(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吹出口から吹き出される空気の給気経路において前記吹出口より前記空気の給気方向上流側に前記吹出口と近接して配置され、前記供給経路側に有する屈曲面により前記給気経路を通る空気を前記タスク領域側へ偏向する屈曲部と、
前記吹出口の下端から前記空気の吹き出し方向と反対側へ延伸させた面を形成する膨出部と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の空調装置付き机。
熱源との間で熱媒体が循環し、前記吸込口から吸い込んだ空気と前記熱媒体との熱交換を行うことで当該空気を温調する熱交換器を前記筐体内に備え、前記熱交換器によって温調された空気を前記吹出口から吹き出させることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の空調装置付き机。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る空調システムについて説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本発明の空調システム及びタスク空調装置は、実施形態の構成には限定されない。
【0020】
《空調システム》
図1は、本実施形態における空調システムの概略構成を示す図である。本実施形態の空調システム100は、目的空間(被調和室)の空調を行うものであり、例えば、室内の空気の温度、湿度、清浄度の調整を行う。本実施形態は、空調システム100をオフィスに適用した例であり、
図1に示すように、当該オフィスには目的空間としての執務室102や、空調機室103が設けられ、空調機室103には空調機104が設置されている。空調機104は、配管105を介して不図示の熱源と接続されたコイル141や加湿器142、送風機143を備えている。執務室102の天井121は、天井スラブ129との間に空間を設けた二重天井構造となっており、執務室102の天井121には、吹出口144及び還気口145が複数設けられている。吹出口144は、天井裏空間に形成された給気経路146を介して空調機104と連通されている。また、還気口145は、天井裏空間に形成された還気経路147を介して空調機104と連通されている。これらの空調機104、吹出口144、還気口145、給気経路146、還気経路147等が本実施形態のアンビエント空調装置を構成している。
【0021】
また、執務室102には、複数の机9が設置されており、この机9の設置された領域が事務作業等を行うタスク領域となっている。そして、背中合わせにした机9の間に配置した衝立106にタスク空調装置を内蔵したことにより、タスク空調装置をタスク領域に隣接させている。このタスク空調装置とアンビエント空調装置が本実施形態の空調システム100を構成している。
【0022】
《タスク空調装置》
図2は、タスク空調装置1を内蔵した衝立106の外観斜視図、
図3は、タスク空調装置1の内部構成を示す図、
図4は、タスク空調装置要部の分解斜視図である。
【0023】
タスク空調装置1は、執務室の床122(
図3)に立設され、
図2に示すように、机9の間の間仕切りとして用いられる衝立106の筐体内に収められている。衝立106は、垂直に立てられた略板状の外形、一方の平面側に机9が背を向けて配置され、他方の平面側にも同様に机9が背を向けて配置されている。机9は、左右一対の脚部92上に天板91が水平に取り付けられている。なお、本実施形態では、衝立106と机9とを独立に設けて空調装置付き机としての一つのユニットを構成しているが、衝立106と机9とを一体に設けて空調装置付き机を構成しても良い。即ち、間仕切りと一体に構成された机にタスク空調装置が備えられても良い。
【0024】
各執務者は、それぞれ机9の前に座り、衝立106に向かって事務その他の作業を行う。即ち、各衝立106の机側の空間がタスク領域となっている。なお、以下の説明では、各衝立106(タスク空調装置1)について、空調を行うタスク領域側を手前、その反対側を奥行側、机の幅方向、即ちタスク領域の幅方向を左右方向とする。
【0025】
タスク空調装置1のタスク領域側の面(外装パネル)11には、タスク空調装置1の吹出口30や、吸込口10、操作部8、下部吹出口60を備えている。吹出口30は、衝立106の筐体のうち、前記タスク領域の上部に対応する位置からタスク領域側に向けて温調された空気を吹き出す。また、吹出口30はタスク領域の幅方向に長手のスリット状に形成され、前記吹出口30の上部を開口301とし、吹出口30の下部に前記吹出口の下部を通る空気を制限する制限部材302を設けている。制限部材302は、通気性を有する部材(通気部材)であり、吹出口30の下部の通気部材を設ける面は、通気性の素材、通気性の構造で構成することができる。
【0026】
吸込口10は、吹出口30より下側であって、机9の天板91よりも上に配置され、タスク領域の空気を吸い込む。なお、本実施形態では、メンテナンス性を考慮して吸込口1
0を机9の天板91よりも上に配置したが、吸込口10を天板91よりも下に設けても良い。また、吸込口10を天板91よりも上及び下に設けても良い。
【0027】
本実施形態のタスク空調装置1は、衝立106の両面、即ち
図2の手前側と奥側に位置するタスク領域の空調を行えるように、1枚の衝立106に、2台のタスク空調装置1が備えられている。
【0028】
図3は、衝立106の筐体のうち、タスク領域に面した外装パネル11を外した状態を模式的に示しており、衝立106の筐体内には、吹出しチャンバ3や、コイル2、吸込みチャンバ4、制御部5、下部吹出口60を有している。なお、本実施形態では、衝立106内に2台のタスク空調装置1が備えられているため、
図3に示した面と反対側の面にも同様に吹出しチャンバ3や、コイル2、吸込みチャンバ4等が設けられている。
【0029】
図4は、吹出しチャンバ3を示す図であり、
図4(a)は正面図、
図4(b)は正面側から内部の構成を示した図、
図4(c)は背面図である。ここで正面とは、衝立106に取り付けられた際にタスク領域側となる面としている。吹出しチャンバ3は、
図4(a)に示すように正面左側を方形とし、右側を斜め上へ延設した箱状の部材で、正面の右側上部に吹出口30としてのスリット状の開口を有し、裏面(
図4(c))に温調された空気が導入される開口33を有している。また、吹出しチャンバ3の内部は、
図4(b)に示すように、開口33側から吹出口30にかけて、給気経路の幅を均等に分割するようにガイドベーン32が設けられている。
【0030】
図5は、吸込みチャンバ4を示す図であり、
図5(a)は正面図、
図5(b)は背面図である。吸込みチャンバ4は、
図5(a)に示すように正面から見て矩形の右上を斜めに切り欠いたような台形で箱状の部材である。吸込みチャンバ4の正面には衝立106の吸込口10から吸い込まれた空気が導入される開口42と吸込みチャンバ4内の空気が吸い出される開口41を有している。
【0031】
図6では、手前側のタスク領域を空調するタスク空調装置1の要部を示しており、衝立106内部の奥行方向中央に設けられた中板13の開口13cの手前にコイル2が取り付けられ、中板13の開口13a、13bにファン7が取り付けられている。また、中板13の奥側の面には、吸込みチャンバ4が開口41,42を中板13の開口13a〜13cと一致させるように取り付けられている。そして、中板13の開口13a,13bに取り付けられたファン7を吹出しチャンバ裏面の開口33(
図4(c))に嵌め込むように吹出しチャンバ3が中板13の正面に取り付けられている。
【0032】
また、下部吹出口60の奥側には下部吹出口用ファン6及び下部吹出しチャンバ62が設けられ、下部吹出しチャンバ62がダクト61を介して吹出しチャンバ3と接続されている。なお、本実施形態では、下部吹出口60(
図2)を左右方向中央の最下部に設けたが、これに限らず他の位置に設けても良く、例えば机9の天板91よりも下であれば良い。また、下部吹出口60を複数設けるようにしても良い。即ち、ダクト61を介して吹出しチャンバ3と接続される下部吹出口用ファン6や下部吹出しチャンバ62といった下部吹き出し機構を複数配置しても良い。なお、下部吹き出し機構60,61,6は、必ずしも設けなければならないものではなく、省略しても良い。特に、タスク空調装置を冷房時にのみ使用する場合には、下部吹き出し機構60,61,6を設けなくても良い。
【0033】
図7は、衝立106内に収められたタスク空調装置1要部の縦断面を示している。吸込口10の内側にはフィルタ12が設けられ、フィルタ12の奥側にコイル2が位置し、中板13の奥側の面に吸込みチャンバ4が設けられている。また、ファン7の手前側には、吹出しチャンバ3が設けられ、ファン7から吹出口30への給気経路37を形成している
。この給気経路37は、
図7に示す縦断面において、ファン7から吹出口30側へ上方に向かって垂直に形成され、吹出口30の内側で、屈曲部31により吹出口側、即ちタスク領域側へ屈曲されている。給気経路37において、屈曲部31の給気方向上流側には、膨出部38,39が設けられ、給気経路37の奥行方向の幅を狭めている。また、給気経路37の手前側の面に設けた膨出部38は、吹出口30としての開口の下端30aから空気の吹き出し方向と反対側へ延伸させた面(下ガイド面)381を有している。なお、本実施形態において、この下ガイド面381は水平に形成されている。これによりファン7から給気経路37を介して上方へ送られた空気は、屈曲部31でタスク領域側へ曲げられ、屈曲部31内面の先端部分(上ガイド面)311と下ガイド面381にガイドされて、タスク領域側へ吹き出される。
【0034】
図8は、吹出口30の構成を説明するための比較例であり、
図9は、吹出口30の例を示す図である。
図8(a)に示す吹出口130は、
図7の吹出口30と比べて膨出部38を省略した点が異なり、その他の構成は同じである。
図8(a)のように膨出部38が無い構成であると、垂直な給気経路37を通り上向きに進む空気SAのうち、外装パネル11の裏面近傍を通る一部の空気SA1は、屈曲部31等の空気SAの向きを変える部材の影響が少なく、給気経路37を上向きに進んだ慣性が優勢であるため、吹出口30から上向きに吹き出される。また、この上向きに吹き出される一部の空気SA1に連れて他の空気SA2,SA3についても水平方向より上向きに吹出される。このように膨出部38が無い構成、即ち膨出部38によって形成される下ガイド面381が無い構成であると、空気SAが水平方向よりも上向きに吹き出されてしまい、タスク領域から逸脱してしまうため、望ましくない。
【0035】
そこで、
図8(b)に示すように、給気経路37と連通するノズル330を衝立106のタスク領域側の外装パネル11から水平方向にタスク領域側へ突出させて設け、ノズル330のタスク領域側の端部の開口を吹出口30とする。このようにノズル330を設けて、垂直な給気経路37を通り上向きに進んだ空気SAを屈曲部31で屈曲した後、直ちに吹き出すのではなく、ノズル330で空気SAを水平方向へ導き、吹き出す方向を定めて、吹出口30から吹き出させる。即ち、ノズル330の内壁上面を上ガイド面311、内壁下面を下ガイド面381とし、空気SAが、上ガイド面311と下ガイド面381にガイドされて、タスク領域側へ水平方向に吹き出される。
図8(b)のように、ノズル330を外装パネル11から水平に延設した構成とすれば、外装パネル11の裏面近傍を通る一部の空気SA1も含めて空気SA全体の流れを水平方向に変えた後に吹き出させるので、空気SAを水平方向に吹き出させることができ、タスク領域内へ適切に給気できる。
【0036】
しかしながら、
図8(b)のように、外装パネル11からノズル330が突出した形状であると、この突出部分が邪魔になることがある、また、美観上好ましくないといった問題がある。そこで本実施形態では、
図7に示すように、外装パネル11に設けた開口を吹出口30とし、吹出口30から吹き出させる空気の方向を定める上ガイド面311及び下ガイド面381を外装パネル11より内側に配置する構成とした。具体的には、吹出口30の内側で、給気経路37の上端部に屈曲部31を配置し、当該屈曲部31の給気経路側の面を
図7に示す縦断面において略円弧状とし、この前端部分、即ち吹出口30側の部分を水平に形成して上ガイド面311とした。また、給気経路37において、屈曲部31の給気方向上流側であって、給気経路37のタスク領域側の面に膨出部38を設け、当該膨出部38の上端を吹出口30としての開口の下端30aの高さに位置させ、この下端30aから空気の吹き出し方向と反対側へ延伸させた面(下ガイド面)381を形成している。これにより、本実施形態のタスク空調装置1を内蔵した衝立106は、タスク領域側の面(外装パネル)11に突出した邪魔な部材を設けることなく、フラットに統一された審美性の高い外観とし、且つ吹出口30から水平方向へ空気を吹き出させることができ、タスク領域へ適切に給気できる。
【0037】
なお、本実施形態の屈曲部31は、
図7に示す縦断面において略円弧状とした例を示したが、これに限らず、給気経路37を通り上向きに進んだ空気SAをタスク領域側へ偏向できる形状であれば良い。
図9は、屈曲部の他の例を示す図である。
図9(a)に示す屈曲部31aは、金属製の平板をプレス加工により多段階に曲げた形状である。屈曲部31aは、吹出口30側の水平面311、給気方向上流側の垂直面312、及びこれら水平面311と垂直面312をつなぐ傾斜面313を有している。屈曲部31aは、二段階に曲げた形状としたが、これに限らず、三段階以上に曲げた形状としても良い。このように平面を組み合わせた形状の屈曲部31aを
図7の屈曲部31に代えて採用しても、給気経路37を通り上向きに進んだ空気SAをタスク領域側へ偏向でき、支障なく空気SAを吹き出させることができる。そして、屈曲部31aのように平面を組み合わせた形状であると、単純なプレス加工によって形成でき、製造が容易になるという利点がある。
【0038】
また、
図9(b)に示す屈曲部31bは、L字状の部材であり、吹出口30側の水平面311及び給気方向上流側の垂直面312を有している。屈曲部31bは、金属製の平板をプレス加工して形成されても良いし、L型のケーシング等の汎用品を用いるものであっても良い。このように単純化した形状の屈曲部31bを
図7の屈曲部31に代えて採用しても、給気経路37を通り上向きに進んだ空気SAをタスク領域側へ偏向でき、支障なく空気SAを吹き出させることができる。そして、屈曲部31bのようにL字状の部材であると、汎用品を用いることができ、更に製造が容易になる。
【0039】
更に、
図7に示す構成では、給気経路37の膨出部38と対向する位置に膨出部39を設けたが、この膨出部39を省略しても良い。
図10は、膨出部39を省略した例を示す図である。
【0040】
図10に示すタスク空調装置1では、
図7と比べて、膨出部39を省略し、屈曲部31を奥側へ配置し、膨出部38を奥側へ延伸させた構成としている。また、給気経路37の膨出部38より給気方向上流側の奥側の面に膨出部35を設けている。なお、膨出部35は、必須の構成要素ではなく、省略可能であるが、膨出部35や膨出部38を給気経路37に設けることで、ファン7の駆動音等の内部の音が吹出口30から放出されることを抑えられ、静粛性が向上するので、膨出部35を設けるのが望ましい。
【0041】
このように
図10の構成では、給気経路37が
図7と比べて奥側に配置されるため、上ガイド面311及び下ガイド面381の水平方向の長さを長くとることができ、吹出口30から吹き出す空気の方向をより確実に定めることができる。
【0042】
《空調制御》
図1に示す空調機104は、還気経路147を介して還流された還気RAや外部から取り入れた外気OAをコイル141で熱交換して所定の温度に調整し、必要に応じて加湿器142で加湿し、送風機143によって送風し、給気経路146を介して執務室102の天井121に設けた吹出口144から吹出させ、執務室102内の空調を行う。
【0043】
一方、衝立106に収められたタスク空調装置1は、各執務者に操作されて、各執務者のタスク領域を個別に空調する。特に本実施形態では、衝立106内に2台のタスク空調装置1を備え、衝立106で仕切る両側のタスク領域10A,10B(
図1)をそれぞれ空調する。
【0044】
具体的には、
図7に示すタスク空調装置1におけるファン7の搬送力により、タスク領域の空気が吸込口10から吸い込まれ、コイル2によって熱交換されて温度が調整される。そして、この温調された空気が、ファン7によって、吸込みチャンバ4から吹出しチャ
ンバ3へ送風され、給気経路37を介して上方へ送られ、屈曲部31でタスク領域側へ曲げられて吹出口30からタスク領域側へほぼ水平、または水平よりも僅かに上向きに吹き出される。ここで、タスク空調装置1及びアンビエント空調装置が冷房運転している場合、タスク空調装置1から吹出される空気の温度が、アンビエント空調装置によって空調される周囲の領域(アンビエント領域)の温度よりも低い温度となるように制御される。このため吹出された空気は徐々に下降し、山なりの気流となる。例えば、アンビエント空調装置は、吹出口144から吹き出させる給気の温度を13℃〜20℃とし、アンビエント領域の温度、特にタスク領域10A,10Bを取り囲む領域の温度を26℃〜28℃とするように空調する。一方、衝立106に内蔵されたタスク空調装置1は、吹出口30から吹出させる温度を20℃〜23℃とする。このようにタスク空調装置1から吹出される空気の温度が、20℃〜23℃と、周囲の温度26℃〜28℃よりも低いため、吹出された空気は徐々に下降し、山なりの気流となる。なお、タスク領域内の温度は、各執務者によって設定された風量等によって異なるが、例えば26℃程度に空調される。
【0045】
また、タスク空調装置1の吹出口30の下部に制限部材302が設けられているため、吹出口30の上部開口301を通る空気と吹出口30の下部を通る空気とで、下降の程度や広がりの程度が異なる。例えば、吹出口30上部の開口301をとおり、制限部材302の制限を受けない空気は、速い流速で吹出口30から離れた位置へ向かう山なりの気流1aとなる。即ち、吹出口30の上部開口301を通る空気は、タスク領域の周辺部分を覆う気流となる。また、換言すると、吹出口30の上部開口301を通る空気は、タスク領域を包み込む気流となる。一方、前記吹出口30の下部を通る空気は制限部材302を通る際に抵抗を受けて低速化し、周囲の空気を巻き込みながら広がり、上部の気流1aと比べて吹出口30から近い位置で広がりながら下降する気流1bとなる。即ち、制限部材302を通る空気は、タスク領域の内側部分に広がる気流となる。このように吹出口30から離れた位置に向かいタスク領域の遠位を空調する気流1aと、吹出口30から近い執務者の手元や上半身付近を空調する気流1bを形成することによりタスク領域の全域にわたって快適に空調される。換言すると、吹出口30上部の開口301を通った空気によって形成される気流と、吹出口30下部に設けられた制限部材302を通った空気によって形成される気流の違いにより、タスク領域を包み込む気流とタスク領域の内側で広がる気流とが形成され、タスク領域外へ無駄に拡散せずタスク領域内を空調できる。更に、本実施形態では吸込口10を吹出口30と同様に衝立106の筐体のタスク領域側の外装パネル11に設けて、タスク領域側の空気を吸い込むことにより、タスク空調装置1から吹き出し、下降した空気をタスク空調装置1へ戻すようにしている。これによりタスク領域の空気が無駄に拡散せず、効率良く個別にタスク領域の空調を行うことができる。また、各タスク領域の空気が無駄に拡散しないことで、他の領域に与える影響が少なく、ミキシングロスを抑えることができる。
【0046】
本実施形態のタスク空調装置1は、冷房時に吹出口30から吹出させる給気の温度を上記のように20℃〜23℃とし、配管21を介してコイル2へ供給する熱媒体の温度を13℃〜17℃とし、比較的、高温の冷水を供給する。これにより冷房時のコイル2における結露を抑えることができ、ドレン配管を削減することによる装置構成の簡略化や、清掃の手間を省略できることによるメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0047】
更に、本実施形態のタスク空調装置1は、配管21を介してコイル2へ供給する熱媒体として温水を供給することで、吸込口10から吸い込んだ空気をコイル2で熱交換して温め、吹出口30又は下部吹出口60から吹き出すことで暖房を行うことができる。例えば、給気経路37に風量調整ダンパ(不図示)を設けて吹出口30から吹き出す空気を少なく又は止めて、主に下部吹出口60から執務者の足元へ暖気を吹き出させる。一方、アンビエント空調装置は、タスク領域10A,10Bを取り囲むアンビエント領域の温度がタスク領域10A,10Bの温度よりも低くなるように空調する。
【0048】
図11は、暖房時に下部吹出口60から吹き出された暖気の流れの説明図である。下部吹出口60から吹き出された暖気1cは、周囲の温度よりも高いため、徐々に上昇する。但し、下部吹出口60より上方に、机9の天板91が設けられているため、一部の暖気1a1が天板91に上昇を遮られて天板91の下の空間に滞留する。また、天板91の前端91aよりも下部吹出口60から離れた位置、即ち執務者の着座位置付近に達した暖気1c2は、天板91を超えて上昇し、天板91より上の空間に達した暖気1c3が吸込口10から吸い込まれる。
【0049】
このように、本実施形態のタスク空調装置1は、下部吹出口60から暖気1cを吹き出し、机9の天板91より上の空間に達した暖気1c3を吸込口10から吸い込み、タスク領域内で循環させることにより、暖房時においてもタスク領域の空気が無駄に拡散せず、効率良く個別にタスク領域の空調を行うことができる。また、各タスク領域の空気が無駄に拡散しないことで、他の領域に与える影響が少なく、ミキシングロスを抑えることができる。
【0050】
また、本実施形態のタスク空調装置1は、空調の設定を各執務者が個別に調整可能となっている。タスク空調装置1の操作部8(
図2)は、制御部5(
図3)と電気的に接続され、制御部5は、流量調整弁29や下部吹出口用ファン6(
図6)、ファン7、給気経路上のダンパ(不図示)等と電気的に接続されている。操作部8は、スイッチや選択ボタン、調整用のボリューム等、タスク空調装置1の設定を行うユーザインタフェースである。これにより執務者が操作部8を操作すると、制御部5が、流量調整弁29や下部吹出口用ファン6(
図6)、ファン7、給気経路上のダンパ(不図示)等を制御して、空調能力や風量を調整する。また、タスク空調装置1の調整は、手動に限らず、熱画像センサ(不図示)を制御部5と接続し、執務者やタスク領域の熱画像を撮影して、執務者やタスク領域の温度を制御部5で認識し、この温度に基づいてタスク空調装置1を調整しても良い。
【0051】
例えば、コイル2は、配管21を介して不図示の熱源との間で、熱媒体が循環されており、流量調整弁29により、この熱媒体の循環のオン/オフや、熱媒体の流量が制御される。
【0052】
また、ファン7の回転数が制御されることにより、吹出口30から吹出す空気の風量が調整される。これにより外出から執務室102に戻った場合に空調を強めたい、或は空調の必要性か少ないので空調を弱めたいなどの調整が可能となる。
【0053】
同様に、下部吹出口用ファン6の回転数が制御されることにより、下部吹出口6から吹出す空気の風量が調整される。これにより足元や座面の蒸れが気になる場合に下部吹出口6から吹出す空気の風量を増加させる。或は足元が冷えないように下部吹出口6からの吹ぎ出しを停止させるといった調整が可能となる。
【0054】
図12は、風量を弱・中・強に変化させた場合の気流の状態を示す図である。
図12(a)は、風量を弱にセットした場合、例えば25m
3/hとした場合であり、気流が主に
執務者の胸から手元のあたりに向けて流れた。
【0055】
また、
図12(b)は、風量を中にセットした場合、例えば34m
3/hとした場合で
あり、気流が主に執務者の顔から胸のあたりに向けて流れた。
【0056】
図12(c)は、風量を強にセットした場合、例えば61m
3/hとした場合であり、
気流が主に執務者の頭から肩のあたりに向けて流れた。
【0057】
このように、吹出口30から吹出す空気の風量を変化させると、気流の当たる位置や強さが変化するため、執務者は状況に応じて所望の風量に調整する。これにより執務者自身が状況に応じて適切な状態を選択できるため、各執務者の満足度が向上する。
【0058】
なお、この風量を変化させた場合の温度分布を測定したところ、何れの風量でも周囲より冷却された空気は、吹出口30から離れるに従って下降し、無駄に拡散しないことが確認できた。
【0059】
本実施形態のタスク空調装置1は、人一人分の顕熱及び照明やOA機器の顕熱を冷房負荷とし、例えば100W〜150Wと設定する。又は、執務者が外出から戻った場合等のために余裕を持たせ、冷房負荷を200Wと設定しても良い。
【0060】
このように各タスク空調装置で、各タスク領域の負荷を処理できるようにしたことにより、アンビエント空調装置によるアンビエント領域の空調は、換気主体とし、許容できる範囲で空調の程度を低く抑えることにより、空調システム全体の省エネルギ性を向上させることができる。
【0061】
《制限部材の例》
図13は、吹出口30に設ける制限部材の具体例を示す図である。
図13(a)の例では、制限部材としてパンチング板302を設け、吹出口30の左右方向の長さを500mm、上下方向の高さHを33mmとし、このうち上部開口301の高さH1を7mm、パンチング板302の高さH2を26mmとしている。
【0062】
この場合の開口部301と制限部材302の開口面積の比率は、
開口部301:制限部材302=1:3〜4とした。
【0063】
なお、パンチング板302は、パンチング孔径5mm、ピッチ8mmの60度千鳥抜きであり、開口率が35.4%である。
【0064】
これにより開口部301と制限部材302をとおる空気の比率が、
開口部301:制限部材302=1:1となり、吹出口30からタスク領域へ吹き出す空気を適切に配分できた。
【0065】
また、パンチング板302のパンチング孔径やピッチをパンチング板の上下で変えても良く、例えば、パンチング板302の上部の開口率を高く、下部の開口率を低くしても良い。更に、パンチング板302を2枚重ねて備え、これらパンチング板302のパンチング孔と骨部との重なりを調整して開口率を変化させても良い。
【0066】
更に、パンチング板302を上下方向に可動として、開口部301と制限部材302の開口面積の比率を変えても良い。
【0067】
なお、
図13(a)では、制限部材302として千鳥抜きしたパンチング板の例を示したが、これに限らず、
図13(b)のように並列に穴を設けた並列型のパンチング板を用いても良い。また、穴の形状についても角穴や長丸穴、六角形穴、菱穴など、丸穴以外であっても良い。制限部材302は、パンチング板に限らず、通気性を有する部材(通気部材)であればよく、通気性の素材、通気性の構造で構成することができる。例えば、制限部材302は、メッシュや格子、ルーバ、或いはこれらの組み合わせ等、給気の流れを変更できるものであれば良い。また、制限部材302は、パンチング板やメッシュ等のように通気孔として明確な開口を有した部材に限らず、不織布やスポンジのように微細な孔を介して空気を通過させる部材であっても良い。制限部材302は、金属やプラスチック等
、耐久性やメンテナンス性、形成の容易さ等に応じて、任意の材料を用いることができる。なお、合成樹脂製の網や不織布などを用いる場合は、骨組みに網や不織布を固定する構成を用いても良い。