(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明につき詳細に説明する。
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基の総称である。
【0016】
本発明の樹脂成形体は、光硬化性組成物[I]を光硬化して得られる樹脂成形体であり
、下記の条件を満足することを特徴とするものである。
1.ガラス転移温度が100〜200℃であること。
2.JIS K 5600−5−4:1999における表面硬度がH〜4Hであること。
3.樹脂成形体に対して、落球試験機を用い、直径32mmの円筒形台上に置いた該樹脂
成形体の表面中央部に、重さ130gの鋼球を落下させた場合に、下記式(α)を満足す
ること。
Y≧40X ・・・(α)
ここで、Xは樹脂成形体の厚さ(mm)であり、Yは鋼球を落下させても割れない高さ
の最大値(cm)である。
4.光硬化性組成物[I]が、下記成分(A)、(B)及び(C)を含有してなること。
(A)一般式(1)で示される脂環骨格を有する2官能(メタ)アクリレート系化合物
【化3】
ここで、R2は炭素数1〜6のエーテル結合を含んでも良いアルキレン基、R3は水素又はメチル基、aは1又は2、bは0又は1である。
(B)脂環骨格を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物
(C)光重合開始剤
5.脂環骨格を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B)の重量平均分子量(M)と、該多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B)の(メタ)アクリロイル基数(N)との比(M/N)が500以上であること。
6.脂環骨格を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B)が、一般式(2)で示される脂環骨格をもつこと。
【化4】
ここで、R1は水素又はメチル基である。
【0017】
本発明では、樹脂成形体の厚さは、通常の液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの基板や保護板として用いられる程度の厚さのものを対象とするものであり、通常0.05〜3mmであることが好ましく、特には0.1〜2.5mm、更には0.2〜2mm、殊には0.5〜1mmであることが好ましい。そして、樹脂成形体の厚さは、プラスチック基板のフレキシブル性に直接影響し、厚さが厚すぎると、フレキシブル性が失われる傾向があり、逆に、薄すぎると、ディスプレイの支持体としての機能に低下する傾向があり、また、耐衝撃性の低下を招く傾向がある。
【0018】
次にガラス転移温度について説明する。
本発明の樹脂成形体は、ディスプレイの信頼性の点からガラス転移温度が100〜200℃であり、フレキシブル性の点から、好ましくは120〜190℃、特に好ましくは140〜170℃である。ガラス転移温度が低すぎると加工適性が低下する傾向があり、高すぎると割れやすくなる傾向がある。
【0019】
なお、ガラス転移温度は、以下の通り測定したものである。
即ち、例えば、レオロジ社製動的粘弾性装置「DVE−V4型 FTレオスペクトラー」の引っ張りモードを用いて、周波数10Hz、昇温速度3℃/分、歪0.025%で測定を行い、得られた複素弾性率実数部(貯蔵弾性率)に対する虚数部(損失弾性率)の比(tanδ)を求め、このtanδの最大ピーク温度をガラス転移温度(Tg)とする。
【0020】
次に、表面硬度に関して説明する。
本発明の樹脂成形体は、傷つきにくさの点から表面硬度が鉛筆硬度でH〜4Hであり、好ましくはH〜3H、更にはH〜2Hであることが好ましい。かかる表面硬度が柔らかすぎると傷つきやすくなる傾向があり、硬すぎると割れやすくなる傾向がある。
なお、鉛筆硬度は、JIS K 5600−5−4:1999に準じて測定されるものである。
【0021】
次に、落球衝撃強度に関して説明する。
当然の事ながら、フレキシブルディスプレイを含めた電子機器デバイスにおいて、折り曲げたり、落としたときに割れてはならないといった落球衝撃強度が求められる。落球衝撃強度の評価として、
図1のような落球試験機を用いて、樹脂成形体に対して鋼球を落球させ、割れを確認するのが好適である。落球衝撃強度は樹脂成形体の厚さに依存するが、本発明においては、上記の式(α)を満足することが必要である。
【0022】
本発明においては更に、割れにくさの点で、下記式(β)を満足することが好ましく、特には下記式(γ)を満足することが好ましい。
Y≧50X ・・・(β)
Y≧70X ・・・(γ)
なお、鋼球を落下させても割れない高さの最大値Yは、高ければ高いほうが好ましいが、通常一般的には上限値は200X程度である。
【0023】
例えば、0.7mm厚の場合、重さ130gの鋼球を6枚の試験片に落下させたときに、4枚の試験片が割れない高さの最大値が30cm以上であることが好ましい。ディスプレイ用のフレキシブル基板の強度の点で好ましくは40cm以上、更にタッチパネルの強度の点で好ましくは50cm以上、特に保護板の強度の点では好ましくは60cm以上である。
【0024】
ここで、重さ130gの鋼球を落下させても割れない高さの最大値(Y)(cm)は、強化ガラスにおけるJIS R3206に準拠し、下記の通り行い、測定されるものである。
即ち、縦50mm×横50mmの樹脂成形体の試験片を23℃、50%RHの環境下で48時間放置した後、
図1のような落球試験機(東洋精機製作所製)を用いて、重さ130g、径31.73mmφの鋼球を所定の高さから落下させて、直径32mmの円筒形台上に置いた試験片の表面中央部に衝撃を与える。所定の高さを5cm刻みで高くしていき、各高さにて6枚の試験片に対して同様の操作を行い、4枚以上割れなかった高さの最大値(cm)を、鋼球を落下させても割れない高さの最大値(Y)として測定される。
【0025】
本発明において、落球衝撃強度、即ち、鋼球を落下させても割れない高さの最大値(Y)を上記範囲に調整するに当たっては、例えば、後述のように、成分(A)、(B)及び(C)の種類や配合量を適宜コントロールしたり、(メタ)アクリロイル基の反応率を制御したりする方法が挙げられる。
【0026】
本発明の樹脂成形体は、通常、光硬化により得られるアクリル系樹脂であり、代表的には、下記(A)〜(C)を含むアクリル系モノマーを重合して得られる樹脂成形体である。この場合、例えば、成分(A)、(B)及び(C)の種類や配合量を適宜コントロールしたり、(メタ)アクリロイル基の反応率を制御したり、樹脂成形体の厚さを制御したりすることにより、上記ガラス転移温度や表面硬度、落球衝撃強度といった各諸物性を調整することができる。中でも、樹脂成形体を構成する光硬化性組成物の組成配合を調整することにより行うことが好ましい。
【0027】
本発明で規定する物性値を有する樹脂成形体は、下記成分(A)、(B)、及び(C)
を含有してなる光硬化性組成物[I]を光硬化して製造する
ものである。
(A)一般式(1)で示される脂環骨格を有する2官能(メタ)アクリレート系化合物
【0028】
【化5】
(B)脂環骨格を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物
(C)光重合開始剤
【0029】
成分(A)の脂環骨格を有する2官能(メタ)アクリレート系化合物としては、上記一般式(1)で示される構造のものであればよく、R
2は炭素数1〜6のエーテル結合を含んでも良いアルキレン基であり、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基、より好ましくはメチレン基又はエチレン基であり、R
3は水素又はメチル基、好ましくはメチル基であり、aは1又は2、bは0又は1である。これらの脂環骨格を有する2官能(メタ)アクリレート系化合物は、脂環骨格を有するため樹脂成形体の低吸水率化に寄与する。
【0030】
脂環骨格を有する2官能(メタ)アクリレート系化合物(A)の具体例としては、例えば、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン=ジ(メタ)アクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン=ジ(メタ)アクリレート、ビス(ヒドロキシ)トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン=アクリレートメタクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン=アクリレートメタクリレート、ビス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.1
3,6.0
2,7.0
9,13]ペンタデカン=ジ(メタ)アクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.1
3,6.0
2,7.0
9,13]ペンタデカン=ジ(メタ)アクリレート、ビス(ヒドロキシ)ペンタシクロ[6.5.1.1
3,6.0
2,7.0
9,13]ペンタデカン=アクリレートメタクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.1
3,6.0
2,7.0
9,13]ペンタデカン=アクリレートメタクリレート、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロイルオキシ)シクロヘキシル]プロパン、2,2−ビス[4−(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)シクロヘキシル]プロパン、1,3−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス((メタ)アクリロイルオキシエチルオキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス((メタ)アクリロイルオキシエチルオキシメチル)シクロヘキサンなどの2官能(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは1種または2種併用して用いられる。これらの中でも、耐熱性の点からビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン=ジアクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン=ジメタクリレートが最も好ましい。
【0031】
成分(B)の脂環骨格を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物は、分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上含有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物である。
【0032】
これらの単量体は、本発明の最大の特徴である落球衝撃強度に寄与する。脂環骨格を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B)は、多官能であるため、硬化速度が向上し、生産性良く樹脂成形体を得ることができる。また、光硬化により架橋樹脂を形成し、耐熱性の高い樹脂成形体を得ることができる。通常、多官能になるほど、樹脂成形体の曲げ弾性率は増大してフレキシブル性は失われ、本発明でいう耐衝撃性が低下してもろくなるが、脂環構造を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B)は分子内にウレタン基を有し、得られる樹脂成形体は水素結合により、適度な靱性を有し、もろくならないため、高度な架橋構造を有していながら、耐衝撃性などの機械強度に優れたフレキシブルな樹脂成形体を得ることができる。
【0033】
成分(B)の官能基数は、速硬化性の点で2〜6官能であることが好ましく、特に好ましくは2〜4官能、更に好ましくは2〜3官能の(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
【0034】
また、成分(B)の重量平均分子量は、物性発現の点で500〜20,000であることが好ましく、特には1,000〜10,000であることが好ましい。かかる重量平均分子量が小さすぎると硬くなり、割れやすくなる傾向があり、大きすぎると柔らかすぎて弾性率が低下する傾向がある。
【0035】
成分(B)において、落球衝撃強度を向上させる要因のひとつとして、官能基数と分子量の関係から架橋密度が影響しているものと推察される。
【0036】
本発明において、成分(B)脂環骨格を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物の重量平均分子量(M)と、該多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物の(メタ)アクリロイル基数(N)との比(M/N)が500以上であることが物性発現の点で
重要であり、好ましくは1,000〜10,000、更には1500〜5,000、特に好ましくは2,000〜3,000であることが好ましい。かかる比(M/N)が小さすぎると架橋密度が高くなりすぎて、割れ易くなる傾向があり、大きすぎると表面硬度が低下する傾向がある。
【0037】
ここで、上記脂環骨格を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B)は、例えば、ポリオール系化合物と、脂環骨格を有するポリイソシアネート系化合物と、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物を、必要に応じてジブチルチンジラウレートなどの触媒を用いて反応させることにより得ることができる。
【0038】
ポリオール系化合物としては、例えば、脂肪族ポリオール、脂環族ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、(メタ)アクリル系ポリオール、ポリシロキサン系ポリオール等が挙げられる。
【0039】
上記脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ジメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、2、2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−テトラメチレンジオール、1,3−テトラメチレンジオール、2−メチル−1,3−トリメチレンジオール、1,5−ペンタメチレンジオール、1,6−ヘキサメチレンジオール、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタメチレンジオール、ペンタエリスリトールジアクリレート、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等の2個の水酸基を含有する脂肪族アルコール類、キシリトールやソルビトール等の糖アルコール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の3個以上の水酸基を含有する脂肪族アルコール類等が挙げられ、これらは1種または2種以上を併用して用いることができる。
【0040】
上記脂環族ポリオールとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキシルジメタノール等のシクロヘキサンジオール類、水添ビスフェノールA等の水添ビスフェノール類、トリシクロデカンジメタノール等が挙げられ、これらは1種または2種以上を併用して用いることができる。
【0041】
上記ポリエーテル系ポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリペンタメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等のアルキレン構造含有ポリエーテル系ポリオールや、これらポリアルキレングリコールのランダム或いはブロック共重合体が挙げられる。
【0042】
上記ポリエステル系ポリオールとしては、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物;環状エステル(ラクトン)の開環重合物;多価アルコール、多価カルボン酸及び環状エステルの3種類の成分による反応物などが挙げられる。
【0043】
上記ポリカーボネート系ポリオールとしては、例えば、多価アルコールとホスゲンとの反応物;環状炭酸エステル(アルキレンカーボネートなど)の開環重合物などが挙げられる。
【0044】
上記ポリオレフィン系ポリオールとしては、飽和炭化水素骨格としてエチレン、プロピレン、ブテン等のホモポリマーまたはコポリマーを有し、その分子末端に水酸基を有するものが挙げられる。
【0045】
上記ポリブタジエン系ポリオールとしては、炭化水素骨格としてブタジエンの共重合体を有し、その分子末端に水酸基を有するものが挙げられる。
ポリブタジエン系ポリオールは、その構造中に含まれるエチレン性不飽和基の全部または一部が水素化された水添化ポリブタジエンポリオールであってもよい。
【0046】
上記(メタ)アクリル系ポリオールとしては、(メタ)アクリル酸エステルを重合体又は共重合体の分子内にヒドロキシル基を少なくとも2つ有しているものが挙げられ、かかる(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0047】
上記ポリシロキサン系ポリオールとしては、例えば、ジメチルポリシロキサンポリオールやメチルフェニルポリシロキサンポリオール等が挙げられる。
【0048】
これらの中でも、割れにくさの点で、ポリエーテル系ポリオールが好ましく用いられる。
【0049】
上記ポリオール系化合物の重量平均分子量としては、100〜10,000が好ましく、特には1,000〜7,000、更には2,000〜5,000であることが好ましい。ポリオール系化合物の重量平均分子量が大きすぎると、表面硬度が低下する傾向があり、小さすぎると割れやすくなる傾向がある。
【0050】
脂環骨格を有するポリイソシアネート系化合物の具体例としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン、ノルボルナンイソシアナトメチル、1,3−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)プロパン、水添化キシリレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。中でも、耐衝撃性の点で、イソホロンジイソシアネートや、下記一般式(2)で示される脂環骨格をもつジイソシアネートが好ましく、具体的には水添化ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0051】
【化6】
ここで、R
1は水素又はメチル基である。
【0052】
水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物の具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0053】
上記脂環骨格を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B)の製造法は、通常、上記ポリオール系化合物、ジイソシアネート系化合物、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物を、反応器に一括又は別々に仕込み反応させればよいが、ポリオール系化合物とジイソシアネート系化合物とを予め反応させて得られる反応生成物に、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物を反応させるのが、反応の安定性や副生成物の低減等の点で有用である。
【0054】
ポリオール系化合物とジイソシアネート系化合物との反応には、公知の反応手段を用いることができる。その際、例えば、ジイソシアネート系化合物中のイソシアネート基:ポリオール中の水酸基とのモル比を通常2n:(2n−2)(nは2以上の整数)程度にすることにより、イソシアネート基を残存させた末端イソシアネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート系化合物を得た後、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物との付加反応を可能にする。
【0055】
上記ポリオール系化合物とジイソシアネート系化合物とを予め反応させて得られる反応生成物と、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物との付加反応にも、公知の反応手段を用いることができる。
【0056】
上記のポリオール系化合物とポリイソシアネート系化合物と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物の組み合わせの中でも、ポリエーテルポリオールと水添化ジフェニルメタンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの反応物である2官能性ウレタンアクリレートが耐熱性と落球衝撃強度の点から好ましい。
【0057】
上記成分(A)の2官能(メタ)アクリレート系化合物及び上記成分(B)のウレタン(メタ)アクリレート系化合物を特定の割合で共重合させることにより、耐熱性とフレキシブル性、耐衝撃性が両立した樹脂成形体を得ることができる。
【0058】
即ち、成分(A)と成分(B)の配合割合は、80:20〜50:50(重量比)であることが好ましい。成分(B)が少なすぎると、耐衝撃性や耐屈曲性などの機械特性が低下する傾向があり、逆に、成分(B)が多すぎると、粘度が増大し成形し難い傾向がある。配合割合の好ましい範囲は70:30〜55:45(重量比)、より好ましくは65:35〜58:42(重量比)である。
【0059】
本発明においては、更に光重合開始剤(C)を配合するわけであるが、上記光重合開始剤(C)としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホシフィンオキシド、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、1,2−オクタンジオン、1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(0−アセチルオキシム)等が挙げられる。これらの中でも、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドなどのラジカル開裂型の光重合開始剤が好ましい。これらの光重合開始剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0060】
光重合開始剤(C)の配合量は、成分(A)と成分(B)合計100重量部に対して、0.01〜5重量部、更には0.1〜4重量部、特には0.3〜3重量部であることが好ましい。配合量が多すぎると、樹脂成形体のリタデーションが増大し、また400nmにおける光線透過率が低下(黄変)する傾向にある。一方、少なすぎると重合速度が低下し、重合が十分に進行しないおそれがある。
【0061】
本発明においては、本発明の樹脂成形体の物性を損なわない範囲で、少量の補助成分を含んでいても良い。例えば、成分(A)、(B)以外のエチレン性不飽和結合を有する単量体、連鎖移動剤、重合禁止剤、熱重合開始剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、レべリング剤、ブルーイング剤、染顔料、フィラーなどがある。
【0062】
成分(A)、(B)及び(C)以外のエチレン性不飽和結合を有する単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数1〜20のアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ウンデシレノキシ(メタ)アクリレート、ウンデシレノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどの脂環式でない単官能(メタ)アクリレート系化合物、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール以上のポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、 トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートモノウンデシレートなどの多官能(メタ)アクリレート系化合物、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。
【0063】
熱重合開始剤としては、公知の化合物を用いることができる。例えば、ハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド、ジt−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)等のパーオキシエステル、ベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート等のパーオキシカーボネート、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイド等の過酸化物が挙げられる。
【0064】
連鎖移動剤としては、例えば、多官能メルカプタン化合物が挙げられる。多官能メルカプタン化合物としては、例えば、ペンタエリスルトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスルトールテトラキスチオプロピオネートなどが挙げられる。これらの多官能メルカプタン系化合物は、光硬化性組成物[I]100重量部に対して、通常10重量部以下の割合で使用されることが好ましく、更には8重量部以下、特には5重量部以下が好ましい。かかる使用量が多すぎると、得られる樹脂成形体の耐熱性や剛性が低下する傾向がある。
【0065】
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−s−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,6−ジ−t−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメ
チル)フェノール、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、4,4−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’−ジ−チオビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’ −トリ−チオビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロキシヒドロシンナミド、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、カルシウム(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)モノエチルフォスフォネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジーt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジーt−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス−2[3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアネート、テトラキス[メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスファイト−ジエチルエステル等の化合物が挙げられ、これらの化合物は、単独または2種以上併用してもよい。これらの中でも、テトラキス[メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが、色相を抑制する効果が大きくなる点から特に好ましい。
【0066】
酸化防止剤の配合割合は、光硬化性組成物[I]100重量部に対して、通常0.001〜1重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.01〜1重量部である。かかる酸化防止剤が少なすぎると樹脂成形体の耐光性が低下する傾向があり、多すぎると光線透過率が低下する傾向にある。
【0067】
かくして本発明で用いる光硬化性組成物[I]が得られる。
次に、かかる光硬化性組成物[I]を用いた本発明の樹脂成形体の製造方法について説明する。
【0068】
本発明における樹脂成形体の製造方法としては、上記光硬化性組成物[I]を、波長200〜400nmの紫外線を用いて、照射光量1〜50J/cm
2で光硬化することが好ましい。照射光量のより好ましい範囲は5〜40J/cm
2、更に好ましくは10〜30J/cm
2である。照射光量が多すぎると生産性が低下する傾向がある。紫外線の照度は、10〜5000mW/cm
2が好ましく、より好ましくは100〜1000mW/cm
2である。照度が小さすぎると樹脂成形体の内部まで十分に硬化しない傾向がある。逆に、照度が大きすぎると重合が暴走しリタデーションが増大する傾向がある。紫外線は、複数回に分割して照射すると、リタデーションがより小さい樹脂成形体が得られることとなり好ましい。例えば、1回目に全照射量の1/100〜1/10程度を照射し、2回目以降に必要残量を照射する方法が挙げられる。
【0069】
紫外線源としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯ランプ、無電極水銀ランプ、LEDランプ等が挙げられる。本発明で得られた樹脂成形体は、より重合度の向上のため、あるいは応力ひずみ開放のために熱処理してもよく、100℃以上、特には150〜200℃で熱処理することが好ましい。
【0070】
一般的に、光成形はバッチ式で行われる。すなわち、厚さ制御のためのスペーサーを介して、2枚の透明ガラスを対向させた型を作製し、そのキャビティに光硬化性組成物[I]を注入し、活性エネルギー線を照射して硬化させ、脱型することにより行われる。
【0071】
かくして本発明の樹脂成形体が得られるわけである。
本発明においては、得られた樹脂成形体の曲げ弾性率が1〜4GPaであることが好ましく、特には2〜3.5GPa、更には2.5〜3GPaであることが好ましい。曲げ弾性率が小さすぎると樹脂成形体の剛性が低下し、支持体としての機能が低下する傾向があり、大きすぎるとフレキシブルディスプレイの製造が困難となる傾向がある。
【0072】
また、樹脂成形体の光線透過率が85%以上であることが好ましく、特には90%以上、更には92%以上であることが好ましい。光線透過率が小さすぎると表示デバイスの輝度を確保できない傾向がある。なお、上限としては98%である。
ここでいう光線透過率とは、JIS K 7105:1981における全光線透過率である。
【0073】
光線透過率を満足させる手法としては、光硬化性組成物[I]を構成する(メタ)アクリレート系単量体が、芳香環、ハロゲン、及び硫黄などの原子及び原子団を含まないことである。これらの原子及び原子団は、樹脂成形体を高屈折率化もしくは低屈折率化するため好ましくない。光線透過率は基板の屈折率が高いほど表面反射が増大するため低下する。
【0074】
樹脂成形体のヘイズについては1%以下であることが好ましく、特には0.01〜0.5%、更には0.02〜0.2%であることが好ましい。ヘイズが大きすぎるとディスプレイの精細性が低下する傾向がある。
【0075】
樹脂成形体のリタデーションについては、特に液晶ディスプレイで問題となり、樹脂成形体のリタデーションが2nm以下であることが好ましく、特には1.5nm以下、更には1nm以下であることが好ましい。リターデーションが大きすぎると、基板を透過する偏光がその偏光特性を維持できないため、画像の精細性が低下する傾向にある。なお、下限としては0.01nmである。
【0076】
リタデーションを満足させる手法としては、光成形に供される光硬化性組成物[I]の粘度の適正化、硬化収縮率の低減、及び光重合開始剤量の適正化などが挙げられる。粘度の適正化や硬化収縮の低減は、前述したとおり、成分(A)、(B)及び(C)の種類や配合量を適宜コントロールすることなどにより達成される。
なお、本発明でいうリタデーションとは、基板として用いるために切断した樹脂成形体の全表面を対象としたものである。
【0077】
また、樹脂成形体の表面粗さは、ディスプレイの高精細性や、特に、有機ELディスプレイにおける寿命に影響する。たとえ樹脂成形体表面に、ガスバリア膜や導電膜が成膜されても、成形体表面の平滑性が重要であることに変わりはない。樹脂成形体の表面粗さRaの好ましい範囲は50nm以下、より好ましくは20nm以下である。樹脂成形体の表面粗さRaが大きすぎると、精細性や寿命が低下する傾向にある。なお、下限としては1nmである。
【0078】
本発明の樹脂成形体は、光学特性、熱特性、機械特性に優れた樹脂成形体であり、とりわけ、ディスプレイ用基板として、また、タッチパネル用の基板やディスプレイ用の保護板として有用である。
【実施例】
【0079】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
尚、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
【0080】
(1)ガラス転移温度(Tg)(℃)
縦20mm×横5mmの試験片を用いて、レオロジ社製動的粘弾性装置「DVE−V4型 FTレオスペクトラー」の引っ張りモードを用いて、周波数10Hz、昇温速度3℃/分、歪0.025%で測定を行なった。得られた複素弾性率実数部(貯蔵弾性率)に対する虚数部(損失弾性率)の比(tanδ)を求め、このtanδの最大ピーク温度をガラス転移温度(Tg)(℃)とした。
【0081】
(2)表面硬度
JIS K 5600−5−4:1999に準じて鉛筆硬度を測定した。
【0082】
(3)落球試験
強化ガラスにおけるJISR3206に準拠し、下記の通り行い、鋼球を落下させても割れない高さの最大値(Y)を求めた。
即ち、縦50mm×横50mmの試験片を23℃、50%RHの環境下で48時間放置した後、
図1のような落球試験機(東洋精機製作所製)を用いて、重さ130g、径31.73mmφの鋼球を所定の高さから落下させて、直径32mmの円筒形台上に置いた試験片の表面中央部に衝撃を与えた。所定の高さを5cm刻みで高くしていき、各高さにて6枚の試験片に対して同様の操作を行い、4枚以上割れなかった高さの最大値(cm)を、鋼球を落下させても割れない高さの最大値(Y)とした。
【0083】
(4)曲げ弾性率(GPa)
縦30mm×横3mmの試験片を23℃、50%RHの環境下で48時間放置した後、レオロジー社製「FT−レオスペクトラ DVE−V4」で曲げ弾性率(GPa)を測定した。測定に際しては、支点間距離20mm、試験速度1.1mm/秒、たわみ4mmに調整した。
【0084】
(5)光線透過率(%)
縦50mm×横50mmの試験片を3枚用意し、日本電色社ヘイズメーター「NDH−2000」で、全光線透過率(%)を測定し、3枚の平均値を算出した。
【0085】
(6)ヘイズ(%)
JIS K7361に準拠し、日本電色工業(株)社製ヘイズメーター「NDH−4000」を用いて測定した。
【0086】
(7)リタデーション(nm)
オーク社製、複屈折測定装置にて25℃で測定した。
【0087】
(8)表面粗さRa(nm)
JIS B0601:2001に準じて、東京精密社製「サーフコム570A」を用いて、樹脂成形体の表面粗さRaを測定した(カットオフ:0.8μm、測定長:4mm)
【0088】
<実施例1>
〔2官能の脂環骨格を有するウレタンアクリレート(B−1)の作製〕
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えたフラスコに、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート373.0g(1.42モル)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(水酸基価173mgKOH/g)462.0g(0.71モル)、反応触媒としてジブチルスズジラウレート0.01gを仕込み、60℃で8時間反応させ、残存イソシアネート基が7.1%となった時点で、更に、2−ヒドロキシエチルアクリレート165.0g(1.42モル)、重合禁止剤としてハイドロキノンメチルエーテル0.01gを約1時間かけて滴下し、そのまま反応を継続し、残存イソシアネート基が0.3%以下となった時点で反応を終了し、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B−1)を得た。
【0089】
[光硬化性組成物[I−1]の調製]
ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン=ジメタクリレート(新中村化学社製「DCP」)57部、2官能の脂環骨格を有するウレタンアクリレート(B−1)(多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B)の重量平均分子量(M)と、該多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B)の(メタ)アクリロイル基数(N)との比(M/N)は2500)40部、ペンタエリスルトールテトラキスチオプロピオネート(淀化学製「PETP」)3部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASFジャパン社製「Irgacure184」)1部を、60℃にて均一になるまで撹拌して光硬化性組成物[I−1]を得た。
【0090】
[樹脂成形体の作製]
研磨ガラス板2枚を対向させ、厚さ0.7mmのシリコン板をスペーサーとした成形型に、上記光硬化性組成物[I](23℃)を注液し、メタルハライドランプを用いて、照度200W/cm
2、光量25J/cm
2で紫外線を照射した。照射により硬化させた後、脱型し得られた硬化物を、200℃の真空オーブン中で6時間加熱して、縦140mm×横140mm×厚さ0.7mmの樹脂成形体を得た。
得られた樹脂成形体について、各物性を測定し、表2に示した。
【0091】
<実施例2>
実施例1において、厚さを0.2mmとした以外は同様にして、縦140mm×横140mm×厚さ0.2mmの樹脂成形体を得た。
得られた樹脂成形体について、各物性を測定し、表2に示した。
【0092】
<実施例3>
実施例1において、光硬化性組成物[I]を、下記の光硬化性組成物[I−2]に変更した以外は同様に行い、樹脂成形体を得た。
得られた樹脂成形体について、各物性を測定し、表2に示した。
【0093】
[光硬化性組成物[I−2]の調製]
ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン=ジアクリレート(新中村化学社製「A−DCP」)49部、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン=ジメタクリレート(新中村化学社製「DCP」)10部、2官能の脂環骨格を有するウレタンアクリレート(B−1)(多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B)の重量平均分子量(M)と、該多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B)の(メタ)アクリロイル基数(N)との比(M/N)は2500)20部、下記の2官能の脂環骨格を有するウレタンアクリレート(B−2)(多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B)の重量平均分子量(M)と、該多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B)の(メタ)アクリロイル基数(N)との比(M/N)は240)20部、ペンタエリスルトールテトラキスチオプロピオネート(淀化学製「PETP」)1部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホシフィンオキシド(BASFジャパン社製「Lucirin TPO」)0.04部、ベンゾフェノン(関東化学社製)0.25部を、60℃にて均一になるまで撹拌して光硬化性組成物[I−2]を得た。
【0094】
[ウレタンアクリレート(B−2):イソホロン構造を有する2官能ウレタンアクリレートの調製]
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート53.34g(0.24モル)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート55.73g(0.48モル)、ハイドロキノンメチルエーテル0.02g、ジブチルスズジラウレート0.02g、メチルエチルケトン500gを仕込み、60℃で3時間反応させ、残存イソシアネート基が0.3%となった時点で反応を終了し、溶剤を留去してウレタンアクリレート(B−2)を得た。
【0095】
<比較例1>
実施例1において、光硬化性組成物[I]を、下記の光硬化性組成物[I′−1]に変更した以外は同様に行い、樹脂成形体を得た。
得られた樹脂成形体について、各物性を測定し、表2に示した。
得られた樹脂成形体は、表面硬度は5H、耐熱性は250℃であったが、落球試験において割れない高さの最大値は20cmであり、耐衝撃性に劣るものであった。
【0096】
[光硬化性組成物[I′−1]の調製]
ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン=ジメタクリレート(新中村化学社製「DCP」)87部、下記の6官能の脂環骨格を有するウレタンアクリレート(B−3)(多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B)の重量平均分子量(M)と、該多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B)の(メタ)アクリロイル基数(N)との比(M/N)は233)10部、ペンタエリスルトールテトラキスチオプロピオネート(淀化学製「PETP」)3部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャリティケミカルズ社製「Irgacure184」)1部を、60℃にて均一になるまで撹拌して光硬化性組成物[I′−1]を得た。
【0097】
〔6官能の脂環骨格を有するウレタンアクリレート(B−3)の作製〕
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えたフラスコに、イソホロンジイソシアネート192.0g(0.86モル)と、ペンタエリスリトールトリアクリレート〔ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(水酸基価120mgKOH/g)〕808.0g(1.73モル)を仕込み、重合禁止剤としてハイドロキノンメチルエーテル0.01g、反応触媒としてジブチルスズジラウレート0.01gを仕込み、60℃で8時間反応させ、残存イソシアネート基が0.3%以下となった時点で反応を終了し、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B−3)を得た。
【0098】
<比較例2>
実施例1において、光硬化性組成物[I]を、下記の光硬化性組成物[I′−2]に変更した以外は同様に行い、樹脂成形体を得た。
得られた樹脂成形体について、各物性を測定し、表2に示した。
得られた樹脂成形体は、表面硬度は7H、耐熱性は250℃であったが、落球試験において割れない高さの最大値は25cmであり、耐衝撃性に劣るものであった。
【0099】
[光硬化性組成物[I′−2]の調製]
ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン=ジメタクリレート(新中村化学社製「DCP」)67部、6官能の脂環骨格を有するウレタンアクリレート(B−3)(多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B)の重量平均分子量(M)と、該多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B)の(メタ)アクリロイル基数(N)との比(M/N)は233)30部、ペンタエリスルトールテトラキスチオプロピオネート(淀化学製「PETP」)3部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャリティケミカルズ社製「Irgacure184」)1部を、60℃にて均一になるまで撹拌して光硬化性組成物[I′−2]を得た。
【0100】
<比較例3>
実施例1において、光硬化性組成物[I]を、下記の光硬化性組成物[I′−3]に変更した以外は同様に行い、樹脂成形体を得た。
得られた樹脂成形体について、各物性を測定し、表2に示した。
得られた樹脂成形体は、表面硬度は6H、耐熱性は250℃であったが、落球試験において割れない高さの最大値は20cmであり、耐衝撃性に劣るものであった。
【0101】
[光硬化性組成物[I′−3]の調製]
ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン=ジメタクリレート(新中村化学社製「DCP」)67部、下記の6官能の脂環骨格を有するウレタンアクリレート(B−4)(多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B)の重量平均分子量(M)と、該多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B)の(メタ)アクリロイル基数(N)との比(M/N)は367)30部、ペンタエリスルトールテトラキスチオプロピオネート(淀化学製「PETP」)3部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャリティケミカルズ社製「Irgacure184」)1部を、60℃にて均一になるまで撹拌して光硬化性組成物[I′−3]を得た。
【0102】
〔6官能の脂環骨格を有するウレタンアクリレート(B−4)の作製〕
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えたフラスコに、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート219.0g(0.84モル)と、ペンタエリスリトールトリアクリレート〔ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(水酸基価120mgKOH/g)〕781.0g(1.67モル)を仕込み、重合禁止剤としてハイドロキノンメチルエーテル0.01g、反応触媒としてジブチルスズジラウレート0.01gを仕込み、60℃で8時間反応させ、残存イソシアネート基が0.3%以下となった時点で反応を終了し、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B−4)を得た。
【0103】
<比較例4>
基板として、縦140mm×横140mm×厚さ0.7mmの市販のポリカーボネートフィルム(帝人デュポン社製「パンライト」)を用意した。
上記ポリカーボネートフィルムについて、実施例1と同様の物性を測定し、表2に示した。
ポリカーボネートフィルムは、耐熱性は140℃、落球試験において割れない高さの最大値は100cm以上であったが、表面硬度がBと低く、基板として実用に供しうるものではなかった。
【0104】
<比較例5>
基板として、縦140mm×横140mm×厚さ0.7mmの市販のポリメチルメタクリレートフィルム(三菱レイヨン社製「アクリライト」)を用意した。
上記ポリメチルメタクリレートフィルムについて、実施例1と同様の物性を測定し、表2に示した。
ポリメチルメタクリレートフィルムは、耐熱性は80℃と低く、落球試験において割れない高さの最大値は10cmであり、耐衝撃性に劣るものであり、基板として実用に供しうるものではなかった。
【0105】
<比較例6>
基板として、縦150mm×横150mm×厚さ0.55mmの市販の強化ガラス(コーニング社製「ゴリラガラス」)を用意した。
上記強化ガラスにて、実施例1と同様の物性を測定し、表2に示した。
強化ガラスは、落球試験において割れない高さの最大値は15cmであり、耐衝撃性に劣るものであり、基板として実用に供しうるものではなかった。
【0106】
実施例及び比較例の結果を表1及び2に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
実施例の樹脂成形体は、ガラス転移温度、表面硬度、落球試験において優れた性能を有するものであり、プラスチック基板や保護板として非常に優れたものであるのに対して、比較例1〜3の樹脂成形体は落球試験において割れない高さの最大値が低く、耐衝撃性に劣るものであった。
また、市販のプラスチックフィルムを用いた比較例4〜6においては、高い表面硬度と割れにくさの両立ができないものであり、実用に際して満足の行くものではなかった。