(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるイオン発生装置を示す斜視図である。
図2は、
図1に示したイオン発生装置の平面図である。
図3は、
図1に示したイオン発生装置の断面図である。
図4は、
図1に示したイオン発生装置から蓋部材を外した状態を示す斜視図である。まず、
図1〜
図4を参照して、実施の形態1のイオン発生装置の構造について詳細に説明する。
【0016】
実施の形態1のイオン発生装置は、2本の放電電極1,2と、環状の誘導電極3,4と、2枚の長方形状のプリント基板5,6とを備えている。誘導電極3は、放電電極1との間に電界を形成するための電極である。誘導電極4は、放電電極2との間に電界を形成するための電極である。放電電極1は、誘導電極3との間で、負イオンを発生するための電極である。放電電極2は、誘導電極4との間で、正イオンを発生するための電極である。
【0017】
プリント基板5,6は、所定の間隔を開けて、
図3中の上下に平行に配置されている。誘導電極3は、プリント基板5の長手方向の一方端部の表面に、プリント基板5の配線層を用いて形成されている。誘導電極3の内側には、プリント基板5を貫通する孔5aが開口されている。誘導電極4は、プリント基板5の長手方向の他方端部の表面に、プリント基板5の配線層を用いて形成されている。誘導電極4の内側には、プリント基板5を貫通する孔5bが開口されている。誘導電極3,4は、プリント基板5の配線層によって低コストで形成されており、これによりイオン発生装置の製造コストが低減されている。
【0018】
放電電極1,2の各々は、プリント基板5,6に対して垂直に設けられている。放電電極1の基端部はプリント基板6の孔に挿嵌されており、その先端部はプリント基板5の孔5aの中心を貫通している。放電電極2の基端部はプリント基板6の孔に挿嵌されており、その先端部はプリント基板5の孔5bの中心を貫通している。放電電極1,2の各々の基端部は、半田によってプリント基板6に固定されている。
【0019】
誘導電極3,4は、プリント基板5に形成されている。放電電極1,2は、プリント基板5とは別の、プリント基板6に固定されている。そのため、プリント基板5,6上に塵埃が堆積した状態でイオン発生装置が高湿度環境下におかれた場合でも、放電電極1,2と誘導電極3,4との間の電流のリークを抑制でき、イオンを安定して発生することが可能とされている。
【0020】
放電電極1,2の各々の先端部は、ブラシ状に形成されている。放電電極1は、その先端部に設けられた複数の糸状の導電体7と、複数の導電体7の根元を束ねる接合部7aとを有している。放電電極2は、その先端部に設けられた複数の糸状の導電体8と、複数の導電体8の根元を束ねる接合部8aとを有している。
【0021】
放電電極1,2の導電体7,8は、導電性の材料で形成されている。導電体7,8はたとえば、金属、カーボン繊維、導電性繊維、または導電性樹脂製であってもよい。導電体7,8の1本当たりの外径は、5μm以上30μm以下である。導電体7,8の太さを5μm以上にすることにより、導電体7,8の機械的強度を確保するとともに、導電体7,8の電気磨耗が抑制されている。導電体7,8の太さを30μm以下にすることにより、髪の毛のように撓る導電体7,8が形成され、詳細を後述する導電体7,8の広がりおよび揺れ動きが起こりやすくなる。導電体7,8は、外径7μmのカーボン繊維であってもよく、または、外径12μmもしくは25μmのSUS製の導電性繊維であってもよい。
【0022】
導電体7,8が接合部7a,8aから突出する長さが短すぎると、導電体7,8が撓りにくくなるので、導電体7,8の広がりおよび揺れ動きが小さくなり、本実施の形態のイオン発生装置の効果が十分に得られない。そのため、導電体7,8が接合部7a,8aから突出する長さは、3mm以上とする。導電体7,8は、接合部7a,8aに対して4.5mm以上突出していてもよい。
【0023】
また、このイオン発生装置は、プリント基板5,6よりも若干大きな長方形の開口部を有する直方体状の筐体10と、筐体10の開口部を閉じる蓋部材11と、回路基板16と、回路部品17と、トランス18とを備えている。
【0024】
筐体10は、絶縁性の樹脂で形成されている。筐体10の下部は上部よりも若干小さく形成されており、筐体10の内壁において筐体10の上部と下部の境界には段差が形成されている。また、筐体10の下部は、仕切り板10aによって長手方向に2分割されている。トランス18は、仕切り板10aの一方側の底に収容されている。回路基板16は、仕切り板10aの他方側の空間を閉じるように、仕切り板10aと段差の上に設けられている。回路部品17は、回路基板16の下面に搭載され、仕切り板10aの他方側の空間に収容されている。
【0025】
プリント基板5,6は、筐体10の上部に水平に収容されている。回路基板16とトランス18とプリント基板5,6とは、配線によって電気的に接続されている。筐体10内の高電圧部には、樹脂などの絶縁材料19が充填されている。絶縁材料19は、プリント基板6の下面まで充填されている。なお、本実施の形態では、トランス18の1次側に接続されている回路部品17は絶縁材料19によって絶縁する必要がないので、仕切り板10aの他方側の空間には絶縁材料19を充填していない。
【0026】
蓋部材11は、絶縁性の樹脂で形成されている。筐体10の内壁の上端部には溝が形成されており、蓋部材11の長手方向の両端には筐体10の溝に挿入される係止部が突設されている。蓋部材11によってプリント基板5,6が覆われていることにより、プリント基板5,6上への塵埃の堆積が抑制されている。
【0027】
蓋部材11の下面には、孔5aおよび放電電極1に対応する位置に中空円筒状のボス11aが形成されている。蓋部材11の下面には、孔5bおよび放電電極2に対応する位置に中空円筒状のボス11bが形成されている。ボス11a,11bは、プリント基板5,6の厚み方向に延びて形成されている。ボス11a,11bの内径は、それぞれ放電電極1,2の外径よりも大きい。蓋部材11には、ボス11a,11bの内側に、蓋部材11を厚み方向に貫通する孔が形成されている。放電電極1,2は、それぞれボス11a,11bを貫通している。放電電極1,2は、それぞれ蓋部材11に形成された孔を貫通して、蓋部材11から突出している。放電電極1,2の先端部の導電体7,8は、蓋部材11の上に突出しており、そのため、蓋部材11上に塵埃が堆積した場合でも導電体7,8が塵埃に埋もれて放電が妨げられることはない。
【0028】
ボス11a,11bの外径は、それぞれプリント基板5の孔5a,5bの内径よりも小さい。ボス11a,11bは、それぞれプリント基板5の孔5a,5bを貫通している。ボス11a,11bの先端面(下端面)とプリント基板6の表面との間には、わずかな隙間が形成されている。ボス11a,11bを設けたことにより、放電電極1,2と誘導電極3,4との間の空間距離が増大しており、放電電極1,2と誘導電極3,4との間の電流のリークをより効果的に抑制可能とされている。
【0029】
図5は、
図1に示したイオン発生装置の構成を示す回路図である。
図5を参照して、イオン発生装置は、放電電極1,2および誘導電極3,4の他に、電源端子T1、接地端子T2、ダイオード32,33および昇圧トランス31を備えている。
図5の回路のうちの放電電極1,2および誘導電極3,4以外の部分は、
図1では回路基板16、回路部品17、およびトランス18などで構成されている。なお、放電電極1を構成するブラシ状の導電体7,8は、
図5では図示を省略されている。
【0030】
電源端子T1および接地端子T2には、それぞれ直流電源の正極および負極が接続されている。電源端子T1には直流電源電圧(たとえば+12Vまたは+15V)が印加され、接地端子T2は接地されている。電源端子T1および接地端子T2は、電源回路30を介して、昇圧トランス31に接続されている。
【0031】
昇圧トランス31は、1次巻線31aおよび2次巻線31bを含んでいる。2次巻線31bの一方端子は誘導電極3,4に接続されており、他方端子はダイオード32のアノードおよびダイオード33のカソードに接続されている。ダイオード32のカソードは放電電極1の基端部に接続されており、ダイオード33のアノードは放電電極2の基端部に接続されている。
【0032】
次に、このイオン発生装置の動作について説明する。電源端子T1および接地端子T2間に直流電源電圧が印加されると、電源回路30が有しているコンデンサ(不図示)に電荷が充電される。コンデンサに充電された電荷は、昇圧トランス31の1次巻線31aを介して放電され、1次巻線31aにはインパルス電圧が発生する。
【0033】
1次巻線31aにインパルス電圧が発生すると、2次巻線31bに正および負の高電圧パルスが交互に減衰しながら発生する。正の高電圧パルスはダイオード32を介して放電電極1に印加され、負の高電圧パルスはダイオード33を介して放電電極2に印加される。これにより、放電電極1,2の先端の導電体7,8でコロナ放電が発生し、それぞれ正イオンおよび負イオンを発生する。
【0034】
なお、正イオンは、水素イオン(H
+)の周囲に複数の水分子がクラスター化したクラスターイオンであり、H
+(H
2O)
m(mは0以上の任意の整数)と表わされる。負イオンは、酸素イオン(O
2−)の周囲に複数の水分子がクラスター化したクラスターイオンであり、O
2−(H
2O)
n(nは0以上の任意の整数)と表わされる。また、正イオンおよび負イオンを室内に放出すると、両イオンが空気中を浮遊するカビ菌やウィルスの周りを取り囲み、その表面上で互いに化学反応を起こす。その際に生成される活性種の水酸化ラジカル(・OH)の作用により、浮遊カビ菌などが除去される。
【0035】
図6は、
図1に示したイオン発生装置における放電電極1の突出長に占めるブラシ長の割合について示す図である。
図6および後述する
図7,8では、イオン発生装置の2本の放電電極1,2のうち放電電極1について例示するが、放電電極2も放電電極1と同様の構成を有している。
図6に示す長さL1は、放電電極1の導電体7が接合部7aから突出している長さを示し、長さL2は、放電電極1の接合部7aが蓋部材11から突出している長さを示している。
【0036】
放電電極1では、導電体7が接合部7aから突出する長さは、蓋部材11から突出している放電電極1の長さの半分以下である。放電電極1が蓋部材11から突出している長さは、
図6に示す長さL1と長さL2との和で表わされ、導電体7が接合部7aから突出する長さを示す長さL1は、長さL1と長さL2との和の半分以下である。導電体7の接合部7aに対する突出長を示す長さL1は、接合部7aの蓋部材11に対する突出長を示す長さL2よりも小さい。蓋部材11に対する放電電極1の突出長からブラシ長を引いた長さ(長さL2)は、ブラシ長(長さL1)よりも大きく設定されている。
【0037】
図7は、
図1に示したイオン発生装置に通電し、ブラシ先端部が開いた状態を示した図である。導電体7は細径の糸状に形成されており、髪の毛のように撓ることが可能である。放電電極1に高電圧パルスがダイオード32(
図5参照)を介して印加されると、各々の導電体7が同極のため電気的に反発し、
図7に示すように、ブラシの先端が開いたような形状を形成する。
【0038】
図8は、
図1に示したイオン発生装置における、放電電極1から誘導電極3へ向かう電気力線Fを示す図である。誘導電極3は、プリント基板5の表面に形成されており、放電電極1の導電体7の根元側に配置されている。放電電極1に高電圧が印加されるときの電気力線Fの経路は、
図8中の矢印で示すように、導電体7の先端から誘導電極3へ向かう。このとき、導電体7の先端において、正イオンが発生する。導電体7同士の電気的な反発によって導電体7が曲げ変形しているために、導電体7の先端が存在している領域の面積が増大している。ブラシ状の放電電極1を備えているイオン発生装置では、イオンを発生する領域の面積が増大しているので、針状の放電電極と比較して、同じ電圧を印加したときのイオン発生量が増大している。
【0039】
放電電極1の導電体7は、異極の誘導電極3に電気的に引き寄せられる。導電体7のうち、1本または複数本が、誘導電極3側に大きく曲がる場合がある。本実施の形態のイオン発生装置では、
図6を参照して説明した通り放電電極1の寸法を設定することにより、導電体7が誘導電極3に電気的に引き寄せられて屈曲しても、その導電体7が蓋部材11に接触することはない。そのため、導電体7が蓋部材11と接触する接触部において異常放電が発生して、イオンの発生量が低下したりイオンが発生しないという不具合、およびイオン発生装置の騒音値が高くなる不具合が、確実に回避されている。
【0040】
(実施の形態2)
図9は、実施の形態2におけるイオン発生装置を示す断面図である。実施の形態1のイオン発生装置では、プリント基板6の下面まで絶縁材料19が充填されていた。これに対し、
図9に示す実施の形態2のイオン発生装置では、プリント基板6の上面側にも絶縁材料19が充填されている。絶縁材料19は、蓋部材11の内面にまで充填されている。誘導電極3,4は、
図9に示すように、絶縁材料19により密閉されている。放電電極1,2は、絶縁材料19から突出している。絶縁材料19は、放電電極1,2と誘導電極3,4とを電気的に絶縁している。
【0041】
(実施の形態3)
図10は、実施の形態3におけるイオン発生装置を示す斜視図である。実施の形態3のイオン発生装置は、実施の形態1で説明した蓋部材11に替えて、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの絶縁材料19を備えている。誘導電極3,4は、絶縁材料19により密閉されている。放電電極1,2は、絶縁材料19から突出している。放電電極1の導電体7が接合部7aから突出する長さは、絶縁材料19から突出している放電電極1の長さの半分以下である。放電電極2の導電体8が接合部8aから突出する長さは、絶縁材料19から突出している放電電極2の長さの半分以下である。実施の形態1の蓋部材11の表面に相当する位置まで絶縁材料19を充填することにより、絶縁材料19は、放電電極1,2と誘導電極3,4との間の電気絶縁の機能を奏している。
【0042】
図3を参照して説明した、ボス11a,11bの形成された蓋部材11を用いる場合、蓋部材11の取付時に糸状の導電体7,8にボス11a,11bを貫通させるのは困難であり、また、ボス11a,11bを経由して蓋部材11の内部に異物が侵入した場合の清掃が困難である。蓋部材11に替えて絶縁材料19を設けることにより、導電体7,8にボスを貫通させる必要がなく、イオン発生装置の製造が容易になる。さらに、放電電極1,2の周辺に埃の堆積が発生した場合にも、清掃が容易になる。
【0043】
図11は、実施の形態1〜3のいずれかのイオン発生装置を用いたイオン送出装置の構成を示す断面図である。
図11において、このイオン送出装置では、本体40の下部の背面に吸込口40aが設けられ、本体40の上部の上面および前面にそれぞれ吹出口40b,40cが設けられている。また、本体40の内部にはダクト41が設けられており、ダクト41の下端の開口部は吸込口40aに対向して設けられ、ダクト41の上端は吹出口40b,40cに接続されている。
【0044】
ダクト41の下端の開口部には、送風ファンとしてクロスフローファン42が設けられている。ダクト41の中央付近には、イオン発生装置43が設けられている。イオン発生装置43は、実施の形態1または2で示したものである。イオン発生装置43の筐体10はダクト41の外壁面に固定されている。イオン発生装置43の放電電極1,2の先端部の導電体7,8は、ダクト41の壁を貫通してダクト41内に突出している。2個の放電電極1の導電体7,8は、ダクト41内の空気が流れる方向と直交する方向に配列されている。
【0045】
吸込口40aには樹脂製の格子状のグリル44が設けられており、グリル44の内側に網目状の薄いフィルタ45が貼り付けられている。フィルタ45の奥には、クロスフローファン42に異物やユーザーの指が入り込まないように、格子状のファンガード46が設けられている。ダクト41のイオン発生装置43が設けられている位置よりもやや下側に脱落防止網47が設けられている。脱落防止網47は、吹出口40b,40cから物が投入されたり、イオン発生装置43を含むダクト41に設けられた部品の一部が破断し、落下した場合に、当該落下物を受け止めることで、クロスフローファン42に巻き込まれるのを防止している。これにより、落下物によるクロスフローファン42の破損などが未然に防止されている。
【0046】
クロスフローファン42が回転駆動されると、室内の空気は吸込口40aを介してダクト41内に吸込まれる。吸込まれた空気には、ダクト41内でイオン発生装置43によって生成されたイオンが放出される。イオンを含んだ空気は、吹出口40b,40cを介して室内に放出される。クロスフローファン42の駆動により発生する空気の流れを、
図11中の白抜き矢印Wで示す。
【0047】
クロスフローファン42の回転によってダクト41内を通る空気は、ブラシ状の導電体7,8に直接当たることになる。導電体7,8の1本、1本が、細く長い糸状の形状で髪の毛の様に撓るので、ダクト41内を通る空気の風圧により、揺れ動く。導電体7,8の揺れ動きにより、導電体7、8の1本、1本の先端に電気的または物理的に付着した埃などの付着物は、導電体7,8から振り落とされる。また、導電体7,8が揺れ動くことにより、埃などが導電体7,8に付着しにくくなる。
【0048】
従来のイオン発生装置では、針状電極の先端部に経時的に埃等の付着物が付着し、イオン量が減少する場合がある。本実施の形態のイオン発生装置では、放電電極1,2の先端を構成している導電体7,8に付着する付着物を減少できるので、イオンをより効率よく発生させることが可能とされている。
【0049】
導電体7,8が揺れ動く作用により導電体7,8への埃等の付着は格段に減少するが、付着はするので、ユーザーは導電体7,8に付着した付着物を清掃により除去する必要がある。清掃する時、ユーザーは、イオン送出装置の本体40の背面にある裏蓋40dを外して、ダクト41に設置されたイオン発生装置43にアクセスできる。このとき、筐体10から突出している導電体7,8にユーザの指が触れたとしても、導電体7,8は髪の毛の様に撓る細い導電性繊維であるため、従来の針電極を採用したイオン発生装置とは異なり、ユーザーが怪我をすることはない。
【0050】
なお、ユーザーによる交換を行なわないイオン発生装置もあるが、その場合においても本実施の形態1のイオン発生装置43であれば、その製造時に作業員が導電体7,8の先端部に触れても、指に怪我をすることはない。
【0051】
実施の形態のイオン発生装置、および電気機器の一例としてのイオン送出装置の構成および作用効果についてまとめて説明すると、以下の通りである。なお、実施の形態の構成に参照番号を付すが、これは一例である。
【0052】
本実施の形態に係るイオン発生装置は、
図3に示すように、誘導電極3,4と、誘導電極3,4との間でイオンを発生させるための放電電極1,2とを備えている。放電電極1,2は、複数の糸状の導電体7,8と、導電体7,8の根元を束ねる接合部7a,8aとを有している。誘導電極3,4は、導電体7,8の根元側に配置されている。
【0053】
このような構成を備えているイオン発生装置によれば、放電電極1,2を、細い糸状の導電体7,8を束ねて形成しているので、複数の糸状の導電体7,8の1本、1本が、従来の放電電極として針状電極を採用したイオン発生装置の針状電極1本に相当することになる。放電の発生する箇所が、1箇所ではなく、導電体7,8の本数分存在することになり、そのため放電箇所が増えることになる。したがって、イオンの発生量を増加することができるので、放電電極に針状電極を採用した従来のイオン発生装置よりも効率よくイオンを放出することができる。
【0054】
また、導電体7,8が容易に撓る糸状の形状に形成されるので、放電電極1,2に高電圧を印加すると、導電体7,8の先端部が電気的に反発し合って、
図7に示すようにブラシの先端が開いたような形状となる。そのため、針状電極を採用した従来のイオン発生装置と比較して、広範囲で放電してイオンを発生できるので、イオンを効率よく発生させることができる。
【0055】
また、放電電極1,2に高電圧を印加することにより導電体7,8の先端部を広げることができ、導電体7,8の周辺に空気流れを形成することにより導電体7,8を揺れ動かすことができるので、導電体7,8に埃などの付着物が付着した場合であっても、導電体7,8から付着物を容易に除去することができる。付着物の放電電極1,2からの離脱を容易にすることで、放電電極1,2への付着物の付着量を減少できるので、イオンを効率良く発生することができる。
【0056】
また、イオン発生装置の製造時またはメンテナンス時などにユーザーが導電体7,8の先端部に触れても、指などに怪我をすることを防止することができる。
【0057】
好ましくは、導電体7,8の外径は、5μm以上30μm以下である。導電体7,8の外径を5μm以上に規定することで、導電体7,8の機械的強度を確保できるとともに、導電体7,8の電気磨耗を抑制することができる。導電体7,8の外径を30μm以下に規定することで、容易に撓る導電体7,8が形成され、高電圧印加時の導電体7,8の広がり、および空気流れの形成時の導電体7,8の揺れ動きが起こりやすくなる。
【0058】
好ましくは、導電体7,8が接合部7a,8aから突出する長さは、3mm以上である。導電体7,8の突出長を3mm以上に規定することで、容易に撓る導電体7,8が形成され、高電圧印加時の導電体7,8の広がり、および空気流れの形成時の導電体7,8の揺れ動きが起こりやすくなる。
【0059】
好ましくは、
図3に示すように、イオン発生装置は、蓋部材11をさらに備えている。放電電極1,2は、蓋部材11に形成された孔を貫通して蓋部材11から突出している。導電体7,8が筐体10および蓋部材11から突出しているので、導電体7,8の先端部で発生したイオンを、筐体10外に効率良く放出することができる。
【0060】
好ましくは、
図6に示すように、導電体7,8が接合部7a,8aから突出する長さは、蓋部材11から突出している放電電極1,2の長さの半分以下である。このようにすれば、高電圧印加時に導電体7,8が誘導電極3,4に電気的に引き寄せられて屈曲しても、導電体7,8が蓋部材11に接触することはない。そのため、導電体7が蓋部材11と接触する接触部において異常放電が発生してイオン発生装置の騒音値が高くなる不具合の発生を回避することができる。
【0061】
好ましくは、
図4に示すように、誘導電極3,4は、放電電極1,2を取り囲む環状の形状を有している。このようにすれば、放電電極1,2に高電圧を印加するとき、導電体7,8は、放電電極1,2を取り囲む誘導電極3,4に向かって、360°全周に広がる。そのため、放電の発生する箇所の面積を増大することができ、より広い範囲で放電してイオンを効率よく発生することができる。
【0062】
好ましくは、
図9,10に示すように、イオン発生装置は、絶縁材料19をさらに備えている。誘導電極3,4は、絶縁材料19により密閉されている。放電電極1,2は、絶縁材料19から突出している。このようにすれば、絶縁材料19によって放電電極1,2と誘導電極3,4とを電気的に絶縁することができる。蓋部材11に替えて絶縁材料19を設けることにより、導電体7,8にボスを貫通させる必要がなく、イオン発生装置の製造が容易になる。さらに、放電電極1,2の周辺に埃が堆積した場合にも、清掃が容易になる。
【0063】
好ましくは、
図9,10に示すように、導電体7,8が接合部7a,8aから突出する長さは、絶縁材料19から突出している放電電極1,2の長さの半分以下である。このようにすれば、高電圧印加時に導電体7,8が誘導電極3,4に電気的に引き寄せられて屈曲しても、導電体7,8が絶縁材料19に接触することはない。そのため、導電体7が絶縁材料19と接触する接触部において異常放電が発生してイオン発生装置の騒音値が高くなる不具合の発生を回避することができる。
【0064】
本実施の形態に係るイオン送出装置は、
図11に示すように、上記のいずれかの局面のイオン発生装置43と、イオン発生装置で発生したイオンを送出するための送風部としてのクロスフローファン42とを備えている。イオン発生装置の放電電極1,2が筐体10から突出しているため、クロスフローファン42の回転によってダクト41内を通る空気は、放電電極1,2に直接当たることになり、放電電極1,2の導電体7,8周辺に発生しているイオンを空気流に乗せてダクト41の下流側へと運んで行く。このようにして、導電体7,8周辺に発生したイオンを効率良くダクト41の下流側へ導き、吹出口40b,40cから放出することができる。
【0065】
ダクト41内を通る空気がブラシ状の導電体7,8に直接当たることにより、導電体7,8が揺れ動く。そのため、導電体7、8の1本、1本の先端に電気的または物理的に付着した埃などの付着物は、導電体7,8から振り落とされる。また、導電体7,8が揺れ動くことにより、埃などが導電体7,8に付着しにくくなる。付着物の放電電極1,2からの離脱を容易にすることで、放電電極1,2への付着物の付着量を減少できるので、イオンを効率良く発生することができる。
【0066】
なお、本実施の形態では、プリント基板5の配線層を用いて誘導電極3,4を形成したが、誘導電極3,4の各々を金属板で形成してもよい。また、誘導電極3,4の各々は、環状でなくてもかまわない。
【0067】
また、本実施の形態では、イオン発生装置43を用いた電気機器として、イオン送出装置を示したが、空気調和機、除湿器、加湿器、空気清浄機、冷蔵庫、ガスファンヒータ、石油ファンヒータ、電気ファンヒータ、洗濯乾燥機、掃除機、殺菌装置、電子レンジ、複写機などの電気機器に、イオン発生装置43を搭載してもよい。
【0068】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。