体的には、例えば、天然シリカ、溶融シリカ、アモルファスシリカ、及び中空シリカ等のシリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ベーマイト、酸化モリブデン、酸化チタン、シリコーンゴム、シリコーン複合パウダー、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、クレー、カオリン、タルク、焼成クレー、焼成カオリン、焼成タルク、マイカ、ガラス短繊維(EガラスやDガラスなどのガラス微粉末類)、中空ガラス、並びに球状ガラスが挙げられる。これら微粒子(B)は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することが可能である。
これらの中でも、より低い熱膨張性を有しやすい観点から、シリカが好ましく、また、より高い熱伝導性を有しやすい観点から、アルミナ及び窒化アルミニウムが好ましい。
微粒子(B)の平均粒子径(D50)は、ナノ粒子(A)がその隙間に入り込み、潤滑材としての役目を十分果たす観点から0.20μm〜100μmであることを要する。さらに、その平均粒子径は0.20μm〜10μmであることが、より微細な配線を形成できる観点から好ましく、0.20μm〜5μmであることがより好ましい。
また、微粒子(B)の粒子の形状は特に限定されないが、成形性の観点から、球状であることが好ましい。
【0029】
本実施形態における微粒子(B)の樹脂組成物における含有量は、樹脂組成物に与える微粒子(B)の特性の観点から、熱硬化性樹脂(C)100質量部に対して、200質量部以上であることが好ましく、250質量部以上であることがより好ましい。
また、微粒子(B)の樹脂組成物における含有量の上限は特に限定されないが、500質量部以下であることが好ましく、成形性を高める観点から、400質量部以下であることがより好ましい。また、より優れた熱伝導性を求められる場合、高熱伝導性のフィラーは、一般的に比重が大きくなるケースが多いことから、微粒子(B)の含有量は、1100質量部以下であることが好ましく、700質量部以下であることがより好ましい。
【0030】
本実施形態の樹脂組成物は、微粒子(B)に加えて、微粒子(B)の分散性、樹脂と微粒子(B)やガラスクロスとの接着強度を向上させるために、シランカップリング剤及び/又は湿潤分散剤を含有することも可能である。シランカップリング剤としては、一般に無機物の表面処理に使用されているシランカップリング剤であれば、特に限定されるものではない。その具体例としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン系、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシシラン系、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのビニルシラン系、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩などのカチオニックシラン系、フェニルシラン系が挙げられる。シランカップリング剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することも可能である。また、湿潤分散剤としては、塗料用に使用されている分散安定剤であれば、特に限定されるものではない。湿潤分散剤としては、例えば、ビックケミー・ジャパン株式会社製のDisperbyk−110、111、180、161、BYK−W996、W9010、W903(以上、製品名)等の湿潤分散剤が挙げられる。
【0031】
本実施形態の樹脂組成物における熱硬化性樹脂(C)は、熱により硬化する樹脂であれば特に限定されないが、例えば、シアン酸エステル化合物(D)、フェノール樹脂(E)、マレイミド化合物(F)、エポキシ樹脂(G)及びBT樹脂(H)が挙げられる。熱硬化性樹脂(C)は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
シアン酸エステル化合物(D)は、耐薬品性及び接着性などに優れた特性を有するため、本実施形態における樹脂組成物の成分として好適に使用することができる。
シアン酸エステル化合物(D)の種類としては、特に限定されないが、例えば、下記式(2)で表されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、下記式(3)で表されるノボラック型シアン酸エステル、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル、ビス(3,5−ジメチル4−シアナトフェニル)メタン、ビス(4−シアナトフェニル)メタン、1,3−ジシアナトベンゼン、1,4−ジシアナトベンゼン、1,3,5−トリシアナトベンゼン、1,3−ジシアナトナフタレン、1,4−ジシアナトナフタレン、1,6−ジシアナトナフタレン、1,8−ジシアナトナフタレン、2,6−ジシアナトナフタレン、2,7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、4、4’−ジシアナトビフェニル、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、及び、2、2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンが挙げられる。
この中でも、下記式(2)で表されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、下記式(3)で表されるノボラック型シアン酸エステル、及びビフェニルアラルキル型シアン酸エステルが難燃性に更に優れ、硬化性がより高く、かつ硬化物の熱膨張係数が一層低いことから特に好ましい。
【0033】
【化16】
式中、Rは各々独立に水素原子又はメチル基を示し、中でも水素原子が好ましい。また、nは1以上の整数を示す。nの上限値は、通常は10、好ましくは6である。
【0034】
【化17】
式中、Rは各々独立に水素原子又はメチル基を示し、中でも水素原子が好ましい。また、nは1以上の整数を示す。nの上限値は、通常は10、好ましくは7である。
【0035】
これらのシアン酸エステル化合物の製法は、特に限定されず、シアン酸エステル合成として現存するいかなる方法で製造してもよい。具体的に例示すると、下記式(4)で表されるナフトールアラルキル型フェノール樹脂とハロゲン化シアンを不活性有機溶媒中で、塩基性化合物存在下反応させることにより得ることができる。また、同様のナフトールアラルキル型フェノール樹脂と塩基性化合物による塩を、水を含有する溶液中にて形成させ、その後、ハロゲン化シアンと2相系界面反応を行い、合成する方法により得ることもできる。
【0036】
【化18】
式中、Rは各々独立に水素原子又はメチル基を示し、中でも水素原子が好ましい。また、nは1以上の整数を示す。nの上限値は、通常は10、好ましくは6である。
【0037】
また、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物は、α−ナフトール又はβ−ナフトール等のナフトール類とp−キシリレングリコール、α,α’−ジメトキシ−p−キシレン、及び1,4−ジ(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ベンゼン等との反応により得られるナフトールアラルキル樹脂とシアン酸とを縮合させて得られるものから選択することができる。
【0038】
また、本実施形態の樹脂組成物に、シアン酸エステル化合物(D)及びエポキシ樹脂(G)が共存する場合には、シアン酸エステル化合物(D)のシアネート基数CNとエポキシ樹脂(G)のエポキシ基数Epとの比(CN/Ep)が0.7〜2.5となるように、それらを含有させることが、耐熱性、難燃性、及び吸水率の観点から好ましい。
【0039】
本実施形態においてシアン酸エステル化合物(D)を用いる場合、硬化性や耐熱性の観点から、熱硬化性樹脂(C)におけるシアン酸エステル化合物(D)の含有量が、熱硬化性樹脂(C)の総量100質量部に対して、10〜60質量部であることが好ましく、20〜50質量部であることがより好ましい。
ここで、熱硬化性樹脂(C)の総量とは、上記シアン酸エステル化合物(D)、フェノール樹脂(E)、マレイミド化合物(F)、エポキシ樹脂(G)及びBT樹脂(H)等の熱硬化性樹脂の合計量を意味し、その合計量には、硬化促進剤、微粒子(B)に加える湿潤分散剤及びシランカップリング剤は含まない。
【0040】
フェノール樹脂(E)としては、1分子中にフェノール性水酸基を2個以上有する樹脂であれば、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されない。フェノール樹脂(E)としては、例えば、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ザイロック型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ポリビニルフェノール類、上記式(4)で表されるナフトールアラルキル型フェノール樹脂、下記式(5)で表されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂、及びアミノトリアジンノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。これらは、目的に応じて1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの中でも、吸水性及び耐熱性の観点からは、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、アミノトリアジンノボラック型フェノール樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂、上記式(4)で表されるナフトールアラルキル型フェノール樹脂、及び下記式(5)で表されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂が好ましく、とりわけ、クレゾールノボラック型フェノール化合物、上記式(4)で表されるナフトールアラルキル型フェノール樹脂、及び下記式(5)で表されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂がより好ましい。
【0041】
【化19】
式中、Rは各々独立に水素原子又はメチル基を示し、中でも水素原子が好ましい。また、nは1以上の整数を示す。nの上限値は、通常は10、好ましくは7である。
【0042】
また、本実施形態の樹脂組成物に、フェノール樹脂(E)及びエポキシ樹脂(G)が共存する場合には、フェノール樹脂(E)の水酸基数OHとエポキシ樹脂(G)のエポキシ基数Epの比(OH/Ep)が0.7〜2.5となるように、それらを含有させることが、ガラス転移温度、及び難燃性の観点から好ましい。
【0043】
本実施形態においてフェノール樹脂(E)を用いる場合には、硬化性や耐熱性の観点から、熱硬化性樹脂(C)におけるフェノール樹脂(E)の含有量が、熱硬化性樹脂(C)の総量100質量部に対して、10〜60質量部であることが好ましく、20〜50質量部であることがより好ましい。
【0044】
マレイミド化合物(F)としては、1分子中に1個以上のマレイミド基を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。その具体例としては、N−フェニルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス{4−(4−マレイミドフェノキシ)−フェニル}プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジエチル−4−マレイミドフェニル)メタン、及び下記式(6)で表されるマレイミド化合物、並びにこれらのマレイミド化合物のプレポリマー、及びこれらのマレイミド化合物とアミン化合物とのプレポリマーが挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して使用することも可能である。
その中でも、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス{4−(4−マレイミドフェノキシ)−フェニル}プロパン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、及び下記式(6)で表されるマレイミド化合物が好ましく、とりわけ、下記式(6)で表されるマレイミド化合物が好ましい。
【0045】
【化20】
式中、Rは各々独立に水素原子又はメチル基を示し、中でも水素原子が好ましい。また、nは1以上の整数を示す。nの上限値は、通常は10、好ましくは7である。
【0046】
本実施形態においてマレイミド化合物(F)を用いる場合には、硬化性や耐熱性の観点から、熱硬化性樹脂(C)におけるマレイミド化合物(F)の含有量が、熱硬化性樹脂(C)の総量100質量部に対して、3〜50質量部であることが好ましく、5〜40質量部であることがより好ましい。
【0047】
エポキシ樹脂(G)としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、下記式(7)で表されるフェノールフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、下記式(8)で表されるフェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、及び下記式(9)で表されるナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、並びに、熱膨張率を低くするために、下記式(10)で表されるアントラキノン型エポキシ樹脂、及び下記式(11)又は(12)で表されるポリオキシナフチレン型エポキシ樹脂が挙げられる。その他に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、3官能フェノール型エポキシ樹脂、4官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ブロム化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ブロム化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエステル及びブタジエンなどの2重結合をエポキシ化した化合物、並びに水酸基含有シリコーン樹脂類とエピクロルヒドリンとの反応により得られる化合物が挙げられる。この中でも、特に難燃性を向上させるために、下記式(7)で表されるフェノールフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、下記式(8)で表されるフェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、下記式(9)で表されるナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、下記式(10)で表されるアントラキノン型エポキシ樹脂、及び下記式(11)又は(12)で表されるポリオキシナフチレン型エポキシ樹脂であることが好ましい。これらのエポキシ樹脂は、1種又は2種以上を混合して使用することが可能である。
【0048】
【化21】
式中、R10は各々独立に水素原子又はメチル基を示し、中でも水素原子が好ましい。また、nは1以上の整数を示す。nの上限値は、通常は10、好ましくは7である。
【0049】
【化22】
式中、R11は各々独立に水素原子又はメチル基を示し、中でも水素原子が好ましい。また、nは1以上の整数を示す。nの上限値は、通常は10、好ましくは7である。
【0050】
【化23】
式中、R12は水素原子又はメチル基を示し、中でも水素原子が好ましい。また、nは1以上の整数を示す。nの上限値は、通常は10、好ましくは7である。
【0051】
【化24】
【0052】
【化25】
式中、R13は各々独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、又はアルキル部位の炭素原子数が1〜4のアラルキル基を示す。
【0053】
【化26】
式中、R14は各々独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、又はアルキル部位の炭素原子数が1〜4のアラルキル基を示す。
上記式(11)又は(12)出表されるエポキシ樹脂としては、市販品を用いることができ、製品例としては、DIC株式会社製、EXA−7311、EXA−7311−G3、EXA−7311−G4、EXA−7311−G4S、EXA−7311L,HP−6000、及びEXA−7311−G5(以上、製品名)が挙げられる。
【0054】
本実施形態においてエポキシ樹脂(G)を用いる場合には、硬化性や耐熱性の観点から、熱硬化性樹脂(C)におけるエポキシ樹脂(G)の含有量が、熱硬化性樹脂(C)の総量100質量部に対して、10〜80質量部であることが好ましく、20〜70質量部であることがより好ましい。エポキシ樹脂(G)の含有量を好ましい範囲内とすることで、硬化度が更に高まり、難燃性、ガラス転移温度、吸水率、及び弾性率により優れたプリント配線板を得ることができる。
【0055】
BT樹脂(H)は、シアン酸エステル化合物及びマレイミド化合物を、無溶剤、又はメチルエチルケトン、Nメチルピロドリン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン及びキシレン等の有機溶剤に溶解して加熱混合し、ポリマー化したものである。
【0056】
BT樹脂(H)の合成に用いるシアン酸エステル化合物は特に限定されず、例えば、上記式(2)で表されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、上記式(3)で表されるノボラック型シアン酸エステル、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル、ビス(3,5−ジメチル4−シアナトフェニル)メタン、ビス(4−シアナトフェニル)メタン、1,3−ジシアナトベンゼン、1,4−ジシアナトベンゼン、1,3,5−トリシアナトベンゼン、1,3−ジシアナトナフタレン、1,4−ジシアナトナフタレン、1,6−ジシアナトナフタレン、1,8−ジシアナトナフタレン、2,6−ジシアナトナフタレン、2,7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、4、4’−ジシアナトビフェニル、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、及び2、2’−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンが挙げられる。
この中でも、上記式(2)で表されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、上記式(3)で表されるノボラック型シアン酸エステル、及びビフェニルアラルキル型シアン酸エステルが、得られるプリント配線板の難燃性、硬化性、及び低熱膨張率の観点から好ましい。
また、マレイミド化合物も特に限定されず、例えば、N−フェニルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス{4−(4−マレイミドフェノキシ)−フェニル}プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジエチル−4−マレイミドフェニル)メタン、及び上記式(6)で表されるマレイミド化合物、並びに、これらマレイミド化合物のプレポリマー、及びこれらのマレイミド化合物とアミン化合物とのプレポリマーが挙げられ。これらは、1種又は2種以上を混合して使用することも可能である。
その中でも、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス{4−(4−マレイミドフェノキシ)−フェニル}プロパン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、及び上記式(6)で表されるマレイミド化合物が好ましく、とりわけ、上記式(6)で表されるマレイミド化合物が好ましい。
【0057】
BT樹脂(H)におけるマレイミド化合物の割合は特に限定されないが、ガラス転移温度、難燃性、及び硬化性の観点から、BT樹脂(H)の総量に対し、5〜75質量%の範囲が好ましく、10〜70質量%の範囲がより好ましい。
また、プレポリマーであるBT樹脂(H)の分子量の範囲は特に限定されるものではないが、ハンドリング性、ガラス転移温度、及び硬化性の観点から、数平均分子量で約100〜100000の範囲であることが好ましい。
【0058】
本実施形態においてBT樹脂(H)を用いる場合には、硬化性及び耐熱性の観点から、熱硬化性樹脂(C)におけるBT樹脂(H)の含有量が、熱硬化性樹脂(C)の総量100質量部に対して、20〜80質量部であることが好ましく、30〜70質量部であることがより好ましい。BT樹脂(H)の含有量を好ましい範囲内とすることで、硬化度が更に高まり、難燃性、ガラス転移温度、吸水率、及び弾性率により優れたプリント配線板を得ることができる。
【0059】
本実施形態の樹脂組成物は、下記式(13)で表されるイミダゾール化合物を更に含有することが好ましい。このイミダゾール化合物は、硬化促進の作用を有し、硬化物のガラス転移温度を更に高める作用を有する。
【化27】
式中、Arは各々独立にフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基若しくはアントラセニル基、又はその水酸基変性物を示し、フェニル基が好ましい。R15は、水素原子若しくはアルキル基又はその水酸基変性物、あるいはアリール基を示し、アリール基はフェニル基であることが好ましい。Ar及びR15ともにフェニル基であることがより好ましい。
【0060】
本実施形態においてイミダゾール化合物を用いる場合には、硬化性及び耐熱性の観点から、熱硬化性樹脂(C)におけるイミダゾール化合物の含有量が、熱硬化性樹脂(C)の総量100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部であることがより好ましい。イミダゾール化合物の含有量を好ましい範囲内とすることで、プリプレグ粘度をより適正な範囲にすることができ、更に良好な成形性を得ることができる。また、得られるプリント配線板の硬化度が更に高まり、難燃性、ガラス転移温度、及び弾性率により優れるものとなる。
【0061】
また、本実施形態の樹脂組成物においては、所期の特性が損なわれない範囲において、上記イミダゾール化合物に加え、他の硬化促進剤を併用することも可能である。このような硬化促進剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド及びジ−tert−ブチル−ジ−パーフタレート等で例示される有機過酸化物;アゾビスニトリル等のアゾ化合物;N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルトルイジン、2−N−エチルアニリノエタノール、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、キノリン、N−メチルモルホリン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチルブタンジアミン及びN−メチルピペリジンなどの第3級アミン類;フェノール、キシレノール、クレゾール、レゾルシン及びカテコールなどのフェノール類;ナフテン酸鉛、ステアリン酸鉛、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、オレイン酸錫、ジブチル錫マレート、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸コバルト及びアセチルアセトン鉄などの有機金属塩;これらの有機金属塩をフェノール及びビスフェノールなどの水酸基含有化合物に溶解してなるもの;塩化錫、塩化亜鉛及び塩化アルミニウムなどの無機金属塩;ジオクチル錫オキサイド、その他のアルキル錫及びアルキル錫オキサイドなどの有機錫化合物が挙げられる。硬化促進剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0062】
さらに本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて溶剤を含有してもよい。例えば、有機溶剤を用いると、樹脂組成物の調製時における粘度を更に低下させることができ、ハンドリング性が向上すると共にガラスクロスへの含浸性が一層高められる。溶剤の種類は、熱硬化性樹脂(C)の一部又は全部を溶解可能なものであれば、特に限定されない。その具体例としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルセルソルブなどのケトン類;トルエン及びキシレンなどの芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;並びに、プロピレングリコールメチルエーテル及びそのアセテートなどが挙げられるが、これらに特に限定されない。溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0063】
本実施形態における樹脂組成物は、常法にしたがって調製することができ、平均粒子径が1.0nm〜100nmのナノ粒子(A)、平均粒子径が0.20μm〜100μmの微粒子(B)及び熱硬化性樹脂(C)、並びに上述したその他の任意成分を均一に含有する樹脂組成物が得られる方法であれば、その調製方法は、特に限定されない。例えば、ナノ粒子(A)、微粒子(B)、及び熱硬化性樹脂(C)を順次溶剤に配合し、十分に攪拌することで、本実施形態の樹脂組成物を容易に調製することができる。なお、ナノ粒子(A)は、予めポリシロキサンベースの改質剤で表面処理を施した後に、その他の成分と撹拌、混合、混練することが、プリプレグの更なる粘度低下の観点から好ましい。
【0064】
本実施形態の樹脂組成物の調製時において、必要に応じて有機溶剤を使用することができる。有機溶剤の種類は、熱硬化性樹脂(C)を溶解可能なものであれば、特に限定されない。その具体例は、上述したとおりである。
【0065】
なお、樹脂組成物の調製時に、各成分を均一に溶解又は分散させるための公知の処理(攪拌、混合、混練処理など)を行うことができる。例えば、微粒子(B)について、適切な攪拌能力を有する攪拌機を付設した攪拌槽を用いて攪拌分散処理を行うことで、樹脂組成物に対する微粒子(B)の分散性が更に高められる。上記の攪拌、混合、混練処理は、例えば、ボールミル、ビーズミルなどの混合を目的とした装置、又は、公転・自転型の混合装置などの公知の装置を用いて適宜行うことができる。
【0066】
本実施形態のプリプレグは、基材と、その基材に含浸又は塗布した上記の樹脂組成物とを含有するものである。このプリプレグは、上記の樹脂組成物を基材に含浸又は塗布させることにより得ることができる。プリプレグの作製は、常法に従って行うことができ、特に限定されない。例えば、本実施形態の樹脂組成物を基材に含浸又は塗布させた後、100〜200℃の乾燥機中で1〜30分加熱するなどして半硬化(Bステ−ジ化)させることで、本実施形態のプリプレグを作製することができる。なお、本実施形態のプリプレグは、特に限定されないが、プリプレグの総量に対する上記樹脂組成物の量が、30〜90質量%の範囲であることが好ましい。
【0067】
本実施形態で使用される基材としては、特に限定されるものではなく、各種プリント配線板材料に用いられている公知のものを、目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。その具体例としては、例えば、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス、球状ガラス、NEガラス、Tガラス等のガラス繊維、クォーツ等のガラス以外の無機繊維、ポリパラフェニレンテレフタラミド(ケブラー(登録商標)、デュポン株式会社製)、コポリパラフェニレン・3,4’オキシジフェニレン・テレフタラミド(テクノーラ(登録商標)、帝人テクノプロダクツ株式会社製)等の全芳香族ポリアミド、2,6−ヒドロキシナフトエ酸・パラヒドロキシ安息香酸(ベクトラン(登録商標)、株式会社クラレ製)等のポリエステル、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(ザイロン(登録商標)、東洋紡績株式会社製)、及びポリイミドなどの有機繊維が挙げられるが、これらに特に限定されない。
これらの中でも低熱膨張性の観点から、Eガラス、Tガラス、Sガラス、Qガラス及び有機繊維が好ましい。
これらの基材は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
基材の形状としては、例えば、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマット及びサーフェシングマットなど、織布の織り方としては、平織り、ななこ織り及び綾織り等が知られており、これら公知のものから目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。これらを開繊処理したもの及びシランカップリング剤などで表面処理したガラス織布が好適に使用される。基材の厚さ及び質量は、特に限定されないが、通常は0.01〜0.3mm程度のものが好適に用いられる。とりわけ、強度と吸水性の観点から、基材は、厚さ200μm以下、質量250g/m以下のガラス織布が好ましく、Eガラス、Sガラス、及びTガラスのガラス繊維からなるガラス織布がより好ましい。
【0068】
本実施形態の積層板は、上述のプリプレグを1枚以上含有するものである。積層板はプリプレグを1枚以上備えるものであれば特に限定されず、他のいかなる層を有していてもよい。積層板の製造方法としては、一般に公知の方法を適宜適用でき、特に限定されない。例えば、1枚のプリプレグを又は2枚以上のプリプレグを積層してから硬化して得られるものであり、より具体的には、上記のプリプレグ同士を積層し、加熱加圧成形することで積層板を得ることができる。このとき、加熱する温度は、特に限定されないが、65〜300℃が好ましく、120〜270℃がより好ましい。また、加圧する圧力は、特に限定されないが、2〜5MPaが好ましく、2.5〜4MPaがより好ましい。本実施形態の積層板は、金属箔からなる層を備えることにより、後述する金属箔張積層板として好適に用いることができる。
【0069】
本実施形態の金属箔張積層板は、上述のプリプレグと、そのプリプレグに積層した金属箔とを含有するものである。この金属箔張積層板は、上記プリプレグを1枚又は2枚以上重ねてもよく、金属箔をプリプレグの片面又は両面に設けたものであってもよい。具体的には、前述のプリプレグを1枚あるいは複数枚以上を重ね、所望によりその片面もしくは両面に銅やアルミニウムなどの金属箔を配置した構成とし、これを必要に応じて積層成形することにより、本実施形態の金属箔張積層板を作製することができる。ここで使用する金属箔は、プリント配線板材料に用いられるものであれば、特に限定されないが、圧延銅箔や電解銅箔などの公知の銅箔が好ましい。また、金属箔の厚さは、特に限定されないが、2〜70μmが好ましく、より好ましくは2〜35μmである。金属箔張積層板の成形方法及びその成形条件についても、特に限定されず、一般的なプリント配線板用積層板及び多層板の手法及び条件を適用することができる。例えば、金属箔張積層板の成形時には多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機、オートクレーブ成形機などを用いることができる。また、成形条件について、温度は100〜300℃、圧力は面圧2〜100kgf/cm、加熱時間は0.05〜5時間の範囲が一般的である。さらに、必要に応じて、150〜300℃の温度で後硬化を行うこともできる。また、本実施形態のプリプレグと、別途作製した内層用の配線板とを組み合わせて積層成形することにより、多層板とすることも可能である。
【0070】
上記の本実施形態の金属箔張積層板は、所定の配線パターンを形成することにより、プリント配線板として好適に用いることができる。本実施形態の金属箔張積層板は、低い熱膨張率、良好な成形性及び耐薬品性を有し、そのような性能が要求される半導体パッケージ用プリント配線板として、殊に有効に用いることができる。
【0071】
本実施形態のプリント配線板は、絶縁層と、絶縁層の表面に形成された導体層とを含むプリント配線板であって、上記絶縁層が、上記樹脂組成物を含むものである。かかるプリント配線板は、例えば、以下の方法により製造することができる。まず、銅張積層板等の金属箔張積層板を用意する。金属箔張積層板の表面にエッチング処理を施して内層回路の形成を行い、内層基板を作製する。この内層基板の内層回路表面に、必要に応じて接着強度を高めるための表面処理を行い、次いでその内層回路表面に本発明のプリプレグを所要枚数重ね、更にその外側に外層回路用の金属箔を積層し、加熱加圧して一体成形する。このようにして、内層回路と外層回路用の金属箔との間に、基材及び樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層が形成された多層の金属箔張積層板が製造される。次いで、この多層の金属箔張積層板にスルーホールやバイアホール用の穴あけ加工を施した後、絶縁層に含まれている樹脂成分に由来する樹脂の残渣であるスミアを除去するためデスミア処理が行われる。その後、この穴の壁面に内層回路と外層回路用の金属箔とを導通させるめっき金属皮膜を形成し、更に外層回路用の金属箔にエッチング処理を施して外層回路を形成し、プリント配線板が製造される。
この態様においては、本実施形態のプリプレグ(基材及びこれに含浸又は塗布された本実施形態の樹脂組成物)、金属箔張積層板の樹脂組成物層(本実施形態の樹脂組成物からなる層)が、樹脂組成物を含む絶縁層を構成することになる。
本実施形態によると、硬化物を簡易かつ再現性良く作製可能な、低熱膨張及び高熱伝導性等の特性が高度に付与されたプリプレグ用樹脂組成物を提供することができる。また、本実施形態によると、金属箔張積層板の成型性が良好で、かつ耐熱性や吸湿耐熱性が良好なプリプレグ、積層板及びプリント配線板等を得ることができる。
【0072】
以下に合成例、実施例、比較調製例及び比較例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例によりなんら限定されるものではない。
【実施例】
【0073】
(合成例1)
〔表面改質に用いられるポリシロキサンの合成〕
ヒータ、内部温度計、攪拌機及び窒素ガス接続を取り付けた反応器に、下記式(14)で表されるSiH官能基を有するポリシロキサンを加え、窒素ガス雰囲気下、70℃まで加熱し、そこに触媒として10ppmのヘキサクロロ白金(IV)酸を加えた。更に、その反応器に下記式(15)で表されるアリルエーテル251gとビニルトリエトキシシラン73gを加えた。この際に反応温度が80℃を超えないように注意した。これらの反応溶液を80℃で1時間撹拌した後、真空下で未反応のビニルトリメトキシシラン、及び未反応ポリシロキサンを除くことで、琥珀色のポリシロキサンを得た。
【化28】
【化29】
【0074】
(合成例2)
〔表面処理ナノ粒子の調整〕
プラズマ気相合成にて製造されたデルタ型:ガンマ型=70:30(質量比)の組成を有し、平均粒子径(D50)が20nmである球状ナノアルミナ40gに合成例1で合成したポリシロキサンを4g加え、ミキサーにて1分間撹拌した後、80℃で1時間加熱した。ここにメトキシプロピルアセテート56.8g、及び、リン酸エステル及びアルキルベンゼンスルホン酸類からなる湿潤分散剤であるDisperbyk−180(製品名、ビックケミー・ジャパン(株)製)3.2gの混合溶液を加え、撹拌した後、超音波によって分散し、表面処理ナノ粒子を得た。
【0075】
(合成例3)
〔α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂の合成〕
温度計、攪拌器、滴下漏斗及び還流冷却器を取りつけた反応器を予めブラインにより0〜5℃に冷却しておき、そこへ塩化シアン7.47g(0.122mol)、35%塩酸9.75g(0.0935mol)、水76ml、及び塩化メチレン44mlを仕込んだ。
この反応器内の温度を−5〜+5℃、pHを1以下に保ちながら、撹拌下、α−ナフトールアラルキル型フェノール樹脂(製品名「SN485」、OH基当量:214g/eq.軟化点:86℃、新日鐵化学(株)製)20g(0.0935mol)、及びトリエチルアミン14.16g(0.14mol)を塩化メチレン92mLに溶解した溶液を、滴下漏斗により1時間かけて滴下した。滴下終了後、更にトリエチルアミン4.72g(0.047mol)を15分間かけて滴下した。
滴下終了後、同温度で15分間撹拌した後、反応液を分液し、有機層を分取した。得られた有機層を水100mLで2回洗浄した後、エバポレーターにより減圧下で塩化メチレンを留去し、最終的に80℃で1時間濃縮乾固させて、上記式(2)におけるRが全て水素原子であるα−ナフトールアラルキル型フェノール樹脂のシアン酸エステル化物(α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂)23.5gを得た。
【0076】
(合成例4)
〔BT樹脂1の合成〕
合成例3で作製したα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:261g/eq.)36質量部と、上記式(6)におけるRが全て水素原子であり、nが1〜3であるマレイミド化合物(製品名「BMI−2300」、大和化成工業(株)製)24質量部をジメチルアセトアミドに溶解し、150℃で攪拌しながら反応させ、BT樹脂1を得た。
【0077】
(合成例5)
〔BT樹脂2の合成〕
合成例3で作製したα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:261g/eq.)36質量部とビス(3−エチル−5−メチル−マレイミドフェニル)メタン(製品名「BMI−70」、大和化成工業(株)製)26質量部とをジメチルアセトアミドに溶解し、150℃で攪拌しながら反応させ、BT樹脂2を得た。
【0078】
(実施例1)
ポリシロキサンベースの改質剤で表面処理を施されたアルミナナノ粒子(製品名「NANOBYK−3610」、平均粒子径:20nm、ビックケミー・ジャパン(株)製)を1質量部、球状溶融シリカ(製品名「FB−3SDC」、平均粒子径:3.0μm、電気化学工業社製)を300質量部、球状溶融シリカ(製品名「SFP−120MC」、平均粒子径:0.30μm、電気化学工業社製)を100質量部、合成例3で得られたα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:261g/eq.)を40質量部、ポリオキシナフチレン型エポキシ樹脂(製品名「HP−6000」、エポキシ当量:250g/eq.、DIC(株)製)を60質量部、湿潤分散剤1(製品名「disperbyk−161」、ビックケミー・ジャパン(株)製)を1質量部、湿潤分散剤2(製品名「disperbyk−111」、ビックケミー・ジャパン(株)製)を2質量部、及びシランカップリング剤(製品名「Z6040」、東レ・ダウコーティング(株)製)を5質量部混合してワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ0.1mmのEガラス織布に含浸塗工し、140℃で3分間加熱乾燥して、樹脂含有量63質量%のプリプレグを得た。
【0079】
(実施例2)
α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂の代わりに2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパンのプレポリマー(製品名「CA210」、シアネート当量139、三菱ガス化学(株)製)を40質量部使用した以外は実施例1と同様にして、プリプレグを得た。
【0080】
(実施例3)
α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂の代わりに上記式(3)におけるRが全て水素原子であるノボラック型シアン酸エステル樹脂(製品名「プリマセットPT−30」、ロンザジャパン(株)製、シアネート当量:124g/eq.)を40質量部使用した以外は実施例1と同様にして、プリプレグを得た。
【0081】
(実施例4)
ポリシロキサンベースの改質剤で表面処理を施されたアルミナナノ粒子(製品名「NANOBYK−3610」、平均粒子径:20nm、ビックケミー・ジャパン(株)製)を1質量部、球状溶融シリカ(製品名「FB−3SDC」、平均粒子径:3.0μm、電気化学工業社製)を300質量部、球状溶融シリカ(SFP−120MC、平均粒子径:0.3μm、電気化学工業社製)を100質量部、合成例3で得られたα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:261g/eq.)を36質量部、合成例4で使用したマレイミド化合物(製品名「BMI−2300」)を26質量部、ポリオキシナフチレン型エポキシ樹脂(製品名「HP−6000」、エポキシ当量:250g/eq.、DIC(株)製)を38質量部、湿潤分散剤1(製品名「disperbyk−161」、ビックケミー・ジャパン(株)製)を1質量部、湿潤分散剤2(製品名「disperbyk−111」、ビックケミー・ジャパン(株)製)を2質量部、シランカップリング剤(製品名「Z6040」、東レ・ダウコーティング(株)製)を5質量部、及び2,4,5−トリフェニルイミダゾール(和光純薬社製)を1質量部混合してワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ0.1mmのEガラス織布に含浸塗工し、140℃で3分間加熱乾燥して、樹脂含有量63質量%のプリプレグを得た。
【0082】
(実施例5)
ポリシロキサンベースの改質剤で表面処理を施されたアルミナナノ粒子(製品名「NANOBYK−3610」)の使用量を1質量部から3質量部に変更した以外は実施例4と同様にして、プリプレグを得た。
【0083】
(実施例6)
ポリシロキサンベースの改質剤で表面処理を施されたアルミナナノ粒子(製品名「NANOBYK−3610」)の使用量を1質量部から5質量部に変更した以外は実施例4と同様にして、プリプレグを得た。
【0084】
(実施例7)
マレイミド化合物(製品名「BMI−2300」)の代わりに合成例5で使用したマレイミド化合物(製品名「BMI−70」)を26質量部使用した以外は実施例4と同様にして、プリプレグを得た。
【0085】
(実施例8)
ポリオキシナフチレン型エポキシ樹脂(製品名「HP−6000」)の代わりに上記式(8)におけるR11が全て水素原子であるフェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(製品名「NC−3000−FH」、エポキシ当量:320g/eq.、日本化薬(株)製)を38質量部使用した以外は実施例4と同様にして、プリプレグを得た。
【0086】
(実施例9)
ポリオキシナフチレン型エポキシ樹脂(製品名「HP−6000」)の代わりにナフトールアラルキル型エポキシ樹脂(製品名「ESN−175V」、エポキシ当量:255g/eq.、新日鐵化学(株)製)を38質量部使用した以外は実施例4と同様にして、プリプレグを得た。
【0087】
(実施例10)
ポリオキシナフチレン型エポキシ樹脂(製品名「HP−6000」)の代わりに上記式(7)におけるR10が全て水素原子であるフェノールフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(製品名「NC−2000−L」、エポキシ当量:226g/eq.、日本化薬(株)製)を38質量部使用した以外は実施例4と同様にして、プリプレグを得た。
【0088】
(実施例11)
ワニスを得る際に、更に2−エチル−4−メチルイミダゾール(製品名「2E4MZ」、四国化成工業(株)製)を0.01質量部加えた以外は実施例4と同様にして、プリプレグを得た。
【0089】
(実施例12)
ワニスを得る際に、合成例3で得られたα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂及び合成例4で使用したマレイミド化合物を使用せず、合成例4で得られたBT樹脂1を62質量部加えた以外は実施例4と同様にして、プリプレグを得た。
【0090】
(実施例13)
ワニスを得る際に、合成例3で得られたα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂及び合成例4で使用したマレイミド化合物を使用せず、合成例5で得られたBT樹脂2を62質量部加えた以外は実施例4と同様にして、プリプレグを得た。
【0091】
(実施例14)
ワニスを得る際に、合成例3で得られたα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂及び合成例4で使用したマレイミド化合物を使用せず、合成例4で得られたBT樹脂1を59質量部、上記式(4)におけるRが全て水素原子であるナフトールアラルキル型フェノール樹脂(製品「SN−495」、新日鐵化学(株)製、水酸基当量:236g/eq.)を3質量部加えた以外は実施例4と同様にして、プリプレグを得た。
【0092】
(実施例15)
ワニスを得る際に、球状溶融シリカ(製品名「FB−3SDC」)の使用量を300質量部から150質量部に変更し、球状溶融シリカ(製品名「SFP−120MC」)の使用量を100質量部から150質量部に変更し、湿潤分散剤2(製品名「disperbyk−111」)の代わりに湿潤分散剤3(製品名「disperbyk−w903」、ビックケミー・ジャパン(株)製)を2質量部加え、更にアルミナ微粒子(製品名「AX3−15」、平均粒子径:3.0μm、新日鉄住金マテリアルズ(株)マイクロン社製)を200質量部加えた以外は実施例4と同様にして、樹脂含有量64質量%のプリプレグを得た。
【0093】
(実施例16)
ワニスを得る際に、球状溶融シリカ(製品名「FB−3SDC」)及び球状溶融シリカ(製品名「SFP−120MC」)を使用せず、湿潤分散剤1(製品名「disperbyk−161」)、及び湿潤分散剤2(製品名「disperbyk−111」)の代わりに湿潤分散剤3(製品名「disperbyk−w903」)を5質量部加え、更にアルミナ微粒子(製品名「AX3−15」、平均粒子径:3.0μm、新日鉄住金マテリアルズ(株)マイクロン社製)を400質量部加えた以外は実施例4と同様にして、樹脂含有量69質量%のプリプレグを得た。
【0094】
(実施例17)
ワニスを得る際に、球状溶融シリカ(製品名「FB−3SDC」)及び球状溶融シリカ(製品名「SFP−120MC」)を使用せず、湿潤分散剤1(製品名「disperbyk−161」)、及び湿潤分散剤2(製品名「disperbyk−111」)の代わりに湿潤分散剤3(製品名「disperbyk−w903」)を5質量部加え、更にアルミナ微粒子(製品名「ASEP−20」、平均粒子径:0.3μm、電気化学工業(株)製)を100質量部、ベーマイト微粒子(製品名「BM5009」、平均粒子径:3.0μm、アドマテックス(株)製)を300質量部加えた以外は実施例4と同様にして、樹脂含有量66質量%のプリプレグを得た。
【0095】
(実施例18)
ワニスを得る際に、更にシリコーンレジンで表面を被覆したシリコーンゴムパウダー(シリコーン複合パウダー、製品名「KMP−600」、信越化学工業(株)製)を10質量部加えた以外は実施例4と同様にして、樹脂含有量60質量%のプリプレグを得た。
【0096】
(実施例19)
実施例1で使用したポリシロキサンベースの改質剤で表面処理を施されたアルミナナノ粒子(製品名「NANOBYK−3610」)を1質量部、球状溶融シリカ(製品名「FB−3SDC」、平均粒子径:3.0μm、電気化学工業社製)を300質量部、球状溶融シリカ(製品名「SFP−120MC」、平均粒子径:0.3μm、電気化学工業社製)を100質量部、実施例8で用いたフェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(製品名「NC−3000−FH」)を49質量部、実施例14で使用したナフトールアラルキル型フェノール樹脂(製品名「SN−495」)を36質量部、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン(製品名「BMI−70」)を15質量部、湿潤分散剤1(製品名「disperbyk−161」、ビックケミー・ジャパン(株)製)を1質量部、湿潤分散剤2(製品名「disperbyk−111」、ビックケミー・ジャパン(株)製)を2質量部、シランカップリング剤(製品名「Z6040」、東レ・ダウコーティング(株)製)を5質量部、2−エチル−4−メチルイミダゾール(製品名「2E4MZ」、四国化成工業(株)製)を0.02質量部混合してワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ0.1mmのEガラス織布に含浸塗工し、140℃で3分間加熱乾燥して、樹脂含有量63質量%のプリプレグを得た。
【0097】
(実施例20)
実施例1で使用したポリシロキサンベースの改質剤で表面処理を施されたアルミナナノ粒子(製品名「NANOBYK−3610」)を1質量部、球状溶融シリカ(製品名「FB−3SDC」、平均粒子径:3.0μm、電気化学工業社製)を300質量部、球状溶融シリカ(製品名「SFP−120MC」、平均粒子径:0.3μm、電気化学工業社製)を100質量部、ポリオキシナフチレン型エポキシ樹脂(製品名「HP−6000」)を44質量部、上記式(5)におけるRが全て水素原子であるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(製品名「KAYAHARD GPH−103」、日本化薬(株)製、水酸基当量:231g/eq.)を18質量部、ナフタレン型フェノール樹脂(製品名「EPICLON EXB−9500」、DIC(株)製、水酸基当量:153g/eq.)を18質量部、アミノトリアジンノボラック樹脂(製品名「PHENOLITE LA−3018−50P」、水酸基当量:151g/eq.、DIC(株)製)を3質量部、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン(製品名「BMI−70」)を17質量部、湿潤分散剤1(製品名「disperbyk−161」)を1質量部、湿潤分散剤2(製品名「disperbyk−111」)を2質量部、シランカップリング剤(製品名「Z6040」、東レ・ダウコーティング(株)製)を5質量部、2−エチル−4−メチルイミダゾール(製品名「2E4MZ」、四国化成工業(株)製)を0.02質量部混合してワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ0.1mmのEガラス織布に含浸塗工し、140℃で3分間加熱乾燥して、樹脂含有量63質量%のプリプレグを得た。
【0098】
(実施例21)
ビス(3−エチル−5−メチル−4マレイミドフェニル)メタン(BMI−70)の代わりに合成例4で使用したマレイミド化合物(製品名「BMI−2300」)を17質量部使用した以外は実施例20と同様にして、プリプレグを得た。
【0099】
(実施例22)
実施例1で作製したワニスを、厚さ0.1mmのSガラス織布に含浸塗工し、140℃で3分間加熱乾燥して、樹脂含有量61質量%のプリプレグを得た。
【0100】
(実施例23)
実施例4で作製したワニスを、厚さ0.1mmのSガラス織布に含浸塗工し、140℃で3分間加熱乾燥して、樹脂含有量61質量%のプリプレグを得た。
【0101】
(実施例24)
実施例7で作製したワニスを、厚さ0.1mmのSガラス織布に含浸塗工し、140℃で3分間加熱乾燥して、樹脂含有量61質量%のプリプレグを得た。
【0102】
(実施例25)
実施例12で作製したワニスを、厚さ0.1mmのSガラス織布に含浸塗工し、140℃で3分間加熱乾燥して、樹脂含有量61質量%のプリプレグを得た。
【0103】
(実施例26)
ポリシロキサンベースの改質剤で表面処理を施されたアルミナナノ粒子(製品名「NANOBYK−3610」、平均粒子径:20nm、ビックケミー・ジャパン(株)製)の代わりに合成例2で作製した表面処理ナノ粒子を使用した以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを得た。
【0104】
(実施例27)
ポリシロキサンベースの改質剤で表面処理を施されたアルミナナノ粒子(製品名「NANOBYK−3610」、平均粒子径:20nm、ビックケミー・ジャパン(株)製)の代わりに合成例2で作製した表面処理ナノ粒子を使用した以外は、実施例4と同様にしてプリプレグを得た。
【0105】
(実施例28)
ポリシロキサンベースの改質剤で表面処理を施されたアルミナナノ粒子(製品名「NANOBYK−3610」、平均粒子径:20nm、ビックケミー・ジャパン(株)製)の代わりに合成例2で作製した表面処理ナノ粒子を使用した以外は、実施例12と同様にしてプリプレグを得た。
【0106】
(実施例29)
ポリシロキサンベースの改質剤で表面処理を施されたアルミナナノ粒子(製品名「NANOBYK−3610」、平均粒子径:20nm、ビックケミー・ジャパン(株)製)の代わりに合成例2で作製した表面処理ナノ粒子を使用した以外は、実施例19と同様にしてプリプレグを得た。
【0107】
(実施例30)
ポリシロキサンベースの改質剤で表面処理を施されたアルミナナノ粒子(製品名「NANOBYK−3610」、平均粒子径:20nm、ビックケミー・ジャパン(株)製)の代わりにポリシロキサンベースの改質剤で表面処理を施されたベーマイトナノ粒子(製品名「LP−X−21121」、平均粒子径:10nm、ビックケミー・ジャパン(株)製)を使用した以外は、実施例4と同様にしてプリプレグを得た。
【0108】
(比較例1)
ポリシロキサンベースの改質剤で表面処理を施されたアルミナナノ粒子(製品名「NANOBYK−3610」)を使用しない以外は実施例1と同様にして、プリプレグを得た。
【0109】
(比較例2)
ポリシロキサンベースの改質剤で表面処理を施されたアルミナナノ粒子(製品名「NANOBYK−3610」)を使用しない以外は実施例4と同様にして、プリプレグを得た。
【0110】
(比較例3)
ポリシロキサンベースの改質剤で表面処理を施されたアルミナナノ粒子(製品名「NANOBYK−3610」)を使用しない以外は実施例8と同様にして、プリプレグを得た。
【0111】
(比較例4)
ポリシロキサンベースの改質剤で表面処理を施されたアルミナナノ粒子(製品名「NANOBYK−3610」)を使用しない以外は実施例12と同様にして、プリプレグを得た。
【0112】
(比較例5)
ポリシロキサンベースの改質剤で表面処理を施されたアルミナナノ粒子(製品名「NANOBYK−3610」)を使用しない以外は実施例15と同様にしてプリプレグを得た。
【0113】
(比較例6)
ポリシロキサンベースの改質剤で表面処理を施されたアルミナナノ粒子(製品名「NANOBYK−3610」)を使用しない以外は実施例16と同様にしてプリプレグを得た。
【0114】
(比較例7)
ポリシロキサンベースの改質剤で表面処理を施されたアルミナナノ粒子(製品名「NANOBYK−3610」)を使用しない以外は実施例17と同様にしてプリプレグを得た。
【0115】
(比較例8)
ポリシロキサンベースの改質剤で表面処理を施されたアルミナナノ粒子(製品名「NANOBYK−3610」)を使用しない以外は実施例20と同様にしてプリプレグを得た。
【0116】
(比較例9)
ポリシロキサンベースの改質剤で表面処理を施されたアルミナナノ粒子(製品名「NANOBYK−3610」)の代わりにシリカナノ粒子(製品名「NANOBYK−3652」、平均粒子径:20nm、ビックケミー・ジャパン(株)製)を1質量部使用した以外は実施例4と同様にして、プリプレグを得た。
【0117】
(比較例10)
ポリシロキサンベースの改質剤で表面処理を施されたアルミナナノ粒子(製品名「NANOBYK−3610」)を使用せず、球状溶融シリカ(製品名「FB−3SDC」、平均粒子径:3.0μm、電気化学工業社製)の使用量を300質量部から200質量部に変更した以外は実施例22と同様にして、プリプレグを得た。
【0118】
(比較例11)
ポリシロキサンベースの改質剤で表面処理を施されたアルミナナノ粒子(製品名「NANOBYK−3610」)を使用せず、球状溶融シリカ(製品名「FB−3SDC」、平均粒子径:3.0μm、電気化学工業社製)の使用量を300質量部から200質量部に変更した以外は実施例23と同様にして、プリプレグを得た。
【0119】
(比較例12)
ポリシロキサンベースの改質剤で表面処理を施されたアルミナナノ粒子(製品名「NANOBYK−3610」)を使用せず、球状溶融シリカ(製品名「FB−3SDC」、平均粒子径:3.0μm、電気化学工業社製)の使用量を300質量部から200質量部に変更した以外は実施例24と同様にして、プリプレグを得た。
【0120】
(比較例13)
ポリシロキサンベースの改質剤で表面処理を施されたアルミナナノ粒子(製品名「NANOBYK−3610」)を使用せず、球状溶融シリカ(製品名「FB−3SDC」、平均粒子径:3.0μm、電気化学工業社製)の使用量を300質量部から200質量部に変更した以外は実施例25と同様にして、プリプレグを得た。
【0121】
(比較例14)
ポリシロキサンベースの改質剤で表面処理を施されたアルミナナノ粒子(製品名「NANOBYK−3610」)の代わりに、5質量%のメチルエチルケトンスラリーとして超音波分散器(製品名「UP200S」、hielscher製)にて5分間分散処理した、平均粒子径(D50)が20nmの未処理アルミナナノ粒子を添加した以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを得た。
【0122】
〔金属箔張積層板の作製〕
実施例1〜30及び比較例1〜14で得られたプリプレグ1枚を挟むように、12μm厚の電解銅箔(3EC−III、三井金属鉱業(株)製)をそのプリプレグの上下に配置し、圧力30kgf/cm、温度220℃で120分間の積層成型を行い、絶縁層厚さ0.14mmの銅張積層板を得た。
【0123】
得られたプリプレグの溶融粘度の測定結果、得られた銅張積層板を用いて、成形性、耐熱性及び吸湿耐熱性の評価を行った結果を表1及び表2に示す。
【0124】
〔各物性評価方法〕
プリプレグの溶融粘度(プリプレグ粘度:単位:×16Pa・s)、成形性、耐熱性、吸湿耐熱性、熱膨張率及び熱伝導率は、下記方法にて評価した。
・プリプレグ粘度:フローテスター(島津製作所製)を用い、120℃における溶融粘度の測定を行った。
・成形性:銅張積層板の銅箔をエッチングにより除去した後に、露出した表面を目視にて観察して、ボイドの有無を評価した。ボイドが認められなかった場合を○、認められた場合を×と評価した。
・耐熱性:50×50mmのサンプルを、280℃半田に30分間フロートさせて、デラミネーションの有無を目視により確認し、下記基準により評価した。
○:全く異常なし ×:0〜30分間フロートさせている間にデラミネーション発生
・吸湿耐熱性:50mm×50mmのサンプルの片面の半分以外の銅箔をエッチング除去した試験片(すなわち、片面の半分のみに銅箔が残存した試験片)を、プレッシャークッカー試験機(平山製作所社製、PC−3型)を用いて、121℃、2気圧の条件で3時間処理してから、260℃の半田の中に30秒間浸漬した後の外観変化を目視で観察した。4回試験を行いフクレの発生が認めれた回数(フクレ発生回数/試験回数)により評価した。
・熱膨張率:銅箔張積層板の銅箔をエッチングにより除去した後に、熱機械分析装置(TAインスツルメント製)の所定位置に置き、40℃から340℃まで毎分10℃で昇温し、60℃から120℃での面方向の線膨張係数を測定した。測定方向は積層板のガラスクロスの縦方向(Warp)とした。
・熱伝導率:得られた銅箔張積層板の密度を測定し、また、比熱をDSC(TA Instrumen社製、Q100型)により測定し、さらに、キセノンフラッシュアナライザ(Bruker社製、製品名「LFA447Nanoflash」)により熱拡散率を測定した。そして、熱伝導率を以下の式から算出した。
・熱伝導率(W/m・K)=密度(kg/m)×比熱(kJ/kg・K)×熱拡散率(m/S)×1000
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
【0127】
本出願は、2013年1月15日出願の日本特許出願(特願2013−004411)及び2013年10月21日出願の日本特許出願(特願2013−217997)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明は、粘度が、金属箔張積層板を作製するのに都合が良いほど低いプリプレグを作製することでき、しかも、吸湿耐熱性に優れた金属箔張積層板を作製することが可能な樹脂組成物、並びに、その樹脂組成物を用いて作製されるプリプレグ、積層板及びプリント配線板を提供する。したがって、そのような分野で産業上の利用可能性がある。