特許第6415540号(P6415540)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6415540
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】カーボンナノ材料の被覆方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/31 20060101AFI20181022BHJP
   C23C 18/28 20060101ALI20181022BHJP
   C01B 32/158 20170101ALI20181022BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20181022BHJP
【FI】
   C23C18/31 A
   C23C18/28ZNM
   C01B32/158
   B82Y40/00
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-509398(P2016-509398)
(86)(22)【出願日】2014年4月17日
(65)【公表番号】特表2016-526092(P2016-526092A)
(43)【公表日】2016年9月1日
(86)【国際出願番号】EP2014057859
(87)【国際公開番号】WO2014173793
(87)【国際公開日】20141030
【審査請求日】2017年4月10日
(31)【優先権主張番号】1330038-9
(32)【優先日】2013年4月21日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】518013349
【氏名又は名称】シェンジェン シェン ルイ グラフィン テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ヨハン・ジャンイーン
【審査官】 菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/119563(WO,A1)
【文献】 特開平04−097912(JP,A)
【文献】 特開2007−262583(JP,A)
【文献】 Xiaohua Chen 他,「Carbon-nanotube metal-matrix composites prepared by electroless plating」,Composites Science and Technology,英国,2000年 2月,Vol.60 No.2,301-306
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C18/00−20/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノ材料の自己触媒めっき方法であって、前記方法は
少なくとも2種の酸化剤を含む酸化性溶液中のカーボンナノ材料を用意し、前記酸化性溶液を第1の温度範囲内に維持し、前記酸化性溶液を第1の所定の時間撹拌する工程と、
前記酸化性溶液を加熱して、前記第1の温度範囲より高い第2の温度範囲に到達させ、前記酸化性溶液を前記第2の温度範囲内に維持しながら、前記酸化性溶液を前記第1の時間より短い第2の所定の時間撹拌する工程と、
前記ナノ材料を前記酸化性溶液から取り出す工程と、
ホルムアルデヒド、ポリビニルピロリドンまたは塩化スズ(II)を含む増感剤を含む増感水溶液に前記ナノ材料を分散する工程と、
前記ナノ材料を前記増感溶液から取り出す工程と、
パラジウムを含む溶液に前記ナノ材料を浸漬することで、前記ナノ材料にパラジウム種粒子を付着させる工程と、
前記ナノ材料を前記パラジウムを含む溶液から取り出す工程と、
水性の金属源および第1の水性還元剤を含むめっき溶液に前記ナノ材料を浸漬することによって、金属性層が前記パラジウム種粒子から前記ナノ材料上に成長するように前記ナノ材料をめっきする工程と、
前記ナノ材料を前記めっき溶液から取り出す工程と、
第2の還元剤を含む水溶液に前記ナノ材料を分散する工程と、
前記第2の還元剤を含む水溶液を加熱して、第3の温度範囲に到達させ、前記第2の還元剤を含む水溶液を前記第3の温度範囲内に維持しながら、加熱した前記第2の還元剤を含む水溶液の超音波処理を第3の所定の時間行うことにより第2の還元剤で還元する工程と
を含み、
前記酸化剤が、過マンガン酸カリウムおよび硫酸を含み、
前記第1の温度範囲が、−10〜10℃であり、前記第1の時間が、1時間〜8時間であり、
前記第2の温度範囲が、30〜50℃であり、前記第2の時間が、10〜60分である方法。
【請求項2】
前記酸化剤が、二クロム酸カリウムおよび窒化ナトリウムのうちの少なくとも種を更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記ナノ材料を前記酸化性溶液から取り出す前記工程が、前記ナノ材料を濾過し、すすぎ液のpH値が約7になるまで脱イオン水ですすぐことを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の還元剤が、硫酸コバルト、塩化第一鉄、ホルムアルデヒド、ポリビニルピロリドン、アンモニア水、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸またはベンゾトリアゾールを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記めっきする工程が、前記めっき溶液中の溶存酸素を超音波で除去し、したがって前記還元剤の酸化を回避することを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記めっきする工程が、前記めっき溶液に窒素ガスを通しながら閉容器中で行われる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記水性の金属源が、パラジウム、銀、金またはニッケルを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記水性の金属源が、窒化銀、塩素酸パラジウム、塩化金及び塩化ニッケルを含む群から選択される金属イオン源である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第3の温度範囲が、60〜100℃であり、前記第3の時間が、少なくとも1時間である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記カーボンナノ材料が、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーまたはグラフェンである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記めっきする工程が、0.5時間〜24時間行われる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の還元剤が、水酸化カリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ピロガロール、L−アスコルビン酸およびヒドラジン一水和物を含む群から選択される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、炭素系ナノ材料に関し、特にこのような材料の被覆に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素系ナノ材料(CNM)はその優れた機械的および電気的特性のために最近多くの注目を引いている。たとえば、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(CNF)およびグラフェンは、高引張強さおよび高弾性率、ならびに高熱伝導率および高電気伝導率を含めて、それらの優れた機械的特徴のため、様々な用途の理想的な原材料である。
【0003】
したがって、CNMの実際の適用のための研究が積極的に進められてきた。特に、これらのナノ材料を含む金属複合材は、改善された独特の機能性を提供する新規材料として有望である。たとえば、金属−CNF複合材は、高強度および高熱伝導率を有するものと予想される。しかし、CNFの溶融金属、たとえばスズ合金、アルミニウムおよび銀との濡れ性が良くないので、いくつかの欠陥および空孔が複合材の中に検出されることがあり、これはあらゆる種類のCNMに存在する共通の問題でもある。したがって、金属合金と合わせる前にCNMの表面改質が必要である。
【0004】
金属被覆を表面に塗布することが、それらの溶融金属との濡れ性を改善するのに最も有効な方法の1つである。金属被覆または被着によって、CNMに種々の有益な特性、たとえば高い平均密度、種々の溶媒に対する良好な溶解性ならびに望ましい磁性および触媒特性を付与することもできる。金属被覆したCNMは高い平均密度のため、リフロー後にはんだフラックスによって不純物として除去されることがない。均質な金属被覆層であれば、ナノ材料の凝集を防止するためのバリヤとしても働くことができ、それによって、十分に分散させたCNM懸濁液を得ることが容易になる。強磁性金属で被覆したCNMは、磁界により制御可能に動かすことができ、このことによって、高度に制御されたマイクロテクスチャを有するCNM複合材がもたらされてもよい。触媒金属粒子を被着させたCNMは、用途、たとえば改善された燃料電池電極に関して優れた触媒をもたらしてもよい。
【0005】
したがって、CNMの表面上の均一に分散させた金属被覆層は上記の興味深い特性の達成に決定的に重要なものとなる。しかし、CNMの不活性な性質は周囲との相互作用の弱さにもつながり、したがって(金属ナノ粒子の均一な被着を含めて)表面機能化の点から難題である。CNMに対する金属性被覆方法は公知であるが、単にスズ(II)イオンを増感剤として使用して、CNMを前処理するような通常の増感方法はCNMの表面不活性が強いのであまりうまくいかず、従来の硝酸処理では炭素と硝酸の間の反応を精密に制御することができないので、十分な活性化点を形成することができない。これらの要因はすべて、被着させた金属ナノ粒子の粒度分布および均一性にマイナス効果をもたらすことになる。
【発明の概要】
【0006】
被覆したナノ材料の上記の所望の特性ならびに先行技術の上記および他の欠点を考慮して、本発明の目的はカーボンナノ材料の自己触媒めっきの改良方法を提供することである。
【0007】
したがって、本発明の第1の側面によれば、カーボンナノ材料の自己触媒めっき方法が提供され、方法は、少なくとも2種の酸化剤を含む酸化性溶液中のカーボンナノ材料を用意し、溶液を第1の温度範囲内に維持し、溶液を第1の所定の時間撹拌する工程と、溶液を加熱して、第1の温度範囲より高い第2の温度範囲に到達させ、溶液を第2の温度範囲内に維持しながら、溶液を第1の時間より短い第2の所定の時間撹拌する工程と、ナノ材料を酸化性溶液から取り出す工程と、増感剤を含む増感水溶液にナノ材料を分散する工程と、ナノ材料を増感溶液から取り出す工程と、ナノ材料に付着している種粒子を含む種混合物にナノ材料を浸漬する工程と、ナノ材料を種混合物から取り出す工程と、水性の金属源および第1の水性還元剤を含むめっき溶液にナノ材料を浸漬することによって、金属性層が種粒子からナノ材料上に成長するようにナノ材料をめっきする工程と、ナノ材料をめっき溶液から取り出す工程と、第2の還元剤を含む水溶液にナノ材料を分散する工程と、溶液を加熱して、第3の温度範囲に到達させ、溶液を第3の温度範囲内に維持しながら、加熱した溶液の超音波処理を第3の所定の時間行う工程とを含む。
【0008】
カーボンナノ材料(CNM)は本文脈の中では、ナノメートルの粒度範囲において少なくとも何らかの特徴を有する炭素系材料または構造として理解されるべきである。
【0009】
無電解めっきまたは化学めっきと呼ぶこともある自己触媒めっきは、外部電力を使用することなく、反応が水溶液中で行われる方法に関する。
【0010】
カーボンナノ材料をそれぞれの溶液および/または混合物から取り出す工程は、当業者に公知の通常の方法、たとえば濾過および/または乾燥のいずれの方法で行ってもよい。
【0011】
本発明は、前処理工程において異なる少なくとも2種の酸化剤(複数の酸化体)を使用することによって、CNMの表面が、ある温度範囲において炭素に強い影響を及ぼす複数の酸化体によって酸化されるという認識に基づいている。それによって、酸化度は、反応温度および反応時間を改変することにより精密に制御することができる。酸化度が高かすぎると、炭素材料の構造を破壊する可能性があるので、CNMの酸化度を制御することは極めて重大である。
【0012】
ここで、酸化は2工程に分けられ、方法の初めに長い間低温を維持して、酸化体を炭素分子の間隔に浸透させる。次に、温度を上げ、より短い時間維持して、反応を引き起こす。この工程において、元の安定なsp2炭素−炭素結合が突然切断され、代わりに材料の構造全体を破壊することなく、十分な可逆的酸素含有基がCNMの表面に形成された。温度を急速に上げてもよい。
【0013】
表面酸化を行った後、CNMの表面の金属ナノ粒子の分散、粒度および幾何形状を錯化剤の存在および還元剤の特殊な特性の結果として十分制御して、基材表面に緻密で均質な金属ナノ粒子を被着させることができる無電解析出方法で金属性層を合成した。その後、金属被覆したCNMの還元を行えば、酸素含有基の大部分を炭素表面から除去し、炭素−炭素結合を再形成することができる。
【0014】
本発明の一態様において、第1の温度範囲は、有利には、−10〜10℃であってもよく、第1の時間は1時間〜8時間であってもよい。
【0015】
本発明の一態様において、第2の温度範囲は、有利には、30〜50℃であってもよく、第2の時間は10〜60分であってもよい。上記の温度範囲および時間で、CNMの元の構造を破壊することなく、CNMの効率的な酸化が可能になることが明らかになった。
【0016】
本発明の一態様によれば、酸化剤は、有利には、硫酸、硝酸、過マンガン酸カリウム、二クロム酸カリウムおよび窒化ナトリウムのうちの少なくとも2種を含んでいてもよい。たとえば硫酸分子を利用して、CNTの様々な層を貫通し、過マンガン酸カリウム分子を内側に運び、酸化を実現することによって、十分な量の酸化スポットを形成して、その後の金属被覆方法を容易にすることができる。
【0017】
さらに、増感剤は、好ましくは、ホルムアルデヒド、ポリビニルピロリドンまたは塩化スズ(II)を含んでもよい。
【0018】
本発明の一態様において、ナノ材料を酸化性溶液から取り出す工程は、有利には、ナノ材料を濾過し、すすぎ液のpH値が約7になるまで脱イオン水ですすぐことを含んでいてもよい。それによって、pH値を監視することにより、酸化剤のすべてが除去されていること、カーボンナノ材料しか残留していないことを決定することができる。
【0019】
本発明の一態様によれば、種粒子は、有利には、パラジウムを含んでいてもよい。パラジウムはたとえば塩化パラジウムから供給されてもよい。しかし、他の金属、たとえば金銀および銅を種粒子として使用してもよい。
【0020】
本発明の一態様によれば、第1の還元剤は、硫酸コバルト、塩化第一鉄、ホルムアルデヒド、ポリビニルピロリドン、アンモニア水、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸またはベンゾトリアゾールを含んでもよい。
【0021】
本発明の一態様によれば、めっきする工程は、有利には、前記溶液中の溶存酸素を超音波で除去して、前記還元剤の酸化を回避することを含んでいてもよい。
【0022】
本発明の一態様によれば、めっきする工程は、前記溶液に窒素ガスを通しながら、閉容器で行われてもよい。
【0023】
本発明の一態様によれば、水性の金属源は、パラジウム、銀、金またはニッケルを含んでもよい。
【0024】
本発明の一態様において、水性の金属源は、窒化銀、塩素酸パラジウム、塩化金、塩化ニッケル、アンモニア水、硫酸アンモニウム、エチレンジアミンおよびエチレンジアミン四酢酸を含む群から選択される金属イオン源であってもよい。
【0025】
本発明の一態様において、第3の温度範囲は60〜100℃であってもよく、第3の時間は少なくとも1時間であってもよい。
【0026】
本発明の一態様において、カーボンナノ材料は、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーまたはグラフェンであってもよい。当然、他の同様の炭素系ナノ材料を使用することも可能である。さらに、同様のカーボンナノ材料は、異なる名称、たとえばナノロッド、ナノピラー、ナノワイヤなどで呼ばれていてもよい。
【0027】
本発明の一態様において、めっきする工程は、0.5〜24時間行われてもよい。めっき時間によって、CNM上に得られる金属性被覆の厚さが決まる。したがって、めっき時間を制御することによって、所望の被覆厚さを実現することが可能である。
【0028】
本発明の一態様によれば、第2の還元剤は、有利には、水酸化カリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ピロガロール、L−アスコルビン酸およびヒドラジン一水和物を含む群から選択されていてもよい。第2の還元剤は、好ましくは、強還元剤である。
【0029】
本発明の別の特徴および利点は、添付の特許請求の範囲および以下の説明を詳しく検討すると明らかになる。当業者は、本発明の異なる特徴を組み合わせて、以下に記載される態様以外の態様を本発明の範囲から逸脱することなく作り出していてもよいことを理解する。
【0030】
ここで、本発明の以上および他の側面について、本発明の例示的な態様を示す添付の図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本発明の一態様による方法の一般工程を概略する流れ図である。
図2a図2aは、本発明の一態様に従って製造された材料を示すTEM画像である。
図2b図2bは、本発明の一態様に従って製造された材料を示すTEM画像である。
図3a図3aは、本発明の一態様に従って製造された材料を示すTEM画像である。
図3b図3bは、本発明の一態様に従って製造された材料を示すTEM画像である。
図4図4は、本発明の一態様に従って被覆した材料のXRD回折図形である。
【発明の好ましい態様の詳細な説明】
【0032】
この詳細な説明において、カーボンナノ材料(CNM)、たとえばカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーまたはグラフェン(以降CNMと呼ぶ)を参照しながら、本発明によるナノ材料の被覆方法の様々な態様を主に述べる。
【0033】
被覆したナノ材料を製造する方法について、方法の一般工程を概略する図1の流れ図を参照しながら説明する。
【0034】
最初に(102)、選択されたCNMをアセトンおよび脱イオン水ですすいで、いずれの不純物および保護層もCNMの表面から除去する。
【0035】
すすいだ後、CNMを複数の酸化剤と約−10〜10℃の範囲の温度で混合し(104)、続いてその温度で1〜4時間撹拌して、強酸化が起こることなく、酸化剤の分子がCNMの表面に侵入するようにする。
【0036】
酸化剤は、硫酸、硝酸、過マンガン酸カリウム、二クロム酸カリウムおよび窒化ナトリウムのうちの少なくとも2種を含む。硫酸および窒化ナトリウムはインターカレーション剤として働いて、酸化剤をCNTの内層に運び、過マンガン酸カリウムであってもよい酸化剤はCNTの表面酸化を行う。爆発反応を回避するために、酸化剤は、非常にゆっくり硫酸に添加されるべきである。
【0037】
次に、約0.5時間〜3時間撹拌しながら、30〜50℃の範囲に維持するために、温度を上げて制御する。
【0038】
その後、酸化されたCNMを、真空濾過を使用することによって溶液から分離し、その後CNMを脱イオン水で濾液のPHが約7になるまで数回洗浄して、酸化剤が完全に除去されていることを確実にする。
【0039】
洗浄後に、酸化されたCNMを増感剤水溶液に分散し、したがってCNMが増感される(106)。増感剤は、たとえばホルムアルデヒド、ポリビニルピロリドンまたは塩化スズ(II)となるように選択されていてもよい。
【0040】
増感後に、CNMを、塩化パラジウムを含有する溶液に浸漬し、パラジウム粒子がCNMに付着することによって活性化した(108)後に、遠心し、濾過した溶液のpHが7.0になるまで蒸留水ですすぐ。次いで、パラジウム種で被覆したCNMを回収し、真空オーブンで乾燥する。パラジウムは銀自己めっきプロセスを引き起こすのに優れた触媒であるので、パラジウム種粒子はその後の銀の成長の核形成点として特に有利である。
【0041】
次に、活性化したCNMを自己触媒めっき溶液に浸漬する。自己触媒めっき溶液は、金属イオン源水溶液と水性還元剤溶液の2つの別個の溶液として調製して、めっきより前に等量を混合する。めっき(110)は室温で実施し、被着時間は必要とされる被覆厚さによって決まる。たとえば、金属ナノ粒子のCNM上での成長速度は約0.5nm/時であってもよい。還元剤の酸化を回避するために、脱イオン水中の溶存酸素を超音波で除去し、溶液に窒素ガスを通しながら、被着を閉容器中で行う。それによって、外形のはっきりした均質な金属被覆を有する炭素系ナノ材料が、カーボンナノ材料の構造を損傷することなく提供される。
【0042】
コバルト還元剤水溶液は、以下の化学物質:硫酸コバルト、塩化第一鉄、ホルムアルデヒド、ポリビニルピロリドン、アンモニア水、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸およびベンゾトリアゾールのうちの1つまたは複数であってもよい。
【0043】
金属イオン源水溶液は、窒化銀、塩素酸パラジウム、塩化金、塩化ニッケル、アンモニア水、硫酸アンモニウム、エチレンジアミンおよびエチレンジアミン四酢酸のうちの1つまたは複数とすることができる。それによって、金属、たとえばパラジウム、銀、金およびニッケルを被覆していてもよい。典型的には、5〜100nmの範囲の厚さを有する金属被覆を設けることが望ましくてもよい。
【0044】
反応が完了した後、すなわち所望の厚さに到達した後、金属被覆したCNMを濾過し、濾液の色が実質的に透明になるまで洗浄する。洗浄後に、超音波処理を使用して、CNMを脱イオン水に強還元剤と共に再分散する(112)。第2の還元性溶液を使用して、CNM上の酸素含有基を除去する。第2の還元性溶液は以下の化学物質のうちの1つまたは複数とすることができる。水酸化カリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ピロガロール、L−アスコルビン酸およびヒドラジン一水和物。還元方法は、60〜100℃で数時間、たとえば1時間〜12時間実施される。最後に、金属被覆したCNMを濾別し、質量損失が認められなくなるまで真空オーブン中で乾燥する。
【0045】
銀層で被覆したCNMの形態を透過型電子顕微鏡(TEM)で試験した。試料の元素組成および構造分析をX線回折(XRD)で解析した。
【0046】
図2aは初期のカーボンナノファイバー(CNF)のTEM画像を示し、図2bは銀ナノ粒子で被覆したカーボンナノファイバーの画像である。直径50nmのCNFを選択して、被覆方法を実証した。被覆後、CNFの表面にその元の構造を破壊することなく、直径3〜5nmの銀ナノ粒子の層を均一に分散させた。
【0047】
図3a〜bは、銀被覆したグラフェンを異なる倍率で示すTEM画像である。被覆後、制御粒度2〜3nmの銀ナノ粒子の層をグラフェンシートの両側に均一に分散させて、銀/グラフェン/銀ハイブリッド材料を形成した。銀被覆層は薄かったので、グラフェンの特性に影響を及ぼさなかった。
【0048】
図4は、銀被覆したカーボンナノファイバー試料のX線回折(XRD)回折図形を示す。回折図形において、金属性銀の面心立方(FCC)構造に対応するピーク、最も顕著には(111)反射の出現によって、銀の存在が確認される。
【0049】
本発明をその特定の例示態様に関して説明してきたが、多くの異なる変更、修正などが当業者に明らかになる。
【0050】
さらに、図面、開示、および添付の特許請求の範囲を詳しく検討することによって、当業者が特許請求された発明を実施する際に、開示された態様に対する改変を理解して達成することができる。特許請求の範囲において、「含む(comprising)」という単語は他の要素または工程を排除せず、不定冠詞「a」または「an」は複数を排除しない。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4