特許第6415445号(P6415445)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6415445
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】複合乳製品デザート及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 9/10 20160101AFI20181022BHJP
   A23C 9/00 20060101ALN20181022BHJP
【FI】
   A23L9/10
   !A23C9/00
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-548599(P2015-548599)
(86)(22)【出願日】2013年12月19日
(65)【公表番号】特表2016-505258(P2016-505258A)
(43)【公表日】2016年2月25日
(86)【国際出願番号】EP2013077510
(87)【国際公開番号】WO2014096268
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年11月17日
(31)【優先権主張番号】12198238.3
(32)【優先日】2012年12月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599132904
【氏名又は名称】ネステク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】パナギオトゥ, テオドラ
(72)【発明者】
【氏名】コネイユ, マリー‐リンヌ
(72)【発明者】
【氏名】モロー, ジャン
【審査官】 伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−207761(JP,A)
【文献】 特開平06−181733(JP,A)
【文献】 特開2002−125602(JP,A)
【文献】 特表2012−500012(JP,A)
【文献】 特開昭50−132156(JP,A)
【文献】 特開2003−102406(JP,A)
【文献】 特開2006−001627(JP,A)
【文献】 欧州特許第01518465(EP,B1)
【文献】 ' Vanilla Dessert with Chocolate Spots ', 2012.09, Mintel GNPD, ID# 1897436
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 9/00
A23L 9/00
A23G 3/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH6.3〜pH7.2の範囲内の中性pHを有する複合乳製品デザートを製造するための方法であって、
第1の組成物及び第2の組成物を調製するステップであり、前記第1の組成物及び前記第2の組成物の密度の差が15%を超えず、前記第1の組成物及び前記第2の組成物が0.95〜1.10の範囲内の密度を有し、前記第1の組成物の投入温度における前記第1の組成物の粘度が、前記第2の組成物の投入温度における前記第2の組成物の粘度よりも低く、前記第1の組成物が、投入温度において、50mPa・s〜200mPa・sの間の粘度を有し、前記第2の組成物が、投入温度において、15000mPa・s〜30000mPa・sの間の粘度を有するステップと、
50℃〜80℃の温度で、液体状態の前記第1の組成物を容器内に投入するステップと、
前記第1の組成物の硬化前に、前記第1の組成物と前記第2の組成物とを混合せずに、前記第2の組成物を前記容器内に、4℃〜30℃の温度で投入するステップと、
次いで冷却して、前記第2の組成物で構成された内相を少なくとも部分的に囲む外相として、前記第1の組成物を硬化させるステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の組成物が60℃〜75℃の温度で前記容器内に投入される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の組成物が、4℃〜15℃の温度で、前記第1の組成物が既に入っている前記容器内に投入される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の組成物が、前記第1の組成物の重量%で表して、70%〜90%の乳ベースの成分及び0.5%〜3%のゲル化剤を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の組成物が、前記第2の組成物の重量%で表して、60%〜90%の乳ベースの成分及び0.5%〜6%の増粘剤を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合乳製品デザート、例えば、外相及び内相を含むデザートに関する。本発明はまた、前記乳製品デザートを製造するための方法であって、最終製品において外相と内相が互いに分離している状態を維持しながら、外相及び内相が同じ容器内に逐次的に投入される方法にも関する。
【発明の背景】
【0002】
本明細書における先行技術文献へのいかなる言及も、そのような先行技術が周知であること又は当該分野における共通一般知識の一部を構成することを認めるものとは考えられるべきではない。
【0003】
少なくとも2つの異なる層が1つのポット中で重ね合わせられる複合デザートが公知である。1つの層は、例えば、乳ベースの成分、例えば、カスタードクリームやヨーグルト、フロマージュフレを含んでもよく、別の層は例えばチョコレート、キャラメル又はクリームをベースにしたゼリー状中性乳製品組成物である。第3の層は、ムース又はホイップクリームを含み得る。
【0004】
好ましくは半透明又は透明であり、酸性pHを有するゼリー状組成物中に配置された少なくとも1種の乳ベースの内包物を含む複合デザートが、国際公開第2010/020576号において開示されている。前記デザートは、果汁ミックスを調製し、約70℃に加熱し、カラギーナン及びグアーガムで増粘させ、約30〜40℃に冷却した後、容器内に充填する方法により得られる。乳組成物は70℃で均質化され、発酵させた後、30〜45℃の温度で、ポット中に事前に投入しておいた増粘させたジュースミックス中に注入される。これにより、ゼリー状ジュース中に乳組成物の内包物が形成され、ここで乳組成物の内包物は、最終製品の体積の約10〜30%を占める。
【0005】
欧州特許出願公開第0381806号は、クリーム様内包物を有するゼリー化食品の製造のための方法を記載している。内包物は、液体状態の投入されたゼリーに、凍結状態で加えられる。硬化したゼリーの膜が、内包物の周囲に形成される。その後、容器を密閉して、加熱殺菌プロセスに供する。特開平06−181733号公報は、凍結片を未固化のゲル性製品中に埋め込む類似した方法を開示している。次いでゲル性製品がゲル化に供される。
【0006】
新規な官能特性、例えば、異なる食味及び/又はテクスチャーの組合せを示す、新しい種類の複合デザートが依然として必要とされている。
【0007】
また、外相と内相の両方が濃厚なテクスチャーを有する複合デザートの調製は既存の技術を用いて行うことができるが、工業スケールに都合良く適用可能である方法であって、異なる物理化学的特性(粘度、ゲル強度等)を有する構成成分が、最終製品の調製中に混ざり合わないことを確保しながら、それらの構成成分を組み合わせることを可能にする方法もまた依然として必要とされている。
【0008】
したがって、本発明は、外相及び内相を含む中性乳製品複合デザートであって、例えば、そのテクスチャー、その食味、又はテクスチャー若しくは食味のコントラストに基づいた、革新的な感覚刺激特性をもたらす中性乳製品複合デザートを提供することを目的とする。本発明はまた、内相が外相中に移動することを防止しながら、異なる粘度及びゲル強度を有する外相及び内相を、同じ容器内に異なる温度で同時に投入することを可能にする、この中性乳製品複合デザートを調製するための方法を提供することも目的とする。
【発明の概要】
【0009】
本発明の第1の態様において、中性pHを有する複合乳製品デザートを製造するための方法であって、
第1の組成物及び第2の組成物を調製するステップであり、第1及び第2の組成物が同様の密度を有し、その投入温度における第1の組成物の粘度が、その投入温度における第2の組成物の粘度よりも低いステップと、
50℃〜80℃の温度で、液体状態の第1の組成物を容器内に投入するステップと
第1の組成物の硬化前に、混合せずに、第2の組成物を前記容器内に4℃〜30℃の温度で投入するステップと、
次いで冷却して、前記第2の組成物で構成された内相を少なくとも部分的に囲む外相として、第1の組成物を硬化させるステップと
を含む方法が提供される。
【0010】
第1の組成物は、低粘度の液体状態において容器内に投入される。第2の組成物は、高粘性の液体として投入される。投入温度における、第1及び第2の組成物の粘度及び密度を制御することで、内相と外相が混ざり合わない、複合デザートの所望の構造を得ることが可能となる。換言すれば、内相と外相との間に目に見える分離が存在する。
【0011】
好ましい一実施形態において、第1の組成物、又は外相組成物は、60℃〜75℃の温度で容器内に投入される。
【0012】
別の好ましい実施形態によれば、第2の組成物、又は内相組成物は、4℃〜15℃の温度で、既に第1の組成物が入っている容器内に、第1の組成物の硬化前に投入される。
【0013】
本発明の第2の態様において、外相組成物及び内相組成物が同様の密度を有する、中性pHを有する乳製品複合デザートが提供される。外相はゲル化相であり、内相はカスタードクリーム相であることが好ましい。
【詳細な説明】
【0014】
本発明は、第1の組成物で形成された外相、及び第2の組成物で形成された内相を含む、中性pHを有する乳製品複合デザートを調製するための方法であって、第1及び第2の組成物が、同様の密度を有しながら、異なる粘度、ゲル強度及び官能特性を有する、方法を提供する。
【0015】
本発明による方法は、例えば、第1の組成物及び第2の組成物の温度、密度及び粘度などのパラメータの適切な組合せに依拠する。
【0016】
本明細書で用いられる「含む」、「含んでいる」という用語、及び類似した用語は、排他的又は網羅的な意味で解釈されるべきではない。換言すれば、これらの用語は「が含まれるが、これらに限定されない」を意味することが意図される。
【0017】
本明細書で用いられる「中性pH」は、6.3〜7.2、好ましくは6.5〜7.0の範囲内のpH値を意味する。必要に応じて、通常の手段によって、例えば、酸又は塩基の添加によって、pH調整を実施することができる。中性は、酸っぱいとは知覚されない、最終製品のフレーバーに関することが好ましい。
【0018】
本明細書で用いられる「外相」は、第1の組成物、又は「外相組成物」で形成され、内相を囲む、複合デザートの部分であると理解される。外相は、複合デザートの主要部を構成し、好ましくは最終製品の体積の70%〜80%を構成する。外相は、保管に適した冷蔵温度に一度達した後は、ゲル化相であることが好ましい。
【0019】
外相組成物は、選択された投入温度において、低粘度を有する、すなわち流動状態にある。本発明の好ましい一実施形態において、外相組成物は、投入温度において、好ましくは50℃〜80℃の温度において、より好ましくは60℃〜75℃の温度において、50mPa・s〜200mPa・sの間の粘度を有する。換言すれば、第1の組成物、又は外相組成物は、投入温度において液体である。
【0020】
本明細書で用いられる「内相」は、第2の組成物、又は「内相組成物」で形成され、外相により囲まれる、デザートの部分を意味する。内相は、硬化後の最終製品の頂部から見ることができないことが好ましい。換言すれば、内相は周囲空気と接触しない。容器が透明である場合を除いて、内相を容器の外側から見ることはできない。いくつかの実施形態では、容器が透明である場合、内相を容器の底部から見ることができる。内相は複合デザートの少量部分を構成し、好ましくは最終製品の体積の20%〜30%を構成する。
【0021】
内相組成物は、選択された投入温度において、高粘度を有する、すなわち、流動状態にはなく、このことが、外相組成物中への内相組成物の混合をもたらすことなく、外相組成物が入っている容器内に内相組成物を投入することを可能にする。投入温度において、内相は依然としてポンプ輸送可能(pumpable)であり、これによって容器内に投入することが可能となる。内相組成物は、投入温度において、好ましくは4℃〜30℃の温度において、さらにより好ましくは4℃〜15℃の温度において、15000mPa・s〜30000mPa・sの間の粘度を有することが好ましい。
【0022】
第1の組成物及び第2の組成物の粘度は、ブルックフィールド粘度計を使用することによって測定することができる。第1の組成物(外相)の粘度は、ブルックフィールド粘度計プレートモジュール02によって、50rpmの回転速度で、55〜65℃で測定される。第2の組成物(内相)の粘度は、ブルックフィールド粘度計Tバーモジュール92によって、5rpmの回転速度で、10〜15℃で測定される。
【0023】
「同様の密度」は、密度において15%を超えない差、好ましくは10%を超えない差、より好ましくは、5%を超えない差を有することであると理解される。好ましい一実施形態において、内相組成物及び外相組成物の密度は同一である。内相組成物及び外相組成物は、0.95〜1.10の範囲内、好ましくは1.0〜1.10の範囲内の密度を有することが好ましい。より好ましくは、内相組成物及び外相組成物は、1.05〜1.09の範囲内の密度を有するのがより好ましく、1.06〜1.09の範囲内の密度を有するのがさらに好ましい。この密度範囲は、消費者が興味を持つ、内相と外相の間にテクスチャーの所望のコントラストを有する、低脂肪製品を製造するのに適しているので、興味深い。密度がより低い組成物の調製は、脂肪分の増加、又は水分の増加を伴い得る。このことは、最終製品の適切なテクスチャーを維持するのに適合しないであろう。他方では、密度がより高い組成物の調製は、例えば糖分を増加させることを伴い得るが、これは低カロリープロファイルを有する製品とは不適合である。内相組成物及び外相組成物の密度を増加又は減少させるための他の選択肢が存在するが、これらはそれぞれの相のテクスチャーに望ましくない様式で影響を与える。
【0024】
第1及び第2の組成物の密度は、アントンパール(Anton−Paar)DMA 38密度計によって、15℃〜40℃の間の温度において測定される。密度は、同じ温度における組成物の体積質量と水の体積質量との比である。
【0025】
外相及び内相のそれぞれの密度を制御することが、それによって、追加のプロセスステップなしに、温度を制御することによって、製造ライン上で投入を容易に行うことができる製造プロセスに関して、一層有利となる。
【0026】
外相組成物(第1の組成物)及び内相組成物(第2の組成物)は、乳ベースの成分を含む。「乳ベースの成分」とは、場合により粉乳から再構成された、全乳、脱脂乳若しくは部分脱脂乳、乳クリーム、無水乳脂肪、乳タンパク質粉末、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の構成成分を意味する。乳脂肪が乳ベースの成分の構成成分であってもよく、又は乳ベースの成分に部分的若しくは完全に加えてもよい。
【0027】
外相組成物は、1種又は複数種のゲル化剤、例えば、ガラクトマンナン、カラギーナン、キサンタンガム、ゼラチン、デンプン及び/又はアルジネートなども含有してもよい。
【0028】
好ましい一実施形態において、第1の組成物は、第1の組成物の重量%で表して(水分を含めて)、70%〜90%の乳ベースの成分及び0.5%〜3%のゲル化剤(複数可)を含む。
【0029】
内相組成物は、1種又は複数種の増粘剤、例えば、グアーガム、ローカストビーンガム、ペクチン、キサンタンガム、デンプン及びこれらの混合物などを含有してもよい。
【0030】
好ましい一実施形態において、内相組成物は、第2の組成物の重量%で表して(水分を含む)、60%〜90%の乳ベースの成分及び0.5〜6%の増粘剤(複数可)を含む。
【0031】
外相及び内相組成物はまた、乳製品デザート組成物の通常の原材料、例えば、炭水化物、特にスクロース、フルクトース若しくは天然甘味料抽出物、例えばステビア、及びこれらの混合物;植物性原材料、例えばココア、植物性脂肪(ココアバター、ヤシ油、ヒマワリ油、菜種油;天然又は人工着色料;天然又は人工香味料;甘味料、特に人工甘味料、例えばアセスルファム、シクラミン酸ナトリウム、ネオヘスペリジン及びこれらの混合物を含有してもよい。
【0032】
好ましい一実施形態において、外相及び内相組成物は、好ましくは脂肪分及び/又は糖分が控えめである。特に、最終の複合デザートは、1.2脂肪重量%以下及び/又は3糖重量%以下を含有する。換言すれば、複合デザートは、1.2重量%未満の脂肪、又は3重量%未満の糖、又は1.2重量%未満の脂肪及び3重量%未満の糖を含有する。
【0033】
本発明による方法は、第1の組成物及び第2の組成物を個別に調製することによって行うことができ、例えば以下のステップ、1)低温、例えば10℃〜15℃、及び低速で、全ての原材料を混合するステップ、2)pHを中性値、例えば6.5〜7.0に調整するステップ、並びに3)通常の粉末水和、予熱、均質化、殺菌、冷却及び貯蔵ステップを行うステップを実施することによって、行うことができる。
【0034】
これは第1及び第2の組成物の調製方法のほんの一例にすぎない。第1及び第2の組成物の調製は、より高温においても行い得る。
【0035】
好ましい一実施形態によれば、第1の組成物は50℃〜80℃の温度で貯蔵され、次いで50℃〜80℃、好ましくは60℃〜75℃の範囲内の温度で容器内に投入される。上で説明したように、投入温度において、第1の組成物は液体であり、第1の組成物は低粘度を有する。第1の組成物がそのゲル化温度を超える温度で投入されることが重要である。
【0036】
好ましくは、第2の組成物は4℃〜30℃の温度で貯蔵され、次いで、外相が入っている容器内に、4℃〜30℃、より好ましくは4℃〜15℃の範囲内の温度で、投入される。上で説明したように、投入温度において、第2の組成物は第1の組成物よりも高い粘度を有する。
【0037】
第2の組成物は第1の組成物の粘度とは異なる粘度を有するので、この2つの組成物は混ざり合わず、生じた外相と内相の間に界面を観察することができる。有利には、第2の組成物の低い投入温度並びに冷蔵によって、第1の組成物を第1の組成物の周囲に硬化させ、そして内相及び外相を有するデザートの複合構造がもたらされる。実際に、例えば65℃における第1の組成物中に、第2の組成物が例えば4℃で投入された場合、それぞれの体積に応じて、第1の組成物は55℃に冷却され得る。
【0038】
第1及び第2の組成物の投入後に、容器が冷却されることによって、前記第2の組成物で構成される内相を少なくとも部分的に囲む外相として、第1の組成物が硬化される。好ましくは、第1の組成物、又は外相組成物は、25℃〜45℃の範囲内、好ましくは30℃〜40℃の範囲内の温度で硬化する。硬化温度は第1の組成物中に含有されるゲル化剤(複数可)に依存する。硬化温度は、ゲル化剤(複数可)の既知のパラメータである。
【0039】
より詳細には、第1及び第2の組成物の投入は、同時に又は逐次的に達成することができる。第1及び第2の組成物の同時投入は、単一の投入ステーションにおける2つのディスペンサー及び独特なノズルによって達成することができる。これは共投入(co−dosing)として知られている。共投入は、2つのディスペンサーの同調性及び微細な制御を必要とする。
【0040】
逐次的投入は、それぞれ独立した投入ノズルを有する2つのディスペンサーを使用する。第2の組成物の投入は、第1の組成物の投入の直後に起こる。本プロセスは共投入よりも単純である。
【0041】
第2の組成物が容器内の低過ぎる位置に進入することを回避するため、又は逆に、第2の組成物が容器の頂部で表面に近過ぎる位置を占めることを回避するために、第2の組成物を投入する速さ(力)を制御することが重要である。内相及び外相組成物の密度が同様であるので、充填プロセスは、第2の組成物が投入中に容器の中央に配置されることを確実にするのに十分な速さを第2の組成物に付与する。
【0042】
これを達成するためには、数個のパラメータを考慮し、適合させることができる。投入の速さは、ノズルの直径及び落下高さに依存する。例えば、投入ノズルをカップの上方に固定して設置する(製品とは接触しない)。投入速さを適切に調整した後に、ノズル高を調整して、第2の組成物の落下高さを調整し、第2の組成物を容器の中央に配置する。第1及び第2の組成物が同様の密度を有するので、第2の組成物は配置された位置に留まる。
【0043】
内相が外相中に配置された後は、製造ライン上で投入の直後に起こる避けられない衝撃によって製品が歪まないことを観察することもまた興味深い。内相は周囲の外相の中で安定した懸濁状態を維持する。
【0044】
本発明は、上記方法によって得られる中性pHを有する乳製品複合デザートにさらに関する。乳製品複合デザートは、2つの相、すなわち外相及び内相を含む。
【0045】
好ましくは、本発明の乳製品複合デザートにおいて、外相組成物は乳製品複合デザートの体積の70%〜80%を占め、内相組成物は体積の20%〜30%を占める。体積パーセントは指標となる。
【0046】
方法に関して上に記載したように、外相組成物及び内相は同様の密度を有する。好ましくは、内相組成物及び外相組成物は0.95〜1.10の範囲内の密度を有し、好ましくは1.0〜1.10の範囲内の密度を有する。内相組成物及び外相組成物は、1.05〜1.09の範囲内の密度を有することがより好ましく、1.06〜1.09の範囲内の密度を有することがさらに好ましい。この密度範囲は、消費者が興味を持つ内相と外相とのテクスチャーの所望のコントラストを有する低脂肪製品を製造するのに適しているので、興味深い。
【0047】
方法に関して上に記載したように、外相組成物は、50℃〜80℃の温度で50mPa・s〜200mPa・sの間の粘度を有し、内相組成物は4℃〜30℃の温度で15000mPa・s〜30000mPa・sの間の粘度を有する。第1の組成物及び第2の組成物の粘度は、ブルックフィールド粘度計を使用することにより測定することができる。第1の組成物(外相)の粘度は、ブルックフィールド粘度計プレートモジュール02によって、50rpmの回転速度で、55〜65℃で測定される。第2の組成物(内相)の粘度は、ブルックフィールド粘度計Tバーモジュール92によって、5rpmの回転速度で、10〜15℃で測定される。
【0048】
好ましい一実施形態において、外相組成物は、第1の組成物(又は外相組成物)の重量%で表して、70%〜90%の乳ベースの成分及び0.5%〜3%の増粘及び/又はゲル化剤(複数可)を含む。
【0049】
別の実施形態によれば、内相組成物は、第2の組成物(又は内相組成物)の重量%で表して、60%〜90%の乳ベースの成分及び0.5%〜6%の増粘剤(複数可)を含む。
【0050】
一実施形態では、乳製品複合デザートは、低脂肪、低糖、又は低脂肪且つ低糖である。換言すれば、乳製品複合デザートは、1.2重量%未満の脂肪、又は3重量%未満の糖、又は1.2重量%未満の脂肪及び3重量%未満の糖を含有する。別の実施形態では、乳製品複合デザートは全脂肪である。
【0051】
所望の効果に応じて、容器の高さに対して、外相内の異なる位置に内相を配置してもよい。内相の配置は、例えば、上で説明したように、投入の速さ、ノズルの直径、又は落下高さに依存する。
【0052】
したがって、内相を容器の底部に又は底部付近に配置してもよい。あるいは、内相を外層の表面付近に配置してもよい。さらには、内相を容器の底部と外層の表面との間の中間位置に配置してもよい。内相は、容器の軸から容器の外壁に向かって放射状に延在する層ではない。内相は容器の外壁に達しないことが好ましい。このように、内相は外相内に依然として隠されている。このことが、消費時に、例えばテクスチャー、香り、又は色の違いによって、驚くべき楽しい効果を消費者にもたらす。内相は、全体的な形状が、外相内に埋め込まれたドロップであることが好ましい。
【0053】
容器は、冷蔵乳製品に適した、プラスチック又はガラス製の標準的な容器とすることができる。通常、数個の容器が一緒にパック詰めされる。
【0054】
消費者の期待に関し、本発明は、異なるテクスチャーを組み合わせる、例えば、口の中で溶けるゲルテクスチャーを有する外相とスプーンですくえるテクスチャーを有する内相とを組み合わせることを可能にする、新しい種類の乳製品複合デザートを提供する。例えば、外相を形成する第1の組成物は、チョコレート、バニラ、キャラメル、ピスタチオ、ヘーゼルナッツなどのフレーバーを有する乳ベースのゲルである。例えば、内相を形成する第2の組成物は、チョコレート、バニラ、キャラメル、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、果実、オレンジ、ミント、ベリー類を含む乳ベースのカスタードクリームである。
【0055】
また、本発明による中性乳製品複合デザートは、有利には、「スプーンですくえる」及びきれいに切れる(clean cut)ゲル構造の組合せを提供する。これは、消費者がスプーン、又は食事に用いられる別の道具をデザートに入れた際に、スプーンが外相中に空の空間を残し、それによりデザートの内側が現れ、内相があふれ出得るということを意味する。好ましくは、外相はゲルである一方、内相はカスタードクリームタイプの組成物である。
【0056】
内相及び外相に加えて、乳製品複合デザートは、トッピング、例えば、低脂肪クリーム又はシャンティイ(Chantilly)、フルーツシロップ又はフルーツゼリー、又はキャラメル、ローストナッツなどの菓子類製品の細片を含んでもよい。
【0057】
以下の例を参照して、本発明をさらに説明する。特許請求される通りの本発明が、これらの例によって決して限定されることを意図しないことが理解されよう。
【0058】
実施例1:チョコレート外相及びバニラ内相を有する複合乳製品
【表1】
【0059】
チョコレート外相を10〜20℃で混合し、60℃、50バールで均質化し、130℃で殺菌して、75℃で投入する。バニラ内相は、投入のために15℃に冷却されることを除いて、同じプロセスに従う。
2つの相を、2個の個別の固定したノズルから順に投入する。
2つの組成物の密度は同様であり、1.07に等しい。チョコレート組成物は投入温度において130mPa・sの粘度を有する。バニラクリームカスタードは、投入温度において10,000mPa・sの粘度を有する。
この複合乳製品は75%のチョコレート外相及び25%のバニラ内相を含む。
【0060】
実施例2:ピスタチオ外相及びチョコレート内相を有する複合乳製品
【表2】
【0061】
内相及び外相を実施例1と同様の様式で調製する。2つの相の投入を外相及び内相についてそれぞれ75℃及び15℃で行う。この2つの組成物の密度は同様であり、1.07に等しい。
この複合乳製品は外相に70%のピスタチオ及び内相に30%のバニラを含む。