(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6415669
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブの種類を区別する方法
(51)【国際特許分類】
B82B 3/00 20060101AFI20181022BHJP
B82Y 35/00 20110101ALI20181022BHJP
G01N 33/00 20060101ALI20181022BHJP
G01N 23/225 20180101ALI20181022BHJP
C01B 32/172 20170101ALI20181022BHJP
【FI】
B82B3/00
B82Y35/00
G01N33/00 A
G01N23/225
C01B32/172
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-208969(P2017-208969)
(22)【出願日】2017年10月30日
(65)【公開番号】特開2018-75708(P2018-75708A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2017年10月30日
(31)【優先権主張番号】201610967644.7
(32)【優先日】2016年10月31日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】598098331
【氏名又は名称】ツィンファ ユニバーシティ
(73)【特許権者】
【識別番号】500080546
【氏名又は名称】鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】李 東▲ち▼
(72)【発明者】
【氏名】魏 洋
(72)【発明者】
【氏名】姜 開利
(72)【発明者】
【氏名】▲ハン▼ 守善
【審査官】
山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2018−74158(JP,A)
【文献】
特開2007−212225(JP,A)
【文献】
特開2011−184225(JP,A)
【文献】
特開2008−192795(JP,A)
【文献】
特開2018−70444(JP,A)
【文献】
特開2006−278505(JP,A)
【文献】
特開2007−71669(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0104095(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B82B 3/00
B82Y 35/00
C01B 32/172
G01N 23/225
G01N 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電基板を提供し、前記導電基板の表面に絶縁層を設置する第一ステップと、
前記絶縁層の表面にカーボンナノチューブ構造体を設置する第二ステップと、
走査型電子顕微鏡の加速電圧が5KV〜20KVであり、滞留時間が6マイクロ秒間〜20マイクロ秒間であり、倍率を1万倍〜10万倍に調整して、前記カーボンナノチューブ構造体を撮影し、カーボンナノチューブ構造体の写真を得る第三ステップと、
得られた写真において、前記カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブが基板の表面に分布して、前記基板の色より薄い前記カーボンナノチューブが金属型カーボンナノチューブであること及び前記基板の色より濃い前記カーボンナノチューブが半導体型カーボンナノチューブであることを判断する第四ステップと、
を含むことを特徴とするカーボンナノチューブの種類を区別する方法。
【請求項2】
前記走査型電子顕微鏡の加速電圧が15KV〜20KVであることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブの種類を区別する方法。
【請求項3】
前記走査型電子顕微鏡の滞留時間が10マイクロ秒間〜20マイクロ秒間であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブの種類を区別する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブの種類を区別する方法に関し、特に走査型電子顕微鏡を採用してカーボンナノチューブの種類を区別する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単層カーボンナノチューブは、良好な電気特性、光電特性及び半導体型エネルギーを有する。単層カーボンナノチューブは、金属型カーボンナノチューブ及び半導体型カーボンナノチューブに分類することができる。これらの2種類のカーボンナノチューブは異なる用途を有するために、それらを区別する必要がある。カーボンナノチューブは広く応用されるので、金属型カーボンナノチューブ及び半導体型カーボンナノチューブをどのように区別するかが注目されている。
【0003】
従来は、ラマン分光法又は電気的測定法によって、金属型カーボンナノチューブ及び半導体型カーボンナノチューブを区別していた。しかし、従来の方法の操作工程は複雑であるので、効率が低下する。走査型電子顕微鏡は高い識別効率を有するので、より多くの人々が走査型電子顕微鏡を採用して、カーボンナノチューブの種類を区別する。
図1及び
図2を参照すると、従来、走査型電子顕微鏡によって、カーボンナノチューブを特徴付ける際、明瞭且つ高コントラストの写真を得るために、より低い(1KV程度)加速電圧が使用されていた。得られた写真において、カーボンナノチューブの導電性能は、写真の色と関係し、色が薄いほど、導電性能が良好である。しかし、カーボンナノチューブの色は基板(ベース)の色より薄い。写真におけるカーボンナノチューブが金属型カーボンナノチューブ及び半導体型カーボンナノチューブを同時に含む際、グレーカーボンナノチューブのような中間色のカーボンナノチューブの種類を決定する際、誤りがしばしば生じる。したがって、走査型電子顕微鏡によるカーボンナノチューブを区別する従来の方法では、カーボンナノチューブを区別する精度が高くなく、カーボンナノチューブの種類に対して判断ミス又は判断が困難であることが多い。写真において、金属型カーボンナノチューブ及び半導体型カーボンナノチューブの両者の色は基板の色よりも薄いため、写真で1種類のカーボンナノチューブのみを有する場合、写真におけるカーボンナノチューブが金属型カーボンナノチューブであるか半導体型カーボンナノチューブであるかを判断しにくい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、前記課題を解決するためのカーボンナノチューブの種類を区別する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のカーボンナノチューブの種類を区別する方法は、導電基板を提供し、導電基板の表面に絶縁層を設置する第一ステップと、絶縁層の表面にカーボンナノチューブ構造体を設置する第二ステップと、走査型電子顕微鏡の加速電圧が5KV〜20KVであり、滞留時間が6マイクロ秒間〜20マイクロ秒間であり、倍率を1万倍〜10万倍に調整し、カーボンナノチューブ構造体を撮影し、カーボンナノチューブ構造体の写真を得る第三ステップと、得られた写真において、カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブが基板の表面に分布して、基板の色より薄いカーボンナノチューブが金属型カーボンナノチューブであること及び前記基板の色より濃いカーボンナノチューブが半導体型カーボンナノチューブであることを判断する第四ステップと、を含むことを特徴とする。
【0006】
本発明のカーボンナノチューブの種類を区別する方法では、走査型電子顕微鏡の加速電圧は15KV〜20KVである。
【0007】
本発明のカーボンナノチューブの種類を区別する方法では、走査型電子顕微鏡の滞留時間は10マイクロ秒間〜20マイクロ秒間である。
【発明の効果】
【0008】
従来技術に比べて、本発明のカーボンナノチューブの種類を区別する方法は、以下の優れる点を有する。本発明のカーボンナノチューブの種類を区別する方法において、走査型電子顕微鏡の加速電圧は従来技術のカーボンナノチューブの種類を区別する方法における走査型電子顕微鏡の加速電圧より遥かに高いので、得られたカーボンナノチューブ構造体の写真において、金属型カーボンナノチューブは基板の色より薄く、半導体型カーボンナノチューブは基板の色より濃く、カーボンナノチューブの種類を迅速且つ正確に区別できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】従来技術で、走査型電子顕微鏡を採用して得られたカーボンナノチューブ構造体の写真である。
【
図3】本発明の実施例1におけるカーボンナノチューブの種類を区別する方法のフローチャートである。
【
図4】本発明の実施例1におけるカーボンナノチューブの種類を区別する方法によって得られたカーボンナノチューブ構造体の写真である。
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0011】
実施例1は、カーボンナノチューブの種類を区別する方法を提供する。
図3を参照すると、カーボンナノチューブの種類を区別する方法は以下のステップを含む。
S1、導電基板を提供し、導電基板の表面に、絶縁層を設置する。
S2、絶縁層の表面にカーボンナノチューブ構造体を設置する。
S3、走査型電子顕微鏡の加速電圧は5KV〜20KVであり、滞留時間は6マイクロ秒間〜20マイクロ秒間であり、倍率を1万倍〜10万倍に調整して、カーボンナノチューブ構造体を撮影し、カーボンナノチューブ構造体の写真を得る。
S4、得られた写真において、カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブは基板の表面に分布して、基板の色より薄いカーボンナノチューブは金属型カーボンナノチューブであり、基板の色より濃いカーボンナノチューブは半導体型カーボンナノチューブである。
【0012】
ステップS1において、導電基板は導電材料からなる。導電基板の材料は金属、導電性有機物あるいはドープされた導電性材料であってもよい。本実施例において、導電基板の材料はドープされたシリコンである。絶縁層は絶縁材料からなる。絶縁層の材料は酸化物又は高分子材料であってもよい。本実施例において、絶縁層の材料は酸化ケイ素であり、絶縁層の厚さは50nm〜300nmである。
【0013】
ステップS2において、カーボンナノチューブ構造体は少なくとも一本のカーボンナノチューブを含む。カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブは絶縁層の表面に平行であってもよい。カーボンナノチューブ構造体は複数のカーボンナノチューブを含む際、複数のカーボンナノチューブは金属型カーボンナノチューブ及び/又は半導体型カーボンナノチューブを含んでもよい。本実施例において、カーボンナノチューブ構造体は複数の金属型カーボンナノチューブ及び半導体型カーボンナノチューブを含む。
【0014】
ステップS3において、カーボンナノチューブ構造体は走査型電子顕微鏡によって観察できる位置に設置してもよい。好ましくは、走査型電子顕微鏡の加速電圧は15KV〜20KVであり、滞留時間は10マイクロ秒間〜20マイクロ秒間である。本実施例において、走査型電子顕微鏡の加速電圧は10KVであり、滞留時間は20マイクロ秒間であり、倍率は2万倍である。
【0015】
ステップS4において、得られた写真は
図4及び
図5に示す。
図4及び
図5は基板及び基板におけるカーボンナノチューブの画像を含む。
図4及び
図5から分かるように、一部のカーボンナノチューブの色は基板の色より薄く、一部のカーボンナノチューブの色は基板の色より濃い。基板の色より薄いカーボンナノチューブは金属型カーボンナノチューブであり、基板の色より濃いカーボンナノチューブは半導体型カーボンナノチューブである。
【0016】
図1は、従来技術において走査型電子顕微鏡を用いてカーボンナノチューブを特徴付ける方法によって得られたカーボンナノチューブ構造体の写真である。
図4は、本発明のカーボンナノチューブを区別する方法によって得られたカーボンナノチューブ構造体の写真である。
図1及び
図4を対比することにより、以下の四つの区別が得られる。
【0017】
第一に、従来技術によって得られたカーボンナノチューブ構造体の写真において、カーボンナノチューブの導電性能は写真の色と関係し、色が薄いほど、導電性能が良好である。しかし、カーボンナノチューブの色は基板の色より薄い。写真におけるカーボンナノチューブは金属型カーボンナノチューブ及び半導体型カーボンナノチューブを同時に含む際、グレーカーボンナノチューブのような中間色のカーボンナノチューブの種類を決定する際、誤りがしばしば生じる。したがって、走査型電子顕微鏡によるカーボンナノチューブを区別する従来方法では、カーボンナノチューブを区別する精度が高くなく、カーボンナノチューブの種類に対して判断ミス又は判断が困難であることが多い。本発明の実施例で得られたカーボンナノチューブ構造体の写真において、金属型カーボンナノチューブは基板よりも色が薄く、半導体型カーボンナノチューブは基板の色より濃いので、カーボンナノチューブが金属型カーボンナノチューブであるか半導体カーボンナノチューブであるかは、一目で分かる。
【0018】
第二に、従来技術によって得られたカーボンナノチューブ構造体の写真において、金属型カーボンナノチューブ及び半導体型カーボンナノチューブの両者の色は基板の色よりも薄いため、写真で1種類のカーボンナノチューブのみを有する場合、写真におけるカーボンナノチューブは金属型カーボンナノチューブであるか半導体型カーボンナノチューブであるかを判断し難しい。本発明の実施例で得られたカーボンナノチューブ構造体の写真において、金属型カーボンナノチューブは基板よりも色が薄く、半導体型カーボンナノチューブは基板の色より濃いので、写真で1種類のカーボンナノチューブのみを有する場合、写真におけるカーボンナノチューブは金属型カーボンナノチューブであるか半導体型カーボンナノチューブであるかを速やかに判断できる。
【0019】
第三に、
図4と比較すると、
図1のコントラストが高いので、カーボンナノチューブを視認し易く、写真がより美しい。本発明の実施例で得られた
図4は、解像度が低く、写真が美しくない。したがって、従来技術では、低加速電圧によってカーボンナノチューブを特徴付け且つ区別する。しかし、カーボンナノチューブを区別する従来方法で得られた写真によって、カーボンナノチューブの種類を正確に区別することは困難である。本発明のカーボンナノチューブの種類を区別する方法は、迅速かつ正確にカーボンナノチューブの種類を判断でき、技術的偏見を克服することができる。
【0020】
第四に、
図1に比べて、
図4におけるカーボンナノチューブ画像の幅が比較的狭いので、密度の高い複数のカーボンナノチューブを区別する際、本発明が提供するカーボンナノチューブの種類を区別する方法はより適している。
【0021】
さらに、金属型カーボンナノチューブ及び半導体型カーボンナノチューブを区別した後、金属型カーボンナノチューブ又は半導体型カーボンナノチューブを除去するステップを含むことができる。これにより、単一種類のカーボンナノチューブを得ることができる。