(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6415360
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】炭化珪素単結晶基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20181022BHJP
C30B 33/12 20060101ALI20181022BHJP
C30B 29/36 20060101ALI20181022BHJP
【FI】
H01L21/302 104Z
C30B33/12
C30B29/36 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-49224(P2015-49224)
(22)【出願日】2015年3月12日
(65)【公開番号】特開2016-171171(P2016-171171A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2017年11月6日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合技術開発機構「低炭素社会を実現する新材料パワー半導体プロジェクト/研究開発項目(1)−1−2高品質・大口径SiC結晶成長技術開発(その2)」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】矢代 弘克
(72)【発明者】
【氏名】藤本 辰雄
(72)【発明者】
【氏名】藤原 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】隈 裕二
(72)【発明者】
【氏名】阿部 隆之
(72)【発明者】
【氏名】勝野 正和
(72)【発明者】
【氏名】柘植 弘志
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 渉
(72)【発明者】
【氏名】藍郷 崇
(72)【発明者】
【氏名】矢野 孝幸
【審査官】
鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−261563(JP,A)
【文献】
特開平08−213326(JP,A)
【文献】
特開2001−168046(JP,A)
【文献】
特開2007−103876(JP,A)
【文献】
特開2012−004272(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/090024(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00−35/00
H01L 21/302
H01L 21/3065
H01L 21/461
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素単結晶インゴットからスライス加工により切り出し、表面研磨加工を行って得られた研磨加工後の炭化珪素単結晶基板について、その表面に存在する加工変質部を除去して炭化珪素単結晶基板を製造する方法において、
前記研磨加工後の炭化珪素単結晶基板表面の加工変質部をマイクロ波でプラズマ化させたHIガスによるHIプラズマ処理により除去することを特徴とする炭化珪素単結晶基板の製造方法。
【請求項2】
炭化珪素単結晶インゴットからスライス加工により切り出し、表面研磨加工を行って得られた研磨加工後の炭化珪素単結晶基板について、その表面に存在する加工変質部を除去して炭化珪素単結晶基板を製造する方法において、
前記研磨加工後の炭化珪素単結晶基板表面の加工変質部を不活性ガスを用いたスパッタエッチングで除去した後、このスパッタエッチング処理後の炭化珪素単結晶基板表面のイオン損傷部をマイクロ波でプラズマ化させたHIガスによるHIプラズマ処理により除去することを特徴とする炭化珪素単結晶基板の製造方法。
【請求項3】
前記HIプラズマ処理の後に、マイクロ波でプラズマ化させたO2ガスによる表面清浄化処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の炭化珪素単結晶基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素(SiC)単結晶基板の表面に存在する加工変質部やイオン損傷部が除去され、かつその除去処理に伴う残渣や表面荒れが無く、清浄性及び平坦性に優れた表面を有する炭化珪素単結晶基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)は、耐熱性及び機械的強度に優れ、物理的、化学的に安定なことから、耐環境性半導体材料として注目されている。また、近年、高周波高耐圧電子デバイス等の基板としてSiC単結晶基板の需要が高まっている。
【0003】
SiC単結晶のインゴットからSiC単結晶基板を加工する工程は、先ず前記インゴットをスライスしてウエハ状に切り出す工程と、所定の厚さまで荒削りする研削工程と、基板の両面を平坦かつ鏡面に仕上げる研磨工程と、上記各工程で基板に付着した汚れを除去する洗浄工程と、加工工程で導入された表面加工変質部を除去する工程とからなる。
【0004】
このようなSiC単結晶基板を用いて、電力デバイス、高周波デバイス等を作製する場合には、通常基板上に熱CVD法(熱化学蒸着法)と呼ばれる方法を用いてSiC薄膜をエピタキシャル成長させたり、イオン注入法により直接ドーパントを打ち込んだりするのが一般的である。
【0005】
この際、SiC単結晶基板の表面に、上記加工変質部が残存していると、正常なエピタキシャル成長を阻害したり、打ち込まれたドーパントの活性化率が低下したりする等の問題が発生することが知られており、さらに、その変質部が電流のリークパスになり、デバイスの性能を落とすこと等も考えられる。
【0006】
通常、SiC単結晶基板の表面は、ダイヤモンド砥粒等による研磨加工による仕上げがされているが、近年のデバイスの微細化に伴い、さらに表面の平坦化が求められているため、メカノケミカル研磨等も行われている。このような基板の表面には、研磨による加工変質部が数百nm存在し、これが十分に除去されていないと、上記のような問題を引き起こすことが想定される。
【0007】
このため、従来においては、Siとの反応性が高いフッ素系反応性ガスを用いたエッチングにより、この加工変質部を取り除いていた。このフッ素系反応性ガスは、酸化シリコンや窒化シリコン等の絶縁膜のエッチングにも用いられる、半導体プロセスにおいては、一般的なガスである。しかしながら、加工変質部の除去にこのようなフッ素系反応性ガスを用いると、SiC単結晶基板の表面にフロロカーボン系の反応生成物が残渣として残ることがあり(非特許文献1)、一度このような残渣が生じてしまうと、その後に酸素ガスプラズマ処理あるいはRCA洗浄等の表面清浄化処理を行っても除去することが難しい。
【0008】
そこで、このような問題を解決するために、フッ素系反応性ガスに替えて塩素系反応性ガスを用いる方法が発明されている(特許文献1)。この塩素系反応性ガスは、同じハロゲン系ガスではあるが、フッ素系反応性ガスよりも反応性が低く、加工変質部除去後にカーボン系の反応生成物が表面に残らないので、最終的に表面品質が高くなり、プロセスガスとして優れている。この塩素系反応性ガスを用いることで、表面粗さを表すマイクロラフネスRa値がRa=0.3nmと比較的良好な表面が得られるようになった。
【0009】
しかしながら、並行平板型の電極を有する反応性イオンエッチング装置を用いる限り、高周波のマイクロ波を用いることが出来ず、また、イオンフラックスとイオンエネルギーとをそれぞれ独立に制御することができないことから、この塩素系反応性ガスを用いたエッチングの効果は限定的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4,427,472号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】大森正道編、菅野卓雄監修、培風館発行「超高速化合物半導体デバイス」、222頁(1986)
【非特許文献2】表面技術 Vol.53(2002) No.12 pp881
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明者らは、表面粗さRa値においてより優れた清浄性及び平坦性を達成するための方法について鋭意検討した結果、意外にも、反応性がよりマイルドなHIガスを用い、この低い反応性をプラズマ密度の高さで補うことにより、より優れた清浄性及び平坦性を有するSiC単結晶基板を製造することができることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
従って、本発明の目的は、マイクロ波で励起した反応性プラズマガスを用いた、清浄性及び平坦性に優れた表面を有するSiC単結晶基板の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
即ち、本発明は、以下の通りである。
(1) 炭化珪素単結晶インゴットからスライス加工により切り出し、表面研磨加工を行って得られた研磨加工後の炭化珪素単結晶基板について、その表面に存在する加工変質部を除去して炭化珪素単結晶基板を製造する方法において、前記研磨加工後の炭化珪素単結晶基板表面の加工変質部をマイクロ波でプラズマ化させたHIガスによるHIプラズマ処理により除去することを特徴とする炭化珪素単結晶基板の製造方法。
(2) 炭化珪素単結晶インゴットからスライス加工により切り出し、表面研磨加工を行って得られた研磨加工後の炭化珪素単結晶基板について、その表面に存在する加工変質部を除去して炭化珪素単結晶基板を製造する方法において、前記研磨加工後の炭化珪素単結晶基板表面の加工変質部を不活性ガスを用いたスパッタエッチングで除去した後、このスパッタエッチング処理後の炭化珪素単結晶基板表面のイオン損傷部をマイクロ波でプラズマ化させたHIガスによるHIプラズマ処理により除去することを特徴とする炭化珪素単結晶基板の製造方法。
(3) 前記HIプラズマ処理の後に、マイクロ波でプラズマ化させたO
2ガスによる表面清浄化処理を行うことを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の炭化珪素単結晶基板の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、SiC単結晶基板の表面に存在する加工変質部あるいはイオン損傷部が除去され、かつ、その除去処理に伴う残渣や表面荒れが無く、清浄性及び平坦性に優れた表面を有するSiC単結晶基板を作成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、プラズマ源としてHIガスとO
2ガスが採用され、本発明のSiC単結晶基板の製造方法を実施する際に用いられる反応性イオンエッチング装置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
先ず、SiC単結晶のインゴットからSiC単結晶基板を加工する工程についての概略を説明する。SiC単結晶のインゴットを作製後、それをスライスして、ウエハ状の基板に切り出し、所定の厚さまで荒削りを行う。その後、基板の両面を平坦かつ鏡面に仕上げるための研磨を行い、続いて、基板に付着した汚れを除去するための洗浄を行う。最後に、上記各工程で基板に導入された表面加工変質部を除去する工程となるが、この工程が、本発明が対象としている工程である。
【0018】
本発明では、反応性ガスを用いたエッチングによってSiC単結晶基板表面の加工変質部を除去する際に、使用するガス種とプラズマ密度とを考慮したものである。SiCに対してエッチング性を有するガスとしては、CF
4、CHF
3等のフッ素系反応性ガスやCl
2、HCl、HBr、HI等のフッ素以外のハロゲン元素を含むハロゲン系反応性ガスがある。フッ素系反応性ガスでは、Fに起因するフロロカーボン系の反応生成物が表面に残り、それが残渣になるため、Fを含まないハロゲン系反応性ガスでのエッチングを試み検討した。
【0019】
そして、フッ素以外のハロゲン元素を含むハロゲン系反応性ガスとして塩素系反応性ガスを用いた場合には、前述の通り、表面粗さRa値において比較的良好な結果が得られたことと、そのエッチング効果が限定的であったことを考慮し、特に、ハロゲン系反応性ガスとして更に反応性の低いヨウ素系反応性ガスのHIガスを用い、このHIガスの反応性の低さをプラズマ密度で補うことに着眼して検討を行った結果、マイクロ波でプラズマ化させたHIガスを用いるHIプラズマ処理であれば、加工変質部やイオン損傷部を除去した後の表面に殆ど残渣が残らず、表面粗さRa値により優れたSiC単結晶基板を製造できることを見出した。これは、HIガスが他のハロゲン水素化物に比べて反応性がよりマイルドであって表面がより平坦に仕上がり、また、この反応性の低さをプラズマ密度の高さで補って所定のエッチングが達成されたものと考えられる。因みに、並行平板型の電極でプラズマを発生させる際によく使われる周波数が13.56MHzであるのに比べて、2.45GHzのマイクロ波ではプラズマ密度を約20,000倍上げられるためであり、マイクロ波の方がより高いプラズマ密度でSiC単結晶基板表面の加工変質部やイオン損傷部を効率良くエッチングできたものと考えられる。
【0020】
また、上記SiC単結晶基板表面の加工変質部をAr、He、Ne等の不活性ガスによるスパッタエッチング処理で除去した後、このスパッタエッチング処理後のイオン損傷部をマイクロ波でプラズマ化させたHIガスによるHIプラズマ処理で除去すれば、更に表面品質(マイクロラフネス)Ra値が良くなることも確認した。
【0021】
更に、以上のようにしてSiC単結晶基板表面の加工変質部をHIプラズマ処理で除去した後に、あるいは、スパッタエッチング処理で加工変質部を除去した後のイオン損傷部をHIプラズマ処理で除去した後に、マイクロ波でプラズマ化させたO
2ガスを用いるO
2プラズマ処理による表面清浄化処理を行うと、残渣をほぼ完全に除去することができることも確認した。なお、SiC単結晶基板の表面は化学的に安定であり、O
2プラズマ処理後の表面に酸化膜による干渉色が観察されなかったことからも、O
2プラズマ処理後の表面が酸化膜で覆われていることは認められなかった。
【0022】
本発明において使用する反応性イオンエッチング装置としては、反応性ガスのHIガスをマイクロ波でプラズマ化してエッチングする装置であり、例えば、プラズマ源として磁場コイルを利用した電子サイクロトロン共鳴プラズマ(ECP; Electron Cyclotron resonance Plasma)、磁場コイルを利用したヘリコン波励起プラズマ(HWP; Helicon Wave Plasma)、アンテナ内挿型等の誘導結合型プラズマ(ICP; Inductively Coupled Plasma)、スロットアンテナ等を利用したマイクロ波励起表面波プラズマ(SWP; Surface Wave Plasma)等を備えた装置を例示することができ、これらの反応性イオンエッチング装置によれば10
11〜10
13/cm
-3という高いプラズマ密度を達成することができる。
【0023】
ここで、HIガスをプラズマ源とする反応性イオンエッチング装置を用いた場合の本発明のHIプラズマ処理について、その原理を説明すると、
図1において、SiC単結晶基板1が反応チャンバー2内にセットされており、発振器3で発信されたマイクロ波はインピーダンス整合器4でインピーダンスがマッチングされて反応チャンバー2内に導入され、また、反応性ガスのガスボンベ5からはHIガスが反応チャンバー2内に導入され、前記反応チャンバー2内でHIガスにマイクロ波が照射されて発生したプラズマによりSiC単結晶基板1の表面がエッチングされる。なお、符号6は、反応チャンバー2内のガスを排気させる排気ポンプである。
【0024】
本発明において、HIガスを用いるHIプラズマ処理の際のエッチング条件としては、HIガスをプラズマ化させるマイクロ波の周波数領域が好ましくは433.05〜434.79MHz、902〜928MHz、2.4〜2.5GHz、5.725〜5.875GHz、24〜24.25GHz、61〜61.5GHz、又は、122〜123GHzであり、エッチング時の圧力が通常10Pa以上50Pa以下、好ましくは10Pa以上30Pa以下であり、ガス流量が通常10cm
3/分以上50cm
3/分以下、好ましくは20cm
3/分以上30cm
3/分以下であり、前記マイクロ波の入力パワーが通常0.5W/cm
2以上1.0W/cm
2以下、好ましくは1.0W/cm
2である。この条件は、エッチング後の残渣の発生を極力避けるために、エッチングのスパッタ性を高め、かつ生産性を落とさない程度にSiCに対して適度なエッチング速度を持たせるという観点から設定されたものであり、この際のSiCに対するエッチング速度は毎分80〜90nmである。
【0025】
また、不活性ガスによるスパッタエッチング処理時のエッチング条件としては、エッチング時の圧力が通常10Pa以上50Pa以下であり、ガス流量が通常10cm
3/分以上50cm
3/分以下であり、スパッタの入力パワーが通常0.2W/cm
2以上1.0W/cm
2以下である。特に、不活性ガスとしてArガスを用いた場合のエッチング条件としては、エッチング時の圧力が10Pa以上20Pa以下、Ar流量が20cm
3/分以上30cm
3/分以下、スパッタの入力パワーが0.25W/cm
2以上1.0W/cm
2以下であるのがよい。
【0026】
そして、マイクロ波でプラズマ化させたO
2ガスを用いるO
2プラズマ処理によって表面清浄化処理を行う際の処理条件としては、O
2ガスをプラズマ化させるマイクロ波の周波数領域が好ましくは433.05〜434.79MHz、902〜928MHz、2.4〜2.5GHz、5.725〜5.875GHz、24〜24.25GHz、61〜61.5GHz、又は、122〜123GHzであり、処理時の圧力が通常10Pa以上100Pa以下、好ましくは40Pa以上50Pa以下であり、O
2流量が通常10cm
3/分以上50cm
3/分以下、好ましくは30cm
3/分以上40cm
3/分以下であり、また、前記マイクロ波の入力パワーが通常0.5W/cm
2以上1.0W/cm
2以下、好ましくは1.0W/cm
2である。
【実施例】
【0027】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明の内容を具体的に説明する。
〔実施例1〕
SiC単結晶インゴットからウエハ状にスライスし、粒径の大きいダイヤモンド研磨剤から順次粒径を小さくして研磨していき、最終的に平均粒径1μmのダイヤモンド研磨剤で研磨した後のSiC単結晶基板を調製した。
得られたSiC単結晶基板を、プラズマ源としてHIガスを備えた反応性イオンエッチング装置の反応チャンバー内にセットし、この反応チャンバー内にHIガスを導入すると共に2.45GHzのマイクロ波を照射し、プラズマ化させたHIガスによるマイクロ波プラズマエッチングであるHIプラズマ処理を実施した。エッチング条件は、ガス流量が30cm
3/分で、エッチング時の真空度が13Paで、また、2.45GHzのマイクロ波の入力パワーが1.0W/cm
2であった。この場合は、表面に残渣は殆ど見られず、Ra値はRa=0.1nmと良好であり、この実施例1のHIプラズマ処理により清浄性及び平坦性に優れた表面を有するSiC単結晶基板が得られた。
【0028】
〔実施例2〕
実施例1で用いたのと同様の表面状態を有するSiC単結晶基板に、不活性ガスとしてArガスを用いたスパッタエッチング処理を行い、SiC単結晶基板表面の加工変質部の除去を行った。この際の具体的なエッチング条件は、Arガスのガス流量が20cm
3/分で、エッチング時の真空度が15Paで、スパッタの入力パワーが0.25W/cm
2であった。
その後、実施例1の場合と同じ条件でHIプラズマ処理によるマイクロ波プラズマエッチングを行った。
上記のスパッタエッチング処理及びHIプラズマ処理によりSiC単結晶基板の表面の荒れあるいは残渣が除去されており、Ra値もRa=0.09nmと極めて良好であった。
【0029】
〔実施例3〕
実施例1によって得られたSiC単結晶基板の表面に、更に、2.45GHzのマイクロ波でプラズマ化させたO
2ガスを用いたO
2プラズマ処理による表面清浄化処理を実施した。処理条件としては、O
2のガス流量が40cm
3/分で、処理時の真空度が50Paで、2.45GHzのマイクロ波の入力パワーが1.0W/cm
2であり、Ra値も実施例1の場合に比べてRa=0.08nmと更に改善された。
【0030】
〔比較例1〕
比較例1として、2.45GHzのマイクロ波でプラズマ化させたフッ素系反応性ガス(CF
4とO
2の混合ガス)を用いてマイクロ波プラズマエッチングを行った。この際のエッチング条件は、CF
4ガスのガス流量が20cm
3/分で、O
2ガスのガス流量が40cm
3/分で、エッチング時の真空度が50Paで、2.45GHzのマイクロ波の入力パワーが0.25W/cm
2であった。この比較例1で得られたSiC単結晶基板の表面の表面粗さRa値はRa=1.48nmであり、実施例1で得られたSiC単結晶基板の表面状態に比べ、明らかに劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、SiC単結晶基板の表面に存在する加工変質部やイオン損傷部が反応性穏やかにかつ効率良く除去され、その除去処理に伴う残渣や表面荒れが無く、清浄性及び平坦性に優れた表面を有するSiC単結晶基板を作成することができる。そのため、このようなSiC単結晶基板上に電子デバイスを形成すれば、デバイスの特性が向上することが期待される。
【符号の説明】
【0032】
1…炭化珪素単結晶基板、2…反応チャンバー、3…発振器、4…インピーダンス整合器、5…反応ガスボンベ、6…排気ポンプ。