特許第6415118号(P6415118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6415118
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】干渉抑圧装置および干渉抑圧システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/292 20060101AFI20181022BHJP
【FI】
   G01S7/292 200
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-113904(P2014-113904)
(22)【出願日】2014年6月2日
(65)【公開番号】特開2015-227824(P2015-227824A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2017年5月29日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成25年度、総務省、電波資源拡大のための研究開発における委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】富木 洋一
(72)【発明者】
【氏名】時枝 幸伸
【審査官】 安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−196941(JP,A)
【文献】 特開2008−096337(JP,A)
【文献】 特開2013−253889(JP,A)
【文献】 特開2012−037306(JP,A)
【文献】 特開2014−002085(JP,A)
【文献】 特開2012−189431(JP,A)
【文献】 特開2014−006066(JP,A)
【文献】 米国特許第4837579(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00− 7/42,
G01S 13/00−13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイープの順に到来したレーダ信号で示され、かつ前記スイープ毎に距離が同じであるレンジセルの列を所定数ずつの連なるレンジセルからなるブロックに区分するブロック化手段と、
前記ブロック毎に、前記レンジセルの順序を規定の順列に基づいて入れ替えてスイープ方向における干渉波の影響を分散するインタリーブを施し、かつ他のレンジセルとの相関性が既定の下限値より小さいレンジセルの抑圧を図るブロック内干渉抑圧手段と
を備えたことを特徴とする干渉抑圧装置。
【請求項2】
スイープの順に到来したレーダ信号で示され、かつ前記スイープ毎に距離が同じであるレンジセルの列を所定数ずつの連なるレンジセルからなるブロックに区分するブロック化手段と、
前記ブロック毎に、他のレンジセルとの位相の連続性がないレンジセルの抑圧を図った後に、前記レンジセルの順序を規定の順列に基づいて入れ替えてスイープ方向における干渉波の影響を分散するインタリーブを施すブロック内干渉抑圧手段と
を備えたことを特徴とする干渉抑圧装置。
【請求項3】
スイープの順に到来し、かつ周波数が異なる複数のレーダ信号で個別に示されると共に、前記スイープ毎に距離が同じであるレンジセルの列毎に、所定数ずつの連なるレンジセルからなるブロックに区分するブロック化手段と、
記ブロック毎に、前記レンジセルの順序を規定の順列に基づいて入れ替えてスイープ方向における干渉波の影響を分散するインタリーブを施し、かつ他のレンジセルとの相関性が既定の下限値より小さいレンジセルの抑圧を図るブロック内干渉抑圧手段と
を備えたことを特徴とする干渉抑圧装置。
【請求項4】
スイープの順に到来し、かつ周波数が異なる複数のレーダ信号で個別に示されると共に、前記スイープ毎に距離が同じであるレンジセルの列毎に、所定数ずつの連なるレンジセルからなるブロックに区分するブロック化手段と、
記ブロック毎に、他のレンジセルとの位相の連続性がないレンジセルの抑圧を図った後に、前記レンジセルの順序を規定の順列に基づいて入れ替えてスイープ方向における干渉波の影響を分散するインタリーブを施すブロック内干渉抑圧手段と
を備えたことを特徴とする干渉抑圧装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の複数の干渉抑圧装置と、
前記複数の干渉抑圧装置に個別に備えられたブロック内干渉抑圧手段によって前記ブロック毎に施された処理の結果をスイープ毎に積分する積分手段とを備え、
前記複数の干渉抑圧装置に個別に備えられたブロック内干渉抑圧手段は、
ブロック毎に、前記レンジセルを異なる順列に基づいて入れ替えてスイープ方向における干渉波の影響を分散するインタリーブを施し、かつ他のレンジセルとの相関性が既定の下限値より小さいレンジセルの抑圧を図り、
前記ブロックは、
前記レンジセルの列から前記所定数ずつ切り出されて連なり、かつ要素の少なくとも一部が重複するレンジセルの順列である
ことを特徴とする干渉抑圧システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置において、外部から到来する干渉波の抑圧を図る干渉抑圧装置および干渉抑圧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動通信システム等の需要の増大や通信の高速化に伴い、マイクロ波帯の帯域のさらなる有効利用が求められている。
また、このようなマイクロ波帯を利用するレーダ装置は、狭帯域化、固体化、小型化およびメインテナンスフリー化に適したパルス圧縮レーダ方式が適用されることにより、今後も急速に普及することが予想されている。
【0003】
しかし、パルス圧縮レーダ方式では、送信波の先頭電力が小さく抑えられても、その送信波のパルス幅が長く設定される。
したがって、他のレーダ装置に対して与え得る干渉の軽減と、同一の帯域において同時に稼働可能なレーダ装置の台数の確保とが可能な適応レーダの開発が進められている。
【0004】
このような適応レーダでは、上記干渉は、その干渉の程度を含む周囲の電波環境が自立的に検知され、その結果に基づいて送信波のパルス幅、照射方向、占有帯域等が適宜最適化されることによって、抑圧や除去が図られる。
【0005】
図4は、従来の適応レーダ装置の構成例を示す図である。
図において、アンテナ41の給電点は送受信部50のアンテナ端子に接続され、その送受信部50の変調入力および復調出力には信号処理部61の対応する端子が接続される。信号処理部61には指示部62が接続され、これらの信号処理部61および指示部62に併せて、送受信部50の制御端子には制御部63の対応する入出力ポートが接続される。
【0006】
送受信部50は、以下の要素から構成される。
(1) 空中線系41の給電点に接続された第一の開口を有するサーキュレータ51
(2) サーキュレータ51の第二の開口と既述の復調出力との間に配置され、かつ制御部63の対応する入出力ポートに接続された制御端子を有する受信部52
【0007】
(3) 既述の変調入力とサーキュレータ51の第三の開口とに接続され、かつ制御部63の対応する入出力ポートに接続された制御端子を有する送信部53
(4) 出力が受信部52および送信部53の局発入力に接続され、かつ制御部63の対応する入出力ポートに接続された制御端子を有する局部発振器54
【0008】
このような構成の適応レーダでは、局部発振器54は制御部63によって指定された周波数の局発信号を生成する。送信部53は、信号処理部61が制御部63の配下で生成したベースバンド信号と、上記局発信号とに基づいて、所定のインターバル(周期)(=p)で送信波を生成する。
【0009】
その送信波は、サーキュレータ51および空中線系41を介して船舶等の目標が位置し得る方向に照射される。以下、このようにして送信波が照射される期間を「送信期間」という。
【0010】
この送信波が目標で反射することによって生じ、かつ空中線系41に到来した反射波は、サーキュレータ51を介して受信部52に引き渡される。受信部52は、上記局発信号に基づいてその反射波をヘテロダイン(ホモダイン)検波することによってベースバンド信号を生成する。
【0011】
信号処理部61は、制御部63の配下でこのベースバンド信号に所定のレーダ信号処理を施すことによって、指示画像を生成する。
指示部62は、その指示画像を図示されない指示画面上に表示する。
【0012】
制御部63は、その指示画面を介して行われるGUI(グラヒック・ユーザ・インタフェース)の下で操作者が与える要求に応じて、送受信部50、信号処理部61および指示部62の各部の動作および連係を統括する。
【0013】
一方、時間軸上において上記インターバルで送信波が送信される個々の期間の手前における所定の間(以下、「干渉評価期間」という。)には、制御部63、局部発振器54および受信部52は、以下の通りに連係する。
【0014】
(1) 制御部63は、既定のインターバルτ(≪p)で局部発振器54の発振周波数をf1〜fn,f1,…とサイクリックに切り替える。
【0015】
(2) 受信部52は、制御部63の配下で、このような発振周波数の局発信号で定まる受信帯域に分布する干渉波のレベルLi1〜Linを計測する。
【0016】
(3) 制御部63は、これらの干渉波のレベルLi1〜Linを所定の記憶領域上にログとして蓄積し、かつこれらの干渉波のレベルLi1〜Linの内、最小であったレベルが観測された状態における局部発振器54の発振周波数fを特定する。
【0017】
(4) 制御部63は、干渉評価期間の後に送信波が送信されるべき時点に対して、局部発振器54の発振周波数が定常値に収束するために要する時間t先行する時点で、局部発振器54の発振周波数を上記値fに設定する。
【0018】
すなわち、送信波の周波数ftは、その送信波が送信される前の干渉評価期間に計測された干渉波のレベルLi1〜Linが最小であった帯域に占有帯域が一致する値に設定され、かつ維持される。
【0019】
また、制御部63は、既述の通りに操作者によって行われる要求、または、上記レーダ信号処理の過程で行われる既定の判別の結果に応じて、送信部53によって送信波が生成されるインターバル(周期)を所定の範囲で変更することによって、スタガ送信を実現する。
さらに、信号処理部61は、このような制御部63の配下で、上記送信波が放射された期間に同期してレーダ信号処理を行う。
【0020】
したがって、適応レーダは、干渉の程度が低い帯域の無線周波数帯で運用され、所望の目標の検知に供される。
なお、本願に関連性がある先行技術としては、以下に示す特許文献1があった。
【0021】
(1) 「電子計測システムにより観測される真の放射源と偽の放射源とを識別するための方法であって、該真の放射源と偽の放射源とは、受信信号をパルス処理するステップと、信号をデインターリーブするステップと、見かけの放射源の各々に対する放射源特徴パラメータを決定する信号を放射源処理するステップとにより識別され、放射源特徴パラメータの各々の分散を決定するステップと、前記真の放射源に源を有する見かけの放射源を1つのグループに選択するステップと、放射源特徴パラメータの分散に従って見かけの放射源をソートするステップと、最小の分散値を有する見かけの放射源を真の放射源として識別し、前記グループ内の他の見かけの放射源を偽の放射源として識別するステップとを含む」ことにより「電子計測システム/方向探知装置により観測される複数の見かけの放射源の中に存在しうる偽の放射源を識別する」点に特徴がある電子支援計測システムにおける方法
【0022】
(2) 「パルス信号の連なりを生成するためのモジュレータと、当該パルス信号の連なりをレーダー信号に変換するための送信機と、当該レーダー信号を発するとともにリターン信号を受信するためのアンテナと、当該リターン信号を増幅するための増幅器と、送信機をアンテナに、かつアンテナを増幅器に切替可能に相互接続するためのスイッチング装置と、表示および/または分析のために、増幅されたリターン信号を処理する信号プロセッサとを含むレーダーシステムであって、レーダー装置はさらに、アンテナを所定の旋回持続時間で回転するためのアンテナ駆動部を含み、モジュレータは、前記パルス信号の連なりが第1のパルスパターンのパルスと第2のパルスパターンのパルスとを含むようにパルス信号の連なりを生成するよう構成され、当該第1および第2のパルスパターンはパルス持続時間およびインターパルス間隔において異なり、第1および第2のパルスパターンは、前記所定の旋回持続時間において、各々のパルスタイプの複数のパルスが存在するようにインターリーブされ、信号プロセッサは、任意の時間の第2の画像の各々を形成するパルスが所定の分解能持続時間の1/2未満である時間内であるように、前記第1のパルスタイプの前記パルスから第1のレーダー画像を生成するとともに、前記第2のパルスタイプの前記パルスから第2のレーダー画像を生成するよう構成される」ことにより、「公知のレーダーおよび/またはソナーシステムを向上する」点に特徴があるレーダーシステム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特表2009−534685号公報
【特許文献2】特表2010−538251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
ところで、上述した適応レーダは、互いに近い位置で多数のレーダ装置が並行して稼働する状態では、これらのレーダの何れもがスタガ送信を行っている場合であっても、相互間における干渉の程度が加速的に増加する可能性があった。
【0025】
また、このような多数のレーダ装置の大半が送信周波数を可変できない非固体化レーダ装置である状況では、上記干渉の程度は平均的に大きくなる。
【0026】
さらに、上記多数のレーダ装置の大半が固体化レーダ(パルス圧縮レーダ)である状況では、個々の送信波のパルス幅が広いために、これらの送信波の周波数が可変されても干渉の程度が十分に軽減されるとは限らなかった。
【0027】
また、スタガ送信された送信波に応じて到来するレーダ反射波は、スイープ間における位相の連続性が担保されないために、一般に、スイープ積分による探知性能の向上が損なわれ、あるいは十分に達成されない要因となる。
【0028】
本発明は、同期性干渉に起因するレーダ装置の性能や機能の低下を安定に抑え、かつ探知性能の向上に有効なスイープ積分を確度高く適用可能とする干渉抑圧装置および干渉抑圧システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
請求項1に記載の発明では、ブロック化手段は、スイープの順に到来したレーダ信号で示され、かつ前記スイープ毎に距離が同じであるレンジセルの列を所定数ずつの連なるレンジセルからなるブロックに区分する。ブロック内干渉抑圧手段は、前記ブロック毎に、前記レンジセルの順序を規定の順列に基づいて入れ替えてスイープ方向における干渉波の影響を分散するインタリーブを施し、かつ他のレンジセルとの相関性が既定の下限値より小さいレンジセルの抑圧を図る。
【0030】
すなわち、レーダ信号に重畳された干渉波の成分は、レンジが共通であってスイープ方向に連なるレンジセルが区分されてなるブロックの単位に、インタリーブが施されることによって、そのスイープ方向に対する分散が図られ、しかも、他のレンジセルとの相関に基づいて識別されつつ抑圧が図られる。
【0031】
請求項2に記載の発明では、ブロック化手段は、スイープの順に到来したレーダ信号で示され、かつ前記スイープ毎に距離が同じであるレンジセルの列を所定数ずつの連なるレンジセルからなるブロックに区分する。ブロック内干渉抑圧手段は、前記ブロック毎に、他のレンジセルとの位相の連続性がないレンジセルの抑圧を図った後に、前記レンジセルの順序を規定の順列に基づいて入れ替えてスイープ方向における干渉波の影響を分散するインタリーブを施す。
【0032】
すなわち、レーダ信号に重畳された干渉波の成分は、レンジが共通であってスイープ方向に連なるレンジセルが区分されてなるブロックの単位に、スイープ方向における分散を図るインタリーブが行われるが、そのインタリーブに先行して隣接するレンジセルに対して位相が跳躍するレンジセルの抑圧が図られる。
【0033】
請求項3に記載の発明では、ブロック化手段は、スイープの順に到来し、かつ周波数が異なる複数のレーダ信号で個別に示されると共に、前記スイープ毎に距離が同じであるレンジセルの列毎に、所定数ずつの連なるレンジセルからなるブロックに区分する。ブロック内干渉抑圧手段は、前記ブロック毎に、前記レンジセルの順序を規定の順列に基づいて入れ替えてスイープ方向における干渉波の影響を分散するインタリーブを施し、かつ他のレンジセルとの相関性が既定の下限値より小さいレンジセルの抑圧を図る。
【0034】
すなわち、周波数が異なるレーダ信号に個別に重畳された干渉波の成分は、請求項1に記載の干渉抑圧装置と同様に、ブロックの単位に、インタリーブによるスイープ方向に対する分散が図られ、かつ他のレンジセルとの相関に基づいて識別されつつ抑圧が図られる。しかも、このような分散および抑圧は、周波数が異なるレーダ信号に対して個別に図られる。
【0035】
請求項4に記載の発明では、ブロック化手段は、スイープの順に到来し、かつ周波数が異なる複数のレーダ信号で個別に示されると共に、前記スイープ毎に距離が同じであるレンジセルの列毎に、所定数ずつの連なるレンジセルからなるブロックに区分する。ブロック内干渉抑圧手段は、前記ブロック毎に、他のレンジセルとの位相の連続性がないレンジセルの抑圧を図った後に、前記レンジセルの順序を規定の順列に基づいて入れ替えてスイープ方向における干渉波の影響を分散するインタリーブを施す。
【0036】
すなわち、周波数が異なるレーダ信号に個別に重畳された干渉波の成分は、請求項2に記載の干渉抑圧装置と同様に、ブロックの単位に、スイープ方向に対する分散を図るインタリーブが行われるが、そのインタリーブに先行して隣接するレンジセルに対して位相が跳躍するレンジセルの抑圧が図られる。しかも、このような分散および抑圧は、周波数が異なるレーダ装置に対して個別に図られる。
【0037】
請求項5に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の干渉抑圧装置が複数備えられる。積分手段は、前記複数の干渉抑圧装置に個別に備えられたブロック内干渉抑圧手段によって前記ブロック毎に施された処理の結果をスイープ毎に積分する。前記複数の干渉抑圧装置に個別に備えられたブロック内干渉抑圧手段は、ブロック毎に、前記レンジセルを異なる順列に基づいて入れ替えてスイープ方向における干渉波の影響を分散するインタリーブを施し、かつ他のレンジセルとの相関性が既定の下限値より小さいレンジセルの抑圧を図る。前記ブロックは、前記レンジセルの列から前記所定数ずつ切り出されて連なり、かつ要素の少なくとも一部が重複するレンジセルの順列である。
【0038】
すなわち、スイープの順に到来したレーダ信号で示され、かつレンジが共通であるレンジセルの列が所定数ずつの連なるレンジセルのブロックに分割されるが、これらのブロックは、個別に属するレンジセルの少なくとも一部が重複するレンジセルに区分されると共に、請求項1または請求項2に記載の複数の干渉抑圧装置によって並行して処理される。
【発明の効果】
【0039】
本発明が適用されたレーダ装置によれば、そのレーダ装置と、周辺に位置するレーダ装置との何れもがスタガ送信を行わなくても、受信されたレーダ信号の信号処理により、干渉波、特に同期性の干渉波の影響の軽減が図られる。
【0040】
また、本発明が適用されたレーダ装置では、そのレーダ装置と、周辺に位置するレーダ装置との何れもがスタガ送信を行わなくても、受信されたレーダ信号にそのレーダ信号のコヒーレント性を前提する信号処理が担保され、しかも、干渉波、特に同期性の干渉波の影響の軽減が可能となる。
【0041】
さらに、本発明が適用されたレーダ装置では、安定に確度高く、同期性の干渉波の影響の軽減が可能となる。
【0042】
したがって、本発明が適用されたレーダ装置では、耐干渉性が精度よく安定に高められ、かつ探知性能および利便性が高く維持される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の一実施形態を示す図である。
図2】本実施形態の動作説明する図である。
図3】本実施形態における信号処理部の動作フローチャートである。
図4】従来の適応レーダ装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す図である。
図において、図4に示すものと機能および構成が同じものについては、同じ符号を付与し、ここでは、その説明を省略する。
【0045】
本実施形態と図4に示す従来例との構成の相違点は、信号処理部61および制御部63に代えて、信号処理部61Aおよび制御部63Aがそれぞれ備えられた点にある。
なお、信号処理部61Aおよび制御部63Aは、後述する点を除いて、図4に示す従来例と同様に連係し、かつ機能する。
【0046】
図2は、本実施形態の動作を説明する図である。
図3は、本実施形態における信号処理部の動作フローチャートである。
以下、図1図3を参照して本実施形態の動作を説明する。
【0047】
空中線系41の主ローブの方向は、制御部63Aの主導の下で行われるスキャンに応じて所定の速度でサイクリック更新される。信号処理部61Aは、このようなスキャンに同期して既述のレーダ信号処理を行い、指示部62は、そのレーダ信号処理の下で生成された指示画像を指示画面上に表示する。
【0048】
本発明の特徴は、本実施形態では、このようにして行われるレーダ信号処理の過程で信号処理部61Aが制御部63Aの配下で行う下記の処理の手順にある。
信号処理部61Aは、上記スキャンに同期して受信部52から与えられるベースバンド信号を順次取り込みつつ、以下の処理を行う。
【0049】
(1) 制御部63Aと連係することにより、空中線系41の主ローブの方向を示す方位角θと、上記ベースバンド信号として与えられるAスコープ上の距離rとの双方を識別し、これらの方位角θおよび距離rの離散値の対Pi,j(=(r,θ))の列を識別する(図3ステップS1)。ここに、添え番号iは、例えば、該当する時点の覆域における距離方向の最大値rmaxと、このような距離の離散値のインターバルΔrとに対して、「0」ないし((rmax/Δr)−1)の整数として与えられる。また、添え番号jは、例えば、スキャンの下で形成される覆域の方位角の最大値θmax(例えば、「360度」に設定される。)と、このような方位角の離散値のインターバルΔθとに対して、「0」ないし((θmax/Δθ)−1)の整数として与えられる。
【0050】
(2) 図2に示すように、このような対毎に対応した上記Aスコープ上の部位における時系列順の瞬時値Vi,jの列にそのAスコープを区分し、かつスキャンのサイクルにも対応した3次元の配列として、図示されない記憶領域上に順次蓄積しながら、所定の頻度でサイクリックに更新する(図3ステップS2)。
【0051】
(3) 上記配列からスキャンSおよび距離r 毎に、その距離r が共通であって方位角θの方向に連なる複数n(ここでは、「8」であると仮定する。)のレンジセルのブロックC(=(Vi,0〜Vi,7)、(Vi,8〜Vi,16)、…)を順次抽出する(図3ステップS3)。
【0052】
ここに、複数nは、以下に列記する項目に応じて予め算出され、かつ空中線系41の主ローブの方向が変化しても、船舶その他の所望の目標からの反射が得られるスイープの数に制限される。
・ 送信波が送信されるインターバルの長さ
・ スキャンに応じた単位時間当たりにおける方位角θの変化率
・ 空中線系41の主ローブの幅
例えば、空中線系41が旋回する角速度が毎秒144度であり、その空中線系41の主ローブの幅が1.2°である場合には、このような主ローブの幅に亘って空中線系41が旋回するために要する時間が8.3(=1.2/144×1000)msであるために、送信波のパルス繰返し周期が1000Hz(周期=1ms)であると、n≒8(=8.3/1)となる。
【0053】
(4) 上記レンジセルのブロックC(=(Vi,0〜Vi,7)、(Vi,8〜Vi,16)、…)毎に、以下の処理を反復して行う。なお、以下では、簡単のため、レンジセルのブロックCに含まれる「レンジセルのブロック(Vi,0〜Vi,7)」のみに着目して記述する。また、これらのレンジセルVi,1、Vi,2、Vi,3、Vi,4、Vi,5、Vi,6、Vi,7には、他のレンジセルに比べて「位相の跳躍」、「瞬時値の変動」、「振幅の変動」の全てまたは一部が著しいレンジセルのように、相関性が低いレンジセル(以下、「特異なレンジセル」とう。)が含まれる。
【0054】
(4-1) このようなレンジセルのブロック(Vi,0〜Vi,7)(特異なレンジセルが含まれ得る。)に、そのレンジセルブロックに含まれるレンジセルの順列を既定の順列に基づいて入れ替えるインタリーブ処理を施す(図3ステップS4)。
【0055】
(4-2) レンジセルVi,1、Vi,2、Vi,3、Vi,4、Vi,5、Vi,6、Vi,7の相互間における相関をとり、これらのレンジセルVi,1、Vi,2、Vi,3、Vi,4、Vi,5、Vi,6、Vi,7に、上記「特異なレンジセル」が含まれる場合には、その「特異なレンジセル」の瞬時値を「0」に設定し、あるいは他のレンジセルに比べて大幅に小さく重み付ける処理(以下、「干渉抑圧処理」という。)を施す(図3ステップS5)。
【0056】
すなわち、距離r が共通であって、方位方向に連なる複数のレンジセルのブロック毎に、インタリーブが図られた後に、外部から到来した干渉に起因して生じた可能性が高い「特異なレンジセル」が抑圧され、さらに指示画像の生成に供される。
【0057】
したがって、本実施形態によれば、このような干渉源となり得るレーダが多数存在し、これらのレーダから送信された干渉波が時間軸上で同期して到来する状況であっても、探知性能の低下が確度高く安定に軽減され、しかも、指示画像上におけるこのような干渉波の表示が方位角方向における分散によって大幅に緩和される。
【0058】
なお、本実施形態では、上記「特異なレンジセル」の判別は、その判別の基準として記述の「位相の跳躍」の程度が採用されない場合には、インタリーブ処理の後に行われてもよい。
【0059】
また、本実施形態では、既述の送信波の周波数が一定に設定されている。
しかし、本発明は、このような構成に限定されず、例えば、以下に列記する態様の何れかで構成されることにより、送信波および受信波の占有帯域が可変され、これらの占有帯域間における干渉の相関の低さが積極的に活用されてもよい。
【0060】
(1) 送信部53によって生成され、かつサーキュレータ51を介して空中線系41を介して送信された送信波の周波数が、異なる値に適宜変更され、既述の干渉抑圧処理がこのような異なる周波数波帯の受信波に対して並行して施される。これらの干渉抑圧処理の下で生成されたレンジセルブロックが適宜合成された後、指示画像の生成に供される。
【0061】
(2) 送信部53によって生成され、かつサーキュレータ51を介して空中線系41を介して送信された送信波の周波数が、スキャン毎またはスイープ毎に異なる値に設定され、既述の干渉抑圧処理がこれらの異なる周波数波で到来する受信波に対して順次施される。
【0062】
さらに、本実施形態では、スイープの周期が一定となっている。
しかし、本発明は、このような構成に限定されず、例えば、「レンジセルのブロックCに含まれる複数n(=8)個の連なるレンジセル毎の相互間における相関が既定の上限値を超えるとき」には、スイープの周期が短く(スイープの頻度が高く)設定されることにより、外部からの干渉を被ることなく所望の覆域における探知性能の向上が図られてもよい。
【0063】
また、本実施形態では、指示画像は、既述のインタリーブにより、スイープ(方位角)方向における干渉波の影響の分散が図られている。
【0064】
しかし、本発明は、このような構成に限定されず、例えば、上記「特異なレンジセル」の識別と、その「特異なレンジセル」の瞬時値を「0」に設定し、あるいは他のレンジセルに比べて大幅に小さく重み付ける「干渉抑圧処理」とが以下の処理で代替されてもよい。
【0065】
(1) 「特異なレンジセル」の識別は、複数n(=8)個の連なるレンジセル毎にインタリーブ処理の後に適用されるランクフィルタにより行われる。
【0066】
(2) このようにして識別された「特異なレンジセル」の瞬時値を「0」に設定し、あるいは他のレンジセルに比べて大幅に小さく重み付ける「干渉抑圧処理」の後に、上記インタリーブと逆の処理であるデインタリーブ処理が行われる。
【0067】
さらに、本実施形態では、レンジセルのブロックCは、既述の通りにレンジ方向に連なり、かつ重複しないn(=8)個ずつのレンジセルのブロック(Vi,0〜Vi,7)、(Vi,8〜Vi,16)、…として構成されている。
【0068】
しかし、これらのレンジセルのブロックは、例えば、(Vi,0〜Vi,7)、(Vi,1〜Vi,8)、(Vi,2〜Vi,9)、…と表記するように、レンジ(方位角)方向に連なるものの、7個ずつ重複したレンジセルの列として構成されてもよい。ここに、これらのレンジセルのブロックの生成は、重複したレンジセルが含まれるため、受信部52から得られるベースバンド信号が適宜保持され、かつ重複して参照されることにより行われる必要がある。
【0069】
なお、このような場合には、例えば、「干渉抑圧処理」の対象となるレンジセルのブロックの数は8倍となるが、これらのブロック毎に得られた「干渉抑圧処理」の結果に対して、指数平滑、移動平均等の積分処理がレンジ(方位角)方向に施されることにより、干渉の軽減がより精度よく実現可能となる。
【0070】
また、本実施形態では、インタリーブのために適用される順列は、何れのレンジセルのブロックについても、共通に設定されている。
【0071】
しかし、本発明は、このような構成に限定されず、例えば、時系列の順に、あるいはスイープ、スキャン、レンジの全てまたは一部の単位に異なる順列に基づくインタリーブが行われることにより、より好適な形態で(指示画像上における)干渉波の分散が図られてもよい。
【0072】
さらに、本実施形態では、信号処理部61Aによって行われるレーダ信号処理の簡略化や応答性の向上が必要である場合には、「特異なレンジセル」の瞬時値は、共通のレンジセルのブロックに属する他のレンジセルに比べて大幅な小さい重み付けのために、例えば、レンジセルブロックに属するレンジセルの中央値あるいは平均値として与えられてもよい。
【0073】
また、本実施形態では、該当する「特異なレンジセル」に連なるレンジセルとの間における位相の跳躍が所望の精度で軽減され、あるいは抑圧されるべき場合には、「干渉抑圧処理」の過程で瞬時値が「0」に設定され、あるいは他のレンジセルに比べて大幅に小さく重み付けられた「特異なレンジセル」に対して、その「干渉抑圧処理」の後で瞬時値の列に適切な線形補完が施されてもよい。
【0074】
さらに、本実施形態では、既述の通りに信号処理部61Aが制御部63Aと連係することによって行われる何れの処理についても、例えば、本発明の特徴的な処理を行う信号処理部61Aが複数台備えられる場合には、これらの信号処理部61Aに如何なる形態で負荷分散や機能分散が図られてもよい。
【0075】
また、本実施形態では、既述のレンジセルのブロックは、スキャンSおよび距離r 毎に求められ、その距離r が共通であって方位角θの方向に連なるレンジセルの列が単純に複数n(ここでは、「8」であると仮定する。)個ずつに区分されることによって生成されている。
【0076】
しかし、このようなレンジセルのブロックは、例えば、「距離r が共通であって方位角θの方向に連なるレンジセルの瞬時値の平均(指数平滑や移動平均等として求められる。)としてスイープ方向に得られる閾値」に比べて、瞬時値が上回るレンジセルからなるブロックとして識別され、かつ抽出されてもよい。
【0077】
さらに、このように抽出されたブロックのみを既述の「干渉抑圧処理」の対象に設定されることにより、レーダ信号処理の処理量や応答性の総合的な向上が図られてもよい。
【0078】
また、本実施形態では、「干渉抑圧処理」は、干渉の抑圧がさらに精度よく確実に図られるべき場合には、適宜、スタガ送信その他の既存の技術と共に併用されてもよい。
【0079】
さらに、本発明は、回転式のレーダシステムに限定されず、例えば、ディジタルビームフォーミングにより1スイープでBスコープを構成可能なレーダシステムにも適用可能である。この場合、レンジセルのブロックは、方位角方向に連なるのではなく、レンジおよび方位が共通であるスイープ方向のレンジセル整列から構成される。
【0080】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の範囲において多様な実施形態の構成が可能であり、構成要素の全てまたは一部に如何なる改良が施されてもよい。
【0081】
以下、本願に開示された発明の内、「特許請求の範囲」に記載しなかった発明の構成、作用および効果を「課題を解決するための手段」および「発明の効果」の欄に準じた様式により列記する。
【0082】
〔1〕 請求項1または請求項2に記載の干渉抑圧装置において、
前記レーダ信号は、
前記スイープ毎に異なる周波数で到来する
ことを特徴とする干渉抑圧装置。
【0083】
このような構成の干渉抑圧装置では、請求項1または請求項2に記載の干渉抑圧装置において、前記レーダ信号は、前記スイープ毎に異なる周波数で到来する。
【0084】
すなわち、レーダ信号に重畳された干渉波の成分の抑圧は、ブロックの単位に行われるインタリーブと、そのブロック内における他のレンジセルとの相関や位相の跳躍の程度に基づく識別とだけではなく、レーダ信号の周波数がスイープ毎に異なることによる周波数アジャイルによって相乗的に図られる。
【0085】
したがって、本発明が適用されたレーダ装置では、探知性能および耐干渉性がさらに高められる。
【0086】
〔2〕 請求項1、2、3、4、6の何れか1項に記載の干渉抑圧装置において、
前記ブロック毎に、含まれるレンジセルの相関性が既定の上限値より高いときに、前記スイープの周期またはインターバルを変更する制御手段を備えた
ことを特徴とする干渉抑圧装置。
【0087】
このような構成の干渉抑圧装置では、請求項1、2、3、4、6の何れか1項に記載の干渉抑圧装置において、制御手段は、前記ブロック毎に、含まれるレンジセルの相関性が既定の上限値より高いときに、前記スイープの周期またはインターバルを変更する。
【0088】
すなわち、スイープの周期やインターバルは、レーダ信号に重畳される干渉波の成分が少ない場合に変更される。
【0089】
したがって、外部から到来する干渉波に対する耐干渉性の余裕度が活用されることによる探知性能の向上が図られる。
【0090】
〔3〕 請求項1または請求項3に記載の干渉抑圧装置において、
前記ブロック内干渉抑圧手段が行った処理の下で生成されたブロック毎に、前記インタリーブと可逆的なデインタリーブを施すデインタリーブ手段を備えた
ことを特徴とする干渉抑圧装置。
【0091】
このような構成の干渉抑圧装置では、請求項1または請求項3に記載の干渉抑圧装置において、デインタリーブ手段は、前記ブロック内干渉抑圧手段が行った処理の下で生成されたブロック毎に、前記インタリーブと可逆的なデインタリーブを施す。
【0092】
すなわち、干渉波の成分が大半を示すレンジセルの識別や抑圧に先行して、もしくは後続して行われたインタリーブの影響の軽減や排除が図られる。
【0093】
したがって、耐干渉性の向上と共に行われるべきレーダ信号処理の多様な形態に対する柔軟な適応が可能となる。
【0094】
〔4〕 請求項1または請求項2に記載の干渉抑圧装置において、
前記ブロック内干渉抑圧手段は、
前記インタリーブを時系列の順に異なる順列に基づいて行う
ことを特徴とする干渉抑圧装置。
【0095】
このような構成の干渉抑圧装置では、請求項1または請求項2に記載の干渉抑圧装置において、前記ブロック内干渉抑圧手段は、前記インタリーブを時系列の順に異なる順列に基づいて行う。
【0096】
すなわち、ブロック毎に行われるインタリーブに適用される順列が同じであることに起因して生じ得る疑似的な干渉の発生が回避され、あるいは回避される。
【0097】
したがって、探知性能の無用な低下が回避され、総合的な信頼性および性能が高められる。
【0098】
〔5〕 請求項1、2、9の何れか1項に記載の干渉抑圧装置において、
前記所定数は、
覆域に位置し得る目標との相関性が担保される数である
ことを特徴とする干渉抑圧装置。
【0099】
このような構成の干渉抑圧装置では、請求項1、2、9の何れか1項に記載の干渉抑圧装置において、前記所定数は、覆域に位置し得る目標との相関性が担保される数である。
【0100】
すなわち、インタリーブ等の処理の対象となるブロックに含まれるべきレンジセルの数は、覆域に位置し得る目標の探知が損なわれない程度に大きな値に設定される。
【0101】
したがって、本発明では、耐干渉性は、探知性能を犠牲とすることなく実現される。
【0102】
〔6〕 請求項1、2、3、4、6、7、9、10の何れか1項に記載の干渉抑圧装置において、
前記ブロック内干渉抑圧手段は、
前記ブロック毎に、抑圧が図られたレンジセルの振幅を他のレンジセルの振幅の平均により補完する
ことを特徴とする干渉抑圧装置。
【0103】
このような構成の干渉抑圧装置では、請求項1、2、3、4、6、7、9、10の何れか1項に記載の干渉抑圧装置において、前記ブロック内干渉抑圧手段は、前記ブロック毎に、抑圧が図られたレンジセルの振幅を他のレンジセルの振幅の平均により補完する。
【0104】
すなわち、何れのブロックについても、干渉波の成分が大半を占めるレンジセルの振幅は、そのブロックに含まれる他のレンジセルに対してレベルが大きくは異ならない値に設定される。
【0105】
したがって、干渉抑圧のためにブロック毎に行われる処理は、複雑な算術演算を伴うことなく実現され、応答性や探知性能の無用な低下が回避される。
【0106】
〔7〕 請求項1、2、3、4、6、7、9、10の何れか1項に記載の干渉抑圧装置において、
前記ブロック内干渉抑圧手段は、
前記ブロック毎に、抑圧が図られたレンジセルと前記スイープの順に隣接するレンジセルとの位相の連続性を補完する
ことを特徴とする干渉抑圧装置。
【0107】
このような構成の干渉抑圧装置では、請求項1、2、3、4、6、7、9、10の何れか1項に記載の干渉抑圧装置において、前記ブロック内干渉抑圧手段は、前記ブロック毎に、抑圧が図られたレンジセルと前記スイープの順に隣接するレンジセルとの位相の連続性を補完する。
【0108】
すなわち、ブロック毎に含まれるレンジセルの内、抑圧の対象となったレンジセルに隣接するレンジセルは、インタリーブの下で並び替えられた後であっても、位相の連続性を前提として有効であって好適な信号処理の対象となる。
【0109】
したがって、本発明が適用されたレーダ装置では、探知性能が無用に損なわれることなく、耐干渉性の向上が図られる。
【0110】
〔8〕 請求項1、2、3、4、6、7、8、9、10、11、12の何れか1項に記載の干渉抑圧装置において、
前記ブロック内干渉抑圧手段によって前記ブロック毎に施された処理の結果を前記インタリーブ後におけるスイープ毎に対応づけて積分する積分手段を備え、
前記ブロックは、
前記レーダ信号が蓄積されてなるLAW信号で示され、かつ前記スイープ毎に順位が同じであるレンジセルの列から前記所定数ずつ切り出されて連なる共に、要素の少なくとも一部が重複するレンジセルの順列である
ことを特徴とする干渉抑圧装置。
【0111】
このような構成の干渉抑圧装置では、請求項1、2、3、4、6、7、8、9、10、11、12の何れか1項に記載の干渉抑圧装置において、積分手段は、前記ブロック内干渉抑圧手段によって前記ブロック毎に施された処理の結果を前記インタリーブ後におけるスイープ毎に対応づけて積分する。前記ブロックは、前記レーダ信号が蓄積されてなるLAW信号で示され、かつ前記スイープ毎に順位が同じであるレンジセルの列から前記所定数ずつ切り出されて連なると共に、要素の少なくとも一部が重複するレンジセルの順列である。
【0112】
すなわち、スイープの方向に連なり、かつ隣接する個々のブロックには、少なくとも1つのレンジセルが重複して含まれるため、これらのブロックの総数が多くはなるが、これらのブロックについて個別に行われる処理の結果のスイープ方向またはレンジ方向における積分が可能となる。
【0113】
したがって、本発明によれば、干渉の抑圧や軽減が制度よく安定に実現される。
【0114】
〔9〕上記〔3〕に記載の干渉抑圧装置において、
前記ブロック内干渉抑圧手段によって前記ブロック毎に施された処理の結果を前記スイープ毎に対応づけて積分する積分手段を備え、
前記ブロックは、
前記レンジセルの列から前記所定数ずつ切り出されて連なり、かつ要素の少なくとも一部が重複するレンジセルの順列である
ことを特徴とする干渉抑圧装置。
【0115】
このような構成の干渉抑圧装置では、上記〔3〕に記載の干渉抑圧装置において、積分手段は、前記ブロック内干渉抑圧手段によって前記ブロック毎に施された処理の結果を前記スイープ毎に対応づけて積分する。前記ブロックは、前記レンジセルの列から前記所定数ずつ切り出されて連なり、かつ要素の少なくとも一部が重複するレンジセルの順列である。
【0116】
すなわち、スイープの方向に連なり、かつ隣接する個々のブロックには、少なくとも1つのレンジセルが重複して含まれるため、これらのブロックの総数が多くはなるが、これらのブロックについて個別に行われる処理の結果のスイープ方向またはレンジ方向における積分が可能となる。
【0117】
したがって、本発明によれば、干渉の抑圧や軽減が制度よく安定に実現される。
【符号の説明】
【0118】
41 空中線系
50 送受信部
51 サーキュレータ
52 受信部
53 送信部
54 局部発振器
61,61A 信号処理部
62 指示部
63,63A 制御部
図1
図2
図3
図4