特許第6415189号(P6415189)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6415189
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】風向制御構造
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20181022BHJP
【FI】
   B60H1/34 651Z
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-175055(P2014-175055)
(22)【出願日】2014年8月29日
(65)【公開番号】特開2016-49829(P2016-49829A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】中田 千秋
【審査官】 五十嵐 康弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−097037(JP,A)
【文献】 実開昭62−028614(JP,U)
【文献】 実開昭63−052607(JP,U)
【文献】 実開平06−049112(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0014860(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00−3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に適用され、空調装置の空調ダクトから車室内の座席の下方に供給される空調風の風向を制御するための構造であって、
開口を有する表面部材と、
前記表面部材に対して車幅方向に前記座席側と反対側から対向し、前記空調ダクトから前記表面部材との間に流入する空調風を前記開口に案内する案内部材と
を含み、
前記案内部材の上端は、前記表面部材の上端に対して前記車幅方向に離間し、
前記表面部材の上端と前記案内部材の上端とにより、導入口が形成され、
前記空調ダクトには、前記導入口の上方に、前記空調ダクトを流れる空調風の一部を流出させる供給口が形成され、
前記導入口と前記供給口との間には、前記導入口および前記供給口以外にも開放される空間が設けられており、
前記開口の下口縁の少なくとも一部は、前記案内部材の下端縁よりも上方に位置し、
前記表面部材は、前記案内部材の下端縁と前記下口縁における当該下端縁よりも上方に位置する部分との間に、阻害壁を有している、風向制御構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に適用され、空調装置から車室内の座席の下方に供給される空調風の風向を制御するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、車室内の空調のための空調装置が搭載されている。
【0003】
車室内の最前部には、インストルメントパネル(ダッシュボード)が配置されており、空調装置は、インストルメントパネルの内側(前側)に設けられている。空調装置は、空調風が流れる空調ダクトを備えている。空調ダクトは、たとえば、デフロスタ吹出口、フェイス吹出口およびフット吹出口を有している。デフロスタ吹出口を通過する空調風は、フロントガラスおよびフロントサイドガラスに向けて吹き出る。フェイス吹出口を通過する空調風は、運転席および助手席に向けて吹き出る。フット吹出口を通過する空調風は、運転席および助手席に座った乗員の足下に向けて吹き出る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−173161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フット吹出口は、センタコンソールの前端部(インストルメントパネルの中央下部)に配置されている。
【0006】
フット吹出口の配置構造として、たとえば、フット吹出口を剥き出しの状態で配置した構造がある。この構造では、フット吹出口とともに、シフトレバーに接続されたケーブルや車室内の床面に敷設されたカーペットの端など、センタコンソールの内側に配置される内部構造物が露出(中見え)する。そのため、見栄えが悪い。
【0007】
また、センタコンソールの前端部の側面(運転席側および助手席側の各側面)に中見えを防止するためのカバーを設け、そのカバーの内側にフット吹出口を配置した構造がある。この構造では、カバーに空調風を通過させるための開口が形成され、フット吹出口から吹き出される空調風を開口に案内するための案内部材が設けられる。空調風が開口から局所に向けて吹き出されると、乗員の足下の温度変化が部分的になり、良好な空調性能を発揮することができない。開口から吹き出される空調風の風向を拡散させるためには、開口の側方で案内部材の距離を長く確保すればよいが、センタコンソールにおける空きスペースが低減する。
【0008】
本発明の目的は、内部構造物の中見えを防止でき、かつ、省スペースで空調風の風向を拡散させることができる、風向制御構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明に係る風向制御構造は、車両に適用され、空調装置から車室内の座席の下方に供給される空調風の風向を制御するための構造であって、開口を有する表面部材と、表面部材に対して車幅方向に座席側と反対側から対向し、空調装置から表面部材との間に流入する空調風を開口に案内する案内部材とを含み、開口の下口縁の少なくとも一部は、案内部材の下端縁よりも上方に位置し、表面部材は、案内部材の下端縁と下口縁における当該下端縁よりも上方に位置する部分との間に、阻害壁を有している。
【0010】
この構成によれば、表面部材と表面部材に対して車幅方向に座席側と反対側から対向する案内部材との間に、空調装置からの空調風が流入する。表面部材と案内部材との間に流入した空調風は、案内部材に沿って流れることにより、表面部材に形成された開口に案内される(導かれる)。そして、空調風は、開口から座席の下方(座席に乗員が座っている場合には、その乗員の足下)に向けて吹き出る。
【0011】
開口の下口縁の少なくとも一部は、案内部材の下端縁よりも上方に位置している。これにより、その下口縁の少なくとも一部と案内部材の下端縁との間には、阻害壁が形成されている。そのため、案内部材に案内されて流れる空調風の一部は、阻害壁に当たり、開口からの吹出しが阻害される。その結果、阻害壁の近傍で空調風の乱流が生じ、開口から吹き出す空調風の風向が拡散する。
【0012】
よって、表面部材が設けられることにより、表面部材の内側(案内部材側)に配設されている内部構造物の中見えを防止できながら、阻害壁が設けられることにより、開口に対して車幅方向の側方で案内部材の距離を長く確保せずに、省スペースで、開口から吹き出す空調風の風向を拡散させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、表面部材の内側に配設されている内部構造物の中見えを防止できながら、車幅方向に省スペースな構造で、表面部材に形成されている開口から吹き出す空調風の風向を拡散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る風向制御構造が適用される車両における右側の前部座席の左前方の構造を示す斜視図である。
図2】風向制御構造を右側から見た側面図である。
図3図2に示される切断面線A−Aにおける風向制御構造の断面図である。
図4図2に示される切断面線B−Bにおける風向制御構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る風向制御構造1が適用される車両2における右側の前部座席(運転席)の左前方の構造を示す斜視図である。
【0017】
風向制御構造1は、自動車などの車両2に適用され、空調(HVAC:Heating, Ventilation and Air Conditioning)装置から車室3内の左右の前部座席の下方に供給される空調風の風向を制御するための構造である。
【0018】
具体的には、車室3内の最前部には、インストルメントパネル(ダッシュボード)4が配置されている。また、車両の左右の前部座席の間には、前後方向に延びるセンタコンソール(フロントコンソール)5が配置されている。センタコンソール5の前端部は、インストルメントパネル4の中央下部に接続されている。風向制御構造1は、センタコンソール5の前端部の右側部に設けられて、空調装置から右側の前部座席の下方、前部座席に乗員が座っている場合にその乗員の足下F(図3参照)に供給される空調風の風向を制御する。また、図示されないが、風向制御構造1は、センタコンソール5の前端部の左側部に設けられて、空調装置から左側の前部座席の下方に供給される空調風の風向を制御する。
【0019】
なお、センタコンソール5の前端部の左側部に設けられる風向制御構造1は、センタコンソール5の前端部の右側部に設けられる風向制御構造1と左右を反転させた構造である。以下では、センタコンソール5の前端部の右側部に設けられる風向制御構造1を取り上げて説明し、センタコンソール5の前端部の左側部に設けられる風向制御構造1についての説明を省略する。
【0020】
図2は、風向制御構造1を右側から見た側面図である。図3は、図2に示される切断面線A−Aにおける風向制御構造1の断面図である。図4は、図2に示される切断面線B−Bにおける風向制御構造1の断面図である。
【0021】
風向制御構造1は、センタコンソール5に固定された案内部材11と、センタコンソール5の右側面を覆う表面部材(カバー)12とを含む。
【0022】
案内部材11は、図2に示されるように、対向部13、前側部14、後側部15、前フランジ部16、後フランジ部17および下フランジ部18を一体的に備えている。
【0023】
対向部13は、薄板状をなしている。対向部13は、図3に示されるように、上下方向に延びる上端部131と、上端部131から右下側に延びる第1傾斜部132と、第1傾斜部132から右下側に延び、第1傾斜部132よりも大きい傾斜角で傾斜する第2傾斜部133とを有している。
【0024】
前側部14は、対向部13の前端縁から右側に延出している。
【0025】
後側部15は、対向部13の後端縁から右側に延出している。
【0026】
これにより、対向部13、前側部14および後側部15は、図4に示されるように、表面部材12側、つまり右側に開放される凹溝状をなしている。
【0027】
前フランジ部16は、前側部14の先端縁(右端縁)から前方に張り出し、前側部14の先端縁に沿って延びている。
【0028】
後フランジ部17は、後側部15の先端縁(右端縁)から後方に張り出し、後側部15の先端縁に沿って延びている。
【0029】
下フランジ部18は、図3に示されるように、対向部13の下端縁19から下方に張り出し、前フランジ部16および後フランジ部17に接続されている。
【0030】
表面部材12は、樹脂により一体成形され、前後方向および上下方向に延びる薄板状をなしている。表面部材12の左側面には、案内部材11の対向部13の下端縁19、前フランジ部16、後フランジ部17および下フランジ部18が当接している。
【0031】
表面部材12には、図2に示されるように、略三角形状の開口21が貫通して形成されている。開口21は、案内部材11の後側部15に沿って延びる後口縁211と、後口縁211の上端から前側に案内部材11の前側部14の位置まで延びる上口縁212と、後口縁211の下端と上口縁212の前端との間で緩やかに湾曲しつつ延びる下口縁213とを有している。
【0032】
下口縁213は、右側面視において、案内部材11の対向部13の下端縁19と交差している。すなわち、下口縁213は、下端縁19よりも下方に位置する後側部分213Aと、下端縁19よりも上方に位置する前側部分213Bとを有している。これにより、表面部材12は、下口縁213の前側部分213Bと対向部13の下端縁19との間に、阻害壁22を備えている。
【0033】
また、表面部材12には、図2に示されるように、複数の風向調整部材23からなるルーバが形成されている。複数の風向調整部材23は、開口21の上口縁212と下口縁213とに跨がり、前後方向に間隔を空けて、互いに平行なして上下方向に延びている。
【0034】
図3に示されるように、センタコンソール5の上方には、空調装置の空調ダクト31が配設されている。空調ダクト31には、ブロワ(図示せず)からの空調風が流れる。空調ダクト31には、案内部材11の上端と表面部材12の上端とにより形成される導入口32の上方に、空調ダクト31を流れる空調風の一部を導入口32を介して案内部材11と表面部材12との間に供給するための供給口33が形成されている。供給口33の開口面積は、表面部材12の開口21の開口面積とほぼ等しい。
【0035】
以上の構成により、案内部材11と表面部材12との間には、空調ダクト31を流れる空調風の一部が供給口33から導入口32を介して流入する。案内部材11と表面部材12との間に流入した空調風は、案内部材11の対向部13に沿って流れることにより、表面部材12の開口21へと導かれる。そして、空調風は、開口21から右側の前部座席の下方に向けて吹き出る。
【0036】
下口縁213の前側部分213Bと対向部13の下端縁19との間に、阻害壁22が形成されている。そのため、対向部13に案内されて流れる空調風の一部は、阻害壁22に当たり、開口21からの吹出しが阻害される。その結果、阻害壁22の近傍で空調風の乱流が生じ、開口21から吹き出す空調風の風向が拡散する。
【0037】
よって、開口21から吹き出す空調風の風向を拡散させるために、開口21に対して車幅方向の側方で案内部材11の距離を長く確保する必要がない。言い換えれば、センタコンソール5の前端部における案内部材11の専有スペースが小さくても、開口21から吹き出す空調風の風向を拡散させることができる。案内部材11の専有スペースが小さい分、センタコンソール5の前端部における空きスペースを増大させることができる。そして、その空きスペースを利用して、小物を収容可能なボックスなどを設けることができ、これにより、ユーティリティの向上を図ることができる。
【0038】
また、表面部材12が設けられることにより、表面部材12の内側(案内部材11側)に配設されている内部構造物、たとえば、シフトレバーに接続されたケーブルや車室3内の床面に敷設されたカーペットの端などの中見えを防止することができる。
【0039】
開口21の上口縁212は、空調ダクト31の供給口33と開口21から吹き出す空調風の設計上の供給位置である狙いポイント(たとえば、前部座席に座っている乗員の足下F)とを結ぶ直線上に位置していることが好ましい。これにより、開口21から吹き出す空調風が狙いポイントを越える位置まで届くことを抑制でき、良好な空調性能を発揮することができる。
【0040】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0041】
たとえば、前述の構成では、下口縁213の前側部分213Bと対向部13の下端縁19との間に、阻害壁22が形成されている。開口21から吹き出す空調風の狙いポイントが開口21よりも後方に設定されている場合、阻害壁22が案内部材11と表面部材12との間の空間の前後方向の中心に対して前側に片寄った位置に設けられることにより、開口21から吹き出す空調風の風向を開口21よりも後方に向かせることができる。
【0042】
したがって、開口21から吹き出す空調風の狙いポイントが開口21よりも前方に設定されている場合には、阻害壁22が案内部材11と表面部材12との間の空間の前後方向の中心に対して後側に片寄った位置に設けられるとよい。これにより、開口21から吹き出す空調風の風向を開口21よりも前方に向かせることができる。
【0043】
案内部材11の対向部13の形状は、前述の形状に限らず、空調風を開口21に案内することができれば、たとえば、平板状であってもよい。
【0044】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 風向制御構造
2 車両
3 車室
11 案内部材
12 表面部材
13 対向部(案内部材)
19 下端縁(案内部材の下端縁)
21 開口
22 阻害壁
31 空調ダクト(空調装置)
213 下口縁
213B 前側部分
図1
図2
図3
図4