(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トランスデューサー用途の硬化性オルガノポリシロキサン組成物であって、以下の(あ)から(う)を満たす高誘電性官能基を有する硬化性オルガノポリシロキサン組成物(A+B)と、
付加硬化反応を促進する、硬化性オルガノポリシロキサン組成物のための硬化剤(C)、と、任意に
(D)室温、1kHzにて10以上の比誘電率を有する誘電性無機微粒子、を含む、トランスデューサー用途の硬化性オルガノポリシロキサン組成物:
(あ)高誘電性官能基が、a)ハロゲン原子及びハロゲン原子含有基、またはb)窒素原子含有基であって、トランスデューサー用途の硬化性オルガノポリシロキサン組成物中の全オルガノポリシロキサン成分に対し、1重量%以上〜80重量%以下の範囲の量で含まれ;
(い)トランスデューサー用途の硬化性オルガノポリシロキサン組成物中の全オルガノポリシロキサン成分に対し、
一般式MaMRbDcDRdTeTRfQg(一般式中、Mはトリオルガノシロキシ単位を表し、Dはジオルガノシロキシ単位を表し、Tはモノオルガノシロキシ単位を表し、QはSiO4/2によりシロキシ単位を表し、MR、DR、及びTRは、付加反応が可能な置換基Rであるケイ素原子結合水素原子を有するシロキシ単位である)により表される反応性オルガノポリシロキサンであって(a+c)/(b+d+e+f+g)の値が3未満であるものを、0.1重量%以上〜25重量%以下の範囲の量、及び
付加反応可能な基である脂肪族不飽和結合含有基を分子の両末端のみに有する反応性直鎖型オルガノポリシロキサンを、75重量%以上〜99.9重量%以下の範囲の量、で含有し;
ここで同時に
(う)同一分子内に、ケイ素原子結合水素原子を少なくとも2つ有し、付加硬化反応が可能な2つの基の間の平均分子量が10,000未満である反応性オルガノポリシロキサン(S)、及び
同一分子内に、脂肪族不飽和結合含有基を少なくとも2つ有し、付加硬化反応が可能な2つの基の間の平均分子量が10,000以上〜150,000以下である反応性オルガノポリシロキサン(L)を、(S):(L)の配合比(重量比)が1:99〜40:60の範囲で含有すること。
トランスデューサー用途の硬化性オルガノポリシロキサン組成物であって、少なくとも1つの硬化性官能基及び高誘電性官能基を有する有機化合物(Z1)または前記組成物(A+B)に混和性である高誘電性官能基を有する有機化合物(Z2)を更に含む、請求項1に記載のトランスデューサー用途の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
少なくとも1つの硬化性官能基及び高誘電性官能基を有する有機化合物(Z1)を含み、高誘電性官能基が共有結合によりケイ素原子に結合している構造を有する硬化物を与える、請求項2に記載のトランスデューサー用途の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
前記硬化性オルガノポリシロキサン組成物の全シロキサン成分に対する前記高誘電性官能基の含有量が、10〜50質量%の範囲である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のトランスデューサー用途の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
前記誘電性無機微粒子(D)が、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸ジルコン酸鉛、及びチタン酸バリウム、並びにチタン酸バリウムのバリウム及びチタン部分がカルシウム又はストロンチウムを含めたアルカリ土類金属により部分的に置き換えられている金属酸化物複合体、ジルコニウム、又はイットリウム、ネオジム、サマリウム、又はジスプロシウムを含めた希土類金属からなる群から選択される1種以上の無機微粒子である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のトランスデューサー用途の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
前記誘電性無機微粒子(D)とは異なる(E)導電性無機粒子、誘電性無機粒子、及び補強性無機粒子からなる群から選択される少なくとも1種の無機粒子を更に含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のトランスデューサー用途の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
2軸押出し機、2軸混練機、及び一枚羽根式押出機からなる群から選択される少なくとも1つの機械的な手段を使用して、硬化性オルガノポリシロキサン組成物を構成する少なくとも2つの成分を混練する工程を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載のトランスデューサー用途の硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法。
トランスデューサー用途の硬化性オルガノポリシロキサン組成物であって、以下の(あ)から(う)を満たす高誘電性官能基を有する硬化性オルガノポリシロキサン組成物(A+B)と
ヒドロシリル化反応を促進する硬化剤(C)、と、任意に
(D)室温、1kHzにて10以上の比誘電率を有する誘電性無機微粒子、を含む、トランスデューサー用途の硬化性オルガノポリシロキサン組成物:
(あ)高誘電性官能基が、a)トリフルオロプロピル基、またはb)シアノ基であって、硬化性オルガノポリシロキサン組成物中の全オルガノポリシロキサン成分に対し、1重量%以上〜80重量%以下の範囲の量で含まれ;
(い)硬化性オルガノポリシロキサン組成物中の全オルガノポリシロキサン成分に対し、
トリフルオロプロピル基(又はシアノ基)とケイ素原子に結合した水素原子を同一分子内に3つ有するシランまたはテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンを、0.1重量%以上〜25重量%以下の範囲の量、及び
アルケニル基を分子の両末端のみに有し、トリフルオロプロピル基を有する反応性直鎖型オルガノポリシロキサンを、75重量%以上〜99.9重量%以下の範囲の量、で含有し;
ここで同時に
(う)同一分子内に、ケイ素原子結合水素原子を少なくとも2つ有し、付加硬化反応が可能な2つの基の間の平均分子量が10,000未満である反応性オルガノポリシロキサン(S)、及び
同一分子内に、脂肪族不飽和結合含有基を少なくとも2つ有し、付加硬化反応が可能な2つの基の間の平均分子量が10,000以上〜150,000以下である反応性オルガノポリシロキサン(L)を、(S):(L)の配合比(重量比)が1:99〜40:60の範囲で含有すること。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の必須成分を以下に詳細に説明する。
【0012】
硬化系に特に制限はなく、最初は未硬化である原材料から、特に流動性の原材料から硬化生成物を形成可能なものであるならば、任意の硬化反応系を本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物に使用することができる。一般的に、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、縮合硬化系又は付加硬化系により硬化される。しかしながら、組成物の硬化系には、過酸化物による硬化(ラジカル誘導硬化)系又は高エネルギー線(例えば、紫外線)硬化系を使用し、かつ利用することができる。更に、溶液状態における架橋構造の形成による、及び溶媒除去による乾燥による硬化物の形成方法を使用することもできる。
【0013】
好ましくは、硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、反応性オルガノポリシロキサンを含み、組成物は、[特徴1]〜[特徴3]、及び場合により[特徴4]〜[特徴5]を満たす。
【0014】
[反応性オルガノポリシロキサン]
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、一般式M
aM
RbD
cD
RdT
eT
RfQ
gにより表される反応性オルガノポリシロキサンである。上記一般式において、Mはトリオルガノシロキシ基を表し、Dはジオルガノシロキシ基を表し、Tはモノオルガノシロキシ基を表し、及びQはSiO
4/2を表すシロキシ単位である。M
R、D
R、及びT
Rはシロキシ単位であり、それぞれM、D、及びTにより表されるシロキシ単位のR置換基のうちの1つは、縮合反応、付加反応、過酸化物反応、又は光反応において硬化反応可能な置換基であるものの、この基は、好ましくは付加反応可能な基である。反応速度の早さ及び副反応の少なさという点を考慮すると、硬化反応可能な置換基は、これらの基のなかでも好ましくは、ヒドロシリル化反応において反応性の基、すなわち、ケイ素原子結合水素原子又は脂肪族不飽和結合含有基(炭素原子2〜20個のアルケニル基又は同様物など)である。更に、前述の反応性オルガノポリシロキサンの非R置換基は、付加反応において関与しない好ましい基であり、あるいは例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、又は同様物などのアルキル基、フェニル基、o−トリル基、p−トリル基、ナフチル基、ハロゲン化フェニル基、又は同様物などのアリール基、アルコキシ基、あるいは同様物などの高誘電性官能基である。このような基のなかでも、経済的な観点からメチル基が好ましい。反応性オルガノポリシロキサンの具体例としては、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端がジメチルヒドロジェンシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサンコポリマー、メチルシロキサン−ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、メチルシロキサン−ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサンコポリマー、ジメチルヒドロジェン官能化MQ樹脂、ジメチルビニル官能化MQ樹脂、又は同様物が挙げられる。
【0015】
前述の反応性オルガノポリシロキサンの数平均分子量(Mw)は300〜10,000の範囲である。更に、直径20mmのコーンプレートを取り付けたレオメーターを使用し、25℃にて、10(s
−1)のせん断速度下で測定される粘度に特に制限はないものの、この粘度は、好ましくは1〜10,000mPa・sの範囲であり、特に好ましくは5〜5,000mPa・sの範囲である。
【0016】
[特徴1]:反応性オルガノポリシロキサン含量
硬化性オルガノポリシロキサン組成物中のシロキサン成分の総量に対し、前述の反応性オルガノポリシロキサンであって、(a+c)/(b+d+e+f+g)が3未満の値となるものの割合が0.1重量%未満であるとき、ポリシロキサン成分中の架橋点数は非常に少なく、したがって、硬化反応後の機械的強度及び絶縁破壊強度は不十分である。反対に、割合を25重量%超とするのは、架橋部分の数が過剰となり、ひいては硬化後の弾性が高くなり、かつ破断伸長点が低くなることから望ましくない。この割合は、好ましくは10重量%以下である。
【0017】
[特徴2]:分子の両末端のみに硬化反応可能な基を有する反応性オルガノポリシロキサン
分子鎖の両末端のみに硬化反応可能な基を有する反応性オルガノポリシロキサンについて、以下に説明する。本明細書において、用語「硬化反応可能な基」は、縮合反応、付加反応、過酸化物反応、又は光反応において基として利用することのできる基を意味する。しかしながら、上記と同様の理由から、この基は好ましくは付加反応可能なものである。このような付加反応可能な基のなかでも、この基は好ましくはヒドロシリル化反応において活性であり、すなわち、ケイ素原子結合水素原子含有基又は脂肪族不飽和結合含有基(炭素原子2〜20個のアルケニル基、又は同様物など)である。反応性オルガノポリシロキサンの具体例としては、分子鎖両末端がジメチルヒドロジェンシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン及び分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサンが挙げられる。材料特性に対する更なる適合性のため(例えば、機械特性、絶縁体特性、耐熱性、又は同様の特性)、このようなポリマーの部分のメチル基をエチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、又はフェニル基により置き換えることもできる。
【0018】
硬化反応可能な基を分子鎖の両末端のみに有する反応性オルガノポリシロキサンの数平均分子量(Mw)は、300〜100,000の範囲である。更に、直径20mmのコーンプレートを取り付けたレオメーターを使用し、25℃にて、10(s
−1)のせん断速度下で測定される粘度に特に制限はないものの、この粘度は、好ましくは1〜100,000mPa・sの範囲であり、特に好ましくは5〜10,000mPa・sの範囲である。
【0019】
破断点伸びが達成されなくなる恐れがあることから、硬化性オルガノポリシロキサン組成物中の総シロキサン成分に対する、硬化反応可能な基を分子鎖の両末端のみに有するこの反応性オルガノポリシロキサンの割合を75重量%未満にすることは不適当である。反対に、この値が99.9重量%を超過すると、架橋反応に関与する分子の割合は低くなり、硬化後の機械強度及び絶縁破壊強度は不十分なものとなる。したがって、99.9重量%を超過することは不適当である。
【0020】
[特徴3]:2種類の反応性オルガノポリシロキサン(S)及び(L)の使用
2つの硬化反応可能な基の間の平均分子量は、反応性オルガノポリシロキサン(S)については10,000未満であり、この反応性オルガノポリシロキサンは、硬化反応可能な基を単一分子内に少なくとも2つ有する反応性オルガノポリシロキサンであり、本発明で使用される。2つの硬化反応可能な基の間の平均分子量は、反応性オルガノポリシロキサン(L)については10,000以上150,000以下であり、この反応性オルガノポリシロキサンは、硬化反応可能な基を単一分子内に少なくとも2つ有する反応性オルガノポリシロキサンであり、本発明で使用される。これらの反応性オルガノポリシロキサンは、それぞれ、短鎖の非反応性ポリマー部分及び長鎖の非反応性ポリマー部分を分子中に含有している。本明細書において、2つの架橋反応可能な基の間の平均分子量は、分子鎖の両末端のみに反応性官能基を有するオルガノポリシロキサン鎖タイプについては非反応性ポリシロキサン部分(両末端にシロキシ単位を不含有)の分子量として定義される。架橋反応可能な複数の基間の分子量の場合、最長部分の分子量である。
【0021】
成分(S)及び成分(L)を、反応性オルガノポリシロキサン原材料として1:99〜40:60の範囲で一緒に使用するとき、硬化反応により得られるシリコーンエラストマーを構成するシリコーン鎖部分に鎖長の異なる部分を導入することが可能である。この手法により、得られるシリコーンポリマーの永久ひずみを低減することができ、かつ機械エネルギー変換率の損失を低減することが可能である。特に、本発明のシリコーンエラストマーをトランスデューサーの誘電体層に使用するとき、成分(S)及び成分(L)の併用は、エネルギー変換効率を増大させるという実用面での利点を有する。
【0022】
上記の通り、これらの成分の硬化反応可能な基として、縮合反応、付加反応、過酸化物反応、又は光反応可能な基を使用することが可能である。しかしながら、好ましくは付加反応可能な基である。この基は、このような付加反応可能な基のなかでも好ましくはヒドロシリル化反応において活性な基であり、すなわち、ケイ素原子結合水素原子又は脂肪族不飽和結合含有基(炭素原子2〜20個のアルケニル基、又は同様物など)である。反応性オルガノポリシロキサン(S)及び(L)の具体例は、M
aM
RbD
cD
RdT
eT
RfQ
gにより表される前述の反応性オルガノポリシロキサン、及び硬化反応可能な基を分子鎖の両末端のみに有する前述の反応性オルガノポリシロキサンが挙げられる。上記と同様の理由のため、メチル基部分はエチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、又はフェニル基により置き換えてもよい。
【0023】
成分(S)と下記成分(L)との配合比(重量含量比)S:Lの値が、1:99〜40:60の範囲から逸脱することは、得られる硬化物品の、高破断伸び、高機械的強度、高絶縁破壊強度、及び低弾性率などの特徴のうち、少なくとも1種類の特徴を満たさなくなることから、不適当である。
【0024】
ポリシロキサン中、ケイ素原子に結合した不飽和炭化水素基(Vi)に対する、ケイ素原子の結合した水素原子の配合比(モル比)は、好ましくは0.5〜3.0の範囲である。この配合比が前述の範囲から逸脱すると、ヒドロシリル化反応により硬化した後に残存する残留官能基は、硬化物品の材料物理特性に悪影響を与えうる。
【0025】
[特徴4]硬化反応後の単位重量当たりの架橋点数
更に、本発明のトランスデューサーのための硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、下記(A)及び(B)を含む。反応性ポリシロキサンの硬化反応後の単位重量あたりの架橋点数は、以下に掲載される計算式により定義され、この式は、成分(A)及び成分(B)の各成分の数平均分子量、下記の一般式a
i〜g
i、及びa
j〜g
j中の値、及び組成物中の各成分の含有量に基づいている。この反応性ポリシロキサンの硬化反応後の単位重量あたりの架橋点数は、好ましくは、0.5〜20μmol/gの範囲であり、更に好ましくは0.5〜10μmol/gの範囲である。
【0026】
(A)300〜15,000の範囲の数平均分子量(Mw)を有し、かつケイ素に結合した水素原子を同一分子内に平均して少なくとも2つ有する、一般式M
aiM
HbiD
ciD
HdiT
eiT
HfiQ
giにより表される1つ又は複数の成分を含むオルガノハイドロジェンシロキサン。
【0027】
(B)300〜100,000の範囲の数平均分子量(Mw)を有し、かつアルケニル基を同一分子内に平均して少なくとも2つ有する、一般式M
ajM
VibiD
ciD
VidjT
ejT
VifjQ
gjにより表される1つ又は複数の成分を含むオルガノポリシロキサン。前述の一般式に関し、Mは、R
3SiO
1/2を表し、Dは、R
2SiO
2/2を表し、Tは、RSiO
3/2を表し、かつQは、SiO
4/2により表されるシロキサン単位であり、Rは、脂肪族炭素−炭素二重結合を有さない一価の有機基であり、M
H、D
H、及びT
Hは、シロキサン単位であり、それぞれM、D、及びTにより表されるシロキサン単位のうちのR基の1つが、ケイ素原子の結合した水素原子により置き換えられたものであり、M
Vi、D
Vi、及びT
Viはシロキサン単位であり、それぞれM、D、及びTにより表されるシロキサン単位のうちのR基の1つが、炭素原子2〜20個のアルケニル基により置き換えられたものであり、aは単分子当たりの平均数であり、bは単分子当たりの平均数であり、cは単分子当たりの平均数であり、dは単分子当たりの平均数であり、eは単分子当たりの平均数であり、fは単分子当たりの平均数であり、及びgは単分子当たりの平均数であり、iは成分(A)におけるi番目の成分を表し、かつjは成分(B)におけるj番目の成分を表す。
【0028】
前述の単位重量当たりの架橋点数は、以下に記載の(i)末端基間反応の確率指数、(ii)反応組成物の架橋点数指数、(iii)反応組成物中の原材料のモル数指数、及び(iv)反応組成物の分子量指数、を求める各式により定義された指数値を用い算出される。
【0030】
本明細書において、前述の指数のそれぞれを定義する式を以下に掲載する:
(i)末端基間反応の確率指数は、以下の式により表される。
【0032】
(ii)反応組成物の架橋点数指数は、前述の末端基間反応の確率指数に基づき、次式により表される)。
【0034】
しかしながら、反応組成物の架橋点数の指数の算出において、(a+c)/(b+d+e+f+g)の値が分子鎖中の反応基間のオルガノシロキサン単位の平均数が3未満である成分は、単一の架橋点として作用するものとして処理され、このような成分に関し、計算は(b+d)=0、及び(e+f+g)=1であるものとして計算される。
【0035】
(iii)反応組成物における原材料モル数指数は、次式により表される。
【0037】
(iv)反応組成物の分子量指数は次式により表される。
【0039】
本明細書において、α
iは、成分(A)のi番目の成分の配合量α
wi(重量による量)を、成分(A)に含有されるケイ素原子の結合した水素原子のH(モル)数と、成分(B)に含有されるアルケニル基の数V(モル)との比(γ=H(モル)/V(モル))により除した値であり、すなわち、α
i=α
wi/γであり、β
jは成分(B)のj番目の成分の配合量(重量による量)を表し、M
wiは、成分(A)のi番目の成分の数平均分子量を表し、かつM
wj、は成分(B)のj番目の成分の数平均分子量を表す。
【0040】
[特徴5]硬化反応後の架橋点間の分子量
更に、硬化反応後の反応性ポリシロキサンの架橋点間の分子量は成分(A)及び成分(B)の各成分の数平均分子量、次式のa
i〜g
i及びa
j〜g
jの値、及び組成物中の各成分の量、に基づいて次式により定義されるものであり、硬化反応後の反応性ポリシロキサンの架橋点間の分子量は、好ましくは100,000〜2,000,000の範囲であり、更に好ましくは200,000〜2,000,000の範囲である:
(A)は、300〜15,000の範囲の数平均分子量(Mw)を有し、かつケイ素結合した水素原子を同一分子内に平均して少なくとも2つ有する、一般式M
aiM
HbiD
ciD
HdiT
eiT
HfiQ
giにより表される1つ又は複数の成分を含むオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
(B)は、300〜100,000の範囲の数平均分子量(Mw)を有し、かつアルケニル基を同一分子内に平均して少なくとも2つ有する、一般式M
ajM
VibiD
ciD
VidjT
ejT
VifjQ
gjにより表される1つ又は複数の成分を含むオルガノポリシロキサンである。
(C)は、前述の成分(A)及び成分(B)間の付加反応のための触媒である。
【0041】
前述の一般式に関し、MはR
3SiO
1/2を表し、DはR
2SiO
2/2を表し、TはRSiO
3/2を表し、かつQはSiO
4/2により表されるシロキサン単位であり、Rは脂肪族炭素−炭素二重結合を有さない一価の有機基であり、M
H、D
H、及びT
Hはシロキサン単位であり、それぞれM、D、及びTにより表されるシロキサン単位のうちのR基の1つが、ケイ素原子の結合した水素原子により置き換えられたものであり、M
Vi、D
Vi、及びT
Viはシロキサン単位であり、それぞれM、D、及びTにより表されるシロキサン単位のうちのR基の1つが、炭素原子2〜20個のアルケニル基により置き換えられたものであり、aは単分子当たりの平均数であり、bは単分子当たりの平均数であり、cは単分子当たりの平均数であり、dは単分子当たりの平均数であり、eは単分子当たりの平均数であり、fは単分子当たりの平均数であり、及びgは単分子当たりの平均数であり、iは成分(A)におけるi番目の成分を表し、かつjは成分(B)におけるj番目の成分を表す。
【0042】
前述の架橋点間の分子量は、以下に示される、(i)末端基間反応の確率指数、(ii’)反応組成物のオルガノシロキサン鎖数指数、(iii)反応組成物中の原材料モル数指数、及び(iv)反応組成物の分子量指数、のための計算式に基づき算出される指数値に基づくものである:
【0044】
本明細書において、前述の指数のそれぞれを定義する式を以下に掲載する:
(i)末端基間反応の確率指数は、以下の式により表される。
【0046】
(ii’)反応組成物のオルガノシロキサン鎖数指数は、次式により表される。
【0048】
なお、反応組成物の架橋点数の指数の算出において、(a+c)/(b+d+e+f+g)の値が分子鎖中の反応基間のオルガノシロキサン単位の平均数が3未満であることを表す成分は、単一の架橋点として作用するものとして考慮され、このような成分は、(d+2e+2f+3g+1)=0であるものと仮定して計算される。
【0049】
(iii)反応組成物における原材料モル数指数は、次式により表される。
【0051】
(iv)反応組成物の分子量指数は次式により表される。
【0053】
前述の式中、α
iは、成分(A)のi番目の成分の配合量α
wi(重量による量)を、成分(A)に含有されるケイ素原子の結合した水素原子のH(モル)数と、成分(B)に含有されるアルケニル基の数V(モル)との比(γ=H(モル)/V(モル))により除した値であり、すなわち、α
i=α
wi/γであり、β
jは成分(B)のj番目の成分の配合量(重量による量)を表し、M
wiは、成分(A)のi番目の成分の数平均分子量を表し、かつM
wjは成分(B)のj番目の成分の数平均分子量を表す。前述の数平均分子量(Mw)は、核磁気共鳴(NMR)による測定値により決定される値である。
【0054】
本明細書に記載の式に基づき、架橋点数及びオルガノポリシロキサンの硬化後の架橋点間の単位重量当たりの分子量を特定の範囲内に調節するよう分子設計することにより、得られるシリコーンエラストマー硬化物品が、トランスデューサーの部材として好適な電気特性及び機械的特性を有するよう調節することが可能である。このような分子設計により、優れた特性を有する誘電体材料、トランスデューサーの部材のための誘電体材料、特に誘電性エラストマー、及び更に、特にトランスデューサーの部材として使用するための材料として好適な、シリコーンエラストマー硬化物品及びシリコーンエラストマーを製造するための、付加硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得ることが可能である。
【0055】
[硬化剤(C)]
本発明のトランスデューサーのための硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、必須原材料として硬化剤(C)を含む。
【0056】
成分(C)は、好ましくは、公知のヒドロシリル化反応触媒である。成分(C)はヒドロシリル化反応を促進し得る物質であるならば、本発明に使用される成分(C)に特に制限はない。この成分(C)は、白金系触媒、ロジウム系触媒、及びパラジウム系触媒により例示される。高触媒活性のため、特に白金族元素触媒及び白金族元素化合物触媒が成分(C)として言及される。具体的制限するものではないが、白金系触媒の例は、白金微粉、白金黒、塩化白金酸、アルコール改質塩化白金酸、オレフィン−白金錯体、白金−カルボニル錯体、例えば、白金ビス−アセト酢酸)、白金ビス(アセチルアセタート)、又は同様物、塩化白金酸−アルケニルシロキサン錯体、例えば、塩化白金酸−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、塩化白金酸−ビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン錯体、又は同様物、白金−アルケニルシロキサン錯体、例えば、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金−テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン錯体、又は同様物、並びに塩化白金酸及びアセチレンアルコール間の錯体である。ヒドロシリル化反応に対し高触媒活性であることに起因し、成分(C)の推奨例は、白金−アルケニルシロキサン錯体であり、特に白金1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体である。
【0057】
これに加えて、白金−アルケニルシロキサン錯体の安定性の更なる向上のため、これらの白金−アルケニルシロキサン錯体は、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジアリル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,3−ジメチル−1,3−ジフェニルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、若しくは同様物などのアルケニルシロキサンオリゴマー、又はジメチルシロキサンオリゴマー、又は同様物などのオルガノシロキサンオリゴマーに溶解させることもできる。具体的には、アルケニルシロキサンオリゴマーに溶解させた白金−アルケニルシロキサン錯体の使用が好ましい。
【0058】
成分(C)の使用量は、特に制限されるものではなく、本組成物のポリシロキサン成分の付加反応を促進可能な任意の量であってよい。ポリシロキサン成分の全重量に対し、成分(C)(例えば、白金)中に含有される白金族金属元素の濃度は、通常、0.01〜500ppmの範囲であり、好ましくは0.1〜100ppmの範囲であり、更に好ましくは0.1〜50ppmの範囲である。
【0059】
[誘電性無機微粒子(D)]
本発明のトランスデューサーのための硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、必須原材料として、前述の特性を有する硬化性オルガノポリシロキサン組成物、硬化剤、及び(D)室温、1kHzにて10以上の比誘電率を有する誘電体粒子、を含有するものとして特徴付けられる。前述の硬化性オルガノポリシロキサンを含む硬化物品中に誘電性無機微粒子を支持することにより、トランスデューサーに必要とされる物理特性及び電気特性硬化物品の両方を満たす。
【0060】
例えば、誘電性無機微粒子は、以下に掲載される式(D1)により表される金属酸化物(D1)(本明細書において、以降に場合により「金属酸化物(D1)」として略記される)の中から選択され得る:
M
anaM
bnbO
nc(D1)
(式中、
M
aは、周期表の第2族の金属であり、
M
bは、周期表の第4族の金属であり、
naは、0.9〜1.1の範囲の数であり、
nbは、0.9〜1.1の範囲の数であり、
ncは、2.8〜3.2の範囲の数である)。
【0061】
金属酸化物(D1)における、周期表の第2族の金属M
aの好ましい例としては、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、及びバリウム(Ba)が挙げられる。チタン(Ti)は、周期表の第4族の金属M
bの好ましい例として言及される。式(X1)により表される金属酸化物の粒子において、M
a及びM
bは、それぞれ単一の原子であってもよく、又は2種以上の原子であってもよい。
【0062】
金属酸化物(D1)の具体例としては、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、及びチタン酸ストロンチウムが挙げられる。
【0063】
更に、例えば、誘電性無機微粒子は、
M
anaM
b’nb’O
nc(D2)
により表される金属酸化物の中から選択され得る(本明細書において、以降に「金属酸化物(D2)」として言及される)(式中、
M
aは、周期表の第2族の金属であり、
M
b’は、周期表の第5族の金属であり、
naは、0.9〜1.1の範囲の数であり、
nb’は、0.9〜1.1の範囲の数であり、
ncは、2.8〜3.2の範囲の数である)。
【0064】
金属酸化物(D2)における、周期表の第2族の金属M
aの好ましい例としては、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、及びバリウム(Ba)が挙げられる。周期表の第5族の金属原子M
b’の好ましい例としては、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、ジルコニウム(Zr)、及びインジウム(In)が挙げられる。式(X2)により表される金属酸化物の粒子において、M
a及びM
b’は、それぞれ単一の原子であってもよく、又は2種以上の原子であってもよい。
【0065】
金属酸化物(D2)の具体例としては、すず酸化マグネシウム、すず酸カルシウム、すず酸ストロンチウム、すず酸バリウム、アンチモン酸マグネシウム、アンチモン酸カルシウム、アンチモン酸ストロンチウム、アンチモン酸バリウム、ジルコン酸マグネシウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸ストロンチウム、ジルコン酸バリウム、インジウム酸マグネシウム、インジウム酸カルシウム、インジウム酸ストロンチウム、インジウム酸バリウム、又は同様物が挙げられる。
【0066】
更に、このような金属酸化物粒子と組み合わせて、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸亜鉛、チタン酸鉛、酸化チタン、又は同様物など(特に、前述のもの以外の酸化チタン複合体酸化物)などのその他の金属酸化物粒子の使用が許容され得る。更に、これらの例とは異なる金属元素を含む固溶体を誘電性無機微粒子(D)として使用することもできる。この場合、その他の金属原子はLa(ランタン)、Bi(ビスマス)、Nd(ネオジム)、Pr(プラセオジム)、又は同様物により例示される。
【0067】
このような無機微粒子のなかでも、誘電性無機微粒子(D)の好ましい例としては、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸ジルコン酸鉛、及びチタン酸バリウム、並びにチタン酸バリウムのバリウム及びチタン部分が、カルシウム又はストロンチウムなどのアルカリ土類金属により部分的に置き換えられている金属酸化物複合体、ジルコニウム、又は希土類金属、例えば、イットリウム、ネオジム、サマリウム、又はジスプロシウムからなる群から選択される1種以上の無機微粒子が挙げられる。酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、並びにチタン酸バリウム及びジルコン酸バリウムのバリウム部分がカルシウムにより部分的に置き換えられている金属酸化物複合体がより好ましく、並びに酸化チタン及びチタン酸バリウムが最も好ましい。
【0068】
誘電性無機微粒子(D)の形態には特に制限はなく、球状、平板状、針状、繊維状、又は同様の形態などの任意のものを使用できる。無機微粒子の粒径には特に制限はなく、例えば、球状微粒子がレーザー回折法により測定される場合、体積平均粒子径は、例えば0.01〜1.0μmの範囲であり得る。成形加工性及び被膜形成能の観点から、平均粒子径は、好ましくは0.1〜5μmの範囲である。無機微粒子が、平板状、針様、繊維状、又は同様の形態の不均質な微粒子である場合、このような微粒子のアスペクト比には特に制限はないものの、アスペクト比は通常は5以上であり得る。
【0069】
誘電性無機微粒子の粒径分布には特に制限はなく、誘電性無機微粒子は単分散系であってよく、あるいはより高密度に充填することにより、微粒子間の間隙部分を低減させることにより機械強度を向上させるよう、粒径を分散させることも可能である。粒径分布の指標として、レーザー光散乱法により測定される累積粒径分布曲線のうち累積面積10%(D
10)の粒径に対する累積面積90%(D
90)の粒径の比(D
90/D
10)は、好ましくは2以上である。更に、粒径の分布状態(粒径及び粒子濃度の相関性)には何ら制限はなく、いわゆるプラトー形状の分布をもたせることも可能であり、又は多峰性、すなわち、二峰性(すなわち、2箇所に山状の分布を有する)、三峰性等の粒径分布をもたせることも可能である。
【0070】
本発明に使用する誘電性無機微粒子について上記されるものなどの粒径分布をもたらすためには、例えば、異なる平均径若しくは粒径分布を有する2種以上の微粒子を併用すること、篩分け若しくは同様の操作により得られた粒径部分の粒子をブレンドして所望の粒径をもたらすこと、又は同様の操作などの方法を採用してもよい。
【0071】
更に、これらの誘電性無機微粒子は、以下に記載の様々な種類の表面処理剤を用い処理することもできる。
【0072】
得られる硬化物品の機械特性及び誘電体特性を考慮すると、本発明のトランスデューサーのための硬化性オルガノポリシロキサン組成物中の誘電性無機微粒子の配合量は、組成物の全体積に対し10%以上であってよく、好ましくは15%以上であり、更に好ましくは20%以上である。更に、この配合量は、組成物の全体積に対し好ましくは80%以下であり、更に好ましくは70%以下である。
【0073】
本発明のトランスデューサーのための硬化性オルガノポリシロキサン組成物の好ましい実施形態として、必要に応じ原材料:(A1)分子の両末端に、ケイ素原子を結合した水素原子を有し、かつ0.01〜1.0%の重量含量で水素原子を有する、少なくとも1種のオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(A2)単一分子内に、少なくとも3個のケイ素原子を結合した水素原子を有し、かつ0.03〜2.0%の重量含量で水素原子を有する少なくとも1種のオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(B)単一分子内に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ0.05〜0.5重量%のアルケニル基を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサン、(C1)ヒドロシリル化反応触媒、及び(D)室温、1kHzにて10以上の比誘電率を有する誘電性無機微粒子、を含む組成物が言及される。
【0074】
本明細書において、(A1)は、好ましくは分子鎖両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサンである。好ましい(A2)の例としては、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー及び分子鎖両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサンコポリマーが挙げられる。一方、成分(B)の例は、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサンである。機械特性、誘電体特性、耐熱性、又は同様の特性などの、トランスデューサー材料特性を更に最適化する目的で、ポリマーのメチル基の部分をエチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、又はフェニル基により置き換えることもできる。
【0075】
水素原子の重量含量及びアルケニル基の重量含量が前述の範囲内であるならば、(A1)、(A2)、及び(B)の分子量には特に制限はない。しかしながら、シロキサン単位の数は好ましくは5〜1,500である。
【0076】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、トランスデューサーのために使用される硬化性オルガノポリシロキサン組成物であり、及び本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、さらに、以下に記載の特徴を備えるものであってよい。
【0077】
[その他の無機粒子(E)]
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、導電性無機粒子、誘電性無機粒子、及び補強性無機粒子からなる群から選択される1種以上の無機粒子(E)を更に含み得る。
【0078】
導電性無機粒子が導電率を付与するならば、利用する導電性無機粒子には特に制限はなく、かつ粒子状、フレーク状、及び繊維状(ウィスカーを含む)などの任意の形態のものを使用できる。導電性無機粒子の具体例としては、導電性カーボンブラック、グラファイト、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、フラーレン、金属内包フラーレン、カーボンナノファイバー、気相成長モノ長(mono-length)炭素(VGCF)、カーボンマイクロコイル、又は同様物などの導電性炭素、並びに白金、金、銀、銅、ニッケル、スズ、亜鉛、鉄、アルミニウム、又は同様の粉末類などの金属粉末、同様に、アンチモンドープ酸化スズ、リンドープ酸化スズ、酸化スズ/アンチモンを用い表面処理した針状酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化アンチモン、アンチモン酸亜鉛、炭素、及び酸化スズにより表面処理されたグラファイト又は炭素ウィスカー、又は同様物などの被覆顔料、少なくとも1種の導電性酸素、例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、リンドープ酸化スズ、及びリンドープ酸化ニッケルなどにより被覆された顔料、導電性を有しかつ酸化チタン粒子の表面に酸化スズ及びリンを有する顔料、以下に記載の様々な種類の表面処理剤を使用して場合により表面処理されたこれらの導電性無機粒子が挙げられる。このような導電性無機粒子は、1種として、又は2種以上の組み合わせとして使用することもできる。
【0079】
更に、導電性無機微粒子は、ガラス繊維、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、カーボンファイバー、若しくは同様の繊維などの繊維、ホウ酸アルミニウムウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、若しくは同様物などの針様補強材料、又は金属又は同様物などの導電性物質により表面被覆されたガラスビーズ、タルク、雲母、グラファイト、ウォラストナイト、ドロマイト、若しくは同様物などの無機充填材料、であってよい。
【0080】
導電性無機粒子を組成物に配合することにより、ポリシロキサン硬化物品の比誘電率を増大させることができる。このような導電性無機粒子の配合量は、好ましくは硬化性オルガノポリシロキサン組成物に対し0.01〜10重量%の範囲であり、更に好ましくは0.05〜5重量%の範囲である。配合量が前述の好ましい範囲から逸脱するとき、配合効果は得られず、又は硬化物品の絶縁破壊強度は低下し得る。
【0081】
本発明で利用される誘電性無機粒子は、任意の一般的な公知の誘電無機材料であってよい。すなわち、10
10〜10
19Ohm・cmの体積抵抗値を有する、任意の無機材料の粒子を、制限なく使用することができ、及び粒子状、薄片状、及び繊維状(ウィスカーを含む)などの任意の形態を使用できる。好ましい具体例としては、球状粒子、平板状粒子、及びセラミック繊維、アルミナ、雲母及びタルク又は同様物などの金属珪酸塩粒子、並びに石英、ガラス、又は同様物などが挙げられる。更に、このような誘電性無機粒子は、以下に記載の様々な種類の表面処理剤を使用して表面処理されてもよい。このような導電性無機粒子は、1種として、又は2種以上の組み合わせとして使用することもできる。
【0082】
誘電性無機粒子を組成物に配合することにより、ポリシロキサン硬化物品の機械強度及び絶縁破壊強度を増大させることが可能となり、比誘電率も、場合により増大が観察され得る。硬化性オルガノポリシロキサン組成物に対するこのような誘電性無機粒子の配合量は、好ましくは0.1〜20重量%の範囲であり、更に好ましくは0.1〜5重量%の範囲である。誘電性無機粒子の配合量が上記の好ましい範囲から逸脱するとき、配合効果は得られず、又は硬化物品の機械強度も低下し得る。
【0083】
本発明において使用される補強性無機粒子例は、ヒュームドシリカ、湿式シリカ、粉末シリカ、炭酸カルシウム、ケイソウ土、微粉石英、様々な種類の非アルミナ金属酸化物粉末、ガラス繊維、炭素繊維、又は同様物である。更に、以下に記載の様々な種類の表面処理剤を使用する処理前に、このような補強性無機粒子を使用することもできる。本明細書において、補強性無機粒子の粒径には何ら制限はないものの、機械強度の改良の観点から、比表面積は好ましくは50m
2/g以上〜300m
2/g以下であり、ヒュームドシリカが特に好ましい。更に、分散性の改良の観点から、ヒュームドシリカは、好ましくは以下に記載のシリカカップリング剤を使用して表面処理される。しかしながら、(A)硬化性オルガノポリシロキサン組成物が付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物であるとき、シラザンを使用し表面処理されたヒュームドシリカは補強性無機粒子として使用されない。これらの補強性無機粒子は単一種として使用することもでき、又は2種以上の組み合わせとして使用することもできる。
【0084】
補強性無機粒子を組成物に配合することにより、ポリシロキサン硬化物品の機械強度及び絶縁破壊強度を増大させることが可能となる。硬化性オルガノポリシロキサン組成物に対するこれらの補強性無機粒子の配合量は、好ましくは0.1〜30重量%の範囲であり、更に好ましくは0.1〜10重量%の範囲である。配合量が上記の好ましい範囲から逸脱するとき、配合効果及び無機粒子は得られず、硬化性オルガノポリシロキサン組成物の成形加工性は低下し得る。
【0085】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物には、熱伝導性無機粒子を更に含ませることもできる。熱伝導性無機粒子例は、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ニッケル、酸化バナジウム、酸化銅、酸化鉄、酸化銀、又は同様物などの金属酸化物粒子、及び窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、ダイヤモンド、ダイヤモンド様炭素、又は同様物などのなどの無機化合物粒子である。酸化亜鉛、窒化ホウ素、炭化ケイ素、及び窒化ケイ素が好ましい。これらの熱伝導性無機粒子を組成物に配合することにより、ポリシロキサン硬化物品の熱伝導率を増大させることが可能となる。硬化性オルガノポリシロキサン組成物に対して、これらの補強性無機粒子の配合量は、好ましくは0.1〜30重量%の範囲である。
【0086】
[無機粒子又は同様物の表面処理]
しかしながら、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物に使用される前述の誘電性無機微粒子(D)及び少なくとも1種の無機粒子(E)の一部分又は全量を、少なくとも1種の表面処理剤の使用により表面処理することもできる。表面処理の種類に特に制限はなく、このような表面処理の例は、親水化処理及び疎水化処理である。疎水化処理が好ましい。疎水化処理を施した無機粒子を使用するとき、オルガノポリシロキサン組成物中の無機粒子の充填度を増大させることも可能となる。更に、組成物の粘度を抑えることで、成形加工性が向上される。
【0087】
表面処理剤を使用して無機粒子を処理(又は被覆処理)することにより、前述の表面処理を実施することもできる。疎水化に使用される表面処理剤の例は、有機チタン化合物、有機ケイ素化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物、及び有機リン化合物からなる群から選択される少なくとも1種の表面処理剤である。表面処理剤は、単一種として使用することもでき、又は2種以上の組み合わせとして使用することもできる。
【0088】
有機チタン化合物の例は、アルコキシチタン、チタンキレート、チタンアクリレート、又は同様物などのカップリング剤である。このような化合物のなかでも好ましいカップリング剤の例は、テトライソプロピルチタナート又は同様物などのアルコキシチタン化合物、及びテトライソプロピルビス(ジオクチルホスファート)チタナート又は同様物などのチタンキレートである。
【0089】
有機ケイ素化合物の例は、シラン、シラザン、シロキサン、又は同様物などの低分子量有機ケイ素化合物、及びポリシロキサン、ポリカルボシロキサン、又は同様物などの有機ケイ素ポリマー又はオリゴマーである。好ましいシランの例は、いわゆるシランカップリング剤である。このようなシランカップリング剤の代表例としては、アルキルトリアルコキシシラン(メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、又は同様物など)、有機官能基含有トリアルコキシシラン(グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、又は同様物など)である。好ましいシロキサン及びポリシロキサンとしては、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジヘキシル−テトラメチルジシロキサン、トリアルコキシシリル単末端化(single-terminated)ポリジメチルシロキサン、トリアルコキシシリル単末端化ジメチルビニル単末端化ポリジメチルシロキサン、トリアルコキシシリル単末端化有機官能基単末端化ポリジメチルシロキサン、トリアルコキシシリル二末端化(doubly terminated)ポリジメチルシロキサン、有機官能基二末端化ポリジメチルシロキサン、又は同様物が挙げられる。シロキサンを使用するとき、シロキサン結合の数nは、好ましくは2〜150の範囲である。好ましいシラザンの例は、ヘキサメチルジシラザン、1,3−ジヘキシル−テトラメチルジシラザン、又は同様物である。好ましいポリカルボシロキサンの例は、ポリマー主鎖内にSi−C−C−Si結合を有するポリマーである。
【0090】
有機ジルコニウム化合物の例は、テトライソプロポキシジルコニウム又は同様物、及びジルコニウムキレートなどのアルコキシジルコニウム化合物である。
【0091】
有機アルミニウム化合物例は、アルコキシアルミニウム及びアルミニウムキレートである。
【0092】
有機リン化合物例は、亜リン酸エステル、リン酸エステル、及び亜リン酸キレートである。
【0093】
これらの表面処理剤のなかでも、有機ケイ素化合物が好ましい。このような有機ケイ素化合物のなかでも、シラン、シロキサン、及びポリシロキサンが好ましい。前述の通り、アルキルトリアルコキシシラン及びトリアルコキシシリル単末端化ポリジメチルシロキサンの使用が最も好ましい。
【0094】
前述の無機粒子の総量に対する表面処理剤の比は、好ましくは、0.1重量%以上10重量%以下であり、この範囲は、更に好ましくは0.3重量%以上5重量%以下である。更に、処理濃度は供給処理剤に対する供給無機粒子の比(重量比)であり、好ましくは、処理後に過剰な処理剤は取り除かれる。
【0095】
[添加剤(F)]
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、離型性又は絶縁破壊特性を改良するための添加剤(F)を更に含み得る。ポリシロキサン組成物を硬化させることにより薄型シートとして得られる電気的に活性なシリコーンエラストマーシートは、トランスデューサーを構成する電気的に活性なフィルム(誘電体層又は電極層)としての利点を備え使用することができる。しかしながら、薄型フィルムの成型中のシリコーンエラストマーシートの離型性が乏しいとき、特に、誘電体膜が高速で製造されるとき、誘電体膜は取り出しに起因する損傷を受け得る。しかしながら、本発明のトランスデューサーのための硬化性オルガノポリシロキサン組成物は優れた離型性を有し、したがって本硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、フィルムを損傷させずにフィルムの産生速度を改良させ得るという点で有利なものである。この添加剤は、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物のこれらの特徴を更に改良し、この添加剤は、単一の種類のものとして、又は2種以上の組み合わせとして使用することもできる。その一方で、添加剤の名称通り、シリコーンエラストマーシートの絶縁破壊強度を改良するため、絶縁破壊特性を改良するための添加剤が使用される。
【0096】
使用可能な離型改良剤(すなわち、離型剤)例は、カルボン酸型離型剤、エステル型離型剤、エーテル型離型剤、ケトン型離型剤、アルコール型離型剤、又は同様物である。このような離型剤は、単一種として使用することもでき、又は2種以上の組み合わせとして使用することもできる。これに加え、前述の離型剤はケイ素原子を含有しないものの、ケイ素原子を含有する離型剤を使用することも可能であり、あるいはこれらの離型剤の混合物を使用することも可能である。
【0097】
ケイ素原子を含有しない離型剤も選択することができ、例えば、飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、又は同様物など、このような脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、又は同様物);脂肪族カルボン酸及びアルコールのエステル(2−エチルヘキシルステアラート、グリセリントリステアラート、ペンタエリスリトールモノステアラート、又は同様物など)、脂肪族炭化水素(液体パラフィン、パラフィンワックス、又は同様物)、エーテル(ジステアリルエーテル、又は同様物)、ケトン(ジステアリルケトン、又は同様物)、高級アルコール(2−ヘキサデシルオクタデカノール、又は同様物)、及びこのような化合物の混合物からなる群から選択される。
【0098】
ケイ素原子含有離型剤は、好ましくは非硬化シリコーン系離型剤である。このようなシリコーン型離型剤の具体例としては、非有機変性シリコーン油、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリ(ジメチルシロキサン−メチルフェニルシロキサン)コポリマー、ポリ(ジメチルシロキサン−メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサンコポリマー、又は同様物など、並びに変性シリコーンオイル、例えば、アミノ変性シリコーン、アミノポリエーテル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、又は同様物などが挙げられる。このようなケイ素原子含有離型剤は、線状、部分分岐型線状、又は環状などの任意の構造を有し得る。さらに、このようなシリコーンオイルの25℃における粘度には特に制限はない。この粘度は、好ましくは10〜100,000mPa・sの範囲であり、更に好ましくは50〜10,000mPa・sの範囲である。
【0099】
硬化性オルガノポリシロキサンの総量に対する離型改良剤の配合量には特に制限はないものの、この量は、好ましくは0.1重量%以上30重量%以下である。
【0100】
他方、絶縁破壊性改良剤は、好ましくは電気絶縁改良剤である。絶縁破壊性改良剤例は、アルミニウム又はマグネシウム水酸化物又は塩、粘土鉱物、及びこのような混合物である。具体的には、絶縁破壊特徴改良剤は、ケイ酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、焼成粘土、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、タルク、及びこのような剤の混合物からなる群から選択することもできる。これに加え、必要に応じて、この絶縁改良剤を、前述の表面処理方法により表面処理することもできる。
【0101】
この絶縁改良剤の配合量には特に制限はない。この配合量は、硬化性オルガノポリシロキサンの総量に対し好ましくは0.1重量%以上30重量%以下の範囲である。
【0102】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、誘電体官能基を有する前述の反応性オルガノポリシロキサンとは異なる別のオルガノポリシロキサンを含み得る。
【0103】
[硬化機序]
同様の方法において、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、分子中に、高誘電性官能基、及び縮合硬化反応、付加硬化反応、ペルオキシド硬化反応、又は光硬化反応により反応し得る少なくとも1つの基を有する化合物を更に含み得る。前述の硬化反応により、この高誘電性官能基が、得られる硬化物品(すなわち、電気的に活性なシリコーンエラストマー)に導入される。
【0104】
[高誘電性官能基の導入]
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、高誘電性官能基を有するケイ素化合物(Z)、少なくとも1つの硬化性官能基及び高誘電性官能基を有する有機化合物(Z1)、あるいは硬化性オルガノポリシロキサン組成物と混和性であり、高誘電性官能基を有する有機化合物(Z2)を含むことにより特徴付けられる。好ましくは、硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、高誘電性官能基が共有結合によりケイ素原子に結合している構造を有する硬化物を与える。更に、前述の反応性オルガノポリシロキサンの一部分又は全部は、高誘電性官能基を更に有する反応性オルガノポリシロキサンであってよい。
【0105】
本発明のトランスデューサーのための硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化することにより得られる電気的に活性なシリコーンエラストマーを誘電体層に使用する場合、誘電体層の比誘電率は好ましくは高く、かつエラストマーの比誘電率を向上させる目的で高誘電性官能基を導入することもできる。高誘電性官能基の含有量に特に制限はないものの、含有量は、硬化性オルガノポリシロキサン組成物の全シロキサン成分に対し、1〜80質量%、好ましくは10〜50質量%である。
【0106】
具体的には、硬化性オルガノポリシロキサン組成物について誘電特性を増大させてもよく、高誘電特性を付与するための成分を硬化性オルガノポリシロキサン組成物に添加するなどの方法、硬化性オルガノポリシロキサン組成物を構成するオルガノポリシロキサン成分に高誘電性基を導入する方法、又はこのような方法の組み合わせなどにより得られた硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化することにより硬化した電気活性シリコーンエラストマーを得る。このような特定の実施形態及び導入可能な高誘電体官能基を以下に例示する。
【0107】
第1の実施形態では、高誘電性基を有する有機ケイ素化合物を含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物から、トランスデューサーのための硬化性オルガノポリシロキサン組成物が形成される。この硬化性組成物において、硬化性組成物に含有される反応性オルガノポリシロキサンの部分又は全部は、高誘電性官能基を更に有する反応性オルガノポリシロキサンであり、硬化により得られる電気的に活性なシリコーンエラストマーの比誘電率は増大される。
【0108】
第2の実施例では、高誘電体基を有する有機ケイ素化合物が硬化性オルガノポリシロキサン組成物に添加され、混合物を硬化することで、増大された比誘電率を有する電気的に活性なシリコーンエラストマーが得られる。高誘電体基を有する有機ケイ素化合物を、硬化のために使用される成分とは別個に本硬化性組成物に加えることもできる。
【0109】
第3の実施形態では、高誘電基、及び硬化性組成物中に含有される反応性オルガノポリシロキサンとの反応性を有する官能基を有する有機化合物を硬化性オルガノポリシロキサン組成物に添加することにより、硬化により得られる電気的に活性なシリコーンエラストマーの比誘電率が増大する。本硬化性組成物中の反応性オルガノポリシロキサンと反応性である有機化合物の官能基により、有機化合物及びオルガノポリシロキサン間に結合が形成される結果として、硬化により得られる電気的に活性なシリコーンエラストマーに高誘電基が導入される。
【0110】
本発明の第4の実施形態では、硬化性オルガノポリシロキサン組成物と相溶性であり、かつ高誘電基を有する有機化合物を、硬化性オルガノポリシロキサン組成物に添加することにより、硬化により得られる電気的に活性なシリコーンエラストマーの比誘電率が増大する。本硬化性組成物中の有機化合物及びオルガノポリシロキサン間が混和性であることから、これらの高誘電基を有する有機化合物は、硬化により得られる電気的に活性なシリコーンエラストマーマトリックスに組み込まれる。
【0111】
本発明の高誘電基に特に制限はなく、かつ高誘電基は、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化することにより得られる、得られる硬化物品の誘電特性を、基を含有しない場合の誘電特性と比較して増大させることのできる任意の基であってよい。制限するものではないが、本発明において使用される高誘電基の例を以下に挙げる。
【0112】
a)ハロゲン原子及びハロゲン原子含有基
ハロゲン原子に特に制限はなく、ハロゲン原子の例は、フッ素原子及び塩素原子である。ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、及びハロゲン化アリールアルキル基により例示されるものなどのフッ素原子及び塩素原子から選択される1種以上のうち1つ以上の原子を有する有機基としてハロゲン原子含有基を選択することもできる。ハロゲン含有有機基の具体例としては、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、及びペルフルオロアルキル基が挙げられるがこれらに限定されない。このような基の導入により、本発明の硬化物品の離型性、及び組成物から得られた硬化物品の離型性の改良を見込むことが可能となる。
【0113】
b)窒素原子含有基
窒素原子含有基の例は、ニトロ基、シアノ基(例えば、シアノプロピル基、及びシアノエチル基)、アミド基、イミド基、ウレイド基、チオウレイド基、及びイソシアネート基である。
【0114】
c)酸素原子含有基
酸素原子含有基の例は、エーテル基、カルボニル基、及びエステル基である。
【0115】
d)複素環基
複素環基の例は、イミダゾール基、ピリジン基、フラン基、ピラン基、チオフェン基、フタロシアニン基、及びこのような基の錯体である。
【0116】
e)ホウ素含有基
ホウ素含有基の例は、ボレートエステル基及びホウ酸塩基である。
【0117】
f)リン含有基
リン含有基の例は、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、ホスホン酸エステル基、亜リン酸エステル基、及びリン酸エステル基である。
【0118】
g)硫黄含有基
硫黄含有基の例は、チオール基、チオエーテル基、スルホキシド基、スルホン基、チオケトン基、スルホン酸エステル基、及びスルホンアミド基である。
【0119】
[その他の任意選択的な原材料:硬化遅延剤又は同様物]
本発明のトランスデューサーのための硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、通常、オルガノポリシロキサン組成物に配合される添加剤を含み得る。本発明のトランスデューサーのための硬化性オルガノポリシロキサン組成物の目的を損なわなければ、硬化遅延剤(硬化抑制剤)、難燃剤、耐熱性改良剤、着色剤、溶媒、又は同様物などの任意の添加剤を配合可能である。硬化性オルガノポリシロキサン組成物が付加反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物である場合、硬化遅延剤(硬化抑制剤)の例には、2−メチル−3−ブチン−2−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2−フェニル−3−ブチン−2−オール、又は同様物などのアルキンアルコール、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン、又は同様物などのエニン化合物、及びベンゾトリアゾールが挙げられるがこれらに限定されない。総組成物(重量基準)に対する硬化遅延剤(硬化抑制剤)の利用量は、好ましくは、1〜50,000ppmの範囲である。
【0120】
[ハイブリッド式]
本発明の目的を損なわなければ、本発明のトランスデューサーのための硬化性オルガノポリシロキサン組成物を、オルガノポリシロキサン以外のポリマーと組み合わせることによるハイブリダイゼーションが可能である。オルガノポリシロキサンよりも高誘電率を有するポリマーを、オルガノポリシロキサンとハイブリダイゼーションさせることにより、本発明の組成物の誘電率、及び組成物から得られる硬化物品の誘電率を増大させることも可能である。ハイブリダイゼーションは、オルガノポリシロキサンと非オルガノポリシロキサンポリマーとのいわゆるポリマーブレンド、並びにオルガノポリシロキサンとその他のポリマーとを共に結合させる(すなわち、いわゆる共重合)ことによる縮合ポリマーの形成、を包含する。
【0121】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、縮合硬化性、付加硬化性、過酸化物硬化性、又は光硬化性であるものの、付加硬化オルガノポリシロキサン組成物が好ましい。この硬化性システムには、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、又はチオール基に対し前述の誘電官能基を付加する方法による、オルガノポリシロキサン分子鎖の導入を更に包含させることもできる。付加硬化反応に加えて、この光硬化性部分又は電子ビーム硬化性部分を使用することにより、光硬化反応又は電子ビーム硬化反応を使用することも可能である。反応を併用する場合、前述の硬化性組成物には、光又は電子ビーム((メタ)アクリレートエステル及び多官能性(メタ)アクリレート化合物など)により硬化可能なモノマー及び/又はオリゴマーとして公知の化合物を更に添加することもできる。加えて、いわゆる光増感剤を添加することもできる。
【0122】
[機械特性]
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化により得られるトランスデューサーのための部材である誘電体シリコーンエラストマーが、厚さ2.0mmのシートに熱成型されるとき、JIS K 6249に基づき測定される以下の機械特性を有することが可能である。しかしながら、本誘電体シリコーンエラストマー及びその他の必要とされる電気特性用途に従って、これらの機械特性範囲外の機械特性を有する誘電体シリコーンエラストマーを使用することも可能である。
(1)室温でのヤング率(MPa)は0.1〜10MPaの範囲に設定することができ、特に好ましい範囲は0.1〜2.5MPaである。
(2)室温での引き裂き強さ(N/mm)は1N/mm以上に設定することができ、特に2N/mm以上の範囲である。
(3)室温での引き裂き強さ(MPa)は1MPa以上に設定することができ、特に好ましくは2MPa以上の範囲である。
(4)破断点伸び(%)は100%以上に設定することができ、トランスデューサーの変位量の観点から、特に好ましくは200〜1,000%の範囲である。
【0123】
[誘電特性]
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化により得られるトランスデューサーの部材である誘電シリコーンエラストマーは、以下に記載の誘電特性を有する。具体的には、本発明の1つの重要な特徴として、本発明の組成物による上記のものなどの機械特性の獲得に加え、組成物は低周波領域において優れた比誘電率を示す。
(1)硬化性オルガノポリシロキサン組成物が厚さ0.07mmのシートに熱成型されるとき、絶縁破壊強度(V/μm)は20V/μm以上に設定することができる。好ましい絶縁破壊強度はトランスデューサーの用途に従って変化するものの、30V/μm以上の範囲の絶縁破壊強度が特に好ましい。
(2)硬化性オルガノポリシロキサン組成物を厚さ1mmのシートに熱成型するとき、1MHzの測定周波数かつ23℃の測定温度で測定される比誘電率は3.0以上に設定することができる。好ましい比誘電率は誘電体層に必要とされる形態及びトランスデューサーの種類に従って変化し得るものの、前述の測定条件下で特に好ましい比誘電率範囲は5.0以上である。
【0124】
[製造方法]
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化性オルガノポリシロキサン成分、硬化触媒、室温、1kHzにて10以上の比誘電率を有する誘電性無機微粒子、及び場合により少なくとも1種の無機粒子、及びその他の添加剤を、押出機又は混練機(例えば、2軸押出し機、2軸混練機、及び一枚羽根式押出機からなる群から選択される少なくとも1種の機械的手段)に添加し、次に混合物を混練することにより製造することができる。具体的には、少なくとも5,000(L/h)の自由体積を有する2軸押出機を使用して、反応性オルガノポリシロキサン成分、誘電性無機微粒子、及び表面処理剤を混練することにより、本発明は、充填剤を高濃度(例えば、少なくとも80重量%)で含むシリコーンゴム複合体(マスターバッチ)を形成することもできる。次に、その他の反応性オルガノポリシロキサン成分、硬化触媒、及びその他の成分が好ましくは添加され、混練され、硬化性オルガノポリシロキサン組成物が製造される。
【0125】
前述の製造方法により、トランスデューサーのための硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化性オルガノポリシロキサン組成物中に、誘電性無機微粒子が良好にかつ高密度に分散され、したがって、良好な電気特性及び機械特性を有するトランスデューサーの部材を製造することが可能である。加えて、トランスデューサーの部材の製造中に均一なフィルム様硬化物品を得ることも可能であり、得られるフィルム様硬化物品の電気特性及び機械特性は優れており、かつ積層又は同様のプロセスの際の取り扱い性が優れている。
【0126】
前述の混練プロセスにおいて、加硫剤(硬化触媒)を含有しないシリコーンゴム化合物(マスターバッチ)の形成中の温度には特に制限はない。しかしながら、この温度は40℃〜200℃の温度に設定され、100℃〜180℃の範囲に設定することができる。2軸押出機又は同様の装置を使用する連続プロセスにおいて、処理中の滞留時間を約30秒〜5分間に設定することもできる。
【0127】
[本発明のトランスデューサーのための硬化性オルガノポリシロキサン組成物の使用]
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化又は半硬化により得られる電気的に活性なシリコーンエラストマーの誘電特性及び機械特性により、人工筋肉、アクチュエーター、センサー、及び電気生成構成要素(electricity generating elements)からなる群から選択されるトランスデューサーの部材として特に有用性がある。具体的には、当該部材は、硬化性オルガノポリシロキサン組成物をシート様又はフィルム様形状に成型後、一般的に、加熱、高エネルギー線照射、又は同様の処理により硬化される。硬化性オルガノポリシロキサン組成物のフィルム様形状への成型方法に特に制限はないものの、その方法は、公知の様々な被覆方法;硬化性オルガノポリシロキサン組成物を、所望の形状のスロットを取り付けた押出機に通過させることによる成型方法その他の方法により例示される。
【0128】
[エラストマーフィルム及び積層]
この種類のフィルム様硬化性オルガノポリシロキサン組成物の厚みは、例えば、0.1μm〜5,000μmの範囲に設定することができる。前述のコーティング方法、及び揮発性溶媒の非存在又は存在に依存して、得られる硬化物品の厚みは、組成物の塗布時の厚みよりも薄くすることもできる。
【0129】
前述の方法によるフィルム様硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造後、熱硬化、室温硬化、又は高エネルギー線照射による硬化を実施し、かつ所望により、誘電性無機微粒子に対し、対象とする方位方向に電場若しくは磁場をかけることもでき、又は所定の期間にわたって磁場又は電場をかけることにより充填剤を配向させた後で、硬化させることもできる。各硬化操作若しくは各硬化操作中の条件に対し特に制限はないものの、硬化性オルガノポリシロキサン組成物が付加型の硬化性オルガノポリシロキサン組成物である場合、硬化は、好ましくは90℃〜180℃の温度範囲において、この温度範囲を30秒〜30分間維持することにより実施される。
【0130】
トランスデューサーのためのシリコーンエラストマーには特に制限はなく、この厚みは例えば、1〜2,000μmであってよい。本発明のトランスデューサーのためのシリコーンエラストマーは、1層又は2層以上の層として重ねることもできる。更に、誘電性エラストマー層の両端部に電極層を提供することもでき、重ねられた複数の電極層、及び誘電性エラストマー層から構成される、トランスデューサーそのものの構成に使用することもできる。このような構成のための、トランスデューサーのためのシリコーンエラストマーの単層あたりの厚みは、0.1μm〜1,000μmであってよい。このような層が少なくとも2層重ねられる場合、1層当たりの厚みは0.2μm〜2,000μmであり得る。
【0131】
前述の方式で重ねられた2層以上のシリコーンエラストマー硬化層の成型方法には何ら特に制限はないものの、方法は、(1)基材に対し硬化性オルガノポリシロキサン組成物を被覆すること(被覆中、硬化シリコーンエラストマー層が得られ、次に同じ硬化層に硬化性オルガノポリシロキサン組成物が更に塗布され、繰り返し塗布及び硬化され、積層物とされる)、(2)積層方法において基材に対し硬化性オルガノポリシロキサン組成物を未硬化又は半硬化状態で被覆し、硬化性オルガノポリシロキサン組成物(積層方法において被覆されたもの)を完全に硬化すること、あるいは(1)及び(2)の方法を併用する方法、などを使用することもできる。
【0132】
例えば、硬化性オルガノポリシロキサン組成物は基材に対しダイコーティングにより塗布することができ、硬化することができ、重ねることにより2層以上のこのようなシリコーンエラストマー硬化層を形成することができ、シリコーンエラストマー硬化層は、本発明において製造する電極層に取り付けることもできる。この構成に関し、重ねられた2以上のシリコーンエラストマー硬化層は好ましい誘電体層であり、電極は好ましくは導電性層である。
【0133】
ダイコーティングによる高速コーティングが可能であり、かつこのコーティング方法は高生産性である。オルガノポリシロキサン組成物を含有する単層を被覆後に、本発明の多層構成体を有するトランスデューサーは、異なるオルガノポリシロキサン組成物を含有する層を被覆することにより製造してもよい。更に、それぞれのオルガノポリシロキサン組成物を含有する複数の層を同時に被覆することによる製造も可能である。
【0134】
トランスデューサーのための部材である薄型フィルム様シリコーンエラストマーは、前述の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を基材に対し塗布し、次にこの組立体(assembly)を室温にて、及び加熱することにより、又は紫外線又は同様の化学線などの高エネルギー線照射を用い硬化することにより、得ることもできる。加えて、薄型フィルム様誘電体シリコーンエラストマーが重ねられるとき、未硬化オルガノポリシロキサン組成物を硬化層に塗布し、次に連続的に硬化することもでき、又は未硬化の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を複数の層として重ね、次にこの層を同時に硬化することもできる。
【0135】
前述の薄型フィルム様シリコーンエラストマーは、トランスデューサーのための誘電体層として特に有用である。薄型フィルム様シリコーンエラストマーの両末端に電極層を配置することにより、トランスデューサーを形成することも可能である。更に、導電性無機粒子を本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物に配合することにより、電極層として機能性を提供することも可能である。更に本発明の特許明細書における「電極層」は、時として単に「電極」として参照される。
【0136】
トランスデューサーのための前述の部材の一実施形態は、シート様又はフィルム様である。膜厚は概して1μm〜2,000μmであり、フィルムは単層、2層以上の層、又は更に複数の積層体である構造を有し得る。更に、所望される場合、誘電体層として使用するとき、重ねられた電気的に活性なシリコーンエラストマー層は5μm〜10,000μmの膜厚で使用することができ、あるいはこのような層を重ねてより厚みをもたせることもできる。
【0137】
トランスデューサーのための部材であるフィルム様シリコーンエラストマー層は、同じフィルム様シリコーンエラストマー、あるいは物理特性の異なる2層以上のフィルム様シリコーンエラストマーを重ねることにより形成することができ、又は予め硬化させた組成物を重ねてトランスデューサーのための部材を形成することもできる。加えて、フィルム様シリコーンエラストマー層の機能は誘電体層又は電極層であってよい。具体的には、トランスデューサーのための好ましい部材において、誘電体層の厚みは1〜1,000μmであり、電極層の厚みは0.05μm〜100μmである。
【0138】
本発明のトランスデューサーは、本発明のトランスデューサーのための硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化することにより製造されるトランスデューサーのためのこの部材を有するものとして特徴付けられ、本発明のトランスデューサーは、特に高積層構造(すなわち、2層以上の誘電体層)を含む構造を有し得る。本発明のトランスデューサーは、3層以上の誘電体層を含む構造を更に有し得る。この種類の高積層構造を有するトランスデューサーは、複数の層を含むことにより大きな力を生成可能である。加えて、層を重ねることにより、単層を使用することにより得られ得るものよりも大きな変位を得ることも可能である。
【0139】
電極は、本発明のトランスデューサーのための誘電体層の両末端に含ませることもできる。利用される電極物質は、金属及び合金、例えば、金、白金、銀、パラジウム、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン、亜鉛、ジルコニウム、鉄、コバルト、スズ、鉛、インジウム、クロム、モリブデン、マンガン、又は同様物など、金属酸化物、例えば、酸化インジウムスズ化合物(ITO)、酸化アンチモンスズ化合物(ATO)、酸化ルテニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、及び同様物など、炭素材料、例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノシート、カーボン繊維、カーボンブラック、又は同様物など、並びに導電性樹脂、例えば、ポリ(エチレン−3,4−ジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリアニリン、ポリピロール、又は同様物などにより例示される。導電性エラストマー、及び樹脂に分散した導電性充填剤を有する導電性樹脂を使用できる。
【0140】
電極は、前述の導電性物質のなかでも1つの物質を単独で含んでもよく、又は2つ以上のこのような導電性物質を含んでもよい。電極が2種以上の導電性物質を含む場合、導電性物質のうちの1つを活性物質として機能させ、残部を電極の抵抗性を低下させるための導電性物質として機能させることもできる。
【0141】
本発明のトランスデューサーのための誘電体層の合計厚さは、10μm〜2,000μm(2mm)の厚みに設定できるものの、この合計厚さは特に200μm以上の値に設定することもできる。詳細には、誘電体層を形成する誘電体シリコーンエラストマー層の単層当たりの厚さは、好ましくは0.1〜500μmであり、この厚みは特に好ましくは0.1〜200μmである。これらのエラストマー薄層を2層以上積層することにより、単層を使用する場合と比較して、絶縁破壊電圧量、誘電率、及び変異量などの特性を改良することも可能である。
【0142】
本発明において、用語「トランスデューサー」は、ある種のエネルギーを別種のエネルギーへと変換するための構成要素、機械、又は装置を意味するよう採用される。このトランスデューサーは、電気エネルギーの機械エネルギーへの変換のための人工筋肉及びアクチュエーター;機械エネルギーの電気エネルギーへの変換のためのセンサー及び発電素子;電気エネルギーの音エネルギーへの変換のためのスピーカー、マイクロフォン、及びヘッドフォン;化学エネルギーの電気エネルギーへの変換のための燃料電池;及び電気エネルギーの光エネルギーへの変換のための発光ダイオード、により例示される。
【0143】
本発明のトランスデューサーは、本発明のトランスデューサーの誘電体及び機械特性に起因して、特に人工筋肉、アクチュエーター、センサー、又は発電素子として使用することができる。人工筋肉は、例えば、ロボット、介護機器、リハビリテーション訓練装置、又は同様の用途などの用途への使用が予測される。アクチュエーターとしての実施形態を本発明の実施例として以下に例証する。
【0144】
[
図1〜4]
図1は、誘電体層が積層されている本発明の実施形態のアクチュエーター1の断面図を示す。本実施形態では、誘電体層は、例えば2層の誘電体層から構成される。アクチュエーター1には、誘電体層10a及び10b、電極層11a及び11b、ワイヤー12、及び電源13が取り付けられる。電極層11a及び11bは、誘電体層の各接触面を被覆しており、これらの電極層はそれぞれワイヤー12を介し電源13に接続されている。
【0145】
アクチュエーター1は、電極層11及び電極層11b間に電圧を印加することにより駆動することもできる。電圧を印加することにより、誘電体層10a及び10bは誘電特性に起因してより薄くなり、結果として電極層11a及び11b面に対して平行に伸長する。すなわち、電気エネルギーを力又は移動若しくは変異の機械エネルギーに変換することが可能である。
【0146】
図2は、本発明の実施形態のアクチュエーター2の断面図を示す。この実施形態では、誘電体層及び電極層が積層される。本実施形態により、例えば、誘電体層は3層から構成され、かつ電極層は4層から構成される。アクチュエーター2には、誘電体層20a、20b、及び20c、電極層21a、21b、21c、及び21d、ワイヤー22、並びに電源23が取り付けられている。電極層21a、21b、21c、及び21dは、それぞれ、誘電体層の各接触面を被覆しており、これらはそれぞれワイヤー22を介して電源23に接続されている。電極層は、異なる電圧側に交互に接続され、電極層21a及び21cは、電極層2b及び21dとは異なる面に接続される。
【0147】
電極層21a及び電極層21b間の電圧印加、電極層21b及び電極層21c間の電圧印加、及び電極層21c及び電極層21d間の電圧印加により、アクチュエーター2を駆動することも可能である。電圧を印加することにより、誘電体層20a、20b、及び20cは誘電特性に起因してより薄くなり、結果として電極層の21a、21b、21c、及び21d面に対して平行に伸長する。すなわち、電気エネルギーを力又は移動若しくは変異の機械エネルギーに変換することが可能である。
【0148】
アクチュエーターの実施形態を本発明のトランスデューサーの例として記載したものの、本発明のトランスデューサーの外側から機械的エネルギー(圧力又は同様のエネルギーなど)が印加されるとき、相互に誘電された電極層間の電気エネルギーとして、異なる電位を生成することが可能である。これはすなわち、機械エネルギーの電気エネルギーへの変換についてのセンサーとして使用することが可能である。このセンサーについての実施形態を以下に記載する。
【0149】
図3は、本発明の実施形態のセンサー3の構造を示す。センサー3は、誘電体層30が、マトリックス様のパターンで配置され、上側の電極層31a、31b、及び31cと、下側の電極層32a、32b、及び32cとの間に配設された、構造を有する。本実施形態により、例えば、電極層をそれぞれ垂直方向及び水平方向に3列のマトリックスパターンとして配設することができる。それぞれの電極層の、誘電体層30と接触していない面は、誘電層により保護することもできる。加えて、誘電体層30には、オルガノポリシロキサンを含む同じ誘電体層を2層以上含ませることもできる。
【0150】
外的な力がこのセンサー3の表面に印加されると、上側電極層及び下側電極層間の誘電体層30の厚みは圧のかけられた位置で変化し、この変化に起因して、電極層間の静電容量において変化が生じる。これらの電極層間の静電容量の変化に起因する電極層間の電位差を測定することにより、外力を検出することが可能である。すなわち、この実施形態は、機械エネルギーの電気エネルギーへの変換のためのセンサーとして使用することもできる。
【0151】
更に、誘電体層を挟み込む対向する電極層は、本実施形態のセンサー3において3対として形成され、電極の数、大きさ、位置、又は同様の事柄は、用途に応じ適切に選択することができる。
【0152】
発電素子は、機械エネルギーの電気エネルギーへの変換のためのトランスデューサーである。この発電素子を、波力、水力、水力、又は同様物などの自然エネルギーにより電気生成を開始する、並びに振動、衝撃、圧変化、又は同様の事柄に起因する電気生成を開始する装置のために使用することもできる。この発電素子の実施形態を以下に記載する。
【0153】
図4は、本発明の実施形態の発電素子4の断面図を示す。この実施形態では、誘電体層が積層されている。本実施形態では、誘電体層は、例えば、2誘電体層から構成される。発電素子4は、誘電体層40a及び40bと、電極層41a及び41bから構成される。電極層41a及び41bは、それぞれの接触している誘電体層の一表面を被覆するよう配置されている。
【0154】
電極層41a及び41bは、未記載の負荷部に電気的に接続されている。この発電素子4は、電極層41a及び41b間の距離を変化させ、静電容量を変化させることにより電気エネルギーを生成し得る。すなわち、誘電体層40a及び40bにより形成される電場に起因して静電荷誘起状態である電極層41a及び41b間の要素の形状における変化に起因して、電荷分布には偏りが生じ、電極層間の静電容量はこの偏りに起因して変化し、電極層間に電位差が生じる。
【0155】
本発明の実施形態において、
図4に示す発電素子4の電極層41a及び41b面に対し平行方向に圧縮力を印加された状態(上図)から、同様の図において示す通りの圧縮力非印加の状態(下図)への変化に起因して、電極層41a及び41b間に電位差が生じ、電力としての電位差の変化の出力により発電素子の機能を認識することが可能である。すなわち、機械エネルギーの電気エネルギーへの変換も可能である。更に、複数の要素を基材上に配置して、このような複数の要素を直列又は並列に接続させることにより多量の電気を生成する電気生成装置を構成することも可能である。
【0156】
本発明のトランスデューサーは、空気中、水中、真空中、又は有機溶媒中で作動し得る。加えて、本発明のトランスデューサーをトランスデューサーの使用環境に応じ適切に封止することもできる。封止方法に特に制限はなく、この封止方法は、樹脂材料又は同様物を使用して封止することにより例示される。
【0157】
産業上の利用可能性
トランスデューサーの製造のため、本発明のトランスデューサーのための硬化性オルガノポリシロキサン組成物を適切に使用することもできる。本発明のトランスデューサーのための、硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、単に未硬化の組成物であるというよりは、反応性オルガノポリシロキサンが部分的に反応しており、硬化が不完全な状態にある、いわゆるBステージの材料を含み得る。本発明のBステージの材料は、ゲル様である状態の、又は流動性を有する状態の材料により例示される。したがって、本発明の実施形態は、トランスデューサーのための硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化反応が部分的に進行している状態の部材も含み得る。このとき、トランスデューサーのための部材はゲル様の状態であり又は流体である。更に、半硬化状態のこの種類のトランスデューサーのための部材は、単層又は薄型フィルム様シリコーンエラストマーの積層体から構成することもできる。
【実施例】
【0158】
本発明を具体的に示す目的で、実施例を以下に掲載する。しかしながら、これらの実施例は本発明の範囲を制限するものとして理解されてはならない。更に、以下に示す「%」は重量パーセントを表す。
【0159】
実施例1
25℃にて50,000mPa・sの粘度を有し、かつ両末端がジメチルビニルシロキシ基により保護されているポリ−トリフルオロプロピルメチルシロキサン(A
21)(0.14%ビニル含量)、平均粒径1.0μmの球状チタン酸バリウム(Fuji Titanium Industry Co.,Ltd.製、HPBT−1B)、並びに反応調節剤としてテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンを、軌道式回転ミキサーで2000rpmの速度で30秒間混合した。次に、表1に示す配合比に従い、トリス(ジメチルヒドロジェンシロキシ)トリフルオロプロピルシラン(A
11、SiH含量=0.55%)を添加し、2000rpmの速度で30秒間混合した。更に、ジメチルビニルシロキシ基二末端化メチルポリシロキサンに溶解させた1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の白金錯体0.67%(白金として)を添加し、2000rpmの速度で15秒間混合してシリコーンエラストマー組成物を得た。ここで、本シリコーンエラストマー組成物中の全ビニル基に対する全SiH官能基のモル比(SiH基/ビニル基)は、1.3である。
【0160】
ここで、反応性オルガノポリシロキサンが、M
aM
RbD
cD
RdT
eT
RfQ
gにより表されるとき、(a+c)/(b+d+e+f+g)の値を有するオルガノポリシロキサンの重量分画(X)は、硬化性オルガノポリシロキサン組成物中の全シロキサン成分に対し3未満である(すなわち、X=1.7%)。硬化性オルガノポリシロキサン組成物中のシロキサン成分の全量に対する分子鎖両末端が反応性のオルガノポリシロキサンの重量分画(Y)は、98.3%である。単一分子内に硬化反応性基を少なくとも2つ有し、かつ硬化反応可能な2つの基間の平均分子量10,000未満を有する反応性オルガノポリシロキサン(S)と、単一分子内に硬化反応可能な基を少なくとも2つ有し、かつ硬化反応可能な2つの基間の平均分子量10,000以上〜150,000以下を有する反応性オルガノポリシロキサン(L)との配合比(重量比S/L)は、1.7/98.3である。
【0161】
それに対し、前述のポリオルガノシロキサン原材料の化学構造、ケイ素結合した水素原子の含有量、アルケニル基の含有量、及び数平均分子量に基づき、単位重量当たりの架橋点数(J値)は21.0μmol/gであると算出され、架橋点間の分子量(K値)は、約220,000であると算出された。
【0162】
このシリコーンエラストマー組成物を190℃にて15分間圧縮硬化し、次に190℃で60分間後硬化した。JIS K 6249に基づき、得られた硬化物品に対しヤング率、引張り強さ、破断点伸び、及び引き裂き強さを測定した。機械強度を測定する目的で、厚さ2mmのシートを作製した。厚さ6mmのシートのデュロメータA硬さは、JIS K 6253をもとに測定した。
【0163】
加えて、このシリコーンエラストマー組成物を190℃で15分間圧縮硬化して、厚さ0.07mmのシートを作製した。絶縁破壊強度は電気的な絶縁破壊電圧油試験機、すなわちPORTATEST 100A−2(Soken Electric Co.,Ltd.により製造)を使用して測定される通りのものであった。同様の方法で、シリコーンエラストマー組成物を190℃で15分間圧縮硬化し、厚さ1mmのシートを製造した。23℃の温度かつ1MHz測定周波数条件下で、Ando Electric Co.,Ltd.により製造されたTR−1100誘電率−tangent測定装置を用い、比誘電率を測定した。結果を表1に示す。
【0164】
実施例2〜8及び比較例1〜3
架橋剤A
1及びポリマーA
2の添加量及び化学的な構造を変更したことを除き、実施例1と同様の手順を実施し、あるいは必要とされる場合、表1に掲載される微粒子を使用してシリコーンゴム組成物を得た。本明細書中、実施例2において、1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の白金錯体の成分を除く全ての成分は一度に添加及び混合される。
【0165】
同様の方式で前述のX、Y、S/L、J、及びK値を算出した。得られた組成物を同様の方式で加熱及び硬化し、機械強度及び電気特性を評価した。これらの結果を表1に示す。更に、実施例7において、予め、チタン酸バリウムの微粒子の表面を、78℃にて、体積比95:5のエタノール及び水の溶媒混合物において、表面を完全に被覆するのに必要とされる量の3倍量の、ペンタフルオロフェニル基を有するリン酸により処理した。次に、表面処理剤のはみ出た部分を前述のエタノール水溶液により洗い流した。得られた微粒子を、真空下85℃にて更に処理して表面処理された微粒子を得た。
【0166】
加えて、表中、上記以外の架橋剤及びポリマーの化学構造は以下の通りのものである。
A
21:25℃にて2,000mPa・sの粘度を有し、かつ両末端がジメチルビニルシロキシ基により保護されているポリ−トリフルオロプロピルメチルシロキサン
A
22:両末端がジメチルビニルシロキシ基により保護されているポリ−トリフルオロプロピルメチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー
A
23:両末端がジメチルビニルシロキシ基により保護されているポリ−シアノプロピルメチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー
A
24、A
25、A
26:両末端がジメチルビニルシロキシ基により保護されているポリジメチルシロキサン
A
11:トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)トリフルオロプロピルシラン
A
12:トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)シアノエチルシラン
A
13:トリメチルシリル二末端化ジメチルメチルハイドロジェンシロキサンコポリマー
A
14:ジメチルハイドロジェン官能化MQ樹脂
(F)反応調節剤:テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン
(C)Pt触媒:白金1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体
【0167】
「硬化シリコーンエラストマー薄型フィルムの電気機械試験」
【0168】
(実施例1 v.比較例4)
本発明(実施例#1)に基づく硬化薄型フィルムには、カーボンブラック及びシリコーンオイル([Asbury導電性炭素グレード5303]/[Dow Corning FS1265フルオロシリコーンオイル]=1/7(w/w))から構成される電極ペーストを刷毛により塗布し、コーティングした。活性なEAP領域を確定する電極印加(回路)直径は、10mm〜20mmの範囲とした。電界と厚さひずみとの関係を分析するため、Dow Corning電気機械的試験機(SRI international Inc.)を用い電気機械試験を実施した。測定条件は次の通りのものである。
1)温度及び湿度:21〜23℃、かつ相対湿度35〜52%
2)初期膜厚:105um
3)2軸プリストレッチ:25%
4)2軸ストレッチ後の膜厚:67um
5)電圧パターンは0.5Hz方形波型とした。「ゼロ」ボルトと、試験電圧条件とを比較したときに電気回路直径に生じている変化により、作動時放射方向ひずみが定義される。厚さひずみは、シリコーン試料の非圧縮性に起因する放射方向ひずみに関連する。試験電圧を「最終的な」膜厚(再伸長及び作動後の膜厚)により除することによって、電界を定義する。
【0169】
電界(V/um)の関数として、対照材料(比較例4)としてのSylgard 186と共に厚さひずみ(%)を
図5に示す。
【0170】
図5.実施例1及び比較例4についての電界(V/um)の関数としての厚さひずみ(%)
【0171】
【表1】
【0172】
【表2】
【0173】
【表3】
【0174】
【表4】
【0175】
表1に示す通り、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、高誘電性官能基を有する化合物成分を有しており、したがってシリコーンエラストマーには、優れた機械特性(破断点伸びにより表される通り)及び誘電特性(誘電率により表される通り)がもたらされていた。加えて、架橋構造及び無機微粒子を最適化することにより、望まれるトランスデューサー用途に従って材料を設計することが可能である。
【0176】
具体的には、
図5に示す通り、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物から得られるシリコーンエラストマーは、低電圧領域においてさえ高誘電特性を実現する。
【0177】
それに対し、最適化された架橋構造を有していない硬化性オルガノポリシロキサン組成物から得られたシリコーンエラストマーは高ヤング率を有し、かつ破断点伸びは少なかった。したがって、このシリコーンエラストマーは、トランスデューサーに使用するための材料として不適である。
【0178】
【表5】