(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の電線が直径方向に並ぶ少なくとも一列の電線群と、前記電線群の延在方向の一部分を包囲し分割構造の電線群挿通部における台形状の貫通穴に応じた外周形状部を有する硬質樹脂材製の堰き止め部と、前記外周形状部との間を止水するため前記貫通穴の内周面に設けられた止水材と、を備えるワイヤハーネスの水入り対策構造であって、
前記外周形状部における前記電線群の延在方向に沿った一対のエッジ部近傍の一部分がそれぞれ断面台形状に形成され、他の部分が肉抜き部を有し、
前記肉抜き部は、前記堰き止め部の前記電線の並び方向両側の斜面と、その斜面に対し反対側の座面における前記電線の並び方向両端部と、にのみ設けられる
ことを特徴とするワイヤハーネスの水入り対策構造。
前記貫通穴の軸線方向に沿った前記止水材の沿面長さが、前記電線群の延在方向に沿った前記外周形状部の沿面長さよりも長いことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のワイヤハーネスの水入り対策構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の1液止水による止水構造は、電線間に止水剤(シリコン503)が充填されて電線被覆と接着する。このため、止水性能は非常に優れているが、止水剤の管理が困難であるほか、固化するまでに数時間程度を必要とすることから、作業性がよくなかった。また、上述のブチルゴム509による止水構造は、電線間に止水剤(ブチルゴム509)が充填され、ブチルゴム自体が柔らかく、なじみ易く、それでいて接着性があるので、確実に充填されれば止水性能は優れるが、使用ブチルゴム量の管理が困難な問題がある。更に、ブチルゴム509による止水構造は、ブチルゴム509がベタベタしていて手に付くなど作業性が悪いとともに、充填状況の確認が行いにくい。
【0006】
また、止水構造への応用が可能な技術として、電線束の外周を樹脂材料によってモールドするモールド構造が知られている(特許文献1等参照)。ところが、このようなモールド構造では、3本以上の電線を束にしてしまうと、隣接する電線間に樹脂を充填できない隙間(樹脂未充填空間)ができてしまう。
また、これらのモールド構造は、通常の射出成形機によって成形が行われる。このため、設備が大掛かりとなる。
更に、モールド構造の封止樹脂部(本明細書では「堰き止め部」とも称す。)は、上下ケース(隔壁部)に設けられる分割構造の電線群挿通部にセットする場合、台形状の貫通穴が画成される筒状に形成された電線群挿通部に応じて、堰き止め部が断面台形状の外周形状部を有することが好ましい。ところが、断面台形状の外周形状部を有する堰き止め部は、厚肉部が存在することにより、ヒケやボイド等の成形不良が生じやすく、樹脂成形が困難となる。堰き止め部は、外周形状部にヒケ等が生じていると、貫通穴との間で水が通過しやすくなり、水入り対策が不十分となる。
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、断面が台形形状の堰き止め部を用いながら水入り対策効果を向上させることができるワイヤハーネスの水入り対策構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 複数の電線が直径方向に並ぶ少なくとも一列の電線群と、前記電線群の延在方向の一部分を包囲し分割構造の電線群挿通部における台形状の貫通穴に応じた外周形状部を有する硬質樹脂材製の堰き止め部と、前記外周形状部との間を止水するため前記貫通穴の内周面に設けられた止水材と、を備えるワイヤハーネスの水入り対策構造であって、
前記外周形状部における前記電線群の延在方向に沿った一対のエッジ部近傍の一部分がそれぞれ断面台形状に形成され、他の部分が肉抜き部を有
し、前記肉抜き部は、前記堰き止め部の前記電線の並び方向両側の斜面と、その斜面に対し反対側の座面における前記電線の並び方向両端部と、にのみ設けられることを特徴とするワイヤハーネスの水入り対策構造。
【0009】
上記(1)の構成のワイヤハーネスの水入り対策構造によれば、例えば上下ケースに設けられる分割構造の電線群挿通部にセットされた堰き止め部は、断面台形状に形成された一対のエッジ部近傍の一部分の外周形状部により、電線群挿通部の貫通穴との間からの水入りを抑制する。堰き止め部は、他の部分の外周形状部に肉抜き部が形成されて厚肉部の体積が減ぜられることにより、電線群をモールド成形する際のヒケやボイド等の成形不良が生じ難くなる。
【0010】
(2)
複数の電線が直径方向に並ぶ少なくとも一列の電線群と、前記電線群の延在方向の一部分を包囲し分割構造の電線群挿通部における台形状の貫通穴に応じた外周形状部を有する硬質樹脂材製の堰き止め部と、前記外周形状部との間を止水するため前記貫通穴の内周面に設けられた止水材と、を備えるワイヤハーネスの水入り対策構造であって、
前記外周形状部における前記電線群の延在方向に沿った一対のエッジ部近傍の一部分がそれぞれ断面台形状に形成され、他の部分が肉抜き部を有し、前記外周形状部における前記他の部分に、更に断面台形状に形成された部分が形成される、ことを特徴とす
るワイヤハーネスの水入り対策構造。
【0011】
上記(2)の構成のワイヤハーネスの水入り対策構造によれば、堰き止め部は、外周形状部における他の部分にも、断面台形状の部分が形成されることにより、貫通穴との間を水の通過方向に多段に水密シールできる。これにより、堰き止め部は、電線群挿通部の貫通穴との間からの水入りを更に抑制することができる。
【0012】
(3) 前記貫通穴の軸線方向に沿った前記止水材の沿面長さが、前記電線群の延在方向に沿った前記外周形状部の沿面長さよりも長いことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のワイヤハーネスの水入り対策構造。
【0013】
上記(3)の構成のワイヤハーネスの水入り対策構造によれば、止水材の沿面長さを電線群の延在方向に沿った外周形状部の沿面長さよりも長くすることで、電線群挿通部の貫通穴に対して堰き止め部が位置ずれしても、外周形状部の一対のエッジ部が止水材から離れてしまうことがない。これにより、堰き止め部は、安定して貫通穴との間からの水入りを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るワイヤハーネスの水入り対策構造によれば、断面が台形形状の堰き止め部を用いながら水入り対策効果を向上させることができる。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るワイヤハーネスの水入り対策構造を備えるワイヤハーネス100を用いた機器接続構造の要部分解斜視図である。
本実施形態に係るワイヤハーネスの水入り対策構造を備えるワイヤハーネス100は、水平方向に並んで設けられた複数の電線19からなる電線群11と、硬質樹脂材製の堰き止め部13と、止水材15と、肉抜き部17と、を有する。
なお、本実施形態において、水入り対策とは、防滴以上の止水性能を言う。
【0018】
電線群11は、複数の電線19が、直径方向に少なくとも一列に並んでいる。それぞれの電線19は、導体の外周が絶縁性樹脂によって被覆されている。「少なくとも一列」とは、複数列が多段状に配置されてもよい意味である。但し、この場合には、各段の電線群同士は、離間して配置される。
【0019】
複数の電線群11は、堰き止め部13において、電線19の並び方向に交差する方向に離間して複数の段数で配置される。本実施形態において、電線群11は、2段で配置されている。
【0020】
図2に示すように、堰き止め部13は、各段における電線群11の延在方向の一部分を包囲し一体にモールド成形される。この堰き止め部13は、後述する電線群挿通部27における台形状の貫通穴29に応じた外周形状部21を有するように一体にモールド成形される。
【0021】
堰き止め部13をモールド成形するには、後述の低圧射出成形機が使用される。低圧射出成形機では、硬質樹脂材である例えば一般のエンプラ(エンジニアリングプラスチック)が使用される。本発明に係るワイヤハーネスの水入り対策構造を備えるワイヤハーネス100は、換言すれば、このエンプラに、電線群11の延在方向一部分が埋入(インサート成形)されたものとなっている。
【0022】
各列の隣接する電線19同士は、僅かに離間していても接触していてもよい。僅かに離間していれば、その間に樹脂が入り込み電線19の外周が包囲されて水入り対策され、接触していればそれによって水入り対策が可能となるためである。
【0023】
また、ワイヤハーネス100は、電線群11において複数の電線19が直径方向に一列で並ぶので、3本以上の電線19によって包囲された樹脂未充填空間が形成されることがなく、隣接する電線同士の間を確実に水入り対策できる。
【0024】
図3の(a),(b)に示すように、堰き止め部13は、電線群11の延在方向に直交する面で切断した断面が台形状の外周形状部21を有する。堰き止め部13は、断面台形状の底辺側の面が座面23となる(
図5参照)。また、堰き止め部13は、座面23を挟む一対の対向する側面が、電線貫通側面25となる。電線群11は、一方の電線貫通側面25から他方の電線貫通側面25に向かって、堰き止め部13を貫通している。
【0025】
堰き止め部13の断面台形状は、
図3の(b)に示した電線群挿通部27における台形状の貫通穴29に対応したものとなっている。電線群挿通部27は、止水ボックス31の上ケース(隔壁部)33と下ケース(隔壁部)35とに設けられる分割構造とされている。そして、電線群挿通部27には、ワイヤハーネス100の堰き止め部13が嵌入される。即ち、ワイヤハーネス100は、電線群挿通部27に嵌入される堰き止め部13により隔壁部を貫通する。
【0026】
本実施形態において、電線群挿通部27は、
図3の(a)に示すように、下ケース35に形成された底板部37と、上ケース33に形成された山形鍔部39と、が合わせられることで、台形状の貫通穴29が画成される筒状に形成される。この場合、堰き止め部13は、底板部37に座面23が載置された後、山形鍔部39が被せられることで、
図3の(b),(c)に示すように、底板部37と山形鍔部39とによって挟持されて固定される。この堰き止め部13に対する挟持は、分割された上ケース33と下ケース35を締結する締結具(図示略)による固定、或いは底板部37と山形鍔部39とを直接に締結する締結具(図示略)による固定によってなされる。
【0027】
上ケース33及び下ケース35は、電子機器(図示略)を収容する。ワイヤハーネス100は、例えば2つの電線群11のそれぞれに設けられたコネクタ41が電子機器に接続される。止水ボックス31は、堰き止め部13が電線群挿通部27で挟持されることにより、電線群11が上下2段に離間して重なった状態で堰き止め部13により水入り対策される。
【0028】
堰き止め部13は、接続される電線群11の数が増えるごとに、多段状に電線群11が配置される。これにより、堰き止め部13は、止水ボックス31の電線群挿通部27において、多数の電線群11を一括して水入り対策することができる。
【0029】
電線群挿通部27は、貫通穴29の内周面にシールスポンジやゴムなどの止水材15が貼り付けられる。止水材15は、貫通穴29の内周面と、堰き止め部13の外周形状部21との間を確実に止水する。なお、止水材15は、堰き止め部13の外周形状部21に貼ることもできる。
【0030】
図3の(c)に示すように、本実施形態における止水材15は、貫通穴29の軸線方向に沿った沿面長さLsを有する。この沿面長さLsは、電線群11の延在方向に沿った外周形状部21の沿面長さLgよりも長く設定されている。
【0031】
本実施形態の堰き止め部13は、外周形状部21における電線群11の延在方向に沿った一対のエッジ部43の近傍の一部分(
図4に示すエッジ部近傍領域45)が、それぞれ
図6の(a)に示す断面台形状に形成される。一対のエッジ部43とは、外周形状部21の環状面(一対の電線貫通側面25に挟まれる環状の外周面)と電線群11が貫通している一対の電線貫通側面25とがそれぞれ交差する台形状体の角部である。
【0032】
本実施形態の堰き止め部13は、
図4,5及び
図6の(b)に示すように、エッジ部近傍領域45を除く他の部分に、肉抜き部17を有する。肉抜き部17は、堰き止め部13の表面に、くさび形の空間を凹設して形成される。従って、堰き止め部13を成形する後述の成形型51には、肉抜き部17を作るためのくさび形の肉抜き成形部87が、キャビティ75に向かって突設されている(
図7参照)。
【0033】
肉抜き部17は、堰き止め部13の厚肉部に設けられる。堰き止め部13は、後述するように、溶融樹脂が成形型51のキャビティ75に充填されて成形される。溶融樹脂は、成形型への熱伝導が少ないため、厚肉部で冷却に時間を要する。一方、溶融樹脂は、薄肉部では冷却が厚肉部に比べ短時間となる。溶融樹脂は、温度の低下に伴って硬化し、硬化に伴って収縮する。断面が台形形状の堰き止め部は、この冷却時間の違いによる内部応力で、厚肉部に、成形品の表面が陥没等するヒケや、成形品の内部において真空の状態となってできるボイドが生じやすくなる。
【0034】
本実施形態の堰き止め部13は、このヒケ等の発生を回避するために厚肉部に肉抜き部17が形成されている。つまり、肉抜き部17は、堰き止め部13における厚肉部の表面に凹設されることで、この厚肉部における体積を小さくしている。本実施形態では、特に一対のエッジ部43と隣接する厚肉部に、肉抜き部17が設けられる。より具体的には、肉抜き部17は、堰き止め部13の電線19並び方向両側の斜面と、その斜面に対し反対側の座面23に設けられている。即ち、肉抜き部17は、電線群11の延在方向に直交する面で切断した同一断面位置において、両側の斜面に一対、その反対側の座面23に一対の合計4箇所に設けることができる。
【0035】
また、4箇所の肉抜き部17は、本実施形態の堰き止め部13のように、電線群11の延在方向に複数対で設けることができる。本実施形態では、肉抜き部17は、電線群11の延在方向に二組で合計8つが設けられている。
【0036】
本実施形態において、堰き止め部13は、外周形状部21の他の部分である肉抜き部間部47(
図4参照)に、更に断面台形状に形成された部分が形成されている。換言すれば、他の部分における断面台形状に形成された部分は、電線群11の延在方向における二組の肉抜き部17の間に設けられている。このように、堰き止め部13は、断面台形状に形成される部分を電線群11の延在方向に沿う方向で複数個所設けることができる。
【0037】
堰き止め部13は、樹脂成形の特性上、一対のエッジ部43にはヒケができない。このため、堰き止め部13は、これらエッジ部43の近傍を断面台形に形成される部分の形成場所とし、その他の個所を厚肉部が適切な肉厚となる肉抜き部17の形成場所としている。外周形状部21の他の部分に形成される断面台形状の部分は、電線群11の延在方向における堰き止め部13の幅や肉抜き部17の配置に応じて、3つ以上形成することもできる。
【0038】
図7は低圧射出成形機の斜視図である。
本実施形態において、堰き止め部13の成形には、低圧射出成形機49が用いられる。低圧射出成形機49は、電線群11の途中位置に堰き止め部材を一体にモールド成形することができる。なお、本実施形態に係るワイヤハーネスの水入り対策構造は、通常の射出成形機が用いられても勿論よい。低圧射出成形機49は、電動機等の外部動力なしに作業員が一人でも操作可能な成形機である。低圧射出成形機49は、成形型51と、図示しない型締め装置と、成形型51に溶融樹脂を加圧注入する低圧射出装置53と、から構成される。
【0039】
低圧射出装置53は、合成樹脂等を加熱して溶融するヒータが設けられた加熱筒55と、加熱筒内の溶融樹脂を図示しないノズルから射出するプランジャ57と、プランジャ57を前進させる射出シリンダ59と、射出シリンダ59を駆動するハンドル61と、加熱筒55の加熱温度を所望の温度に保持する温調器63と、を有し、これらが台座65に立設する装置支柱67に支持されている。
【0040】
なお、本実施形態における低圧射出成形機49とは、1回の射出成形で成形できる樹脂の量が最大で10g程度のものであって、且つ、成形型の型締め時に、エアシリンダ又はリンク等を用いて手動でも行うことができるものをいう。勿論、低圧射出装置53は、電動機やエア等の外部動力によって射出シリンダ59を駆動するものであってもよい。より具体的には、低圧射出成形機49としては、例えば、特開2010−260297号公報、特開2012−30429号公報及び特開2013−103492号公報などに開示された公知の「射出成形装置」を用いることができる。
【0041】
本実施形態に係る成形型51は、台座65に配置される。成形型51は、上型69と下型71とが、電線群11の延在方向に沿った外側両端部分に形成されたバリきり73で電線群11を挟むことにより、堰き止め部13を成形可能な空間(キャビティ75)を画成する。
【0042】
すなわち、上型69及び下型71は、上型分割面77及び下型分割面79を有する。上型分割面77及び下型分割面79には、上側ハーネス収容部81及び下側ハーネス収容部83が設けられる。成形型51は、上型69と下型71が型締めされると、内部に中空のキャビティ75を画成する。上側ハーネス収容部81は、このキャビティ75の上側部分と、バリきり73と、からなる。下側ハーネス収容部83は、このキャビティ75の下側部分と、バリきり73と、からなる。バリきり73は、一列の電線群11の延在方向に沿ったキャビティ75の外側両端部分において一列の電線群11の外周を挟む。本実施形態において、バリきり73は、電線群11を挟む面が平坦な面で形成される。
【0043】
下型71におけるバリきり73は、一列の電線群11を収容可能な凹状部85を有し、下型分割面79からの深さが電線19の直径と略同じとされる。一方、上型69におけるバリきり73は、上型分割面77と同じ面上に平板状に形成されている。
【0044】
なお、下型71と上型69のバリきり73は、同一の凹状部85で形成してもよい。この場合、下型71と上型69のバリきり73を構成する凹状部85は、下型分割面79と上型分割面77からの深さが電線19の半径と略同じとされる。
【0045】
成形型51は、下型71におけるバリきり73の凹状部内に一列の電線群11を収容した状態で上型69と下型71を型締めする。下型71のみに凹状部85を設けた成形型51は、電線群11が下側ハーネス収容部83に配置し易くなり、型締め時の電線噛み込みが生じにくくなる。
【0046】
下型71と上型69のキャビティ75には、複数の肉抜き成形部87が突設されている。堰き止め部13は、この肉抜き成形部87がキャビティ75に充填された溶融樹脂に入り込むことにより肉抜き部17が凹状に形成される。つまり、肉抜き成形部87の外形状は、肉抜き部17の内形状と一致する。
【0047】
次に、上記した構成の作用を説明する。
本実施形態に係るワイヤハーネスの水入り対策構造では、上下ケース33,35に設けられる分割構造の電線群挿通部27にセットされた堰き止め部13は、断面台形状に形成された一対のエッジ部43近傍の一部分の外周形状部21により、電線群挿通部27の貫通穴29との間からの水入りを抑制する。堰き止め部13は、他の部分の外周形状部21に肉抜き部17が形成されて厚肉部の体積が減ぜられることにより、電線群11をモールド成形する際のヒケやボイド等の成形不良が生じ難くなる。
【0048】
また、本実施形態のワイヤハーネスの水入り対策構造では、堰き止め部13は、外周形状部21における他の部分にも、断面台形状の部分が形成されることにより、貫通穴29との間を水の通過方向に多段に水密シールできる。これにより、堰き止め部13は、電線群挿通部27の貫通穴29との間からの水入りを更に抑制することができる。
【0049】
このように、本実施形態に係るワイヤハーネスの水入り対策構造は、堰き止め部13における外周形状部21の厚肉部に肉抜き部17を備えることにより、止水ボックス31の内外に通じる水入り流路が形成されることを防止できる。このため、電線群挿通部27では、堰き止め部13の外周形状部21が、貫通穴29の内周面に貼り付けられた止水材15と外表面の環状の全周で確実に密着する。その結果、ワイヤハーネスの水入り対策構造は、電線群挿通部27での水入りをより確実に抑制できる。
【0050】
また、本実施形態のワイヤハーネスの水入り対策構造では、貫通穴29の軸線方向に沿った止水材15の沿面長さLsを電線群11の延在方向に沿った外周形状部21の沿面長さLgよりも長くすることで、電線群挿通部27の貫通穴29に対して堰き止め部13が位置ずれしても、外周形状部21の一対のエッジ部43が止水材15から離れてしまうことがない。これにより、堰き止め部13は、安定して貫通穴29との間からの水入りを抑制することができる。
【0051】
なお、上記実施形態では、堰き止め部は2段の電線群11をモールドする場合を説明したが、本発明の構成は、堰き止め部が3段以上の電線群11をモールドする構成としてもよい。これにより、ワイヤハーネスは、多数の電線群11に対して同時に水入り対策をとることができる。
【0052】
従って、本実施形態に係るワイヤハーネスの水入り対策構造によれば、断面が台形形状の堰き止め部13を用いながら水入り対策効果を向上させることができる。
【0053】
ここで、上述した本発明に係るワイヤハーネスの水入り対策構造の実施形態の特徴をそれぞれ以下に簡潔に纏めて列記する。
[1] 複数の電線(19)が直径方向に並ぶ少なくとも一列の電線群(11)と、前記電線群の延在方向の一部分を包囲し分割構造の電線群挿通部(27)における台形状の貫通穴(29)に応じた外周形状部(21)を有する硬質樹脂材製の堰き止め部(13)と、前記外周形状部との間を止水するため前記貫通穴の内周面に設けられた止水材(15)と、を備えるワイヤハーネスの水入り対策構造であって、
前記外周形状部における前記電線群の延在方向に沿った一対のエッジ部(43)近傍の一部分(エッジ部近傍領域45)がそれぞれ断面台形状に形成され、他の部分が肉抜き部(17)を有する
ことを特徴とするワイヤハーネスの水入り対策構造。
[2] 前記外周形状部における前記他の部分(肉抜き部間部47)に、更に断面台形状に形成された部分が形成される、
ことを特徴とする上記[1]に記載のワイヤハーネスの水入り対策構造。
[3] 前記貫通穴の軸線方向に沿った前記止水材の沿面長さ(Ls)が、前記電線群の延在方向に沿った前記外周形状部の沿面長さ(Lg)よりも長いことを特徴とする上記[1]又[2]に記載のワイヤハーネスの水入り対策構造。
【0054】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。